説明

自動車内装材用合成皮革

【課題】本革並みにべたつき感が少なく、かつしっとりした触感を持つ自動車内装材用合成皮革を提供する。
【解決手段】本発明の自動車内装材用合成皮革は、単層あるいは多層構造を有する不織布又は織編物の基材層上に、単層あるいは多層の合成樹脂からなる樹脂層を形成した合成皮革であって、前記樹脂層の少なくとも1層に吸湿性微粒子を含有し、最表皮となる層に有機系微粒子を有し、かつ発汗シミュレーション装置測定による掌内湿度の発汗開始1分後の上昇(ΔH)が18%RH以下、かつ1.47N/cm2荷重時の平均表面摩擦係数(MIU)が0.20以上、表面粗さ(SMD)が2.5μm以下であり、低荷重(0.098N/cm2)時圧縮変位量が0.16mm以上であることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、合成皮革でありながら、掌内湿度の上昇レベルを本革と同等に抑え、本革並みにしっとりした感触を持つ自動車内装材用合成皮革に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車内装材に一般的に用いられている合成皮革、いわゆる塩ビレザーは、皮革調外観や価格、耐磨耗性、成形性等に優れており、現在、車両用途、特に自動車内装材、例えば大衆自動車の天井表皮材、ドアトリム材、インパネ材、カーシート表皮材等として、大量に利用されている。
【0003】
しかしながら、塩ビレザーは、ポリ塩化ビニルを構成成分とすることから、廃棄後焼却の際のダイオキシン発生が懸念されており、近年の環境問題の高まりから、使用が制限されつつある。
【0004】
また、塩ビレザー以外の合成皮革も検討されている。例えば、不織布等の基材層上に、合成樹脂からなる表皮層を形成し、吸放湿吸水発熱性繊維又は吸放湿吸水発熱性粉末を含有する層を少なくとも1層以上有する人造皮革(特許文献1(請求項1)参照);繊維質基体にセリシンを含む合成樹脂層を積層した合成皮革(特許文献2(請求項1)参照);基布に、熱可塑性ポリウレタン系エラストマー発泡層及び熱可塑性ポリウレタン系エラストマー非発泡層を順次に設けてなる合成皮革(特許文献3(請求項1)参照);金属めっき合成繊維を含有する合成繊維ウエブを交絡結合して成る不織布基材に、導電性パウダーを含むポリウレタン樹脂を含浸、発泡して成る合成皮革(特許文献4(請求項1)参照);所定の単位面積当りの重量引張強さを有し、多成分連続フィラメントが繊度<0.2dtexを有する極細連続フィラメントに分割されかつ固定されている不織布にポリマーを含浸した合成皮革(特許文献5(請求項1)参照)等が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2002−266113号公報
【特許文献2】特開2006−307414号公報
【特許文献3】特開2006−077349号公報
【特許文献4】特開平06−184951号公報
【特許文献5】特表2003−511568号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、従来の一般的な合成皮革からなる自動車内装材は、手や脚等の肌で触れた際の触感が好ましくなく、べたつきを感じ、肌への貼り付きさえ感じる、という点で十分ではなかった。すなわち、合成皮革でありながら、掌内湿度の上昇レベルを本革と同等に抑え、本革並みにしっとりした触感を持つ自動車内装材用合成皮革はこれまで得られていなかった。
【0007】
本発明の目的は、前記の従来の問題点を解決することにあり、合成皮革でありながら本革並みにしっとりした触感を持つ自動車内装材用合成皮革を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らが鋭意検討した結果、しっとりした感覚を得るには、(a)べとつき感が少なく、(b)触ったときの表面がサラサラと滑る感覚とは異なり、表面がぬめり、少々抵抗感があり、(c)凹凸感が小さくザラツキが無く、キメが細かくなめらかで、(d)押し柔らかい、ことが重要であることを見出した。上述の内容をそれぞれ達成するための方策を見出し、「べたつき感」、「ぬめり感・抵抗感」、「なめらかでキメの細かさ」、「やわらかさ」の4点からしっとりとした自動車内装材用合成皮革の発明に到達したものである。
【0009】
本発明の自動車内装材用合成皮革は、単層あるいは多層構造を有する不織布又は織編物の基材層上に、単層あるいは多層の合成樹脂からなる樹脂層を形成した合成皮革であって、前記樹脂層の少なくとも1層に吸湿性微粒子を含有し、人が触れる側の最表皮となる層に有機系微粒子を含有し、発汗シミュレーション装置測定による掌内湿度の発汗開始1分後の上昇(ΔH)が18%RH以下、1.47N/cm2荷重時の平均表面摩擦係数(MIU)が0.20以上、表面粗さ(SMD)が2.5μm以下、低荷重(0.098N/cm2)時圧縮変位量が0.16mm以上であることを特徴とする。これにより、しっとりした触感を有する合成皮革が得られる。
【0010】
前記有機系微粒子のガラス転移点(Tg)は、−10℃以下であることが好ましく、さらに、前記有機系微粒子の平均粒子径は1μm〜30μm、前記樹脂層への前記有機系微粒子の含有量は0.5g/m2〜50g/m2であることが好ましい。これらの構成にすることにより、合成皮革を触った瞬間に、よりしっとりした感触を付与することができる。
【0011】
前記吸湿性微粒子の平均粒子径は1μm〜50μmが好ましい。また、前記樹脂層の吸湿性微粒子の含有量は、2g/m2〜50g/m2であることが好ましい。前記吸湿性微粒子としては、その50質量%以上がアクリル系架橋重合体を原料としたものが好適である。
【0012】
前記基材層は、上層を構成する繊維構造体と下層を構成する繊維構造体とが機械的交絡により積層された2層構造を有する不織布であって、上層の目付量が40g/m2〜150g/m2、上層を構成する繊維の繊度が0.0001dtex〜0.5dtexであり、下層の目付量が40g/m2〜200g/m2、下層を構成する繊維の繊度が1.5dtex〜10.0dtexであるものが好ましい。
【0013】
前記基材層が単層あるいは多層構造を有する不織布である場合、該不織布は、密度が120kg/m3〜250kg/m3、破裂強度が400N〜1000Nかつ剛軟度が1mm〜120mmであることが好ましい。
【発明の効果】
【0014】
本発明の自動車内装材用合成皮革は、樹脂層の少なくとも1層に吸湿性微粒子を含有し、最表皮となる層に有機系微粒子を有し、かつ発汗シミュレーション装置測定による掌内湿度の発汗開始1分後の上昇(ΔH)が18%RH以下、かつ1.47N/cm2荷重時の平均表面摩擦係数(MIU)が0.20以上、表面粗さ(SMD)が2.5μm以下であり、低荷重(0.098N/cm2)時圧縮変位量が0.16mm以上であるため、本革並みにしっとりした触感を実現することができる。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の詳細を説明する。
本発明の自動車内装材用合成皮革は、単層あるいは多層構造を有する不織布又は織編物の基材層上に、単層あるいは多層の合成樹脂からなる樹脂層を形成した合成皮革であって、前記樹脂層の少なくとも1層に吸湿性微粒子を含有し、最表皮となる層に有機系微粒子を有し、かつ発汗シミュレーション装置測定による掌内湿度の発汗開始1分後の上昇(ΔH)が18%RH以下、かつ1.47N/cm2荷重時の平均表面摩擦係数(MIU)が0.20以上、表面粗さ(SMD)が2.5μm以下であり、低荷重(0.098N/cm2)時圧縮変位量が0.16mm以上であることを特徴とする。なお、本明細書において、「多層」とは2層以上を意味する。
【0016】
実際に人が自動車内装材を触った際に感じるべたつき感は、肌と内装材の間に介在する水分(汗)が処理されないことが原因と推定される。そのため、出願人は、発汗シミュレーション装置試験法(スキンモデル試験法)を使用し、実用との対応関係を検討した。その結果、樹脂層に吸湿性微粒子を含有させ、掌内湿度の発汗開始1分後の上昇(ΔH)を18%RH以下に抑えることにより、べたつき感を抑えられることを見出した。さらに、最表皮層に有機系微粒子を含有させ、平均表面摩擦係数(MIU)、表面粗さ(SMD)を調整するとともに、低荷重(0.098N/cm2)時圧縮変位量を制御することで、しっとりした触感を有する合成皮革が得られることを見出し、本発明を完成した。
【0017】
前記試験法は、常に一定の水蒸気と熱が内装材表層に供給されるという実用環境を考慮したモデル評価法である。この評価法は、発汗シミュレーション測定装置(東洋紡績株式会社製)を用い、水供給量:140g/m2・h、熱板温度:37℃、試料−熱板距離:0.5cm、環境温湿度:20℃×65%RH、発汗パターン:試験開始より5分発汗を実施し、熱板と試料間の空間の温湿度を測定するものである。
【0018】
本発明の自動車内装材用合成皮革のΔHは、18%RH以下であり、好ましくは16%RH以下、より好ましくは15%RH以下である。前記ΔHが18%RHを超えると、自動車内装材用合成皮革としてのべたつき感が強くなり、しっとり感を失って行く。なお、前記ΔHの下限は、特に限定されないが0%RHである。
【0019】
また、自動車内装材用合成皮革の1.47N/cm2荷重時の平均表面摩擦係数(MIU)は0.20以上であり、より好ましくは0.22以上、さらに好ましくは0.25以上である。平均表面摩擦係数とは、合成皮革の風合いを示す指標であり、値が大きい程表面に抵抗感、ヌメリ感が大きくなることを示す。前記平均表面摩擦係数が0.20以上であれば、自動車内装材用合成皮革のしっとり感がより優れたものとなる。前記平均表面摩擦係数の上限は特に限定されないが、通常1.0である。
【0020】
また、自動車内装材用合成皮革の表面粗さ(SMD)は、2.5μm以下であり、より好ましくは2.2μm以下、さらに好ましくは2.0μm以下である。表面粗さ(SMD)とは、合成皮革の表面風合い(例えば、ザラツキ、粗さ、凹凸感)を示す指標であり、値が小さい程ザラツキが小さく、粗さ、凹凸感が無く、なめらかでキメが細かい感覚が得られ、しっとり感がより優れたものとなる。前記表面粗さ(SMD)の下限は特に限定されないが、通常1.0μm以上である。
【0021】
また、自動車内装材用合成皮革の低荷重(0.098N/cm2)時圧縮変位量は0.16mm以上であり、より好ましくは、0.18mm以上、さらに好ましくは0.20mm以上である。低荷重(0.098N/cm2)時圧縮変位量とは、合成皮革の柔らかさを示す指標であり、値が大きいほど変位量が大きく、柔らかい感覚が得られることを示す。人が物体に触れた際、少しの押し込み力で変位量が大きい物体の方を柔らかいと感じる傾向を見出したことから、低荷重(0.098N/cm2)時の圧縮変位量を柔らかさの指標とした。前記低荷重(0.098N/cm2)時圧縮変位量の上限は特に限定されないが、通常1.0mm以下である。
【0022】
自動車内装材用合成皮革の目付量は、250g/m2以上が好ましく、より好ましくは300g/m2以上、さらに好ましくは350g/m2以上である。上限としては、700g/m2以下が好ましく、より好ましくは650g/m2以下、さらに好ましくは600g/m2以下である。目付量が上記範囲内であれば、機械的特性に優れ、かつ軽量な自動車内装材用合成皮革となる。
【0023】
基材層
単層あるいは多層構造を有する不織布又は織編物の基材層を構成する繊維としては、熱可塑性樹脂からなる合成繊維が好ましい。また、構成繊維として、必要に応じて天然繊維や再生繊維、半合成繊維、無機繊維等を混綿、あるいは混繊してもよい。
【0024】
前記合成繊維を形成する熱可塑性樹脂としては、繊維形成能を有するものであれば特に限定されず、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリトリメチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、及びこれらを主体とし、さらにイソフタル酸を共重合成分として用いた低融点ポリエステル等のポリエステル類;ポリプロピレン、高密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン、プロピレンと他のα−オレフィンとの二〜三元共重合体等のポリオレフィン類;ポリアミド6、ポリアミド66等のポリアミド類;もしくはこれらの混合物や共重合体等を用いることができる。
【0025】
このような熱可塑性樹脂から得られる合成繊維は、単一成分系のものの他、芯鞘型や偏心芯鞘型、並列型、海島型等の多成分系であってもよく、繊維断面の形状にも特に制限はない。また、必要に応じてつや消し剤、顔料、酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、結晶核剤、難燃剤、防ダニ剤等の各種添加剤を含有させることも可能である。
【0026】
前記基材層の目付量は、50g/m2以上が好ましく、より好ましくは100g/m2以上、さらに好ましくは150g/m2以上であり、450g/m2以下が好ましく、より好ましくは400g/m2以下、さらに好ましくは350g/m2以下が好ましい。基材層の目付量が上記範囲内であれば、機械的特性に優れ、軽量な自動車内装材用合成皮革が得られる。
【0027】
前記基材層として不織布を用いる場合、上層を構成する繊維構造体と下層を構成する繊維構造体とが機械的交絡により積層された2層構造を有する不織布が好適である。特に、上層の目付量が40g/m2〜150g/m2、上層を構成する繊維の繊度が0.0001dtex〜0.5dtexであり、下層の目付量が40g/m2〜200g/m2、下層を構成する繊維の繊度が1.5〜10.0dtexである2層構造を有する不織布が好ましい。
【0028】
前記基材層に用いられる原料不織布は、上層、下層共に、短繊維不織布あるいは長繊維不織布のいずれでもよいが、より良好な機械的特性を確保する点から長繊維不織布が好ましい。その製造方法については特に限定されないが、好ましい方法としては、長繊維不織布であればスパンボンド法やメルトブロー法等が、短繊維不織布であればカーディング法やエアレイ法等が挙げられる。
【0029】
前記基材層となる原料不織布の上層は繊度を0.5dtex以下とすることにより、緻密性が高く、骨立ちが殆どない、消費者が好む風合い、柔軟性に優れた基材となる。上層基材の繊度の下限は特に限定されないが、0.0001dtex以上であることが強度を保つという観点から好ましい。また、生産性等を考慮した場合、上層基材のより好ましい繊度は0.01dtex〜0.4dtex、更に好ましくは0.1dtex〜0.3dtexの範囲である。
【0030】
しかしながら、上層を構成する不織布のみでは、重厚感、高級感に欠け、自動車用内装材としての強度等の基本的な機械的性能にも欠ける。そのため、下層として繊度1.5dtex〜10.0dtexの不織布を積層し、一体化することで機械的特性に優れ、柔軟・軽量で骨立ちが極めて少なく、重厚感、高級感のある自動車内装材用合皮が得られるものである。下層基材の繊度は、1.5dtex〜10.0dtexの範囲であれば、嵩高性と柔軟性を兼ね備えた基材が得られる。よりバランスの良い基材を得るには、下層基材の繊度は1.5dtex〜8.0dtex、更には2.0dtex〜6.0dtexの範囲であることが好ましい。
【0031】
上層基材の目付量は、40g/m2〜150g/m2であることが好ましく、より好ましくは50g/m2〜140g/m2、更に好ましくは60g/m2〜120g/m2である。目付量が40g/m2以上であれば、緻密化による骨立ち防止効果が極めて有効に発揮され、150g/m2以下であれば、下層とのニードルパンチやウォーターパンチ等による機械的交絡が効果的になされるからである。
【0032】
下層基材の目付量は、40g/m2〜200g/m2であることが好ましく、より好ましくは50g/m2〜180g/m2、更に好ましくは60g/m2〜160g/m2である。目付量を40g/m2以上とすることにより、基材の重厚感、高級感が得られ、200g/m2以下であれば、上層の緻密化による優れた骨立ち防止性を阻害せず、風合いに優れ、かつ重厚な基材が得られるからである。
【0033】
また、下層基材の初期応力は経、緯ともに0.1N/5cm〜40N/5cmであることが好ましい。上述の通り、繊度の小さい上層では自動車用内装材としての機械的性能を満たさないため、下層にて上層を補強する効果を得る必要がある。また、下層の初期応力が上記該当範囲にあれば、上層の柔軟性と相俟って、上層下層間に強い交絡が得られ、一体性の高い積層基材が得られる。より柔軟かつ重厚感、高級感のある積層基材を得るには、下層のより好ましい初期応力は1N/5cm〜20N/5cm、更に好ましくは3N/5cm〜10N/5cmの範囲である。
【0034】
上層、下層が積層された基材としての密度は、120kg/m3〜250kg/m3であることが好ましく、より好ましくは130kg/m3〜240kg/m3、更に好ましくは140kg/m3〜230kg/m3の範囲である。基材の密度が120kg/m3未満の場合、緻密性が不足するため骨立ち発生の要因となる。また250kg/m3を超える場合、厚みが低下し、重厚感、高級感が損なわれるため、好ましくない。
【0035】
また、上層、下層が積層された基材の破裂強度は400N〜1000Nが好ましく、より好ましくは500N〜900Nの範囲である。400N以上あれば、例えば、合成皮革に加工後、自動車内装材のシート表皮材のとして用いられた場合においても、展張時に破れるという問題が生じ難く、用途範囲が拡大する。
【0036】
さらに、上層、下層が積層された基材の剛軟度は1mm〜120mmであることが好ましく、より好ましくは50mm〜120mm、更に好ましくは70mm〜100mmである。1mm〜120mmの柔軟性を備えていれば、自動車内装材用合成皮革として加工した場合においても、基材の柔軟性を活かした最終製品に仕上がるからである。
【0037】
樹脂層
樹脂層は、合成樹脂から形成されており、単層でもよいし、多層であってもよい。各樹脂層を形成する合成樹脂としては、例えば、ポリウレタン樹脂、ポリアミド樹脂、ポリアクリレート樹脂、ポリ酢酸ビニル樹脂、ポリアクリロニトリル樹脂等が挙げられる。これらの合成樹脂は、単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、ポリウレタン樹脂が好適である。
【0038】
具体的なポリウレタン樹脂の構成成分としては、一般にポリウレタン樹脂、ポリウレタンウレア樹脂と呼ばれるものであり、分子量400から4000のポリアルキレンエーテルグリコール、末端に水酸基を有するポリエステルポリオール、ポリε−カプロラクトンポリオール、又は、ポリカーボネートポリオール等の単独あるいは混合物を有機ジイソシアネートと反応させて得られるものであり、必要に応じて2個の活性水素を有する化合物で鎖延長させて得られるものである。
【0039】
前記ポリアルキレンエーテルグリコールとしては、例えば、ポリテトラメチレンエーテルグリコール、ポリプロピレングリコール、ポリエチレングリコール、グリセリンプロピレンオキシド付加物、末端にエチレノキサイドを付加したポリエーテルポリオール、ビニルモノマーグラフト化ポリエーテルポリオールが挙げられる。前記ポリエステルポリオールとしては、例えば、エチレングリコール、ブチレングリコール、へキシレングリコール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、ネオペンチルグリコール等のアルキレングリコールとコハク酸、グルタール酸、アジピン酸、セバシン酸、マレイン酸、フマール酸、フタル酸、トリメリット酸等のカルボン酸類とを末端がヒドロキシル酸となるように反応して与えられるものが挙げられる。ポリカーボネートポリオールとしては、例えば、ポリエチレンカーボネートジオール、ポリテトラメチレンカーボネートジオール、ポリヘキサメチレンカーボネートジオールが挙げられる。
【0040】
有機ジイソシアネートとしては、例えば、2,4−及び2,6−トルイレンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、1,5−ナフタレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート等の芳香族イソシアネート;1,6−ヘキサメチレンジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタン−4,4’−ジイソシアネート、3−イソシアネートメチル−3,5,5’−トリメチルシクロヘキシルイソシアネート、2,6−ジイソシアネートメチルカプロエート等の脂肪族イソシアネート;が挙げられ、これらは単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0041】
前記鎖延長剤としては、ヒドラジン、エチレンジアミン、テトラメチレンジアミン、水、ピペラジン、イソホロンジアミン、エチレングリコール、ブチレングリコール、へキシレングリコール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、ネオペンチルグリコール等、あるいはジメチロールプロピオン酸、アミノエタンスルホン酸へのエチレンオキサイド付加物等の親水性向上を可能とするグリコール類、ジアミン類を単独あるいは混合して用いることができる。
【0042】
前記ポリウレタン樹脂としては、耐加水分解性に優れることから、構成成分としてポリカーボネートポリオールを用いたポリカーボネート系ポリウレタン樹脂が好ましい。また、特に、合成皮革の最表面に存在する樹脂層には、合成皮革の耐摩耗性を向上させるために、シリコーン変性されたポリカーボネート系ポリウレタン樹脂を用いることが好ましい。
【0043】
前記シリコーン変性型ポリカーボネート系ポリウレタンは、分子鎖中にオルガノポリシロキサン骨格を有するか、分子鎖末端にイソシアネート基と非反応性の官能基、例えば、トリアルキルシリル基、トリアリールシリル基等により封止されたオルガノポリシロキサン骨格を有するポリカーボネート系ポリウレタンである。
【0044】
吸湿性微粒子
上記吸湿性微粒子とは、その名の通り、吸湿性を有する微粒子である。具体的には、吸湿率が、5質量%超、好ましくは20質量%、より好ましくは35質量%以上である。吸湿率の上限は特に限定されないが65質量%程度である。
このような微粒子の好ましいものとしては、アクリル系架橋重合体を原料として得られるものがあり、本発明においては、吸湿性微粒子の50質量%以上(好ましくは70質量%以上、より好ましくは90質量%以上)がアクリル系架橋重合体を原料としたものであることが好ましく、吸湿性微粒子がアクリル系架橋重合体を原料としたもののみからなることが好ましい。
【0045】
この「アクリル系架橋重合体」とは、(メタ)アクリル酸;(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル等の(メタ)アクリル酸エステル;(メタ)アクリル酸アミド;等のアクリル酸系モノマーや、(メタ)アクリロニトリル等の少なくとも重合性ビニル基とニトリル基を有するアクリロニトリル系モノマーに、必要に応じて他の共重合単量体を加えた共重合単量体組成物を共重合したアクリル系重合体に、架橋構造を導入したものを意味する。
【0046】
上記のアクリル系重合体に用いるアクリル酸系モノマー、あるいはアクリロニトリル系モノマーは、1種を単独で使用してもよく、2種以上を同時に用いてもよい。また、上記の他の共重合単量体としては、最終的に得られる吸湿性微粒子の作用を損なうものでなければ特に限定されず、例えばハロゲン化ビニル、ハロゲン化ビニリデン、p−スチレンスルホン酸塩等のスルホン酸含有モノマー及びその塩、スチレン、酢酸ビニル等のビニル系化合物やビニリデン系化合物等が使用可能である。
【0047】
架橋構造の導入は、上記の共重合単量体組成物に、さらに架橋構造を形成する共重合成分として2以上の重合性ビニル基を有する化合物を加え、これを共重合する方法が採用できる。2以上の重合性ビニル基を有する化合物としては、トリアリルイソシアヌレート、トリアリルシアヌレート、ジビニルベンゼン、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、メチレンビスアクリルアミド等が好ましく用いられる。
【0048】
また、アクリル系重合体が、アクリロニトリル系モノマーに、必要に応じて他の共重合単量体を加えた共重合単量体組成物を共重合して得られるアクリロニトリル系重合体である場合は、ヒドラジン系化合物処理により、架橋構造を導入することも可能である。この場合に使用できるヒドラジン系化合物としては、ヒドラジン;水加ヒドラジン、硫酸ヒドラジン、塩酸ヒドラジン、硝酸ヒドラジン、臭素酸ヒドラジン、ヒドラジンカーボネート等のヒドラジン塩類;エチレンジアミン、硫酸グアジニン、塩酸グアジニン、硝酸グアジニン、リン酸グアジニン、メラミン等のヒドラジン誘導体等が挙げられる。
【0049】
上記の他の共重合単量体、2以上の重合性ビニル基を有する化合物、ヒドラジン系化合物は、夫々1種単独で、又は2種以上を同時に使用することができる。
【0050】
上記のアクリル系架橋重合体はいずれも、カルボキシル基を有するか、カルボキシル基に変性できる官能基を有するものであり、該カルボキシル基、あるいはカルボキシル基に変性できる官能基を塩型カルボキシル基に化学変換せしめることで、吸放湿性微粒子が得られる。
【0051】
このような吸放湿性微粒子としては、例えば、アクリロニトリルを50質量%以上含有する共重合単量体組成物を共重合したアクリロニトリル系重合体にヒドラジン系化合物により架橋構造を導入したアクリロニトリル系架橋重合体、あるいはアクリロニトリルを50質量%以上含有し、さらに2以上の重合性ビニル基を有する化合物等を含有する共重合単量体組成物を共重合したアクリロニトリル系架橋重合体のニトリル基を加水分解により塩型カルボキシル基に化学変換せしめたものであって、該塩型カルボキシル基を1.0mmol/g以上含有するもの等が挙げられる。
【0052】
より好ましい態様としては、(A)アクリロニトリルを85質量%以上含有する共重合単量体組成物を共重合したアクリロニトリル系重合体に、窒素含有量の増加が0.1〜15.0質量%となるようにヒドラジン系化合物処理により架橋構造を導入したアクリロニトリル系架橋重合体の残存しているニトリル基を加水分解により塩型カルボキシル基に化学変換せしめたものであって、該塩型カルボキシル基を1.0mmol/g以上有する吸放湿性微粒子;(B)アクリロニトリルを50質量%以上含有し、さらにジビニルベンゼン又はトリアリルイソシアヌレート、及び他の共重合単量体を含有する共重合単量体組成物を共重合して架橋構造を導入したアクリロニトリル系架橋重合体のニトリル基を加水分解により塩型カルボキシル基に化学変換せしめたものであって、該塩型カルボキシル基を2.0mmol/g以上含有する吸放湿性微粒子、等が挙げられる。
【0053】
なお、(A)の吸湿性微粒子において「窒素含有量の増加」とは、原料となるアクリロニトリル系重合体中の窒素含有量(質量%)と、該樹脂にヒドラジン系化合物処理による架橋構造導入した後の窒素含有量(質量%)の差を意味する。この窒素含有量が上記範囲を下回ると、加水分解工程において有機微粒子が溶解し、塩型カルボキシル基を導入することができない。他方、上記範囲を超えるとニトリル基の1.0mmol/g以上を塩型カルボキシル基に変換できない。また、アクリロニトリル系重合体にヒドラジン系化合物による架橋を導入する方法は、該架橋による窒素含有量の増加が0.1〜15.0質量%となる手段である限り特に限定されないが、ヒドラジン系化合物濃度1〜80質量%、温度50〜120℃で0.2〜10時間処理する手段が工業的に好ましい。
【0054】
吸湿性微粒子としては、上記のアクリロニトリル系架橋重合体を原料とするものの他、アクリル酸エステル5質量%以上含有し、さらにジビニルベンゼン又はトリアリルイソシアヌレート、及び他の共重合単量体を含有する共重合単量体組成物を共重合して架橋構造を導入したアクリル酸エステル系架橋重合体のメチルエステル部を加水分解により塩型カルボキシル基に化学変換せしめたものであって、該塩型カルボキシル基を1.0mmol/g以上含有する吸湿性微粒子等も好ましく使用できる。
【0055】
吸湿性微粒子の粒径は、自動車内装材用合成皮革の機械的性質等を損なうものでなければ、特に限定されるものではなく、用途に応じて適宜選択可能である。ただし、人が直接触れるハンドルやシートの表皮材へ用いられる場合、表面粗さが消費者に好まれない場合があるため、平均粒子径は50μm以下であることが好ましく、より好ましくは30μm以下、さらに好ましくは20μm以下である。なお、吸湿性微粒子の平均粒子径の下限は特に限定されないが、1μm以上が好適である。
【0056】
吸湿性微粒子の自動車内装材用合成皮革の樹脂層中の含有量(樹脂層が多層の場合は、全樹脂層に含まれる合計含有量)は2g/m2以上が好ましく、より好ましくは5g/m2以上である。2g/m2以上含有されていることにより、人が自動車内装材を触った際に、肌と内装材の間に介在する水分(汗)が素早く合成皮革に吸湿され、べたつき感を感じないものに仕上がる。前記含有量は特に限定されるものではないが、合成皮革の仕上がり、コストパフォーマンス等から、50g/m2以下であることが好ましく、より好ましくは30g/m2以下、さらに好ましくは、20g/m2以下である。
【0057】
前記吸湿性微粒子は、樹脂層の少なくとも1層に含有されていればよい。樹脂層が多層である場合、吸湿性微粒子は、いずれか1層にのみ含有させてもよいし、2層以上の層に含有させてもよい。樹脂層が多層である場合、最表層中の吸湿性微粒子の含有量は20g/m2以下が好ましく、より好ましくは10g/m2以下、さらに好ましくは5g/m2以下である。最表層中の吸湿性微粒子含有量を少なくすることで、合成皮革のしっとり感がより良好となる。
【0058】
また、最表層に吸湿性微粒子を含有させる場合、最表層中の吸湿性微粒子と有機系微粒子との合計含有量は、50g/m2以下であることが好ましく、より好ましくは30g/m2以下、さらに好ましくは、20g/m2以下である。こうすることで、最表層に含まれる粒子数が多くなりすぎず、合成皮革のザラツキ感をより低減できる。
【0059】
樹脂層が多層である場合、吸湿性微粒子を含有させる層は特に限定されないが、最表層以外に含有させる(最表層が吸湿性微粒子を含有しない)ことが好ましく、最表層に隣接する層に含有させることがより好ましい。なお、最表層に吸湿性微粒子を含有させない場合、吸湿性微粒子を含む層の上に形成される樹脂層は、透湿性又は吸湿性を有することが好ましい。これにより、水分が樹脂層に取り込まれ、吸湿性微粒子に吸収される。
【0060】
有機系微粒子
上記有機系微粒子とは、炭素原子を構造の基本骨格にもつ化合物からなるウレタン系、アクリル系、ナイロン系、オレフィン系、ポリテトラフルオロエチレン系等の微粒子やシリコーン系微粒子等、様々な有機系微粒子が挙げられるが特に制限は無い。ただし、有機系微粒子は前記吸湿性微粒子と異なり、吸湿性が低いものである。具体的には、吸湿性が5質量%以下、好ましくは3質量%以下である。
また、本発明においては、前記有機系微粒子のガラス転移点(Tg)は、−10℃以下が好ましく、より好ましくは−20℃以下である。有機系微粒子のガラス転移点(Tg)が上記範囲であれば、自動車内装材用合成皮革のしっとり感が増すだけでなく、表面の艶消し効果も得られ、意匠性が一層向上する。なお、有機系微粒子に代えて、シリカ等の無機系微粒子を使用すると、表面の艶消し効果は得られるものの、表面の触感がサラサラと滑るものとなり、しっとりした感覚が得られない。
【0061】
有機系微粒子のガラス転移点(Tg)と、有機系微粒子が含まれる樹脂層を構成する樹脂のガラス転移点(Tgr)との差(Tg−Tgr)は、−100℃〜+60℃であることが好ましい。この範囲内であると、人が触れた際に抵抗になりにくく好ましい。前記差(Tg−Tgr)は、より好ましくは−40℃〜+30℃であり、さらに好ましくは−20℃〜20℃である。この範囲内であれば、人が触れた際の違和感が低減され、しっとり感が増すので好ましい。なお、有機系微粒子が含有される層を形成する合成樹脂のガラス転移点(Tgr)は、−80℃以上が好ましく、より好ましくは−60℃以上、さらに好ましくは−50℃以上であり、0℃以下が好ましく、より好ましくは−5℃以下、さらに好ましくは−10℃以下である。
【0062】
前記有機系微粒子の粒子径は、自動車内装材用合成皮革の機械的性質等を損なうものでなければ、特に限定されるものではなく、用途に応じて適宜選択可能である。ただし、人が直接触れる部材へ用いられる場合、表面粗さが消費者に好まれない場合があるため、平均粒子径は30μm以下であることが好ましく、より好ましくは20μm以下、さらに好ましくは10μm以下である。なお、有機系微粒子の平均粒子径の下限は特に限定されないが、1μm以上が好適である。
【0063】
前記樹脂層への前記有機系微粒子の含有量(樹脂層が多層の場合は、全樹脂層に含まれる合計含有量)は50g/m2以下が好ましい。前記含有量は特に限定されるものではないが、合成皮革の仕上がり、コストパフォーマンス等から、より好ましくは30g/m2以下、さらに好ましくは20g/m2以下である。なお、有機系微粒子の前記含有量の下限は特に限定されないが、0.5g/m2以上が好ましく、より好ましくは1g/m2以上、さらに好ましくは3g/m2以上である。前記量含有することにより、合成皮革を触った瞬間に、よりしっとり感を付与することができる。
【0064】
有機系微粒子の形状は特に規定するものではなく、球形、平板、棒状、不定形、アスペクト比の著しく異なるもの等、如何なる形状においても問題なく使用可能である。また、ガラス転移点が消失しなければ、耐溶剤性を付与するために架橋することもできる。また、接着性等の機能性を付与するために有機系微粒子に脂肪酸類、シランカップリング剤、チタネート等で表面処理してもよい。
【0065】
前記有機系微粒子は、最表皮となる樹脂層に含まれていればよい。有機系微粒子を、最表皮以外の樹脂層にも含有させてもよいが、最表皮となる樹脂層のみに含有させることが好ましい。
【0066】
本発明の自動車内装材用合成皮革の態様としては、例えば、(i)単一の樹脂層を有し、該樹脂層が吸湿性微粒子及び有機系微粒子を含む態様;(ii)多層の樹脂層を有し、少なくとも一層に吸湿性微粒子を含有し、最表層に有機系微粒子を含む態様;(iii)多層の樹脂層を有し、少なくとも一層は吸湿性微粒子及び有機系微粒子を含有せず、少なくとも一層に吸湿性微粒子を含有し、最表層に有機系微粒子を含む態様;が挙げられる。
【0067】
本発明の自動車内装材用合成皮革は、基材層上に樹脂層を形成することで製造できる。樹脂層を形成する方法は特に限定されず、溶剤によって、液状化した合成樹脂を塗布した後に溶剤を乾燥させて樹脂層を形成する方法、液状の樹脂を塗布した後にその樹脂を反応させて形成する方法等の乾式法;合成樹脂からなる樹脂フィルムを貼り付けるラミネート法;液状の樹脂を塗布した後に凝固浴に導き凝固させる湿式法;等が挙げられる。また、合成皮革の表面に必要に応じてエンボス加工やシボ加工を施し、所望の外観を得ることが可能である。
【0068】
なお、上記ラミネート法を採用する場合には、樹脂フィルムを貼り付けるために用いる接着剤としては、表皮層との接着力を考慮し、ポリウレタン系接着剤を用いるのが好ましい。ポリウレタン系接着剤は、例えば、ポリエーテル系、ポリエステル系、ポリカーボネート系、又は、これらの複合型が挙げられる。接着剤は、硬化物の100%モジュラスが0.5MPa〜5MPaであるものが好ましく、耐屈曲性を考慮すると、0.5MPa〜3MPaであるものが特に好ましい。
【0069】
本発明の自動車内装材用合成皮革は、合成皮革でありながら、本革と同等の掌内湿度の上昇レベルに抑えるほど吸湿特性に優れており、しっとりした触感を有する自動車内装材用合成皮革である。そのため上記特性を活かし、自動車用内装材、特にステアリング表皮、コンソールBOX表皮、シフトカバー材、インパネ材、ドアトリム材、天井表皮材、カーシート表皮材等に有用である。無論、用途との関係で要求性能に合うべき他の素材と組み合わせで用いることもでき、本発明の性能を低下させない範囲で加工を施し、形状を付与することもできる。さらに、製品化させる任意の段階で難燃化、防虫抗菌化、耐熱化、撥水撥油化、着色、芳香性等の機能を薬剤添加等により付与することも可能である。
【実施例】
【0070】
以下に実施例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明は、下記実施例によって限定されるものではなく、前・後記の趣旨に適合しうる範囲で適宜変更して実施することも可能であり、それらはいずれも本発明の技術的範囲に包含される。実施例において用いた測定方法は下記のとおりである。以下において、含有量ないし使用量を表す「%」及び「部」は、特記しないかぎり質量基準である。
【0071】
1−1.掌内湿度
発汗シミュレーション測定装置を用い、水供給量:140g/m2・h、熱板温度:37℃、試料−熱板距離:0.5cm、環境温湿度:20℃×65%RH、発汗パターン:試験開始より5分発汗を実施し、熱板と試料間の空間の湿度を測定した。測定結果から、試験開始前の湿度に対する発汗1分経過時の湿度の上昇(ΔH)を求めた。
なお、発汗シミュレーション装置は、発汗孔を有する基体及び産熱体からなる産熱発汗機構、発汗孔に水を供給するための送水機構、産熱体の温度を制御する産熱制御機構、温湿度センサーから構成されている。基体は黄銅製で面積120cm2であり、発汗孔が6個設けられており、面状ヒーターからなる産熱体により一定温度に制御される。送水機構はチューブポンプを用いており、一定水量を基体の発汗孔に送り出す。基体表面には、厚み0.1mmのポリエステルマルチフィラメント織物からなる模擬皮膚が貼り付けられており、これにより発汗孔から吐出された水が基体表面に広げられ、発汗状態が作り出される。基体の周囲には高さ0.5cmの外枠が設けられており、試料を基体から0.5cm離れた位置にセットできる。温湿度センサーは基体と試料(合成皮革)との間の空間に設置され、基体が発汗状態の時の「基体と試料と外枠で囲まれた空間」の湿度を測定する。
【0072】
1−2.平均表面摩擦係数(特殊法)
カトーテック(株)製の表面摩擦係数測定器(KES−SE)を用いて、平均表面摩擦係数(MIU)を測定した。測定条件は、標準摩擦子(指紋タイプ)、摩擦時の荷重1.47N/cm2(150gf/cm2)、測定感度L(感度100g/V)とした。摩擦距離、摩擦速度等その他の条件は装置仕様通りである(摩擦距離30mm、解析距離20mm、試料移動速度1mm/sec)。
【0073】
1−3.低荷重(0.098N/cm2)時圧縮変位量
カトーテック(株)製の圧縮試験機(KES−FB3)を用いて、試料の圧縮変位量を測定した。用いた加圧板は2cm2の円形であり、0.02mm/secのスピードで0.49N/cm2まで圧縮し、その時の0.098N/cm2圧縮時の変位量を計測した。
【0074】
1−4.表面粗さ(SMD)
カトーテック(株)製の表面試験機(KES−FB4)を用いて、試料表面の上下厚み変動を測定した。測定条件は5mm幅の0.5mm径ピアノ線に0.098Nの荷重をかけ、摩擦距離30mm、解析距離20mm、試料移動速度1mm/secとした。
【0075】
1−5.モニターによるべたつき感、柔らかさ、ザラツキ感、及びしっとり感、の一対比較評価
10人のモニターにより、試料のべたつき感、柔らかさ、ザラツキ感、及びしっとり感を一対比較法により判定した。
25℃、60%RHの環境下に制御した恒温恒湿室に設置したカーシートにモニターを座らせ、カーシートの左右座面に比較対象となる2種の試料を各々敷いた。次いで、カーシート座面上にある左右各試料上に、モニターの左右の掌を1分間置いた。そして、1分後のべたつき感、柔らかさ、ザラツキ感、及び総合評価としてのしっとり感、を判定した。左右どちらの試料がよりべたつかないか、柔らかいか、ザラザラしていないか、さらに総合評価としてしっとりしているか、を判定し、全試料の組合せにて一対比較判定後、サーストンの一対比較法に準拠し、べたつき感、柔らかさ、ザラツキ感、しっとり感を−2〜+2点で標準化して得点化した。なお、べたつき感は得点が高いほどべたつかず、柔らかさは得点が高いほど柔らかい感覚が高く、ザラツキ感は得点が高いほどザラザラしていない感覚が高いことを示す。それぞれ点数が高い方がしっとりしている感覚に近づくが、それぞれ単独ではしっとり感を表すことは出来ず、総合評価としてしっとり感を評価した。しっとり感も点数が高い方が、しっとりしている感覚が高いことを示す。
【0076】
1−6.外観
目視にて、合成皮革の表面状態を確認し、欠点、凹凸ムラ、塗りむらがないかを確認した。
【0077】
1−7.平均粒子径
島津製作所製レーザー回折式粒度分布測定装置「SALD−200V」を使用して水を分散媒として測定し、体積基準で表した粒子径分布から、平均粒子径を求めた。
【0078】
1−8.塩型カルボキシル基量
十分乾燥した試料1gを精秤し(X(g))、これに200mlの水を加えた後、50℃に加温しながら1mol/l塩酸水溶液を添加してpH2とすることで、試料に含まれるカルボキシル基を全てH型カルボキシル基とした。次いで、0.1mol/lNaOH水溶液で常法に従って滴定曲線を求めた。該滴定曲線からH型カルボキシル基に消費されたNaOH水溶液消費量(Y(ml))を求め、次式によって試料中に含まれる全カルボキシル基量を算出した。
(全カルボキシル基量(mmol/g))=0.1×Y/X
別途、上述の全カルボキシル基量測定操作中の1mol/l塩酸水溶液添加によるpH2への調整をすることなく同様に滴定曲線を求め、試料中に含まれるH型カルボキシル基量を求めた。これらの結果から次式により塩型カルボキシル基量を算出した。
(塩型カルボキシル基量(mmol/g))=(全カルボキシル基量)−(H型カルボキシル基量)
【0079】
1−9.粒子の吸湿率
粒子を十分に乾燥させ、絶乾状態の質量(W0)を測定した。次に、この粒子を、20℃、65%RHの環境にて24時間調湿して、吸湿状態の質量(W1)を測定した。各状態の質量から、次式によって粒子の吸湿率を算出した。
粒子の吸湿率(質量%)=100×(W1−W0)/W0
【0080】
1−10.不織布の密度
JIS−L 1913(2010)に準拠して求められた目付量及び厚みから1m3当りの重量に換算しg/m3として密度とした。具体的には、厚さ測定器により荷重2kPaにて厚さを測定し、目付量を厚さで除することにより密度を求めた。
【0081】
1−11.不織布の初期応力
JIS−L 1913(2010)に準拠して測定された引張強度における5%伸長時の応力を初期応力とした。具体的には、幅5cm、長さ30cmの試験片を5枚準備し、それぞれについて引張試験を行い平均値を求めた。引張試験は、定速伸長形引張試験機につかみ間隔を20cmにして取り付け、10cm/minの引張速度で試験片が切断するまで荷重を加えた。
【0082】
1−12.不織布の破裂強度
JIS−L 1913(2010)破裂強さB法(定速伸長形法)に準拠した。具体的には直径8cmの試験片を5枚採取し、先端曲率半径が1.25cm、直径2.5cmの押し棒を100mm/minの定速加圧させた際の試験片を突き破る強さを測定しこれらの平均値を算出した。
【0083】
1−13.不織布の剛軟度
JIS−L 1913(2010)に準拠した。具体的には、MD方向に20cm、CD方向に2.5cm角の試験片をCD方向の試験片全幅1m当たり、6箇所において採取し41.5°カンチレバー法に基づき裏表、計12点にて測定しこれらの平均値を算出した。該方法はMD方向の剛軟度結果であり、CD方向に関しては試験片方向を直交させ上述の如く、測定した結果である。
【0084】
2.基材の作製
2−1.不織布(製造例1、製造例12の基材)
上層基材として、ポリアミド6とポリエチレンテレフタレートから構成される割繊前繊度0.24dtex中空花弁型割繊複合繊維である目付量80g/m2である未割繊の短繊維複合割繊不織布を準備した。下層基材として、公知のスパンボンド法によりポリブチレンテレフタレート樹脂(以下「PBT」と略す。)を、繊度が2.0dtexとなるようエアー元圧を調整し延伸させたフィラメント群を目付量が100g/m2となるよう速度調整された樹脂ネット上に堆積させ、その後エンボスローラーにより仮接着加工を施しスパンボンド不織布を得た。得られたスパンボンド不織布の初期応力はタテ方向18.0N/5cm、ヨコ方向7.5N/5cmであった。
その後、公知のニードルパンチ法により、下層スパンボンド不織布からニードルが挿入されるように、上層分割繊維不織布と下層のスパンボンド不織布を繊維交絡させることによって、複合不織布を得た。さらに、その後、該上層基材と該下層基材とをウォーターパンチにより、高水圧処理を行い、割繊繊維を分割及び積層させることができ、かつ剥離することなく上層と下層を交絡して目的の積層不織布を得た。得られた積層不織布の密度は172kg/m3、破裂強度は760N、剛軟度はタテ方向110mm、ヨコ方向81mmであった。
【0085】
2−2.編物(製造例2〜11、13〜18の基材)
84dtex/36fのポリエステルフィラメントを使用し、目付量が300g/m2のトリコット編物を得た。
【0086】
3.吸湿性微粒子
3−1.吸湿性微粒子No.1(平均粒子径;3μm)
アクリロニトリル450部、アクリル酸メチル50部及び水1181部を2リットルのオートクレーブ内に仕込み、更に重合開始剤としてジ−tert−ブチルパーオキサイドを単量体全量に対して0.5%添加した後、密閉し、次いで攪拌下において120℃の温度にて30分間重合した。反応終了後、攪拌を継続しながら90℃まで冷却することにより平均粒子径が2μmの重合体粒子を得た。次いで、得られた重合体粒子100部に60%水加ヒドラジン60部及び水850部を混合し、90℃、3時間の条件でヒドラジン処理を行うことにより架橋を導入し、さらに、112部の水酸化ナトリウムを添加し、120℃、2時間反応を行った。得られた粒子を水洗、洗浄、乾燥後、分級し、平均粒子径3μmのアクリル系架橋重合体微粒子を得た。該粒子の塩型カルボキシル基量は7.0mmol/gであった。また、ヒドラジン処理による窒素含有量の増加は1.5質量%であった。得られた吸湿性微粒子No.1の吸湿率は、35〜65質量%であった。
【0087】
3−2.吸湿性微粒子No.2(平均粒子径;30μm)
アクリロニトリル55部、アクリル酸メチル10部、ジビニルベンゼン35部からなるモノマー混合物を、0.5部の過硫酸アンモニウムを含む水溶液300部に添加し、次いでピロ亜硫酸ナトリウム0.6部を加え、攪拌機つきの重合槽で65℃、2時間重合した。得られた粒子15部を水85部中に分散し、これに水酸化ナトリウム10部を添加し、90℃で2時間加水分解反応を行った後、洗浄、脱水、乾燥を行い、アクリル系架橋重合体微粒子を得た。該粒子の平均粒子径は30μm、塩型カルボキシル基量は6.3mmol/gであった。得られた吸湿性微粒子No.2の吸湿率は、35〜65質量%であった。
【0088】
3−3.PMMA粒子No.1(平均粒子径;3μm)
メタクリル酸メチル90部、エチレングリコールジメタクリレート10部、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)1部、ポリビニルアルコール10部、水300部を混合、ホモミキサーで撹拌することによってモノマー分散液を作成し、50℃で2時間重合した。得られた粒子を水洗、脱水、乾燥した後、分級処理することにより、平均粒子径3μmのポリメタクリル酸メチル系微粒子を得た。
【0089】
4.有機系微粒子
4−1.有機系微粒子No.1(ウレタン系微粒子 根上工業株式会社製アートパール(登録商標)シリーズ Tg:−52℃、平均粒子径:6μm、吸湿率3質量%以下)
4−2.有機系微粒子No.2(ウレタン系微粒子 根上工業株式会社製アートパールシリーズ Tg:−13℃、平均粒子径:6μm、吸湿率3質量%以下)
4−3.有機系微粒子No.3(ウレタン系微粒子 根上工業株式会社製アートパールシリーズ Tg:−52℃、平均粒子径35μm、吸湿率3質量%以下)
【0090】
5.無機系微粒子No.1 タルク (日本タルク株式会社製 ミクロエースシリーズ 平均粒子径:5μm)
【0091】
6.合成樹脂
6−1.ウレタン樹脂
ウレタン樹脂としては、100%モジュラスが2〜10MPaである無黄変ポリカーボネート型ポリウレタンを使用した。
【0092】
6−2.高滑性ウレタン樹脂
高滑性ウレタン樹脂としては、100%モジュラスが5〜10MPaであるシリコーン変性無黄変ポリカーボネート型ポリウレタン(Tgr:−40℃〜−20℃)を使用した。
【0093】
7.合成皮革の製造
7−1.製造例1
上記にて得られた不織布を水性溶液のディップニップ法で質量比18%のポリビニルアルコール(PVA)樹脂を付着せしめた。これらはシート自身に寸法安定性を付与し、ウレタン樹脂との置換を実施するためである。
ポリウレタン樹脂溶液を、ナイフコーターで塗布し、60℃の温水でPVA樹脂を置換洗浄し、120℃の熱風で乾燥した。乾燥後ウレタン塗布目付量としては80g/m2となり、湿式合成皮革を得た。湿式合成皮革トータルで目付量260g/m2、厚さ0.8mmとした。さらに、離型紙上に溶剤に溶かしたウレタン樹脂に吸湿性微粒子No.1を混合した樹脂をコンマコーターで、規定量塗布し、乾燥させて作製した乾式層となるフィルムを、規定量の接着剤を塗布した上記湿式合成皮革に貼り合わせ、その後、エージング処理を行い、樹脂層を積層した。ここで、基材と樹脂層とのトータルで目付量308g/m2、厚さ1.1mmとした。なお、接着剤には、ポリウレタン系接着剤を使用した。
さらに高滑性ウレタン樹脂に有機系微粒子No.1を混合し、上記にて形成した樹脂層上にグラビアコートにて規定量付与し、最表層を形成した。離型紙を用い、本革様シボ加工を施し合成皮革を得た。
【0094】
7−2.製造例2
上記にて得られた編物を水性溶液のディップニップ法で質量比18%のポリビニルアルコール(PVA)樹脂を付着せしめた。これらはシート自身に寸法安定性を付与し、ウレタン樹脂との置換を実施するためである。
ポリウレタン樹脂溶液を、ナイフコーターで塗布し、60℃の温水でPVA樹脂を置換洗浄し、120℃の熱風で乾燥した。乾燥後ウレタン塗布目付量としては80g/m2となり、湿式合成皮革を得た。湿式合成皮革トータルで目付量380g/m2、厚さ0.7mmとした。さらに、離型紙上に溶剤に溶かしたウレタン樹脂に吸湿性微粒子No.1を混合した樹脂を、コンマコーターで規定量塗布し、乾燥させて作製した乾式層となるフィルムを、規定量の接着剤を塗布した上記湿式合成皮革に貼り合わせ、その後、エージング処理を行い、樹脂層を積層した。ここで、基材と樹脂層とのトータルで目付量428g/m2、厚さ0.8mmとした。なお、接着剤には、ポリウレタン系接着剤を使用した。
前記高滑性ウレタン樹脂に有機系微粒子No.1を混合し、上記にて形成した樹脂層上にグラビアコートにて規定量付与し、最表層を形成した。離型紙を用い、本革様シボ加工を施し合成皮革を得た。
【0095】
7−3.製造例3〜7
前記ウレタン樹脂に混合する微粒子の種類、含有量と、高滑性ウレタン樹脂に混合する微粒子の種類、含有量を変更したこと以外は製造例2と同様にして合成皮革を得た。
【0096】
7−4.製造例8
前記ウレタン樹脂に微粒子を混合せず、高滑性ウレタン樹脂に混合する微粒子の種類、含有量を変更したこと以外は製造例2と同様にして合成皮革を得た。
【0097】
7−5.製造例9
前記ウレタン樹脂に混合する微粒子の種類、含有量を変更し、高滑性ウレタン樹脂に微粒子を混合しないこと以外は製造例2と同様にして合成皮革を得た。
【0098】
7−6.製造例10
溶剤に溶かしたウレタン樹脂に吸湿性微粒子No.1、有機系微粒子No.1を混合した樹脂を、離型紙上にコンマコーターで規定量塗布し、乾燥させて作製したフィルムを、接着剤を塗布した上記編地に貼り合わせ、その後、エージング処理を行い、樹脂層を形成した。ここで、基材と樹脂層とのトータルで、目付量354g/m2、厚さ0.9mmとした。離型紙を用い、本革様シボ加工を施し合成皮革を得た。
【0099】
7−7.製造例11
溶剤に溶かしたウレタン樹脂に吸湿性微粒子No.1を混合した樹脂を、離型紙上にコンマコーターで規定量塗布し、乾燥させて作製したフィルムを、接着剤を塗布した上記編地に貼り合わせ、その後、エージング処理を行い、樹脂層を形成した。ここで、基材と樹脂層とのトータルで、目付量348g/m2、厚さ0.8mmとした。前記高滑性ウレタン樹脂に有機系微粒子No.1を混合し、上記にて形成した樹脂層上にグラビアコートにて規定量付与し、最表層を形成した。離型紙を用い、本革様シボ加工を施し合成皮革を得た。
【0100】
7−8.製造例12
上記にて得られた不織布を水性溶液のディップニップ法で質量比18%のポリビニルアルコール(PVA)樹脂を付着せしめた。これらはシート自身に寸法安定性を付与し、ウレタン樹脂との置換を実施するためである。
ポリウレタン樹脂溶液を、ナイフコーターで塗布し、60℃の温水でPVA樹脂を置換洗浄し、120℃の熱風で乾燥した。乾燥後ウレタン塗布目付量としては80g/m2となり、湿式合成皮革を得た。湿式合成皮革トータルで目付量260g/m2、厚さ0.8mmとした。さらに、離型紙上に溶剤に溶かしたウレタン樹脂にPMMA微粒子No.1を混合した樹脂をコンマコーターで、規定量塗布し、乾燥させて作製した乾式層となるフィルムを、規定量の接着剤を塗布した上記湿式合成皮革に貼り合わせ、その後、エージング処理を行い、樹脂層を積層した。ここで、基材と樹脂層とのトータルで目付量308g/m2、厚さ1.1mmとした。なお、接着剤には、ポリウレタン系接着剤を使用した。
前記高滑性ウレタン樹脂を、上記にて形成した樹脂層上にグラビアコートにて規定量付与し、最表層を形成した。離型紙を用い、本革様シボ加工を施し合成皮革を得た。
【0101】
7−9.製造例13
上記にて得られた編物を水性溶液のディップニップ法で質量比18%のポリビニルアルコール(PVA)樹脂を付着せしめた。これらはシート自身に寸法安定性を付与し、ウレタン樹脂との置換を実施するためである。
ポリウレタン樹脂溶液を、ナイフコーターで塗布し、60℃の温水でPVA樹脂を置換洗浄し、120℃の熱風で乾燥した。乾燥後ウレタン塗布目付量としては80g/m2となり、湿式合成皮革を得た。湿式合成皮革トータルで目付量380g/m2、厚さ0.7mmとした。さらに、離型紙上に溶剤に溶かしたウレタン樹脂にPMMA微粒子No.1を混合した樹脂を、コンマコーターで規定量塗布し、乾燥させて作製した乾式層となるフィルムを、規定量の接着剤を塗布した上記湿式合成皮革に貼り合わせ、その後、エージング処理を行い、樹脂層を積層した。ここで、基材と樹脂層とのトータルで目付量428g/m2、厚さ0.8mmとした。なお、接着剤には、ポリウレタン系接着剤を使用した。
前記高滑性ウレタン樹脂に有機系微粒子No.1を混合し、上記にて形成した樹脂層上にグラビアコートにて規定量付与し、最表層を形成した。離型紙を用い、本革様シボ加工を施し合成皮革を得た。
【0102】
7−10.製造例14
前記高滑性ウレタン樹脂に混合する微粒子の種類、含有量を変更した以外は、製造例12と同様にして合成皮革を得た。
【0103】
7−11.製造例15
上記にて得られた編物を水性溶液のディップニップ法で質量比18%のポリビニルアルコール(PVA)樹脂を付着せしめた。これらはシート自身に寸法安定性を付与し、ウレタン樹脂との置換を実施するためである。
ポリウレタン樹脂溶液を、ナイフコーターで塗布し、60℃の温水でPVA樹脂を置換洗浄し、120℃の熱風で乾燥した。乾燥後ウレタン塗布目付量としては80g/m2となり、湿式合成皮革を得た。湿式合成皮革トータルで目付量380g/m2、厚さ0.7mmとした。さらに、離型紙上に溶剤に溶かしたウレタン樹脂に吸湿性微粒子No.1を混合した樹脂を、コンマコーターで規定量塗布し、乾燥させて作製した乾式層となるフィルムを、規定量の接着剤を塗布した上記湿式合成皮革に貼り合わせ、その後、エージング処理を行い、樹脂層を積層した。ここで、基材と樹脂層とのトータルで目付量428g/m2、厚さ0.8mmとした。なお、接着剤には、ポリウレタン系接着剤を使用した。
前記高滑性ウレタン樹脂に無機系微粒子No.1を混合し、上記にて形成した樹脂層上にグラビアコートにて規定量付与し、最表層を形成した。離型紙を用い、本革様シボ加工を施し合成皮革を得た。
【0104】
7−12.製造例16
前記高滑性ウレタン樹脂に微粒子を混合しないこと以外は、製造例15と同様にして合成皮革を得た。
【0105】
7−13.製造例17
前記ウレタン樹脂に微粒子を混合せず、高滑性ウレタン樹脂に有機系微粒子No.1を混合したこと以外は、製造例15と同様にして合成皮革を得た。
【0106】
7−14.製造例18
前記ウレタン樹脂、高滑性ウレタン樹脂に微粒子を混合しないこと以外は、製造例15と同様にして合成皮革を得た。
【0107】
上記製造例1〜18で得た合成皮革の構成及び掌内湿度、平均表面摩擦係数、表面粗さ、低荷重時圧縮変位量の評価結果を表1に示した。
【0108】
【表1】

【0109】
また、モニターによるべたつき感、柔らかさ、ザラツキ感、しっとり感、の主観評価結果を表2に示した。べたつき感は正の得点でべたつかない感覚、柔らかさ、しっとり感は正の得点でそれぞれ柔らかい感覚、しっとりする感覚、が得られており、ザラツキ感は正の得点でざらつかない感覚が得られることを示す。
【0110】
【表2】

【0111】
表1より、製造例1〜11、15、16の1分後の掌内湿度の上昇(ΔH)の値はいずれも18%RH以下であることが確認された。表2のモニターの主観評価においても、製造例1〜11、15、16においては、べたつかない感覚が得られている。これに対し、吸湿性微粒子が混合されていない製造例12、13、14、17、18においては、1分後の掌内湿度の上昇(ΔH)の値が18%RHを超えており、モニター主観評価においても、べたつき感の評価は悪い傾向が見られている。
【0112】
平均摩擦係数(MIU)は、製造例1〜11、13、17において0.2以上の値を示し、抵抗感のある表面に仕上がっており、しっとり感につながる表面に仕上がっていることがわかる。これに対して、製造例12、14、15、16、18においては、MIUが0.2未満となる。有機微粒子は、比較的柔らかいため、MIUを高める効果を有するが、有機微粒子が存在しないもの、あるいは無機微粒子を存在させたものは、MIUを高くする効果が少なく、特に無機系微粒子を存在させたものは、サラサラと滑る傾向があるため、しっとりと感じられない表面感に仕上がっている。
【0113】
表面粗さ(SMD)は、全ての製造例において、2.5μm以下の値を示しており、いずれの試料も良好な表面粗さレベルに仕上がっていることがわかる。モニターの主観評価においても、ザラツキ感はない結果が得られている。
【0114】
低荷重圧縮変位量においては、製造例1〜11、13、17において、0.16mm以上の値を示しており、低荷重圧縮時の変位が大きいことがわかる。モニターの主観評価においても、製造例1〜11、13、17においては、柔らかさは普通以上の結果が得られている。これに対して、製造例12、14、15、16、18においては、変位量が0.16mm未満であり、モニター主観評価でも、マイナスの得点となっており、柔らかくないと感じられていることがわかる。有機微粒子を添加することにより、低荷重は圧縮変異量が大きくなる理由は定かでは無いが、有機系微粒子が比較的柔らかいことと樹脂内で分散しているため、応力が分散されるために柔らかい結果が得られると考えられる。無機微粒子は分散しているが比較的硬いために、応力の分散が見られないと考えられる。
【0115】
上記結果(ΔH:1分後の掌内湿度の上昇分、MIU:特殊法による平均表面摩擦係数、SMD:表面粗さ、低荷重圧縮変位量、べたつき感・柔らかさ・ザラツキ感・しっとり感:モニターによる主観結果)に加えて、外観、コストパフォーマンスを4段階(◎:大変良好、○:良好、△:普通、×:不良)で評価した。結果を表3に示す。
【0116】
【表3】

【0117】
表3より、製造例1〜11は、1分後の掌内湿度の上昇(ΔH)の値が18%RH以下であり、平均摩擦係数(MIU)が0.2以上の値を示し、表面粗さ(SMD)が2.5μm以下、低荷重圧縮変位量が0.16mm以上となっており、外観、コストパフォーマンスも問題がなく、モニターの主観評価においても、べたつき感がなく、柔らかく、ザラツキ感がなく、しっとりしている感覚が得られていることがわかる。これに対して、製造例12、14、18は、SMDは良好な値を示しておりザラツキ感は無いが、ΔHの上昇が高く、べたつき感があり、MIU値が低いことからサラサラした表面に仕上がっており、また、低荷重圧縮変位量が小さいことから柔らかさも得られておらず、しっとり感は得られていない。製造例13、17は、MIU値、SMD値、低荷重圧縮変位量は良好な値を示し、ザラツキが無く、柔らかい傾向は得られているが、ΔHの上昇が高く、べたつき感があるためしっとりした感覚は得られていない。製造例15、16は、ΔH、SMDにおいて良好な値を示しており、べたつき感、ザラツキ感がなく仕上がっているが、MIU、低荷重圧縮変位量がともに小さく、サラサラして、やわらかくないと感じられており、しっとり感は得られていない。
【産業上の利用可能性】
【0118】
本発明の自動車内装材用合成皮革は、自動車用内装材、特にステアリング表皮、コンソールBOX表皮、シフトカバー材、インパネ材、ドアトリム材、天井表皮材、カーシート表皮材等に有用である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
単層あるいは多層構造を有する不織布又は織編物の基材層上に、単層あるいは多層の合成樹脂からなる樹脂層を形成した合成皮革であって、
前記樹脂層の少なくとも1層に吸湿性微粒子を含有し、最表皮となる樹脂層に有機系微粒子を含有し、
発汗シミュレーション装置測定による掌内湿度の発汗開始1分後の上昇(ΔH)が18%RH以下、
1.47N/cm2荷重時の平均表面摩擦係数(MIU)が0.20以上、
表面粗さ(SMD)が2.5μm以下であり、
低荷重(0.098N/cm2)時圧縮変位量が0.16mm以上であることを特徴とする自動車内装材用合成皮革。
【請求項2】
前記有機系微粒子のガラス転移点(Tg)が、−10℃以下である請求項1に記載の自動車内装材用合成皮革。
【請求項3】
前記有機系微粒子の平均粒子径が、1μm〜30μmである請求項1又は2に記載の自動車内装材用合成皮革。
【請求項4】
前記樹脂層の有機系微粒子の含有量が、0.5g/m2〜50g/m2である請求項1〜3のいずれか一項に記載の自動車内装材用合成皮革。
【請求項5】
前記吸湿性微粒子の平均粒子径が、1μm〜50μmである請求項1〜4のいずれか一項に記載の自動車内装材用合成皮革。
【請求項6】
前記樹脂層の吸湿性微粒子の含有量が、2g/m2〜50g/m2である請求項1〜5のいずれか一項に記載の自動車内装材用合成皮革。
【請求項7】
前記吸湿性微粒子の50質量%以上が、アクリル系架橋重合体を原料としたものである請求項1〜6のいずれか一項に記載の自動車内装材用合成皮革。
【請求項8】
前記基材層が、上層を構成する繊維構造体と下層を構成する繊維構造体とが機械的交絡により積層された2層構造を有する不織布であり、
上層の目付量が40g/m2〜150g/m2、上層を構成する繊維の繊度が0.0001dtex〜0.5dtexであり、
下層の目付量が40g/m2〜200g/m2、下層を構成する繊維の繊度が1.5dtex〜10.0dtexである請求項1〜7いずれか一項に記載の自動車内装材用合成皮革。
【請求項9】
前記基材層が単層あるいは多層構造を有する不織布であって、
該不織布は、密度が120kg/m3〜250kg/m3、破裂強度が400N〜1000Nかつ剛軟度が1mm〜120mmである請求項1〜8のいずれか一項に記載の自動車内装材用合成皮革。

【公開番号】特開2012−214942(P2012−214942A)
【公開日】平成24年11月8日(2012.11.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−197691(P2011−197691)
【出願日】平成23年9月9日(2011.9.9)
【出願人】(000003160)東洋紡績株式会社 (3,622)
【出願人】(000222255)東洋クロス株式会社 (24)
【Fターム(参考)】