説明

膜構造物

【課題】 特にテントなどに使用した場合において、特に垂直部(側面部)の雨筋汚れに対して優れた防汚効果を有する膜構造物を提供する。
【解決手段】 膜体の上部に防染材料を設けてなる構造物であり、好ましくは防染材料が不織布、スポンジなどの発泡体、ロープ、あるいは樋のいずれかである膜構造物であり、より好ましくは膜体が光触媒を担持させたシートである膜構造物。さらに好ましくは、本発明は上記膜構造物からなるテント、あるいは上記の膜構造物からなる軒出し日除けに関するものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は防汚性に優れたテント、軒出し日除けなどの膜構造物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
中大型テント、日除けテント、テントハウス、テント倉庫、トラック幌などに使用される膜構造物は、繊維織物を塩ビシートと積層したり、あるいは繊維織物を基布として用い、その表面をポリ塩化ビニル樹脂で被覆加工した膜材が従来より使用されている。
しかしながら、上記したような膜材の場合、降雨の度に膜構造物の表面伝いに流れ落ちる煤塵汚れを含んだ水滴が特に膜構造物側壁部表面を伝って重力方向に垂れ落ち、この時、煤塵に含まれる砂埃・土埃などの微細無機物の擦過によって膜構造物の表面には微細な浸食傷を形成し、さらに浸食傷の凹凸部に煤塵が物理的に引っ掛かり、これが雨水の滴下流れの道筋に沿って連続的な雨筋汚れを発生する。特にテント倉庫などの構造物に使用した場合は、垂直部(側面部)に雨筋汚れが目立ちやすく、雨筋汚れを取り除くためには洗浄作業を施して汚れを洗い流す必要がある。しかしテント倉庫等の大型膜構造物では洗浄作業が現実的に難しく、美観を損なう場合がある。
【0003】
上記した問題点を解決する試みとして、膜材表面に酸化チタンをコーティングして光触媒層を形成し、光触媒作用を利用して防汚性を付与する方法が提案されている(例えば、特許文献1〜2参照。)。しかし、特許文献1〜2の方法では、例えば建物の1階部にテントを取付けた場合、高い面積の建物壁面の汚れを雨水がテント面に運ぶため、汚れの量が多すぎてテントが汚れ易いという問題点があった。
【0004】
【特許文献1】特開平10−237769号公報
【特許文献2】特開2000−170078号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記したように、特にテントなどに使用した場合において、特に垂直部(側面部)の雨筋汚れに対して優れた防汚効果を有する膜構造物が求められている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者等は鋭意検討を重ねた結果、膜体の上部に不織布、スポンジなどの発泡体、ロープ、あるいは樋などを設置することにより、特に垂直部(側面部)の雨筋汚れに対して優れた防汚効果を有する膜構造物となることを見出した。
すなわち本発明は、膜体上部に防汚材料を設けてなる膜構造物であり、好ましくは防汚材料が不織布、発泡体、ロープ、あるいは樋のいずれかである上記の膜構造物であり、より好ましくは膜体が光触媒を担持させたシートである上記の膜構造物である。
さらに好ましくは、本発明は上記の膜構造物からなるテント、あるいは上記の膜構造物からなる軒出し日除けに関するものである。
【発明の効果】
【0007】
本発明の技術により、特にテントなどに使用した場合において、特に垂直部(側面部)の雨筋汚れに対して優れた防汚効果を有する膜構造物を製造することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
本発明の膜構造物の構成する膜体は特に限定はなく、例えばポリエステル系繊維、ガラス繊維、ビニロン繊維、アクリル系繊維、ポリ乳酸系繊維のいずれかからなる織物、編物あるいは織編物等の基布と塩化ビニル等のフィルムの積層体であってもよく、あるいは前記織物、編物にフッ素系等の撥水性樹脂をコーティングしたものでもよい。
【0009】
さらに本発明においては膜材上部に防汚材料が設けられていることが必要である。建物の1階部にテントを取付けた場合、膜材上部に防汚材料を設けることで建物壁面からの汚れた雨水をテント上に流すことを防止できるので、長期間に亘って外観の優れた膜材となる。本発明で用いられる防汚材料は不織布、発泡体、ロープ、あるいは樋のいずれかであることが好ましい。防汚材料に用いられる形態例を図1に示す。
【0010】
防汚材料に不織布を用いる場合、不織布を構成する素材に特に制限はなく、ポリエステル系繊維、ビニロン繊維、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン系繊維、レーヨン繊維等が挙げられる。また防汚材料に発泡体を用いる場合、発泡体はウレタンや塩化ビニル等の樹脂で構成され、かつスポンジ状であることが好ましい。また、ロープを用いる場合、ロープに使用される素材としては綿、ビニロン、ポリエステル、ポリプロピレン等からなる繊維が挙げられるが、必ずしもこれらの素材に限定されるものではない。またロープの構造についても特に制限はない。
さらに、樋を用いる場合、樋を構成する素材としてはステンレス、アルミニウム、鉄などの金属、あるいは塩化ビニル、ABS等のプラスチック等が使用されるが、これらの素材に何等限定されるものではない。
【0011】
本発明の膜体は光触媒を担持させたシートであることが好ましい。本発明に用いることのできる光触媒としてはTiやZn、Cdの酸化物や硫化物などを用いることができるが、価格や消臭効果の点からTiOが好ましく用いられる。TiOは、アナターゼ型やブルカイト型等、特に限定はないが、アナターゼ型が安価であり、特に好ましく用いられる。これら光触媒は単独または組み合せて使用することができる。
【0012】
本発明の膜体からなる膜構造物は、広く一般建築用材料として、例えばテント、テント倉庫の屋根、店舗用装飾テント、商店等の軒出し日除け、各種アーケードの屋根、展示会パピリオン等の屋根や側面の覆い、ガソリンスタンドの屋根や側面の覆い等、多くの用途に用いられる。
【0013】
以下に実施例により本発明を説明するが、本実施例により何等限定されるものではない。
【0014】
[実施例1]
図2に示すように、2階建て建物の1階窓部の上部に取付けられた幅4mのベージュ色の固定式装飾テントの取り付け位置上部に幅15mm、厚み10mmのウレタンフォームテープを左側半分だけに貼り付け、8ヶ月の間テント生地の汚れの程度を目視にて観察したところ、ウレタンフォームテープを貼り付けた下のテントは、ウレタンフォームを貼り付けていない下のテントよりも汚れが目立たなかった。特に垂直部では雨筋が目立ち難かった。
【0015】
[比較例1]
図2の建物において、1階部に実施例1と同様のウレタンフォームを取付けたが、テントの汚れは著しいものであった。
【産業上の利用可能性】
【0016】
本発明の技術により、特にテントなどに使用した場合において、特に垂直部(側面部)の雨筋汚れに対して優れた防汚効果を有する膜構造物を製造することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の防汚材料の形状を示す模式図。
【図2】本発明の防汚性膜材の施工の一例を示す模式図。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
膜体上部に防汚材料を設けてなる膜構造物。
【請求項2】
防汚材料が不織布、発泡体、ロープ、あるいは樋のいずれかである請求項1記載の膜構造物。
【請求項3】
膜体が光触媒を担持させたシートである請求項1または2記載の膜構造物。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項記載の膜構造物からなるテント。
【請求項5】
請求項1〜3のいずれか1項記載の膜構造物からなる軒出し日除け。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2007−85075(P2007−85075A)
【公開日】平成19年4月5日(2007.4.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−275217(P2005−275217)
【出願日】平成17年9月22日(2005.9.22)
【出願人】(000001085)株式会社クラレ (1,607)
【Fターム(参考)】