自動締付け靴
【課題】
【解決手段】交差した靴紐又はクロージャパネルと、靴を着用者の足の周りで締め付けるために、一方向に動作して、交差した靴紐又はクロージャパネルの自動締付けを引き起こし、また、靴を着用者の足から外すことができるように簡単に解放することができる、締付け機構とを有する自動締付け靴。靴の後部靴底から部分的に突出する作動ホイールは、自動締付け機構を締付け方向に移動させるための便利で信頼性の高い作動手段となる。
【解決手段】交差した靴紐又はクロージャパネルと、靴を着用者の足の周りで締め付けるために、一方向に動作して、交差した靴紐又はクロージャパネルの自動締付けを引き起こし、また、靴を着用者の足から外すことができるように簡単に解放することができる、締付け機構とを有する自動締付け靴。靴の後部靴底から部分的に突出する作動ホイールは、自動締付け機構を締付け方向に移動させるための便利で信頼性の高い作動手段となる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2007年6月14日出願の米国特許出願第11/818,370号の一部継続出願であり、その全体を参照により本明細書に組み込む。
【0002】
本発明は、靴に関し、より具体的には自動締付け靴に関する。この靴は、着用者の足の周りで靴の自動的締付けを引き起こすように一方向に動作し、且つ靴を着用者の足から容易に取り外すことができるように簡単に解放することができる締付け機構を含む、自動締付けシステムを備える。本発明は、主として、スポーツ用の靴又は運動靴の種類の自動締付け靴に関するが、本発明の原理は、他の多くの種類及び様式の靴に適用可能である。
【背景技術】
【0003】
靴及びブーツを含めた履物は重要な服飾品である。それらは、着用者が立ち、歩き、走っている間、足を保護するとともに必要な支持をもたらす。それらはまた、着用者の個性に対して美観的要素を提供することができる。
【0004】
靴は、地面に接触する外底及び踵を構成する靴底を備える。サンダル又はビーチサンダルを構成しない靴には、多くの場合は舌革と組み合わせて足を取り囲むように作用する甲部が取り付けられる。最後に、クロージャ機構が、甲部のメジアル側部分(身体の正中側部分)及びラテラル側部分(体側側部分)を舌革及び着用者の足の周りにぴったり引き付けて、靴を足に固定する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】米国特許第737,769号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
クロージャ機構の最も一般的な形態は、靴の甲部のメジアル側部分とラテラル側部分の間で交差し、足の甲の周りできつく引っ張られ、着用者によって結ばれる靴紐である。そのような靴紐は、機能性の点で単純且つ実用的であるが、結び目が着用者の足の周りで緩むので、一日を通して結んだり結び直したりする必要がある。これは通常の着用者にとっては面倒な場合がある。更に、幼児は、靴紐の結び方を知らないことがあり、そのため、注意深い親又は養護者による助けを必要とする。更に、関節炎を患っている高齢者は、靴を足に固定するために、靴紐をきつく引っ張り結ぶことに痛みを感じたり、過度に苦労すると感じることがある。
【0007】
靴業界は、長年にわたって、結んだ靴紐を固定するための追加の特徴、又は靴を着用者の足の周りで固定する代替手段を採用してきた。例えば、1903年にPrestonに発行された米国特許第737,769号(特許文献1)は、はと目とスタッドの組み合わせによって甲部に固定された足の甲の周りにクロージャフラップを追加した。Cardaropoliに発行された米国特許第5,230,171号は、クロージャフラップを靴の甲部に固定するため、かぎホックの組み合わせを使用した。Murr, Jr.に発行された米国特許第2,124,310号によってカバーされた軍用狩猟ブーツは、メジアル側甲部及びラテラル側甲部の上で複数のフックの周りを交差し、ピンチファスナーによって最終的に固定され、それによって結び目の必要性をなくす靴紐を使用した。Zebe, Jr.に発行された米国特許第6,324,774号、Caberlottoらに発行された同第5,291,671号、及びDinndorfらによって公表された米国特許出願公開第2006/0191164号も参照のこと。他の靴メーカーは、靴紐を引っ張って緩める、靴の中の足によって一日中加えられる圧力を妨げるために、靴の上の適所に靴紐を固定する小さなクランプ又はピンチロック機構を採ってきた。例えば、Hansonに発行された米国特許第5,335,401号、Borsoiらに発行された同第6,560,898号、及びLiuに発行された同第6,671,980号を参照のこと。
【0008】
他のメーカーは靴紐を完全に省いてきた。例えば、スキーブーツは、バックルを使用してブーツの甲部を足及び脚の周りで固定することが多い。例えば、Gertschらに発行された米国特許第3,793,749号及びMorrowらに発行された同第6,883,255号を参照のこと。一方、Seidelに発行された米国特許第5,175,949号は、甲部の一部からヨークが延び、それが甲部の別の部分の上に位置する上向きに突出した「ノーズ」の上でスナップ留めされ、結果として得られるロック機構の張力を調節するスピンドルドライブを備えたスキーブーツを開示している。靴紐の凍結又は氷結を回避する必要があることから、外部の靴紐をスキーブーツからなくし、堅いスキーブーツの甲部と係合する外部の係止機構で代用することは論理的である。
【0009】
スキーブーツに使用される異なる方策は、ケーブルを、またしたがってスキーブーツを着用者の足の周りで締め付ける回転式の爪車と爪の機構によって締め付けられる、内部を引き回したケーブルシステムを使用するものであった。例えば、Morellらに発行された米国特許第4,660,300号及び同第4,653,204号、Schochに発行された同第4,748,726号、Walkhoffに発行された同第4,937,953号、並びにSpademanに発行された同第4,426,796号を参照のこと。Hammerslangに発行された米国特許第6,289,558号は、そのような回転式の爪車と爪の締付け機構を、アイススケート靴の甲ストラップにまで拡張した。そのような回転式の爪車と爪からなる締付け機構と、内部ケーブルとの組み合わせは、運動靴及びレジャー用の靴にも適用されてきた。例えば、Carrollに発行された米国特許第5,157,813号、Hallenbeckに発行された同第5,327,662号及び同第5,341,583号、並びにSussmannに発行された同第5,325,613号を参照のこと。
【0010】
Pozzobonらに発行された米国特許第4,787,124号、Schochに発行された同第5,152,038号、Jungkindに発行された同第5,606,778号、及びSakabayashiに発行された同第7,076,843号は、手若しくは引き紐によって操作される爪車と爪又は駆動歯車の組み合わせに基づく、回転式締付け機構の他の実施形態を開示している。これらの機構は、同調して動作する必要がある部品の数の点で複雑になっている。
【0011】
内部又は外部を引き回したケーブルを締め付ける更に他の機構が、靴又はスキーブーツに対して利用可能である。後側の甲部に沿って位置する、手によって操作される枢動可能なレバーが、Olivieriに発行された米国特許第4,937,952号、Walkhoffに発行された同第5,167,083号、Seidelに発行された同第5,379,532号、及びJonesらに発行された同第7,065,906号によって教示されている。後側の靴甲部に沿って位置付けられ、手によって操作される、外部を引き回した靴紐に張力を加えるためのスライド機構が、Tsaiによって出願された米国特許出願公開第2003/0177661によって開示されている。Martinに発行された米国特許第4,408,403号、及びHieblingerに発行された同第5,381,609号も参照のこと。
【0012】
他の靴メーカーは、着用者の手の代わりに足によって作動させることができる締付け機構を含む靴を設計してきた。例えば、Voswinkelに発行された米国特許第6,643,954号は、靴の内部に位置し、足によって押し下げられて靴甲部を横切ってストラップを締め付ける、テンションレバーを開示している。Chouに発行された米国特許第5,983,530号及び同第6,427,361号、並びにRotemらに発行された同第6,378,230号では、内部を引き回した靴紐ケーブルは同様の機構によって作動する。しかし、そのようなテンションレバー又は押し板には、足によって一定の圧力が加えられないことがあり、それにより、締付けケーブル又はストラップが緩んでしまう。更に、着用者は、一日を通してテンションレバー又は押し板を踏みつけることを不快に感じることがある。Bernierらに発行された米国特許第5,839,210号は、靴の外部に位置付けられた関連する電動モータを備えた、靴の甲を横切るいくつかのストラップを引っ張るための電池充電式のリトラクタ機構を使用することによって、異なる方策を採っている。しかし、そのような電池駆動のデバイスは、短絡を起こしたり、湿潤環境において着用者にショックを与える可能性がある。
【0013】
靴業界はまた、靴紐の代わりにVelcro(登録商標)ストラップを含む、小児及び成人向けの靴を生産してきた。メジアル側甲部から延びるそのようなストラップは、ラテラル側甲部に固定された補完的なVelcroパッチに容易に締結される。しかし、そのようなVelcroクロージャは、足によって応力がかかり過ぎると外れてしまう場合が非常に多い。これは、特に運動靴及びハイキング用ブーツの場合に生じる。更に、Velcroクロージャは、比較的早く磨耗して、しっかり閉じるという能力を失う可能性がある。更に、多くの着用者が、Velcroストラップは履物の場合には美観的に見栄えが悪いと感じている。
【0014】
本発明者であるGregory G. Johnsonは、靴底の区画内に、又は靴の外部に沿って位置し、靴甲部の内側若しくは外側に位置付けられた内部又は外部のケーブルを締め付けるとともに、ケーブルの望ましくない緩みを防ぐための、自動締付け機構を含む多数の靴製品を開発してきた。そのような締付け機構は、締め付けられたケーブルと係合する一対の把持カム、爪車と爪のように動作して締付け方向での移動を可能にするとともに、緩み方向での滑りを防ぐトラックアンドスライド機構、或いは、靴紐ケーブルを巻き取り、逆回転を防ぐように解放レバーの爪に係合された爪車も支える輪軸アセンブリを伴うことができる。Johnsonの自動締付け機構は、手で引く紐若しくはトラックアンドスライド機構によって、又は靴底の後部から延び、着用者によって地面若しくは床に対して押し下げられて靴紐ケーブルを締め付ける作動レバー若しくは押し板によって操作することができる。関連する解放レバーは、自動締付け機構をその固定位置から係脱して、靴を脱ぐために靴紐又はケーブルを緩めることができるように、着用者の手又は足によって押されてもよい。Johnsonに発行された米国特許第6,032,387号、同第6,467,194号、同第6,896,128号、同第7,096,559号、及び同第7,103,994号を参照のこと。
【0015】
しかし、これまで考案された自動締付けシステムには、完全に成功するか、満足のいくものはなかった。従来技術の自動締付けシステムの主な欠点は、着用者の足にぴったり適応するように靴を両側から締め付けることができず、また、靴を着用者の足から外したいときに靴を迅速に緩めるための手段を伴っていなかったことである。更に、非常に多くの場合、(1)多数の部品を伴うことによる複雑さ、(2)小さな電動モータなどの高価な部品を含むこと、(3)周期的な交換が必要な電池などの部品を使用していること、又は、(4)頻繁なメンテナンスを必要とする部品が存在することなどの欠点がある。これらの態様、並びに具体的に言及していない他の態様は、完全に成功し満足のいく自動締付け靴を得るために、大幅な改善が必要とされていることを示す。
【0016】
したがって、着用者の手を使用せずに足によって、例えば靴底の踵から延びるローラーホイールによって操作することができる動作部品が少数で設計が単純である、自動締付け機構を含む靴又は他の履物製品を提供することが有利であろう。靴底の格納区画から外に枢動するローラーホイールによって、ローラースケート靴に変化させることができる靴が知られている。例えば、Wangに発行された米国特許第6,926,289号、及びWalkerに発行された同第7,195,251号を参照のこと。そのような大衆的な靴はWheelies(登録商標)の名称で販売されている。しかし、この種の変化可能なローラースケート靴は、ローラーホイールを使用して自動締付け機構を作動させることはなく、そのような機構を含まない。その代わりに、ローラーは娯楽目的でのみ使用される。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明の自動締付け靴は、(a)靴底と、前記靴底に接続された甲部とを有し、前記甲部が、爪先と、踵と、メジアル側部分と、ラテラル側部分とを含む靴と、(b)前記甲部の前記メジアル側及びラテラル側部分に接続されており、前記靴の内部に位置する足の周りで前記メジアル側及びラテラル側部分を引き付けるためのクロージャ手段と、(c)前記靴の内部に固定された締付け機構であって、輪軸にしっかり接続され、前記靴の外部に一部が延びるアクチュエータホイールを有する輪軸を含む締付け機構と、(d)一端で前記クロージャ手段に接続され、他端で前記締付け機構に接続された少なくとも一つの係合ケーブルであって、(e)それにより前記靴の外部に一部が延びる前記アクチュエータホイールの地面又はその他の硬い面に接する回転によって前記締付け機構の前記輪軸が回転して、前記クロージャ手段並びに前記メジアル側及びラテラル側甲部部分を足の周りに引き付けるようにする係合ケーブルと、前記係合ケーブルを締付け方向に引き付けるための、前記締付け機構に動作可能に接続された、前記輪軸の逆回転を妨げて前記係合ケーブルが緩むのを防ぐように作用する固定手段と、(f)前記固定手段に動作可能に接続されており、前記固定手段を選択的に係脱して前記輪軸の逆回転を可能にして、前記クロージャ手段を緩めるための解放手段とを備える。
【0018】
本発明の自動締付け靴によれば、着用者の手を使用することなく着用者の足の周りでぴったり締まり、且つ要求に応じて簡単に緩めることができる。自動締付け靴は、あらゆる適切な材料によって構築された靴底及び一体型本体部材又は靴甲部を含む。靴甲部は、爪先、踵、舌革、並びにメジアル側及びラテラル側の側壁部分を含む。補強紐締めの形でメジアル側甲部及びラテラル側甲部の周囲に沿って一連のはと目と係合する、靴紐又は一対の靴紐が提供される。この靴紐(一つ又は複数)は、舌革を横切って交差した形で自動締付け機構によって引っ張られて、メジアル側及びラテラル側の靴甲部を着用者の足の周りに引き付け、着用者の甲の上で舌革にぴったり接する。或いは、自動締付け機構によってラテラル側靴甲部に引き付けられる、又は自動締付け機構によって両側から引っ張られる、メジアル側靴甲部に固定され、舌革を横切って延びるクロージャパネルで靴紐を置き換えてもよい。
【0019】
この自動締付け機構アセンブリは、好ましくは、靴底に含まれるチャンバ内に位置し、靴紐又はクロージャパネルに取り付けられた係合ケーブルを巻き取る回転可能な輪軸を備える。その輪軸には、靴の後部靴底から部分的に延びるローラーホイールが取り付けられるので、着用者は、地面又は床の上でローラーホイールを回転させて、自動締付け機構の輪軸を締付け方向に付勢することができる。やはり輪軸に固定された爪車歯を有する爪車は、解放レバーの遠位端で爪に連続的に係合されて、輪軸が逆回転するのを防ぐ。しかし、着用者が靴の踵から好ましくは延びる解放レバーと係合すると、爪が枢動して爪車の歯との係合から外れるので、自動締付け機構の輪軸が自由に逆回転して、締付けケーブルをその待機位置へと解放することができ、靴紐又はクロージャパネルを緩めることができる。
【0020】
本発明の他の目的、及び本発明の付随する利点の多くは、添付図面と併せて以下の詳細な説明を参照することによってより十分に理解されることで、容易に認識されるであろう。図面中、類似の参照番号は図面全体を通して類似の部分を指す。
【発明の効果】
【0021】
本発明の自動締付け靴によれば、着用者の手を使用することなく着用者の足の周りでぴったり締まり、且つ要求に応じて簡単に緩めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】緩められた状態にある交差した靴紐を有する本発明の自動締付け靴の平面図。
【図2】図1の自動締付け靴の実施形態の部分切欠き側面図。
【図3】クロージャパネルを有する本発明の自動締付け靴の平面図。
【図4】本発明の自動締付け機構の部品の分解組立斜視図。
【図5】作動ホイールを除いた自動締付け機構の軸アセンブリの斜視図。
【図6】作動ホイールを含む軸アセンブリの側面図。
【図7】自動締付け機構のケース底部の斜視図。
【図8】自動締付け機構のケース頂部を上下逆に見た斜視図。
【図9】自動締付け機構の解放レバーを上下逆に見た斜視図。
【図10】解放レバーの斜視図。
【図11】自動締付け機構のねじりばねの斜視図。
【図12】自動締付け機構のケースキャップを上下逆に見た斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0023】
着用者の足の周りに靴甲部を引き付ける靴紐又はクロージャパネルを締め付けるための、ホイール作動式の締付け機構を含む自動締付け靴が、本発明によって提供される。そのような自動締付け機構アセンブリは、好ましくは、靴紐又はクロージャパネルに接続された係合ケーブルを締付け方向で巻き取るための輪軸と、好ましくは靴の後部靴底から部分的に突出する、輪軸を締付け方向で回転させるための固定のローラーホイールと、解放レバーの端部で爪と連続的に係合して、輪軸が逆回転するのを防ぐための、爪車歯を有する固定の爪車とを備える。爪を爪車歯から係脱するように解放レバーが付勢されると、靴紐又はクロージャパネルが緩むことができるように、輪軸が自由に逆回転して係合ケーブルを解放することができる。本発明は、少数の部品しか有さず、その動作の信頼性が高い自動締付け機構を提供する。
【0024】
本発明の目的のため、「靴」は、ブーツ、作業靴、雪靴、スキーブーツ及びスノーボードブーツ、スポーツ用の靴又は運動靴(スニーカー、テニスシューズ、ランニングシューズ、ゴルフシューズ、スパイクシューズ、バスケットボールシューズなど)、アイススケート靴、ローラースケート靴、インラインスケート靴、スケートボード靴、ボーリングシューズ、ハイキング用の靴又はブーツ、ドレスシューズ、カジュアルシューズ、ウォーキングシューズ、ダンスシューズ、及び靴型装具などであるがそれらに限定されない、靴を足に固定する助けとなる甲部分を有するあらゆる閉塞型の履物製品を意味する。
【0025】
本発明は、例示される目的のみのために様々な靴に使用されてもよいが、本明細書では本発明を運動靴に関して記載する。これは、いかなる意味においても、本発明の自動締付け機構の適用を他の適切な又は望ましいタイプの靴に限定することを意味しない。
【0026】
図1は、開放状態にある本発明の自動締付け靴110の平面図を示し、図2は、締付けシステムを示す自動締付け靴110の部分切欠き側面図を示す。自動締付け靴110は、靴底120と、舌革116を含む一体型本体部材又は靴甲部112と、爪先113と、踵118と、補強紐締めパッド(reinforced lacing pad)114とを有し、それらは全て、靴の最終用途に適したあらゆる材料で構成される。
【0027】
舌革116の爪先113端部には二つのアンカーボタン122及び124が設けられ、それぞれ靴紐136及び137に一端で固定される。次に、靴紐136及び137は、舌革116の上を交差し、図示されるような靴紐はと目(lace eyelets)126、128、130、及び132を貫通し、その後、靴紐保持ループ(lace containment loop)142を貫通する。靴紐保持ループ142を貫通した後、靴紐136は、補強紐締めパッド114の穴146を貫通し、また、靴甲部112の外側材料と内側材料との間を通って靴の踵に至る管材料150の区画を後方へと通る。靴紐137は、図示されるように、補強紐締めパッド114の穴144を貫通し、やはり靴甲部112の外側材料と内側材料との間を通って靴の踵に至る管材料148の区画を後方へと通る。或いは、靴紐136及び137は、靴甲部の外側材料と内側材料との間を靴甲部112の踵まで通る管材料162の区画を貫通する、係合ケーブル160に接合してもよい。
【0028】
本発明の目的のため、図1に示されるように、その中央領域でアンカーボタン122及び124に接合され、端部がはと目を通って交差した単一の靴紐を使用することができる。或いは、交差パターンの代わりにジグザグの紐締めパターンを使用してもよい。このジグザグの構成では、例えばアンカーボタン124に締結された靴紐は、はと目126、132、及び穴144を順に貫通して、次に管148を通って、その他端で自動締付け機構に固定される。
【0029】
或いは、自動締付け靴110は、図3に示されるように、交差した靴紐136、137、又はジグザグの靴紐の代わりに、クロージャパネル170を使用してもよい。クロージャパネル170は、その前端172において、メジアル(medial)側支持面に沿って下側タブ174及び176によって、且つラテラル(lateral)側支持面に沿ってタブ178及び180によって靴底120に固定される。クロージャパネル170は舌革116を覆う。一方、上側タブ182及び184はそれぞれ、後述する自動締付け機構によってクロージャパネル170を締め付ける係合ケーブル190及び192に固定される。或いは、クロージャパネル170は、その一方の面に沿ってメジアル側甲部186に締結し、次に係合ケーブル146を用いてラテラル側甲部188に引っ張ることができる。
【0030】
管材料148、150、162の下側端部は、自動締付け靴110の靴底120に位置するチャンバ200に入る。或いは、管材料の必要性をなくすため、本発明の目的で、係合ケーブル160又は靴紐136、137は靴甲部の外部に沿って引き回してもよいことに留意されたい。
【0031】
自動締付け機構210は、図2に更に十分に示されるように、ハウジングベースプレート202に固定されたハウジング200内に位置する。自動締付け機構210には作動ホイール212が固定され、またそれは、靴110の後部靴底部分を超えて部分的に突出する。床又は地面の上で作動ホイール212を回転させることによって、自動締付け機構210が締付け位置へと回転する。係合ケーブル190、192、160は、チャンバ200内へと下方に延び、それらの端部で締付け機構210に固定されて、靴紐136及び137又はクロージャパネル170を締め付ける。本明細書に更に十分に記載するように、解放レバー214は、好ましくは靴110の後部上端から延びて、自動締付け機構を緩める便利な手段となる。
【0032】
自動締付け機構210は図4により詳細に示される。それは、ケース底部220及びケース頂部222を備え、それらの間で主軸アセンブリ224が固定される。ねじ226及び227はケースキャップ222をケース底部220に締結する。解放レバー214は、ケースキャップ230並びにねじ232及び233によってケース頂部222に固定される。解放レバー214に固定されたねじりばね236は、ケースキャップ230の内表面と相互作用して、主軸アセンブリ224上の爪車240の歯238との係合位置へと解放レバー214を付勢する。
【0033】
主軸224は図5に更に十分に示される。それは、好ましくは、第1の輪軸部分242及び第2の輪軸部分244を有する、10%のRTP 301ポリカーボネートガラス繊維又は機能的に等価な材料から成形された一体部品を備える。係合ケーブル190及び192の端部を輪軸242及び244に固定するために、貫通穴246及び247が使用される。第1のカラー248及び第2のカラー250は、フィン252、254などと協働して、アクチュエータホイール212を主軸224に固定する。輪軸242及び244の周りには、爪車240及び256も一体成形される。爪車は、それらの周囲から延びる複数の歯238及び258を有する。
【0034】
或いは、アクチュエータホイール及び爪車を、ねじ留めするか、リベット留めするか、又は別の方法でセパレータ輪軸に締結してもよい。本発明は二つの爪車を有するものとして示してあるが、単一の爪車又は三つ以上の爪車で十分なこともある。
【0035】
図6は、ホイール軸242に固定されたアクチュエータホイール212を、一体的に固定された関係の輪軸242から延びる爪車240とともに示す。靴110の踵から部分的に延びるアクチュエータホイール212を回転させると、輪軸242及び爪車240が同方向に回転する。アクチュエータホイール212は、ショアー硬さ70Aのウレタン又は機能的に等価な材料から製造されているべきである。ホイールは、好ましくは、直径2.54cm(1インチ)、体積5.096cm3(0.311立方インチ)のものであるべきである。そのようなホイールサイズは、靴の踵から十分に延びるとともに、靴110の靴底のハウジング200内に収まる大きさである。靴のサイズ及びその最終用途に応じて、アクチュエータホイール212は、0.64〜3.81cm(0.25〜1.5インチ)の範囲の直径を有することができる。
【0036】
図7に示されるようなケース底部220は、好ましくは、10%のRTP 301ポリカーボネートガラス繊維又は機能的に等価な材料から成形される。その端部からは、ねじ穴254及び256を有する耳250及び252が延びる。ケース底部220は、アクチュエータホイール212を収容する切欠き部分260を特徴とする。アクチュエータホイール212は、ケース底部220に擦れることなく自由に回転するケーブルでなければならない。くぼみ264及び265によって規定される肩面262及び263は、輪軸242及び244の端部の支承面となり、ケース頂部222と協働して、ケース底部220及びケース頂部222によってもたらされるハウジング内で軸224を固定する。肩270a、270b、270c、及び270dは、輪軸242及び244を支持する付加的手段となる。ケース底部220内のウェル(Well)272及び274は、軸アセンブリ240の爪車240及び256を収容する。最後に、ウェル276及び278は、係合ケーブル190及び192が輪軸242及び244の周りに巻き取られたときそれらを収容する。
【0037】
ケース頂部222の下面が図8に示される。耳280及び282は、ケース頂部222をケース底部220に固定するのに使用されるねじ226及び227のための貫通穴286及び288を含む。くぼみ290及び292は輪軸242及び244の端部を固定する。輪軸は、肩294、296、298a、298b、298c、及び298dによって支持される。切欠き領域300はアクチュエータホイール212を収容する。ウェル302及び304は爪車240及び256を収容する。ウェル306及び308は、係合ケーブル150及び145が軸アセンブリ240の輪軸242及び244の周りに巻き取られたときそれらを収容する。
【0038】
解放レバー214が図9〜10により詳細に示される。これは、好ましくは、10%のRTP 301ポリカーボネート10ガラス繊維又は機能的に等価な材料から成形される。このレバーは、一端にレバー310と、他端に二つのアーム312及び314とを備える。解放レバー214の中間点から輪軸ペグ316及び318が延びる。
【0039】
図4を見ると、解放レバー214は、輪軸ペグ316及び318がそれぞれくぼみ320及び322の内側に嵌った状態で、ケース頂部222の上に取り付けられる。一方、アーム312及び314は、解放レバーアーム312及び314の爪端部330及び332が爪車256及び240の歯258及び238に当接できるように、ケース頂部の貫通穴324及び326を通って下に延びる。
【0040】
本出願に示される解放レバーの代わりに、爪を爪車歯から係脱する他のいかなる解放機構を使用してもよい。可能な代替実施形態は、押しボタン、プルコード、又はプルタブを含むが、それだけに限定されるものではない。
【0041】
引張ばね236は、好ましくは、0.020ステンレス鋼ピアノ線又は機能的に等価な材料から作られるべきである。図11に更に十分に示されるように、それは、中央の支承面230と、支承アーム232及び234と、ねじりリング(torsion rings)236及び238とを備える。図4に示される、ねじりばね236は、ねじりリング236及び238が解放レバーの輪軸ピン316及び315と係合するように、解放レバー214の頂部に取り付けられる。ねじりばね214の支承アーム232及び234は、解放アーム214の肩240及び242に当接する。或いは、解放レバーの爪を付勢して自動締付け機構の爪車歯と係合させるために、圧縮ばね又は板ばねを使用してもよい。
【0042】
ケースキャップ230が図12により詳細に示される。好ましくは、10%のRTP 301ポリカーボネートガラス繊維又は機能的に等価な材料から成形され、貫通穴250及び252が開いた支柱246及び248を特徴とするので、ねじ232及び233を使用して、ねじ穴254及び256(図7を参照)を用いてケースキャップ230をケース底部220に取り付けることができる。解放レバー214の輪軸ペグ316及び318は、ケースキャップ230(図12)のくぼみ260及び262とケース頂部222のくぼみ322及び324との間に捕捉されるので、解放レバー214が自動締付け機構内で枢動することができる。ケースキャップ230の内表面に沿った肩264は、ねじりばね236の支承部分230に対する当接面となる。ねじの代わりに、接着剤又は音波溶接など他の適切な締結手段を使用して、自動締付け機構のハウジング部品を互いに固定してもよい。
【0043】
操作の際、着用者は、自動締付け靴110の靴底120の後部から延びるアクチュエータホイール212が床又は地面に当接するように、自身の足を位置付ける。靴の踵を自分の体から遠ざけるように回転させることによって、アクチュエータホイール212が反時計方向に回転する。軸アセンブリ224並びにそれに関連する輪軸242及び244が同様に反時計方向に回転し、それによって、靴紐136及び137が自動締付け機構のハウジング内の輪軸242及び244に巻き取られる。そうすることで、靴紐136及び137が靴110内で着用者の足の周りを締め付ける。そうでなければ輪軸242及び244を回転させて靴紐を緩めてしまう、爪車の時計回転を防ぐために、解放レバー214の爪端部330及び332は爪車240及び256の各歯238及び258と連続的に係合する。ねじりばね236は、ケースキャップ230内部の当接面264と、解放レバー214の肩240及び244とに接して、解放レバー214の爪端部を付勢して爪車歯と係合させる。
【0044】
着用者は、靴紐136及び137又はクロージャパネル170を緩めて靴110を脱ぎたい場合、好ましくは靴の後部靴底から延びる解放レバー214を押し下げさえすればよい。これは、上述したような、爪端部330及び332を爪車踵(ratchet heels)240及び256の歯から係脱させるねじりばね236の付勢に打ち勝つ。輪軸242及び244が時計方向で回転するにしたがって、靴紐136及び137又はクロージャパネル170は自然に緩む。
【0045】
本発明の自動締付け機構210は、当業界において知られている他のデバイスよりも設計が単純である。したがって、靴製造中に組み立て、且つ靴の使用中に壊れる部品がより少数である。本発明の自動締付け機構の実施形態210の別の本質的な利点は、靴紐136及び137並びにそれらに関連するガイドチューブが、メジアル側及びラテラル側甲部に対角線方向で通す代わりに、靴甲部の踵部分にねじ込まれてもよいことである。この特徴により靴110の製造が大幅に簡略化される。更に、自動締付け機構210を靴底120内の踵により近付けて位置させることによって、より小さいハウジングチャンバ200を使用することができ、また、製造中に靴底内のより小さな陥凹部に部品をより容易に挿入し接着することができる。
【0046】
ホイールアクチュエータ212は、靴の通常の歩行又は走行における使用を妨害することなく靴底から延びることができる限り、いかなる直径のものでもよい。同時に、これは、自動締付け機構のためにハウジングに嵌合しなければならない。これは、直径0.64〜3.81cm(0.25〜1.5インチ)、好ましくは直径2.54cm(1インチ)であるべきである。これは、ウレタンゴム、合成ゴム、又は重合体ゴム状の材料など、弾性且つ耐久性のいかなる材料から作られてもよい。
【0047】
本発明の靴紐136、137及び係合ケーブル190、192、162は、Spectra(登録商標)繊維、Kevlar(登録商標)、ナイロン、ポリエステル、又はワイヤを含むがそれらに限定されない、適切ないかなる材料から作られてもよい。これは、好ましくは、ポリエステルの外部織地を備えたSpectraのコアから作られるべきである。理想的には、チューブ148、150、162に容易に送り込むために、係合ケーブルは靴紐136、137に比べて先細状の断面を有する。係合ケーブル及び/又は靴紐の強度は、90.7〜453.6kg(200〜1000ポンド)の検査分銅の範囲内であることができる。
【0048】
チューブ148、150、162は、ナイロン又はTeflon(登録商標)を含むがそれらに限定されない適切ないかなる材料から作られてもよい。これらは、係合ケーブル又は靴紐を保護する耐久性を持つとともに、自動締付け機構の操作中に係合ケーブル又は靴紐がチューブを貫通するときの摩擦を軽減するために、自滑性を呈するべきである。
【0049】
上述の明細書及び図面は、本発明の自動締付け機構及び靴の構造並びに動作を十分に説明するものである。しかし、本発明は、本発明の趣旨及び範囲から逸脱することなく、他の様々な組み合わせ、変形、実施形態、及び環境で使用することができる。例えば、係合ケーブルを、材料の内側層と外側層の間の靴甲部の内部の代わりに、靴甲部の外部に沿って引き回してもよい。更に、自動締付け機構は、中間点又は爪先など、後端以外で靴底内の異なる場所に位置してもよい。実際には、自動締付け機構を、靴底内の代わりに靴の外部に固定してもよい。また、複数の作動ホイールを使用して、自動締付け機構の共通の輪軸を駆動してもよい。アクチュエータをホイールとして記載してきたが、平坦面に沿って回転することができるという条件で、他の多数の可能な形状のいずれを採用することもできる。したがって、本明細書は本発明を開示した特定の形態に限定するものではない。
【符号の説明】
【0050】
110 自動締付け靴
112 靴甲部
113 爪先
118 踵
120 靴底
136、137 靴紐(クロージャ手段)
160 係合ケーブル
170 クロージャパネル(クロージャ手段)
210 自動締付け機構(締付け機構)
212 アクチュエータホイール
214 解放レバー(解放手段)
240 爪車(固定手段)
【技術分野】
【0001】
本出願は、2007年6月14日出願の米国特許出願第11/818,370号の一部継続出願であり、その全体を参照により本明細書に組み込む。
【0002】
本発明は、靴に関し、より具体的には自動締付け靴に関する。この靴は、着用者の足の周りで靴の自動的締付けを引き起こすように一方向に動作し、且つ靴を着用者の足から容易に取り外すことができるように簡単に解放することができる締付け機構を含む、自動締付けシステムを備える。本発明は、主として、スポーツ用の靴又は運動靴の種類の自動締付け靴に関するが、本発明の原理は、他の多くの種類及び様式の靴に適用可能である。
【背景技術】
【0003】
靴及びブーツを含めた履物は重要な服飾品である。それらは、着用者が立ち、歩き、走っている間、足を保護するとともに必要な支持をもたらす。それらはまた、着用者の個性に対して美観的要素を提供することができる。
【0004】
靴は、地面に接触する外底及び踵を構成する靴底を備える。サンダル又はビーチサンダルを構成しない靴には、多くの場合は舌革と組み合わせて足を取り囲むように作用する甲部が取り付けられる。最後に、クロージャ機構が、甲部のメジアル側部分(身体の正中側部分)及びラテラル側部分(体側側部分)を舌革及び着用者の足の周りにぴったり引き付けて、靴を足に固定する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】米国特許第737,769号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
クロージャ機構の最も一般的な形態は、靴の甲部のメジアル側部分とラテラル側部分の間で交差し、足の甲の周りできつく引っ張られ、着用者によって結ばれる靴紐である。そのような靴紐は、機能性の点で単純且つ実用的であるが、結び目が着用者の足の周りで緩むので、一日を通して結んだり結び直したりする必要がある。これは通常の着用者にとっては面倒な場合がある。更に、幼児は、靴紐の結び方を知らないことがあり、そのため、注意深い親又は養護者による助けを必要とする。更に、関節炎を患っている高齢者は、靴を足に固定するために、靴紐をきつく引っ張り結ぶことに痛みを感じたり、過度に苦労すると感じることがある。
【0007】
靴業界は、長年にわたって、結んだ靴紐を固定するための追加の特徴、又は靴を着用者の足の周りで固定する代替手段を採用してきた。例えば、1903年にPrestonに発行された米国特許第737,769号(特許文献1)は、はと目とスタッドの組み合わせによって甲部に固定された足の甲の周りにクロージャフラップを追加した。Cardaropoliに発行された米国特許第5,230,171号は、クロージャフラップを靴の甲部に固定するため、かぎホックの組み合わせを使用した。Murr, Jr.に発行された米国特許第2,124,310号によってカバーされた軍用狩猟ブーツは、メジアル側甲部及びラテラル側甲部の上で複数のフックの周りを交差し、ピンチファスナーによって最終的に固定され、それによって結び目の必要性をなくす靴紐を使用した。Zebe, Jr.に発行された米国特許第6,324,774号、Caberlottoらに発行された同第5,291,671号、及びDinndorfらによって公表された米国特許出願公開第2006/0191164号も参照のこと。他の靴メーカーは、靴紐を引っ張って緩める、靴の中の足によって一日中加えられる圧力を妨げるために、靴の上の適所に靴紐を固定する小さなクランプ又はピンチロック機構を採ってきた。例えば、Hansonに発行された米国特許第5,335,401号、Borsoiらに発行された同第6,560,898号、及びLiuに発行された同第6,671,980号を参照のこと。
【0008】
他のメーカーは靴紐を完全に省いてきた。例えば、スキーブーツは、バックルを使用してブーツの甲部を足及び脚の周りで固定することが多い。例えば、Gertschらに発行された米国特許第3,793,749号及びMorrowらに発行された同第6,883,255号を参照のこと。一方、Seidelに発行された米国特許第5,175,949号は、甲部の一部からヨークが延び、それが甲部の別の部分の上に位置する上向きに突出した「ノーズ」の上でスナップ留めされ、結果として得られるロック機構の張力を調節するスピンドルドライブを備えたスキーブーツを開示している。靴紐の凍結又は氷結を回避する必要があることから、外部の靴紐をスキーブーツからなくし、堅いスキーブーツの甲部と係合する外部の係止機構で代用することは論理的である。
【0009】
スキーブーツに使用される異なる方策は、ケーブルを、またしたがってスキーブーツを着用者の足の周りで締め付ける回転式の爪車と爪の機構によって締め付けられる、内部を引き回したケーブルシステムを使用するものであった。例えば、Morellらに発行された米国特許第4,660,300号及び同第4,653,204号、Schochに発行された同第4,748,726号、Walkhoffに発行された同第4,937,953号、並びにSpademanに発行された同第4,426,796号を参照のこと。Hammerslangに発行された米国特許第6,289,558号は、そのような回転式の爪車と爪の締付け機構を、アイススケート靴の甲ストラップにまで拡張した。そのような回転式の爪車と爪からなる締付け機構と、内部ケーブルとの組み合わせは、運動靴及びレジャー用の靴にも適用されてきた。例えば、Carrollに発行された米国特許第5,157,813号、Hallenbeckに発行された同第5,327,662号及び同第5,341,583号、並びにSussmannに発行された同第5,325,613号を参照のこと。
【0010】
Pozzobonらに発行された米国特許第4,787,124号、Schochに発行された同第5,152,038号、Jungkindに発行された同第5,606,778号、及びSakabayashiに発行された同第7,076,843号は、手若しくは引き紐によって操作される爪車と爪又は駆動歯車の組み合わせに基づく、回転式締付け機構の他の実施形態を開示している。これらの機構は、同調して動作する必要がある部品の数の点で複雑になっている。
【0011】
内部又は外部を引き回したケーブルを締め付ける更に他の機構が、靴又はスキーブーツに対して利用可能である。後側の甲部に沿って位置する、手によって操作される枢動可能なレバーが、Olivieriに発行された米国特許第4,937,952号、Walkhoffに発行された同第5,167,083号、Seidelに発行された同第5,379,532号、及びJonesらに発行された同第7,065,906号によって教示されている。後側の靴甲部に沿って位置付けられ、手によって操作される、外部を引き回した靴紐に張力を加えるためのスライド機構が、Tsaiによって出願された米国特許出願公開第2003/0177661によって開示されている。Martinに発行された米国特許第4,408,403号、及びHieblingerに発行された同第5,381,609号も参照のこと。
【0012】
他の靴メーカーは、着用者の手の代わりに足によって作動させることができる締付け機構を含む靴を設計してきた。例えば、Voswinkelに発行された米国特許第6,643,954号は、靴の内部に位置し、足によって押し下げられて靴甲部を横切ってストラップを締め付ける、テンションレバーを開示している。Chouに発行された米国特許第5,983,530号及び同第6,427,361号、並びにRotemらに発行された同第6,378,230号では、内部を引き回した靴紐ケーブルは同様の機構によって作動する。しかし、そのようなテンションレバー又は押し板には、足によって一定の圧力が加えられないことがあり、それにより、締付けケーブル又はストラップが緩んでしまう。更に、着用者は、一日を通してテンションレバー又は押し板を踏みつけることを不快に感じることがある。Bernierらに発行された米国特許第5,839,210号は、靴の外部に位置付けられた関連する電動モータを備えた、靴の甲を横切るいくつかのストラップを引っ張るための電池充電式のリトラクタ機構を使用することによって、異なる方策を採っている。しかし、そのような電池駆動のデバイスは、短絡を起こしたり、湿潤環境において着用者にショックを与える可能性がある。
【0013】
靴業界はまた、靴紐の代わりにVelcro(登録商標)ストラップを含む、小児及び成人向けの靴を生産してきた。メジアル側甲部から延びるそのようなストラップは、ラテラル側甲部に固定された補完的なVelcroパッチに容易に締結される。しかし、そのようなVelcroクロージャは、足によって応力がかかり過ぎると外れてしまう場合が非常に多い。これは、特に運動靴及びハイキング用ブーツの場合に生じる。更に、Velcroクロージャは、比較的早く磨耗して、しっかり閉じるという能力を失う可能性がある。更に、多くの着用者が、Velcroストラップは履物の場合には美観的に見栄えが悪いと感じている。
【0014】
本発明者であるGregory G. Johnsonは、靴底の区画内に、又は靴の外部に沿って位置し、靴甲部の内側若しくは外側に位置付けられた内部又は外部のケーブルを締め付けるとともに、ケーブルの望ましくない緩みを防ぐための、自動締付け機構を含む多数の靴製品を開発してきた。そのような締付け機構は、締め付けられたケーブルと係合する一対の把持カム、爪車と爪のように動作して締付け方向での移動を可能にするとともに、緩み方向での滑りを防ぐトラックアンドスライド機構、或いは、靴紐ケーブルを巻き取り、逆回転を防ぐように解放レバーの爪に係合された爪車も支える輪軸アセンブリを伴うことができる。Johnsonの自動締付け機構は、手で引く紐若しくはトラックアンドスライド機構によって、又は靴底の後部から延び、着用者によって地面若しくは床に対して押し下げられて靴紐ケーブルを締め付ける作動レバー若しくは押し板によって操作することができる。関連する解放レバーは、自動締付け機構をその固定位置から係脱して、靴を脱ぐために靴紐又はケーブルを緩めることができるように、着用者の手又は足によって押されてもよい。Johnsonに発行された米国特許第6,032,387号、同第6,467,194号、同第6,896,128号、同第7,096,559号、及び同第7,103,994号を参照のこと。
【0015】
しかし、これまで考案された自動締付けシステムには、完全に成功するか、満足のいくものはなかった。従来技術の自動締付けシステムの主な欠点は、着用者の足にぴったり適応するように靴を両側から締め付けることができず、また、靴を着用者の足から外したいときに靴を迅速に緩めるための手段を伴っていなかったことである。更に、非常に多くの場合、(1)多数の部品を伴うことによる複雑さ、(2)小さな電動モータなどの高価な部品を含むこと、(3)周期的な交換が必要な電池などの部品を使用していること、又は、(4)頻繁なメンテナンスを必要とする部品が存在することなどの欠点がある。これらの態様、並びに具体的に言及していない他の態様は、完全に成功し満足のいく自動締付け靴を得るために、大幅な改善が必要とされていることを示す。
【0016】
したがって、着用者の手を使用せずに足によって、例えば靴底の踵から延びるローラーホイールによって操作することができる動作部品が少数で設計が単純である、自動締付け機構を含む靴又は他の履物製品を提供することが有利であろう。靴底の格納区画から外に枢動するローラーホイールによって、ローラースケート靴に変化させることができる靴が知られている。例えば、Wangに発行された米国特許第6,926,289号、及びWalkerに発行された同第7,195,251号を参照のこと。そのような大衆的な靴はWheelies(登録商標)の名称で販売されている。しかし、この種の変化可能なローラースケート靴は、ローラーホイールを使用して自動締付け機構を作動させることはなく、そのような機構を含まない。その代わりに、ローラーは娯楽目的でのみ使用される。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明の自動締付け靴は、(a)靴底と、前記靴底に接続された甲部とを有し、前記甲部が、爪先と、踵と、メジアル側部分と、ラテラル側部分とを含む靴と、(b)前記甲部の前記メジアル側及びラテラル側部分に接続されており、前記靴の内部に位置する足の周りで前記メジアル側及びラテラル側部分を引き付けるためのクロージャ手段と、(c)前記靴の内部に固定された締付け機構であって、輪軸にしっかり接続され、前記靴の外部に一部が延びるアクチュエータホイールを有する輪軸を含む締付け機構と、(d)一端で前記クロージャ手段に接続され、他端で前記締付け機構に接続された少なくとも一つの係合ケーブルであって、(e)それにより前記靴の外部に一部が延びる前記アクチュエータホイールの地面又はその他の硬い面に接する回転によって前記締付け機構の前記輪軸が回転して、前記クロージャ手段並びに前記メジアル側及びラテラル側甲部部分を足の周りに引き付けるようにする係合ケーブルと、前記係合ケーブルを締付け方向に引き付けるための、前記締付け機構に動作可能に接続された、前記輪軸の逆回転を妨げて前記係合ケーブルが緩むのを防ぐように作用する固定手段と、(f)前記固定手段に動作可能に接続されており、前記固定手段を選択的に係脱して前記輪軸の逆回転を可能にして、前記クロージャ手段を緩めるための解放手段とを備える。
【0018】
本発明の自動締付け靴によれば、着用者の手を使用することなく着用者の足の周りでぴったり締まり、且つ要求に応じて簡単に緩めることができる。自動締付け靴は、あらゆる適切な材料によって構築された靴底及び一体型本体部材又は靴甲部を含む。靴甲部は、爪先、踵、舌革、並びにメジアル側及びラテラル側の側壁部分を含む。補強紐締めの形でメジアル側甲部及びラテラル側甲部の周囲に沿って一連のはと目と係合する、靴紐又は一対の靴紐が提供される。この靴紐(一つ又は複数)は、舌革を横切って交差した形で自動締付け機構によって引っ張られて、メジアル側及びラテラル側の靴甲部を着用者の足の周りに引き付け、着用者の甲の上で舌革にぴったり接する。或いは、自動締付け機構によってラテラル側靴甲部に引き付けられる、又は自動締付け機構によって両側から引っ張られる、メジアル側靴甲部に固定され、舌革を横切って延びるクロージャパネルで靴紐を置き換えてもよい。
【0019】
この自動締付け機構アセンブリは、好ましくは、靴底に含まれるチャンバ内に位置し、靴紐又はクロージャパネルに取り付けられた係合ケーブルを巻き取る回転可能な輪軸を備える。その輪軸には、靴の後部靴底から部分的に延びるローラーホイールが取り付けられるので、着用者は、地面又は床の上でローラーホイールを回転させて、自動締付け機構の輪軸を締付け方向に付勢することができる。やはり輪軸に固定された爪車歯を有する爪車は、解放レバーの遠位端で爪に連続的に係合されて、輪軸が逆回転するのを防ぐ。しかし、着用者が靴の踵から好ましくは延びる解放レバーと係合すると、爪が枢動して爪車の歯との係合から外れるので、自動締付け機構の輪軸が自由に逆回転して、締付けケーブルをその待機位置へと解放することができ、靴紐又はクロージャパネルを緩めることができる。
【0020】
本発明の他の目的、及び本発明の付随する利点の多くは、添付図面と併せて以下の詳細な説明を参照することによってより十分に理解されることで、容易に認識されるであろう。図面中、類似の参照番号は図面全体を通して類似の部分を指す。
【発明の効果】
【0021】
本発明の自動締付け靴によれば、着用者の手を使用することなく着用者の足の周りでぴったり締まり、且つ要求に応じて簡単に緩めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】緩められた状態にある交差した靴紐を有する本発明の自動締付け靴の平面図。
【図2】図1の自動締付け靴の実施形態の部分切欠き側面図。
【図3】クロージャパネルを有する本発明の自動締付け靴の平面図。
【図4】本発明の自動締付け機構の部品の分解組立斜視図。
【図5】作動ホイールを除いた自動締付け機構の軸アセンブリの斜視図。
【図6】作動ホイールを含む軸アセンブリの側面図。
【図7】自動締付け機構のケース底部の斜視図。
【図8】自動締付け機構のケース頂部を上下逆に見た斜視図。
【図9】自動締付け機構の解放レバーを上下逆に見た斜視図。
【図10】解放レバーの斜視図。
【図11】自動締付け機構のねじりばねの斜視図。
【図12】自動締付け機構のケースキャップを上下逆に見た斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0023】
着用者の足の周りに靴甲部を引き付ける靴紐又はクロージャパネルを締め付けるための、ホイール作動式の締付け機構を含む自動締付け靴が、本発明によって提供される。そのような自動締付け機構アセンブリは、好ましくは、靴紐又はクロージャパネルに接続された係合ケーブルを締付け方向で巻き取るための輪軸と、好ましくは靴の後部靴底から部分的に突出する、輪軸を締付け方向で回転させるための固定のローラーホイールと、解放レバーの端部で爪と連続的に係合して、輪軸が逆回転するのを防ぐための、爪車歯を有する固定の爪車とを備える。爪を爪車歯から係脱するように解放レバーが付勢されると、靴紐又はクロージャパネルが緩むことができるように、輪軸が自由に逆回転して係合ケーブルを解放することができる。本発明は、少数の部品しか有さず、その動作の信頼性が高い自動締付け機構を提供する。
【0024】
本発明の目的のため、「靴」は、ブーツ、作業靴、雪靴、スキーブーツ及びスノーボードブーツ、スポーツ用の靴又は運動靴(スニーカー、テニスシューズ、ランニングシューズ、ゴルフシューズ、スパイクシューズ、バスケットボールシューズなど)、アイススケート靴、ローラースケート靴、インラインスケート靴、スケートボード靴、ボーリングシューズ、ハイキング用の靴又はブーツ、ドレスシューズ、カジュアルシューズ、ウォーキングシューズ、ダンスシューズ、及び靴型装具などであるがそれらに限定されない、靴を足に固定する助けとなる甲部分を有するあらゆる閉塞型の履物製品を意味する。
【0025】
本発明は、例示される目的のみのために様々な靴に使用されてもよいが、本明細書では本発明を運動靴に関して記載する。これは、いかなる意味においても、本発明の自動締付け機構の適用を他の適切な又は望ましいタイプの靴に限定することを意味しない。
【0026】
図1は、開放状態にある本発明の自動締付け靴110の平面図を示し、図2は、締付けシステムを示す自動締付け靴110の部分切欠き側面図を示す。自動締付け靴110は、靴底120と、舌革116を含む一体型本体部材又は靴甲部112と、爪先113と、踵118と、補強紐締めパッド(reinforced lacing pad)114とを有し、それらは全て、靴の最終用途に適したあらゆる材料で構成される。
【0027】
舌革116の爪先113端部には二つのアンカーボタン122及び124が設けられ、それぞれ靴紐136及び137に一端で固定される。次に、靴紐136及び137は、舌革116の上を交差し、図示されるような靴紐はと目(lace eyelets)126、128、130、及び132を貫通し、その後、靴紐保持ループ(lace containment loop)142を貫通する。靴紐保持ループ142を貫通した後、靴紐136は、補強紐締めパッド114の穴146を貫通し、また、靴甲部112の外側材料と内側材料との間を通って靴の踵に至る管材料150の区画を後方へと通る。靴紐137は、図示されるように、補強紐締めパッド114の穴144を貫通し、やはり靴甲部112の外側材料と内側材料との間を通って靴の踵に至る管材料148の区画を後方へと通る。或いは、靴紐136及び137は、靴甲部の外側材料と内側材料との間を靴甲部112の踵まで通る管材料162の区画を貫通する、係合ケーブル160に接合してもよい。
【0028】
本発明の目的のため、図1に示されるように、その中央領域でアンカーボタン122及び124に接合され、端部がはと目を通って交差した単一の靴紐を使用することができる。或いは、交差パターンの代わりにジグザグの紐締めパターンを使用してもよい。このジグザグの構成では、例えばアンカーボタン124に締結された靴紐は、はと目126、132、及び穴144を順に貫通して、次に管148を通って、その他端で自動締付け機構に固定される。
【0029】
或いは、自動締付け靴110は、図3に示されるように、交差した靴紐136、137、又はジグザグの靴紐の代わりに、クロージャパネル170を使用してもよい。クロージャパネル170は、その前端172において、メジアル(medial)側支持面に沿って下側タブ174及び176によって、且つラテラル(lateral)側支持面に沿ってタブ178及び180によって靴底120に固定される。クロージャパネル170は舌革116を覆う。一方、上側タブ182及び184はそれぞれ、後述する自動締付け機構によってクロージャパネル170を締め付ける係合ケーブル190及び192に固定される。或いは、クロージャパネル170は、その一方の面に沿ってメジアル側甲部186に締結し、次に係合ケーブル146を用いてラテラル側甲部188に引っ張ることができる。
【0030】
管材料148、150、162の下側端部は、自動締付け靴110の靴底120に位置するチャンバ200に入る。或いは、管材料の必要性をなくすため、本発明の目的で、係合ケーブル160又は靴紐136、137は靴甲部の外部に沿って引き回してもよいことに留意されたい。
【0031】
自動締付け機構210は、図2に更に十分に示されるように、ハウジングベースプレート202に固定されたハウジング200内に位置する。自動締付け機構210には作動ホイール212が固定され、またそれは、靴110の後部靴底部分を超えて部分的に突出する。床又は地面の上で作動ホイール212を回転させることによって、自動締付け機構210が締付け位置へと回転する。係合ケーブル190、192、160は、チャンバ200内へと下方に延び、それらの端部で締付け機構210に固定されて、靴紐136及び137又はクロージャパネル170を締め付ける。本明細書に更に十分に記載するように、解放レバー214は、好ましくは靴110の後部上端から延びて、自動締付け機構を緩める便利な手段となる。
【0032】
自動締付け機構210は図4により詳細に示される。それは、ケース底部220及びケース頂部222を備え、それらの間で主軸アセンブリ224が固定される。ねじ226及び227はケースキャップ222をケース底部220に締結する。解放レバー214は、ケースキャップ230並びにねじ232及び233によってケース頂部222に固定される。解放レバー214に固定されたねじりばね236は、ケースキャップ230の内表面と相互作用して、主軸アセンブリ224上の爪車240の歯238との係合位置へと解放レバー214を付勢する。
【0033】
主軸224は図5に更に十分に示される。それは、好ましくは、第1の輪軸部分242及び第2の輪軸部分244を有する、10%のRTP 301ポリカーボネートガラス繊維又は機能的に等価な材料から成形された一体部品を備える。係合ケーブル190及び192の端部を輪軸242及び244に固定するために、貫通穴246及び247が使用される。第1のカラー248及び第2のカラー250は、フィン252、254などと協働して、アクチュエータホイール212を主軸224に固定する。輪軸242及び244の周りには、爪車240及び256も一体成形される。爪車は、それらの周囲から延びる複数の歯238及び258を有する。
【0034】
或いは、アクチュエータホイール及び爪車を、ねじ留めするか、リベット留めするか、又は別の方法でセパレータ輪軸に締結してもよい。本発明は二つの爪車を有するものとして示してあるが、単一の爪車又は三つ以上の爪車で十分なこともある。
【0035】
図6は、ホイール軸242に固定されたアクチュエータホイール212を、一体的に固定された関係の輪軸242から延びる爪車240とともに示す。靴110の踵から部分的に延びるアクチュエータホイール212を回転させると、輪軸242及び爪車240が同方向に回転する。アクチュエータホイール212は、ショアー硬さ70Aのウレタン又は機能的に等価な材料から製造されているべきである。ホイールは、好ましくは、直径2.54cm(1インチ)、体積5.096cm3(0.311立方インチ)のものであるべきである。そのようなホイールサイズは、靴の踵から十分に延びるとともに、靴110の靴底のハウジング200内に収まる大きさである。靴のサイズ及びその最終用途に応じて、アクチュエータホイール212は、0.64〜3.81cm(0.25〜1.5インチ)の範囲の直径を有することができる。
【0036】
図7に示されるようなケース底部220は、好ましくは、10%のRTP 301ポリカーボネートガラス繊維又は機能的に等価な材料から成形される。その端部からは、ねじ穴254及び256を有する耳250及び252が延びる。ケース底部220は、アクチュエータホイール212を収容する切欠き部分260を特徴とする。アクチュエータホイール212は、ケース底部220に擦れることなく自由に回転するケーブルでなければならない。くぼみ264及び265によって規定される肩面262及び263は、輪軸242及び244の端部の支承面となり、ケース頂部222と協働して、ケース底部220及びケース頂部222によってもたらされるハウジング内で軸224を固定する。肩270a、270b、270c、及び270dは、輪軸242及び244を支持する付加的手段となる。ケース底部220内のウェル(Well)272及び274は、軸アセンブリ240の爪車240及び256を収容する。最後に、ウェル276及び278は、係合ケーブル190及び192が輪軸242及び244の周りに巻き取られたときそれらを収容する。
【0037】
ケース頂部222の下面が図8に示される。耳280及び282は、ケース頂部222をケース底部220に固定するのに使用されるねじ226及び227のための貫通穴286及び288を含む。くぼみ290及び292は輪軸242及び244の端部を固定する。輪軸は、肩294、296、298a、298b、298c、及び298dによって支持される。切欠き領域300はアクチュエータホイール212を収容する。ウェル302及び304は爪車240及び256を収容する。ウェル306及び308は、係合ケーブル150及び145が軸アセンブリ240の輪軸242及び244の周りに巻き取られたときそれらを収容する。
【0038】
解放レバー214が図9〜10により詳細に示される。これは、好ましくは、10%のRTP 301ポリカーボネート10ガラス繊維又は機能的に等価な材料から成形される。このレバーは、一端にレバー310と、他端に二つのアーム312及び314とを備える。解放レバー214の中間点から輪軸ペグ316及び318が延びる。
【0039】
図4を見ると、解放レバー214は、輪軸ペグ316及び318がそれぞれくぼみ320及び322の内側に嵌った状態で、ケース頂部222の上に取り付けられる。一方、アーム312及び314は、解放レバーアーム312及び314の爪端部330及び332が爪車256及び240の歯258及び238に当接できるように、ケース頂部の貫通穴324及び326を通って下に延びる。
【0040】
本出願に示される解放レバーの代わりに、爪を爪車歯から係脱する他のいかなる解放機構を使用してもよい。可能な代替実施形態は、押しボタン、プルコード、又はプルタブを含むが、それだけに限定されるものではない。
【0041】
引張ばね236は、好ましくは、0.020ステンレス鋼ピアノ線又は機能的に等価な材料から作られるべきである。図11に更に十分に示されるように、それは、中央の支承面230と、支承アーム232及び234と、ねじりリング(torsion rings)236及び238とを備える。図4に示される、ねじりばね236は、ねじりリング236及び238が解放レバーの輪軸ピン316及び315と係合するように、解放レバー214の頂部に取り付けられる。ねじりばね214の支承アーム232及び234は、解放アーム214の肩240及び242に当接する。或いは、解放レバーの爪を付勢して自動締付け機構の爪車歯と係合させるために、圧縮ばね又は板ばねを使用してもよい。
【0042】
ケースキャップ230が図12により詳細に示される。好ましくは、10%のRTP 301ポリカーボネートガラス繊維又は機能的に等価な材料から成形され、貫通穴250及び252が開いた支柱246及び248を特徴とするので、ねじ232及び233を使用して、ねじ穴254及び256(図7を参照)を用いてケースキャップ230をケース底部220に取り付けることができる。解放レバー214の輪軸ペグ316及び318は、ケースキャップ230(図12)のくぼみ260及び262とケース頂部222のくぼみ322及び324との間に捕捉されるので、解放レバー214が自動締付け機構内で枢動することができる。ケースキャップ230の内表面に沿った肩264は、ねじりばね236の支承部分230に対する当接面となる。ねじの代わりに、接着剤又は音波溶接など他の適切な締結手段を使用して、自動締付け機構のハウジング部品を互いに固定してもよい。
【0043】
操作の際、着用者は、自動締付け靴110の靴底120の後部から延びるアクチュエータホイール212が床又は地面に当接するように、自身の足を位置付ける。靴の踵を自分の体から遠ざけるように回転させることによって、アクチュエータホイール212が反時計方向に回転する。軸アセンブリ224並びにそれに関連する輪軸242及び244が同様に反時計方向に回転し、それによって、靴紐136及び137が自動締付け機構のハウジング内の輪軸242及び244に巻き取られる。そうすることで、靴紐136及び137が靴110内で着用者の足の周りを締め付ける。そうでなければ輪軸242及び244を回転させて靴紐を緩めてしまう、爪車の時計回転を防ぐために、解放レバー214の爪端部330及び332は爪車240及び256の各歯238及び258と連続的に係合する。ねじりばね236は、ケースキャップ230内部の当接面264と、解放レバー214の肩240及び244とに接して、解放レバー214の爪端部を付勢して爪車歯と係合させる。
【0044】
着用者は、靴紐136及び137又はクロージャパネル170を緩めて靴110を脱ぎたい場合、好ましくは靴の後部靴底から延びる解放レバー214を押し下げさえすればよい。これは、上述したような、爪端部330及び332を爪車踵(ratchet heels)240及び256の歯から係脱させるねじりばね236の付勢に打ち勝つ。輪軸242及び244が時計方向で回転するにしたがって、靴紐136及び137又はクロージャパネル170は自然に緩む。
【0045】
本発明の自動締付け機構210は、当業界において知られている他のデバイスよりも設計が単純である。したがって、靴製造中に組み立て、且つ靴の使用中に壊れる部品がより少数である。本発明の自動締付け機構の実施形態210の別の本質的な利点は、靴紐136及び137並びにそれらに関連するガイドチューブが、メジアル側及びラテラル側甲部に対角線方向で通す代わりに、靴甲部の踵部分にねじ込まれてもよいことである。この特徴により靴110の製造が大幅に簡略化される。更に、自動締付け機構210を靴底120内の踵により近付けて位置させることによって、より小さいハウジングチャンバ200を使用することができ、また、製造中に靴底内のより小さな陥凹部に部品をより容易に挿入し接着することができる。
【0046】
ホイールアクチュエータ212は、靴の通常の歩行又は走行における使用を妨害することなく靴底から延びることができる限り、いかなる直径のものでもよい。同時に、これは、自動締付け機構のためにハウジングに嵌合しなければならない。これは、直径0.64〜3.81cm(0.25〜1.5インチ)、好ましくは直径2.54cm(1インチ)であるべきである。これは、ウレタンゴム、合成ゴム、又は重合体ゴム状の材料など、弾性且つ耐久性のいかなる材料から作られてもよい。
【0047】
本発明の靴紐136、137及び係合ケーブル190、192、162は、Spectra(登録商標)繊維、Kevlar(登録商標)、ナイロン、ポリエステル、又はワイヤを含むがそれらに限定されない、適切ないかなる材料から作られてもよい。これは、好ましくは、ポリエステルの外部織地を備えたSpectraのコアから作られるべきである。理想的には、チューブ148、150、162に容易に送り込むために、係合ケーブルは靴紐136、137に比べて先細状の断面を有する。係合ケーブル及び/又は靴紐の強度は、90.7〜453.6kg(200〜1000ポンド)の検査分銅の範囲内であることができる。
【0048】
チューブ148、150、162は、ナイロン又はTeflon(登録商標)を含むがそれらに限定されない適切ないかなる材料から作られてもよい。これらは、係合ケーブル又は靴紐を保護する耐久性を持つとともに、自動締付け機構の操作中に係合ケーブル又は靴紐がチューブを貫通するときの摩擦を軽減するために、自滑性を呈するべきである。
【0049】
上述の明細書及び図面は、本発明の自動締付け機構及び靴の構造並びに動作を十分に説明するものである。しかし、本発明は、本発明の趣旨及び範囲から逸脱することなく、他の様々な組み合わせ、変形、実施形態、及び環境で使用することができる。例えば、係合ケーブルを、材料の内側層と外側層の間の靴甲部の内部の代わりに、靴甲部の外部に沿って引き回してもよい。更に、自動締付け機構は、中間点又は爪先など、後端以外で靴底内の異なる場所に位置してもよい。実際には、自動締付け機構を、靴底内の代わりに靴の外部に固定してもよい。また、複数の作動ホイールを使用して、自動締付け機構の共通の輪軸を駆動してもよい。アクチュエータをホイールとして記載してきたが、平坦面に沿って回転することができるという条件で、他の多数の可能な形状のいずれを採用することもできる。したがって、本明細書は本発明を開示した特定の形態に限定するものではない。
【符号の説明】
【0050】
110 自動締付け靴
112 靴甲部
113 爪先
118 踵
120 靴底
136、137 靴紐(クロージャ手段)
160 係合ケーブル
170 クロージャパネル(クロージャ手段)
210 自動締付け機構(締付け機構)
212 アクチュエータホイール
214 解放レバー(解放手段)
240 爪車(固定手段)
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)靴底と、前記靴底に接続された甲部とを有し、前記甲部が、爪先と、踵と、メジアル側部分と、ラテラル側部分とを含む靴と、
(b)前記甲部の前記メジアル側及びラテラル側部分に接続されており、前記靴の内部に位置する足の周りで前記メジアル側及びラテラル側部分を引き付けるためのクロージャ手段と、
(c)前記靴に固定された締付け機構であって、輪軸にしっかり接続され、前記靴の外部に延びるアクチュエータホイールを有する輪軸を含む締付け機構と、
(d)一端で前記クロージャ手段に接続され、他端で前記締付け機構に接続された少なくとも一つの係合ケーブルであって、
(e)それにより前記靴の外部に延びる前記アクチュエータホイールの回転によって前記締付け機構の前記輪軸が回転して、前記クロージャ手段並びに前記メジアル側及びラテラル側甲部部分を足の周りに引き付けるようにする係合ケーブルと、前記係合ケーブルを締付け方向に引き付けるための、前記締付け機構に動作可能に接続された、前記輪軸の逆回転を妨げて前記係合ケーブルが緩むのを防ぐように作用する固定手段と、
(f)前記固定手段に動作可能に接続されており、前記固定手段を選択的に係脱して前記輪軸の逆回転を可能にして、前記クロージャ手段を緩めるための解放手段とを備える、自動締付け靴。
【請求項2】
前記クロージャ手段が、
(a)前記メジアル側及びラテラル側甲部に沿って離隔された複数のガイド手段と、
(b)端部が前記係合ケーブルに接続された状態で、交差して又はジグザグに前記ガイド手段のそれぞれを交互に通って延びる少なくとも一つの靴紐とを備える、請求項1に記載の自動締付け靴。
【請求項3】
前記ガイド手段が少なくとも一つの靴紐はと目を含む、請求項2に記載の自動締付け靴。
【請求項4】
前記ガイド手段が少なくとも一つのフックを含む、請求項2に記載の自動締付け靴。
【請求項5】
前記締付け機構を収容するチャンバを前記靴底に更に備える、請求項1に記載の自動締付け靴。
【請求項6】
前記チャンバが前記靴の前記踵に隣接して位置する、請求項5に記載の自動締付け靴。
【請求項7】
前記締付け機構が前記靴の外部に取り付けられる、請求項1に記載の自動締付け靴。
【請求項8】
前記固定手段が、
(a)複数の歯を有し、前記締付け機構の前記輪軸に固定した関係で取り付けられた少なくとも一つの爪車と、
(b)前記解放手段に接続されており、前記爪車に沿って歯と係合して前記締付け機構の前記輪軸の逆回転を防ぐ爪手段とを備える、請求項1に記載の自動締付け靴。
【請求項9】
前記解放手段を前記固定手段と係合させる付勢手段を更に備える、請求項1に記載の自動締付け靴。
【請求項10】
前記付勢手段がねじりばねを含む、請求項9に記載の自動締付け靴。
【請求項11】
前記締付け機構を取り囲むハウジングを更に備える、請求項1に記載の自動締付け靴。
【請求項12】
前記解放手段が枢動可能なレバーを含む、請求項1に記載の自動締付け靴。
【請求項13】
前記解放手段が押しボタンを含む、請求項1に記載の自動締付け靴。
【請求項14】
前記解放手段がプルループを含む、請求項1に記載の自動締付け靴。
【請求項15】
前記靴甲部内に位置する、前記係合ケーブルを収容する少なくとも一つのガイドチューブを更に備える、請求項1に記載の自動締付け靴。
【請求項16】
前記靴が運動靴を含む、請求項1に記載の自動締付け靴。
【請求項17】
前記靴がハイキング用の靴を含む、請求項1に記載の自動締付け靴。
【請求項18】
前記靴がブーツを含む、請求項1に記載の自動締付け靴。
【請求項19】
前記靴がレクリエーション用の靴を含む、請求項1に記載の自動締付け靴。
【請求項1】
(a)靴底と、前記靴底に接続された甲部とを有し、前記甲部が、爪先と、踵と、メジアル側部分と、ラテラル側部分とを含む靴と、
(b)前記甲部の前記メジアル側及びラテラル側部分に接続されており、前記靴の内部に位置する足の周りで前記メジアル側及びラテラル側部分を引き付けるためのクロージャ手段と、
(c)前記靴に固定された締付け機構であって、輪軸にしっかり接続され、前記靴の外部に延びるアクチュエータホイールを有する輪軸を含む締付け機構と、
(d)一端で前記クロージャ手段に接続され、他端で前記締付け機構に接続された少なくとも一つの係合ケーブルであって、
(e)それにより前記靴の外部に延びる前記アクチュエータホイールの回転によって前記締付け機構の前記輪軸が回転して、前記クロージャ手段並びに前記メジアル側及びラテラル側甲部部分を足の周りに引き付けるようにする係合ケーブルと、前記係合ケーブルを締付け方向に引き付けるための、前記締付け機構に動作可能に接続された、前記輪軸の逆回転を妨げて前記係合ケーブルが緩むのを防ぐように作用する固定手段と、
(f)前記固定手段に動作可能に接続されており、前記固定手段を選択的に係脱して前記輪軸の逆回転を可能にして、前記クロージャ手段を緩めるための解放手段とを備える、自動締付け靴。
【請求項2】
前記クロージャ手段が、
(a)前記メジアル側及びラテラル側甲部に沿って離隔された複数のガイド手段と、
(b)端部が前記係合ケーブルに接続された状態で、交差して又はジグザグに前記ガイド手段のそれぞれを交互に通って延びる少なくとも一つの靴紐とを備える、請求項1に記載の自動締付け靴。
【請求項3】
前記ガイド手段が少なくとも一つの靴紐はと目を含む、請求項2に記載の自動締付け靴。
【請求項4】
前記ガイド手段が少なくとも一つのフックを含む、請求項2に記載の自動締付け靴。
【請求項5】
前記締付け機構を収容するチャンバを前記靴底に更に備える、請求項1に記載の自動締付け靴。
【請求項6】
前記チャンバが前記靴の前記踵に隣接して位置する、請求項5に記載の自動締付け靴。
【請求項7】
前記締付け機構が前記靴の外部に取り付けられる、請求項1に記載の自動締付け靴。
【請求項8】
前記固定手段が、
(a)複数の歯を有し、前記締付け機構の前記輪軸に固定した関係で取り付けられた少なくとも一つの爪車と、
(b)前記解放手段に接続されており、前記爪車に沿って歯と係合して前記締付け機構の前記輪軸の逆回転を防ぐ爪手段とを備える、請求項1に記載の自動締付け靴。
【請求項9】
前記解放手段を前記固定手段と係合させる付勢手段を更に備える、請求項1に記載の自動締付け靴。
【請求項10】
前記付勢手段がねじりばねを含む、請求項9に記載の自動締付け靴。
【請求項11】
前記締付け機構を取り囲むハウジングを更に備える、請求項1に記載の自動締付け靴。
【請求項12】
前記解放手段が枢動可能なレバーを含む、請求項1に記載の自動締付け靴。
【請求項13】
前記解放手段が押しボタンを含む、請求項1に記載の自動締付け靴。
【請求項14】
前記解放手段がプルループを含む、請求項1に記載の自動締付け靴。
【請求項15】
前記靴甲部内に位置する、前記係合ケーブルを収容する少なくとも一つのガイドチューブを更に備える、請求項1に記載の自動締付け靴。
【請求項16】
前記靴が運動靴を含む、請求項1に記載の自動締付け靴。
【請求項17】
前記靴がハイキング用の靴を含む、請求項1に記載の自動締付け靴。
【請求項18】
前記靴がブーツを含む、請求項1に記載の自動締付け靴。
【請求項19】
前記靴がレクリエーション用の靴を含む、請求項1に記載の自動締付け靴。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公表番号】特表2010−528811(P2010−528811A)
【公表日】平成22年8月26日(2010.8.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−512178(P2010−512178)
【出願日】平成20年6月11日(2008.6.11)
【国際出願番号】PCT/US2008/007297
【国際公開番号】WO2008/156615
【国際公開日】平成20年12月24日(2008.12.24)
【出願人】(509342485)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成22年8月26日(2010.8.26)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年6月11日(2008.6.11)
【国際出願番号】PCT/US2008/007297
【国際公開番号】WO2008/156615
【国際公開日】平成20年12月24日(2008.12.24)
【出願人】(509342485)
【Fターム(参考)】
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