説明

自動停止装置付スライドファスナー用スライダー

【課題】スライダーのカバーに内装した板バネの両端がカバーおよび支持部分に関係なく揺動し、板バネの弾性力を充分に発揮できる自動停止装置付スライダーを提供する。
【解決手段】胴体1、引手2、爪杆3、板バネ4、カバー5から形成した自動停止装置付スライダーにおいて、胴体1の上翼板7の前後に取付部12,13を立設し、取付部12,13の前端または後端から内側へ隔離した位置に収容部15, 16を設け、カバー5の前後壁29, 30から内側へ隔離した上壁32の中央に突起36を設け、この突起36に両端に切欠部26のある板バネ4をを嵌挿し、カバー5の側壁31内に突起36に対向する支持片37を設けて、先端を折曲して板バネ4を保持する板バネ支持用の保持機構35を形成し、この保持機構35を収容部15, 16に収容し、板バネ4の両端が保持機構35およびカバー5に関係なく上下に移動できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、スライダーが胴体、引手、爪杆、板バネカバーの5部材から構成された自動停止装置付スライドファスナー用スライダーであって、スライダーの組み立てが自動組立であれ、または手動組立であっても、スライダーの胴体に対し板バネおよびカバーの装備が的確、かつ安定した状態で装備し、板バネが有効、かつ円滑に作動できるスライドファスナー用スライダーに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、自動停止機構を備えた自動停止装置付スライダーは、胴体、引手、爪杆、板バネ、カバーの5部材から構成されている。例えば、図12に示すように、自動停止装置付スライダーは、胴体、引手、爪杆、板バネ、カバーから構成され、胴体の上翼板の前後に間隔をおいて取付柱を立設し、前後に立設した取付柱の上面には長方形の板体の板バネを保持するための第1保持部を設け、カバーの内面前後端に板バネを保持するための第2保持部を設け、これらの保持部間に板バネを遊嵌状に架設し、設置した板バネと上翼板との間に引手の枢軸と爪杆とを介在させ、その上方からカバーを上翼板の上面に立設した取付柱に固定した自動停止装置付スライドファスナー用スライダーが開示されている。
【0003】
そして、この形態のスライダーを自動組立加工または手動組立加工によって、板バネとカバーとを有効に固定するため、自動組立装置を用いるときは、図13に示すように胴体の上面に設けた斜面部間に引手の枢軸を載置し、その上側へ爪杆の係合突部を凹陥部に挿入し、停止爪を爪孔に挿入して、胴体の上翼板に立設した前後の取付柱の上面に設けた第1保持部に板バネを架設し、この際引手の枢軸を板バネと斜面部との間に介在させ、その上側へ爪杆を載置させた状態で、上方から取付柱を被覆する形でカバーを被せ、第1保持部が第2収容部、第2保持部が第1収容部に対応して嵌装させた後、カバーを取付柱の側面に加締め固定すれば自動停止装置付スライダーを組み立てることができる。
【0004】
手動作業による組み立ての場合は、図14に示すように胴体の上面に設けた斜面部間に引手の枢軸を載置し、その上側へ爪杆の係合突部を凹陥部に挿入し、停止爪を爪孔に挿入するとともに、カバーの上壁内面に設けた前後端の突起の第2保持部に板バネの凹部を嵌入しV字溝のある突起を左右に折曲して板バネを保持し、この状態のカバーを取付柱に被せ、第1保持部が第2収容部、第2保持部が第1収容部に対応嵌装させ、カバーを取付柱の側面に加締め固定すれば自動停止装置付スライダーを組み立てることができる。
【特許文献1】特開2004−147729号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
前項で述べた図12,13,14に示した自動停止装置付スライダーは、胴体の前後に立設した取付柱の上面の第1保持部間に板バネを架設し、上方から取付柱を被覆するようにカバーを被せ、第1保持部と第2収容部、第2保持部と第1収容部が対応し、カバーを取付柱に加締め固定した際、自動的に組み立てるときも、また手動的に組み立てるときも、板バネの端部を第2保持部とカバーの上壁とによって挟持する関係で板バネの端部がルーズな運動ができなく動きは限定される。従って板バネの先端の保持を行うための加締めは精度が要求され、精度が悪いと板バネが動くときに余裕がないため、保持部と干渉を惹起する。その結果スムーズな動きができなかったり、板バネが塑性変形してしまって弾性力を失ってしまうなど問題点がある。
【0006】
この発明は、上述の問題点を考慮して発明されたものであり、請求項1記載の発明は、自動停止装置付スライダーが、胴体、引手、爪杆、板バネ、カバーの5部材から構成され、この自動停止装置付スライダーを自動的に組み立てでも、手動的に組み立てでも簡単に行うことができ、しかも装備される板バネがきわめて安定した状態で保持され、かつ板バネの端部がルーズに動き上下方向の揺動が円滑に行うことができる自動停止装置付スライドファスナー用スライダーを提供することが主たる目的である。
【0007】
請求項2および3記載の発明は、それぞれ請求項1記載の発明の目的に加え、板バネの形状、およびカバーの板バネ保持機構を特定し、例えばカバーの前壁および後壁から内側に一定間隔で隔離し、すなわち胴体の中心寄りに寄った位置に突起を設けて板バネの先端に設けた凹状の切欠部分を挿入し、突起の側方に支持片をカバーの側壁に設け、支持片の先端を折曲して板バネをルーズに固定するか、またはカバーの両端から内側に隔離した位置に、頭部が左右の側壁へ向け拡開できる突起を設け、この突起に板バネの先端に設けた凹状の切欠部分を挿入し、突起の頭部を左右の側壁へ向けて拡開して板バネをルーズに固定し、板バネの端部の動きを自由に可動できる自動停止装置付スライドファスナー用スライダーを提供することが目的である。
【0008】
請求項4記載の発明は、請求項1記載の発明の目的に加え、スライダーの胴体の前後に設置したカバーを取り付ける部分、またカバーの内面の前後に設置した保持機構を有効に収容できる形態を特定し、スライダーの胴体とカバーとを的確に装備し、効率のよい板バネの弾性力が発揮できる自動停止装置付スライドファスナー用スライダーを提供することが目的である。
【0009】
請求項5記載の発明は、請求項2または3に記載した発明の目的に加え、前記の板バネ、カバーをはじめ引手、爪杆を装備するスライダーの胴体の形態を特定し、有効かつ安定した状態で各部材が協動して円滑な作動ができる自動停止装置付スライドファスナー用スライダーを提供することが目的である。
【0010】
請求項6または7記載の発明は、それぞれ請求項2および3記載の発明の目的に加え、カバーの形態およびカバーの内面に設ける突起と支持片の形態、またはカバーの内面に設ける拡開できる突起の形態を特定し、カバーの内面に設ける溝部および空間部を有効に活用し、円滑な板バネの弾性力が発揮できる自動停止装置付スライドファスナー用スライダーを提供することが目的である。
【0011】
請求項8記載の発明は、請求項6または7記載の発明の目的に加え、カバーの内面に形成する空間部を有効に設置するための形態を特定し、空間部を有効に活用し、板バネの作動を効率よく発揮できる自動停止装置付スライドファスナー用スライダーを提供することが目的である。
【課題を解決するための手段】
【0012】
前記の目的を達成するため、この発明のうち請求項1記載の発明は、スライドファスナーにおけるスライダーは、胴体1、引手2、爪杆3、板バネ4、カバー5の5部材から構成され、このうちカバー5は、前壁29、後壁30、両側の側壁31、上壁32から形成し、両側壁31の中央に引手2の枢軸24が挿通できる開口部33を設け、胴体1における上翼板7の上面の前後に一対の取付部12, 13を設け、カバー5の内面前後に前壁29、後壁30の端面から一定間隔で胴体1の内側へ隔離して板バネ保持用の保持機構35を設け、保持機構35に架設した板バネ4は、保持機構35とカバー5の上壁32との間に空間部39を形成し、板バネ4の両端における端部が揺動可能に保持し、板バネ4と上翼板7間に引手2の枢軸24および爪杆3を介在させ、カバー5を前後の取付部12, 13の側面に加締め固定した自動停止装置付スライドファスナー用スライダーを主な構成とするものである。
【0013】
請求項2記載の発明は、請求項1記載の発明の構成に加え、スライダーに用いる板バネ4は、長方形の板体で両端中央に凹状の切欠部26を設け、カバー5の内面前後端に板バネ支持用の保持機構35として、カバー5の前壁29、後壁30からそれぞれ一定間隔で内側へ隔離した上壁32に中央へ突出する突起36を前後に設け、この突起36に板バネ4の切欠部26を嵌挿し、突起36と並行するカバー5の側壁31に、内側すなわち胴体1の中心線へ向けて折曲できる支持片37をカバー5の前壁29、後壁30から一定間隔で内側へ隔離して設け、板バネ4が上下に揺動可能に保持した自動停止装置付スライドファスナー用スライダーである。
【0014】
請求項3記載の発明は、請求項1記載の発明の構成に加え、スライダーに用いる板バネ4は、長方形の板体で両端中央に凹状の切欠部26を設け、カバー5は前後端に板バネ支持用の保持機構35として、カバー5の前壁29、後壁30から一定間隔で内側へ隔離した上壁32に中央へ突出する突起36を前後に設け、この突起36は頭部が両側の側壁31へ向けて拡開し、この突起36に板バネ4の切欠部26を嵌挿し、胴体1の端部から一定間隔で内側へ隔離して設けた突起36の頭部を拡開して、板バネ4が上下に揺動可能に保持した自動停止装置付スライドファスナー用スライダーである。
【0015】
請求項4記載の発明は、請求項1記載の発明の構成に加え、スライダーの胴体1における上面の前後に立設した取付部12, 13の上面に、カバー5の内面に設置した板バネ支持用の保持機構35を収容する収容部15, 16を設け、この収容部15,16は前後の取付部12, 13の前端または後端から一定間隔で内側へ向けて隔離した位置に設けた自動停止装置付スライドファスナー用スライダーである。
【0016】
請求項5記載の発明は、請求項2または3記載の発明の構成に加え、スライダーの胴体1に設ける保持機構35を収容できる前方取付部12は、後口21側が傾斜し肩口20側が直立する角柱状で縦方向の中央に爪杆3の係止基部22を挿入できる係止凹部14を設け、係止凹部14の前方に横方向に凹状を呈する前方収容部15を取付部12の前端から内側へ隔離して設けて保持機構35を収容し、後方取付部13は、肩口20側が傾斜し後口21側が直立する角柱状で縦方向の中央に爪杆3の停止爪23が挿入できる爪孔18を設け、この爪孔18の後方に横方向全体が凹状を呈する後方収容部16を取付部13の後端から内側へ隔離して設けて保持機構35を収容した自動停止装置付スライドファスナー用スライダーである。
【0017】
請求項6記載の発明は、請求項2記載の発明の構成に加え、スライダーに用いるカバー5の内面2個所の中央に突起36を突設し、この突起36の両側の側壁31との間に空間部39が形成できる溝部40を設け、先端が突起36に向けて折曲して板バネ4を支持する支持片37を前壁29、後壁30から一定間隔で内側へ隔離した位置に設け、かつ側壁31の内側から支持片37を突設した自動停止装置付スライドファスナー用スライダーである。
【0018】
請求項7記載の発明は、請求項3記載の発明の構成に加え、スライダーに用いるカバー5の内面2個所に頭部が左右に拡開することができ、板バネ4が挿入する突起36を設け、この突起36の両側に側壁31との間に空間部39が形成できる溝部40を設け、突起36の頭部が両側の側壁31に向け拡開して板バネ4を支持し、この突起36を前壁29、後壁30から一定間隔で内側へ隔離した位置に設けた自動停止装置付スライドファスナー用スライダーである。
【0019】
請求項8記載の発明は、請求項6または7記載の発明の構成に加え、スライダーのカバー5内に配する板バネ4は、カバー4の内面2個所に突設した突起36に嵌挿して、両側の側壁31に設けた支持片37の先端を折曲して板バネ4を保持したとき、または突起36の頭部を両側の側壁31へ向け拡開して板バネ4を保持したとき、板バネ4を保持する保持部分が、板バネ4が弾性変形したときに揺動可能な空間部39が形成される位置に配設した自動停止装置付スライドファスナー用スライダーである。
【発明の効果】
【0020】
この出願の発明の効果として、請求項1記載の発明は、スライダーは、胴体、引手、爪杆、板バネ、カバーから構成され、カバーは、前壁、後壁、側壁、上壁から形成し、側壁の中央に引手の枢軸が挿通できる開口部を設け、胴体の上翼板上の前後に一対の取付部を設置し、カバーの内面前後に前壁、後壁から内側へ隔離して板バネ保持用の保持機構を設け、保持機構に架設した板バネは、保持機構とカバーの上壁との間に空間部を形成し、保持機構は板バネをその端部から隔離した位置で保持し、板バネと上翼板間に引手の枢軸および爪杆を介在させ、カバーを前後の取付部に固定したことによって、下記の効果を奏する。
【0021】
板バネ保持用の保持機構をカバーの内面前後に前壁および後壁から内側へ隔離した位置に設けることで、板バネの支持点を内側へ隔離して配することができ、板バネの端部が自由に上下に揺動でき、かつ板バネの端部がカバーの上面へ密着させていながら端部が露呈しルーズに動くので、板バネが具備する弾性力を存分に発揮することができ、かつ板バネを端部から隔離した個所を支持し、安定した状態で胴体に保持することができ、品質のよいスライダーが得られる効果がある。
【0022】
請求項2記載の発明は、請求項1記載の発明の効果に加え、板バネは長方形板の両端中央に凹状の切欠部を設け、カバーは内面の前後端に板バネ支持用の保持機構として、前後壁から内側へ隔離した上壁の中央に突出する突起を設け、該突起に板バネの切欠部を嵌挿し、カバーの側壁内に、突起に対向する支持片を前後壁から内側へ隔離して設け、支持片を折曲して板バネが上下に揺動可能に保持したことによって、カバーの端部から隔離した位置に突起を設け、またカバーの端部から隔離した位置に支持片を設けているから、双方が協動して板バネを保持し、簡単な構造で有効な弾性力が発揮できる効果がある。
【0023】
請求項3記載の発明は、請求項1記載の発明の効果に加え、板バネは長方形板の両端中央に凹状の切欠部を設け、カバーは内面の前後端に板バネ支持用の保持機構として、前後壁から内側へ隔離した上壁の中央に頭部が両側の側壁へ向けて拡開する突起を設け、該突起に板バネの切欠部を嵌挿し、突起の先端を拡開して板バネが上下に揺動可能に保持したことによって、カバーの端部から隔離した位置に頭部を拡開し板バネを固定する突起を設けている形態であるから構造が簡単で製作が容易である効果がある。
【0024】
請求項4記載の発明は、請求項1記載の発明の効果に加え、上翼板の前後に立設した取付部の上面に、カバーの内面に設置した保持機構を収容する収容部を設け、各収容部は各取付部の前端または後端から内側へそれぞれ隔離した位置に設けたことによって、カバーの内面に配した板バネ保持用の保持機構を簡単かつ確実に胴体に組み込むことができ、機能の優れた板バネを装備したスライダーに仕上げる効果がある。
【0025】
請求項5記載の発明は、請求項2または3記載の発明の効果に加え、保持機構を収容できる前方取付部は、後口側が傾斜し肩口側が直立する角柱状で縦方向中央に爪杆の係止基部を挿入できる係止凹部を形成し、係止凹部の前方に横方向に凹状を呈する前方収容部を前方取付部の前端から内側へ隔離して設けて保持機構を収容し、後方取付部は、肩口側が傾斜し後口側が直立する角柱状で縦方向中央に爪杆の停止爪が挿入できる爪孔を設け、爪孔の後方に横方向全体が凹状を呈する後方収容部を後方取付部の後端から内側へ隔離して設けて保持機構を収容したことによって、スライダーの胴体は、板バネ、カバーを有効かつ簡単に設置できる構造に作製することができ、各部材が効率よく協動して円滑な作動ができる効果がある。
【0026】
請求項6記載の発明は、請求項2記載の発明の効果に加え、カバーの内面2個所に突起を突設し、該突起の両側で側壁との間に空間部が形成できる溝部を設け、先端が突起に向け折曲して板バネを支持する支持片を前後壁から内側へ隔離し、かつ側壁の基部から突設したことによって、カバーにおける内面2個所に突起を突設し、突起の両側で側壁との間に空間部が形成できる溝部を設け、先端が突起に向け折曲する支持片を両側から内側へ隔離し、かつ側壁の内側から突設したことによって、カバーの内面に設ける突起と支持片とが有効に関連して溝部内に空間部を適切に設置できる効果がある。
【0027】
請求項7記載の発明は、請求項3記載の発明の効果に加え、カバーの内面2個所に突起を突設し、該突起の両側で側壁との間に空間部が形成できる溝部を設け、突起の頭部が両側の側壁に向け拡開して板バネを支持し、該突起は前後壁から内側へ隔離した位置に突設したことにより、突起が溝部に対して頭部を両側壁へ向け拡開して、板バネを支持しているから、板バネの取り付け作業が簡単であり、かつ板バネをカバー内の2個所で安定した状態で保持できる効果がある。
【0028】
請求項8記載の発明は、請求項6または7記載の発明の効果に加え、板バネを突起に嵌挿して支持片を折曲して保持したとき、または突起の頭部を左右に拡開して保持したとき、板バネを保持する保持部分が、板バネが弾性変形時に揺動可能な空間部が形成される位置に設けたことによって、板バネを保持する支持片の折曲機構および突起の拡開機構による保持部分が、板バネの両側が自由に上下に揺動できる空間部を形成し、板バネの揺動動作に支障を来すことがなく、品質のよい自動停止機構を備えたスライダーに仕上げることができる効果があるなど、この発明が奏する効果はきわめて顕著である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0029】
この発明における自動停止装置付スライドファスナー用スライダーは、金属製であり胴体1、引手2、爪杆3、板バネ4、カバー5の5部材から構成され、胴体1の上翼板7の上面における前後に、カバー5を被せて取り付ける前方取付部12、後方取付部13を立設し、前方取付部12は、中央へ向け後口21側が傾斜し、肩口20側が直立する角柱状に形成し、この前方取付部12における縦方向(胴体1の長手方向)の中央に爪杆3の屈曲した係止基部22が挿入できる係止凹部14を設け、前方取付部12の上面でこの係止凹部14の前方に横方向(胴体1の幅方向)に凹状を呈する前方収容部15を設け、この前方収容部15は、前方取付部12の前端から内側へ隔離する状態で設けて、カバー5内に設けた保持機構35を収容する。
【0030】
後方取付部13は、中央へ向け肩口20側が傾斜し、後口21側が直立する角柱状に形成し、この後方取付部13における縦方向の中央に爪杆3に設けた停止爪23が挿入できる爪孔18を穿設し、後方取付部13の上面でこの爪孔18の後方に横方向全体が凹状を呈する後方収容部16を後方取付部13の後端から内側へ隔離した位置に設けて、カバー5内に設けた保持機構35を収容する。
【0031】
一方、板バネ4とカバー5とは、自動的に組み立てにおいては、事前に装着する必要はないが、手動的に組み立てにおいては、板バネ4とカバー5とは事前に組み付けなければカバー5から板バネ4が落下してしまう。そこで保持機構35について説明すると、カバー5の内面で上壁32の前後壁29, 30から隔離した位置の中央に板バネ4の切欠部26が嵌挿できる突起36を突設し、この突起36の両側に板バネ4の舌片27が揺動できる空間部39のある溝部40を形成し、カバー5の側壁31には突起36と並行状に板バネ4の舌片27を支持できる支持片37を側壁31に平行に立設し、この支持片37は突起36に嵌挿された板バネ4を支持するため支持片37の先端を折曲して舌片27の動きを規制し、舌片27を溝部40で自由に揺動できるよう空間部39を形成する。そのため、支持片37の内側への折曲は折曲点が溝部40の深さと略等しい個所を折曲し、板バネ保持用の保持機構35が完成する。
【0032】
この形態のスライダーを組み立てるには、自動組立装置を用いる場合は、図4に示すように胴体1の前後の取付部12, 13間に引手2の枢軸24を嵌挿し、その上側に爪杆3を載置し、この際爪杆3の一端に設けた係止基部22を前方取付部12に設けた係止凹部14に挿入し、他端の停止爪23を爪孔18に挿入する。その上側へカバー5の内面に板バネ4を装着した状態で供給し、カバー5を前後の取付部12, 13を被覆するとともに、取付部12, 13の側面に設けた凹陥部19にカバー5の側壁31を加締め固定する。手動的の組み立ての場合は、切欠部26のある板バネ4とカバー5とを、カバー5に設けた突起36と支持片37を利用して組み付け、胴体1の前後の取付部12, 13に装備した引手2の枢軸24および爪杆3に被せ、カバー5の前後の側壁31を前後の取付部12, 13の側面に設けた凹陥部19に加締め固定する。
【0033】
この自動停止装置付スライダーの特徴は、板バネ4における両端の舌片27がカバー5内に形成された溝部40の空間部39内を図9に示したとおり揺動し、板バネ4が弾性変形したとき、先端はカバー5の上壁32から離間し、板バネ4の揺動を円滑に行い、スライダーの摺動が軽快に操作することができる。
【実施例1】
【0034】
図1〜9に示した実施例1の自動停止装置付スライドファスナー用スライダーは、胴体1、引手2、爪杆3、板バネ4、カバー5の5部材から構成され、これらの部材はアルミニウム合金、亜鉛合金などをダイカスト成形、またはブラス、ステンレス鋼などをプレス加工によって成形する。またスライダーの一部の部品は、合成樹脂を用いて射出成形加工で成形してもよい。
【0035】
胴体1は、上翼板7と下翼板8とを案内柱9によって連結し、上下の翼板7, 8または一方の翼板7, 8の両側にファスナーエレメントをガイドするフランジ10を屈設して、ファスナーエレメントが挿通できるガイド溝11を形成する。上翼板7の上面の肩口20側と後口21側に板バネ4とカバー5とを取り付ける前方取付部12と後方取付部13を設ける。
【0036】
前方取付部12は、後口21側が傾斜し肩口20側が直立する角柱状で上面の縦方向すなわちスライダーの長手方向の中央に爪杆3の屈曲した係止基部22が挿入できる係止凹部14を設け、この係止凹部14の両側および前方すなわち肩口20側に凹状を呈する前方収容部15を設けてカバー5の内面に設けた板バネ4を保持する保持機構35を収容することができる。図6および図7に示すように、保持機構35としての支持片37と突起36とが前後の取付部12, 13と干渉することなく入り込む形で形成される。また前方収容部15は前方取付部12の前端から内側、すなわち後口21側へ隔離する位置に形成し、前方取付部12の側面には一段と落ち込んだ凹陥部19を設け、カバー5を取り付けるときカバー5の側壁31を凹陥部19に対し加締めて固定する。
【0037】
後方取付部13は、肩口20側が傾斜し後口21側が直立する角柱状であり、縦方向の中央に爪杆3の端部に屈設した停止爪23が挿入できる爪孔18を穿設し、爪孔18は上翼板7の表面からガイド溝8に連通する形に形成し、爪杆3を嵌装できる凹溝17は爪孔18と連通する形態である。この凹溝17の両側および後方の取付部13の一部は横方向に凹状を呈する後方収容部16を後方取付部13の後端から内側へ隔離する位置に形成する。取付部13の側面には一段と落ち込んだ凹陥部19を設け、カバー5を取り付けるとき、カバー5の側壁31を凹陥部19に対し加締めて固定する。
【0038】
前方収容部15、後方収容部16は、それぞれ前後の保持機構35を収容するものであって、前後の収容部15, 16は、前後の取付部12, 13の最高面よりも低く、保持機構35に干渉しない形状であればよく、また前後の収容部15, 16の設置位置は、スライダーを組み立てたとき、カバー5の側壁31に形成する開口部33の口縁よりも肩口20側また後口21側に位置し、前方収容部15は、図6に示すように爪杆3の係止基部22を挿入する係止凹部14の側板28の上側部分に凹設し、この前方収容部15は、爪杆3には干渉しない位置に始端および後端を形成し、前方取付部12は係止凹部14の側方に位置する側板28および肩口20側の前面に位置する前方取付部12の端面全幅にわたって凹設することにより前方収容部15は形成される。後方収容部16は、爪杆3が嵌挿する凹溝17の側方における側板28の上側部分、および後方取付部13における凹溝17に面した端面全幅にわたって凹設することにより後方収容部16は形成される。このように前方収容部15と後方収容部16を形成することにより、爪杆3と保持機構35とが干渉することがなく、板バネ4の作動を有効に発揮することができる。また板バネ4は、長方形板の両端の中央に凹状の切欠部26を設け、その切欠部26により、左右に分離された舌片27が形成される。
【0039】
カバー5と板バネ4を保持する保持機構について説明すると、カバー5は前壁29、後壁30、両側の側壁31、上壁32から形成する箱形であり、両側の側壁31の中央に引手2の枢軸24が挿通できる開口部33が設けられている。開口部33は上壁32とは反対側が開口し、胴体1の上翼板7でその開口を塞ぐ、そしてカバー5の上壁32の前後部には板バネ4を保持する保持機構35を形成する突起36と支持片37を設ける。突起36はカバー5の前壁29から内側へ隔離した位置の中央に突設され、この突起36の両側にカバー5の下面から上壁32の内面までの深さより浅い溝部40が形成され、カバー5の両側の側壁31には溝部40上へ折曲することができ、前壁29から内側へ隔離した支持片37が突起36および側壁31と並行状に設けられている。同様にカバー5の後壁30側にも突起36と支持片37を設け、それぞれが後壁30から内側へ隔離されている。この支持片37は板バネ4の端部から内側へ隔離し、溝部40と略等しい位置で先端を突起36側へ折曲し、板バネ4の下面側を支え、突起36に嵌挿した板バネ4を外側から押え込む。これによって溝部40内に板バネ4の舌片27が揺動できる空間部39を、図5に示すように形成し、板バネ保持用の保持機構35がカバー5の前後に完成する。
【0040】
カバー5は、側壁31の下面から上壁32の内面までの高さ寸法が、縦方向の中央へ向って漸次高くなる勾配で上壁32を形成し、上壁32の内面に前壁29および後壁30から中央へ向って隔離した位置に保持機構35としての突起36と支持片37を傾斜する上壁32内に設置し、板バネ4が上下に揺動することができる空間部39を形成する。また保持機構35は開口部33の口縁よりも前壁29および後壁30側に形成し、支持片37は突起36へ向けて先端を折曲するので、板バネ4を横方向から支持するから、板バネ4が弾性変形しても、また前後方向に変動しても保持が外れることがなく、舌片27の端部は、図7に示すように支持片37から露呈し、前壁29または後壁30と支持片37の間に位置し、安定した状態で保持できる。なお、露呈とは、支持片37で保持される部分は、図5にも示すように、支持片37が板バネ4の一部を覆っている個所に対して、覆われる部分が存在しないことである。
【0041】
スライダーの組み立ては、自動組立機を用いる場合は、図4に示すように胴体1における前方取付部12と後方取付部13の斜面に沿って引手2の枢軸24を挿通し、その上側へ爪杆3を当接する形で挿入し、その上方へ板バネ4を装着したカバー5を被せ、このときカバー5の前後に形成した突起36と支持片37による保持機構35を前後の取付部12, 13に形成した収容部15, 16に遊嵌し、カバー5の側壁31を前後の取付部12, 13の凹陥部19に対し、加締め加工によって固定する。従ってこの状態で板バネ4の両端部分の下側には、前後の取付部12,13が位置し、それらの上面と対面している。板バネ4の両端部分と取付部12,13の上面との間には、板バネ4が変形したときに揺動可能な間隙がある。
【0042】
このスライダーは、摺動操作のとき図8, 9に示すように引手2を引張って停止爪23を引き上げたとき、板バネ4はカバー5の上壁32に接触するが、板バネ4の先端の舌片27の先端は、カバー5の上壁32とは接触はしない。従って舌片27は自由に空間部39内を揺動する。空間部39内では、折曲した支持片37の折曲点と上壁32の内面との間に介在し、板バネ4が弾性変形したとき、支持片37の折曲点から遠ざかるように揺動し、支持片37の折曲点とは接触しない。板バネ4は図7から図9に変化したとき、従来品と異なり舌片27が自由に揺動し板バネ4の弾性力を充分に活用し円滑な操作ができる。
【実施例2】
【0043】
図10、11に示す実施例2の自動停止装置付スライドファスナー用スライダーは、前記実施例1と異なるところは、板バネ保持用の保持機構35が相違する。この実施例では、カバー5の上壁32内面に形成する突起36は、突起36の頭部に切目38を設けるか、またはV字溝を設けて突起36に板バネ4を嵌挿した後、突起36の頭部を左右の側壁31に向かって拡開して板バネ4を固定する。板バネ4を保持した状態で突起36は板バネ4の切欠部26に嵌挿し、その内側から舌片27を保持する。この形態は板バネ4を横方向から保持するので、安定した状態で保持できる。突起36の分岐点は溝部40と略等しい位置に設けることによって、溝部40に空間部39を形成することができる。
【0044】
板バネ保持用の保持機構は、加締め加工以外に、突起の拡開状態の形状に形成しスナップタイプで嵌合し、板バネを保持することもできる。この場合は樹脂を用い射出成形で成形し、拡開部分はアンダーカット方式で成形すればよい。
【産業上の利用可能性】
【0045】
この発明の自動停止装置付スライドファスナー用スライダーは、あらゆる製品、例えば衣服、カバン、ブーツなどに取り付けて使用し、スライダーの摺動操作が軽快に行え、摺動抵抗が小さい。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【図1】実施例1に基づく自動停止装置付スライドファスナー用スライダーの分解斜視図である。
【図2】同上スライダーのカバーの断面図である。
【図3】同上スライダーの図2のA−A断面図である。
【図4】同上スライダー組み立て順序を示した図である。
【図5】同上スライダーの図3に示したカバー加工後の断面図である。
【図6】同上スライダーの組立後の断面図である。
【図7】同上スライダーの後方取付部における拡大断面図である。
【図8】同上スライダーの使用状態を示す断面図である。
【図9】同上スライダーの後方取付部における使用状態を示す拡大断面図である。
【図10】実施例2に基づくスライダーの組立後の断面図である。
【図11】同上スライダーの図10のB−B拡大断面図である。
【図12】公知のスライダーの断面図である。
【図13】同上スライダーの板バネ保持部の断面図である。
【図14】同上スライダーの板バネ保持部の断面図である。
【符号の説明】
【0047】
1 胴体
2 引手
3 爪杆
4 板バネ
5 カバー
7 上翼板
12 取付部(前方)
13 取付部(後方)
14 係止凹部
15 収容部(前方)
16 収容部(後方)
18 爪孔
20 肩口
21 後口
22 係止基部
23 停止爪
24 枢軸
26 切欠部
29 前壁
30 後壁
31 側壁
32 上壁
33 開口部
35 保持機構
36 突起
37 支持片
39 空間部
40 溝部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
スライダーは、胴体1、引手2、爪杆3、板バネ4、カバー5から構成され、カバー5は、前壁29、後壁30、側壁31、上壁32から形成し、側壁31の中央に引手2の枢軸24が挿通できる開口部33を設け、胴体1の上翼板7上の前後に一対の取付部12,13を設置し、カバー5の内面前後に前壁29、後壁30から内側へ隔離して板バネ保持用の保持機構35を設け、保持機構35に架設した板バネ4は、保持機構35とカバー5の上壁32との間に空間部39を形成し、保持機構35は板バネをその端部から内側へ隔離した位置で保持し、板バネ4と上翼板7間に引手2の枢軸24および爪杆3を介在させ、カバー5を前後の取付部12,13に固定してなることを特徴とする自動停止装置付スライドファスナー用スライダー。
【請求項2】
板バネ4は長方形板の両端中央に凹状の切欠部26を設け、カバー5は内面の前後端に板バネ支持用の保持機構35として、前後壁29,30から内側へ隔離した上壁32の中央に突出する突起36を設け、該突起36に板バネ4の切欠部26を嵌挿し、カバー5の側壁31内に、突起36に対向する支持片37を前後壁29,30から内側へ隔離して設け、支持片37を折曲して板バネ4が上下に揺動可能に保持してなる請求項1記載の自動停止装置付スライドファスナー用スライダー。
【請求項3】
板バネ4は長方形板の両端中央に凹状の切欠部26を設け、カバー5は内面の前後端に板バネ支持用の保持機構35として、前後壁29,30から内側へ隔離した上壁32の中央に頭部が両側の側壁31へ向けて拡開する突起36を設け、該突起36に板バネ4の切欠部26を嵌挿し、突起36の先端を拡開して板バネ4が上下に揺動可能に保持してなる請求項1記載の自動停止装置付スライドファスナー用スライダー。
【請求項4】
上翼板7の前後に立設した取付部12, 13の上面に、カバー5の内面に設置した保持機構35を収容する収容部15, 16を設け、各収容部15, 16は各取付部12, 13の前端または後端から内側へそれぞれ隔離した位置に設けてなる請求項1記載の自動停止装置付スライドファスナー用スライダー。
【請求項5】
保持機構35を収容できる前方取付部12は、後口21側が傾斜し肩口20側が直立する角柱状で縦方向中央に爪杆3の係止基部22を挿入できる係止凹部14を形成し、係止凹部14の前方に横方向に凹状を呈する前方収容部15を前方取付部12の前端から内側へ隔離して設けて保持機構35を収容し、後方取付部13は、肩口20側が傾斜し後口21側が直立する角柱状で縦方向中央に爪杆3の停止爪23が挿入できる爪孔18を設け、爪孔18の後方に横方向全体が凹状を呈する後方収容部16を後方取付部13の後端から内側へ隔離して設けて保持機構35を収容してなる請求項2または3記載の自動停止装置付スライドファスナー用スライダー。
【請求項6】
カバー5の内面2個所に突起36を突設し、該突起36の両側で側壁31との間に空間部39が形成できる溝部40を設け、先端が突起36に向け折曲して板バネ4を支持する支持片37を前後壁29,30から内側へ隔離し、かつ側壁31の基部から突設してなる請求項2記載の自動停止装置付スライドファスナー用スライダー。
【請求項7】
カバー5の内面2個所に突起36を突設し、該突起36の両側で側壁31との間に空間部39が形成できる溝部40を設け、突起36の頭部が両側の側壁31に向け拡開して板バネ4を支持し、該突起36は前後壁29,30から内側へ隔離した位置に突設してなる請求項3記載の自動停止装置付スライドファスナー用スライダー。
【請求項8】
板バネ4を突起36に嵌挿して支持片37を折曲して保持したとき、または突起36の頭部を左右に拡開して保持したとき、板バネ4を保持する保持部分が、板バネ4が弾性変形時に揺動可能な空間部39が形成される位置に設けてなる請求項6または7記載の自動停止装置付スライドファスナー用スライダー。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2009−95370(P2009−95370A)
【公開日】平成21年5月7日(2009.5.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−266764(P2007−266764)
【出願日】平成19年10月12日(2007.10.12)
【出願人】(000006828)YKK株式会社 (263)
【Fターム(参考)】