自動車のドアガーニッシュ構造
【課題】ガーニッシュ下縁部を平均的に略水平にしてシール部材に対して面直に当接させて、当接力を高め、NVH性能の向上を図り、かつ、降車時における靴底の凹溝の引っかかりを防止して、乗降性を確保する自動車のドアガーニッシュ構造を提供する。
【解決手段】サイドドア2の下部に車体前後方向に延設して取付けられたガーニッシュ15を備え、サイドドア2の閉止状態で、ガーニッシュ15の下縁部15aを、車幅方向内側に延設し、車体側弾性シール部材22に外側方から当接させるものにおいて、ガーニッシュ下縁部15aの上面には、車幅方向内側上方に向って延びる上方指向部15Aと、上方指向部15Aから、車幅方向内側下方に向って湾曲または傾斜して延びる下方指向部15Bとが、ガーニッシュ下縁部15aに沿って延設されたことを特徴とする。
【解決手段】サイドドア2の下部に車体前後方向に延設して取付けられたガーニッシュ15を備え、サイドドア2の閉止状態で、ガーニッシュ15の下縁部15aを、車幅方向内側に延設し、車体側弾性シール部材22に外側方から当接させるものにおいて、ガーニッシュ下縁部15aの上面には、車幅方向内側上方に向って延びる上方指向部15Aと、上方指向部15Aから、車幅方向内側下方に向って湾曲または傾斜して延びる下方指向部15Bとが、ガーニッシュ下縁部15aに沿って延設されたことを特徴とする。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、サイドドアの下部に取付けられたガーニッシュを備えてなる自動車のドアガーニッシュ構造に関し、詳しくは、サイドドアの閉止状態で、ガーニッシュの下縁部を車幅方向内側に延設し、車体側弾性シール部材に外側方から当接させるように成した自動車のドアガーニッシュ構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、上述例の自動車のドアガーニッシュ構造としては、図9で示す構造のものがある。
すなわち、サイドドア81の下部に車体前後方向に延びるように取付けたドア側のガーニッシュ82を設ける一方、サイドシルアウタ83とサイドシルインナ84とから成るサイドシル85の下部車体側には、サイドシル側のガーニッシュ86を介して車体側弾性シール部材87を取付け、サイドドア81の閉止状態(図示の状態)で、ドア側のガーニッシュ82の下端部を車外側方から上述の弾性シール部材87に食い込むように当接させて、車外側からの泥や音が車室内ヘ侵入するのを防止すべく構成している。
【0003】
図9に示す従来構造において、車体側弾性シール部材87は経年変化すると共に、温度によってもその硬さが変化するので、泥や音の侵入を防止するためには、ガーニッシュ82を該シール部材87に強く食い込ませることが望まれるが、図9に示すように、ドア側のガーニッシュ82はその下部が車体内方に向けて斜め方向に延びており、このガーニッシュ82がシール部材87に対して面直に当接しないので、充分なNVH性能が確保できないうえ、ガーニッシュ82の押し付け力を強くすると、該ガーニッシュ82が変形しやすくなるという問題点があった。
なお、図9において、88はフロアパネルであり、また矢印OUTは車幅方向の外方を示し、矢印INは車幅方向の内方を示す。
【0004】
図9で示した従来構造の問題点を解決するためには、図10に示すように、ドア側のガーニッシュ82の下縁部82aを車幅方向内側に水平に延設し、サイドドア81の閉止状態(但し、図10ではドア半開状態を示す)において、該ガーニッシュ82の下縁部82aの内端が外側方から弾性シール部材87に対して面直に当接して押し付けるように成す構造が考えられる。
この場合には、NVH性能は確保できるものの、次に述べるような新たな問題点が発生する。
【0005】
つまり、図10,図11に示すように、狭い駐車場などにおいて、サイドドア81を半開にして乗員が自動車から降車する際、乗員の靴が水平状態のガーニッシュ下縁部82aに乗り上がったり、或は靴底の凹溝がガーニッシュ下縁部82aの内端に引っかかり、乗降性が阻害される問題点が発生する。
【0006】
ところで、特許文献1には、サイドシルの下部車外側にサイドガーニッシュを介して弾性シール部材を取付ける一方、サイドドアの下部にはドア側のガーニッシュを取付け、このドア側のガーニッシュの下端部を車幅方向内側に水平に延設した構造が開示されているが、この特許文献1に開示されたものは、図10,図11で示した従来構造と同様に、ドア側のガーニッシュ下端部の水平部分に降車する乗員の靴底が引っかかる問題点があった。
また、特許文献2には、サイドシルアウタの車外側にロッカモールを取付ける一方、サイドドアの下部にはドア側のガーニッシュを取付け、このガーニッシュ下縁にリップ部(いわゆるシールリップ)を設けた構成が開示されている。
【0007】
しかしながら、上記リップ部は閉断面構造ではないために、その耐久性が悪いうえ、ドア側のガーニッシュにはリップ部の取付け部を形成する必要があるので、該ガーニッシュの成形性が悪く、さらに、リップ部の弾性変形代を確保する目的で、該リップ部が車幅方向内側へ突出しており、乗降時に乗員の靴や服と干渉して、これらを汚す懸念があり好ましくなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特許第4489722号公報
【特許文献2】特開平7−205731号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
そこで、この発明は、ドア側のガーニッシュ下縁部の上面に、車幅方向内側上方に向って延びる上方指向部と、この上方指向部から車幅方向内側下方に向って湾曲または傾斜して延びる下方指向部とを、ガーニッシュ下縁に沿って延設することにより、ガーニッシュ下縁部を平均的に略水平にしてシール部材に対して面直に当接させて、当接力を高め、NVH性能の向上を図り、かつ上記下方指向部により降車時における靴底の凹溝の引っかかりを防止して、乗降性を確保することができる自動車のドアガーニッシュ構造の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
この発明による自動車のドアガーニッシュ構造は、サイドドアと、該サイドドアの下部に車体前後方向に延設して取付けられたガーニッシュとを備え、上記サイドドアの閉止状態で、上記ガーニッシュの下縁部を、車幅方向内側に延設し、車体側弾性シール部材に外側方から当接させる自動車のドアガーニッシュ構造であって、上記ガーニッシュ下縁部の上面には、車幅方向内側上方に向って延びる上方指向部と、該上方指向部から、車幅方向内側下方に向って湾曲または傾斜して延びる下方指向部とが、ガーニッシュ下縁部に沿って延設されたものである。
【0011】
上記構成によれば、遮音性の確保と乗降性の確保とを両立することができる。
つまり、上述の上方指向部と下方指向部とでガーニッシュ下縁部を平均的に略水平にして、該ガーニッシュ下縁部の内端を車体側のシール部材に対して面直に当接させて、その当接力を高め、NVH性能の向上を図ることができる。
また、上記上方指向部から車幅方向内側下方に向って湾曲または傾斜して延びる下方指向部により、降車時において乗員の靴が下方指向部上に乗っても、靴を滑り下すことができ、さらに靴底の凹溝が下方指向部に引っかかるのを適切に防止して、乗降性を確保することができる。
【0012】
この発明の一実施態様においては、上記サイドドアはヒンジ式サイドドアであって、ヒンジ側のガーニッシュ下縁部は、車幅方向内側に略水平に延びるヒンジ側水平部を備えたものである。
上記構成によれば、次のような効果がある。
すなわち、ヒンジ式サイドドアを開成した時、開成したサイドドアのヒンジ側と、車体との間のスペースは狭く、降車時に乗員の足が入ってきにくいので、この部分のガーニッシュ下縁部をヒンジ側水平部と成すことで、ガーニッシュ下縁部が車体側のシール部材に当接する当接力の向上を図ることができる。
要するに、乗降性を低下させることなく、当接力の向上を図り、車外側から泥や音が車室内に侵入するのを防止することができる。
【0013】
この発明の一実施態様においては、上記サイドドアはヒンジ式サイドドアであって、開放端側のガーニッシュ下縁部は、車幅方向内側に略水平に延びる開放端側水平部を備えたものである。
上記構成によれば、次のような効果がある。
すなわち、ヒンジ式のサイドドアを開成した時、そのドア開放端側は開度が大きく、降車時に乗員の足が開放端側に当たり難いので、この部分のガーニッシュ下縁部を開放端側水平部と成すことで、ガーニッシュ下縁部が車体側のシール部材に当接する当接力の向上を図ることができる。
要するに、降車性を低下させることなく、当接力の向上を図って、車外側から泥や音が車室内に侵入するのを防止することができる。
【0014】
この発明の一実施態様においては、上記上方および下方の両指向部は、ガーニッシュ下縁部に沿う方向に延びると共に、車体前後方向の中間が高く、車体前後方向の前後が低くなるように上下に傾斜しているものである。
上記構成によれば、上述の両指向部は車体前後方向の中間が高く、車体前後方向の前部および後部が低くなるように形成されているので、乗員の足が当り難いガーニッシュ下縁部の前部および後部に侵入水を容易に排水することができ、また上記傾斜構造によりガーニッシュの剛性向上をも図ることができる。
【0015】
この発明の一実施態様においては、上記ガーニッシュ下縁部の下面側には、補強部が形成されたものである。
上述の補強部としては、ガーニッシュ下縁部の下面側にリブを一体形成してもよく、あるいは、ガーニッシュそれ自体に厚肉部を形成してもよい。
上記構成によれば、見栄えを悪化させることなく、ガーニッシュ、特に、その下縁部の剛性向上を図ることができ、この剛性向上によりNVH性能のさらなる向上を図ることができる。
【発明の効果】
【0016】
この発明によれば、ドア側のガーニッシュ下縁部の上面に、車幅方向内側上方に向って延びる上方指向部と、この上方指向部から車幅方向内側下方に向って湾曲または傾斜して延びる下方指向部とを、ガーニッシュ下縁に沿って延設したので、ガーニッシュ下縁部を平均的に略水平にしてシール部材に対して面直に当接させて、当接力を高め、NVH性能の向上を図り、かつ上記下方指向部により降車時における靴底の凹溝の引っかかりを防止して、乗降性を確保することができる効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明のドアガーニッシュ構造を備えた自動車の側面図
【図2】ヒンジ式サイドドアの側面図
【図3】図2のA‐A線矢視断面図
【図4】図2のB‐B線矢視断面図
【図5】ドア側のガーニッシュを示す概略斜視図
【図6】ガーニッシュ傾斜構造の他の実施例を示す側面図
【図7】ガーニッシュ傾斜構造のさらに他の実施例を示す側面図
【図8】上方指向部および下方指向部の他の実施例を示す断面図
【図9】従来の自動車のドアガーニッシュ構造を示す正面図
【図10】ガーニッシュ下縁部を水平に形成した時の問題点を示す正面図
【図11】ガーニッシュ下縁部を水平に形成した時の問題点を示す概略斜視図
【発明を実施するための形態】
【0018】
ガーニッシュ下縁部を平均的に略水平にしてシール部材に対して面直に当接させて、当接力を高め、NVH性能の向上を図り、かつ、降車時における靴底の凹溝の引っかかりを防止して、乗降性を確保するという目的を、サイドドアと、該サイドドアの下部に車体前後方向に延設して取付けられたガーニッシュとを備え、上記サイドドアの閉止状態で、上記ガーニッシュの下縁部を、車幅方向内側に延設し、車体側弾性シール部材に外側方から当接させる自動車のドアガーニッシュ構造において、上記ガーニッシュ下縁部の上面には、車幅方向内側上方に向って延びる上方指向部と、該上方指向部から、車幅方向内側下方に向って湾曲または傾斜して延びる下方指向部とが、ガーニッシュ下縁部に沿って延設されるという構成にて実現した。
【実施例】
【0019】
この発明の一実施例を以下図面に基づいて詳述する。
図面は自動車のドアガーニッシュ構造を示し、図1はドアガーニッシュ構造を備えた自動車の側面図、図2はヒンジ式サイドドアの側面図、図3は図2のA‐A線矢視断面図、図4は図2のB‐B線矢視断面図である。なお、図中、矢印Fは車両前方を示し、矢印Rは車両後方を示し、矢印INは車幅方向の内方を示し、矢印OUTは車幅方向の外方を示し、矢印UPは車両の上方を示す。
【0020】
図1において、この自動車は車体側部に前席乗員用のドア開口部1を開閉するヒンジ式サイドドアとしてのフロントドア2と、後席乗員用のドア開口部3を開閉するヒンジ式サイドドアとしてのリヤドア4とを備えている。
【0021】
図1,図2に示すように、フロントドア2は、ドアサッシュ5、ドアミラー6、ドアガラス7、ドアアウタハンドル8を備えており、該フロントドア2の前端部は、上下一組のドア側ヒンジブラケット9と、ボディ側ヒンジブラケットと、ヒンジピンとを介してヒンジピラーに開閉可能に枢支されている。
同様に、リヤドア4も、ドアサッシュ10、ドアガラス11、ドアアウタハンドル12を備えており、該リヤドア4の前端部は、上下一組のドア側ヒンジブラケット、ボディ側ヒンジブラケット、ヒンジピンを介してセンタピラーに開閉可能に枢支されている。
【0022】
図3,図4に示すように、ヒンジ式サイドドアとしてのフロントドア2は、ドアインナパネル13とドアアウタパネル14とをヘミング加工部等により一体化したもので、このフロントドア2の下部には、図1〜図4に示すように、車体前後方向に延びるドア側のガーニッシュ15が取付けられている。
【0023】
一方、車体側には車両下部の両サイド(但し、図面では車両右側のみを示す)において車体前後方向に延びる車体剛性部材としてのサイドシル16が設けられている(図3参照)。
【0024】
図3に示すように、このサイドシル16はサイドシルインナ17と、サイドシルアウタ18とをこれらの上下接合フランジ部で結合して、車体の前後方向に延びるサイドシル閉断面19を形成したもので、左右のサイドシル16,16におけるサイドシルインナ17,17間にはフロアパネル20を水平に横架して、車室底面を形成している。
上述のサイドシルアウタ18の下部車外側には、合成樹脂製のガーニッシュ21を取付けている。そして、このサイドシル側のガーニッシュ21の下部車外側の凹部21aには、ゴムなどから成る閉断面構造の車体側弾性シール部材22(以下単に、シール部材22と略記する)を取付けている。
【0025】
ところで、上述のドア側のガーニッシュ15も合成樹脂により形成されており、このガーニッシュ15は、図3に示すようにフロントドア2の閉止状態(全閉状態)で、該ガーニッシュ15の下縁部15aを、車幅方向内側に延設して、シール部材22に外側方から当接させるように構成している。
【0026】
図2のB‐B線矢視断面図を図4に示すように、ドア側のガーニッシュ15の下縁部15aの上面には、車幅方向内側上方に向って傾斜状に延びる上方指向部15Aと、この上方指向部15Aから車幅方向内側下方に向って傾斜して延びる下方指向部15Bと、この下方指向部15Bから略真下に延びてシール部材22に直接当接する当接部15Cとが、ガーニッシュ下縁部15aに沿って一体に延設形成されている。
【0027】
図4に示すように、仮想水平ラインに対する下方指向部15Bの下方指向角度θは20度〜25度の範囲、好ましくは25度に設定されている。
図4に示す上方指向部15A、下方指向部15B、当接部15Cが形成された車体前後方向の範囲は、図2に距離L1で示すフロントドア2のヒンジ側、開放端側以外の前後方向中間部である。
【0028】
図2に距離L1で示す範囲内において、上述の上方指向部15A、下方指向部15Bおよび当接部15Cは、ガーニッシュ下縁部15aに沿う方向に延びると共に、車体前後方向の中間23が高く車体前後方向の前後が低くなるように上下に傾斜した前側傾斜部15Dと後側傾斜部15Eとが形成されている。
また、図2に点線で、図3に実線で示すように、フロントドア2のヒンジ側のガーニッシュ下縁部15aは、車幅方向内側に略水平に延びるヒンジ側水平部15Fを備えており、このヒンジ側水平部15Fの車幅方向内端から略真下に延びてシール部材22に直接当接する当接部15Gが一体形成されている。
【0029】
ここで、該当接部15Gは上述の当接部15Cと連続するように形成されている(図5参照)。
さらに、図2,図5に示すように、フロントドア2の開放端側のガーニッシュ下縁部15aは、車幅方向内側に略水平に延びる開放端側水平部15Jを備えており、この開放端側水平部15Jの車幅方向内端から略真下に延びてシール部材22に直接当接する当接部15Kが一体形成されている。
【0030】
ここで、上述の開放端側水平部15J、当接部15Kの断面構造は、図3で示したヒンジ側水平部15F、当接部15Gの断面構造と略同様であり、また、該当接部15Kも上述の当接部15Cと連続するように形成されている(図5参照)。
【0031】
図2に距離L1で示す範囲内において、上述のガーニッシュ下縁部15aの下面側には、図4,図5に示すように、補強部としての複数のリブ24,24…が車体前後方向に間隔を隔てて一体形成されている。
【0032】
図5はドア側のガーニッシュ15の概略斜視図であって、このガーニッシュ15のドアアウタパネル14下部と対向する対向面部15bには、複数のクリップ座25…を一体または一体的に形成し、これらの各クリップ座25に配置した取付け部材としてのクリップ26を用いて、該ガーニッシュ15をドアアウタパネル14の下部、詳しくは、ドアアウタパネル14の下部に開口形成した複数のクリップ係止孔(図示せず)に取付けるように構成している。
【0033】
このように、図1〜図5で示した実施例の自動車のドアガーニッシュ構造は、サイドドア(フロントドア2参照)と、該サイドドア(フロントドア2)の下部に車体前後方向に延設して取付けられたガーニッシュ15とを備え、上記サイドドア(フロントドア2)の閉止状態で、上記ガーニッシュ15の下縁部15aを、車幅方向内側に延設し、シール部材22に外側方から当接させる自動車のドアガーニッシュ構造であって、上記ガーニッシュ下縁部15aの上面には、車幅方向内側上方に向って延びる上方指向部15Aと、該上方指向部15Aから、車幅方向内側下方に向って傾斜して延びる下方指向部15Bとが、ガーニッシュ下縁部15aに沿って延設されたものである(図4参照)。
【0034】
この構成によれば、遮音性の確保と乗降性の確保とを両立することができる。
つまり、上述の上方指向部15Aと下方指向部15Bとでガーニッシュ下縁部15aを平均的に略水平にして、該ガーニッシュ下縁部15aの内端を車体側のシール部材22に対して面直に当接させて、その当接力を高め、NVH性能の向上を図ることができる。
また、上記上方指向部15Aから車幅方向内側下方に向って傾斜して延びる下方指向部15Bにより、降車時において乗員の靴が下方指向部15B上に乗っても、靴を滑り下すことができ、さらに靴底の凹溝が下方指向部15Bに引っかかるのを適切に防止して、乗降性を確保することができる。
また、上記サイドドア(フロントドア2)はヒンジ式サイドドアであって、ヒンジ側のガーニッシュ下縁部15aは、車幅方向内側に略水平に延びるヒンジ側水平部15Fを備えたものである(図2,図3参照)。
【0035】
この構成によれば、次のような効果がある。
すなわち、ヒンジ式サイドドア(フロントドア2)を開成した時、開成したサイドドア(フロントドア2)のヒンジ側と車体との間のスペースは狭く、降車時に乗員の足が入ってきにくいので、この部分のガーニッシュ下縁部15aをヒンジ側水平部15Fと成すことで、ガーニッシュ下縁部15aが車体側のシール部材22に当接する当接力の向上を図ることができる。
要するに、乗降性を低下させることなく、当接力の向上を図り、車外側から泥や音が車室内に侵入するのを防止することができる。
さらに、上記サイドドア(フロントドア2)はヒンジ式サイドドアであって、開放端側のガーニッシュ下縁部15aは、車幅方向内側に略水平に延びる開放端側水平部15Jを備えたものである(図2参照)。
【0036】
この構成によれば、次のような効果がある。
すなわち、ヒンジ式のサイドドア(フロントドア2)を開成した時、そのドア開放端側は開度が大きく、降車時に乗員の足が開放端側に当たり難いので、この部分のガーニッシュ下縁部15aを開放端側水平部15Jと成すことで、ガーニッシュ下縁部15aが車体側のシール部材22に当接する当接力の向上を図ることができる。
要するに、降車性を低下させることなく、当接力の向上を図って、車外側から泥や音が車室内に侵入するのを防止することができる。
さらにまた、上記上方および下方の両指向部15A,15Bは、ガーニッシュ下縁部15aに沿う方向に延びると共に、車体前後方向の中間23が高く、車体前後方向の前後が低くなるように上下に傾斜しているものである(図2の前側傾斜部15D、後側傾斜部15E参照)。
【0037】
この構成によれば、上述の両指向部15A,15Bは車体前後方向の中間23が高く、車体前後方向の前部および後部が低くなるように形成されているので、乗員の足が当り難いガーニッシュ下縁部15aの前部および後部に侵入水を容易に排水することができ、また上記傾斜構造によりガーニッシュ15それ自体の剛性向上をも図ることができる。
なお、前側傾斜部15Dまたは後側傾斜部15Eの傾斜の程度は、一方が垂直に傾斜したものを含み、この場合は、実質的に前後方向他方側にのみ傾斜することになるが、同様の効果が得られる。
加えて、上記ガーニッシュ下縁部15aの下面側には、補強部(リブ24参照)が形成されたものである(図4,図5参照)。
【0038】
この構成によれば、見栄えを悪化させることなく、ガーニッシュ15、特に、その下縁部15aの剛性向上を図ることができ、この剛性向上によりNVH性能のさらなる向上を図ることができる。
【0039】
図6,図7はガーニッシュ傾斜構造の他の実施例を示す側面図である。
図2で示した実施例においては、前側傾斜部15Dの車体前後方向の長さが、後側傾斜部15Eの車体前後方向の長さよりも短くなるように形成したが、図6で示すこの実施例においては、前側傾斜部15Dの車体前後方向の長さと、後側傾斜部15Eの車体前後方向の長さとが略等しくなるように形成したものである。
このように構成すると、図2の実施例に対してガーニッシュ下縁部15aの剛性をさらに向上させることができる。
なお、図6で示すこの実施例においても、その他の構成、作用、効果については図1〜図5で述べた先の実施例と略同様であるから、図6において前図と同一の部分には、同一符号を付して、その詳しい説明を省略する。
【0040】
また、図2,図6で示した各実施例においては、前側傾斜部15Dおよび後側傾斜部15Eが略直線状に傾斜するように形成したが、これは図7に示すように円弧状に傾斜するように形成してもよい。
このように構成しても、先の各実施例とほぼ同様の作用、効果を奏するので、図7において前図と同一の部分には、同一符号を付して、その詳しい説明を省略する。
【0041】
図8は上方指向部および下方指向部の他の実施例を示す断面図である。
図4で示した先の実施例においては、ドア側のガーニッシュ15の下縁部15aの上面に、車幅方向内側上方に向って略直線的に傾斜する上方指向部15Aと、この上方指向部15Aから車幅方向内側下方に向って略直線的に傾斜する下方指向部15Bとを一体形成したが、図8で示すこの実施例においては、ドア側のガーニッシュ15の下縁部15aの上面に、車幅方向内側上方に向って立上がる上方指向部15Aと、この上方指向部15Aから車幅方向内側下方に向って湾曲して延びる下方指向部15Bとを一体形成したものである。
このように構成しても、図4で示した先の実施例とほぼ同様の作用、効果を奏するので、図8において、前図と同一の部分には、同一符号を付して、その詳しい説明を省略する。
【0042】
この発明の構成と、上述の実施例との対応において、
この発明のサイドドアは、実施例のフロントドア2に対応し、
以下同様に、
車体側弾性シール部材は、シール部材22に対応し、
補強部は、リブ24に対応するも、
この発明は、上述の実施例の構成のみに限定されるものではない。
例えば、本発明の自動車のドアガーニッシュ構造は、実施例で示したフロントドア2の他にリヤドア4に採用してもよく、また観音開き構造のサイドドアに採用してもよい。
さらに、上述の補強部としては実施例で示したリブ24に代えて、少なくとも、ドア側のガーニッシュ15の下縁部15aの下面側を厚肉形状と成す構造を採用してもよい。
また、上方および下方の両指向部15A,15Bは、ドアガーニッシュ15の下縁部15aの前後方向全体に設けてもよい。この場合、下縁部15aの両指向部15A,15Bの車幅方向外側部位、好ましくはサイドシルに対し、排水が掛かって汚れないように車幅方向外側に離間した位置に、排水孔や排水溝を設けるとよい。
【産業上の利用可能性】
【0043】
以上説明したように、本発明は、サイドドアと、該サイドドアの下部に車体前後方向に延設して取付けられたガーニッシュとを備え、上記サイドドアの閉止状態で、上記ガーニッシュ下縁部を、車幅方向内側に延設し、車体側弾性シール部材に外側方から当接させる自動車、特に、車高が高い車、低床車などの自動車のドアガーニッシュ構造について有用である。
【符号の説明】
【0044】
2…フロントドア(サイドドア)
15…ガーニッシュ
15a…下縁部
15A…上方指向部
15B…下方指向部
15F…ヒンジ側水平部
15J…開放端側水平部
22…シール部材(車体側弾性シール部材)
23…中間
24…リブ(補強部)
【技術分野】
【0001】
この発明は、サイドドアの下部に取付けられたガーニッシュを備えてなる自動車のドアガーニッシュ構造に関し、詳しくは、サイドドアの閉止状態で、ガーニッシュの下縁部を車幅方向内側に延設し、車体側弾性シール部材に外側方から当接させるように成した自動車のドアガーニッシュ構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、上述例の自動車のドアガーニッシュ構造としては、図9で示す構造のものがある。
すなわち、サイドドア81の下部に車体前後方向に延びるように取付けたドア側のガーニッシュ82を設ける一方、サイドシルアウタ83とサイドシルインナ84とから成るサイドシル85の下部車体側には、サイドシル側のガーニッシュ86を介して車体側弾性シール部材87を取付け、サイドドア81の閉止状態(図示の状態)で、ドア側のガーニッシュ82の下端部を車外側方から上述の弾性シール部材87に食い込むように当接させて、車外側からの泥や音が車室内ヘ侵入するのを防止すべく構成している。
【0003】
図9に示す従来構造において、車体側弾性シール部材87は経年変化すると共に、温度によってもその硬さが変化するので、泥や音の侵入を防止するためには、ガーニッシュ82を該シール部材87に強く食い込ませることが望まれるが、図9に示すように、ドア側のガーニッシュ82はその下部が車体内方に向けて斜め方向に延びており、このガーニッシュ82がシール部材87に対して面直に当接しないので、充分なNVH性能が確保できないうえ、ガーニッシュ82の押し付け力を強くすると、該ガーニッシュ82が変形しやすくなるという問題点があった。
なお、図9において、88はフロアパネルであり、また矢印OUTは車幅方向の外方を示し、矢印INは車幅方向の内方を示す。
【0004】
図9で示した従来構造の問題点を解決するためには、図10に示すように、ドア側のガーニッシュ82の下縁部82aを車幅方向内側に水平に延設し、サイドドア81の閉止状態(但し、図10ではドア半開状態を示す)において、該ガーニッシュ82の下縁部82aの内端が外側方から弾性シール部材87に対して面直に当接して押し付けるように成す構造が考えられる。
この場合には、NVH性能は確保できるものの、次に述べるような新たな問題点が発生する。
【0005】
つまり、図10,図11に示すように、狭い駐車場などにおいて、サイドドア81を半開にして乗員が自動車から降車する際、乗員の靴が水平状態のガーニッシュ下縁部82aに乗り上がったり、或は靴底の凹溝がガーニッシュ下縁部82aの内端に引っかかり、乗降性が阻害される問題点が発生する。
【0006】
ところで、特許文献1には、サイドシルの下部車外側にサイドガーニッシュを介して弾性シール部材を取付ける一方、サイドドアの下部にはドア側のガーニッシュを取付け、このドア側のガーニッシュの下端部を車幅方向内側に水平に延設した構造が開示されているが、この特許文献1に開示されたものは、図10,図11で示した従来構造と同様に、ドア側のガーニッシュ下端部の水平部分に降車する乗員の靴底が引っかかる問題点があった。
また、特許文献2には、サイドシルアウタの車外側にロッカモールを取付ける一方、サイドドアの下部にはドア側のガーニッシュを取付け、このガーニッシュ下縁にリップ部(いわゆるシールリップ)を設けた構成が開示されている。
【0007】
しかしながら、上記リップ部は閉断面構造ではないために、その耐久性が悪いうえ、ドア側のガーニッシュにはリップ部の取付け部を形成する必要があるので、該ガーニッシュの成形性が悪く、さらに、リップ部の弾性変形代を確保する目的で、該リップ部が車幅方向内側へ突出しており、乗降時に乗員の靴や服と干渉して、これらを汚す懸念があり好ましくなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特許第4489722号公報
【特許文献2】特開平7−205731号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
そこで、この発明は、ドア側のガーニッシュ下縁部の上面に、車幅方向内側上方に向って延びる上方指向部と、この上方指向部から車幅方向内側下方に向って湾曲または傾斜して延びる下方指向部とを、ガーニッシュ下縁に沿って延設することにより、ガーニッシュ下縁部を平均的に略水平にしてシール部材に対して面直に当接させて、当接力を高め、NVH性能の向上を図り、かつ上記下方指向部により降車時における靴底の凹溝の引っかかりを防止して、乗降性を確保することができる自動車のドアガーニッシュ構造の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
この発明による自動車のドアガーニッシュ構造は、サイドドアと、該サイドドアの下部に車体前後方向に延設して取付けられたガーニッシュとを備え、上記サイドドアの閉止状態で、上記ガーニッシュの下縁部を、車幅方向内側に延設し、車体側弾性シール部材に外側方から当接させる自動車のドアガーニッシュ構造であって、上記ガーニッシュ下縁部の上面には、車幅方向内側上方に向って延びる上方指向部と、該上方指向部から、車幅方向内側下方に向って湾曲または傾斜して延びる下方指向部とが、ガーニッシュ下縁部に沿って延設されたものである。
【0011】
上記構成によれば、遮音性の確保と乗降性の確保とを両立することができる。
つまり、上述の上方指向部と下方指向部とでガーニッシュ下縁部を平均的に略水平にして、該ガーニッシュ下縁部の内端を車体側のシール部材に対して面直に当接させて、その当接力を高め、NVH性能の向上を図ることができる。
また、上記上方指向部から車幅方向内側下方に向って湾曲または傾斜して延びる下方指向部により、降車時において乗員の靴が下方指向部上に乗っても、靴を滑り下すことができ、さらに靴底の凹溝が下方指向部に引っかかるのを適切に防止して、乗降性を確保することができる。
【0012】
この発明の一実施態様においては、上記サイドドアはヒンジ式サイドドアであって、ヒンジ側のガーニッシュ下縁部は、車幅方向内側に略水平に延びるヒンジ側水平部を備えたものである。
上記構成によれば、次のような効果がある。
すなわち、ヒンジ式サイドドアを開成した時、開成したサイドドアのヒンジ側と、車体との間のスペースは狭く、降車時に乗員の足が入ってきにくいので、この部分のガーニッシュ下縁部をヒンジ側水平部と成すことで、ガーニッシュ下縁部が車体側のシール部材に当接する当接力の向上を図ることができる。
要するに、乗降性を低下させることなく、当接力の向上を図り、車外側から泥や音が車室内に侵入するのを防止することができる。
【0013】
この発明の一実施態様においては、上記サイドドアはヒンジ式サイドドアであって、開放端側のガーニッシュ下縁部は、車幅方向内側に略水平に延びる開放端側水平部を備えたものである。
上記構成によれば、次のような効果がある。
すなわち、ヒンジ式のサイドドアを開成した時、そのドア開放端側は開度が大きく、降車時に乗員の足が開放端側に当たり難いので、この部分のガーニッシュ下縁部を開放端側水平部と成すことで、ガーニッシュ下縁部が車体側のシール部材に当接する当接力の向上を図ることができる。
要するに、降車性を低下させることなく、当接力の向上を図って、車外側から泥や音が車室内に侵入するのを防止することができる。
【0014】
この発明の一実施態様においては、上記上方および下方の両指向部は、ガーニッシュ下縁部に沿う方向に延びると共に、車体前後方向の中間が高く、車体前後方向の前後が低くなるように上下に傾斜しているものである。
上記構成によれば、上述の両指向部は車体前後方向の中間が高く、車体前後方向の前部および後部が低くなるように形成されているので、乗員の足が当り難いガーニッシュ下縁部の前部および後部に侵入水を容易に排水することができ、また上記傾斜構造によりガーニッシュの剛性向上をも図ることができる。
【0015】
この発明の一実施態様においては、上記ガーニッシュ下縁部の下面側には、補強部が形成されたものである。
上述の補強部としては、ガーニッシュ下縁部の下面側にリブを一体形成してもよく、あるいは、ガーニッシュそれ自体に厚肉部を形成してもよい。
上記構成によれば、見栄えを悪化させることなく、ガーニッシュ、特に、その下縁部の剛性向上を図ることができ、この剛性向上によりNVH性能のさらなる向上を図ることができる。
【発明の効果】
【0016】
この発明によれば、ドア側のガーニッシュ下縁部の上面に、車幅方向内側上方に向って延びる上方指向部と、この上方指向部から車幅方向内側下方に向って湾曲または傾斜して延びる下方指向部とを、ガーニッシュ下縁に沿って延設したので、ガーニッシュ下縁部を平均的に略水平にしてシール部材に対して面直に当接させて、当接力を高め、NVH性能の向上を図り、かつ上記下方指向部により降車時における靴底の凹溝の引っかかりを防止して、乗降性を確保することができる効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明のドアガーニッシュ構造を備えた自動車の側面図
【図2】ヒンジ式サイドドアの側面図
【図3】図2のA‐A線矢視断面図
【図4】図2のB‐B線矢視断面図
【図5】ドア側のガーニッシュを示す概略斜視図
【図6】ガーニッシュ傾斜構造の他の実施例を示す側面図
【図7】ガーニッシュ傾斜構造のさらに他の実施例を示す側面図
【図8】上方指向部および下方指向部の他の実施例を示す断面図
【図9】従来の自動車のドアガーニッシュ構造を示す正面図
【図10】ガーニッシュ下縁部を水平に形成した時の問題点を示す正面図
【図11】ガーニッシュ下縁部を水平に形成した時の問題点を示す概略斜視図
【発明を実施するための形態】
【0018】
ガーニッシュ下縁部を平均的に略水平にしてシール部材に対して面直に当接させて、当接力を高め、NVH性能の向上を図り、かつ、降車時における靴底の凹溝の引っかかりを防止して、乗降性を確保するという目的を、サイドドアと、該サイドドアの下部に車体前後方向に延設して取付けられたガーニッシュとを備え、上記サイドドアの閉止状態で、上記ガーニッシュの下縁部を、車幅方向内側に延設し、車体側弾性シール部材に外側方から当接させる自動車のドアガーニッシュ構造において、上記ガーニッシュ下縁部の上面には、車幅方向内側上方に向って延びる上方指向部と、該上方指向部から、車幅方向内側下方に向って湾曲または傾斜して延びる下方指向部とが、ガーニッシュ下縁部に沿って延設されるという構成にて実現した。
【実施例】
【0019】
この発明の一実施例を以下図面に基づいて詳述する。
図面は自動車のドアガーニッシュ構造を示し、図1はドアガーニッシュ構造を備えた自動車の側面図、図2はヒンジ式サイドドアの側面図、図3は図2のA‐A線矢視断面図、図4は図2のB‐B線矢視断面図である。なお、図中、矢印Fは車両前方を示し、矢印Rは車両後方を示し、矢印INは車幅方向の内方を示し、矢印OUTは車幅方向の外方を示し、矢印UPは車両の上方を示す。
【0020】
図1において、この自動車は車体側部に前席乗員用のドア開口部1を開閉するヒンジ式サイドドアとしてのフロントドア2と、後席乗員用のドア開口部3を開閉するヒンジ式サイドドアとしてのリヤドア4とを備えている。
【0021】
図1,図2に示すように、フロントドア2は、ドアサッシュ5、ドアミラー6、ドアガラス7、ドアアウタハンドル8を備えており、該フロントドア2の前端部は、上下一組のドア側ヒンジブラケット9と、ボディ側ヒンジブラケットと、ヒンジピンとを介してヒンジピラーに開閉可能に枢支されている。
同様に、リヤドア4も、ドアサッシュ10、ドアガラス11、ドアアウタハンドル12を備えており、該リヤドア4の前端部は、上下一組のドア側ヒンジブラケット、ボディ側ヒンジブラケット、ヒンジピンを介してセンタピラーに開閉可能に枢支されている。
【0022】
図3,図4に示すように、ヒンジ式サイドドアとしてのフロントドア2は、ドアインナパネル13とドアアウタパネル14とをヘミング加工部等により一体化したもので、このフロントドア2の下部には、図1〜図4に示すように、車体前後方向に延びるドア側のガーニッシュ15が取付けられている。
【0023】
一方、車体側には車両下部の両サイド(但し、図面では車両右側のみを示す)において車体前後方向に延びる車体剛性部材としてのサイドシル16が設けられている(図3参照)。
【0024】
図3に示すように、このサイドシル16はサイドシルインナ17と、サイドシルアウタ18とをこれらの上下接合フランジ部で結合して、車体の前後方向に延びるサイドシル閉断面19を形成したもので、左右のサイドシル16,16におけるサイドシルインナ17,17間にはフロアパネル20を水平に横架して、車室底面を形成している。
上述のサイドシルアウタ18の下部車外側には、合成樹脂製のガーニッシュ21を取付けている。そして、このサイドシル側のガーニッシュ21の下部車外側の凹部21aには、ゴムなどから成る閉断面構造の車体側弾性シール部材22(以下単に、シール部材22と略記する)を取付けている。
【0025】
ところで、上述のドア側のガーニッシュ15も合成樹脂により形成されており、このガーニッシュ15は、図3に示すようにフロントドア2の閉止状態(全閉状態)で、該ガーニッシュ15の下縁部15aを、車幅方向内側に延設して、シール部材22に外側方から当接させるように構成している。
【0026】
図2のB‐B線矢視断面図を図4に示すように、ドア側のガーニッシュ15の下縁部15aの上面には、車幅方向内側上方に向って傾斜状に延びる上方指向部15Aと、この上方指向部15Aから車幅方向内側下方に向って傾斜して延びる下方指向部15Bと、この下方指向部15Bから略真下に延びてシール部材22に直接当接する当接部15Cとが、ガーニッシュ下縁部15aに沿って一体に延設形成されている。
【0027】
図4に示すように、仮想水平ラインに対する下方指向部15Bの下方指向角度θは20度〜25度の範囲、好ましくは25度に設定されている。
図4に示す上方指向部15A、下方指向部15B、当接部15Cが形成された車体前後方向の範囲は、図2に距離L1で示すフロントドア2のヒンジ側、開放端側以外の前後方向中間部である。
【0028】
図2に距離L1で示す範囲内において、上述の上方指向部15A、下方指向部15Bおよび当接部15Cは、ガーニッシュ下縁部15aに沿う方向に延びると共に、車体前後方向の中間23が高く車体前後方向の前後が低くなるように上下に傾斜した前側傾斜部15Dと後側傾斜部15Eとが形成されている。
また、図2に点線で、図3に実線で示すように、フロントドア2のヒンジ側のガーニッシュ下縁部15aは、車幅方向内側に略水平に延びるヒンジ側水平部15Fを備えており、このヒンジ側水平部15Fの車幅方向内端から略真下に延びてシール部材22に直接当接する当接部15Gが一体形成されている。
【0029】
ここで、該当接部15Gは上述の当接部15Cと連続するように形成されている(図5参照)。
さらに、図2,図5に示すように、フロントドア2の開放端側のガーニッシュ下縁部15aは、車幅方向内側に略水平に延びる開放端側水平部15Jを備えており、この開放端側水平部15Jの車幅方向内端から略真下に延びてシール部材22に直接当接する当接部15Kが一体形成されている。
【0030】
ここで、上述の開放端側水平部15J、当接部15Kの断面構造は、図3で示したヒンジ側水平部15F、当接部15Gの断面構造と略同様であり、また、該当接部15Kも上述の当接部15Cと連続するように形成されている(図5参照)。
【0031】
図2に距離L1で示す範囲内において、上述のガーニッシュ下縁部15aの下面側には、図4,図5に示すように、補強部としての複数のリブ24,24…が車体前後方向に間隔を隔てて一体形成されている。
【0032】
図5はドア側のガーニッシュ15の概略斜視図であって、このガーニッシュ15のドアアウタパネル14下部と対向する対向面部15bには、複数のクリップ座25…を一体または一体的に形成し、これらの各クリップ座25に配置した取付け部材としてのクリップ26を用いて、該ガーニッシュ15をドアアウタパネル14の下部、詳しくは、ドアアウタパネル14の下部に開口形成した複数のクリップ係止孔(図示せず)に取付けるように構成している。
【0033】
このように、図1〜図5で示した実施例の自動車のドアガーニッシュ構造は、サイドドア(フロントドア2参照)と、該サイドドア(フロントドア2)の下部に車体前後方向に延設して取付けられたガーニッシュ15とを備え、上記サイドドア(フロントドア2)の閉止状態で、上記ガーニッシュ15の下縁部15aを、車幅方向内側に延設し、シール部材22に外側方から当接させる自動車のドアガーニッシュ構造であって、上記ガーニッシュ下縁部15aの上面には、車幅方向内側上方に向って延びる上方指向部15Aと、該上方指向部15Aから、車幅方向内側下方に向って傾斜して延びる下方指向部15Bとが、ガーニッシュ下縁部15aに沿って延設されたものである(図4参照)。
【0034】
この構成によれば、遮音性の確保と乗降性の確保とを両立することができる。
つまり、上述の上方指向部15Aと下方指向部15Bとでガーニッシュ下縁部15aを平均的に略水平にして、該ガーニッシュ下縁部15aの内端を車体側のシール部材22に対して面直に当接させて、その当接力を高め、NVH性能の向上を図ることができる。
また、上記上方指向部15Aから車幅方向内側下方に向って傾斜して延びる下方指向部15Bにより、降車時において乗員の靴が下方指向部15B上に乗っても、靴を滑り下すことができ、さらに靴底の凹溝が下方指向部15Bに引っかかるのを適切に防止して、乗降性を確保することができる。
また、上記サイドドア(フロントドア2)はヒンジ式サイドドアであって、ヒンジ側のガーニッシュ下縁部15aは、車幅方向内側に略水平に延びるヒンジ側水平部15Fを備えたものである(図2,図3参照)。
【0035】
この構成によれば、次のような効果がある。
すなわち、ヒンジ式サイドドア(フロントドア2)を開成した時、開成したサイドドア(フロントドア2)のヒンジ側と車体との間のスペースは狭く、降車時に乗員の足が入ってきにくいので、この部分のガーニッシュ下縁部15aをヒンジ側水平部15Fと成すことで、ガーニッシュ下縁部15aが車体側のシール部材22に当接する当接力の向上を図ることができる。
要するに、乗降性を低下させることなく、当接力の向上を図り、車外側から泥や音が車室内に侵入するのを防止することができる。
さらに、上記サイドドア(フロントドア2)はヒンジ式サイドドアであって、開放端側のガーニッシュ下縁部15aは、車幅方向内側に略水平に延びる開放端側水平部15Jを備えたものである(図2参照)。
【0036】
この構成によれば、次のような効果がある。
すなわち、ヒンジ式のサイドドア(フロントドア2)を開成した時、そのドア開放端側は開度が大きく、降車時に乗員の足が開放端側に当たり難いので、この部分のガーニッシュ下縁部15aを開放端側水平部15Jと成すことで、ガーニッシュ下縁部15aが車体側のシール部材22に当接する当接力の向上を図ることができる。
要するに、降車性を低下させることなく、当接力の向上を図って、車外側から泥や音が車室内に侵入するのを防止することができる。
さらにまた、上記上方および下方の両指向部15A,15Bは、ガーニッシュ下縁部15aに沿う方向に延びると共に、車体前後方向の中間23が高く、車体前後方向の前後が低くなるように上下に傾斜しているものである(図2の前側傾斜部15D、後側傾斜部15E参照)。
【0037】
この構成によれば、上述の両指向部15A,15Bは車体前後方向の中間23が高く、車体前後方向の前部および後部が低くなるように形成されているので、乗員の足が当り難いガーニッシュ下縁部15aの前部および後部に侵入水を容易に排水することができ、また上記傾斜構造によりガーニッシュ15それ自体の剛性向上をも図ることができる。
なお、前側傾斜部15Dまたは後側傾斜部15Eの傾斜の程度は、一方が垂直に傾斜したものを含み、この場合は、実質的に前後方向他方側にのみ傾斜することになるが、同様の効果が得られる。
加えて、上記ガーニッシュ下縁部15aの下面側には、補強部(リブ24参照)が形成されたものである(図4,図5参照)。
【0038】
この構成によれば、見栄えを悪化させることなく、ガーニッシュ15、特に、その下縁部15aの剛性向上を図ることができ、この剛性向上によりNVH性能のさらなる向上を図ることができる。
【0039】
図6,図7はガーニッシュ傾斜構造の他の実施例を示す側面図である。
図2で示した実施例においては、前側傾斜部15Dの車体前後方向の長さが、後側傾斜部15Eの車体前後方向の長さよりも短くなるように形成したが、図6で示すこの実施例においては、前側傾斜部15Dの車体前後方向の長さと、後側傾斜部15Eの車体前後方向の長さとが略等しくなるように形成したものである。
このように構成すると、図2の実施例に対してガーニッシュ下縁部15aの剛性をさらに向上させることができる。
なお、図6で示すこの実施例においても、その他の構成、作用、効果については図1〜図5で述べた先の実施例と略同様であるから、図6において前図と同一の部分には、同一符号を付して、その詳しい説明を省略する。
【0040】
また、図2,図6で示した各実施例においては、前側傾斜部15Dおよび後側傾斜部15Eが略直線状に傾斜するように形成したが、これは図7に示すように円弧状に傾斜するように形成してもよい。
このように構成しても、先の各実施例とほぼ同様の作用、効果を奏するので、図7において前図と同一の部分には、同一符号を付して、その詳しい説明を省略する。
【0041】
図8は上方指向部および下方指向部の他の実施例を示す断面図である。
図4で示した先の実施例においては、ドア側のガーニッシュ15の下縁部15aの上面に、車幅方向内側上方に向って略直線的に傾斜する上方指向部15Aと、この上方指向部15Aから車幅方向内側下方に向って略直線的に傾斜する下方指向部15Bとを一体形成したが、図8で示すこの実施例においては、ドア側のガーニッシュ15の下縁部15aの上面に、車幅方向内側上方に向って立上がる上方指向部15Aと、この上方指向部15Aから車幅方向内側下方に向って湾曲して延びる下方指向部15Bとを一体形成したものである。
このように構成しても、図4で示した先の実施例とほぼ同様の作用、効果を奏するので、図8において、前図と同一の部分には、同一符号を付して、その詳しい説明を省略する。
【0042】
この発明の構成と、上述の実施例との対応において、
この発明のサイドドアは、実施例のフロントドア2に対応し、
以下同様に、
車体側弾性シール部材は、シール部材22に対応し、
補強部は、リブ24に対応するも、
この発明は、上述の実施例の構成のみに限定されるものではない。
例えば、本発明の自動車のドアガーニッシュ構造は、実施例で示したフロントドア2の他にリヤドア4に採用してもよく、また観音開き構造のサイドドアに採用してもよい。
さらに、上述の補強部としては実施例で示したリブ24に代えて、少なくとも、ドア側のガーニッシュ15の下縁部15aの下面側を厚肉形状と成す構造を採用してもよい。
また、上方および下方の両指向部15A,15Bは、ドアガーニッシュ15の下縁部15aの前後方向全体に設けてもよい。この場合、下縁部15aの両指向部15A,15Bの車幅方向外側部位、好ましくはサイドシルに対し、排水が掛かって汚れないように車幅方向外側に離間した位置に、排水孔や排水溝を設けるとよい。
【産業上の利用可能性】
【0043】
以上説明したように、本発明は、サイドドアと、該サイドドアの下部に車体前後方向に延設して取付けられたガーニッシュとを備え、上記サイドドアの閉止状態で、上記ガーニッシュ下縁部を、車幅方向内側に延設し、車体側弾性シール部材に外側方から当接させる自動車、特に、車高が高い車、低床車などの自動車のドアガーニッシュ構造について有用である。
【符号の説明】
【0044】
2…フロントドア(サイドドア)
15…ガーニッシュ
15a…下縁部
15A…上方指向部
15B…下方指向部
15F…ヒンジ側水平部
15J…開放端側水平部
22…シール部材(車体側弾性シール部材)
23…中間
24…リブ(補強部)
【特許請求の範囲】
【請求項1】
サイドドアと、該サイドドアの下部に車体前後方向に延設して取付けられたガーニッシュとを備え、
上記サイドドアの閉止状態で、上記ガーニッシュの下縁部を、車幅方向内側に延設し、車体側弾性シール部材に外側方から当接させる自動車のドアガーニッシュ構造であって、
上記ガーニッシュ下縁部の上面には、車幅方向内側上方に向って延びる上方指向部と、
該上方指向部から、車幅方向内側下方に向って湾曲または傾斜して延びる下方指向部とが、
ガーニッシュ下縁部に沿って延設されたことを特徴とする
自動車のドアガーニッシュ構造。
【請求項2】
上記サイドドアはヒンジ式サイドドアであって、
ヒンジ側のガーニッシュ下縁部は、車幅方向内側に略水平に延びるヒンジ側水平部を備えた
請求項1記載の自動車のドアガーニッシュ構造。
【請求項3】
上記サイドドアはヒンジ式サイドドアであって、
開放端側のガーニッシュ下縁部は、車幅方向内側に略水平に延びる開放端側水平部を備えた
請求項1または2記載の自動車のドアガーニッシュ構造。
【請求項4】
上記上方および下方の両指向部は、ガーニッシュ下縁部に沿う方向に延びると共に、車体前後方向の中間が高く、車体前後方向の前後が低くなるように上下に傾斜している
請求項1〜3の何れか1項に記載の自動車のドアガーニッシュ構造。
【請求項5】
上記ガーニッシュ下縁部の下面側には、補強部が形成された
請求項1〜4の何れか1項に記載の自動車のドアガーニッシュ構造。
【請求項1】
サイドドアと、該サイドドアの下部に車体前後方向に延設して取付けられたガーニッシュとを備え、
上記サイドドアの閉止状態で、上記ガーニッシュの下縁部を、車幅方向内側に延設し、車体側弾性シール部材に外側方から当接させる自動車のドアガーニッシュ構造であって、
上記ガーニッシュ下縁部の上面には、車幅方向内側上方に向って延びる上方指向部と、
該上方指向部から、車幅方向内側下方に向って湾曲または傾斜して延びる下方指向部とが、
ガーニッシュ下縁部に沿って延設されたことを特徴とする
自動車のドアガーニッシュ構造。
【請求項2】
上記サイドドアはヒンジ式サイドドアであって、
ヒンジ側のガーニッシュ下縁部は、車幅方向内側に略水平に延びるヒンジ側水平部を備えた
請求項1記載の自動車のドアガーニッシュ構造。
【請求項3】
上記サイドドアはヒンジ式サイドドアであって、
開放端側のガーニッシュ下縁部は、車幅方向内側に略水平に延びる開放端側水平部を備えた
請求項1または2記載の自動車のドアガーニッシュ構造。
【請求項4】
上記上方および下方の両指向部は、ガーニッシュ下縁部に沿う方向に延びると共に、車体前後方向の中間が高く、車体前後方向の前後が低くなるように上下に傾斜している
請求項1〜3の何れか1項に記載の自動車のドアガーニッシュ構造。
【請求項5】
上記ガーニッシュ下縁部の下面側には、補強部が形成された
請求項1〜4の何れか1項に記載の自動車のドアガーニッシュ構造。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2013−86669(P2013−86669A)
【公開日】平成25年5月13日(2013.5.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−229531(P2011−229531)
【出願日】平成23年10月19日(2011.10.19)
【出願人】(000003137)マツダ株式会社 (6,115)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年5月13日(2013.5.13)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年10月19日(2011.10.19)
【出願人】(000003137)マツダ株式会社 (6,115)
【Fターム(参考)】
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