説明

自動孔加工装置

【課題】 主軸1の先端部にコレットチャック3を設けた構造で、このコレットチャック3の内径の拡縮を自動的に行ない、回転工具8の交換を無人で行なえる構造を実現する。【解決手段】 工具用マガジン4に設けた複数の保持切り欠き18に、それぞれ回転工具8を保持する。上記コレットチャック3の内筒7を上記主軸1により回転駆動自在とする。マガジン移動手段により上記何れか1個所の保持切り欠き18を上記コレットチャック3の直下位置に前進させると共に主軸頭2を下降させた状態で、上記工具用マガジン4の上面に設けた係止突部25と、上記コレットチャック3の外筒6の下端部外周面に形成した係止凹部17とを係合させて、この外筒6の回転を阻止する。この状態で上記主軸1を回転させれば、上記コレットチャック3の内径が拡縮する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、ホーン或はリーマ等の回転工具を利用して、各種機械装置の部品等に形成する円孔の内径面(内周面)を仕上げる為の孔加工装置の改良に関する。具体的には、上記回転工具を、加工すべき円孔の内側で1往復させる、所謂ワンパスでの精密孔仕上加工を、無人による自動運転で行なえる自動孔加工装置の実現を図るものである。
【背景技術】
【0002】
ホーン或はリーマ等の回転工具を利用して、各種機械装置の部品等に形成する円孔の内径面を、所望の寸法及び性状(特に表面粗さ)に仕上げる為の孔加工装置が、従来から各種知られている。又、この様な孔加工装置を使用して円孔の内径面を仕上げる際に、上記回転工具に回転方向或は軸方向寸法の振動を加える事で、この回転工具の目詰まりを防止しつつ、上記内径面の仕上を精密に行なう技術が、特許文献1に記載されている様に、従来から知られている。
【0003】
上記特許文献1に記載された様な、回転工具の目詰まりを防止しつつ、ワンパスで円孔の内径面の仕上加工を行なう孔加工装置の場合、作業台上に被加工物(ワーク)を出し入れする、ワーク用自動搬送装置を組み込めば、無人運転が可能になる。但し、加工すべき円孔の内径が変わったり、或は、得るべき円孔の内径面の性状が変わった場合には、使用する回転工具を交換しなければならない。これに対して、孔加工装置で回転工具の交換を自動的に(無人で)行なえる実用的な装置は、従来は知られていなかった。この為従来は、複数種類の加工を行なう為には、複数台の孔加工装置を用意する必要があった。この様に複数台の孔加工装置を用意する事は、例えば多品種少量生産の場合に、徒に設備投資が嵩む事に繋がる為、好ましくない。
【0004】
工作機械の工具を自動的に交換する装置として従来から、マシニングセンタ用の工具交換装置が広く知られている。この工具交換装置は、主軸側に設けたテーパ孔と、工具側に設けたテーパコーンとを嵌合させつつ、この工具をこのテーパ孔内に引き込む構造を有するもので、センタープル方式とも呼ばれている。但し、この様なセンタープル方式の工具交換装置は、必ずしも回転工具の中心軸と回転駆動軸(主軸)の中心軸とを厳密に一致させられない可能性がある。そして、これら両中心軸が不一致の状態のまま、上記円孔の内径面の仕上加工を行なうと、この円孔の内径が所望値よりも大きくなる。
【0005】
主軸の中心軸と回転工具の中心軸とを厳密に一致させる為には、この主軸の先端部に、内径を拡縮自在なコレットチャックの如き回転工具把持具を設置し、この回転工具把持具により、上記回転工具の基半部外周面を強く把持する事が好ましい。この様な事情に鑑みて従来から、主軸の先端部にコレットチャックの如き回転工具把持具を設置した孔加工装置は、種々知られている。但し、従来装置の場合には、上記回転工具の交換を行なう為に上記コレットチャック等の回転工具把持具の内径を拡縮する作業は、作業員が人手により行なっていた。この為、前記ワンパスで円孔の内径面の仕上加工を行なう孔加工装置を無人運転する場合には、工具交換を行なう事なく、1種類の内径寸法、且つ、1種類の性状で加工を行なうしかなかった。
【0006】
【特許文献1】特開2004−25416号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上述の様な事情に鑑みて、主軸の先端部にコレットチャックの如き回転工具把持具を設けた構造で、この回転工具把持具の内径の拡縮を自動的に行ない、回転工具の交換を無人で行なえる自動孔加工装置を実現すべく発明したものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の自動孔加工装置は、主軸と、主軸頭と、回転工具把持具と、工具用マガジンと、マガジン移動手段とを備える。
上記主軸は、上記主軸頭に回転自在に支持されている。そして、この主軸頭は、この主軸と共にこの主軸の軸方向に移動可能である。
又、上記回転工具把持具は、カム式、或は請求項3に記載した如きコレットチャックで、例えば請求項2に記載した様に、外筒と内筒とを有し、上記主軸の先端部にこの主軸と同心に支持されている。そして、これら外筒と内筒との相対回転に伴う内径の拡縮に基づいて、孔の内径面を加工する為の回転工具を着脱する。
又、上記工具用マガジンは、複数の保持部を備える。そして、これら各保持部に、リーマ或はホーン等の複数の回転工具を、それぞれの中心軸の方向と上記コレットチャックの如き回転工具把持具の中心軸の方向とを一致させた状態で保持する。
又、上記マガジン移動手段は、上記工具用マガジンのうちの何れか1個所の保持部を、上記コレットチャックの如き回転工具把持具に対向する位置に対し進退させる。
そして、このコレットチャックの如き回転工具把持具の内径を拡縮自在とすべく、例えば請求項2に記載した様に、上記内筒を、上記主軸により回転駆動自在としている。
又、上記マガジン移動手段により上記何れか1個所の保持部を上記コレットチャックの如き回転工具把持具に対向する位置に前進させると共に、当該保持部に保持された回転工具の基部がこの回転工具把持具内に挿入させる状態にまで上記主軸頭を上記主軸の軸方向に移動させた状態で、例えば請求項2に記載した様に、上記工具用マガジンに固定の部分と上記回転工具把持具の外筒の一部とを係合させて、この外筒の回転を阻止する様に構成している。
【発明の効果】
【0009】
上述の様に構成する本発明の自動孔加工装置の場合には、作業員の人手による事なくコレットチャックの如き回転工具把持具の内径の拡縮、並びに、この回転工具把持具の内径側への回転工具の基部の抜き差しを行なえる。
先ず、上記コレットチャックの如き回転工具把持具の内径の拡縮は、例えば請求項2に記載した発明の場合には、主軸頭を主軸の軸方向に移動させ工具用マガジンに固定の部分とこの回転工具把持具の外筒の一部とを係合させた状態で、上記主軸を回転させる事により行なえる。この状態では、上記外筒が回転する事はないので、この主軸の回転に伴って上記回転工具把持具の内筒が回転すると、この内筒と上記外筒との相対回転に伴って、この回転工具把持具の内径が拡縮する。この内径を拡大するか収縮させるかは、上記主軸を何れの方向に回転させるかにより決定される。
又、上記回転工具把持具の内径側への回転工具の基部の抜き差しは、マガジン移動手段により何れか1個所の保持部を上記回転工具把持具に対向する位置に前進させた状態で、上記主軸頭を上記主軸の軸方向に移動させる事により行なえる。
そして、上記回転工具把持具の内径の拡縮と、この回転工具把持具の内径側への回転工具の基部の抜き差しとを、互いに関連付けて(前後して)行なえば、上記主軸の先端部への上記回転工具の着脱を、作業員の人手によらず、自動的に行なえる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本発明を実施する場合に好ましくは、請求項5に記載した様に、主軸を、その中心軸を鉛直方向に配置した状態で、フレームに対し昇降可能に設置された主軸頭に回転自在に支持する。又、工具用マガジンは、それぞれが保持部であって外周縁側に開口した複数の保持切り欠きを有する円盤状とし、鉛直方向に配置された回転軸に固定する。そして、各回転工具はこれら各保持切り欠きに、下方に落下する事はないが上記工具用マガジンの径方向外方に変位する事で抜き取り可能に保持する。更に、マガジン移動手段は、上記回転軸の中心と、コレットチャックの如き回転工具把持具との間で回転工具の受渡を行なわせるべき保持切り欠きの中心とを結ぶ直線方向に水平移動する構造とする。
【0011】
又、上述の様な請求項5に記載した発明を実施する場合に、更に好ましくは、請求項6に記載した様に、上記工具用マガジンの上面で各保持切り欠きの近傍部分に係止突部を、それぞれ上方に突出する状態で形成する。又、外筒の下端部外周面に係止凹部を、この外筒の下面に開口する状態で形成する。そして、マガジン移動手段により何れか1個所の保持部(保持切り欠き)を上記コレットチャックの如き回転工具把持具に対向する位置に前進させると共に、当該保持部に保持された回転工具の基部がこの回転工具把持具内に挿入させる状態にまで上記主軸頭を下降させた状態で、上記係止突部と上記係止凹部とを係合させる。そして、この係合により、上記主軸の回転に伴う内筒の回転に基づく上記回転工具把持具の拡縮時に、上記外筒の回転を阻止する。
【0012】
尚、上記回転工具把持具としてコレットチャックを使用する場合にその内筒は、上記主軸と別体のものをこの主軸の先端部に結合固定する事もできるが、請求項4に記載した様に、この主軸の先端部を中空に加工する事により、上記内筒をこの主軸の先端部に一体に設ける事もできる。この様に構成すれば、上記コレットチャック設置部分の小型・軽量化が可能になる他、このコレットチャックの中心軸と上記主軸の中心軸とを厳密に一致させる為の調整作業も容易になる。
【実施例】
【0013】
図1〜5は、本発明の実施例を示している。本発明の自動孔加工装置は、主軸1と、主軸頭2と、回転工具把持具であるコレットチャック3と、工具用マガジン4と、マガジン移動手段5とを備える。
上記主軸1は、その中心軸を鉛直方向に配置した状態で、上記主軸頭2に、回転自在に支持されている。そして、この主軸頭2は、図示しないフレームに対し、鉛直方向の移動(昇降)自在に支持している。この鉛直方向の移動量は、図示しないNC制御器により制御される。
【0014】
又、上記コレットチャック3は、図4に詳示する様に、上記主軸1の先端部にこの主軸1と同心に支持されたもので、外筒6と内筒7とを有する。そして、これら外筒6と内筒7との相対回転に伴う内径の拡縮に基づいて、図示しない被加工物に形成した円孔の内径面を加工する為の、回転工具8を着脱する。この様なコレットチャック3自体は、市販のものを使用し、その構造及び作用は従来から広く知られているが、本発明を実施する場合に重要な部品である為、以下に説明する。尚、本実施例の場合には、上記主軸1の先端部を中空に加工(中心部に、下端開口部に向けて内径が大きくなる方向に傾斜したテーパ孔を形成)する事により、上記コレットチャック3の内筒7をこの主軸1の先端部に一体に設けている。従って、この内筒7は、この主軸1により、所望の方向に回転駆動自在である。
【0015】
上記内筒7の内側には、円周方向に複数に(例えば3〜4個に)分割された把持片を円筒状に組み合わせて成る、把持筒9を内嵌している。この把持筒9の中間部乃至上端部外周面は、上端に向かう程外径が小さくなる方向に傾斜した円すい状凸面とし、この部分の外周面を、上記内筒7の(テーパ孔の)内周面に当接させている。従って、上記把持筒9の内径は、上記主軸1に対してこの把持筒9を上方に変位させる程小さくなり、逆に、この把持筒9を下方に位置させる程大きくなる。
【0016】
又、上記内筒7の下部外周面に形成した雄ねじ部10に、上記外筒6の中間部内周面にキー係合により支持したスリーブ11の内周面に形成した雌ねじ部12を螺合させている。従って、この外筒6は上記内筒7に対し、回転しつつ昇降する状態に組み付けられている。又、上記スリーブ11の下端部にこのスリーブ11に対する回転自在に支持した、押圧環13の内周面と、上記把持筒9の下端部外周面とを当接させている。これら両周面はそれぞれ、それぞれ下方に向かう程直径が小さくなる方向に傾斜している。
【0017】
又、上記外筒6の下端部中心で上記把持筒9の直下位置には、上記回転工具8の基部14をこの把持筒9に挿入する為の挿通孔15を形成し、この挿通孔15の内周面に、異物進入防止の為のシールリング16を係止している。更に、上記外筒6の下端部外周面の円周方向等間隔複数個所(例えば4〜8個所)に係止凹部17、17を、それぞれこの外筒6の下面に開口する状態で形成している。
【0018】
又、前記工具用マガジン4は、図1、3に示す様に円盤状で、それぞれが保持部であって外周縁側に開口した、複数の略U字形の保持切り欠き18、18を、円周方向等間隔位置に有する。この様な工具用マガジン4は、鉛直方向に配置された回転軸19の上端部に固定されており、電動モータ20により、歯車減速機21を介して所望方向に所望角度だけ回転駆動される。この様にして行なう、上記工具用マガジン4の回転角度も、NC制御器により制御される。
【0019】
上記工具用マガジン4に保持される各回転工具8、8は、それぞれの中間部に、その上下に隣接する部分よりも外径が小さくなった括れ部を設けている。上記各保持切り欠き18、18の幅寸法は、この括れ部の外径よりは少し大きいが、この括れ部の上下に隣接する部分の外径よりは小さい。従って上記各回転工具8、8は、それぞれの括れ部を上記各保持切り欠き18、18に、上記工具用マガジン4の外周縁側開口から挿入する事により、この工具用マガジン4に保持される。この状態で上記各回転工具8、8はこの工具用マガジン4に、下方に落下する事はないが、この工具用マガジン4の径方向外方に変位する事で抜き取り可能に保持される。
【0020】
尚、図示の例では、上記各回転工具8、8が上記各保持切り欠き18、18から不用意抜け出て脱落する事を防止する為に、これら各保持切り欠き18、18部分に、図5に示す様な脱落防止腕22、22を設置している。これら脱落防止腕22、22は、それぞれの先端部にローラ23、23を枢支すると共に、引っ張りばね24により、互いに近づく方向の弾力を付与している。この様な脱落防止腕22、22は、上記各保持切り欠き18、18内に挿入された、上記各回転工具8、8の括れ部を抑えて、この括れ部が不用意にこれら各保持切り欠き18、18の開口側に移動する事を防止する。但し、後述するマガジン移動手段5により上記工具用マガジン4を移動させる際には、上記引っ張りばね24の弾力に抗して変位し、上記括れ部が上記各保持切り欠き18、18に出入りする事を許容する。
【0021】
又、上記工具用マガジン4の上面の円周方向等間隔複数個所で、上記各保持切り欠き18、18の径方向内側に隣接する部分に係止突部25、25を、それぞれ上方に突出する状態で形成している。これら係止突部25、25の形成位置及び大きさは、前記コレットチャック3の外筒6の下端部外周面に形成した、前記各係止凹部17、17の何れかと係合自在な位置及び大きさとしている。即ち、次述するマガジン移動手段5により上記各保持切り欠き18、18のうちの何れか1個所の保持切り欠き18を、前記コレットチャック3の直下位置に進入させると共に、当該保持切り欠き18に保持された前記回転工具8の基部14が上記コレットチャック3の把持筒9内に挿入させる状態にまで前記主軸頭2を下降させた状態で、上記1個所の保持切り欠き18に隣接した係止突部25と上記何れかの係止凹部17とが係合する様にしている。これら係止突部25と係止凹部17とが係合した状態では、この係止凹部17を形成した上記外筒6の回転が阻止される。
【0022】
更に、上記マガジン移動手段5は、上記工具用マガジン4のうちの何れか1個所の保持切り欠き18を、上記コレットチャック3の直下位置に対し進退させる。この為に本実施例の場合には、上記コレットチャック3と、前記回転軸19と、前記電動モータ20と、前記歯車減速機21とを、移動フレーム26に設置している。又、工場の床面上に水平方向に設置した固定フレーム27の上面に、ガイドレール28、28を配設している。そして、これら両ガイドレール28、28上に上記移動フレーム26を載せて、この移動フレーム26を水平移動自在としている。この移動フレーム26が、図1の右端まで前進し切った状態で、上記何れか1個所の保持切り欠き18に保持された回転工具8の中心軸と、上記コレットチャック3の中心軸とが一致する様に、各部の設置位置及び設置方向を規制している。図示の例では、上記移動フレーム26は、前記回転軸19の中心と、上記コレットチャック3との間で上記回転工具8の受渡を行なわせるべき、上記何れか1個所の保持切り欠き18の中心とを結ぶ直線(図3の鎖線α)方向に水平移動する。尚、上記移動フレーム26が図1の左方に退避し切った状態では、前記主軸1の下方には、この移動フレーム26に代えて、被加工物を設置した、図示しないワーク支持台が進入する。
【0023】
上述の様に構成する本実施例の自動孔加工装置は、次の様に動作する事で、作業員の人手による事なく、上記コレットチャック3を構成する前記把持筒9の内径の拡縮、並びに、この把持筒9の内径側への上記回転工具8の基部14の抜き差しを行なえる。尚、この抜き差し作業は、上記移動フレーム26が図1の右端まで前進し、上記何れか1個所の保持切り欠き18に保持された回転工具8の中心軸と、上記コレットチャック3の中心軸とが一致した状態で行なう。
【0024】
先ず、上記コレットチャック3の把持筒9の内径の拡縮を行なう際には、前記主軸頭2を下降させる。そして、前記工具用マガジン4の上面に設けた前記各係止突部25、25のうちで、上記何れか1個所の保持切り欠き18に隣接する係止突部25と、上記コレットチャック3の外筒6の下端部外周面に形成した前記各係止凹部17、17のうちの何れかの係止凹部17とを係合させる。これら係止突部25と係止凹部17とを係合させる際には、NC制御器により、前記主軸1及び上記工具用マガジン4の回転方向の位相を規制する。この様にして、上記係止突部25と係止凹部17とを係合させたならば、上記主軸1を所望方向に回転させる。これら係止突部25と係止凹部17とを係合させた状態では、上記外筒6が回転する事はないので、上記主軸1の回転に伴って上記コレットチャック3の内筒7が回転する。この結果、この内筒7と上記外筒6との相対回転に伴って、前記スリーブ11がこの内筒7(主軸1)に対して昇降し、上記コレットチャック3を構成する前記把持筒9の内径が拡縮する。この内径を拡大するか収縮させるかは、上記主軸1を何れの方向に回転させるかにより決定される。
【0025】
又、上記コレットチャック3の把持筒9の内径側への上記回転工具8の基部14の抜き差しは、上記何れか1個所の保持切り欠き18を上記コレットチャック3の直下位置に前進させた状態で、上記主軸頭2を昇降させる事により行なえる。即ち、上記把持筒9の内径を拡げた状態で、この主軸頭2を下降させれば、上記回転工具8の基部14を上記把持筒9内に差し込める。これに対して、上記把持筒9の内径を拡げた状態で、この主軸頭2を上昇させれば、上記回転工具8の基部14を上記把持筒9から抜き取れる。
【0026】
そして、上記コレットチャック3の把持筒9の内径の拡縮と、この把持筒9の内径側への上記回転工具8の基部14の抜き差しとを、互いに関連付けて(前後して)行なえば、上記主軸1の先端部への上記回転工具8の着脱を、作業員の人手によらず、自動的に行なえる。工具交換を行なう際には、先ず、前記移動フレーム26を図1の左端まで後退させた状態で、上記主軸頭2を下降させる。次いで、この移動フレーム26を図1の右端まで前進させ、上記コレットチャック3の把持筒9に把持された、それまで使用していた回転工具8の括れ部を、前記工具用マガジン4の、それまで空であった保持切り欠き18に進入させる。
【0027】
次いで、上記把持筒9の内径を拡張してから、上記主軸頭2を上昇させ、上記それまで使用していた回転工具8の基部14を、上記把持筒9から抜き出す。次いで、前記工具用マガジン4を所定角度回転させて、新たに使用する回転工具8を上記コレットチャック3の直下位置に移動させる。そして、上記把持筒9の内径を拡げた状態のまま、上記主軸頭2を下降させ、上記新たに使用する回転工具8の基部14を上記把持筒9内に進入させる。次いで、上記主軸1を回転させてこの把持筒9の内径を縮め、この把持筒9の内側に上記新たに使用する回転工具8の基部14を固定する。そして、最後に、上記移動フレーム26を図1の左端位置にまで後退させて、上記新たに使用する回転工具8を上記工具用マガジン4の保持切り欠き18から抜き取る。
【0028】
尚、図示の例では、内径の拡縮に基づいて回転工具を着脱する回転工具把持具としてコレットチャックを使用した場合に就いて説明したが、この回転工具把持具は、主軸の回転を利用して、人手によらずに内径を拡縮できるものであれば、カム式のもの等、他の構造のものを使用できる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】本発明の実施例を、一部を省略した状態で示す、部分切断側面図。
【図2】図1のA部拡大図。
【図3】同B矢視図。
【図4】図2のC部拡大図。
【図5】工具用マガジンの保持切り欠き部分に設けた脱落防止腕の平面図。
【符号の説明】
【0030】
1 主軸
2 主軸頭
3 コレットチャック
4 工具用マガジン
5 マガジン移動手段
6 外筒
7 内筒
8 回転工具
9 把持筒
10 雄ねじ部
11 スリーブ
12 雌ねじ部
13 押圧環
14 基部
15 挿通孔
16 シールリング
17 係止凹部
18 保持切り欠き
19 回転軸
20 電動モータ
21 歯車減速機
22 脱落防止腕
23 ローラ
24 引っ張りばね
25 係止突部
26 移動フレーム
27 固定フレーム
28 ガイドレール

【特許請求の範囲】
【請求項1】
主軸と、この主軸を回転自在に支持した状態でこの主軸と共にこの主軸の軸方向に移動可能な主軸頭と、この主軸の先端部にこの主軸と同心に支持された、内径の拡縮に基づいて、孔の内径面を加工する為の回転工具を着脱する回転工具把持具と、複数の回転工具を、それぞれの中心軸の方向とこの回転工具把持具の中心軸の方向とを一致させた状態で保持する為の複数の保持部を備えた工具用マガジンと、この工具用マガジンのうちの何れか1個所の保持部を上記回転工具把持具に対向する位置に対し進退させる為のマガジン移動手段とを備えた自動孔加工装置。
【請求項2】
回転工具把持具は、外筒と内筒との相対回転に伴い内径を拡縮するものであり、このうちの内筒を主軸により回転駆動自在としており、マガジン移動手段により何れか1個所の保持部を上記回転工具把持具に対向する位置に前進させると共に、当該保持部に保持された回転工具の基部がこの回転工具把持具内に挿入させる状態にまで上記主軸頭を上記主軸の軸方向に移動させた状態で、工具用マガジンに固定の部分と上記回転工具把持具の外筒の一部とを係合させてこの外筒の回転を阻止する、請求項1に記載した自動孔加工装置。
【請求項3】
回転工具把持具がコレットチャックである、請求項2に記載した自動孔加工装置。
【請求項4】
主軸の先端部を中空に加工する事により、コレットチャックの内筒をこの主軸の先端部に一体に設けた、請求項3に記載した自動孔加工装置。
【請求項5】
主軸はその中心軸を鉛直方向に配置した状態で、フレームに対し昇降可能に設置された主軸頭に回転自在に支持されており、工具用マガジンは、鉛直方向に配置された回転軸に固定された、それぞれが保持部であって外周縁側に開口した複数の保持切り欠きを有する円盤状であり、各回転工具はこれら各保持切り欠きに、下方に落下する事はないが上記工具用マガジンの径方向外方に変位する事で抜き取り可能に保持されており、マガジン移動手段は、上記回転軸の中心と、回転工具把持具との間で回転工具の受渡を行なわせるべき保持切り欠きの中心とを結ぶ直線方向に水平移動するものである、請求項1〜4の何れか1項に記載した自動孔加工装置。
【請求項6】
工具用マガジンの上面で各保持切り欠きの近傍部分に、それぞれ上方に突出する状態で形成された係止突部と、外筒の下端部外周面に、この外筒の下面に開口する状態で形成した係止凹部とを係合させる事により、主軸の回転に伴う内筒の回転に基づく回転工具把持具の拡縮時に上記外筒の回転を阻止する、請求項5に記載した自動孔加工装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2006−116644(P2006−116644A)
【公開日】平成18年5月11日(2006.5.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−306480(P2004−306480)
【出願日】平成16年10月21日(2004.10.21)
【出願人】(000201870)倉敷機械株式会社 (8)
【Fターム(参考)】