説明

自動停止機構付スライドファスナー用スライダー

【課題】構成部品点数の減少によりコストが低減され、且つ、自動組立装置等を用いて円滑に且つ効率的に組み立てを行うことが可能な自動停止機構付スライドファスナー用スライダーを提供する。
【解決手段】本発明は、スライダー胴体(2,72,92) 、引手(8) 、前記スライダー胴体(2) に固定された引手保持体(3,73,93) 、前記上翼板(21)上に摺動可能に配される摺動部材(4) 、停止爪体(6,88)、前記停止爪体(6,88)を付勢する停止爪体付勢部(53,86,96)、及び前記摺動部材(4) を付勢する摺動部材付勢部(54,87,97)とを備え、前記引手(8) の取り付けが可能な自動停止機構付スライドファスナー用スライダー(1) であって、前記停止爪体付勢部(53,86,96)と前記摺動部材付勢部(54,87,97)とが単一の弾性部材(5,75,95) により構成されてなることに特徴を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、引手保持体が固定されたスライダー胴体に対して引手を後から取り付けることが可能なスライドファスナー用スライダーに関し、特に、構成部品点数を少なくして組み立てを容易に行うことが可能なスライドファスナー用スライダーに関する。
【背景技術】
【0002】
衣服や鞄等の開口部を開閉するために、その開口部にはスライドファスナーが取り付けられている。一般に、このようなスライドファスナーに用いられるスライダーは、案内柱により所定の間隔をおいて前端側が連結された上下翼板を有するスライダー胴体、スライダーを容易に操作するための摘み部となる引手、及び、スライダー胴体の上翼板との間で引手を移動及び回動可能に保持する引手保持体の3つの部品により主に構成されている。
【0003】
従来のスライドファスナーでは、例えば衣料品や鞄等のメーカー側にて顧客の要求や好みに容易に対応できるように、色や形態が異なる各種タイプの引手から所望の引手を任意に選択し、その引手を引手保持体が固定されているスライダー胴体に対して後から取り付けることが可能なように構成されたスライダーが多く用いられている。またその他に、例えばスライドファスナーの開閉操作が行われないときに、ファスナーエレメント列に対してスライダーの摺動を自動停止させる自動停止機構を備えているスライダーも多用されている。
【0004】
更に、例えば実公平4−32974号公報(特許文献1)や特開2004−187935号公報(特許文献2)等には、引手を後から取り付けることが可能であり、且つ、自動停止機構を備えているスライドファスナー用スライダーが開示されている。特に、前記特許文献1に記載されているスライダーは、引手が後付けできるだけでなく、引手保持体に一度取り付けた引手を容易に取り外して交換することが可能なように構成されている。ここで、特許文献1のスライダーについて、図23及び図24を参照しながら説明する。
【0005】
特許文献1のスライダー100は、軸孔115を有する取付片116がスライダー胴体101の上翼板上面に立設され、この取付片116にピン117を用いて、停止爪体103が上下揺動可能に軸支されるとともに、下向き凹状の引手保持体102の一端部が外嵌されて片持状に固着されている。また、スライダー胴体101の上翼板には、同上翼板を上下に貫通した係止窓孔104が形成されている。
【0006】
停止爪体103は、基端部103aと、同基端部103aから後方に延出した2本のアーム部103bと、下側アーム部103bの先端に形成された係止爪部103cとを有し、2本のアーム部103bの間には、引手106の取付軸部106aを収容するための作動凹溝107が形成されている。
【0007】
また、停止爪体103の基端部下面側には、第1コイルばね118がスライダー胴体101の前端部に形成された小孔内に介装されて配されており、停止爪体103は、同第1コイルばね118によって、係止爪部103cがスライダー胴体101の係止窓孔104からエレメント案内路へ突出するように常に付勢されている。
【0008】
引手保持体102は、左右の壁部の後口側寄りに凹状に形成された退避空間111と、肩口側寄りに凹状に形成された収納空間112と、退避空間111と収納空間112の間に連続して形成された連続縁部113とを有している。また、引手保持体102の後口側の端部とスライダー胴体101の上翼板との間には、引手106の取付軸部106aが挿通可能な間隙部108が形成されている。
【0009】
スライダー胴体101の上翼板には、前記間隙部108を開閉する開閉部材109が後口側寄りの間隙閉鎖位置と肩口側寄りの間隙開口位置との間を摺動できるように配設されている。この開閉部材109は、第2コイルばね120によって間隙閉鎖位置方向に向けて常に付勢されている。
【0010】
また、開閉部材109は上面視にて略U字状を呈しており、その二股状のアーム部には、上方に突出した第1閉鎖部110と第2閉鎖部114とがそれぞれ基端側と先端側に形成されている。これにより、開閉部材109は、開閉部材109が付勢されて間隙閉鎖位置にあるときに、前記間隙部108を引手106の取付軸部106aが通過できないように第1閉鎖部110により閉鎖し、また、引手保持体102の連続縁部113とスライダー胴体101の上翼板との間の間隙を引手106の取付軸部106aが通過できないように第2閉鎖部114により閉鎖している。
【0011】
上述のような構成を有する特許文献1のスライダー100は、先ずスライダー胴体101に停止爪体103、開閉部材109、引手保持体102などの部品を組み付けて1次組立体119を形成し、その後、得られた1次組立体119に対して引手106を取り付けることによって組み立てられている。
【0012】
この場合、引手106の取り付けは、図24に示したように、先ず、引手106の取付軸部106aを前記間隙部108内に押し込むことにより、開閉部材109を前方の間隙開口位置まで摺動させ、更に、引手106の取付軸部106aを引手保持体102の退避空間111内へ移動させる。このとき、引手106の取付軸部106aが退避空間111内へ移動すると、開閉部材109が第2コイルばね120の付勢により、図24に示した元の間隙閉鎖位置に戻される。
【0013】
次に、引手106の取付軸部106aを、引手保持体102の退避空間111から、開閉部材109の第1及び第2閉鎖部110,114間に形成された凹部へ移動させ、更に、スライダー胴体101の前方に向けて押し込むことにより、開閉部材109を間隙開口位置まで移動させる。このとき、引手106の取付軸部106aは、開閉部材109の前記凹部内に納められた状態で連続縁部113の下端を通過して、停止爪体103の作動凹溝107内に収容される。
【0014】
その後、引手106を上方へ移動させて取付軸部106aを引手保持体102の収納空間112内へ移動させると、取付軸部106aと開閉部材109の第2閉鎖部114との干渉がなくなるため、開閉部材109は第2コイルばね120の付勢によって図24の間隙閉鎖位置へ戻される。これによって引手106の取付けが完了し、引手保持体102に保持されるように取り付けられた引手106は、開閉部材109が第2コイルばね120により間隙閉鎖位置に付勢されていることにより、スライダー100から自由に抜脱することが防止される。
【0015】
一方、引手106が取り付けられた後において、同引手106をスライダー100から取り外す場合には、開閉部材109を指等で間隙閉鎖位置と間隙間口位置との間で摺動させながら引手106を上記と逆の手順で移動させる。これにより、引手106を容易に取り外すことができ、またその後、引手106とは異なるタイプの引手を新たに取り付けることが可能となる。
【0016】
そして、上述のように引手106が取り付けられたスライダー100を操作する場合には、引手106を摘んで斜め上方向又はスライダー摺動方向に向けて引くことにより、同引手106の取付軸部106aによって停止爪体103が第1コイルばね118の付勢力に抗して持ち上げられるため、停止爪体103の係止爪部103cがスライダー胴体101のエレメント案内路から退避する。これにより、ファスナーチェーンに対してスライダー100を自由に摺動させることができ、エレメント列の噛合又は離脱を容易に行うことが可能となる。
【0017】
また、スライダー100を停止させて引手106を手放したときには、停止爪体103が第1コイルばね118に付勢されて、停止爪体103の係止爪部103cが上翼板の係止窓孔104からエレメント案内路に突出する。これにより、その係止爪部103cが、ファスナーチェーンのエレメント間に自動的に挿入されて係合し、スライダーの停止状態を維持することができる。
【0018】
前記特許文献2に記載されているスライダーは、図25及び図26に示したように、スライダー胴体201と、同スライダー胴体201に片持状に固定される引手保持体202と、引手保持体202の一端部をスライダー胴体201に固定するピン203と、スライダー胴体201の上翼板211に上下揺動可能に配される停止爪体204と、同停止爪体204を付勢する板ばね部材205とを有する組立体200に対して、図示しない引手が取り付けられることにより構成されている。
【0019】
この場合、スライダー胴体201の上翼板211には、同上翼板211を上下に貫通した係止窓孔212と、停止爪体204を支持する支持凹溝213とが形成されている。停止爪体204は、スライダー胴体201の支持凹溝213に嵌入する頭部と、同頭部から二股に分岐して延出した2本のアーム部と、下側アーム部の先端に形成された停止爪221とを有し、2本のアーム部の間には、引手の取付軸部を収容するための作動凹溝222が形成されている。
【0020】
板ばね部材205は、停止爪体204を付勢するために下凸状に屈曲した停止爪体付勢部231を有しており、同停止爪体付勢部231を停止爪体204の上面に当て付けることにより、停止爪221がスライダー胴体201の係止窓孔212からエレメント案内路内に突出するように停止爪体204を付勢している。また、板ばね部材205の一端部223は、湾曲部を介して折り返され、停止爪体204の上側アーム部214と上翼板211との間に挿し入れられている。
【0021】
このような特許文献2のスライダーにおいて組立体200に引手を取り付ける場合には、引手の取付軸部を引手保持体202の自由端側とスライダー胴体201の上翼板211との間に形成されている間隙に挿入し、同間隙に沿って押し込む。これにより、板ばね部材205の一端部223と停止爪体204の上側アーム部214とが引手の取付軸部により押し上げられて、同取付軸部が停止爪体204の作動凹溝222内に進入する。更に、取付軸部が進入して同取付軸部と板ばね部材205の一端部223との干渉がなくなることにより、板ばね部材205の一端部223がその弾性復帰力により元の位置に戻されて前記間隙が閉鎖される。これにより、引手の取付けが完了する。
【0022】
この特許文献2のスライダーは、前記特許文献1と同様に、引手を摘んでスライダーを摺動させる場合、停止爪体204の作動凹溝222内に収容された引手の取付軸部によって停止爪体204が板ばね部材205の付勢力に抗して持ち上げられる。これにより、停止爪221がエレメント案内路から退避するため、スライダーを自由に摺動させることができる。また、スライダーの操作終了後に引手を放すことにより、停止爪体204が板ばね部材205に付勢されて停止爪221が係止窓孔212からエレメント案内路に突出するため、スライダーの停止状態を維持することができる。
【特許文献1】実公平4−32974号公報
【特許文献2】特開2004−187935号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0023】
スライドファスナー用スライダーでは、スライドファスナーのコストダウンを図るために、例えば構成部品の点数を減らすことや、スライダーの組み立て作業を容易にして生産性を高めること等が求められている。更に現在において、スライダーの組み立ては手作業によって行われることもあるが、人件費を抑えるために円周方向に回転するターンテーブルを有する自動組立装置等を用いて機械的に行われることが多い。このため、スライダーの構成を、機械的な流れ作業において組み立て易いように設計することも要望されている。
【0024】
これらの点に関して、前記特許文献1に記載されているスライダー100では、図23にその分解図を示したように、スライダー胴体101にその他の構成部品を所定の位置に順番に嵌め込んで固定することによって組み立てられる。このため、スライダー100(1次組立体119)の組み立て工程では複雑な作業を求められることが少ない。従って、例えば手作業によってスライダー100の組み立てを簡単に行うことができ、また、ターンテーブルを有する自動組立装置等を用いた機械的な流れ作業によってもスライダー100の組み立てを円滑に行うことが可能である。
【0025】
しかしながら、特許文献1のスライダー100は、例えば前記特許文献2に記載のスライダーに比べて、より多くの部品を用いて構成されており、しかも、停止爪体103や開閉部材109を付勢するための弾性部材として、板ばねよりも高価なコイルバネ118,120が用いられている。このため、特許文献1のスライダー100では、製造コストを抑えることが難しく、またスライダーを機械的に自動で組み立てる場合に、部品点数の多さから組立作業の効率化が図れないという問題があった。
【0026】
これに対して、前記特許文献2のスライダーは、構成部品の点数が少なく、また、停止爪体204を付勢する弾性部材に板ばね部材205が使用されているという利点を有する。しかしながら、この特許文献2のスライダーの組み立てを行う場合、板ばね部材205の停止爪体付勢部231を停止爪体204の上面に当て付けるとともに、板ばね部材205の湾曲一端部223を停止爪体204の上側アーム部214と上翼板211との間に挿し入れた状態で停止爪体204と板ばね部材205とをスライダー胴体201に載置し、更に、停止爪体204及び板ばね部材205の上に引手保持体202を被せて固定するといった作業が必要となる。
【0027】
即ち、特許文献2のスライダーは、前記特許文献1における摺動部材109のようなスライダー胴体上を摺動する部材の配設を省略してスライダーの構成部品点数を減少させているため、スライダーの組み立て時に、板ばね部材205を停止爪体204の上面側から上側アーム部214の下面側に回り込ませるように配置して組み付けるといった極めて煩雑な組み付け作業が必要となる。
【0028】
従って、特許文献2では、スライダーの構成部品点数は少ないものの、例えばスライダーの組み立てを手作業により行う場合には、生産性を向上させることが困難となる。また、スライダーの組立作業を自動組立装置等を用いて機械的に行う場合には、装置の構造が複雑にならざるを得ず、コストダウンを図る上で大きな障害となっていた。
【0029】
本発明は上記従来の課題に鑑みてなされたものであって、その具体的な目的は、引手を後から取り付けることが可能な自動停止機構付スライドファスナー用スライダーにあって、構成部品点数の減少によりコストが低減され、しかも、自動組立装置等を用いて円滑に且つ効率的に組み立てを行うことが可能なスライダーを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0030】
上記目的を達成するために、本発明により提供される自動停止機構付スライドファスナー用スライダーは、基本的な構成として、上下翼板を有するスライダー胴体と、取付軸部を有する引手と、前記スライダー胴体の前記上翼板に片持状に固定され、前記引手の前記取付軸部を保持する引手保持体と、前記上翼板上に摺動可能に配される摺動部材と、前記上翼板に上下揺動可能に配され、前記引手の前記取付軸部を収容可能な作動凹溝を有する停止爪体と、前記停止爪体を付勢して同停止爪体の一部を前記スライダー胴体の前記上下翼板間に形成されたエレメント案内路に突出させる停止爪体付勢部と、前記摺動部材を一方の摺動方向に沿って付勢する摺動部材付勢部とを備え、前記摺動部材は、前記上翼板と前記引手保持体の自由端側との間に形成される間隙を前記引手の前記取付軸部が通過可能に開口する通過位置と、同取付軸部の通過を遮断する遮断位置との間を摺動し、且つ、前記摺動部材付勢部により前記遮断位置に向けて付勢され、同摺動部材を前記摺動部材付勢部の付勢に抗して前記通過位置に摺動させることにより、前記引手を前記引手保持体に取り付けることが可能な自動停止機構付スライドファスナー用スライダーであって、前記停止爪体付勢部と前記摺動部材付勢部とが単一の弾性部材により構成されてなることを最も主要な特徴とするものである。
特に、本発明に係るスライドファスナー用スライダーにおいて、前記引手保持体の内面には、前記弾性部材の一部を固定する固定部が設けられていることが好ましい。
【0031】
また本発明のスライダーにおいて、前記弾性部材は、金属製の第1板ばね部材により構成され、前記第1板ばね部材は、その一端部が前記引手保持体内の固定端側の上面部に配された前記固定部に固定され、その中間部が前記引手保持体内の自由端側の上面部に配された係着部に係着されることにより前記引手保持体内に保持され、前記停止爪体付勢部は、前記固定部と前記係着部との間に下凸状に屈曲して形成された屈曲部を有し、前記摺動部材付勢部は、前記係着部よりも前記第1板ばね部材の他端部側に、前記係着部から下方に向けて湾曲した湾曲部と、同湾曲部から前記摺動部材に向けて連続的に延びて同摺動部材に当接する延在部とを有していることが好ましい。
【0032】
一方、本発明において、前記弾性部材は、前記停止爪体が一体化された金属製の第2板ばね部材により構成され、前記第2板ばね部材は、その一端部が前記引手保持体内の上面部に配された前記固定部に固定されることにより前記引手保持体内に保持され、前記停止爪体付勢部は、前記固定部から断面視にて略U字状に湾曲したU字状湾曲部と、同U字状湾曲部から連続的に延在する第1延在部とを有し、前記摺動部材付勢部は、前記U字状湾曲部から分岐して前記摺動部材に向けて延び、同摺動部材に当接する第2延在部を有し、前記停止爪体は、前記停止爪体付勢部の前記第1延在部側の端部から連続的に設けられていることも可能である。
【0033】
更に、前記弾性部材は、金属製の第3板ばね部材により構成され、前記第3板ばね部材は、前記スライダー胴体に組み付けられた前記停止爪体及び前記摺動部材上に載置され、同第3板ばね部材の一端部及び中間部が前記引手保持体内の上面部とそれぞれ接触する第1接触部及び湾曲状の第2接触部を有し、前記停止爪体付勢部は、前記第1及び第2接触部間に下凸状に屈曲して形成された屈曲部を有し、前記摺動部材付勢部は、前記第2接触部よりも前記第3板ばね部材の他端部側に、前記第2接触部から前記摺動部材に向けて連続的に延びて同摺動部材に当接する延在部とを有していることも可能である。
【発明の効果】
【0034】
本発明に係る自動停止機構付スライドファスナー用スライダーには1つの弾性部材が配されており、同弾性部材は、スライダー胴体の上翼板に摺動可能に配された摺動部材を付勢する摺動部材付勢部と、同上翼板に上下揺動可能に配された停止爪体を付勢する停止爪体付勢部とを有している。
【0035】
このような弾性部材を備える本発明のスライダーは、例えば前記特許文献1のような摺動部材付勢部と停止爪体付勢部とがそれぞれ別々の弾性部材(コイルスプリング)によって構成されているスライダーに比べて、構成部品点数を少なくして構成することができるため、製造コストの低減や組立作業の効率化を容易に図ることができる。
【0036】
更に、本発明に係るスライダーは、弾性部材により遮断位置に向けて付勢される摺動部材を有し、この摺動部材を弾性部材の付勢に抗して通過位置に摺動させることにより、引手を引手保持体に取り付けることが可能なように構成されている。即ち、本発明では、このような摺動部材を配設した上で構成部品点数の減少を図っているため、例えばスライダーの組み立てを行う際に、弾性部材を摺動部材及び停止爪体の上面側から単純に組み付けることにより、弾性部材が摺動部材及び停止爪体を付勢している状態でスライダーを容易に組み立てることが可能となり、摺動部材を備えない前記特許文献2のスライダーのように弾性部材を停止爪体の上面側から下面側に回り込ませるように組み付ける煩わしい作業が求められることはない。
【0037】
従って、本発明のスライダーは、例えば手作業によって簡単に組み立てることができ、また、ターンテーブルを有する自動組立装置等を用いた機械的な流れ作業によっても円滑に且つ効率的に組み立てることができるため、生産性の向上を図ることができる。しかして、摺動部材と同摺動部材及び停止爪体を付勢する弾性部材とを配設したことにより、例えば特許文献2のスライダーに比べてその構成部品点数が多くなったとしても、組み立て効率や生産性が大幅に向上するため、結果的にコストの削減を図ることができる。
【0038】
更に、本発明に係るスライダーは、弾性部材により遮断位置に向けて付勢される摺動部材を有し、この摺動部材を弾性部材の付勢に抗して通過位置に摺動させることにより、引手を引手保持体に取り付けることが可能なように構成されている。本発明では、このような摺動部材を有することにより、スライダーの組み立てを行う際に、例えば弾性部材を摺動部材及び停止爪体の上面側から単純に組み付けることによって、弾性部材が摺動部材及び停止爪体を付勢している状態でスライダーを容易に組み立てることが可能となる。
【0039】
従って、本発明においては、摺動部材を備えない前記特許文献2のスライダーのように弾性部材を停止爪体の上面側から下面側に回り込ませるように組み付ける煩わしい作業が求められることはなく、例えば手作業によってスライダーの組み立てを簡単に行うことができ、また、ターンテーブルを有する自動組立装置等を用いた機械的な流れ作業によっても円滑に且つ効率的にスライダーを組み立てることができるため、生産性の向上を図ることができる。
【0040】
特に、本発明のスライダーにおいて、前記引手保持体の内面に前記弾性部材の一部を固定する固定部が設けられている場合、弾性部材を引手保持体内面に予め固定保持した状態で引手保持体をスライダー胴体に組み付けることによってスライダーを容易に組み立てることが可能となる。これにより、スライダーの組み立て作業を円滑に安定して行うことでき、また、弾性部材の取付位置がずれることを防いで弾性部材の組み付け状態を安定させることができるため、組み立て不良の発生防止を図ることができる。
【0041】
このような本発明のスライダーにおいて、摺動部材付勢部と停止爪体付勢部とを有する弾性部材は金属製の第1板ばね部材により構成されている。また、同第1板ばね部材は、その一端部が引手保持体内の固定端側上面部に配された固定部に固定されるとともに、その中間部が引手保持体内の自由端側上面部に配された係着部に係着されることによって、引手保持体内に保持されている。
【0042】
この第1板ばね部材における停止爪付勢部は、引手保持体の固定部と係着部との間に下凸状に屈曲して形成された屈曲部を有しており、また、摺動部材付勢部は、係着部から下方に向けて湾曲した湾曲部と、その湾曲部から摺動部材に向けて連続的に延びて同摺動部材に当接する延在部とを有している。
【0043】
このような形態を有する第1板ばね部材を用いることにより、停止爪付勢部と摺動部材付勢部とを有する弾性部材を容易に構成することができる。また、同第1板ばね部材を引手保持体の内面に固定した状態でその引手保持体をスライダー胴体の上翼板に固定することにより、第1板ばね部材が摺動部材及び停止爪体を付勢している状態に容易に組み付けられる。
【0044】
一方、本発明では、摺動部材付勢部と停止爪体付勢部とを有する弾性部材は、停止爪体も一体化された金属製の第2板ばね部材により構成されていても良い。この場合、同第2板ばね部材は、その一端部が引手保持体内の上面部に配された固定部に固定されることによって引手保持体内に保持されている。
【0045】
この第2板ばね部材における停止爪体付勢部は、固定部から断面視にて略U字状に湾曲したU字状湾曲部と、同U字状湾曲部から連続的に延在する第1延在部とを有しており、また、摺動部材付勢部は、U字状湾曲部から分岐して摺動部材に向けて延び、同摺動部材に当接する第2延在部を有している。更に、同第2板ばね部材に一体形成された停止爪体は、停止爪体付勢部の第1延在部側の端部から連続的に設けられた延設部分によって構成されており、これにより、停止爪体は停止爪体付勢部により常に付勢された状態となる。
【0046】
このような形態を有する第2板ばね部材を用いることによっても、停止爪付勢部と摺動部材付勢部とを有する弾性部材を容易に構成することができる。また、同第2板ばね部材を引手保持体の内面に固定した状態でその引手保持体をスライダー胴体の上翼板に固定することにより、第2板ばね部材が摺動部材を付勢している状態に容易に組み付けられる。
【0047】
更に、本発明では、摺動部材付勢部と停止爪体付勢部とを有する弾性部材を、引手保持体に固定保持されずにスライダー胴体に直接組み付けられる金属製の第3板ばね部材により構成されていても良い。この場合、第3板ばね部材は、スライダー胴体に組み付けられた停止爪体及び摺動部材上に載置され、同第3板ばね部材の一端部及び中間部が引手保持体内の上面部とそれぞれ接触する第1接触部及び湾曲状の第2接触部を有している。
【0048】
この第3板ばね部材における停止爪体付勢部は、前記第1及び第2接触部間に下凸状に屈曲して形成された屈曲部を有しており、また、摺動部材付勢部は、湾曲状の第2接触部から摺動部材に向けて連続的に延びて同摺動部材に当接する延在部とを有している。
【0049】
このような形態を有する第3板ばね部材を用いることによっても、停止爪付勢部と摺動部材付勢部とを有する弾性部材を容易に構成することができる。また、同第3板ばね部材を、スライダー胴体に組み付けた停止爪体及び摺動部材上に載置し、更に同スライダー胴体の上翼板に引手保持体を固定することにより、第3板ばね部材が摺動部材及び停止爪体を付勢している状態に容易に組み付けられる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0050】
以下、本発明の好適な実施の形態について、実施例を挙げて図面を参照しながら詳細に説明する。
【実施例1】
【0051】
図1〜図11は、本発明の実施例1に係る自動停止機構付スライドファスナー用スライダーを示している。ここで、図1は同スライドファスナー用スライダーが分解された状態を示す斜視図であり、図2は同スライダーにおけるスライダー胴体及び引手保持体の前端部を拡大して示す部分拡大図である。図3は同スライダーが備える引手保持体の縦断面図である。
【0052】
また、図4は引手保持体の横断面図であり、(a)は第1板ばね部材を固定保持する前の引手保持体を示し、(b)は第1板ばね部材を固定保持した後の引手保持体を示している。更に、図5は、引手保持体をスライダー胴体に固定したときの状態を示す要部上面図であり、図6は、図5に示したVI−VI線断面図である。更にまた、図7〜図11は、引手を取り付けるときの手順を説明する断面図である。
【0053】
本実施例1に係る自動停止機構付スライドファスナー用スライダー1は、図1に示すように、スライダー胴体2、引手保持体3、摺動部材4、弾性部材として機能する第1板ばね部材5、停止爪体6、及び、引手8の6つの構成部品を用いて形成されている。
【0054】
本実施例1のスライダー1において、引手保持体3や停止爪体6は、ステンレスや銅合金等の金属材料を使用してプレス成形やダイキャスト成形により製造することができる。一方、スライダー胴体2、摺動部材4、引手8は、アルミニウム合金、亜鉛合金などの金属材料を使用してダイキャスト成形によって製造することができる。なお、これらの部品は、金属材料に代えて、それぞれポリアミド、ポリプロピレン、ポリアセタール、ポリブチレンテレフタレート等の熱可塑性樹脂や耐摩耗性強化材を添加した熱可塑性樹脂材料などを使用して射出成形により製造することも可能である。
【0055】
前記スライダー胴体2は、図1や図7等に示すように、上翼板21と、下翼板22と、この上下翼板21,22の前端部を連結する案内柱23とを有しており、上下翼板21,22の左右側部には、左右の上下フランジ21a,22aがそれぞれ配されている。このスライダー胴体2は、上下翼板21,22の間にY字形のエレメント案内路24が形成されており、更に、スライダー胴体2の後端には後口が形成され、前方には2つの肩口が左右に形成されている。
【0056】
前記上翼板21の前部には爪体支持部27が立設しており、この爪体支持部27は、停止爪体6を嵌着可能な間隔をもって離間した左右壁部27a,27bと、これら左右壁部27a,27b間に形成され、停止爪体6を上下揺動可能に枢支する枢支凸部27cとを有している。なお、前記左右壁部27a,27bの外側面には、引手保持体3をスライダー胴体2に組み付ける際に、引手保持体3の後述する左右側壁部34aの一部を外面側から押圧して嵌入するための第1固定用凹部14が設けられている。
【0057】
同上翼板21には、図1及び図2に示したように、引手保持体3の固定端31を嵌着するための嵌着溝部28が、爪体支持部27の前方部から左右側方部に渡って形成されている。この嵌着溝部28は、爪体支持部27後部の左右側方に配された第1嵌着溝部28aと、爪体支持部27前部の左右側方と爪体支持部27の前方部とに配され、第1嵌着溝部28aから段部を介して左右方向に幅広に形成された第2嵌着溝部28bとを有している。
【0058】
これらの第1及び第2嵌着溝部28a、28bは、前面側から見たときに、上翼板21の上面から下方に所定の深さで凹設された縦溝と、同縦溝の下端から同縦溝に対して左右外側に向けて直角に延設された横溝とにより形成されている。また、上翼板21の上面には、第1嵌着溝部28aの縦溝に沿って左右の隆起部25が設けられている。
【0059】
また本実施例1の上翼板21において、爪体支持部27の後方側には、上翼板21の上面からエレメント案内路24に貫通する爪孔30が形成されている。更に、上翼板21の上面側には、同上翼板21の後端から爪孔30の左右側方部にかけて凹設され、摺動部材4を嵌着してスライダー長さ方向に摺動させる摺動部材収容部29aと、上翼板21の後端部に配され、摺動部材収容部29aの底面から突設した左右の突起部29bとが形成されている。
【0060】
この場合、前記摺動部材収容部29aの左右側壁には、摺動部材4の後述するガイド部43を嵌着するガイド部嵌着溝29cが設けられている。また、前記突起部29bは、摺動部材4を摺動部材収容部29aに嵌着した後に、左右の突起部29bの上部をスライダー胴体2の幅方向中央部に向けて押し曲げることにより、摺動部材4のストッパーとしての役割を果たす。なお、左右の突起部29bの基端部内側には、突起部29bを押し曲げ易くするために、凹部29dがスライダー前後方向に沿って形成されている。
【0061】
前記引手保持体3は下向きに略凹状に湾曲した形状を有しており、その内部には左右側壁部34aと天井部34bとにより囲まれた内部空間が形成されている。この引手保持体3は、その一端(固定端31)側が上翼板21の前部に固定されることにより、スライダー胴体2に対して長さ方向に片持状に取り付けられて、他端(自由端32)側とスライダー胴体2との間には間隙33が形成される。
【0062】
また、引手保持体3の内側上面には、図3に示したように、第1板ばね部材5の一端部を固定して保持する固定部36aと、第1板ばね部材5の中間部を係着する係着部36bとが垂設されている。固定部36aと係着部36bとは、それぞれ引手保持体3の前端部と後部とに配されており、それぞれが二股状の脚部36cを有している。この場合、固定部36a及び係着部36bは、第1板ばね部材5を保持する前の状態では、図4(a)に示すように、脚部36cが下方にまっすぐに延びた形態を有している。
【0063】
そして、固定部36aに第1板ばね部材5を固定保持するとともに、係着部36bに第1板ばね部材5を係着する場合には、第1板ばね部材5が、同第1板ばね部材5の後述する孔部51,52を固定部36a及び係着部36bの各脚部36cの位置に合わせて引手保持体3に組み合わせられた状態で、図4(b)に示すように各脚部36cを左右方向に開脚するように屈曲させる。これにより、引手保持体3の内部空間内に第1板ばね部材5が安定して装着される。なおこの場合、係着部36bでは、第1板ばね部材5の後述する停止爪体付勢部53を円滑に伸縮させるために、第1板ばね部材5がスライダー長手方向の微小な範囲内で動くことができるように係着されている。
【0064】
また、引手保持体3の固定端31には、スライダー胴体2の嵌着溝部28に嵌着するフランジ35が配されている。このフランジ35は、固定端31の後部側に配された第1フランジ35aと、固定端31の前部側に配され、左右への突出幅を第1フランジ35aよりも大きく形成した第2フランジ35bとを有しており、これらの第1及び第2フランジ35a,35bは、それぞれがスライダー胴体2の上翼板21に形成した第1及び第2嵌着溝部28a,28bの横溝に嵌入可能な寸法で形成されている。
【0065】
第1フランジ35aの上面には、引手保持体3をスライダー胴体2に組み付けて固定する際に、上翼板21に形成した隆起部25を上面側から押圧して、上翼板21の裏面側を第1フランジ35aに嵌着固定するための第2固定用凹部15が設けられている。第2フランジ35bの上面側には、同第2フランジ35bに隣接して、引手保持体3の左右側壁部34bから突出した突出部40が形成されている。
【0066】
この突出部40は、第2フランジ35bに比べて左右方向への突出幅が小さく、スライダー胴体2の上翼板21に形成した第2嵌着溝部28bの縦溝に嵌入するように形成されている。なお、第2フランジ35b及び突出部40は、引手保持体3の前端に近づくにつれて左右方向への突出幅が漸減するように形成されている。更に、引手保持体3の自由端32側の左右側面部には、退避部37と収容部38とが、スライダー胴体2に対向して凹状に形成されており、退避部37と収容部38との間には突出縁部39が配されている。
【0067】
前記摺動部材4は、スライダー胴体2の上翼板21にスライダー長手方向に摺動可能に嵌着され、また、同摺動部材4が摺動したときに爪孔30と干渉しないように、平面視にて略U字状に形成されている。この摺動部材4の左右側縁部には、上翼板21の摺動部材収容部29aに形成したガイド部嵌着溝29dに摺動可能に嵌着するガイド部43が設けられている。
【0068】
また、摺動部材4の二股状のアーム部には、上方に向けて凸状に形成された基端側の第1遮断部41と先端側の第2遮断部42とが配されている。本実施例1では、このような摺動部材4が上翼板21に摺動可能に配されていることにより、後述するように引手8の取り付けを円滑に行うことが可能となる。
【0069】
前記第1板ばね部材5は、ステンレス鋼などの連続する長尺な金属製板材から所定形状の金属片を打ち抜き、その得られた金属片に曲げ加工を施すことによって形成されている。この第1板ばね部材5には、その一端部と中間部とにそれぞれ孔部51,52が形成されており、これらの孔部51,52間には、下凸状に屈曲した屈曲部を有する停止爪体付勢部53が配されている。
【0070】
なお、本実施例1において、第1板ばね部材5の一端部に配されている孔部51は、前端側に開口した切欠きタイプの孔部に形成されており、中間部に配されている孔部52は、周辺が閉じた穴タイプの孔部に形成されている。しかし、本発明はこれに限定されず、例えば板ばね部材5の一端部に配される孔部を穴タイプに形成することや、中間部に配される孔部を左右側縁側に開口した切欠きタイプに形成することが可能である。
【0071】
また第1板ばね部材5において、中間部に形成した孔部52から第1板ばね部材5の他端部側には、孔部52から下方に向けて湾曲した湾曲部と、同湾曲部から摺動部材4に向けて連続的に延在する延在部とを有する摺動部材付勢部54が配されている。更に、第1板ばね部材5の延在部先端には、同延在部に対して直角に屈曲した屈曲部55が形成されている。これにより、本実施例1のスライダー1を組み立てたときに、第1板ばね部材5の延在部先端を摺動部材4に引っ掛けて安定して当接させることができる。
【0072】
前記停止爪体6は、スライダー胴体2の枢支凸部27cに枢着する枢支凹溝66が形成された爪体基部61と、爪体基部61から二股に分岐して延設した上側アーム部62及び下側アーム部63と、下側アーム部63の先端に形成され、スライダー胴体2の爪孔30を介してエレメント案内路24に突出する爪部64とを有している。また、上下のアーム部62,63間には作動凹溝65が設けられている。
【0073】
前記引手8は、短冊状板材により構成されている。この引手8の一端側には引手保持体3が挿入される環状部11が形成され、この環状部11から他端側にかけて把手部12が形成されている。また、環状部11の先端部には、円形断面をもつ取付軸部13が配されている。この取付軸部13の長さは、引手保持体3の幅寸法よりも大きく設定されている。
【0074】
次に、本実施例1の自動停止機構付スライドファスナー用スライダー1を組み立てる手順について説明する。
始めに、スライダー胴体2に摺動部材4と停止爪体6とを取り付ける第1組立工程を行う。この第1組立工程では、摺動部材4のガイド部43を上翼板21の摺動部材収容部29aに嵌入し、摺動部材4を上翼板21の後端側から挿し込んでスライダー胴体2に摺動可能に嵌着させる。
【0075】
その後、摺動部材収容部29aの入口側(スライダー後端側)に配した左右の突起部29bを、スライダー胴体2の幅方向中央部に向けて押し曲げる。このとき、突起部29bの基端部内側には凹部29dが形成されているため、突起部29bの押し曲げを容易に行うことができる。このように突起部29bを押し曲げることにより、摺動部材4がスライダー胴体2の上翼板21に脱落不能に組み付けられる。更に、同スライダー胴体2の爪体支持部27に停止爪体6を上方から嵌入し、停止爪体6の枢支凹溝66を爪体支持部27の枢支凸部27cに係着させることにより、停止爪体6をスライダー胴体2に上下揺動可能に枢支する。
【0076】
また、上述のような第1組立工程を行う一方で、その第1組立工程とは別に、引手保持体3の内部空間内に第1板ばね部材5を装着させる第2組立工程を行う。この第2組立工程では、第1板ばね部材5の一端部と中間部とに形成した各孔部51,52を、引手保持体3の固定部36aと係着部36bの位置にそれぞれ合わせて第1板ばね部材5を引手保持体3に組み合わせ、第1板ばね部材5の各孔部51,52に固定部36a及び係着部36bの各脚部36cを挿入する。その後、第1板ばね部材5を引手保持体3に組み合わせた状態で固定部36a及び係着部36bの各脚部36cを左右方向に開脚するように屈曲させる。これにより、引手保持体3の内部空間内に第1板ばね部材5が装着される。
【0077】
次に、摺動部材4と停止爪体6とが取り付けられたスライダー胴体2に、第1板ばね部材5が装着された引手保持体3を固定する第3組立工程を行う。この第3組立工程では、先ず、引手保持体3のフランジ35をスライダー胴体2の嵌着溝部28に嵌着し、固定する。具体的には、スライダー胴体2に対して引手保持体3を前方側にずらした状態で引手保持体3の第1フランジ35aをスライダー胴体2の第2嵌着溝部28bに上方から挿入する。
【0078】
続いて、同引手保持体3を嵌着溝部28に沿って後方にスライドさせることにより、引手保持体3の第1及び第2フランジ35a,35bをスライダー胴体2の第1及び第2嵌着溝部28a,28bの横溝にそれぞれ嵌入するとともに、引手保持体3の突出部40をスライダー胴体2の第2嵌着溝部28bの縦溝に収容して引手保持体3をスライダー胴体2に嵌着させる(図5を参照)。
【0079】
その後、引手保持体3の固定端31側の左右側壁部34aの一部を、スライダー胴体2の爪体支持部27に形成した第1固定用凹部14に向けて押圧することにより、図6に示したように、その左右側壁部34aの一部を第1固定用凹部14に嵌着して引手保持体3を爪体支持部27に加締め固定する。これにより、引手保持体3の上下方向への引張り力に対する取付強度を増大させることができる。
【0080】
またこのときに、上翼板21に形成した隆起部25を引手保持体3の第1フランジ35aに形成した第2固定用凹部15に向けて押圧することにより、上翼板21の裏面側の一部を第2固定用凹部15内に入り込むように塑性変形させる。これにより、引手保持体3の取付強度を更に増大させて、引手保持体3が前後方向(引手保持体3のスライド方向)へ移動することを防止し、引手保持体3をスライダー胴体2に安定して固定することができる。
【0081】
上述のような第3組立工程において第1板ばね部材5が装着された引手保持体3をスライダー胴体2に固定することによって、摺動部材4及び停止爪体6が第1板ばね部材5により付勢された状態の1次組立体10が得られる。このとき、1次組立体10は、図7に示したように、スライダー胴体2の爪体支持部27に枢支されている停止爪体6が、第1板ばね部材5の停止爪体付勢部53により下方に向けて付勢されているため、停止爪体6の爪部64を爪孔30からエレメント案内路24に突出させている。
【0082】
また、スライダー胴体2の上翼板21に摺動可能に嵌着されている摺動部材4は、第1板ばね部材5の摺動部材付勢部54により付勢されて、引手保持体3の自由端32側とスライダー胴体2の上翼板21との間に形成されている間隙33と、引手保持体3の突出縁部39と上翼板21との間に形成されている間隙とを、摺動部材4の第1遮断部41及び第2遮断部42によって引手8の取付軸部13が通過できないように狭くした遮断状態に保持している。このときの摺動部材4の位置を、引手8の取付軸部13の通過を遮断する遮断位置とする。
【0083】
そして、このような1次組立体10に引手8を取り付けるためには、先ず、引手8の取付軸部13を、1次組立体10の後端側から前記間隙33に向けて押し込む。これにより、摺動部材4が、第1板ばね部材5の摺動部材付勢部54の付勢力に抗して、上翼板21の摺動部材収容部29aに沿って前方に摺動し、引手8の取付軸部13を通過可能に前記間隙33が開口する通過位置に移動する。
【0084】
従って、引手8の取付軸部13は、開口した間隙33を通過し、更に摺動部材4の第1遮断部41の後側傾斜面に導かれて、図8に示したように、引手保持体3の退避部37内に移動する。そして、引手8の取付軸部13が退避部37に移動すると、取付軸部13によって前方に押し込まれていた摺動部材4は、取付軸部13との干渉が解除されるため、第1板ばね部材5の摺動部材付勢部54により付勢されることにより前記遮断位置に戻って前記間隙33を遮断状態する。
【0085】
その後、図9に示したように、引手保持体3の退避部37に収容されている引手8の取付軸部13を下方に移動させて同取付軸部13を摺動部材4の第1及び第2遮断部41,42間に収容してから、取付軸部13をスライダー胴体2の前方側に向けて押し込む。
【0086】
これにより、摺動部材4が再び上翼板21の摺動部材収容部29aに沿って、第1板ばね部材5の付勢力に抗して前方に摺動するため、引手保持体3の突出縁部39と上翼板21との間に形成されている間隙が開口し、その開口した間隙を介して、引手8の取付軸部13が、図10に示したように引手保持体3の退避部37から収容部38側に移動する。このとき、引手8の取付軸部13は、停止爪体6の上下のアーム部62,63間に導かれて作動凹溝65内に収容される。
【0087】
そして、引手8の取付軸部13が引手保持体3の収容部38内に移動すると、引手8の取付軸部13と摺動部材4の第2遮断部42との干渉がなくなるため、前方に押し込まれていた摺動部材4は、図11に示したように、第1板ばね部材5の摺動部材付勢部54により付勢されて前記遮断位置に戻る。
【0088】
これにより、引手8の取り付けが完了して、本実施例1のスライドファスナー用スライダー1を得ることができる。このとき、遮断位置に付勢されている摺動部材4は、その第2遮断部42により、引手保持体3の突出縁部39と上翼板21との間に形成される間隙を引手8の取付軸部13が通過できない遮断状態に保持している。このため、引手8の取付軸部13が停止爪体6の作動凹溝65内から抜出することを確実に防止することができる。
【0089】
一方、本実施例1のスライダー1において、引手8を1次組立体10から取り外す場合には、先ず、引手8の取付軸部13を引手保持体3の収容部38内に移動させた状態で摺動部材4を第1板ばね部材5の付勢力に抗して前進させる。続いて、取付軸部13を摺動部材4の第1及び第2遮断部41,42間に収容し、更に、摺動部材4を遮断位置に向けて摺動させる。これにより、引手8の取付軸部13を収容部38から退避部37側に移動させることができる。
【0090】
その後、例えば指等で第1板ばね部材5の摺動部材付勢部54を押圧するとともに、摺動部材4を通過位置に移動させて引手保持体3の自由端32側と上翼板21との間の間隙33を開口した状態に保持する。これにより、引手8を容易に取り外すことができ、その後に前記引手8とは異なるタイプの引手を新たに取り付けることが可能となる。
【0091】
以上のように、本実施例1のスライダー1は、1次組立体を組み立てた後から引手8の取り付けや取り替えを行うことができるとともに、停止爪体6が第1板ばね部材5により付勢されて爪部64がエレメント案内路24に突出することによって、エレメント案内路24に挿通したファスナーエレメント列に対してスライダー1の摺動を自動停止させる自動停止機構を備えている。
【0092】
その上、同スライダー1は、摺動部材4を付勢する摺動部材付勢部54と停止爪体6を付勢する停止爪体付勢部53とが単一の第1板ばね部材5により構成されており、コストがかかるコイルバネ等が使用されていない。これにより、スライダー1の構成部品点数を少なくして、製造コストの低減や組立作業の効率化を容易に図ることができる。
【0093】
特に本実施例1のスライダー1は、スライダー胴体2に配した爪体支持部27の枢支凸部27cに停止爪体6を上下揺動可能に枢支するとともに、第1板ばね部材5が引手保持体3内に固定保持されて構成されている。このため、本実施例1では、例えば前記特許文献1のスライダー100において停止爪体103を軸支しているピン117の配設も省略でき、構成部品点数の更なる削減が図られている。
【0094】
更に、本実施例1のスライダー1は、摺動部材4が上翼板21上を摺動可能に配されており、且つ、第1板ばね部材5を固定保持した引手保持体3を上翼板21に上面側から挿入して固定することにより、第1板ばね部材5が摺動部材4及び停止爪体6を付勢している状態で組み付けられるように構成されている。
【0095】
これにより、スライダー1の組立工程において、スライダー胴体2に対して摺動部材4、停止爪体6、及び、第1板ばね部材5が固定保持された引手保持体3を所定の位置に順番に単純に組み付けて固定することによって、スライダー1の組み立てを容易に行うことが可能となり、例えば前記特許文献2のように板ばね部材を回り込ませるように組み付ける複雑で煩わしい組立作業が求められることはない。
【0096】
従って、スライダー1は、例えば手作業によって簡単に組み立てることができる。また、ターンテーブルを有する自動組立装置等を用いた機械的な流れ作業によってスライダー1の組み立てを行う場合でも、スライダーを円滑に且つ効率的に組み立てることができる。このため、スライダー1の生産性を著しく向上させて、スライダーの更なるコストダウンを図ることが可能となる。
【実施例2】
【0097】
図12〜図20は、本発明の実施例2に係る自動停止機構付スライドファスナー用スライダーを示している。ここで、図12は同スライドファスナー用スライダーが分解された状態を示す斜視図であり、図13は同スライダーにおける引手保持体の縦断面図である。また、図14は引手保持体の横断面図であり、(a)は第2板ばね部材を固定保持する前の状態を示し、(b)は第2板ばね部材を固定保持した後の状態を示している。
【0098】
更に、図15の(a)は同第2板ばね部材の曲げ加工が施される前の状態を示す正面図であり、(b)は、実施例2における別の例に係る第2板ばね部材の曲げ加工が施される前の状態を示す正面図である。更にまた、図16〜図20は、引手を取り付けるときの手順を説明する断面図である。なお、本実施例2及び後述する実施例3において、前記実施例1と同様の構成を有する部品及び部材については同じ符号を用いて表しており、それによって、その説明を省略することとする。
【0099】
本実施例2に係る自動停止機構付スライドファスナー用スライダー71は、図12に示したように、スライダー胴体72、引手保持体73、摺動部材4、弾性部材として機能する第2板ばね部材75、及び、引手8の5つの構成部品を用いて形成されている。
【0100】
前記スライダー胴体72は、前記実施例1のスライダー胴体2に形成されている爪体支持部27の代わりに、支持部27’が引手保持体73をスライダー胴体2に安定して固定するために上翼板21に立設されている。この支持部27’は、左右壁部27a,27bと、これら左右壁部27a,27b間に形成された連結部27dとを有している。更に、同上翼板21には、引手保持体73のフランジ35を嵌着する嵌着溝部28が、支持部27’の前方部から左右側方部に渡って凹設されている。なお、本実施例2におけるスライダー胴体72において、支持部27’以外の構成については前記実施例1と実質的に同様である。
【0101】
前記引手保持体73は、図13に示したように、その内側上面に、第2板ばね部材75の一端部を固定して保持する固定部81aが配されている。本実施例2における固定部81aは、2組の二股状の脚部81cを有しており、第2板ばね部材75を保持する前の状態では、図14(a)に示すように、各脚部81cが下方にまっすぐに延びた形態を有している。なお、本実施例2における引手保持体73は、固定部81aが前記実施例1の引手保持体73に配された固定部36a及び係着部36bの代わりに配されていること以外については、前記実施例1と実質的に同様の構成を有している。
【0102】
前記第2板ばね部材75は、ステンレス鋼などの連続する長尺な金属製板材から、図15(a)に示したような形状を有する金属片82aを打ち抜き、その得られた金属片82aに曲げ加工を施すことによって形成されている。
【0103】
本実施例2において、第2板ばね部材75の一端部には、左右方向に突出した突出部85aを有する被固定部85が設けられている。また、同第2板ばね部材75には、被固定部85から断面視にて略U字状に湾曲したU字状湾曲部及び同U字状湾曲部から連続的に延在する第1延在部を備えた停止爪体付勢部86と、同停止爪体付勢部86のU字状湾曲部から分岐して摺動部材4に当接する第2延在部を備えた摺動部材付勢部87とが配されている。
【0104】
更に、本実施例2の第2板ばね部材75には、停止爪体付勢部86の第1延在部側の端部から屈曲部を介して連続的に延設された延設部分によって、停止爪体88が一体的に形成されている。この停止爪体88は、断面が略C字状を呈する爪体基部88aと、爪体基部88aの端部から屈曲して形成された爪部88bとを有しており、爪体基部88aの内側に形成された空間が引手8の取付軸部を収容する作動凹溝89として機能する。
【0105】
なお本発明において、停止爪体付勢部86、摺動部材付勢部87、及び停止爪体88が一体化された第2板ばね部材75は、図12(a)に示した形状の金属片82aだけでなく、図12(b)に示した形状に打ち抜かれた金属片82bに対して曲げ加工を施すことによっても、容易に形成することが可能である。
【0106】
上述のような5つの構成部品を有する本実施例2のスライドファスナー用スライダー71は、以下のような手順によって組み立てられる。
始めに、スライダー胴体72に摺動部材4を取り付ける第1組立工程を行う。この第1組立工程では、摺動部材4のガイド部43を上翼板21の摺動部材収容部29aに嵌入し、摺動部材4を上翼板21の後端側から挿し込んでスライダー胴体72に摺動可能に嵌着させる。その後、スライダー胴体72に配した左右の突片部29bを、スライダー胴体72の幅方向中央部に向けて押し曲げる。これにより、摺動部材4がスライダー胴体72の上翼板21に脱落不能に組み付けられる。
【0107】
また、上述のような第1組立工程を行う一方で、その第1組立工程とは別に、引手保持体73の内部空間内に第2板ばね部材75を装着させる第2組立工程を行う。この第2組立工程では、先ず、曲げ加工が施された所定の形状を有する第2板ばね部材75を引手保持体73に組み合わせる。
【0108】
このとき、第2板ばね部材75の被固定部85に形成された左右の突出部85aの位置を、引手保持体73に形成された二組の固定部81a間に合わせて、第2板ばね部材75を引手保持体73に組み合わせる。その後、第2板ばね部材75を引手保持体73に組み合わせた状態で、図14(b)に示すように固定部81aの各脚部81cを内側に向けて屈曲させることにより、引手保持体73の内部空間内に第2板ばね部材75が装着される。
【0109】
次に、摺動部材4が取り付けられたスライダー胴体72に、第2板ばね部材75が装着された引手保持体73を固定する第3組立工程を行う。この第3組立工程では、前記実施例1と同様に、引手保持体3のフランジ35をスライダー胴体2の嵌着溝部28に嵌着し、固定する。即ち、スライダー胴体2に対して引手保持体3を前方側にずらした状態で引手保持体3の第1フランジ35aをスライダー胴体2の第2嵌着溝部28bに上方から挿入し、更に同引手保持体3を後方にスライドさせることにより、引手保持体3をスライダー胴体2に嵌着させる。その後、引手保持体3の左右側壁部34aの一部を爪体支持部27の第1固定用凹部14に向けて押圧し、また、上翼板21の隆起部25を引手保持体3の第2固定用凹部15に向けて押圧することにより、引手保持体3がスライダー胴体2に固定される。
【0110】
これにより、引手保持体73がスライダー胴体72に安定して組み付けられて、摺動部材4が第2板ばね部材75により付勢されている状態の1次組立体90を得ることができる。この場合、第2板ばね部材75に一体化されている停止爪体88は、同第2板ばね部材75の停止爪体付勢部86により付勢されて、その爪部88bをスライダー胴体72の爪孔30からエレメント案内路24に突出させている。
【0111】
その後、この得られた1次組立体90に引手8を取り付けるために、図16に示したように、引手8の取付軸部13を、1次組立体90の後端側から、引手保持体73の自由端32側とスライダー胴体72の上翼板21との間に形成されている間隙33に向けて押し込む。これにより、摺動部材4が、第2板ばね部材75の摺動部材付勢部87の付勢力に抗して上翼板21の摺動部材収容部29に沿って前方に摺動し、引手8の取付軸部13を通過可能に前記間隙33が開口する通過位置に移動する。このため、引手8の取付軸部13は、開口した間隙33を通過し、更に摺動部材4の第1閉鎖部41の後側傾斜面に導かれて、引手保持体73の退避部37内に移動する(図17を参照)。
【0112】
そして、引手8の取付軸部13が退避部37に移動すると、取付軸部13によって前方に押し込まれていた摺動部材4は、取付軸部13との干渉が解除されるため、第2板ばね部材75の摺動部材付勢部87によって付勢されることにより、前記遮断位置に戻って前記間隙33を遮断状態する。
【0113】
その後、図18に示したように、引手保持体73の退避部37に収容されている引手8の取付軸部13を下方に移動させて同取付軸部13を摺動部材4の第1及び第2閉鎖部41,42間に収容し、更に、同取付軸部13をスライダー胴体72の前方側に向けて押し込む。
【0114】
これにより、摺動部材4が再び上翼板21の摺動部材収容部29aに沿って、第2板ばね部材75の付勢力に抗して前方に摺動するため、引手保持体73の突出縁部39と上翼板21との間に形成されている間隙が開口し、その開口した間隙を介して、引手8の取付軸部13が図19に示したように引手保持体73の退避部37から収容部38側に移動するとともに、停止爪体88の作動凹溝89内に収容される。
【0115】
そして、引手8の取付軸部13が引手保持体73の収容部38内に移動すると、引手8の取付軸部13と摺動部材4の第2閉鎖部42との干渉がなくなるため、前方に押し込まれていた摺動部材4は、図20に示したように、第2板ばね部材75の摺動部材付勢部87により付勢されて遮断位置に戻る。
【0116】
これにより、引手8の取り付けが完了して、本実施例2のスライドファスナー用スライダー1を得ることができる。このとき、遮断位置に付勢されている摺動部材4は、その第2遮断部42により、引手保持体3の突出縁部39と上翼板21との間に形成される間隙を引手8の取付軸部13が通過できない遮断状態に保持している。このため、引手8の取付軸部13が停止爪体88の作動凹溝89内から抜出することを防止できる。
【0117】
なお、本実施例2のスライダー71において、引手8を1次組立体90から取り外す場合には、前記実施例1と同様の手順にて、引手8の取付軸部13を収容部38から退避部37側に移動させる。その後、指等で第2板ばね部材75の摺動部材付勢部87を押圧するとともに、摺動部材4を通過位置に移動させて引手保持体73の自由端32側と上翼板21との間の間隙33を開口した状態に保持する。これにより、引手8を容易に取り外して引手8の取り替えを行うことが可能となる。
【0118】
以上のように、本実施例2のスライダー71は、引手8の取り付けや取り替えを後から行うことができるとともに、停止爪体88が第2板ばね部材75により付勢されて爪部88bがエレメント案内路24に突出することによって、エレメント案内路24に挿通したファスナーエレメント列に対してスライダー1の摺動を自動停止させる自動停止機構を備えている。
【0119】
その上、同スライダー71は、摺動部材4を付勢する摺動部材付勢部87と停止爪体88を付勢する停止爪体付勢部86とが単一の第2板ばね部材75により構成されており、且つ、同第2板ばね部材75には停止爪体88も一体化されている。このため、スライダー71の構成部品点数を、前記実施例1のスライダー1よりも更に少なくすることができ、より効果的に製造コストの低減や組立作業の効率化を図ることができる。
【0120】
更に、本実施例2のスライダー71は、前記実施例1と同様に、前記特許文献2のスライダー組立時に行われるような複雑で煩わしい組立作業が求められることはなく、手作業によって簡単に組み立てることができる。また、ターンテーブルを有する自動組立装置等を用いてスライダー71の組み立てを行う場合でも、スライダー71を円滑に且つ効率的に組み立てることができる。
【実施例3】
【0121】
図21及び図22は、本発明の実施例3に係る自動停止機構付スライドファスナー用スライダーを示している。ここで、図21は同スライドファスナー用スライダーが分解された状態を示す斜視図であり、図22は同スライドファスナー用スライダーの断面図である。
【0122】
本実施例3に係る自動停止機構付スライドファスナー用スライダー91は、スライダー胴体92、引手保持体93、摺動部材4、弾性部材として機能する第3板ばね部材95、停止爪体6、及び、引手8の6つの構成部品を用いて形成されている。
【0123】
前記スライダー胴体92は、上翼板21に立設される爪体支持部27″の左右壁部27e,27fにおける立設高さ(上翼板21からの高さ)が、前記実施例1のスライダー胴体2に形成されている爪体支持部27の左右壁部27a,27bよりも高く設定されている。なお、このスライダー胴体92における左右壁部27e,27f以外の構成については、前記実施例1と実質的に同様である。
【0124】
前記引手保持体93においては、前記実施例1の引手保持体3の内面に配されている固定部36aが排除されており、また、前記実施例1の係着部36bの代わりに、第3板ばね部材95の組み付け状態を安定させるための突起部93aが垂設されている。なお、本実施例3の引手保持体93における突起部93a以外の構成については、前記実施例1と実質的に同様である。
【0125】
前記第3板ばね部材95は、その一端部と湾曲した中間部とに引手保持体93の内側上面部と接触する第1及び第2接触部98,99とを有している。また、第3板ばね部材95の第2接触部99には、引手保持体93の突起部93aを挿入可能な孔部99aが形成されており、この孔部99aと第3板ばね部材95の一端部との間には屈曲部を有する停止爪体付勢部96が配されている。
【0126】
第3板ばね部材95の他端部側には、湾曲状の第2接触部99から摺動部材4に向けて連続的に延び、同摺動部材4に当接する延在部を有する摺動部材付勢部97が配されている。更に、第3板ばね部材95の延在部先端には、同延在部に対して直角に屈曲した屈曲部55が形成されている。
【0127】
上述のような6つの構成部品を有する本実施例3のスライドファスナー用スライダー91は、以下のような手順によって組み立てられる。
始めに、第1組立工程として、摺動部材4のガイド部43を上翼板21の摺動部材収容部29aに嵌入し、摺動部材4を上翼板21の後端側から挿し込んでスライダー胴体92に摺動可能に嵌着させ、その後、スライダー胴体92に配した左右の突起部29bを押し曲げる。更に、同スライダー胴体92の爪体支持部27″に停止爪体6を上方から嵌入し、停止爪体6の枢支凹溝66を爪体支持部27″の枢支凸部27cに係着させることにより、停止爪体6をスライダー胴体92に上下揺動可能に枢支する。
【0128】
続いて、第2組立工程として、第3板ばね部材95を摺動部材4及び停止爪体6の上面側から挿入し、第3板ばね部材95の屈曲部よりも先端側を爪体支持部の左右壁部27e,27f間に嵌入するとともに、同第3板ばね部材95を摺動部材4及び停止爪体6の上に載置する。
【0129】
次に、第3板ばね部材95が載置されたスライダー胴体92に、引手保持体93を嵌着して固定する第3組立工程を行う。この第3組立工程において、引手保持体93を固定する方法については、前記実施例1と実質的に同様である。即ち、スライダー胴体92に対して引手保持体93を前方側にずらした状態で引手保持体93の第1フランジ35aをスライダー胴体92の第2嵌着溝部28bに上方から挿入し、同引手保持体93を嵌着溝部28に沿って後方にスライドさせることにより、引手保持体3をスライダー胴体2に嵌着させる。
【0130】
このとき、第3板ばね部材95は、その中間部(第2接触部99)から他端部側が下り傾斜した状態で載置されているため、引手保持体93を上述のように上方から挿入してスライドさせる際に、引手保持体93を第3板ばね部材95に引っ掛からせることなく、スライダー胴体2に円滑に嵌着させることができる。
【0131】
その後、引手保持体93の固定端31側の左右側壁部34aの一部を、爪体支持部27″の第1固定用凹部14に向けて押圧するとともに、上翼板21の隆起部25を引手保持体93の第2固定用凹部15に向けて押圧する。これにより、引手保持体93がスライダー胴体92に固定されて、摺動部材4及び停止爪体6が第3板ばね部材95によって付勢されている状態の1次組立体を得ることができる。
【0132】
その後、この得られた1次組立体に対して、引手8を前記実施例1及び実施例2と同様の操作を行って移動させることによって、図22に示したように引手8を引手保持体93に取り付けることができる。なお、同引手8は容易に取り外して引手8の取り替えを行うことも可能である。
【0133】
このような第3板ばね部材95を引手保持体93に固定しないようなタイプのスライダー91であれば、前記実施例1及び実施例2のように第1組立工程と第2組立工程とを独立した別々の工程で行わずに、第1〜第3組立工程を上述のように順番に連続的に行うことが可能となるため、スライダー91をより効率的に組み立てることができ、組立作業の効率化や生産性の向上をより効果的に達成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0134】
【図1】本発明の実施例1に係る自動停止機構付スライドファスナー用スライダーが分解された状態を示す斜視図である。
【図2】同スライダーにおけるスライダー胴体及び引手保持体の前端部を拡大して示す部分拡大図である。
【図3】同スライダーが備える引手保持体の縦断面図である。
【図4】(a)は第1板ばね部材を固定保持する前の引手保持体を示す横断面図であり、(b)は第1板ばね部材を固定保持した後の引手保持体を示す横断面図である。
【図5】引手保持体をスライダー胴体に固定したときの状態を示す要部上面図である。
【図6】図5に示したVI−VI線断面図である。
【図7】同スライダーの1次組立体に引手を取り付ける際の1次組立体と引手の状態を示す縦断面図である。
【図8】引手の取付軸部により摺動部材を摺動させて、同取付軸部が引手保持体の退避部に移動した状態を示す縦断面図である。
【図9】同取付軸部が引手保持体の退避部に移動した後、摺動部材が遮断位置に戻った状態を示す縦断面図である。
【図10】引手の取付軸部により摺動部材を摺動させて、同取付軸部が引手保持体の収容部に移動する状態を示す縦断面図である。
【図11】引手の取付軸部が停止爪体の作動凹溝に収容された状態を示す縦断面図である。
【図12】本発明の実施例2に係る自動停止機構付スライドファスナー用スライダーが分解された状態を示す斜視図である。
【図13】同スライダーが備える引手保持体の縦断面図である。
【図14】(a)は第2板ばね部材を固定保持する前の引手保持体を示す横断面図であり、(b)は第2板ばね部材を固定保持した後の引手保持体を示す横断面図である。
【図15】(a)は実施例2の第2板ばね部材における曲げ加工が施される前の状態を示す模式図であり、(b)は第2板ばね部材の変形例における曲げ加工が施される前の状態を示す模式図である。
【図16】同スライダーの1次組立体に引手を取り付ける際の1次組立体と引手の状態を示す縦断面図である。
【図17】引手の取付軸部により摺動部材を摺動させて、同取付軸部が引手保持体の退避部に移動した状態を示す縦断面図である。
【図18】同取付軸部が引手保持体の退避部に移動した後、摺動部材が遮断位置に戻った状態を示す縦断面図である。
【図19】引手の取付軸部により摺動部材を摺動させて、同取付軸部が引手保持体の収容部に移動する状態を示す縦断面図である。
【図20】引手の取付軸部が停止爪体の作動凹溝に収容された状態を示す縦断面図である。
【図21】本発明の実施例3に係る自動停止機構付スライドファスナー用スライダーが分解された状態を示す斜視図である。
【図22】同スライダーが組み立てられたときの状態を示す縦断面図である。
【図23】従来のスライダーの分解斜視図である。
【図24】従来のスライダーの1次組立体と引手を示す縦断面図である。
【図25】従来のスライダーの分解斜視図である。
【図26】従来のスライダーの1次組立体を示す縦断面図である。
【符号の説明】
【0135】
1 自動停止機構付スライドファスナー用スライダー
2 スライダー胴体
3 引手保持体
4 摺動部材
5 第1板ばね部材(弾性部材)
6 停止爪体
8 引手
10 1次組立体
11 環状部
12 把手部
13 取付軸部
14 第1固定用凹部
15 第2固定用凹部
21 上翼板
21a 上フランジ
22 下翼板
22a 下フランジ
23 案内柱
24 エレメント案内路
25 隆起部
27 爪体支持部
27’ 爪体支持部
27″ 爪体支持部
27a 左壁部
27b 右壁部
27c 枢支凸部
27d 連結部
27e 左壁部
27f 右壁部
28 嵌着溝部
28a 第1嵌着溝部
28b 第2嵌着溝部
29a 摺動部材収容部
29b 突起部
29c ガイド部嵌着溝
29d 凹部
30 爪孔
31 固定端
32 自由端
33 間隙
34a 左右側壁部
34b 天井部
35 フランジ
35a 第1フランジ
35b 第2フランジ
36a 固定部
36b 係着部
36c 脚部
37 退避部
38 収容部
39 突出縁部
40 突出部
41 第1閉鎖部
42 第2閉鎖部
43 ガイド部
51,52 孔部
53 停止爪体付勢部
54 摺動部材付勢部
55 屈曲部
61 爪体基部
62 上側アーム部
63 下側アーム部
64 爪部
65 作動凹溝
66 枢支凹溝
71 自動停止機構付スライドファスナー用スライダー
72 スライダー胴体
73 引手保持体
75 第2板ばね部材(弾性部材)
81a 固定部
81c 脚部
82a,82b 金属片
85 被固定部
85a 突出部
86 停止爪体付勢部
87 摺動部材付勢部
88 停止爪体
88a 爪体基部
88b 爪部
89 作動凹溝
90 1次組立体
91 自動停止機構付スライドファスナー用スライダー
92 スライダー胴体
93 引手保持体
93a 突起部
95 第3板ばね部材
96 停止爪体付勢部
97 摺動部材付勢部
98 第1接触部
99 第2接触部
99a 孔部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
上下翼板(21,22) を有するスライダー胴体(2,72,92) と、取付軸部(13)を有する引手(8) と、前記スライダー胴体(2,72,92) の前記上翼板(21)に片持状に固定され、前記引手(8) の前記取付軸部(13)を保持する引手保持体(3,73,93) と、前記上翼板(21)上に摺動可能に配される摺動部材(4) と、前記上翼板(21)に上下揺動可能に配され、前記引手(8) の前記取付軸部(13)を収容可能な作動凹溝(65,89) を有する停止爪体(6,88)と、前記停止爪体(6,88)を付勢して同停止爪体(6,88)の一部を前記スライダー胴体(2,72,92) の前記上下翼板(21,22) 間に形成されたエレメント案内路(24)に突出させる停止爪体付勢部(53,86,96)と、前記摺動部材(4) を一方の摺動方向に沿って付勢する摺動部材付勢部(54,87,97)とを備え、前記摺動部材(4) は、前記上翼板(21)と前記引手保持体(3,73,93) の自由端(32)側との間に形成される間隙(33)を前記引手(8) の前記取付軸部(13)が通過可能に開口する通過位置と、同取付軸部(13)の通過を遮断する遮断位置との間を摺動し、且つ、前記摺動部材付勢部(54,87,97)により前記遮断位置に向けて付勢され、同摺動部材(4) を前記摺動部材付勢部(54,87,97)の付勢に抗して前記通過位置に摺動させることにより、前記引手(8) を前記引手保持体(3,73,93) に取り付けることが可能な自動停止機構付スライドファスナー用スライダー(1,71,91) であって、
前記停止爪体付勢部(53,86,96)と前記摺動部材付勢部(54,87,97)とが単一の弾性部材(5,75,95) により構成されてなることを特徴とする自動停止機構付スライドファスナー用スライダー。
【請求項2】
前記引手保持体(3,73)の内面には、前記弾性部材(5,75)の一部を固定する固定部(36a,81a) が設けられてなる請求項1記載の自動停止機構付スライドファスナー用スライダー。
【請求項3】
前記弾性部材は、金属製の第1板ばね部材(5) により構成され、
前記第1板ばね部材(5) は、その一端部が前記引手保持体(3) 内の固定端(31)側の上面部に配された前記固定部(36a) に固定され、その中間部が前記引手保持体(3) 内の自由端(32)側の上面部に配された係着部(36b) に係着されることにより前記引手保持体(3) 内に保持され、
前記停止爪体付勢部(53)は、前記固定部(36a) と前記係着部(36b) との間に下凸状に屈曲して形成された屈曲部を有し、
前記摺動部材付勢部(54)は、前記係着部(36b) よりも前記第1板ばね部材(5)の他端部側に、前記係着部(36b) から下方に向けて湾曲した湾曲部と、同湾曲部から前記摺動部材に向けて連続的に延びて同摺動部材に当接する延在部とを有してなる、
請求項2記載の自動停止機構付スライドファスナー用スライダー。
【請求項4】
前記弾性部材は、前記停止爪体(88)が一体化された金属製の第2板ばね部材(75)により構成され、
前記第2板ばね部材(75)は、その一端部が前記引手保持体(73)内の上面部に配された前記固定部(81a) に固定されることにより前記引手保持体(73)内に保持され、
前記停止爪体付勢部(86)は、前記固定部(81a) から断面視にて略U字状に湾曲したU字状湾曲部と、同U字状湾曲部から連続的に延在する第1延在部とを有し、
前記摺動部材付勢部(87)は、前記U字状湾曲部から分岐して前記摺動部材に向けて延び、同摺動部材に当接する第2延在部を有し、
前記停止爪体(88)は、前記停止爪体付勢部(86)の前記第1延在部側の端部から連続的に設けられてなる、
請求項2記載の自動停止機構付スライドファスナー用スライダー。
【請求項5】
前記弾性部材は、金属製の第3板ばね部材(95)により構成され、
前記第3板ばね部材(95)は、前記スライダー胴体(92)に組み付けられた前記停止爪体(6) 及び前記摺動部材(4) 上に載置され、同第3板ばね部材(95)の一端部及び中間部が前記引手保持体(93)内の上面部とそれぞれ接触する第1接触部(98)及び湾曲状の第2接触部(99)を有し
前記停止爪体付勢部(96)は、前記第1及び第2接触部(98,99) 間に下凸状に屈曲して形成された屈曲部を有し、
前記摺動部材付勢部(97)は、前記第2接触部よりも前記第3板ばね部材(95)の他端部側に、前記第2接触部(99)から前記摺動部材(4) に向けて連続的に延びて同摺動部材(4) に当接する延在部とを有してなる、
請求項1記載の自動停止機構付スライドファスナー用スライダー。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate

【図15】
image rotate

【図16】
image rotate

【図17】
image rotate

【図18】
image rotate

【図19】
image rotate

【図20】
image rotate

【図21】
image rotate

【図22】
image rotate

【図23】
image rotate

【図24】
image rotate

【図25】
image rotate

【図26】
image rotate


【公開番号】特開2009−106611(P2009−106611A)
【公開日】平成21年5月21日(2009.5.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−283379(P2007−283379)
【出願日】平成19年10月31日(2007.10.31)
【出願人】(000006828)YKK株式会社 (263)
【Fターム(参考)】