説明

脱穀装置

【課題】シーブの清掃装置における清掃性能を損ねずに、清掃効率を向上する。
【解決手段】上記課題は、扱胴10を内蔵する扱室11と、この扱室11から漏下する脱穀処理物の揺動選別を行うべく前後方向に往復揺動するシーブ23とを備え、シーブ23上を左右方向に往復揺動する第一清掃体100及び第二清掃体200を、相対的に第一清掃体100が扱胴10の穀稈接触開始側に位置し第二清掃体200が扱胴10の穀稈接触終了側に位置するようにシーブ23の左右方向に並設するとともに、第一清掃体100の往復揺動速度よりも第二清掃体200の往復揺動速度が速い構成としたことを特徴とする脱穀装置3により解決される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シーブの清掃装置を備えた脱穀装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、脱穀装置における揺動選別棚のシーブに付着した藁屑を、シーブ上を左右方向に往復揺動する清掃体により掻き取り除去する清掃装置が提案されている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−100671号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、脱穀装置においてはシーブ上の脱穀処理物分布の偏りが不可避的に発生するにも関わらず、従来のシーブの清掃装置は清掃作用が対象範囲全体に均一に作用するようになっていたため、清掃効率が低いものとなっていた。つまり、清掃効果を重視する場合、清掃装置の仕様をシーブ上の脱穀処理物の最も多い部位に合わせる必要があるため、脱穀処理物の少ない部位に対しては清掃作用が過剰となり、清掃効率が低下してしまうのである。一方、清掃装置の仕様を脱穀処理物量が平均的な状態に合わせると、脱穀処理物の多い部位に対しては清掃作用が不足してしまう。
【0005】
そこで、本発明の主たる課題は、シーブの清掃装置における清掃性能を損ねずに、清掃効率を向上することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決した本発明は次のとおりである。
すなわち、請求項1記載の発明は、扱胴(10)を内蔵する扱室(11)と、この扱室(11)から漏下する脱穀処理物の揺動選別を行うべく前後方向に往復揺動するシーブ(23)とを備え、前記シーブ(23)上を左右方向に往復揺動する第一清掃体(100)及び第二清掃体(200)を、第一清掃体(100)が前記扱室(11)の扱ぎ口(11i)側に位置し且つ第二清掃体(200)が前記扱室(11)の反扱ぎ口(11i)側に位置するように前記シーブ(23)の左右方向に並設するとともに、前記第一清掃体(100)の往復揺動速度よりも第二清掃体(200)の往復揺動速度を高速に設定したことを特徴とする脱穀装置である。
【0007】
請求項2記載の発明は、前記シーブ(23)上における反扱ぎ口(11i)側の部位に二番物を供給する二番還元機構を備えたことを特徴とする請求項1記載の脱穀装置である。
【0008】
請求項3記載の発明は、前記第一清掃体(100)及び第二清掃体(200)が連動して互いに同方向に往復揺動する構成としたことを特徴とする請求項1又は2記載の脱穀装置である。
【0009】
請求項4記載の発明は、前記第一清掃体(100)及び第二清掃体(200)が連動して互いに反対方向に往復揺動する構成としたことを特徴とする請求項1又は2記載の脱穀装置である。
【0010】
請求項5記載の発明は、前記第一清掃体(100)のストロークよりも第二清掃体(200)のストロークを長く設定したことを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の脱穀装置である。
【0011】
請求項6記載の発明は、前記第一清掃体(100)及び第二清掃体(200)の夫々には、扱ぎ口(11i)側と反扱ぎ口(11i)側とに前後方向に沿う側部拡散プレート部(81s)を備え、前記第一清掃体(100)に備える側部拡散プレート部(81s)に、扱ぎ口(11i)側に突出してシーブ(23)表面の付着物を除去するスクレーパ部(82)を設け、前記第二清掃体(200)に備える側部拡散プレート部(81s)に、反扱ぎ口(11i)側に突出してシーブ(23)表面の付着物を除去するスクレーパ部(82)を設けたことを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の脱穀装置である。
【0012】
請求項7記載の発明は、前記第一清掃体(100)及び第二清掃体(200)の各々が、前後方向に沿う拡散プレート部(81)を左右方向に間隔を空けて複数有する構成とするとともに、前記第一清掃体(100)における拡散プレート部(81)の配置間隔(d1)よりも第二清掃体(200)における拡散プレート部(81)の配置間隔(d2)が狭く、かつ前記第一清掃体(100)及び第二清掃体(200)の各々は自身の拡散プレート部(81)の配置間隔(d1,d2)が自身の往復揺動のストローク(s1,s2)よりも小さい構成としたことを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の脱穀装置である。
【0013】
請求項8記載の発明は、前記シーブ(23)の後方への揺動と前記第二清掃体(200)の第一清掃体(100)側への揺動とを同期させたことを特徴とする請求項1記載の脱穀装置である。
【発明の効果】
【0014】
請求項1記載の発明によれば、第一清掃体(100)及び第二清掃体(200)がシーブ(23)上を左右方向に往復揺動することによって、シーブ(23)に詰まる藁屑等の清掃作用だけでなく、シーブ(23)上の脱穀処理物の拡散作用も発揮される。そして、シーブ(23)上において脱穀処理物が比較的に少量となる(つまり清掃作用が比較的に少なくて足りる)扱ぎ口(11i)側の部位においては、相対的に往復揺動速度の遅い第一清掃体(100)により清掃及び拡散がなされ、シーブ(23)上において相対的に脱穀処理物が多量となる(つまり比較的に強力な清掃作用が必要となる)反扱ぎ口(11i)側の部位においては、相対的に往復揺動速度の速い第二清掃体(200)により清掃及び拡散がなされるため、清掃性能を損ねずに、清掃効率を向上することができるとともに、シーブ(23)上の脱穀処理物がより広範囲に拡散して均平化し、シーブ(23)の目詰まり低減、シーブ(23)の篩選別効率の向上、及びこれらによる全体としての選別性能の向上を図ることができる。
【0015】
請求項2記載の発明によれば、シーブ(23)上における反扱ぎ口(11i)側の部位に二番物を供給する二番還元機構を有し、シーブ(23)上の脱穀処理物分布の偏りが特に大きくなる場合において、請求項1記載の発明と同様に、清掃性能を損ねずに、清掃効率を向上することができるとともに、シーブ(23)上の脱穀処理物がより広範囲に拡散して均平化し、シーブ(23)の目詰まり低減、シーブ(23)の篩選別効率の向上、及びこれらによる全体としての選別性能の向上を図ることができる。
【0016】
請求項3記載の発明によれば、請求項1又は2記載の発明による効果に加えて、第一清掃体(100)及び第二清掃体(200)が連動して互いに同方向に往復揺動することにより、シーブ(23)上の脱穀処理物をより効率良く拡散及び均平化できるようになる。
【0017】
請求項4記載の発明によれば、請求項1又は2記載の発明の効果に加えて、第一清掃体(100)と第二清掃体(200)とが互いに左右反対方向に往復揺動するので、発生する振動を互いに打ち消しあい騒音や振動を低減することができ、箭い選別をバランスよく良好に行うことができるようになる。
【0018】
請求項5記載の発明によれば、請求項1〜4のいずれか1項記載の発明による効果に加えて、清掃対象の脱穀処理物が相対的に少量となる第一清掃体(100)のストロークが相対的に短く、清掃対象の脱穀処理物が相対的に多量となる第二清掃体(200)のストロークが相対的に長い構成としたため、清掃効率及びシーブ(23)上の脱穀処理物の拡散効率がより一層向上するようになる。
【0019】
請求項6記載の発明によれば、請求項1〜5のいずれか1項に記載の発明の効果に加えて、側部拡散プレート部(81s)によってシーブ(23)上のより広範囲の脱穀処理物を拡散できるものでありながら、側部拡散プレート部(81s)の左右方向外側においてシーブ(23)上に残留する藁屑をスクレーパ部(82)により掻き出すことができるため、藁屑が側部拡散プレート部(81s)の左右方向外側に堆積固化し難くなり、藁屑の堆積固化物により清掃体の往復揺動が阻害されたり、篩選別能力が低下したりするといった事態を防止できるようになる。
【0020】
請求項7記載の発明によれば、請求項1〜6のいずれか1項に記載の発明の効果に加えて、清掃対象の脱穀処理物が相対的に少量となる第一清掃体(100)の拡散プレート部(81)の配置間隔(d1)よりも清掃対象の脱穀処理物が相対的に多量となる第二清掃体(200)における拡散プレート部(81)の配置間隔(d2)が狭い構成としたため、清掃効率及びシーブ(23)上の脱穀処理物の拡散効率がより一層向上するようになる。また、第一清掃体(100)及び第二清掃体(200)の各々は自身の拡散プレート部(81)の配置間隔(d1,d2)が自身の往復揺動のストローク(s1,s2)よりも小さく、隣接する拡散プレート部(81)の往復揺動範囲が隣接又は一部重なるため、隣接する拡散プレート部(81)の往復揺動範囲の間に脱穀処理物が滞留し難くなり、清掃効率及びシーブ(23)上の脱穀処理物の拡散効率がより一層向上するようになる。
【0021】
請求項8記載の発明によれば、請求項1〜7のいずれか1項に記載の発明の効果に加えて、シーブ(23)の前後揺動によりシーブ(23)上の脱穀処理物を後方移送する時に合わせて、第二清掃体(200)によりシーブ(23)上の脱穀処理物を多い方から少ない方へ移送することができるので、シーブ(23)上の処理物の拡散を効率的に行うことができ、シーブ(23)の目詰まり低減、シーブ(23)の篩選別効率の向上、及びこれらによる全体としての選別性能の向上を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】コンバインの左側面図である。
【図2】コンバインの平面図である。
【図3】コンバインの正面図である。
【図4】コンバインの背面図である。
【図5】脱穀装置の縦断面図である。
【図6】脱穀装置の他の位置における要部縦断面図である。
【図7】脱穀装置の水平断面図である。
【図8】コンバインの要部水平断面図である。
【図9】図8のA−A断面図である。
【図10】図8のB−B断面図である。
【図11】図7のC−C断面図である。
【図12】コンバインの要部縦断面図である。
【図13】コンバインの要部縦断面図である。
【図14】脱穀装置の要部水平断面図である。
【図15】脱穀装置の要部水平断面図である。
【図16】脱穀装置の要部水平断面図である。
【図17】清掃体駆動部分の要部左側面図である。
【図18】清掃体駆動部分の要部底面図である。
【図19】第一シーブの平面図である。
【図20】第一シーブの要部斜視図である。
【図21】清掃体の平面図である。
【図22】清掃体の左側面図である。
【図23】清掃体の正面図である。
【図24】脱穀装置の要部水平断面図である。
【図25】脱穀装置の要部縦断面図である。
【図26】脱穀装置の要部水平断面図である。
【図27】図26のD−D断面図である。
【図28】図26のE−E断面図である。
【図29】受網及び穀稈支持体の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の一実施例について添付図面を参照しつつ詳説する。なお、理解を容易にするため、便宜的に方向を示して説明しているが、これらにより構成が限定されるものではない。
【0024】
図中の符号1はコンバインの機体フレーム、符号2は左右一対のクローラを有する走行装置、符号3は機体フレーム1の上方に設けられた脱穀装置、符号4は脱穀装置3の前側に設けられた、植立穀稈を刈り取る刈取装置、符号6は脱穀装置3の側部に設けられたグレンタンク、符号6はグレンタンク5の前方に設けた操縦部、符号7はグレンタンクの貯留穀粒を排出するための排出管、符号7は刈取装置4で刈り取った穀稈を脱穀装置3に向けて搬送する供給搬送装置8をそれぞれ示している。
【0025】
走行装置2により機体を走行し、圃場に植立する穀稈を刈取装置4により刈り取ると、その穀稈は供給搬送装置8により揚上搬送され、その過程で株元側が側方に持ち上がるように姿勢変更され且つ脱穀装置3における扱ぎ深さが調整された後に脱穀部搬送装置12に受け渡される。脱穀部搬送装置12では、穀稈の株元側をフィードチェーン13Bと挟持杆13Aとの間で挟持してその穂先側を脱穀装置3の扱室11内に通過させて脱穀を行いつつ後方に搬送する。脱穀済みの排藁は、排藁搬送装置14に引き継がれる。
【0026】
(扱室)
脱穀装置3は穀稈の脱穀を行う扱室11を上部に備えている。この扱室11内には扱歯10bを有する扱胴10が前後方向に沿う軸心を中心として回転するように軸支されており、この扱胴10の主として下方側を扱胴10外周に沿って包囲するように扱網15が張設されている。扱室11に供給された穀稈は回転する扱胴10と扱網15との間で脱穀され、脱穀された穀粒は扱網15から漏下して選別室18に供給され、揺動選別装置21により選別される。
【0027】
扱室11は、前後方向中間に設けられた中間隔壁11J,11Kよりも前側の部分で構成され、中間隔壁11J,11K間に排塵処理室30(後述する)への連通口35が形成されている。また、中間隔壁11Kとその下流側に設けられた後隔壁11Lとの間に刺さり粒回収室11Eが形成されるとともに、扱胴10の下流側(後側)端部が中間隔壁11Kを貫通して刺さり粒回収室11E内まで延在しており、この延在部分に、扱胴回転方向に対して所定角度に傾斜する傾斜扱歯10cが扱胴周方向に所定の間隔を空けて且つ交互に設けられている。扱室11の側面には、穀稈の穂先側を扱胴10の扱歯10bの作用域へ供給した状態で後送するための扱ぎ口11iが形成され、この扱ぎ口11iに沿って、フィードチェーン13Bが配置される。扱室11で脱穀された処理物のうち扱網15から漏下しない処理物は連通口35を介して排塵処理室30に供給される。一方、扱室11を通過した穀稈は刺さり粒回収室11Eに至り、傾斜扱歯10cにより搬送穀稈を開いて穀稈中にささり込んだ穀粒が取り除かれて落とされた後、排藁搬送装置14に引き継がれる。
【0028】
刺さり粒回収室11Eは穀稈に刺さり残った刺さり粒を落とすためのものであるため、刺さり粒回収室11Eの前後方向長さは扱室11の前後方向長さよりも短くするのが望ましい。
扱室11の上方を覆う上部カバー11Uは、脱穀部搬送装置12と反対側に位置する前後方向に沿う支軸を支点として揺動開閉するように構成されており、この上部カバー11Uに挟持杆13Aが取り付けられ、挟持杆13Aも上部カバー11Uに伴って揺動開閉するように構成されている。
【0029】
(挟持杆、フィードチェーン部)
図5、図9等に示すように、扱室11の一方側(機体走行方向の左側)に設けられる脱穀部搬送装置12は、下側に位置するフィードチェーン13Bと、上側に位置し、且つスプリング等の付勢手段13cにより上部カバー11Uに対してフィードチェーン13B側に付勢される挟持杆13Aとから主に構成されている。図8及び図12等に示すように、フィードチェーン13Bは、前後に設けられた張設輪13d,13d及びこれらの間に設けられた伝動スプロケット13eに巻回されて駆動される無端のチェーンであり、上方側を後方に向かって移動する過程で挟持杆13Aとの間に穀稈の株元側が挟持されるようになっている。
【0030】
本実施形態では、これらのフィードチェーン13B、張設輪13d、伝動スプロケット13e、これらを支持するフレーム9f、及びその外側のカバー9c等を含み、裏側に扱室11の側壁が位置する部分がフィードチェーン部9を構成している。フィードチェーン部9は、本実施形態では前端部に位置する上下方向に沿う支軸9xを中心として揺動開閉するようになっているが、フィードチェーン13Bと挟持杆13Aとの間で穀稈を搬送する閉位置と、裏側に位置する扱室11の側壁が露出する開位置とに開閉変更自在であれば、支軸9xの位置が後端部であっても良く、また移動形態が開動ではなくスライド移動等であっても良い。
【0031】
(点検口)
図8〜図13に示すように、扱室11のフィードチェーン部9側の側壁には、フィードチェーン部9の裏側を含む範囲に、取り外した第一シーブ23(請求項におけるシーブ23)が通過可能である点検口11Sが形成されるとともに、この点検口11Sを開閉する蓋体11Zが設けられており、この蓋体11Zはフィードチェーン部9に連結一体化されている。フィードチェーン部9をオープン(揺動開放)すると、図8に示すように蓋体11Zもフィードチェーン部9に伴い移動して点検口11Sが開口し、図13に示すように点検口11Sから扱胴10の下端部及び扱胴10の下側空間が露出する。よって、点検口11S及び扱胴10の下側空間を介して後述の揺動選別棚20の上流側、具体的には移送棚22及び第一シーブ23の掃除やメンテナンスを行うことができる。
【0032】
(選別室)
扱室11の扱網15の下方には、扱網15から漏下する脱穀処理物を穀粒とそれ以外の物とに選別するための選別室18が形成されており、選別室18の上部には前後方向に往復揺動する揺動選別棚20により構成された揺動選別装置21が設けられ、選別室18の下部には、唐箕16と、樋状の一番棚板19A(一番物回収部)、樋状の二番棚板19B(二番物回収部)とが、揺動選別棚20の移送方向に(前から後ろに向かって)この順で設けられている。
【0033】
揺動選別棚20の始端部(前端部)は、唐箕風洞17の上方に位置する移送棚22として形成されている。移送棚22の構成は任意であり、移送方向下流側を低く傾斜させたり、あるいは、移送棚22の上面に突起や凹凸を設けたりして、揺動選別装置21の移送方向下流側の第一シーブ23に向けて扱網15からの漏下物を移送できればよい。
【0034】
第一シーブ23は、主に扱網15から漏下した穀粒と異物とを選別する篩であり、図示例では、移送方向下流側(後側)が高くなるように傾斜した薄い板状体からなるシーブ部材23bを揺動方向に所定の間隔を空けて平行に複数並設したものである。第一シーブ23の移送方向下流側(後側)には、主に穀粒とチャフ(わら屑)とを選別する第二シーブ24が設けられている。第二シーブ24は、扱室11から排塵処理室30への連通口35より後側に配置され、第一シーブ23からの処理物及び刺さり粒回収室11Eからの処理物を受け入れて選別する箭であり、図示例では、移送方向下流側(後側)が高くなるように傾斜した薄い板状体からなるシーブ部材24bを揺動方向に所定の間隔を空けて平行に複数並設したものであり、第一シーブ23より選別行程が長く構成されている。さらに、第二シーブ24の下流側には、第一シーブ23及び第二シーブ24から漏下しなかった比較的大きな藁屑中から枝梗付着粒等を篩い選別し、これらを後述する二番棚板19B上に漏下させるために、ストローラック25が設けられている。
【0035】
唐箕16は、揺動選別棚20と一番物棚板19Aとの間に臨む送風口を備えている。一番棚板19Aの樋部内には、グレンタンク5へ連通する螺旋コンベア式の一番コンベア26を配置し、二番棚板19Bの樋部内には、二番処理室40へ連通する螺旋コンベア式の二番コンベア27を配置している。また、揺動選別棚20と一番棚板19Aとの間には、第一シーブ23と第二シーブ24との境界近傍から一番棚板19Aの棚先19C近傍までの範囲にわたるように選別網28が設けられている。
【0036】
揺動選別棚20は図示しない駆動機構により上下前後方向に揺動するので、被処理物は後方側へ移動しながら、唐箕16からの送風を受けて風力選別され、比重の重い穀粒は第一シーブ23及び第二シーブ24を漏下して選別網28上に供給され、選別網28上の被処理物は、更に唐箕16からの選別風を下側から受けて細かな藁屑が吹き飛ばされながら後方に移送され、この移送中に選別網28から漏下したものが一番棚板19Aにより回収され、一番コンベア26で搬送されてグレンタンク5へ投入される。グレンタンク5に貯留された穀粒は、排出筒7を介してコンバインの外部へ搬出される。このように、選別網28から漏下して一番棚板19Aで回収される処理物は、枝梗付着の少ない穀粒(清粒)が主である。
【0037】
一方、選別網28から漏下しないものは、この選別網28上を後方へ移送されて選別網28の後端部から二番棚板19Bに至り、回収される。選別網28から漏下せずに二番棚板19Bに供給される被処理物は、枝梗付着粒や小さな藁屑等が主である。
【0038】
揺動選別棚20上の被処理物のうち軽量のものは、シーブ23,24を漏下せず、揺動選別棚20の揺動作用と唐箕16による送風で吹き飛ばされてシーブ23,24の上を後方へ移動し、ストローラック25の上で大きさの小さい二番物は漏下して二番棚板19Bにより回収される。シーブ23,24の後部やストローラック25から漏下して二番コンベア27により二番処理室40へ供給される。二番コンベア27に取り込まれるものは、枝梗付着粒、藁屑および藁屑の中に混在した穀粒などの混合物である。これら枝梗付着粒や藁屑を二番還元物として再処理する。また、シーブ23,24及びストローラック25から漏下しない被処理物(主に藁屑)は、更に後方へ移送されて三番排塵口56から排出される。この中には僅かな穀粒が含まれていることがあり、この量(比率)によって、脱穀装置の選別精度が評価される。
【0039】
(排塵処理室)
扱室11の後端部は連通口35を介して排塵処理室30連通されている。排塵処理室30内には、扱胴10の軸心と略平行な排塵処理胴31が軸装されている。排塵処理室30の周壁のうち揺動選別棚20側(正面に向かって左側)の下部は、後端部に処理物排出口33が形成されるとともに、この排出口33と連通口35との間の部分が受網により形成されている。排塵処理胴31の外周面のうち、処理物の移送方向の初端部(前端部)にはスクリュー羽根体37が設けられ、処理物の移送方向の終端部(後端部)には径方向に沿って外方に突出する羽根体34が設けられ、これらの間には排塵処理歯36が設けられている。
【0040】
排塵処理室30に供給された被処理物は、回転する排塵処理胴31により終端側に移動されつつ解砕処理される過程で、受網から揺動選別棚20上に漏下されるか、又は排塵処理室30の終端閉塞部に至った後に、羽根体34により排出口33を介して揺動選別棚20のストローラック25上に排出される。これら排出処理物は、揺動選別棚20により選別されて穀粒は回収され、藁屑等は機外に排出される。排塵処理室30に供給される被処理物中には、少量ながら枝梗の付着した穀粒が含まれており、この枝梗付着粒および小さな藁屑が受網及び処理物排出口33から揺動選別棚20に落下する。
【0041】
(二番処理室)
排塵処理室30の前側には、二番物を処理して還元するための二番処理室40が設けられている。二番処理室40内には、外周面に間欠螺旋羽根を有する二番処理胴41が排塵処理胴31と同心的かつ直列的に軸装されている。二番処理室40における二番処理胴41の下方は、その終端部を除いて樋状の受板42により包囲されており、その側部上方は開口しており、その開口部は扱網15の側部下方に位置し、扱網15の側部から漏れ出る漏出物は二番物として二番処理室40に供給されるようになっている。また、二番処理室40における二番処理胴41の終端部(前端部)の下方は、二番処理物還元口43として、揺動選別棚20の上流側における二番処理室40側の側部の上方に開口されている。また、二番処理胴41の始端側(後端側)上方には二番コンベア27から供給される二番物の供給口44が開口している。
【0042】
二番処理室40では、二番物が二番処理胴60によって搬送される間に穀粒の分離と枝梗付着粒からの枝梗の除去が行われた後、二番処理物還元口43から揺動選別棚20に落下し、扱室11からの被処理物と合流して再選別される。
【0043】
(吸引排塵ファン)
揺動選別棚20の終端部(後端部)の上方には吸引排塵ファン47の吸塵口44が開口している。吸引排塵ファン47は、排風口46を有するケーシング45により覆われている。図示例では、揺動選別棚20の上方空間の両側壁のうち排塵処理室30と反対側の側壁に、排塵処理室30と対峙するように吸引排塵ファン47が取り付けられ、その取り付け部位に吸塵口44が開口しているが、これらの取り付け位置は図示例に限定されるものではない。
【0044】
(排藁処理装置)
脱穀装置3の後側では、扱室を通り脱穀を終えた穀稈、つまり排藁は排藁搬送装置14に引き継がれ、排藁搬送装置14の終端部から排藁処理装置としてのカッター装置48に排出される。カッター装置48は、上方から落下供給される排藁を一対のロータリーカッター刃49間に通して切断する構造のものである。ロータリーカッター刃49の外部側はフードにより覆われており、またロータリーカッター刃49の前側には、切断した排藁の切断藁屑を後方に落下するように案内するための切藁案内板50が設けられている。切藁案内板50は、上部が上側カッター刃49の下部とほぼ同じ高さに位置しており、下方に至るに従い後側に位置するように後下がりに傾斜し、切藁案内板50の下部は下側カッター刃49の下部より下方に位置している。カッター装置48に代えて他の排藁処理装置を用いることも可能である。
【0045】
(三番排塵口)
脱穀装置3の後側壁55には三番排塵口56が開口されており、揺動選別棚20の後部がこの三番排塵口56に臨むように構成されている。また、三番排塵口56を開閉する三番排塵口シャッタ57が設けられており、例えば圃場の一辺を刈り終えて次辺へ向けて旋回する際に、この三番排塵口シャッタ57を閉じれば、排塵処理室30の処理物排出口33から排出される排塵処理物に含まれる穀粒を、三番排塵口56から排出させずに、揺動選別棚20の第二シーブ24又はストローラック25に供給し、篩い選別により回収することができる。よって、三番ロスの発生を防止して脱穀効率を向上できるようになる。また、排塵処理室30と吸引排塵ファン47の吸塵口44とは、揺動選別棚20を挟んで対峙するように配置されており、三番排塵口シャッタ57を閉めると、排塵処理室30から排出される排塵処理物が、吸引排塵ファン47の吸塵口44側に向かって広範に拡散するため、カギ又などの回収効率が一層向上する。
【0046】
(唐箕送風調節)
唐箕風洞17の送風口65は、上方に位置する天面部67と下方に位置する底面部68との間に開口しており、これら天面部67と底面部68との上下中間に風割66が設けられている。これにより、送風口65は、風割66と天面部67との間の上側風路74と、風割66と底面部68との間の下側風路75とに区画されている。
【0047】
風割66は、送風方向と直交する水平の回動軸66x(図9参照)を回動中心とし、且つ上面69及び下面71,72が送風方向下流側に向かって斜め上向きとなる角度範囲内で回動自在に構成されており、また、風割66の回動軸66xは風割の送風方向中間に位置しており、回動軸66xの上流側及び下流側が上下するように回動するようになっている。風割66の回動軸66xは、その両端部が選別室18の両側壁18Sに軸支されている。さらに、風割66の回動により風割66の水平面に対する傾斜角(以下単に傾斜角ともいう)を最大まで増加させたとき、風割66における唐箕16側の端部が送風口65の底面部68と近接又は接触するように構成されている(図5及び図6参照)。
【0048】
また、天面部67も、送風方向と直交する水平の回動軸67xを回動中心とし、且つ下面が送風方向下流側に向かって斜め上向きとなる角度範囲内で、風割66と同方向に回動するように構成されている。天面部67の回動軸67xは、図示例では天面部67の唐箕16側端部に位置しているが、送風方向中間や、送風方向下流側端部に位置させることもでき、いずれにせよ天面部67の下流側が上下するように回動すれば良い。天面部67の回動軸67xも、その両端部が選別室18の両側壁18Sに軸支されている。
【0049】
このような構造においては、唐箕16から供給される一定量の風の上側風路74及び下側風路75に対する配分比率は、上側風路74及び下側風路75の開口度の比率によって定まる。よって、下側風路75の開口度が減少する方向に、天面部67及び風割66が同じ方向に連動して回動すると、下側風路75の風量は減少し、反対に上側風路74の風量は増加するとともに、下側風路75の風向は風割66の下面の角度変化に応じて変化し、上側風路74の風向は天面部67の角度変化および風割66の下面の角度変化に応じて変化する。一方、下側風路75の開口度が増加する方向に、天面部67及び風割66が同じ方向に連動して回動すると、下側風路75の風量は増加し、反対に上側風路74の風量は減少する。下側風路75の風向は風割66の下面の角度変化に応じて変化し、上側風路74の風向は天面部67の角度変化および風割66の下面の角度変化に応じて変化する。つまり、上側風路74及び下側風路75の風向及び風量を同時に調整できるようになる。
【0050】
(処理量検出センサ)
風割66及び天面部67の傾斜角は処理物量に関係なく固定としても良いが、揺動選別棚20の棚上処理物の量を検出する処理量検出センサ95を設け、この処理量検出センサ95の検出結果に基づき、棚上処理物の量が増加したときに風割66及び天面部67の水平面に対する傾斜角を減少させ、棚上処理物の量が減少したときに風割66及び天面部67の水平面に対する傾斜角を増加させる制御装置(図示略)を設けるのも好ましい。これにより、処理物量に増減があっても、揺動選別棚20上の処理物量検出結果に応じて、風割66及び天面部67の傾斜角が適切に自動調整され、最適な穀粒損失と選別状態を得ることができる。
【0051】
処理量検出センサ95は、公知の接触又は非接触センサを用いることにより構成することができる。図示例では、二番処理室40の受板42における終端側(二番処理物還元口側又は前端側)部分と、刺さり粒回収室11Eの中間隔壁11Kの下端部とがセンサステー95Sにより連結され、このセンサステー95Sにポテンションメータ等の回転量検出装置96が取り付けられるとともに、この回転量検出センサ96の検出軸96xにフロート97が吊り下げ状態で取り付けられており、このフロート97が、揺動選別棚20の移送棚22上を移動する被処理物に接触して、被処理物の移動方向に回転しつつ持ち上がり、その回転量が、移送棚22上を移動する被処理物の層厚として回転量検出装置96により検出されるように構成されている。
【0052】
また、図示例のようにフロート97が回動するタイプの場合、フロート97の回動中心(つまり図示例では検出軸96x)が、二番還元物の流れ又は棚上処理物全体の流れに対して略直角となり、平面視で揺動選別棚20の揺動方向に対して傾斜するように構成するのが好ましい。これにより、棚上処理物の流れ方向と、これに接触するフロート97の回動方向とが一致するか又は近くなるため、フロート97が円滑に動作し、処理物量の変化に対して正確かつ敏感に反応するようになる。
【0053】
この場合、フロート97の作動をより円滑にするために、フロート97における回動中心方向一方側、特に図示例のように移送棚22の移送方向下流側に、フロート97の回動中心に対して略直交する方向(センサフロート97の回動方向と略平行)に延在する寄せ板98を立設するのも好ましい形態である。これにより、移送棚22による揺動作用により棚上処理物の移動方向がずれていくとしても、そのフロート97近傍では寄せ板98により移動方向が規制されるため、棚上処理物の流れ方向と、これに接触するフロート97の回動方向とが略一致し、フロート97がより一層円滑に動作するようになる。
【0054】
また、フロート97の形状は、図示例のように、少なくとも棚上処理物と接触する部分(図示例では棚上処理物が無い非接触状態で、棚上処理物の移動方向上流側の面)が、棚上処理物の摺動方向の中間部ほど張り出す弧状曲面であるのが好ましい。
【0055】
他方、一般に移送棚22上においては処理物量が偏在し、特に二番処理物還元口43の下方近傍における処理物量が最も多くなる。よって、処理量検出センサ95は、二番処理物還元口43の近傍における揺動選別棚20の棚上処理物の量を検出するように構成するのが望ましい。このため、図示例ではフロート97を二番処理物還元口43の近傍に配置している。
【0056】
(シーブ清掃装置)
図5〜図7、及び図10に示すように、本実施形態では、第一シーブ23上を左右方向に往復移動することにより清掃を行う第一清掃体100及び第二清掃体200が、相対的に第一清掃体100が扱胴10の穀稈接触開始側(フィードチェーン13B側)に位置し第二清掃体200が扱胴10の穀稈接触終了側に位置するように、第一シーブ23の左右方向に並設されている。
【0057】
第一清掃体100及び第二清掃体200はシーブ23上を移動して清掃作用を発揮するものであれば、その形状や構造は特に限定されないが、図示例の第一清掃体100及び第二清掃体200は、左右方向に所定の間隔を空けて配置された複数の清掃具80,80,80…を備えるものであり、各清掃具80は図19〜図23に詳細に示すように、前後方向に沿う拡散プレート部81と、第一シーブ23の各シーブ部材23bの上面に接触して付着物を除去するスクレーパ部82とを有するものである。
【0058】
第一清掃体100及び第二清掃体200の各清掃具80,80,80…は、図10に示すように前後の連結部材83,83によって一体的に連結保持され、第一シーブ23に対して左右横方向(シーブ部材23bの長手方向)に往復移動可能に支持されている。また図22に示すように、拡散プレート部81は上下方向に沿う垂直姿勢で立設されており、そして、各プレート81にはシーブ部材23bの断面形状に合わせたガイド穴81hを穿設し、各ガイド穴81hに各シーブ部材23を挿通してスライド案内する構成としている。
【0059】
スクレーパ部82は、上下方向に傾斜するシーブ部材23bの傾斜上面に接触して摺接移動により付着物を除去するものである。本実施形態のスクレレーパ部82は、移動方向に対して所定角度に傾斜する傾斜刃縁82aを拡散プレート部81を挟んで左右対称に有し、平面視で略ハの宇型の傾斜刃縁82a,82aを有する形状となっており、このような形状によって左右の往復動に対する付着物の除去が無理なく確実に行えるようになっている。また、このスクレーパ部82は、正面視で山型の傾斜角を保持すべく昇り傾斜面82s,82s(図19〜図21参照)が設けられ、横方向への移動に伴いその昇り傾斜面82s,82sによって各シーブ部材23b面上の付着物が上方に掬い上げられるようになっている。スクレーパ部82の最突出端部82eは、シーブ部材23bの折り曲げ稜線と合致させた構成としてあり、シーブ部材23bの折り曲げ部に溜まった藁屑や塵埃の除去が容易に行えるようにしている。
【0060】
拡散プレート部81とスクレーパ部82とは別体とすることもできるが、本実施形態のように一体とし、特に合成樹脂材で一体成形した構成とすると、製造容易性、コスト、メンテナンス性の点で優れるため好ましい。図16に示すようにスクレーパ部を省略して拡散プレート部81のみで第一清掃体100及び第二清掃体200の少なくとも一方を構成することもできる。
【0061】
第一清掃体100及び第二清掃体200を駆動するための清掃体駆動装置は適宜設計することができるが、本実施形態では、図17及び図18に示すように、駆動モータ85の回転駆動により、互い違いに引き操作する一対の操作ケーブル86b,86b、往復回動する第一天秤アーム187、第一天秤アーム軸189、往復回動する第一揺動アーム188等の連動機構を介して第一清掃体100を左右横方向に往復動するように構成するとともに、第一天秤アーム187とリンクにより連結された第二天秤アーム287、第二天秤アーム軸289、第一揺動アーム188とリンク300,300により連結された第二揺動アーム288等の連動機構を介して第二清掃体200を左右横方向に往復動するように構成している。
【0062】
すなわち、駆動モータ85を駆動すると、クランクアーム86の回転により、クランクピン86pに対して連結された一対の操作ケーブル86b,86bが互い違いに引き操作され、第一天秤アーム187の往復回動によって第一天秤アーム軸187を回動中心として第一揺動アーム188が左右に往復揺動し、この第一揺動アーム188の長孔181に対して移動自在に挿入された下方突出部89を有する第一清掃体100が左右横方向へ強制的に往復動される。クランクピン86pと操作ケーブル86bとはスプリング86s及びプレート86tを介して連結保持されているため、操作ケーブル86bに無理な加重は掛からない。駆動モータ85は脱穀操作、例えば脱穀クラッチの入り操作に連動して自動で駆動を開始するようにするのが好ましいが、非連動として任意のスイッチにより駆動を開始する構成としても良い。
【0063】
また、第一天秤アーム187には第一天秤アーム軸189を挟んで第一揺動アーム188と反対側に第一連結部185が突出し、第二天秤アーム287においても、第二天秤アーム軸289を挟んで第二揺動アーム288と反対側に第二連結部285が突出しており、第一揺動アーム188と第二揺動アーム288、及び第一連結部185と第二連結部285とがそれぞれリンク300,300によりそれぞれ連結されている。なお、これら清掃体駆動装置のうち、一部(図示例の場合、操作ケーブル86bの先端部、第一及び第二天秤アーム187,287、第一及び第二天秤アーム軸189,289、及び第一及び第二揺動アーム188,288の基部、及びリンク300)を、移送棚22の下方で唐箕風洞17の上方後方部の空間部に設けると、揺動選別棚20部のデッドスペースを有効に利用でき、コンパクトに配置構成することができる。
【0064】
さらに、第一天秤アーム軸189から第一揺動アーム188のリンク300の連結位置までの距離及び第一連結部185のリンク300の連結位置までの距離が等しく、第二天秤アーム軸289から第二揺動アーム288におけるリンク300の連結位置までの距離及び第二連結部285におけるリンク300の連結位置までの距離が等しく、かつ前者w1より後者w2の方が長い構成となっている。その結果、第一天秤アーム187及び第一揺動アーム188の往復揺動がリンク300,300を介して第二天秤アーム287及び第二揺動アーム288にそれぞれ伝達され、この第二揺動アーム288の長孔281に対して移動自在に挿入された下方突出部89を有する第二清掃体200が左右横方向へ強制的に往復動され、この際、第一清掃体100及び第二清掃体200が連動して互いに同方向に往復揺動されるとともに、第一清掃体100の往復揺動速度よりも第二清掃体200の往復揺動速度が速くなる。
【0065】
よって、第一シーブ23上において脱穀処理物が比較的に少量となる(つまり清掃作用が比較的に少なくて足りる)扱胴10の穀稈接触開始側の部位においては、相対的に往復揺動速度の遅い第一清掃体100により清掃及び拡散がなされ、扱胴10の回転方向及び二番還元機構の影響により第一シーブ23上において相対的に脱穀処理物が多量となる(つまり比較的に強力な清掃作用が必要となる)扱胴10の穀稈接触終了側の部位においては、相対的に往復揺動速度の速い第二清掃体200により清掃及び拡散がなされるため、清掃性能を損ねずに、清掃効率を向上することができるとともに、第一シーブ23上の脱穀処理物がより広範囲に拡散して均平化し、第一シーブ23の目詰まり低減、第一シーブ23の篩選別効率の向上、及びこれらによる全体としての選別性能の向上を図ることができる。さらに、本実施形態の場合、清掃対象の脱穀処理物が相対的に少量となる第一清掃体100のストロークが相対的に短く、清掃対象の脱穀処理物が相対的に多量となる第二清掃体200のストロークが相対的に長くなるため、清掃効率及び第一シーブ23上の脱穀処理物の拡散効率がより一層向上するようになる。
【0066】
また、本実施形態では、第一清掃体100における第二清掃体200側と反対側の側部拡散プレート部81sに、第二清掃体200側と反対側に突出してシーブ23表面の付着物を除去するスクレーパ部82を設け、第二清掃体200における第一清掃体100側と反対側の側部拡散プレート部81sに、第一清掃体100側と反対側に突出してシーブ23表面の付着物を除去するスクレーパ部82を設けているため、側部拡散プレート部81sによって第一シーブ23上のより広範囲の脱穀処理物を拡散できるものでありながら、側部拡散プレート部81sの左右方向外側において第一シーブ23上に残留する藁屑をスクレーパ部82により掻き出すことができる。よって、藁屑が側部拡散プレート部81sの左右方向外側に堆積固化し難くなり、藁屑の堆積固化物により清掃体100,200の往復揺動が阻害されたり、篩選別能力が低下したりするといった事態を防止できるようになる。この観点から、図15に示すように、側部拡散プレート部81sの左右方向外側にのみスクレーパ部82を設け、側部拡散プレート部81sの左右方向内側、及び他の拡散プレート部81にはスクレーパ部82を設けない構成とするのも好ましい。この場合、清掃効果及び拡散効果を過度に損ねることなく、ろ過面積を大きく確保することができ、ロスを少なくすることができる。
【0067】
第一清掃体100及び第二清掃体200の往復揺動のストロークはそれぞれ適宜定めることができるが、図16に示すように、自身の拡散プレート部81の配置間隔d1,d2が自身の往復揺動のストロークs1,s2よりも小さくなる(d1<s1、d2<s2)ように構成すると、隣接する拡散プレート部81の往復揺動範囲が隣接又は一部重なるため、隣接する拡散プレート部81の往復揺動範囲の間に脱穀処理物が滞留し難くなり、清掃効率及び第一シーブ23上の脱穀処理物の拡散効率がより一層向上するようになるため好ましい。
【0068】
拡散プレート部81の配置間隔は第一清掃体100と第二清掃体200とで同じにする他、図16に示すように異ならしめることもでき、特に清掃対象の脱穀処理物が相対的に少量となる第一清掃体100の拡散プレート部81の配置間隔d1よりも清掃対象の脱穀処理物が相対的に多量となる第二清掃体200における拡散プレート部81の配置間隔d2が狭い構成とすると、清掃効率及び第一シーブ23上の脱穀処理物の拡散効率がより一層向上するようになるため好ましい。
【0069】
また、第一清掃体100及び第二清掃体200の往復揺動の周期は他の機構と同期させずに独立としても良いが、同期させることもでき、特に第一シーブ23の後方移動と第二清掃体200の第一清掃体100側への移動とを同期させると、第一シーブ23の前後揺動によりシーブ23上の脱穀処理物を後方移送する時に合わせて、第二清掃体200により第一シーブ23上の脱穀処理物を多い方から少ない方へ移送することができるので、第一シーブ23上の処理物の拡散をより効率的に行うことができるようになる。
【0070】
他方、本実施形態では、第二シーブ24においても、第一シーブ23と同様の第一清掃体100及び第二清掃体200が設けられており、第二シーブ24における第一清掃体100は、第一天秤アーム487の往復回動による第一揺動アーム488の往復揺動により左右方向に往復揺動されるようになっており、第二シーブ24における第二清掃体200は、第二天秤アーム587の往復回動による第二揺動アーム588の往復揺動により左右方向に往復揺動されるようになっている。そして、第二シーブ24の第一清掃体100を駆動するための第一天秤アーム487と、第一シーブ23の第一清掃体100を駆動するための第二天秤アーム187とは第一平行リンク601,601により連結され、第二シーブ24の第二清掃体200を駆動するための第二天秤アーム587と、第一シーブ23の第二清掃体200を駆動するための第二天秤アーム287とは第二平行リンク602,602により連結されている。その結果、第二シーブ24の第一清掃体100及び第二清掃体200は、第一シーブ23の第一清掃体100及び第二清掃体200と連動して同方向に往復揺動される(クロスリンクにより連結することもでき、その場合はリンクされている前後の清掃体が反対方向に往復揺動される)ようになっている。したがって、第二シーブ24においても第一シーブ23と同様の作用効果が発揮される。
【0071】
(その他)
(A) 上記例は第一シーブ23及び第二シーブ24の双方に、第一清掃体100及び第二清掃体200を設けているが、図15及び図16に示す例のように、いずれか一方のシーブ23のみ第一清掃体100及び第二清掃体200を設けて、他方のシーブ24には清掃具を設けないか又は単一の清掃具を設ける等しても良い。
【0072】
(B) 第一清掃体100及び第二清掃体200の駆動装置を個別独立に構成することもできる。また、第一シーブ23の清掃体100,200の駆動装置と第二シーブ24の清掃体100,200の駆動装置を個別独立に構成することもできる。さらに、上記例の駆動装置では、第一及び第二清掃体100,200の揺動が連続的になされるが間欠的になされるように構成してもよりでも良い。
【0073】
(C) 上記例では、第一清掃体100及び第二清掃体200が互いに同方向に往復揺動される構成となっているが、図24に示すように第一清掃体100と第二清掃体200とをクロスリンク310,310で連結する等により、第一清掃体100及び第二清掃体200が互いに左右反対方向に往復作動する構成とすることもできる。この場合、発生する振動を互いに打ち消しあい騒音や振動を低減することができ、箭い選別をバランスよく良好に行うことができるという利点がある。
【0074】
(D) 上記例の脱穀装置3は二番処理室40を設けた例であるが、二番処理室40等の二番還元機構を有しない形態を採用することもできる。
【0075】
(E) 図25〜図29に示すように、脱穀装置3における少なくとも扱室11を上下に二分割し、装置下側部分11Bに対して装置上側部分11Tを扱室11側方の回動軸11xを中心として上下回動可能とし、装置上側部分11Tに扱胴10を軸支した構成とするとともに、装置上側部分11T内を前後に仕切る中間隔壁11Kを装置上側部分11Tに設け、中間隔壁11Kより前側の部分で扱室11を構成し、中間隔壁11Kと後隔壁11Lとの間を刺さり粒回収室11Eとした構成を採用することもできる。これにより、装置上側部分11Tを上方に回動させると、これに伴い扱胴10及び中間隔壁11Kも上方に回動して内部が開放されるため、メンテナンス性に優れるようになる。
【0076】
なお、この形態では、図示例のように、装置下側部分11Bにおける刺さり粒回収室11E部分に、傾斜扱歯10c外周に沿う形状の穀稈支持体11Mを設け、刺さり粒回収室11E下方において穀稈を扱胴10側に向かって支持する構成とすると、刺さり粒回収室11Eの傾斜扱歯10cで刺さり粒をたたき落とす作用が促進されるため好ましい。さらに、図示例のように、中間隔壁11Kの前方下部において扱網15終端部に貫通口15Hを設け、その後方に上述の穀稈支持体11Mを設けると、扱室11で発生した穀粒、藁くずの全て又は大部分は貫通口15Hから揺動選別棚20上に排出され、刺さり粒回収室11Eに藁くずが送り込まれ難くなり、刺さり粒回収室11Eにおける刺さり粒のたたき落とし効率が向上するため好ましい。
【産業上の利用可能性】
【0077】
本発明は、コンバイン等の脱穀装置に適用できるものである。
【符号の説明】
【0078】
1…機体フレーム、2…走行装置、3…脱穀装置、4…刈取装置、5…グレンタンク、6…操縦部、8…供給搬送装置、9…フィードチェーン部、10…扱胴、11…扱室、11i…扱ぎ口、11S…点検口、11Z…蓋体、12…供給搬送装置、13A…挟持杆、13B…フィードチェーン、14…排藁搬送装置、15…扱網、15U…扱網固定部材、15W…湾曲部、16…唐箕、17…唐箕風洞、18…選別室、19A…一番棚板、19B…二番棚板、20…揺動選別棚、21…揺動選別装置、22…移送棚、23…第一シーブ、23b…シーブ部材、24…第二シーブ、25…ストローラック、26…一番コンベア、27…二番コンベア、28…選別網、30…排塵処理室、31…処理胴、40…二番処理室、43…二番処理物還元口、44…吸塵口、45…ケーシング、47…吸引排塵ファン、48…カッター装置、49…カッター刃、50…切藁案内板、55…後側壁、56…三番排塵口、65…送風口、66…風割、67…天面部、68…底面部、69…上面、70…頂点、71…下側前部傾斜面、72…下側後部傾斜面、74…上側風路、75…下側風路、80…清掃具、81h…ガイド穴、88h…係合部、89…突出部、95…処理量検出センサ、98…寄せ板、100…第一清掃体、200…第二清掃体。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
扱胴(10)を内蔵する扱室(11)と、この扱室(11)から漏下する脱穀処理物の揺動選別を行うべく前後方向に往復揺動するシーブ(23)とを備え、◇
前記シーブ(23)上を左右方向に往復揺動する第一清掃体(100)及び第二清掃体(200)を、第一清掃体(100)が前記扱室(11)の扱ぎ口(11i)側に位置し且つ第二清掃体(200)が前記扱室(11)の反扱ぎ口(11i)側に位置するように前記シーブ(23)の左右方向に並設するとともに、前記第一清掃体(100)の往復揺動速度よりも第二清掃体(200)の往復揺動速度を高速に設定したことを特徴とする脱穀装置。
【請求項2】
前記シーブ(23)上における反扱ぎ口(11i)側の部位に二番物を供給する二番還元機構を備えたことを特徴とする請求項1記載の脱穀装置。
【請求項3】
前記第一清掃体(100)及び第二清掃体(200)が連動して互いに同方向に往復揺動する構成としたことを特徴とする請求項1又は2記載の脱穀装置。
【請求項4】
前記第一清掃体(100)及び第二清掃体(200)が連動して互いに反対方向に往復揺動する構成としたことを特徴とする請求項1又は2記載の脱穀装置。
【請求項5】
前記第一清掃体(100)のストロークよりも第二清掃体(200)のストロークを長く設定したことを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の脱穀装置。
【請求項6】
前記第一清掃体(100)及び第二清掃体(200)の夫々には、扱ぎ口(11i)側と反扱ぎ口(11i)側とに前後方向に沿う側部拡散プレート部(81s)を備え、前記第一清掃体(100)に備える側部拡散プレート部(81s)に、扱ぎ口(11i)側に突出してシーブ(23)表面の付着物を除去するスクレーパ部(82)を設け、前記第二清掃体(200)に備える側部拡散プレート部(81s)に、反扱ぎ口(11i)側に突出してシーブ(23)表面の付着物を除去するスクレーパ部(82)を設けたことを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の脱穀装置。
【請求項7】
前記第一清掃体(100)及び第二清掃体(200)の各々が、前後方向に沿う拡散プレート部(81)を左右方向に間隔を空けて複数有する構成とするとともに、前記第一清掃体(100)における拡散プレート部(81)の配置間隔(d1)よりも第二清掃体(200)における拡散プレート部(81)の配置間隔(d2)が狭く、かつ前記第一清掃体(100)及び第二清掃体(200)の各々は自身の拡散プレート部(81)の配置間隔(d1,d2)が自身の往復揺動のストローク(s1,s2)よりも小さい構成としたことを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の脱穀装置。
【請求項8】
前記シーブ(23)の後方への揺動と前記第二清掃体(200)の第一清掃体(100)側への揺動とを同期させたことを特徴とする請求項1記載の脱穀装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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