説明

自動三輪車

【課題】機動性に優れて旋回時の安定性がよいとともに、バランス感覚を必要とせずに簡単に乗りこなすことができる自動三輪車を提供する。
【解決手段】前一輪後二輪の構成を有し、左右一対の後輪は平行に僅少離隔して配設された自動三輪車は、車体傾斜量検出センサ22が検出した傾斜量に応じて、オイルシリンダー12及び14それぞれの伸縮量を決定し、決定したそれぞれの伸縮量に基づいて、倒れそうな方向に配設された一方のオイルシリンダーを伸長させるとともに、他方のオイルシリンダーを収縮させる第1の制御手段と、速度検出センサ24が検出した速度と、操舵角検出センサ23が検出した操舵角に応じて、オイルシリンダー12及び14それぞれの伸縮量を決定し、決定したそれぞれの伸縮量に基づいて、旋回内側に配設された一方のオイルシリンダーを収縮させるとともに、旋回外側に配設された他方のオイルシリンダーを伸長させる第2の制御手段と、を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動三輪車に関し、特に、前一輪後二輪の自動三輪車に関する。
【背景技術】
【0002】
自動二輪車は、四輪車に比べて、機動性に優れた乗り物であるが、自動二輪車のドライバは、運転に一定の技量が要求されるという問題がある。すなわち、自動二輪車のドライバは、ハンドル操作に加えて、ドライバ自身が体重を移動させることが必要であり、特に、カーブ路を高速走行する場合には、ハンドル操作とドライバ自身の体重移動とを迅速、かつ的確に行うことが必要であるため、一定の技量の習熟に至らない者にとっては、転倒などの危険性を伴うという問題がある。
【0003】
また、自動二輪車が停車状態にあるときには、ドライバは、車体が転倒するのを防ぐために、足を地面について車体を支えなければならないという問題もある。特に、老人や女性が、重量の重い自動二輪車を支えて、移動させたりするのは、大変な力作業となり、時には危険を伴うという問題がある。
【0004】
このように、自動二輪車は、老若男女のすべてが簡単に乗りこなすことができる乗り物とはなっていない。
【0005】
一方、自動三輪車は、自立安定性が高く、上述した自動二輪車が要求するバランス感覚を必要としないので、誰もが簡単に乗りこなせる乗り物であるが、自動二輪車に比べて、旋回時の安定性が悪いという問題がある。すなわち、自動三輪車の場合には、自動二輪車のように車体をコーナーの内側に傾けることができないので、カーブ路を高速走行する場合には、コーナーの外側に転倒しやすいという問題がある。
【0006】
また、自動三輪車は、自動二輪車よりも車体幅が大きいので、小回りなどの機敏な動きがしづらいという問題もある。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
このように従来の自動二輪車及び自動三輪車にはそれぞれ一長一短があるので、双方の短所が解消され、双方の長所が取り込まれた車両の開発が望まれていた。
【0008】
本発明の上記の事情を鑑みてなされたものであり、機動性に優れて旋回時の安定性がよいとともに、バランス感覚を必要とせずに簡単に乗りこなすことができる自動三輪車を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の課題を達成するため、本発明は、その一態様として、前一輪後二輪の構成を有し、左右一対の後輪は平行に僅少離隔して配設されるとともに、前記左右一対の後輪それぞれを独立して駆動可能な自動三輪車であって、車体の傾斜量を検出する車体傾斜量検出手段と、前記車体の速度を検出する速度検出手段と、ハンドルの操舵角を検出する操舵角検出手段と、前記左右一対の後輪それぞれを車体に対して揺動可能に支持する1対の車輪支持手段と、伸縮可能に構成され、前記1対の車輪支持手段それぞれを前記車体に懸架する1対の伸縮懸架手段と、前記車体傾斜量検出手段が検出した傾斜量に応じて、前記1対の伸縮懸架手段それぞれの伸縮量を決定し、決定したそれぞれの伸縮量に基づいて、倒れそうな方向に配設された一方の前記伸縮懸架手段を伸長させるとともに、他方の前記伸縮懸架手段を収縮させる第1の制御手段と、前記速度検出手段が検出した速度と、前記操舵角検出手段が検出した操舵角に応じて、前記1対の伸縮懸架手段それぞれの伸縮量を決定し、決定したそれぞれの伸縮量に基づいて、旋回内側に配設された一方の前記伸縮懸架手段を収縮させるとともに、旋回外側に配設された他方の前記伸縮懸架手段を伸長させる第2の制御手段と、を有することを特徴とする。
【0010】
本発明の一態様においては、車体が傾いてバランスが崩れても、傾きを修正して、元のバランスのよい姿勢に戻す機能、及びカーブ路を走行するときには自動的に旋回方向に車体を傾ける機能を備えているので、機能機動性に優れて旋回時の安定性がよいとともに、バランス感覚を必要とせずに簡単に乗りこなすことができる自動三輪車を提供することができる。
【0011】
また、前記第2の制御手段は、さらに、前記旋回外側に配設された他方の後輪の駆動力を、前記旋回内側に配設された一方の後輪の駆動力よりも、大きく制御することが好ましい。これにより、カーブ路を旋回するときには、旋回外側の電動モータの駆動パワーを旋回内側の電動モータの駆動パワーよりも大きく制御するので、カーブ路を速やかに旋回することができる。
【0012】
また、前記1対の伸縮懸架手段の長さが同じ場合には、前記車輪支持手段の一端が前記車体に軸支されている位置は、前記車輪支持手段の他端が軸支されているとともに前記伸縮懸架手段が軸支されている前記後輪の車軸の位置よりも低いことが好ましい。これにより、カーブ路を走行するときには、旋回外側のホイールベースは旋回内側のホイールベースよりも長くなるように構成されているので、さらに旋回時の安定性を高めることができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、機動性に優れて旋回時の安定性がよいとともに、バランス感覚を必要とせずに簡単に乗りこなすことができる自動三輪車を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明の実施の形態を図面を用いて説明する。
【0015】
図1は、本発明の実施の形態に係る自動三輪車1の背面斜視図、図2は、本発明の実施の形態に係る自動三輪車1の上面図である。自動三輪車1は、図1及び図2に示すように、前一輪後二輪の電動モータ駆動による自動三輪車であり、1対の左右後輪は、僅少な間隔(一対の左右後輪同士が接触しない最小限の隙間が形成されていることが好適)をあけて平行に配設されている。このように、自動三輪車1は、外観的には、従来の左右後輪間の間隔が広くて自立可能な自動三輪車よりは、自動二輪車に近い構成であり、後述するバランス制御を行わない停止状態においては、自動二輪車と同様に自立不可能であるとともに、後述するバランス制御を行う旋回時には、旋回内側に車体を傾けて走行するなど自動二輪車と同様の運動特性を備えるようになっている。
【0016】
自動三輪車1は、概略、車体2と、車体2に取り付けられ、ハンドル3により操舵される1つの前輪4と、電動モータ5及び6により駆動される左右一対の後輪7及び8と、を備える。
【0017】
詳しくは、図2に示すように、電動モータ5(左車輪電動モータ5ともいう)は、左後輪7のホイールに内蔵されて、左後輪7を駆動するようになっており、また、電動モータ6(右車輪電動モータ6ともいう)は、右後輪8のホイールに内蔵されて、右後輪8を駆動するようになっている。すなわち、本実施の形態の自動三輪車1は、左右の後輪7及び8をそれぞれ独立して駆動制御可能としている。
【0018】
また、自動三輪車1の車体2の後方下部には、左車輪支持アーム9及び右車輪支持アーム10が、それぞれ、上下方向に揺動可能にその一端(前端)を軸支されており、この左車輪支持アーム9及び右車輪支持アーム10の他端(後端)には、左後輪7及び右車輪8がそれぞれ回転可能に軸支されている。
【0019】
また、右車輪支持アーム10及び右後輪8は、右リアサスペンション13及び伸縮可能な右オイルシンダー14を介して車体フレーム2に緩衝懸架されている。すなわち、右リアサスペンション13及び伸縮可能な右オイルシンダー14は、車体2の後方上部と右車輪支持アーム10の後端を連結している。
【0020】
同様にして、左車輪支持アーム9及び左後輪7は、左リアサスペンション11及び伸縮可能な左オイルシンダー12を介して車体フレーム2の後方上部に緩衝懸架されている。すなわち、左リアサスペンション11及び伸縮可能な左オイルシンダー12は、車体2の後方上部と左車輪支持アーム9の後端を連結している。
【0021】
自動三輪車1のバランス制御は、この左オイルシンダー12及び右オイルシンダー14の伸縮制御により実現されている。すなわち、左オイルシンダー12及び右オイルシンダー14は、路面の状態やハンドル3の操舵角や自動三輪車1の速度に応じて、最適に伸縮制御されるようになっているので(詳しくは後述する)、これにより、自動三輪車1は自立安定性を高めることができとともに、旋回時の安定性を高めることができるようになっている。
【0022】
なお、自動三輪車1の車体フレーム2内には、電動モータ5及び6を駆動する電気エネルギーを生成するための蓄電池(図示せず)が取り付けられている。
【0023】
次に、図3を用いて、左オイルシンダー12及び右オイルシンダー14の伸縮制御について説明する。図3は、本発明の実施の形態に係る自動三輪車1の左オイルシンダー12及び右オイルシンダー14の伸縮制御を説明するための機能構成図である。
【0024】
自動三輪車1は、図3に示すように、さらに、アクセルコントローラ21、車体傾斜量検出センサ22、操舵角検出センサ23、速度検出センサ24、メインコントローラ25、駆動電力コントローラ26、及び油圧コントローラ27を備えている。
【0025】
アクセルコントローラ21は、アクセル及びブレーキのレバー操作に応じて、自動三輪車1の加減速を行うようになっている。車体傾斜量センサ22は、例えば、ジャイロセンサで構成され、車体2の左右方向の傾斜量を検出するようになっている。操舵角検出センサ23は、例えば、ハンドル3の回転角度を検出することにより、操舵角を検出するようになっている。速度検出センサ24は、例えば、前輪4の単位時間当たりの回転数を検出することにより、自動三輪車1の速度を検出するようになっている。
【0026】
メインコントローラ25は、上述したアクセルコントローラ21の制御量、並びに車体傾斜量センサ22、操舵角検出センサ23及び速度検出センサ24の検出量に応じて自動三輪車1の駆動制御及びバランス制御を行うようになっている。具体的には、自動三輪車1の駆動制御は、駆動電力コントローラ26を介して行われ、また、自動三輪車1のバランス制御は、油圧コントローラ27を介して行われるようになっている。
【0027】
駆動電力コントローラ26は、メインコントローラ25からの指示を受けて電動モータ5及び6を駆動制御するようになっている。本実施の形態においては、左右の電動モータ5及び6を独立して制御することが可能なので、左右の駆動パワーに差を設けることも可能である。例えば、カーブ路を旋回するときには、旋回外側の電動モータの駆動パワーを旋回内側の電動モータの駆動パワーよりも大きく制御するので、カーブ路を速やかに旋回可能としている。勿論、直進しているときには、左右の電動モータ5及び6の駆動パワーは同一となるように制御されるようになっている。
【0028】
油圧コントローラ27は、メインコントローラ25からの指示を受けて、左右のオイルパイプ28内の油圧を調整して、左オイルシリンダー12及び右オイルシリンダー14の伸縮を制御するようになっている。例えば、図4に示すように、右下がりに傾斜している路面を走行して、車体2が右下がりに傾斜する場合には、姿勢を立て直すべく、図3に示すように、右オイルシリンダー14を伸長させるとともに、左オイルシリンダー12を収縮させて、車体2のシートを水平面に平行として、自動三輪車1を転倒させないようにしている。
【0029】
詳しくは、この場合には、車体傾斜量検出センサ22が車体2の傾斜を検出すると、メインコントローラ25が、車体傾斜量検出センサ22が検出した傾斜量に応じて、適切な右オイルシリンダー14の伸長量、及び左オイルシリンダー12の収縮量を算出し、油圧コントローラ27が、算出された右オイルシリンダー14の伸長量及び左オイルシリンダー12の収縮量に従って、油圧を調整するようになっている。この結果、傾斜している路面を走行しても、自動三輪車1は転倒することなく、自立したまま走行可能である。また、ドライバ自らがバランスを崩して自動三輪車1が転倒しそうなときにも、上記と同様に、車体2の姿勢を立て直すべく、左オイルシリンダー12及び右オイルシリンダー14を伸縮させるので、自動三輪車1は転倒することなく、自立したまま走行可能である。
【0030】
このように本実施の形態の自動三輪車1は、車体2が傾いてバランスが崩れても、傾きを修正して、元のバランスのよい姿勢に戻す機能、すなわち、自動的に自立制御を行って、転倒を回避する機能を備えている。
【0031】
なお、本実施の形態においては、車体2の傾斜量に対応した最適な左オイルシリンダー12及び右オイルシリンダー14それぞれの収縮量は、予めメインコントローラ25のメモリ上に記憶されている。
【0032】
また、例えば、左カーブ路を走行する場合には、図5に示すように、右オイルシリンダー14を伸長させるとともに、左オイルシリンダー12を収縮させて、車体2をカーブ路内側に傾けるようにしている。詳しくは、この場合には、操舵角検出センサ23がハンドル操作を検出すると、メインコントローラ25が、操舵角検出センサ23が検出した操舵角、及び速度検出センサ24が検出した速度に応じて、適切な右オイルシリンダー14の伸長量、及び左オイルシリンダー12の収縮量を算出し、油圧コントローラ27が、算出された右オイルシリンダー14の伸長量及び左オイルシリンダー12の収縮量に従って、油圧を調整するようになっている。この結果、カーブ路を走行するときも、ドライバ自らの体幹操作によることなく、自動的に車体を旋回内側側に傾けることができるので、高速で旋回していても外側に転倒することはない。
【0033】
このように本実施の形態の自動三輪車1は、カーブ路を走行するときには、速度及び操舵角に応じて、自動的に旋回方向に車体2を傾ける機能を備えている。
【0034】
なお、本実施の形態においては、操舵角及び速度に対応した最適な左オイルシリンダー12及び右オイルシリンダー14それぞれの収縮量は、予めメインコントローラ25のメモリ上に記憶されている。
【0035】
また、本実施の形態の自動三輪車1は、カーブ路を走行するときには、旋回外側のホイールベースは旋回内側のホイールベースよりも長くなるように構成されているので、さらに旋回時の安定性を高めるようになっている。
【0036】
このことを、図6を用いて説明する。ここで、図6は、右後輪8を軸支する右車輪支持アーム10の上下の揺動の様子を示しており、図6(a)は、直進しているときの右車輪支持アーム10の位置、図6(b)は、左旋回しているときの右車輪支持アーム10の位置、図6(c)は、右旋回しているときの右車輪支持アーム10の位置を示している。すなわち、図6(a)は、左オイルシリンダー12と右オイルシリンダー14の長さが同一の状態、図6(b)は、左オイルシリンダー12よりも右オイルシリンダー14の長さが長い状態、図6(c)は、左オイルシリンダー12よりも右オイルシリンダー14の長さが短い状態を示している。
【0037】
図6(a)に示すように、直進時には、右車輪支持アーム10を車体2に軸支している支持アーム取付支点31は、右車輪8を右車輪支持アーム10に軸支している車軸32の位置よりも低い位置としている。一方、左旋回しているときには、右車輪8は外側の車輪となり、上述したように、右オイルシリンダー14は伸長するように制御されるので、図6(b)に示すように、支持アーム取付支点31の位置は、図6(a)に示す位置よりも高い位置に移動し、図6(a)と比べて、支持アーム取付支点31と車軸32の高さの差は縮まる(支持アーム取付支点31は車軸32と略同一の高さとなる)。また、右旋回しているときには、右車輪8は内側の車輪となり、上述したように、右オイルシリンダー14は収縮するように制御されるので、図6(c)に示すように、支持アーム取付支点31の位置は、図6(a)に示す位置よりも低い位置に移動し、図6(a)と比べて、支持アーム取付支点31とは車軸32の高さの差は広がる。
【0038】
ここで、図6(a)〜(c)において、支持アーム取付支点31と車軸32を結んだ直線を水平面に射影した距離をそれぞれL、L1、L2とすると、L2<L<L1となるから、本実施形態においては、旋回外側のホイールベースは旋回内側のホイールベースよりも長くなっている。なお、図6では右後輪8を軸支する右車輪支持アーム10の上下の揺動の様子を示したが、左後輪7を軸支する左車輪支持アーム9の上下の揺動の様子も同様である。
【0039】
次に、図7を用いて、本発明の実施の形態に係る自動三輪車1のバランス制御の動作について説明する。図7は、自動三輪車1のバランス制御の動作を示すフローチャートである。
【0040】
まず、自動三輪車1のメインコントローラ25は、車体傾斜量検出センサ22が検出した傾斜量から、傾斜量がα以上であるか否かを判定する(ステップS10)。ここで、傾斜量αは車体2が傾いているか否かを判断するための閾値である。傾斜量がα以上であるときは(ステップS10:YES)、車体2が傾いているので、車体傾斜量検出センサ22が検出した傾斜量に応じて、転倒を防ぐ方向(姿勢を立て直す方向)にバランス制御を行う(ステップS20)。例えば、右下がりに傾斜している路面を走行して、車体2が右下がりに傾斜する場合には、姿勢を立て直すべく、右オイルシリンダー14を伸長させるとともに、左オイルシリンダー12を収縮させるバランス制御を行う。
【0041】
一方、傾斜量がα以上でないときは(ステップS10:NO)、自動三輪車1のメインコントローラ25は、操舵角検出センサ23が検出した操舵角から、操舵角がβ以上であるか否かを判定する(ステップS30)。ここで、操舵角βはカーブ路を旋回しているか否かを判断するための閾値である。操舵角がβ以上であるときは(ステップS30:YES)、車体2が旋回しているので、自動三輪車1のメインコントローラ25は、操舵角検出センサ23が検出した操舵角、及び速度検出センサ24が検出した自動三輪車1の速度に応じて、旋回内側側に車体2を傾けるバランス制御を行う(ステップS40)。例えば、左カーブ路を走行する場合には、右オイルシリンダー14を伸長させるとともに、左オイルシリンダー12を収縮させるバランス制御を行う。
【0042】
次いで、自動三輪車1のメインコントローラ25は、旋回外側の駆動モータの駆動パワーと旋回内側の駆動モータの駆動パワーを異なるように調整制御する(ステップS50)。例えば、左後輪7が旋回内側に位置し、右後輪8が旋回外側に位置しているときは、左駆動モータ5の駆動パワーよりも右駆動モータ6の駆動パワーを大きくするように駆動電力コントローラ26に対して制御を行う。
【0043】
以上説明したように、本実施の形態に係る自動三輪車1によれば、前一輪後二輪の構成を有し、左右一対の後輪は平行に僅少離隔して配設される構成なので、自動二輪車の優れた機能、すなわち、車体の幅を広げることなく優れた機動性を有することができる。
【0044】
また、本実施の形態に係る自動三輪車1によれば、メインコントローラ25が、車体傾斜量検出センサ22が検出した傾斜量に応じて、車体2の姿勢を立て直すように、適切な右オイルシリンダー14及び左オイルシリンダー12それぞれの伸縮量を算出し、油圧コントローラ27が、算出された右オイルシリンダー14及び左オイルシリンダー12それぞれの伸縮量に従って、油圧を調整するので、車体2が傾いてバランスが崩れても、自動的に自立制御を行って、転倒を回避することができる。この結果、例えば、走行中、横からの強い風を受けてバランスを崩したとき、低速における走行時、悪路を走行時などであっても、バランス感覚を必要とせずに簡単に乗りこなすことができる。
【0045】
また、本実施の形態に係る自動三輪車1によれば、カーブ路を走行時には、メインコントローラ25が、操舵角検出センサ23が検出した操舵角及び速度検出センサ24が検出した速度に応じて、車体を旋回内側に傾けるように、適切な右オイルシリンダー14及び左オイルシリンダー12それぞれの伸縮量を算出し、油圧コントローラ27が、算出された右オイルシリンダー14及び左オイルシリンダー12それぞれの伸縮量に従って、油圧を調整するので、ドライバ自らの体幹操作によることなく、自動的に旋回内側に車体2を傾けることができる。この結果、自動三輪車であっても、外側への転倒はなく、旋回時の安定性を高くすることができる。また、自動二輪車を運転する技術が未熟な人であっても、安全かつ簡単にカーブ路を旋回することができる。
【0046】
特に本実施の形態の自動三輪車1は、旋回内側に傾斜させるための後輪が2つあり、自動二輪車よりも後輪の数が多いので、車輪の数という点からも、滑っての転倒を少なくすることができる。
【0047】
また、本実施の形態に係る自動三輪車1によれば、カーブ路を走行するときには、旋回外側のホイールベースは旋回内側のホイールベースよりも長くなるように構成されているので、さらに旋回時の安定性を高めることができる。
【0048】
さらに、本実施の形態に係る自動三輪車1によれば、カーブ路を旋回するときには、駆動電力コントローラ26が、旋回外側の電動モータの駆動パワーを旋回内側の電動モータの駆動パワーよりも大きく制御しているので、カーブ路を速やかに旋回することができる。
【0049】
なお、上記実施の形態では、自動三輪車1の駆動源を電動モータとしたが、自動三輪車1の駆動源は電動モータに限定されず、他の駆動源でもよいのは勿論である。例えば、エンジン駆動としてもよいし、また、電動モータ及びエンジンの双方を駆動源とするハイブリッド型としてもよい。
【0050】
また、上記実施の形態では、左オイルシリンダー12及び右オイルシリンダー14を用いて、左右のバランス制御をとる伸縮装置を構成したが、伸縮装置の構成はこれに限定されず、他の構成によってもよい。例えば、電動モータによって左右のバランス制御をとる伸縮装置としてもよい。
【0051】
さらには、上記実施の形態においては、車体傾斜量検出センサ22としては、ジャイロセンサを用いて車体2の傾斜量を検出したが、これに代えてまたはこれに加えて、他の機構を用いて車体2の傾斜量を検出するようにしてもよい。例えば、左オイルシリンダー12内と右オイルシリンダー14内の油圧差(オイルパイプ28内の油圧差)を検出して、車体2の傾斜量を検出する機構を設けてもよい。
【0052】
以上、本発明の実施の形態について説明してきたが、本発明は、上述した実施の形態に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、本発明の実施の形態に対して種々の変形や変更を施すことができ、そのような変形や変更を伴うものもまた、本発明の技術的範囲に含まれるものである。
【図面の簡単な説明】
【0053】
【図1】本発明の実施の形態に係る自動三輪車の背面斜視図である。
【図2】本発明の実施の形態に係る自動三輪車の上面図である。
【図3】本発明の実施の形態に係る自動三輪車の左オイルシンダー及び右オイルシンダーの伸縮制御を説明するための機能構成図である。
【図4】本発明の実施の形態に係る自動三輪車が右下がりに傾斜している路面を走行して、車体が右下がりに傾斜する様子を示す概略図である。
【図5】本発明の実施の形態に係る自動三輪車が左カーブ路を走行する場合の左オイルシンダー及び右オイルシンダーの伸縮の状態を示す概略図である。
【図6】本発明の実施の形態に係る自動三輪車の右後輪を軸支する右車輪支持アームの上下の揺動の様子を示す外観図である。
【図7】本発明の実施の形態に係る自動三輪車のバランス制御の動作を示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0054】
1 自動三輪車
2 車体
3 ハンドル
4 前輪
5 電動モータ(左車輪電動モータ)
6 電動モータ(右車輪電動モータ)
7 左後輪
8 右後輪
9 左車輪支持アーム
10 右車輪支持アーム
11 左リアサスペンション
12 左オイルシンダー
13 右リアサスペンション
14 右オイルシンダー
21 アクセルコントローラ
22 車体傾斜量検出センサ
23 操舵角検出センサ
24 速度検出センサ
25 メインコントローラ
26 駆動電力コントローラ
27 油圧コントローラ
28 オイルパイプ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
前一輪後二輪の構成を有し、左右一対の後輪は平行に僅少離隔して配設されるとともに、前記左右一対の後輪それぞれを独立して駆動可能な自動三輪車であって、
車体の傾斜量を検出する車体傾斜量検出手段と、
前記車体の速度を検出する速度検出手段と、
ハンドルの操舵角を検出する操舵角検出手段と、
前記左右一対の後輪それぞれを車体に対して揺動可能に支持する1対の車輪支持手段と、
伸縮可能に構成され、前記1対の車輪支持手段それぞれを前記車体に懸架する1対の伸縮懸架手段と、
前記車体傾斜量検出手段が検出した傾斜量に応じて、前記1対の伸縮懸架手段それぞれの伸縮量を決定し、決定したそれぞれの伸縮量に基づいて、倒れそうな方向に配設された一方の前記伸縮懸架手段を伸長させるとともに、他方の前記伸縮懸架手段を収縮させる第1の制御手段と、
前記速度検出手段が検出した速度と、前記操舵角検出手段が検出した操舵角に応じて、前記1対の伸縮懸架手段それぞれの伸縮量を決定し、決定したそれぞれの伸縮量に基づいて、旋回内側に配設された一方の前記伸縮懸架手段を収縮させるとともに、旋回外側に配設された他方の前記伸縮懸架手段を伸長させる第2の制御手段と、
を有することを特徴とする自動三輪車。
【請求項2】
前記第2の制御手段は、
さらに、前記旋回外側に配設された他方の後輪の駆動力を、前記旋回内側に配設された一方の後輪の駆動力よりも、大きく制御することを特徴とする請求項1記載の自動三輪車。
【請求項3】
前記1対の伸縮懸架手段の長さが同じ場合には、前記車輪支持手段の一端が前記車体に軸支されている位置は、前記車輪支持手段の他端が軸支されているとともに前記伸縮懸架手段が軸支されている前記後輪の車軸の位置よりも低いことを特徴とする請求項1又は2記載の自動三輪車。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2010−47151(P2010−47151A)
【公開日】平成22年3月4日(2010.3.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−213948(P2008−213948)
【出願日】平成20年8月22日(2008.8.22)
【出願人】(593172968)
【Fターム(参考)】