説明

脱穀装置

【課題】処理室の処理効率を向上させた脱穀装置を提供する。
【解決手段】扱胴16は、扱室15内において、回転軸17を中心として回転する。穂切れ処理装置29は、扱胴16の回転軸17と略平行な回転軸32を中心として回転する処理胴30を有し、扱胴16の回転により発生した被処理物が投入される。選別装置は、穂切れ処理装置29で処理された被処理物が投入され、再処理が不要な一番物と、再処理が必要な二番物と、を選別する。二番還元コンベア46は、選別装置で選別された二番物を、穂切れ処理装置29の上方まで搬送する。二番案内通路48は、二番還元コンベア46の放出口47から放出された二番物を、処理胴30の回転軸32に沿った方向に案内しつつ穂切れ処理装置29に投入する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、脱穀装置に関する。詳細には、選別装置で選別された二番物を処理装置まで還元するための構成に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、扱室に配置された扱胴と、この扱胴と略平行に配設された処理室と、を備えた構成の脱穀装置を開示している。特許文献1が開示する脱穀装置は、扱室内で発生した被処理物が、扱胴の回転によって処理室に投入され粉砕処理される構成である。
【0003】
また、特許文献1は、選別機構で選別された二番穀粒を、スクリューコンベア式の揚穀筒を介して処理室の一端に戻す構成を開示している。このように二番穀粒を処理室に戻すことにより、当該二番穀粒を、処理胴の回転によって再処理することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2002−112618号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1の構成は、二番穀粒を、スクリューコンベアによって処理室の一端に戻しているので、当該処理室の端部に二番穀粒が集中してしまうという問題がある。このように特許文献1の構成では、処理室の一部に二番穀粒が集中してしまうため、当該処理室全体を効率良く利用することができていなかった。
【0006】
本発明は以上の事情に鑑みてされたものであり、その主要な目的は、処理室の処理効率を向上させた脱穀装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段及び効果】
【0007】
本発明の解決しようとする課題は以上の如くであり、次にこの課題を解決するための手段とその効果を説明する。
【0008】
本発明の観点によれば、以下の構成の脱穀装置が提供される。即ち、この脱穀装置は、扱胴と、処理装置と、選別装置と、二番還元機構と、二番案内通路と、を備える。前記扱胴は、扱室内において、回転軸を中心として回転する。前記処理装置は、前記扱胴の回転軸と略平行な回転軸を中心として回転する処理胴を有し、前記扱胴の回転により発生した被処理物が投入される。前記選別装置は、前記処理装置で処理された被処理物が投入され、再処理が不要な一番物と、再処理が必要な二番物と、を選別する。前記二番還元機構は、前記選別装置で選別された前記二番物を、前記処理装置の上方まで搬送する。前記二番案内通路は、前記二番還元機構の放出口から放出された前記二番物を、前記処理胴の回転軸に沿った方向に案内しつつ前記処理装置に投入する。
【0009】
このように二番案内通路を設けたことにより、二番物還元機構から放出された二番物を、処理胴の回転軸と平行な方向に分散させて処理装置へと投入することができる。これにより、処理装置を軸方向で均一に利用できるので、当該処理装置の処理効率を向上させることができる。
【0010】
上記の脱穀装置は、以下のように構成されることが好ましい。即ち、この脱穀装置は、前記扱胴で発生した被処理物を前記処理装置に向けて案内する被処理物案内板を備える。前記処理胴の回転軸方向で見たときに、前記二番還元機構の放出口は、前記被処理物案内板を挟んで前記扱胴の反対側に配置されている。
【0011】
即ち、被処理物案内板は二番還元機構の放出口と扱胴の間に配置されているので、放出口から放出された二番物が扱胴側へ飛散してしまうことを防止できる。また、被処理物案内板は、被処理物を処理装置に向けて案内できるように配置されているので、当該被処理物案内板に衝突した二番物を、処理装置へと案内することができる。
【0012】
上記の脱穀装置は、以下のように構成されることが好ましい。即ち、前記被処理物案内板の、前記放出口側を向く面には、当該被処理物案内板に略直交する二番物調整板が、前記処理胴の回転軸と略平行な方向で複数並べて配置されている。少なくとも何れか1つの二番物調整板は、前記処理胴の回転軸と平行な方向に対して斜めに配置されている。
【0013】
このように、処理胴の回転軸に対して斜めに配置された二番物調整板によって、被処理物案内板によって案内された二番物が落下する位置を、処理胴の回転軸方向で調整することができる。これにより、処理胴を回転軸方向で効率的に利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の一実施形態に係る脱穀装置の全体的な構成を示す側面図。
【図2】脱穀装置の内部を示す側面断面図。
【図3】脱穀装置の正面断面図。
【図4】脱穀装置の平面断面図。
【図5】扱歯の斜視図。
【図6】穂切れ処理装置及び二番案内通路の様子を示す側面断面図。
【発明を実施するための形態】
【0015】
次に、図面を参照して本発明の実施の形態を説明する。図1から図4に示すように、脱穀装置10の側面には、穀稈搬送機構11が配置されている。この穀稈搬送機構11は、穀稈搬送チェーン12と、押圧部材13(図3)と、を主に備えている。
【0016】
穀稈搬送チェーン12は、図1に示すように、無端環状に構成され、スプロケットの回転によって循環駆動されるように構成されている。押圧部材13は、図3に示すように、穀稈搬送チェーン12の上面に対して押圧されるように構成されている。これにより、図3に示すように、穀稈14の根元部分を、穀稈搬送チェーン12の上面と押圧部材13との間に挟み込んで保持することができる。そして、この状態で穀稈搬送チェーン12を循環駆動することにより、前記穀稈14を所定方向に搬送する構成である。なお以下の説明で、穀稈搬送機構11によって穀稈が搬送される方向を、単に搬送方向と呼ぶ。
【0017】
脱穀装置10内には、穀稈の脱穀を行う空間である扱室15が形成されている。扱室15内には、回転することにより脱穀を行う扱胴16が配置されている。穀稈14が穀稈搬送機構11によって搬送されることにより、当該穀稈14の穂先14aは、扱室15内を通過する。このとき、回転する扱胴16によって、穀稈14の脱穀が行われる。なお、図4に示すように、穀稈搬送チェーン12は、平面視で扱胴16の回転軸17と略平行に配設されている。従って、穀稈14は、扱胴16の回転軸17に沿うようにして搬送される。
【0018】
扱胴16による脱穀が完了した穀稈(排藁)は、穀稈搬送機構11の下流側端部において、排藁搬送機構18(図1及び図4)に受け渡される。この排藁搬送機構18は、図4に示すように、排藁搬送チェーン19と、係止搬送ベルト20と、を並列して設けた構成である。排藁搬送チェーン19は、無端環状のチェーンとして構成され、循環駆動されることにより、その下面で排藁の根元部分を搬送するように構成されている。係止搬送ベルト20は、一定間隔でタイン(図略)が配置された無端環状ベルトであり、当該係止搬送ベルト20を循環駆動することにより、穀稈の穂先部分をタインによって係止しつつ搬送する構成である。
【0019】
図1に示すように、排藁搬送機構18の下方には、排藁処理部21が配置されている。この排藁処理部21は、排藁を細かく切断するための排藁カッター、切断された排藁を機外に排出するための拡散装置などを備えている。排藁搬送機構18によって搬送される排藁は、排藁処理部21に順次投入され、細かく裁断された後、圃場に均一に放出される。
【0020】
次に、穀稈を脱穀するための構成について詳しく説明する。
【0021】
扱胴16は、金属板にて略八角形柱状の中空状筒体として構成されており、その回転軸17が装置前後方向に沿って略水平に配置されている。扱胴16の外周には、複数の扱歯22が外向きに突出するように設けられている。
【0022】
図2等に示すように、扱歯22は、扱胴16の回転軸17と平行な方向に並んで複数設けられている。図5に示すように、各扱歯22は、当該扱歯22同士が並ぶ方向に対して平行な平面を構成するように、扁平な形状に形成されている。また図5に示すように、扱歯22の先端部は、先端に向かって幅が狭まる略V字状に構成されている。従って、隣接する扱歯22同士の間は、先端に向かって幅が広がるV型溝23が形成されている。また、V型溝23の奥には、丸型(又は多角形)の抜き孔24が、前記V型溝23に連通するように形成されている。
【0023】
穀稈搬送機構11によって扱室15内を搬送される穀稈14は、扱歯22と扱歯22の間の部分(V型溝23及び抜き孔24)に嵌まり込む。この状態で扱胴16が回転することにより、穀稈14は、穂先14aに向けて扱かれる。これにより、穀稈14から穂の部分のみが取られる。なお、このように穀稈14から取られた穂の部分を、穂切れと称する。
【0024】
なお、本実施形態の扱胴16は、上扱ぎ式に回転するように構成されている。即ち、図3に示すように、穀稈14は上方に向けて扱かれ、当該穀稈14の穂先14aは、扱胴16の上方を通過するように構成されている。
【0025】
図2に示すように、扱室15の搬送方向上流側の端部には、供給口25が形成されている。穀稈搬送機構11によって搬送される穀稈14の穂先14aは、供給口25を介して、扱室15内に導入される。なお図2に示すように、搬送方向で供給口25よりも上流側には、当該供給口25の下縁部に接続する穂先案内プレート26が配置されている。穀稈14の穂先14aの部分は、穂先案内プレート26の上面によって供給口25まで案内される。この構成により、穀稈14の穂先14aを、扱室15に対して適切に供給することができる。
【0026】
また本実施形態の脱穀装置10には、前記供給口25を扱室15の内側から塞ぐ逆流防止部材50が設けられている。このように、供給口25を逆流防止部材50によって塞ぐことにより、供給口25を介して扱室15の外側に穂切れ等が飛び出すことを防ぎ、脱穀装置10の効率を向上させることができる。なお、この逆流防止部材50はゴム板から構成されているので、穀稈14の穂先14aは、逆流防止部材50を押し退けるようにして進むことができる。
【0027】
また本実施形態では、図3等に示すように、穀稈搬送機構11と扱胴16との間に、穀稈押さえ部材28が配置されている。穀稈押さえ部材28は、穀稈14の搬送方向に略沿って配置された丸パイプである。この穀稈押さえ部材28は、図3に示すように、穀稈搬送機構11と扱胴16の間の穀稈14に対して、上方から接触するように配置されている。これにより、穀稈14を扱胴16に対して押さえ付けることができるので、当該穀稈14が扱胴16から浮き上がることを防止し、脱穀を確実に行うことができる。
【0028】
次に、扱胴16の回転によって穀稈14から取り外された穂先(穂切れ)の処理について詳しく説明する。なお、扱室15内においては、扱胴16の回転によって、穂切れの他にも、穀粒や藁屑等が発生する。これらの混合物のことを、以下、被処理物と称する。
【0029】
扱胴16の回転により発生した被処理物は、当該扱胴16の回転により、扱胴16の回転方向下流側に向けて放出される。扱室15内において、被処理物の落下位置には、穂切れ処理装置29が配置されている。扱胴16から放出された被処理物は、穂切れ処理装置29に投入され、当該穂切れ処理装置29で処理されて単粒化(穀粒を枝梗から外すこと)される。
【0030】
穂切れ処理装置29は、図3及び図4に示すように、処理胴30と、受網31と、を備えている。
【0031】
処理胴30は、略四角筒状に形成されるとともに、その軸線を回転軸32として回転駆動されるように構成されている。処理胴30の回転軸32は、扱胴16の回転軸17と略平行になるように配置されている。なお本実施形態では、図3に矢印で示すように、扱胴16と処理胴30は同じ方向に回転駆動される。この処理胴30は、外向きに突出する複数の処理歯33を有している。処理歯33は、処理胴30の回転軸32と平行な方向に並んで配置されている。
【0032】
受網31は、処理胴30の下半分を覆うように設けられている。図3に示すように、受網31は、処理胴30の軸線方向で見たときに、回転する処理歯33の先端の軌跡に沿って形成されている。
【0033】
この構成で、扱胴16から穂切れ処理装置29に導入された被処理物は、回転する処理歯33と、受網31と、の間で揉み解し作用を受け、単粒化が促進される。脱粒された穀粒は、受網31を通って、下方に落下する。また、受網31の終端には、切歯49が形成されている。この切歯49は、処理胴30の軸線方向に並んで複数形成されている。そして、処理胴30が回転することにより、切歯49同士の間を、処理歯33が通過するように構成されている。これにより、穂切れ処理装置29に投入された藁屑等が細かく裁断される。細かく裁断された藁屑は、受網31を通って下方に落下する。
【0034】
なお、処理胴30の回転軸32は、扱胴16の回転軸17よりも低い位置となるように配置されている。これにより、扱胴16から落下する被処理物を、穂切れ処理装置29で確実に受けとめることができる。
【0035】
また、扱胴16と処理胴30との間には、仕切板34が配置されている。この仕切板34は、無孔の金属板を折り曲げて形成されている。この仕切板34の下端部は、受網31の終端に近接して配置されている。このように仕切板34を設けることにより、穂切れ処理装置29内の被処理物が、処理胴30の回転の勢いによって扱胴16側に飛び出してしまうことを防止できる。これにより、穂切れ処理装置29の処理効率を向上させることができる。
【0036】
また、処理胴30よりも扱胴16の回転方向上流側であって、処理胴30の上方には、被処理物案内板35が配置されている。この被処理物案内板35は、扱胴16から放出された被処理物が衝突する位置に配置されている。従って、扱胴16で発生した被処理物は、当該扱胴16の回転の勢いによって当該扱胴の回転方向下流側に放出されたのち、被処理物案内板35に衝突する。
【0037】
被処理物案内板35は、扱胴16側の面を、斜め下方に向けて配置されている。従って、扱胴16から放出された被処理物は、被処理物案内板35の斜め下方を向いた面に衝突して、当該被処理物案内板35の下端部が向く方向(斜め下方)に向けて案内される。そして、被処理物案内板35は、扱胴16側を向いた面(被処理物を案内する側の面)が、仕切板34の上方を通過するように配置されている。このように被処理物案内板35が配置されているので、扱胴16か放出された被処理物を、被処理物案内板35によって穂切れ処理装置29の処理胴30まで案内することができる。
【0038】
また、被処理物案内板35には、扱胴16側を向く面(被処理物を案内する側の面)に、複数の調整板56が取り付けられている。この調整板56は、被処理物案内板35の扱胴16側を向く面から略直交する方向に突出するように設けられている。また、複数の調整板56は、処理胴30の回転軸32に平行な方向(図4の左右方向)に並んで配置されている。更に、各調整板56は、処理胴30の回転軸32に平行な方向に対して、斜めになるように配置されている。
【0039】
以上の構成で、扱胴16から飛び出した被処理物は、被処理物案内板35に衝突した際に、調整板56によって、処理胴30の回転軸32方向に対して斜め方向に誘導されつつ、穂切れ処理装置29へと導入される。このように、調整板56によって被処理物を誘導することにより、当該被処理物が穂切れ処理装置29に投入される位置を、処理胴30の回転軸32方向である程度調整することができる。これにより、処理胴30の特定箇所に被処理物がかたまって供給されてしまうことを防ぎ、処理胴30に供給される被処理物の軸方向の分布を均一にするように調整することができる。従って、穂切れ処理装置29を、処理胴30の回転軸32方向で有効に利用することができる。
【0040】
次に、選別装置36について説明する。
【0041】
選別装置36は、扱胴16及び穂切れ処理装置29の下方に配置されている。前述のように、扱胴16で発生した被処理物は、穂切れ処理装置29で処理されて、受網31を通って落下する。受網31から落下する落下物(穀粒、藁屑、穂切れなどの混合物)を、以下の説明では被選別物と称する。受網31から落下した被選別物は、選別装置36に投入される。
【0042】
選別装置36は、図2に示すように、揺動選別部37と、風選別部38とを備えている。
【0043】
揺動選別部37は、チャフシーブ39を備えている。穂切れ処理装置29の受網31から落下した被選別物は、まずチャフシーブ39によって受けとめられる。チャフシーブ39は、装置の略左右方向に横架された複数のチャフフィン40を、穀稈14の搬送方向に複数並べて配置したものである。揺動選別部37は、チャフシーブ39を、搬送方向で往復揺動可能に構成されている。即ち、チャフシーブ39を往復揺動させることで、穀粒等の重くて小さい被選別物はチャフフィン40の間を通って下に落ち、藁屑などの軽くて大きい被選別物はチャフフィン40に引っ掛かって残る。
【0044】
各チャフフィン40は、その上面が、搬送方向で斜め上流側を向くようにして配置されている。これにより、チャフシーブ39全体を往復揺動させることで、被選別物が揺動選別されながら搬送方向下流側に向けて搬送されていく。チャフシーブ39の後端に達するまでの間に大部分の穀粒は落下し、チャフシーブ39の上には、穂切れや藁屑のみが残る。
【0045】
次に風選別部38について説明する。この風選別部38は、唐箕ファン41と、グレンシーブ42と、を備えている。
【0046】
グレンシーブ42は網目状のプレス、又はクリンプ網として構成されており、チャフシーブ39の下方に配置される。またグレンシーブ42の下方には、スクリューコンベアとして構成された一番コンベア43が配置されている。前記チャフシーブ39の粗選別により、当該チャフシーブ39から落下した重くて小さい被選別物(穀粒等)は、グレンシーブ42の上に落下する。
【0047】
唐箕ファン41は、搬送方向下流向きの選別風を発生させ、当該選別風をグレンシーブ42に対して下側から当てるように構成されている。
【0048】
以上の構成で、グレンシーブ42上に落下した被選別物に対して、唐箕ファン41が生起する選別風が当てられる。そして、この選別風にかかわらず略垂直に落下する比重の重い物、即ち穀粒は一番物と呼ばれる。一番物は一番コンベア43に導入され、それ以外の比重の軽いものは搬送方向下流側に向けて吹き飛ばされる。
【0049】
一番コンベア43に導入された一番物(穀粒)は、当該一番コンベア43によって搬送され、例えば図略のグレンタンクに貯蔵される。以上により、被選別物から穀粒を選別して取り出すことができる。
【0050】
チャフシーブ39及びグレンシーブ42の下流側端部下方には、スクリューコンベアとして構成された二番コンベア44が配置されている。
【0051】
チャフシーブ39の上に残った穂切れ、藁屑等は、当該チャフシーブ39の往復揺動により搬送方向下流側に向けて搬送され、二番コンベア44に落下する。また、グレンシーブ42に落下した被処理物のうち、唐箕ファン41の選別風により吹き飛ばされた穂切れ、藁屑等も、二番コンベア44に落下する。風選別部38は、二番コンベア44に落下する被選別物に対して搬送方向下流側に向けて上向きの風を当てる送風ファン45を有している。
【0052】
二番コンベア44に落下する被選別物のうち、穀粒の付いた穂切れ等は比較的重いので、送風ファン45の風にもかかわらず落下して二番コンベア44に導入される。一方、穀粒の付いていない藁屑等は、送風ファン45の風によって吹き飛ばされ、図略の藁出口から装置の外に排出される。
【0053】
穀粒の付いた穂切れ等は、再処理を施して穀粒を取り出す余地があるので、回収する価値のあるものである。このように再処理の対象とするものを、二番物と称する。風選別部38で選別されて二番コンベア44に導入された二番物は、当該二番コンベア44によって搬送され、二番還元コンベア(二番還元機構)46の端部に供給される。
【0054】
二番還元コンベア46は、略上下方向に配設されたスクリューコンベアであり、前記二番物を、穂切れ処理装置29よりも上方まで搬送するように構成されている。二番還元コンベア46によって搬送された二番物は、当該二番還元コンベア46の放出口47から放出される。二番還元コンベア46から放出された二番物は、穂切れ処理装置29に投入される。以上の構成により、選別装置36で選別された二番物を、穂切れ処理装置29によって再処理することができる。
【0055】
次に、本実施形態の特徴的な構成について説明する。
【0056】
前述のように、従来の脱穀装置では、選別装置で選別された二番穀粒を、スクリューコンベアによって処理装置の一端に戻していた。このため、処理装置に戻された二番穀粒が当該処理装置の端部に集中してしまい、処理装置全体を効率良く利用できていないという課題があった。
【0057】
そこで本実施形態の脱穀装置10は、二番還元コンベア46の放出口47から放出された二番物を、処理胴30の回転軸32と平行な方向に案内しつつ穂切れ処理装置29に投入する二番案内通路48を設けたものである。
【0058】
以下、詳しく説明する。図3、図4、及び図6に示すように、二番案内通路48は、底面70と、側壁71と、天井72と、によって囲まれた空間として構成されている(なお、図4においては、二番案内通路48の内部を示すために天井72は省略されている)。図4及び図6に示すように、二番案内通路48の長手方向の一端には、二番還元コンベア46の放出口47が接続されている。この構成により、二番還元コンベア46によって搬送されてきた二番物は、二番案内通路48内に放出される。
【0059】
図6に示すように、二番案内通路48の長手方向は、水平面に対して斜めになるように配置されている。前記放出口47は、斜めに配置された二番案内通路48の高い方の端部に接続されている。従って、放出口47から放出された二番物は、重力の作用により、二番案内通路48の長手方向に沿って低い方へと自然に案内される。図4に示すように、平面視において、二番案内通路48の長手方向は、処理胴30の回転軸32に略沿うように配置されている。従って、放出口47から放出された二番物は、二番案内通路48によって、処理胴30の回転軸32に略沿うようにして案内される。
【0060】
図3に示すように、処理胴30の回転軸32と直交する断面において、二番案内通路48の底面70は、一側の端部は側壁71によって閉鎖されており、他側の端部は開放されている。なお以下の説明で、底面70の開放されている側の端部を開放端、側壁71で閉鎖されている側の端部を閉鎖端と呼ぶ。図3に示すように、処理胴30の回転軸32と直交する断面において、底面70は、開放端が閉鎖端よりも低くなるように水平面に対して斜めに配置されている。以上の構成で、二番案内通路48内を案内される二番物は、底面70の開放端から下方に落下することができる。
【0061】
図3に示すように、二番案内通路48は、穂切れ処理装置29よりも高い位置に配置されている。そして、処理胴30の回転軸32に直交する断面(図3)において、二番案内通路48の底面70の開放端は、穂切れ処理装置29の受網31の始端(処理胴30の回転方向で上流側の端部)の上方に位置している。また、前記底面70は、その開放端が処理胴30を向くように配置されている。以上の構成で、底面70の開放端から落下する二番物は、穂切れ処理装置29内へと投入される。
【0062】
図4に示すように、平面視において、二番案内通路48は、放出口47から遠ざかるにつれて底面70の幅が細くなるように構成されている。また前述のように、底面70は、開放端が閉鎖端よりも低くなるように斜めに配置されている。従って、二番案内通路48内を案内される二番物は、遅かれ早かれ底面70の開放端から落下することになる。以上の構成により、放出口47から放出された二番物は、二番案内通路48内を処理胴30の回転軸32に沿った方向に案内されつつ、底面70の開放側端部から落下して穂切れ処理装置29内へと投入される。
【0063】
放出口47から放出される二番物は、その速度や方向が様々であるから、ある二番物は放出口47に近い位置で落下し、ある二番物は放出口47から遠い位置で落下することになる。従って、二番物が穂切れ処理装置29へと投入される位置は、処理胴30の回転軸32方向で適度に分散することになる。
【0064】
このように、二番案内通路48を処理胴30の回転軸32に略沿うように設けたことで、二番還元コンベア46の放出口47から放出された二番物を、処理胴30の回転軸32方向で分散させたうえで、穂切れ処理装置29に供給することができる。これにより、穂切れ処理装置29の特定の位置に二番物がかたまって供給されることを防ぎ、当該穂切れ処理装置29を全長にわたって有効利用することができる。
【0065】
なお本実施形態においては、図4に示すように、二番還元コンベア46の放出口47は、穀稈14の搬送方向で下流側から上流側に向けて二番物を放出するように構成されている。また、二番案内通路48の底面70は、穀稈14の搬送方向で下流側から上流側に向かうにつれて幅が狭くなっている。そして、この底面70は、穀稈14の搬送方向で処理胴30の上流側端部までは形成されていない(即ち、底面70は途中で断絶している)。従って、本実施形態の脱穀装置10において、二番案内通路48は、穂切れ処理装置29の上流側には二番物をあまり供給しないように構成されている。
【0066】
これは以下のような理由による。即ち、扱胴16の上流側では大量の被処理物が発生するので、穂切れ処理装置29は、その上流側ほど被処理物を大量に処理しなければならない。このため、穂切れ処理装置29の上流側に二番物を供給してしまうと、穂切れ処理装置29の負荷が過大になるおそれがある。逆に、穀稈14の搬送方向下流側では、被処理物の発生量が少なくなるので、穂切れ処理装置29の負荷も軽い。
【0067】
そこで、穂切れ処理装置29の処理負荷が軽い箇所(穀稈14の搬送方向下流側)に対して二番物を分散させて供給するように、二番案内通路48を構成したものである。これにより、穂切れ処理装置29を、処理胴30の回転軸32方向で更に有効に利用することができる。
【0068】
なお、二番還元コンベア46の放出口47から二番物が勢い良く放出された場合などには、当該二番物が、二番案内通路48によって適切に案内されずに、予期せぬ方向に飛散してしまう場合がある。例えば、図3の符号60や符号61で示すように、二番物が扱胴16側に向かう軌跡で飛んだ場合、当該二番物は、そのままでは穂切れ処理装置29に入ることができず、扱胴16と処理胴30との間を通って落下する。この結果、脱穀装置10全体の処理効率の低下につながってしまう。
【0069】
この点、本実施形態の脱穀装置10では、図3に示すように、処理胴30の回転軸32方向から見たときに、二番還元コンベア46の放出口47は、被処理物案内板35を挟んで、扱胴16の反対側に位置している。即ち、放出口47と、扱胴16と、の間に前記被処理物案内板35が配置されている。このため、放出口47から放出された二番物が予期せぬ方向に飛んだとしても、当該二番物は、被処理物案内板35の放出口47側を向く面(扱胴16で発生した被処理物を案内する面とは反対側の面)に衝突する。これにより、放出口47から放出された二番物が扱胴16側に飛び出してしまうことを防止できる。
【0070】
また前述のように、被処理物案内板35は、扱胴16で発生した被処理物を穂切れ処理装置29へと案内できるように、適切な位置と角度で配置されている。従って、この被処理物案内板35に衝突した二番物は、当該被処理物案内板35によって穂切れ処理装置29まで適切に案内される。以上の構成によれば、二番還元コンベア46の放出口47から放出された二番物を、穂切れ処理装置29へと確実に投入することができる。
【0071】
なお、本実施形態において、被処理物案内板35には、放出口47側を向く面(二番物を案内する側の面)に、複数の二番物調整板74が取り付けられている。この二番物調整板74は、被処理物案内板35の放出口47側を向く面から略直交する方向に突出するように設けられている。また、複数の二番物調整板74は、処理胴30の回転軸32に平行な方向に並んで配置されている。更に、各二番物調整板74は、処理胴30の回転軸32に平行な方向に対して、斜めになるように配置されている。
【0072】
この二番物調整板74は、前述の調整板56と同様の効果を狙ったものであえる。即ち、被処理物案内板35に衝突した二番物は、二番物調整板74によって、処理胴30の軸線方向に対して斜め方向に誘導されつつ、穂切れ処理装置29へと導入される。このように、二番物調整板74によって二番物を誘導することにより、当該二番物が穂切れ処理装置29に投入される位置を、処理胴30の回転軸32と平行な方向である程度調整することができる。これにより、穂切れ処理装置29を、処理胴30の回転軸32方向で更に有効に利用することができる。
【0073】
以上で説明したように、本実施形態の脱穀装置10は、扱胴16と、穂切れ処理装置29と、選別装置36と、二番還元コンベア46と、二番案内通路48と、を備えている。扱胴16は、扱室15内において、回転軸17を中心として回転する。穂切れ処理装置29は、扱胴16の回転軸17と略平行な回転軸32を中心として回転する処理胴30を有し、扱胴16の回転により発生した被処理物が投入される。選別装置36は、穂切れ処理装置29で処理された被処理物が投入され、再処理が不要な一番物と、再処理が必要な二番物と、を選別する。二番還元コンベア46は、選別装置36で選別された二番物を、穂切れ処理装置29の上方まで搬送する。二番案内通路48は、二番還元コンベア46の放出口47から放出された二番物を、処理胴30の回転軸32に沿った方向に案内しつつ穂切れ処理装置29に投入する。
【0074】
このように二番案内通路48を設けたことにより、二番還元コンベア46から放出された二番物を、処理胴30の回転軸32と平行な方向に分散させて穂切れ処理装置29へと投入することができる。これにより、穂切れ処理装置29を軸方向で均一に利用できるので、当該穂切れ処理装置29の処理効率を向上させることができる。
【0075】
また本実施形態の脱穀装置10は、扱胴16で発生した被処理物を穂切れ処理装置29に向けて案内する被処理物案内板35を備える。処理胴30の回転軸32方向で見たときに、二番還元コンベア46の放出口47は、被処理物案内板35を挟んで扱胴16の反対側に配置されている。
【0076】
即ち、被処理物案内板35は二番還元コンベア46の放出口47と扱胴16の間に配置されているので、放出口47から放出された二番物が扱胴16側へ飛散してしまうことを防止できる。また、被処理物案内板35は、被処理物を穂切れ処理装置29に向けて案内できるように配置されているので、当該被処理物案内板35に衝突した二番物を、穂切れ処理装置29へと案内することができる。
【0077】
また本実施形態の脱穀装置10は、以下のように構成されている。即ち、被処理物案内板35の、放出口47側を向く面には、当該被処理物案内板35に略直交する二番物調整板74が、処理胴30の回転軸32と略平行な方向で複数並べて配置されている。少なくとも何れか1つの二番物調整板74は、処理胴30の回転軸32と平行な方向に対して斜めに配置されている。
【0078】
このように、処理胴30の回転軸32に対して斜めに配置された二番物調整板74によって、被処理物案内板35によって案内された二番物が落下する位置を、処理胴30の回転軸32方向で調整することができる。これにより、処理胴30を回転軸32方向で効率的に利用することができる。
【0079】
以上に本発明の好適な実施の形態を説明したが、上記の構成は例えば以下のように変更することができる。
【0080】
本発明の脱穀装置は、据え置きの脱穀装置、ハーベスタ内蔵の脱穀装置、コンバイン内蔵の脱穀装置など、様々な脱穀装置に適用することができる。
【0081】
二番案内通路48の構成は一例であり、上記の構成に限らない。二番還元コンベア46から放出された二番物を、処理胴30の回転軸32と平行な方向に沿って案内できる構成であれば、二番案内通路48の形状等は特に限定されない。
【0082】
二番還元機構はスクリューコンベア式であるとしたが、これに限らず、適宜の搬送機構を利用することができる。
【0083】
被処理物案内板35は、省略しても良い。
【0084】
二番物調整板74の角度は、必要に応じて適宜設定することができる。また、複数の二番物調整板74の角度がそれぞれ異なっていても良い。また、処理胴30の回転軸32と平行な方向に対して二番物調整板74が直交するように配置されていても良い。もっとも、この二番物調整板74は省略することもできる。
【符号の説明】
【0085】
10 脱穀装置
16 扱胴
29 穂切れ処理装置(処理装置)
30 処理胴
35 被処理物案内板
36 選別装置
46 二番還元コンベア(二番還元機構)
47 放出口
48 二番案内通路
74 二番物調整板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
扱室内において、回転軸を中心として回転する扱胴と、
前記扱胴の回転軸と略平行な回転軸を中心として回転する処理胴を有し、前記扱胴の回転により発生した被処理物が投入される処理装置と、
前記処理装置で処理された被処理物が投入され、再処理が不要な一番物と、再処理が必要な二番物と、を選別する選別装置と、
前記選別装置で選別された前記二番物を、前記処理装置の上方まで搬送する二番還元機構と、
前記二番還元機構の放出口から放出された前記二番物を、前記処理胴の回転軸に沿った方向に案内しつつ前記処理装置に投入する二番案内通路と、
を備えることを特徴とする脱穀装置。
【請求項2】
請求項1に記載の脱穀装置であって、
前記扱胴で発生した被処理物を前記処理装置に向けて案内する被処理物案内板を備え、
前記処理胴の回転軸方向で見たときに、前記二番還元機構の放出口は、前記被処理物案内板を挟んで前記扱胴の反対側に配置されていることを特徴とする脱穀装置。
【請求項3】
請求項2に記載の脱穀装置であって、
前記被処理物案内板の、前記放出口側を向く面には、当該被処理物案内板に略直交する二番物調整板が、前記処理胴の回転軸と略平行な方向で複数並べて配置されており、
少なくとも何れか1つの二番物調整板は、前記処理胴の回転軸と平行な方向に対して斜めに配置されていることを特徴とする脱穀装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate


【公開番号】特開2013−46588(P2013−46588A)
【公開日】平成25年3月7日(2013.3.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−186399(P2011−186399)
【出願日】平成23年8月29日(2011.8.29)
【出願人】(000006781)ヤンマー株式会社 (3,810)
【Fターム(参考)】