説明

自動水栓

【課題】ボウル部へ湯水を溜めた後、洗濯衣類などを漬け置き洗いする際に、物体検知センサが洗濯衣類を検知して予期せぬ誤吐水をすることのない自動水栓を提供すること。
【解決手段】給水ホースが接続され、前記給水ホースから給水された湯水を吐出する吐水口と、前記給水ホースに接続された電磁弁と、前記吐水口から吐出される湯水を溜めるボウル部と、前記ボウル部に湯水が溜められていることを検知する水溜め検知部と、被検知物体に向けて伝播波を送信し、その反射量に基づいて前記被検知物体の有り無しを判定して出力する物体検知センサと、前記物体検知センサの出力に基づいて、前記電磁弁を駆動する電磁弁駆動手段と、を備えた自動水栓において、前記水溜め検知部が検知中は、前記物体検知センサは前記被検知物体を有りと判定し難くなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、手などの物体を検知するセンサの検知状況に基づいて吐水及び止水を自動的に行う自動水栓において、特に洗面器等のボウル部へ湯水を溜めて使用される自動水栓に関する発明である。
【背景技術】
【0002】
吐水口の下方に差し出された手等の物体をセンサが検知すると自動で吐水を開始して、センサが物体を検知しなくなると自動で止水する自動水栓が従来から知られている。
この類の自動水栓では、物体を検知するセンサとして赤外線や超音波を用いた反射型センサが一般的に使用されている。
反射型センサを用いた自動水栓では、反射して返ってきた反射波の大きさによって、被検知物体の検知判断をしている。
このような自動水栓を用いて洗面器に水溜めをする技術として、特許文献1が公知となっている。
【0003】
特許文献1記載の自動水栓装置では、洗面器に静止物が置かれたときの反射波のレベル変動値と、人が手を差し出して静止させているときに生じる反射波のレベル変動値との違いを判別することにより、自動水栓による水溜め行為ができるようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第3759545号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1記載の自動水栓装置で一連の水溜め行為を行うには以下のような課題があり、その内容について図10を用いて説明する。
図10は、従来の自動水栓装置を示す模式図である。
図10(a)に示すように、物体検知センサ8は検知領域12を持っていて、その先方に洗面器のボウル部43があるとすると、検知領域12はボウル部43よりも手前に設定されることになる。
そして、物体検知センサ8で人体を検知させて水溜めを行い、水位が図10(b)で示す水面76までになった段階で止水する。
【0006】
ここで、水溜めをした後に行われる行為として、洗濯衣類の漬け置き洗いをすることがある。そして、図10(b)に示すように、洗濯衣類77をボウル部43に放り込むと、洗濯衣類77は、水面76付近を漂うことになる。
その結果、洗濯衣類77が検知領域12の中に入ってしまい、自動水栓から予期せぬ吐水をしてしまうことがあった。
【0007】
本発明は、上記課題を解決するためになされたもので、本発明の課題は、ボウル部へ湯水を溜めた後、洗濯衣類などを漬け置き洗いする際に、物体検知センサが洗濯衣類を検知して予期せぬ誤吐水をすることのない自動水栓を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために請求項1記載の発明によれば、給水経路から給水された湯水を吐出する吐水口と、前記給水経路に接続された電磁弁と、前記吐水口から吐出される湯水を溜めるボウル部に湯水が溜められていることを検知する水溜め検知部と、被検知物体に向けて伝播波を送信し、その反射量に基づいて前記被検知物体の有り無しを判定して出力する物体検知センサと、前記物体検知センサの出力に基づいて、前記電磁弁を駆動する電磁弁駆動手段と、を備えた自動水栓において、前記物体検知センサは、前記水溜め検知部が検知中には被検知物体を有りと判定し難くなる、ことを特徴とする。
これにより、ボウル部へ水溜めをしている状態で洗濯衣類を漬け置き洗いしていても、物体検知センサが検知し難くなっているので、洗濯衣類を検知することがなくなり、予期せぬ誤吐水をすることがなくなる。
【0009】
また、請求項2記載の発明によれば、前記物体検知センサは、前記水溜め検知部が検知中に被検知物体を有りと判定する検知領域を、前記水溜め検知部が非検知中のときよりも小さくすることを特徴とする。
これにより、ボウル部へ水溜めをしている状態で洗濯衣類を漬け置き洗いしていても、物体検知センサの検知領域が水面に浮遊する洗濯衣類の位置まで及ばなくすることができるので、洗濯衣類を検知することがなくなり、予期せぬ誤吐水をすることがなくなる。
【0010】
また、請求項3記載の発明によれば、前記物体検知センサは、前記水溜め検知部が検知中に被検知物体を有りと判定するまでの判定時間を、前記水溜め検知部が非検知中のときよりも長くすることを特徴とする。
これにより、ボウル部へ水溜めをしている状態で洗濯衣類を漬け置き洗いしていても、水面の揺らぎで物体検知センサの検知領域を出たり入ったりする洗濯衣類を検知することがなくなり、予期せぬ誤吐水をすることがなくなる。
【0011】
また、請求項4記載の発明によれば、前記物体検知センサは、前記水溜め検知部が検知中に最初に最初に被検知物体が検知領域に入ってきても有りと判定せず、その後、被検知物体が検知領域を出て、再び検知領域に入ってきたときは有りと判定することを特徴とする。
これにより、ボウル部へ水溜めを完了している状態で洗濯衣類を放り込んでも、水溜め完了後の最初の物体検知をキャンセルすることで検知し難くして、洗濯衣類が物体検知センサの検知領域を横切っても吐水することがなくなり、予期せぬ誤吐水をすることがなくなる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、ボウル部へ湯水を溜めた後、洗濯衣類などを漬け置き洗いする際に、物体検知センサが洗濯衣類を検知して予期せぬ誤吐水をすることのない自動水栓を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の第1の実施形態にかかる自動水栓を例示する模式図である。
【図2】第1の実施形態にかかる自動水栓を例示するブロック図である。
【図3】第1の実施形態にかかる操作パネルを例示する模式図である。
【図4】第1の実施形態にかかる自動水栓の動作を示すタイムチャートである。
【図5】第1の実施形態にかかる物体検知センサの検知領域を例示する模式図である。
【図6】第1の実施形態にかかる物体検知センサの送信パワーの調整方法を示す模式図である。
【図7】第2の実施形態にかかる自動水栓の動作を示すタイムチャートである。
【図8】第3の実施形態にかかる自動水栓の動作を示すタイムチャートである。
【図9】水溜め検知にかかる自動水栓の動作を示すタイムチャートである。
【図10】従来の自動水栓装置を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しつつ説明する。なお、各図面中、同様の構成要素には同一の符号を付して詳細な説明は適宜省略する。
【0015】
(第1の実施形態)
まずは、図1、図2、図3を参照しつつ、第1の実施形態による自動水栓の基本構成について説明する。
図1は、本発明の第1の実施形態にかかる自動水栓を例示する模式図である。
図2は、第1の実施形態にかかる自動水栓を例示するブロック図である。
図3は、第1の実施形態にかかる操作パネルを例示する模式図である。
【0016】
図1に示すように、洗面台1に本発明の実施形態である自動水栓2が設置されている。自動水栓2には、水栓本体4の横に物体検知センサ8が配置されており、この物体検知センサ8により手などの物体を検知して、水栓本体4からの湯水の吐水、止水を切り替えるように構成されている。
なお、本実施形態の自動水栓2は、洗面台1以外にも、例えばキッチンといった、吐水が必要な場所に設置することができる。
【0017】
図2に示すように、自動水栓2は、給水源28と、水栓本体4と、物体検知センサ8と、電磁弁26と、制御部24とを有している。制御部24には、電磁弁駆動手段73が備わっている。
給水源28からは水又は湯(以下、湯水と呼ぶ)が供給されており、給水経路としての給水ホース52と給水ホース53に接続された電磁弁26を経由して水栓本体4の吐水口30から湯水が吐水される。
また、排水栓75を閉めることにより、ボウル部43に湯水を溜めることができる。排水栓75を開けておけば、ボウル部43に湯水は溜まらずに排水口(図示しない)から排出されていく。
【0018】
物体検知センサ8は、送信部と受信部を備えており、本実施形態では、送信部を赤外の投光素子20、受信部を赤外の受光素子22から構成される反射式積分型センサとして説明する。つまり、投光素子20から発せられる伝播波は赤外の発光波であり、受光素子22が受信する反射波は赤外の反射光となる。但し、センサの種類はこれに限られるわけではなく、マイクロ波方式センサや超音波式センサや測距式光電センサなどに適宜変更してもよい。
投光素子20は、ボウル部43に臨ませて設けられており、所定の投光量の光をボウル部43に向けて投光する。投光素子20から投光された光は、ボウル部43や使用者の手などによって反射され、この反射光を受光素子22が受光する。
【0019】
物体検知センサ8は、受光素子22が受け取った受光レベルの大きさ、即ち反射量の大きさが、予め設定しておいた所定値未満である場合には被検知物体が無しと判定し、所定値以上である場合には被検知物体が有りと判定して、その検知信号を電気信号として、配線56を通して制御部24に出力する。
この検知信号は電磁弁駆動手段73へと渡され、電磁弁駆動手段73は検知信号を受け取ることによって、電磁弁26を開駆動して吐水動作を行う。
【0020】
なお、物体検知センサ8の投光素子20は、所定の投光軸線方向に赤外線を投光するように構成されており、赤外線の強度は、この投光軸から外れるに従って低下する。本実施形態においては、投光軸線上の赤外線の強度が、半分に低下する、投光軸線を中心軸とする略円錐形状に広がる領域が、物体検知センサ8の検知領域12として機能している。また、検知領域12は、投光素子20の指向性や投光量、人体等の検知と判定する検知レベルなどによって変更することができる。
【0021】
また、自動水栓2は、水溜め検知部70を有しており、ボウル部43に湯水が溜められているか否かを検知する。水溜め検知部70の構成例を以下に説明する。
1つ目の例は、排水栓75に磁石を設けて、排水口にリードスイッチを設けた構成である。排水栓75を閉めたときに排水口のリードスイッチがオンすることで、排水栓75が閉められたことを検出でき、これから水溜め行為が始まるということが判断できる。
2つ目の例は、排水口に流量センサを設けた構成である。吐水が開始したにも関わらずに、流量センサが検知しなければ、吐水した湯水がボウル部43に溜まっていると判断できる。
【0022】
3つ目の例は、ボウル部43の側面に水位センサを設けた構成である。水位センサがボウル部43の水面上昇を検知することで、湯水がボウル部43に溜まっていることが判断できる。
4つ目の例は、ボウル部43の底部に重量センサを設けた構成である。重量センサがボウル部43に溜まる水の重さを検出することで、湯水がボウル部43に溜まっていることが判断できる。
このように水溜め検知部70を構成することで、自動水栓2は、ボウル部43に湯水が溜められているか否かを判定することができる。
【0023】
制御部24は、洗面台1の下部に設けられており、物体検知センサ8と、電磁弁26と、水溜め検知部70とは電気信号を伝送するそれぞれの配線56と、配線55と、配線74とによって接続されている。
なお、制御部24は、マイクロプロセッサ、メモリ、及びこれらを作動させるプログラム等(以上図示せず)により構成することができる。
【0024】
更に、図3に示すように、自動水栓2は、吐水モードを切り替えるためのモード切替操作部としてモード切替スイッチ51と、連続吐水スイッチ61とを有している。制御部24は、モード切替スイッチ51によって切り替えられた吐水モードと連続吐水スイッチ61の操作に基づいても電磁弁26を駆動する。
モード切替スイッチ51と連続吐水スイッチ61は操作パネル50に設けられており、モード切替スイッチ51を押す毎に、吐水モードが自動吐水モードと連続吐水モードに交互に切り替わる。
【0025】
自動吐水モードとは物体検知センサ8の検知状況に基づいて吐水口30から吐止水可能な吐水モードのことであり、連続吐水モードとは物体検知センサ8の検知状況に関係なく吐水口30から吐止水可能な吐水モードのことである。より具体的には、自動吐水モードは、物体検知センサ8が物体を検知すると電磁弁26を開駆動して吐水し、非検知になると電磁弁26を閉駆動して止水する。連続吐水モードは、モードに入ると連続吐水スイッチ61の操作によって電磁弁を開閉駆動する。
【0026】
以下、本実施形態の具体例について図面を参照しつつ説明する。
図4は、第1の実施形態にかかる自動水栓の動作を示すタイムチャートである。
物体検知センサ8は、先述したように検知領域12を持っているが、この検知領域12の範囲を水溜め検知部70の検知状況によって切り替えている。つまり、期間T11では水溜め検知部70は非検知中であり、このときの検知領域12の範囲は大きくする。また、期間T12では水溜め検知部70は検知中であり、このときの検知領域12の範囲は小さくする。
【0027】
図5は、第1の実施形態にかかる物体検知センサの検知領域を例示する模式図である。
図5(a)は、水溜め検知部70が非検知中における、物体検知センサ8の検知領域12aを示しており、図5(b)は、水溜め検知部70が検知中における、物体検知センサ8の検知領域12bを示している。また、図5(b)では、水面76の位置まで水溜めをして、そこに漬け置き洗い用の洗濯衣類77を放り込んでいる状態である。
水溜め検知部70が検知中における検知領域12bは、水溜め検知部70が非検知中における検知領域12aよりも小さくなっているので、水面76に浮かんでいる洗濯衣類77は検知しない。
【0028】
ここで、物体検知センサ8の検知領域の範囲を変える方法として、伝播波の送信パワーを調整する方法例を、図6を用いて説明する。
図6は、第1の実施形態にかかる物体検知センサの送信パワーの調整方法を示す模式図である。
送信パワーを調整する1つ目の例は、図6(a)に示すように、伝播波の送信時間を変える方法である。赤外の発光波で言えば、赤外の発光時間が変わるということであり、発光時間が長ければ送信パワーは大きくなり、発光時間が短くなれば送信パワーは小さくなる。
【0029】
2つ目の例は、図6(b)に示すように、伝播波の送信強度を変える方法である。赤外の発光波で言えば、赤外の発光強度が変わるということであり、発光強度が高くなれば送信パワーは大きくなり、発光強度が低くなれば送信パワーは小さくなる。
3つ目の例は、図(c)に示すように、伝播波の送信回数を変える方法である。赤外の発光波で言えば、赤外の発光回数が変わるということであり、発光回数が多ければ送信パワーは大きくなり、発光回数が少なければ送信パワーは小さくなる。
これらのように送信パワーを変えることによって、物体検知センサ8の検知領域12の範囲を変えることが可能となる。
【0030】
また、送信パワーを変えずに、受信部22の感度を変えることによっても検知領域12の範囲を変えることは可能である。例えば、被検知物体有りと判定する反射量のしきい値を変化させることで、検知領域12の範囲を変えることが可能である。他にも、反射量を増幅演算して処理する場合は、その増幅度を変化させることでも可能である。
このように、送信部20又は受信部22の制御を変更することで、物体検知センサ8の検知領域12の範囲を変化させることは可能である。
【0031】
以上説明したように、水溜め検知部70が検知中は物体検知センサ8の検知領域12を小さくしている。これは、水溜め行為の中で、洗濯衣類77をボウル部43に漬け置き洗いする際の誤吐水を防止するためである。
つまり、水溜めをしている状態のボウル部43に洗濯衣類77を放り込むと、洗濯衣類77は溜められた湯水の水面76付近を漂うことになる。そうなると、物体検知センサ8が通常の検知領域12aのままだと浮遊する洗濯衣類77を検知してしまい、予期せぬ誤吐水がなされてしまうことがある。
【0032】
そこで、水溜め行為がなされることを水溜め検知部70で検知し、水溜め検知中は物体検知センサ8の検知領域を通常よりも小さい検知領域12bに変えることで、ボウル部43に浮遊する洗濯衣類77を物体検知センサ8が検知することが無くなる。
このようにして、ボウル部43へ水溜めをしている状態で洗濯衣類77を漬け置き洗いしていても、物体検知センサ8の検知領域12を小さくすることで検知し難くして、物体検知センサ8の検知領域12が水面76に浮遊する洗濯衣類77の位置まで及ばなくすることで、洗濯衣類77を検知することがなくなり、予期せぬ誤吐水をすることがなくなる。
【0033】
(第2の実施形態)
ここからは、第2の実施形態について説明する。
第2の実施形態による自動水栓2の基本構成については、図1の模式図、図2のブロック図、図3の模式図を参照しつつ説明した内容と同様でよいため、その説明は省略する。
【0034】
図7は、第2の実施形態にかかる自動水栓の動作を示すタイムチャートである。
水溜め検知部70が非検知中のとき、物体検知センサ8の検知オンディレイ時間は短く、被検知物体が検知領域12に入ってくると即座に吐水を開始する(時刻T21)。ここで言う検知オンディレイ時間とは、被検知物体が検知領域12に入ってきてから被検知物体を有りと判定するまでの判定時間のことである。このときの検知オンディレイ時間は、例えば、0.1秒といった短い時間でよい。そして、被検知物体が検知領域12から出ていくと吐水を終了して止水する(時刻T22)。
【0035】
その後、水溜め検知部70が水溜めを検知すると、物体検知センサ8の検知オンディレイ時間は長くなる(時刻T23)。例えば、この検知オンディレイ時間を1秒とする。そして、検知領域12に被検知物体が入ってきても即座には吐水を開始しない(時刻T24)。1秒を経過する前に被検知物体が検知領域12から出て行くとそのまま吐水を開始せずに終了する(時刻T25)。
そして、再び被検知物体が検知領域12に入ってきて(時刻T26)、その状態が検知オンディレイ時間である1秒が経過した時点で吐水開始する(時刻T27)。その後、被検知物体が検知領域12から出て行くと吐水を終了して止水する(時刻T28)。
【0036】
以上説明したように、水溜め検知部70が検知中は物体検知センサ8の検知オンディレイ時間を長くしている。これは、水溜め行為の中で、洗濯衣類77をボウル部43に漬け置き洗いする際の誤吐水を防止するためである。
つまり、水溜めをしている状態のボウル部43に洗濯衣類77を放り込むと、洗濯衣類77は溜められた湯水の水面76付近を漂うことになる。そうなると、物体検知センサ8が通常の検知オンディレイ時間のままだと、浮遊する洗濯衣類77が水面76の揺らぎで検知領域12を出たり入ったりすることで検知と非検知を繰り返し、予期せぬ誤吐水を繰り返してしまうことがある。
【0037】
そこで、水溜め行為がなされることを水溜め検知部70で検知し、水溜め検知中は物体検知センサ8の検知オンディレイ時間を通常よりも長くすることで、ボウル部43に浮遊する洗濯衣類77を物体検知センサ8が検知することが無くなる。
このようにして、ボウル部43へ水溜めをしている状態で洗濯衣類77を漬け置き洗いしていても、物体検知センサ8の被検知物体を有りと判定するまでの判定時間を長くすることで検知し難くして、物体検知センサ8の検知領域12を出たり入ったりする洗濯衣類77を検知することがなくなり、予期せぬ誤吐水をすることがなくなる。
【0038】
(第3の実施形態)
ここからは、第3の実施形態について説明する。
第3の実施形態による自動水栓2の基本構成については、図1の模式図、図2のブロック図、図3の模式図を参照しつつ説明した内容と同様でよいため、その説明は省略する。
【0039】
図8は、第3の実施形態にかかる自動水栓の動作を示すタイムチャートである。
水溜め検知部70が非検知から検知状態に変わった後(時刻T31)、最初に被検知物体が検知領域12に入ってきても物体検知センサ8は有りの判定はせず、吐水は開始しない(時刻T32)。そして、被検知物体が検知領域12からそのまま出て行くと吐水を開始せずに終了する(時刻T33)。その後、再び被検知物体が検知領域12に入ってきたときは、物体検知センサ8は有りの判定をして、吐水を開始する(時刻T34)。そして、被検知物体が検知領域12から出ていくと吐水を終了して止水する(時刻T35)。
【0040】
以上説明したように、水溜め検知部70が検知してから最初に物体検知センサ8の検知領域12に被検知物体が入ってきても吐水はしない。これは、水溜め行為の中で、洗濯衣類77をボウル部43に放り込んだ際の誤吐水を防止するためである。
つまり、水溜めを完了した後にボウル部43に洗濯衣類77を放り込んだとき、洗濯衣類77はどうしても検知領域12を横切ってしまう。そうなると、洗濯衣類77が検知領域12を横切ったタイミングで洗濯衣類77を検知してしまい、予期せぬ誤吐水がなされてしまうことがある。
【0041】
そこで、水溜め行為がなされたことを水溜め検知部70で検知し、水溜め完了後から最初に検知領域12に被検知物体が入ってきても吐水しないようにすることで、洗濯衣類77がボウル部43へ放り込まれるタイミングで吐水することが無くなる。
このようにして、ボウル部43へ水溜めを完了している状態で洗濯衣類77を放り込んでも、水溜め完了後の最初の被検知物体検知をキャンセルすることで検知し難くして、洗濯衣類77が検知領域12を横切っても吐水することがなくなり、予期せぬ誤吐水をすることがなくなる。
【0042】
ここからは、水溜め検知の変形例について図9に基いて説明する。
図9は、水溜め検知にかかる自動水栓の動作を示すタイムチャートである。
連続吐水スイッチ61などで、ボウル部43への水溜めを開始し(時刻T41)、水溜めが完了した時点で吐水を終了して止水する(時刻T42)。この時刻T41から時刻T42までの間に、物体検知センサ8が一度も検知しなければ水溜めがなされたと判断する(時刻T42)。これにより、特別なセンサや機構を設けることなく、吐水パターンと物体検知センサ8の検知情報で水溜め行為を検出できるので、コストを削減できる。
その後、被検知物体が検知領域12に入ってきたときは吐水を開始し(時刻T43)、検知領域12から出ていったときは吐水を終了して止水する(時刻T44)。
【0043】
以上説明したように、吐水中に物体検知センサ8が一度も検知しなければ水溜め行為がなされたと判断している。これは、水溜め検知用に特別なセンサや機構を設けずに、吐水パターンと物体検知センサ8の検知情報によって、水溜め行為を検出するためである。
つまり、吐水中にも関わらず、検知領域12に被検知物体が入ってこないということは、その行為は手洗いや洗顔といった洗浄行為ではなく、ただ湯水を吐水させているだけの行為、即ちボウル部43に湯水を溜めている行為だと判断しても差し支えない。
このようにして、特別なセンサや機構を設けることなく、吐水パターンと物体検知センサ8の検知情報で水溜め行為を検出できるので、コストを削減できる。
【0044】
以上、本発明の実施の形態について説明した。しかし、本発明はこれらの記述に限定されるものではない。前述の実施の形態に関して、当業者が適宜設計変更を加えたものも、本発明の特徴を備えている限り、本発明の範囲に包含される。
例えば、自動水栓2などが備える各要素の形状、寸法、材質、配置などや物体検知センサ8、水溜め検知部70の設置形態などは、例示したものに限定されるわけではなく適宜変更することができる。
【0045】
また、前述した各実施の形態が備える各要素は、技術的に可能な限りにおいて組み合わせることができ、これらを組み合わせたものも本発明の特徴を含む限り本発明の範囲に包含される。
例えば、第2の実施形態と第3の実施形態を組み合わせた制御も本発明の特徴から容易に発明可能である。
【符号の説明】
【0046】
1…洗面台
2…自動水栓
4…水栓本体
8…物体検知センサ
12…検知領域
12a…検知領域
12b…検知領域
20…投光素子(送信部)
22…受光素子(受信部)
24…制御部
26…電磁弁
28…給水源
30…吐水口
43…ボウル部
50…操作パネル
51…モード切替スイッチ
52、53…給水ホース(給水経路)
55…配線
56…配線
61…連続吐水スイッチ
70…水溜め検知部
73…電磁弁駆動手段
74…配線
75…排水栓
76…水面
77…洗濯衣類




【特許請求の範囲】
【請求項1】
給水経路から給水された湯水を吐出する吐水口と、
前記給水経路に接続された電磁弁と、
前記吐水口から吐出される湯水を溜めるボウル部に湯水が溜められていることを検知する水溜め検知部と、
被検知物体に向けて伝播波を送信し、その反射量に基づいて前記被検知物体の有り無しを判定して出力する物体検知センサと、
前記物体検知センサの出力に基づいて、前記電磁弁を駆動する電磁弁駆動手段と、
を備えた自動水栓において、
前記物体検知センサは、前記水溜め検知部が検知中には被検知物体を有りと判定し難くなる、
ことを特徴とする自動水栓。
【請求項2】
前記物体検知センサは、前記水溜め検知部が検知中に検知物体を有りと判定する検知領域を、前記水溜め検知部が非検知中のときよりも小さくする、
ことを特徴とする請求項1記載の自動水栓。
【請求項3】
前記物体検知センサは、前記水溜め検知部が検知中に被検知物体を有りと判定するまでの判定時間を、前記水溜め検知部が非検知中のときよりも長くする、
ことを特徴とする請求項1記載の自動水栓。
【請求項4】
前記物体検知センサは、前記水溜め検知部が検知中に最初に被検知物体が検知領域に入ってきても有りと判定せず、その後、被検知物体が検知領域を出て、再び検知領域に入ってきたときは有りと判定する、
ことを特徴とする請求項1記載の自動水栓。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2012−207494(P2012−207494A)
【公開日】平成24年10月25日(2012.10.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−75690(P2011−75690)
【出願日】平成23年3月30日(2011.3.30)
【出願人】(000010087)TOTO株式会社 (3,889)
【Fターム(参考)】