説明

自動二輪車用灯具

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、自動二輪車の尾灯として搭載し、同時にライセンスプレートの照明灯としても使用する自動二輪車用灯具に関するものである。
【0002】
【従来の技術】従来から、自動二輪車に搭載する尾灯等の自動二輪車用灯具は、図7に示すように、一般に光源51を収容するための灯室52を形成する灯具ボディ53に対してその前端開口部を密閉する赤色に着色したテールレンズ54をねじ等で着脱自在に固定したものが多用されている。この種の自動二輪車用灯具は、夜間走行時におけるライセンスプレートLを同時に照明するために、テールレンズ54の下面に略長方形状のやや大きめの後端側へ切り欠かれた照明窓55を形成し、この照明窓55に透明無着色のライセンスレンズ56を被蓋する構造に成っている。この照明窓55の内周縁にはライセンスレンズ56の周縁部と嵌合する固定溝57が形成してあり、この固定溝57にライセンスレンズ56の側端縁を含む前端縁側を嵌合し、後端縁側を上記灯具ボディ53の前端開口縁の下端に形成した嵌合溝58にテールレンズ54の嵌合脚59を同時に嵌合させて固定するものであった。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】上記従来のテールレンズ54の下面に比較的大きな後方へ切り欠かれた照明窓55を形成し、この照明窓55に対してライセンスレンズ56を嵌合固定した自動二輪車用灯具は、灯具全体を自動二輪車のフェンダー表面に露出させた状態で搭載されるものであり、後部位置において大きく露出した状態で車体に搭載されるため、上記テールレンズ54自体が略水平に支持される構造に成るものであれば、この自動二輪車用灯具を車両後方から視認した場合の見栄え上の問題を生ずることははない。しかし、自動二輪車用灯具の外形が略半球状に形成され、テールレンズ54の下面が傾斜面として形成されたものにあっては、後方から上記傾斜面、即ちライセンスレンズ56の構成部が視認され、無色透明のライセンスレンズ56を通してこのライセンスレンズ56と灯具ボディ53との嵌合固定部分や灯室52の内部そのものが見えてしまい、見栄えが悪いという問題を有していた。
【0004】また、従来の自動二輪車用灯具は、テールレンズ54の内面に所定の配光性能を得るためのレンズステップ60が形成してあるが、テールレンズ54の下面側についてはライセンスレンズ56を取り付けるための固定溝57が構成されると共に、この固定溝57がある程度のスペースを開けて形成してあるため、またテールレンズ54とライセンスレンズ56の嵌合面を一致させる必要上からも、この部分には何らのステップも形成されておらず、テールレンズ54とライセンスレンズ56の嵌合部の見栄えが悪く成るという問題も有していた。
【0005】本発明は、上記問題に鑑みて創案されたものであり、テールレンズの下面にライセンスレンズ用の照明窓を設けると共に、その照明窓にライセンスレンズを略水平に嵌合固定することにより、ライセンスレンズ装着部に対する後方及び外周部からの灯具の見栄えの向上を図ったライセンスレンズを有する自動二輪車用灯具を提供することを目的とするものである。
【0006】
【課題を解決するための手段】上記目的を達成するために、本発明に係る自動二輪車用灯具は、灯具ボディの開口周縁部に嵌合溝を形成し、この嵌合溝にテールレンズの開口周部に形成した嵌合脚を嵌合密着する構造に成り、かつテールレンズの下面にはライセンスプレート照明部と成るライセンスレンズを有する自動二輪車用灯具において、上記テールレンズの下面にライセンスレンズ用の照明窓を開設すると共に、上記灯具ボディの内面に上記ライセンスレンズを支持固定するための固定溝を前記嵌合溝の内周側に形成し、上記ライセンスレンズの後端縁を上記固定溝に嵌合させると共に、前端縁側を上記照明窓の内周縁部に当接させて上記照明窓を被蓋したことを要旨とするものである。
【0007】上記テールレンズ下面を後方へ傾斜させ、この傾斜面に開設形成した照明窓に対して上記ライセンスレンズを略水平に取り付け、また上記ライセンスレンズの前端縁側に傾斜面を形成し、この傾斜面を上記照明窓の前側内周縁部に形成した傾斜面に当接させるようにしてライセンスレンズを装着し、更に上記テールレンズの下面内周にローレット加工を施した構造にすることも可能である。
【0008】上記構成によれば、傾斜したテールレンズの下面に照明窓を開設し、この照明窓にライセンスレンズを略水平状態に嵌合固定することができるので、車両後方からライセンスレンズを通して灯具ボディに対するライセンスレンズの嵌合装着部や灯具の内部が透視されず、テールレンズに対するライセンスレンズの一体感が向上し、灯具の見栄えが向上する。
【0009】また、赤色に着色したテールレンズに開設した照明窓に対する透明無着色のライセンスレンズの前端縁との接合部分が傾斜面同士であるため、テールレンズとライセンスレンズとの間に一体感を醸成し、接合部分の見栄えが向上する。
【0010】また、テールレンズはその全周に形成した嵌合脚を灯具ボディの開口周縁部に嵌合密着することができると共に、嵌合脚の周囲、特にライセンスレンズ装着部近傍にローレット加工を施すことができるので、テールレンズとライセンスレンズとの嵌合部分が透けて見えたり、従来の灯具のようにテールレンズの周囲から灯具の内部が透過されることがないばかりでなく、テールレンズ内面に形成したレンズステップとの意匠的一体感を醸成し、灯具外観の見栄えを向上する。
【0011】
【発明の実施の形態】以下、本発明に係る自動二輪車用灯具を尾灯に実施した発明の実施の形態について図面に従って説明する。図1は本発明に係る自動二輪車用灯具を示す側断面図であり、符号1は光源2を収容するための灯室3を形成するため凹状に形成して成る灯具ボディであり、その開口周縁部4の全周に嵌合溝5を形成したものである。また、符号6は灯具ボディ1の開口部に被蓋する赤色の機能色で着色し、略函形に形成して成るテールレンズであり、その開口周縁部7の全周には上記灯具ボディ1側の嵌合溝5に対応した嵌合脚8を形成し、両者5,8を嵌合させることにより灯室3を密閉する構造に成っている。このテールレンズ6の下面には、本発明に係る自動二輪車用灯具を車体に搭載した状態でその下方に装着したライセンスプレートLを照明するための照明窓9を開設すると共に、この照明窓9に無色透明のライセンスレンズ10を嵌着してある。このテールレンズ6は上記照明窓9にライセンスレンズ10を装着した状態でその嵌合脚8を灯具ボディ1側の嵌合溝5に嵌め合わせた後、図2に示すように、テールレンズ6の表面側から裏面側へ透設したねじ挿通孔を介し、灯具ボディ1に形成したねじボスに向けてねじ11,11を螺合させて一体化するものである。
【0012】本発明に係る自動二輪車用灯具は、そのテールレンズ6の上面が車体の後方へ突出した形状と成り、また下面が車体の後方に向けて前傾するように傾斜させた形状を有しており、自動二輪車の後部フェンダーに搭載したときに、灯具全体が車体の後方へ突出した状態に成るものである。即ち、本発明に係る自動二輪車用灯具は、その側縦断面形状において略菱形に成り、同様に灯具ボディ1も上記テールレンズ6の開口部に対応してその上部が前方へ突出し、かつ下部へ向けて傾斜した開口周縁部4を具備している。
【0013】上記ライセンスレンズ10は、テールレンズ6に開設した照明窓9に対して略水平姿勢で取り付けるように成るため、図1又は図5に示すように、灯具ボディ1の内面に嵌合溝5より内側に位置して、ライセンスレンズ10の後端縁10aを嵌合支持するため、水平方向に延設した固定溝12を形成してある。この固定溝12は、その前傾している照明窓9の前側内縁と水平位置において対応しており、この前側内縁と上記固定溝12間にライセンスレンズ10が支持されるように成っている。また、ライセンスレンズ10を装着する上記照明窓9の外周部下面における左右両側と後側から下方へ垂下する立壁13が枠状に形成してあり、この立壁13上にライセンスレンズ10の外周部下面が支持されるように成っている。このときライセンスレンズ10の前端縁10bの2個所に突設した係合爪14,14と、照明窓9の縁端に形設した係止爪15,15とでライセンスレンズ10の位置決めをするように成っている。而して、ライセンスレンズ10は、灯具ボディ1側の固定溝12にその後端縁10aを嵌合させた状態でテールレンズ6を灯具ボディ1に嵌め合わせることにより、灯具ボディ1とテールレンズ6との間に挟持固定され、特別に他の固定手段を用いることなくテールレンズ6の照明窓9に装着することができるため、灯具の組み付け作業性を向上することができる。
【0014】また、ライセンスレンズ10とテールレンズ6との接合部分には、該部の見栄えを向上するために、従来構造のようなテールレンズ54側の固定溝57を形成することなく、図4又は図6に示すように、ライセンスレンズ10の前端縁10bに傾斜面16を形成し、該傾斜面をテールレンズ6側の照明窓9の前側内縁に形成した傾斜面17に当接係合させるように構成してある。而して、傾斜面16,17同士の接触面を広くしてテールレンズ6とライセンスレンズ10との一体感を醸成して接合部分の見栄えを良くすると共に、その気密性を高める構造に成っている。
【0015】本発明に係る自動二輪車用灯具は、下面に開設した照明窓9にライセンスレンズ10を嵌め合わせて成るテールレンズ6を灯具ボディ1の開口周縁部4に嵌合密着するものであるため、テールレンズ6の下面、即ち開口周縁部7の下部側にローレット加工18を施すことができる。このようにテールレンズ6の開口周縁部7にローレット加工18を施すことにより、テールレンズ6とライセンスレンズ10との嵌合部分が透けて見えることもなく、従来の灯具のようにテールレンズ6の周囲から灯室3内が透視されることもない。
【0016】図6はライセンスレンズ10を示す平面図である。本発明に係るライセンスレンズ10は、固定溝12に嵌合する前端縁10bに、やや右寄りに位置して位置決め用の切欠19が形成してあり、固定溝12内に設けた位置決め用の突起20に嵌合して、ライセンスレンズ10の表裏面を誤って裏返しに取り付けることを防止し得るように構成したものである。
【0017】
【発明の効果】本発明に係る自動二輪車用灯具は、以上のように構成したから、ライセンスレンズをテールレンズの照明窓に略水平姿勢で取り付けた構造に成るため、テールレンズの下面を傾斜面として形成したものであっても、車体の後方から灯具を視認した場合、ライセンスレンズを通して灯具ボディの嵌合部や灯具内部が透視されることがなく、後方からの見栄えが良い。
【0018】また、灯具ボディとテールレンズとの間でライセンスレンズを挟持固定する構造であるため、灯具ボディに対するテールレンズの嵌合装着作業により、同時にライセンスレンズも固定することができ、灯具の組立作業性を向上すると共に、ライセンスレンズの確実な固定を可能にする。
【0019】更に、テールレンズの開口周縁部の下面周囲にもローレット加工を施してあるので、テールレンズとライセンスレンズとの嵌合部分が透けて見えることもなく、ライセンスレンズ構成部の見栄えを向上することができる等、本発明の実施により得られる効果は極めて大きい。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る自動二輪車用灯具の発明の実施の形態を示す側断面図である。
【図2】同じく正面図である。
【図3】同じく底面図である。
【図4】同じく分解側断面図である。
【図5】灯具ボディの正面図である。
【図6】ライセンスレンズの平面図である。
【図7】従来の自動二輪車用灯具を示す側断面図である。
【符号の説明】
1 灯具ボディ
4 開口周縁部
5 嵌合溝
6 テールレンズ
7 開口周縁部
8 嵌合脚
9 照明窓
10 ライセンスレンズ
10a 後端縁
10b 前端縁
11 ねじ
12 固定溝
13 立壁
14 係合爪
15 係止爪
16 傾斜面(ライセンスレンズ)
17 傾斜面(テールレンズ)
18 ローレット加工
L ライセンスプレート

【特許請求の範囲】
【請求項1】 灯具ボディの開口周縁部に嵌合溝を形成し、この嵌合溝にテールレンズの開口周部に形成した嵌合脚を嵌合密着する構造に成り、かつテールレンズの下面にはライセンスプレート照明部と成るライセンスレンズを有する自動二輪車用灯具において、前記テールレンズの下面にライセンスレンズ用の照明窓を開設すると共に、前記灯具ボディの内面に前記ライセンスレンズを支持固定するための固定溝を前記嵌合溝の内周側に形成し、前記ライセンスレンズの後端縁を前記固定溝に嵌合させると共に、前端縁側を前記照明窓の内周縁部に当接させて前記照明窓を被蓋したことを特徴とする自動二輪車用灯具。
【請求項2】 前記テールレンズ下面を後方へ傾斜させ、この傾斜面に開設形成した照明窓に対して前記ライセンスレンズを略水平に取り付けたことを特徴とする請求項1の自動二輪車用灯具。
【請求項3】 前記ライセンスレンズの前端縁側に傾斜面を形成し、この傾斜面を前記照明窓の前側内周縁部に形成した傾斜面に当接させるようにしてライセンスレンズを装着したことを特徴とする請求項1又は2の自動二輪車用灯具。
【請求項4】 前記テールレンズの下面内周にローレット加工を施したことを特徴とする請求項1,2又は3の自動二輪車用灯具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【特許番号】特許第3165039号(P3165039)
【登録日】平成13年3月2日(2001.3.2)
【発行日】平成13年5月14日(2001.5.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願平8−215188
【出願日】平成8年7月26日(1996.7.26)
【公開番号】特開平10−40716
【公開日】平成10年2月13日(1998.2.13)
【審査請求日】平成11年3月16日(1999.3.16)
【出願人】(000001133)株式会社小糸製作所 (1,575)
【参考文献】
【文献】実開 昭63−32941(JP,U)