説明

自己組織化オレフィン重合触媒

本発明は、式(I):Lの遷移金属化合物を含む自己組織化オレフィン重合触媒に関し、Mは周期律表の3〜11族からなる群より選択される遷移金属であり、Xは、H、ハロゲン、CN、任意に置換されていてもよいN(R、OH、任意に置換されていてもよいC〜C20アルキル、任意に置換されていてもよいC〜C20アルコキシからなる群より独立して選択され、Rは、任意に置換されていてもよいC〜C20アルキル、任意に置換されていてもよいC〜C20アリール及びハロゲンからなる群より独立して選択され、qは少なくとも2の整数であり、mは少なくとも2の整数であり、nは(I)を電気的に中性にする整数であり、Lは独立して、少なくとも二つの結合した配位単位を有するリガンドであり、各配位単位は異なる遷移金属と結合する。本発明はまた、本発明の遷移金属化合物を用いたオレフィン重合方法及び、この重合方法から得られるポリオレフィンに関する。最後に、本発明は、遷移金属化合物中に存在する新規のリガンドL及びリガンドLの調製方法にも関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自己組織化オレフィン重合触媒、オレフィンの重合方法、及びそれらから得られるポリオレフィンに関する。本発明はまた、自己組織化オレフィン重合触媒を構築するリガンド系を構成する化合物及びその調製方法にも関する。
【背景技術】
【0002】
2005年には約100,000,000トンのポリオレフィンが全世界で製造されているように、ポリオレフィンの製造は、産業の非常に重要な部門である。オレフィン重合の触媒は、調製方法において重要な役割を果たし、その結果、高性能オレフィン重合触媒の開発に至っている。さらに、これは非常に注目の研究分野である。伝統的な高性能マルチサイト・チーグラー・ナッタ触媒、たとえば、TiCl/MgCl(n=3,4)[1](特許文献1〜3、非特許文献1,2)、及びシングルサイト4族メタロセン触媒が広く研究され、産業で利用[2](特許文献4,5、非特許文献3〜6)されてから、過去10年で、非常に関心を集めているN、O原子などのヘテロ原子配位を用いた非シクロペンタジエニルシングルサイト触媒が非常に注目されている[3](非特許文献7〜9)。今日まで、いくつかの高性能触媒、たとえば、α−ジイミン−Ni(II)/Pd(II)[4](特許文献6、非特許文献10〜13)、2,6−ジイミノピリジン−Fe(II)[5](特許文献7,8、非特許文献14〜18)、フェノキシ−イミン−Ni[6](特許文献9,10、非特許文献19,20)及びフェノキシ−イミン−Ti/Zr触媒[7](特許文献11〜16、非特許文献21〜24)が同定されている(図1参照)。
【0003】
非シクロペンタジエニル触媒のうち、フェノキシ−イミン系4族触媒[7](特許文献11〜16、非特許文献21〜24)(図2及び図3中のモデル1を参照)は、本来、高い活性を有し、同族の金属を有するので、学界及び産業界の両方で多くの注目を集めている。4族系の伝統的な高性能チーグラー・ナッタ触媒及びシングルサイト4族メタロセン触媒は、産業界でうまく応用されている。しかし、この種類の非シクロペンタジエニル触媒は、主な理由として、特に、工業で用いられる高温下では、担持リガンドが共触媒混合物中のアルミニウムへ移行するために(図4参照)「8c、8d」(非特許文献27,28)、限定された寿命を有する。場合によっては、触媒は数分以内で急速に崩壊する。その結果、これらの触媒は、通常、低温(たとえば、室温)及び/又はほんの1〜15分間の短い反応時間[7](特許文献11〜16、非特許文献21〜24)で研究された。このことは、この種類の触媒の工業での利用の大きな妨げとなる。
【0004】
フェノキシ−イミンリガンドベースのチタン及びジルコニウム触媒(図2参照)は、寿命が限定されているので、テトラデンテートリガンドを用いてこの問題を解決する多大な努力がなされ、これらのリガンドは、配位モデル2のさらに安定な触媒を形成すると予想された(スキーム3を参照)。Fujita[7j](非特許文献24)と共同研究者等は、モデル2触媒(スキーム3を参照)を形成するC鎖架橋フェノキシ−イミン単位(n=2〜6、図5を参照)のテトラデンテートリガンドを調査し、その結果、長いブリッジのリガンド(n=5又は6)は5分の実験で高い活性を示し、一方、短いブリッジ(n=2〜4)のリガンドは、非常に低い活性を示すことを示したが、触媒の急速な失活の問題は取り組まれなかった。
【0005】
GibsonとScottは、フェノキシ−イミン−Ti/Zr触媒が、5分以内ではその初期活性は非常に高いが、限定された寿命を有することを示した。彼らはまた、チタン及びジルコニウム組み入れたテトラデンテートリガンドが、二つのイミンがN結合した、図3に示す配位モデル2を有するさらに安定な触媒を形成できるとも考えている[8](非特許文献25〜28)。しかし、実験結果は、テトラデンテートリガンドIII及びXII(図6を参照)がオレフィン重合触媒を提供しないことを示した。その理由は、主に、金属結合アルキル/ポリマー鎖のイミンC=N単位[8a〜c](非特許文献25〜27)中への破壊的な1,2−移動挿入のためである。その後、Scott及び共同研究者[8b、8c](非特許文献26,27)は、ジルコニウムサリチルアルジミナート錯体のR位(図6のリガンドXIを参照)でアルキル基を導入すると、分子内1,2−移動挿入の立体的ブロッキングのためにエチレン重合用長寿命触媒(トルエン中1時間の試験)をもたらすが、この立体的ブロッキングは場合によっては新規ラジカル触媒分解機構を促進し、リガンドIベースの対応する触媒と比較して、はるかに低い活性をもたらすことを見いだした。加えて、リガンドIV〜Xのジルコニウム錯体はすべて、おそらくはフェノレート2位[8c](非特許文献27)で立体的に嵩高くないために、活性を有さない。彼らのさらなる研究で、Gibson及びScott[8d](非特許文献28)は、さらに多くのテトラデンテートリガンドを調査した(図6中のXIII〜XVIIを参照)。チタン錯体に関して、[(XIII)TiCl]は、二つのクロリドリガンドはトランス配置にあるので、MAOで処理した場合、エチレン重合について活性を有さない。しかし、おそらくはジアミン骨格における環のゆがみによってもたらされる向上したイミン反応性のために、cis−錯体[(XIV)TiCl]も非生産的である。錯体[(XV)TiCl]は微量のポリマーしか生成しなかった。錯体[(XVI)TiCl]及び[(XVII)TiCl]は25℃で2×10KgPEmol触媒−1−1bar−1を超える著しく改善された活性を示したが(トルエン中1時間の試験)、全体的な生産性は、さらに急速な触媒分解のために、50℃ではむしろ低い。ジルコニウム錯体に関して、錯体[(XV)ZrCl]は微量のポリマーしか生成せず、錯体[(XVI)ZrCl]及び[(XVII)ZrCl]は低い活性しか示さなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】米国特許第3642746号明細書
【特許文献2】国際公開第02/26838号
【特許文献3】国際公開第02/48207号
【特許文献4】国際公開第96/00243号
【特許文献5】国際公開第96/11960号
【特許文献6】国際公開第96/23010号
【特許文献7】国際公開第98/27124号
【特許文献8】国際公開第99/12981号
【特許文献9】国際公開第98/42664号
【特許文献10】国際公開第98/30609号
【特許文献11】欧州特許第0950667号明細書
【特許文献12】欧州特許第1013674号明細書
【特許文献13】米国特許第6875718号明細書
【特許文献14】米国特許第6897176号明細書
【特許文献15】米国特許第7053159号明細書
【特許文献16】米国特許第7109284号明細書
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】T. J. Pullukat, R. E. Hoff, Catal. Rev. Sci. Eng.1999, 41, 389-428.
【非特許文献2】H. K. Luo, R. G. Tang, K. J. Gao, J. Cat. 2002, 210, 328-339.
【非特許文献3】H. Sinn, W. Kaminsky, H. J. Vollmer, R. Woldt, Angew. Chem. Int. Ed. 1980, 19, 390-392.
【非特許文献4】H. H. Brintzinger, D. Fischer, R. Muelhaupt, B. Rieger, R. M. Waymouth, Angew. Chem. Int. Ed. 1995, 34, 1143-1170.
【非特許文献5】W. Kaminsky, J. Chem. Soc., DaltonTrans. 1998, 1413-1418.
【非特許文献6】W. Kaminsky, J. Polym. Sci.: Part A: Polym. Chem. 2004, 42, 3911-3921.
【非特許文献7】G. J. P. Britovsek, V. C. Gibson, D. F. Wass, Angew. Chem. Int. Ed. 1999, 38, 428-447.
【非特許文献8】S. D. Ittel, L. K. Johnson, M. Brookhart, Chem. Rev. 2000, 100, 1169-1203.
【非特許文献9】V. C. Gibson, S. K. Spitzmesser, Chem. Rev. 2003, 103, 283-315.
【非特許文献10】L.K. Johnson, C.M. Killian, M. Brookhart, J. Am. Chem. Soc. 1995, 117, 6414-6415.
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【非特許文献13】D.P. Gates, S.A. Svejda, E. Onate, C. M. Killian, L. K. Johnson, P. S. White, M. Brookhart, Macromolecules 2000, 33, 2320-2334.
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【非特許文献15】G. J. P. Britovsek, V. C. Gibson, B. S. Kimberley, P. J. Maddox, S. J. McTavish, G. A. Solan, A. J. P. White, D. J. Williams, Chem. Commun. 1998, 849-850.
【非特許文献16】G. J. P. Britovsek, V. C. Gibson, O. D. Hoarau, S. K. Spitzmesser, A. J. P. White, D. J. Williams, Inorg. Chem. 2003, 42, 3454-3465.
【非特許文献17】G. J. P. Britovsek, M. Bruce, V. C. Gibson, B. S. Kimberley, P. J. Maddox, S. Mastroianni, S. J. McTavish, C. Redshaw, G. A. Solan, S. Stroemberg, A. J. P. White, D. J. Williams, J. Am. Chem. Soc. 1999, 121, 8728-8740.
【非特許文献18】B.L. Small, M. Brookhart, Macromolecules 1999, 32, 2120-2130.
【非特許文献19】T. R. Younkin, E. F. Connor, J. I. Hendreson, S. K. Friedrich, R. H. Grubbs, D. A. Bansleben, Science 2000, 287, 460-462.
【非特許文献20】C. Wang, S. K. Friedrich, T. R. Younkin, R. T. Li, R. H. Grubbs, D. A. Bansleben, M. W. Day, Organometallics 1998, 17, 3149-3151.
【非特許文献21】S. Matsui, M. Mitani, J. Saito, Y. Tohi, H. Makio, N. Matsukawa, Y. Takagi, K. Tsuru, M. Nitabaru,.T. Nakano, H. Tanaka, N. Kashiwa, T. Fujita, J. Am. Chem. Soc. 2001, 123, 6847-6856.
【非特許文献22】S. Ishii, M. Mitani, J. Saito, S. Matsuura, S. Kojoh, N. Kashiwa, T. Fujita, Chem. Lett. 2002, 740-741.
【非特許文献23】S. Matsui, Y. Tohi, M. Mitani, J. Saito, H. Makio, H. Tanaka, M. Nitabaru, T. Nakano, T. Fujita, Chem. Lett. 1999, 1065-1066.
【非特許文献24】S. Ishii, M. Mitani, J. Saito, S. Matsuura, R. Furuyama, T. Fujita, Sci. Tech. Cat. 2002, 49-54.
【非特許文献25】P. Woodman, P. B. Hitchcock, P. Scott, Chem. Commun. 1996, 2735-2736.
【非特許文献26】P. D. Knight, A. J. Clarke, B. S. Kimberley, R. A. Jackson, P. Scott, Chem. Commun. 2002, 352-353.
【非特許文献27】P. D. Knight, G. Clarkson, M. L. Hammond, B. S. Kimberley, P. Scott, J. Organomet. Chem. 2005, 690, 5125-5144.
【非特許文献28】G. J. Clarkson, V. C. Gibson, P. K. Y. Goh, M. L. Hammond, P. D. Knight, P. Scott, T. M. Smit, A. J. P. White, D. J. Williams, Dalton Trans. 2006, 5484-5491.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
したがって、様々なテトラデンテートリガンドを調べた後も、長寿命かつ高性能の非シクロペンタジエニル触媒を開発する課題がまだ残っている。したがって、前記の一般的な考えから逸脱し、異なる方策を用いて、寿命が増大し、活性が高く、高い分子量のポリマーを提供する触媒が望ましい。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、前記背景に基づいて開発された。
第1の態様において、本発明は、式(I)
【0010】
【化1】

の遷移金属化合物を含む自己組織化オレフィン重合触媒を提供し、
Mは周期律表の3〜11族からなる群より選択される遷移金属であり、
XはH、ハロゲン、CN、任意に置換されていてもよいN(R、OH、任意に置換されていてもよいC1〜C20アルキル、任意に置換されていてもよいC1〜20アルコキシであり、ここで、Rは、任意に置換されていてもよいC〜C20アルキル、任意に置換されていてもよいC〜C20アリール及びハロゲンからなる群より独立して選択され、
qは少なくとも2の整数であり、
mは少なくとも2の整数であり、
nは(I)を電気的に中性にする整数であり、
Lは独立して、少なくとも2つの結合した配位単位を有するリガンドであり、各配位単位は異なる遷移金属と結合する。
【0011】
第2の態様において、本発明は、オレフィン又はオレフィンの混合物を本発明に記載する自己組織化オレフィン重合触媒の存在下での重合又は共重合する方法を提供する。
第3の態様において、本発明は、本発明の方法にしたがって得ることができるポリオレフィンを提供する。
【0012】
第4の態様において、本発明は、次式(II)の化合物(ここでは、リガンドとも呼ぶ)を提供する。
【0013】
【化2】

第5の態様において、本発明は、アルデヒド又はケトンと、ジ−アニリン、トリ−アニリン又はテトラキス−アニリンとの間のシッフ塩基縮合によって本発明のリガンドを製造する方法を提供する。
【0014】
第6の態様において、本発明は、アニリンと、ジ−アルデヒド/ジ−ケトン、トリ−アルデヒド/トリ−ケトン又はテトラキス−アルデヒド/テトラキス−ケトンとの間のシッフ塩基縮合によって本発明のリガンドを製造する方法を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】最先端の非シクロペンタジエニルシングルサイト触媒の例を表す。
【図2】図3に示す配位モデル1を有するフェノキシ−イミンリガンドに基づく従来技術の代表的チタン及びジルコニウム触媒を表す。
【図3】三つの可能な触媒の配位モデルの比較を表し、ここで、モデル1及びモデル2は最新技術であり、モデル3は本発明の可能な配位モデルの一つを表す。
【図4】触媒から共触媒のアルミニウム原子へのリガンド移動を示すスキームを表す。これは、従来技術の触媒の限定された寿命の理由の一つである。
【図5】図3に示すモデル2型触媒を形成するテトラデンテートリガンドを表す。
【図6】図3に示すモデル2型触媒を形成するさらなるテトラデンテートリガンドを表す。
【図7】オレフィン重合触媒を合成するための本発明の自己組織化法を表す。そのサイズ、長さ及び角度のために、架橋スペーサは一つの本発明のオレフィン重合触媒の二つの単位を二つの異なる金属原子と配位させることが示される。自己組織化は長寿命かつ高性能の重合触媒を達成する。
【図8a】本発明の可能な自己組織化触媒構造の一つを表す。この場合、自己組織化構造は、任意のサイズの大員環をさらに形成することができる線状組織化構造である。
【図8b】本発明の自己組織化触媒構造のさらなる可能性を表す。この具体例において、自己組織化構造は、少なくとも六つの金属中心を有する大環状組織化構造である。
【図9】ビスフェノキシ−イミン及び自己組織化触媒の可能な合成経路を表す。化合物(XVIII)において、矢印は、二つの配位部位間の距離が同一の金属原子の配位には長すぎることを示し、その結果、第2のNO単位が第2の金属原子と配位して、自己組織化触媒を形成する。
【図10】自己組織化多核触媒(SA−Ti−1、SA−Zr)と既知触媒(既知Ti、既知Zr)の比較のためのいくつかの化合物を表す。
【図11】三つの反応期間におけるSA−Ti−1及び既知Tiの活性の比較を表すグラフである。
【図12】五つの反応期間におけるSA−Zr及び既知Zrの活性の比較を表すグラフである。
【図13】SA−Ti−1及び既知Ti触媒を用いて、いくつかの反応期間後に生成されるポリマーの量を表す。SA−Ti−1では、ポリエチレンの量は、反応時間が延びるとすぐに増加したが、既知Tiでは、ポリエチレンの量は非常にゆっくりと増加したことがわかる。
【図14】SA−Zr及び既知Zr触媒を用いていくつかの反応時間後に生成されるポリマーの量を表す。SA−Zrでは、ポリエチレンの量は反応時間が延びると急速に増加したが、既知Zrでは、ポリエチレンの量は異なる反応時間についてほぼ同じであることがわかる。
【図15】ビスフェノキシ−イミンリガンド(XIX)及び対応する自己組織化触媒(SA−Ti−2)の合成を表す。
【図16】単結晶X線回折によって得られるビスフェノキシ−イミンリガンド(XIX)の分子構造を表す。このX線構造から、明らかに、同一の金属原子の配位には二つの配位部位間の距離が長すぎるため、第2のNO単位が第2の金属原子と配位して、自己組織化触媒を形成することがわかる。
【図17】三つの反応期間におけるSA−Ti−2及び既知Tiの活性の比較を表すグラフである。
【図18】SA−Ti−2及び既知Ti触媒を用いていくつかの反応時間後に生成するポリマーの量を表す。SA−Ti−2では、ポリエチレンの量は、反応時間が延びると急速に増加したが、既知Tiでは、ポリエチレンの量は非常にゆっくりと増加したことがわかる。
【図19】本発明のSA−Ti−2触媒及び既知Ti触媒を用いた2時間のエチレン重合後のリアクタ付着物を表す。既知Ti触媒は著しい付着を引き起こし、一方、SA−Ti−2触媒によって生じる付着物はごくわずかで、リアクタは重合反応後もきれいなままであったことがわかる。
【図20a】本発明の自己組織化遷移金属触媒を調製するための可能な反応スキームのうちの一つを表す。
【図20b】本発明の自己組織化遷移金属触媒を調製するための可能な反応スキームのうちの一つを表す。
【図20c】本発明の自己組織化遷移金属触媒を調製するための可能な反応スキームのうちの一つを表す。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下の記載で、本発明の方法の非制限的実施形態を説明する。
本発明によれば、自己組織化オレフィン重合触媒は長寿命の触媒を提供することが意外にも判明した。自己組織化オレフィン重合触媒は、オレフィンの重合においても非常に効率的であり、低分子量ポリオレフィンポリマーならびに高分子量ポリオレフィンポリマーを生成する。加えて、本発明の自己組織化触媒は、定量的収率、低コストで調製するのが容易である。
【0017】
自己組織化(SA)は、既存の成分の不規則系が、外的方向性でなく、成分自体の間の特異的局所的相互作用の結果として、組織化構造又はパターンを形成する方法を記載するために用いられる用語である。SAは文字通り、分子単位を自発的かつ可逆的に組織化して、非共有的相互作用によって秩序構造になることとして定義することができる。この定義が示唆する自己組織化システムの第1の性質は、自己組織化プロセスの自発性、すなわち、自己組織化システムの形成の原因となる相互作用は、厳密的に局所レベルに作用すること、言い換えれば、ナノ構造がそれ自体を形成することである。したがって、SAは、高性能触媒、たとえば、不斉反応[9]のキラル不均一触媒を調製するために非常に強力な手段であることが証明されている、化学で非常に一般的な現象であり、この触媒は、優れた活性及びエナンチオ選択性を達成するために多数回リサイクルするために十分安定である。しかし、この方策は、オレフィン重合の触媒を開発するためには使用されなかった。
【0018】
本発明に関して、「含んでいる」又は「含む」という用語は、「含んでいる」の後にどのような語が続こうとも、包含するが、これに限定されないことを意味する。したがって、「含んでいる」という用語の使用は、列挙された要素が必要であるか、又は必須であるが、他の要素は任意であり、存在しても、存在しなくてもよいことを示す。
【0019】
したがって、本発明は、式(I)
【0020】
【化3】

の遷移金属化合物を含む自己組織化オレフィン重合触媒を提供し、
Mは、周期律表の3〜11族からなる群より選択される遷移金属であり、
Xは、H、ハロゲン、CN、任意に置換されていてもよいN(R、OH及び任意に置換されていてもよいC〜C20アルキル、任意に置換されていてもよいC〜C20アルコキシからなる群より独立して選択され、ここで、Rは、任意に置換されていてもよいC〜C20アルキル、任意に置換されていてもよいC〜C20アリール及びハロゲンからなる群より独立して選択され、
qは少なくとも2の整数であり、
mは少なくとも2の整数であり、
nは(I)を電気的に中性にする整数であり、
Lは、独立して、少なくとも2つの結合した配位単位を有するリガンドであり、
各配位単位は異なる遷移金属と結合する。
【0021】
遷移金属Mは、Sc、Y、La、Ti、Zr、Hf、V、Nb、Ta、Sm、Yb、Cr、Mo、W、Mn、Tc、Re、Fe、Ru、Os、Co、Rh、Ir、Ni、Pd、Pt、Cu、Zn又はこれらの混合物であり得るが、これらに限定されない。本発明の一実施形態において、Mは、Sc、Ti、Zr、Hf、V、Nb、Ta、Sm、Yb、Fe、Co、Rh、Ni又はPd、たとえばTi、Zr、Hf、V、Nb、Ta、Sm、Yb又はこれらの混合物であり得る。本発明のさらに別の実施形態において、Mは、Ti、Zr又はこれらの混合物であり得る。各遷移金属原子の選択は、反応条件及び/又は重合されるオレフィンに依存し得る。
【0022】
遷移金属Mは、酸化状態(0)であり得る。あるいは、別の実施形態において、遷移金属の酸化状態は、リガンドのさらなる種類及び数に応じて、(I)から(VI)の間であり得る。例えば、Mは、Sc(III)、Ti(III)、Ti(IV)、Zr(III)、Zr(IV)、Hf(IV)、V(III)、V(IV)、V(V)、Nb(V)、Ta(V)、Fe(II)、Fe(III)、Co(II)、Co(III)、Rh(II)、Rh(III)、Rh(IV)、Cr(III)、Ni(II)、及びPd(II)をはじめとする遷移金属原子を表し得るが、これらに限定されない。例えば、Mは、Ti(IV)、Zr(IV)、Hf(IV)、V(III)、V(IV)、V(V)、Nb(V)、及びTa(V)、たとえば、Ti(IV)、Zr(IV)、及びHf(IV)であり得る。
【0023】
整数mは、典型的には少なくとも2の値を有する。mの数は、自己組織化触媒中に存在するリガンドLの数に依存するであろう。したがって、mは、約1又は約2から約1000、たとえば約1から約100又は約200又は300の範囲であり得る。しかし、mは、本発明で有用な任意の他の整数でもあり得る。
【0024】
Xは、遷移金属原子に配位した基である。Xは、H、F、Cl、Br、CN、N(CH、N(CHCH、CH、CHCH、OCH、OCHCH、OCH(CH、OC(CH、又はOC等であり得るが、これらに限定されない。複数のX部分が含まれる場合、Xは同一であっても、異なっていてもよい。
【0025】
式(I)中の記号nは、Mの価数を満たす整数を表す。nの数は、遷移金属Mの価数に依存する。たとえば、nは、約0〜5、たとえば、約0〜4又は約0〜3の整数であり得る。さらに、nは1又は2であり得る。一実施形態において、nは2であって、二つの異なるリガンドLの二つのWY単位と一緒になって八面体金属配置を形成する。nに応じてさらなる金属配置が可能である。
【0026】
前記式(I)中、Lは、各配位単位が異なる遷移金属のみと結合できるようにスペーサZを介して結合した少なくとも2つの配位単位を有するリガンドである。このことは、たとえば、二つの別個の配位単位を有するリガンドLは、同じ遷移金属を両配位単位と結合させることができないことを意味する。その代わりに、各配位単位は異なる遷移金属と結合する。
【0027】
前記式(I)中、qは、少なくとも2の整数であり得る。qの数は、自己組織化触媒中の遷移金属原子の数に依存し、qは、約2から約1000、たとえば約2から約100の範囲であり得る。しかし、qは、本発明で有用である任意の他の整数であってもよい。
【0028】
Lは、式(II):
【0029】
【化4】

のリガンドであり得、
各WY単位は配位単位を形成し、
rは少なくとも2の整数であり、
Zは、任意に置換されていてもよい約2から約100個の炭素原子を有する炭化水素及び任意に置換されていてもよい約2から約100個の炭素原子を有するヘテロ炭化水素からなる群より選択される架橋スペーサであり、ここで、Zは、各配位単位WYが異なる遷移金属と結合するようなサイズ、長さ及び角度を有し、
Wは、中性又は荷電した形態の酸素原子、硫黄原子、セレン原子、窒素原子、リン原子、及びカルベンならびに任意に置換されていてもよいC〜C20アリールからなる群より選択される金属配位部分であり、
Yは、中性又は荷電した形態の酸素原子、硫黄原子、セレン原子、窒素原子、リン原子、及びカルベンならびに任意に置換されていてもよいC〜C20アリールからなる群より選択される金属配位部分であり、
WY単位中の半円は、金属配位部分W及びYが結合する炭化水素骨格を表す。
【0030】
このリガンドLは、以下に記載する方法にしたがって調製することができる。
前記式(II)中、rは、2、3、4、5又は6であるか、又は>6の任意の整数であり得る。r=2の場合、リガンドLは
【0031】
【化5】

であり得、r=3の場合、リガンドLは
【0032】
【化6】

であり得、r=4の場合、
【0033】
【化7】

等であり得る。
【0034】
各単位WYは配位単位を形成する。すなわち、一つの遷移金属が、同じWY配位単位のWとYの両方に配位する。WY配位単位中の半円は、金属配位部分W及びYが結合する炭化水素骨格を表す。中性又は荷電した形態とは、たとえば、WとYとの両方が、荷電状態0又は1又は安定な分子に寄与する任意の他の荷電状態を有し得ることを意味する。
【0035】
金属配位部分W及びYが結合する炭化水素骨格は、たとえば、W及びYと結合して、配位単位を形成することができる任意の有機化合物であり得る。一実施形態において、炭化水素骨格は、任意に置換されていてもよいC〜C20アリール基、任意に置換されていてもよいC〜C20ヘテロアリール基又は任意に置換されていてもよいSi基であり得るが、これらに限定されない。たとえば、W及びYは、芳香族炭化水素(アリール)、Si鎖などと結合することができる。
【0036】
本発明の具体的な実施形態において、WY配位単位は
【0037】
【化8】

【0038】
【化9】

で有り得るが、これらに限定されない。
【0039】
前記式(II)中、Zは、スペーサ分子であり、ここで、「スペーサ分子」という用語は、所望の数の原子によって、二つ以上の基を互いに分離する原子又は原子団を意味する。所望の数の原子によってこれらの基を分離するために、任意の原子団を用いることができる。ある実施形態において、スペーサは、任意に置換されていてもよい。スペーサZは、リガンドLの少なくとも二つの配位部位WYが二つの異なる遷移金属原子のみと結合し、同じ遷移金属原子と結合しないようなサイズ、長さ及び角度を有する。このことは、従来技術で記載されているように、同じリガンドLのあらゆる配位部位が同一の遷移金属と結合することが可能ではないことを意味する。
【0040】
この点に関して、約2から約100個の炭素原子を有する炭化水素という用語は、水素及び炭素からなるあらゆる種類の可能な有機化合物,例えば、芳香族炭化水素(アリール)、アルカン、アルケン及びアルキンベースの化合物を意味するが、これらに限定されない。本発明の一実施形態において、Zは、任意に置換されていてもよいC〜C20脂環式基、任意に置換されていてもよいC〜C20アリール基、任意に置換されていてもよいC〜C20ヘテロアリール基、溶融した縮合核二、三、四又は五員縮合環系(場合によって、環系中にヘテロ原子を有し得るもの、たとえば、数例を挙げると、ナフタレン誘導体、アントラセン誘導体、キノリン、イソキノリン、キナゾリン、アクリジニン、フェナントレン、ナフタセン、クリセン、ピレン、又はトリフェニレン)、又は二つ、三つ又は四つのC〜C20アリール基が、N原子、Si原子、C〜C20アルキル基、C〜C20アルケニル基又はC〜C20アリール基を介して結合した系であり得るが、これらに限定されない。たとえば、前記用語は、ビフェニル、テルフェニル又は[(R11121314)C−(CH−C(R15161718)](式中、kは1から10の整数である)等の化合物を包含し得る。これらの化合物はすべて、任意に置換されていてもよい。
【0041】
約2〜約100個の炭素原子を有するヘテロ炭化水素という用語は、水素、炭素及び、例えば、N、S、O、Si又はPから選択されるが、これらに限定されない少なくとも1個のヘテロ原子からなる、あらゆる種類の有機化合物を意味する。たとえば、この用語は、式[(R11121314]C−(V)−C(R15161718)](式中、Vは、Si又はSであり、vは約1〜約6の整数である)の化合物を包含し得る。これらの化合物はすべて、任意に置換されていてもよい。
【0042】
式(II)中、r=2の場合、スペーサZの例としては、以下のベンジル、ピリジル、ナフチル、ビフェニル、テルフェニル、アンタセニル、フェナントレニル、又はN原子、Si原子、又はC〜C20アルキル基を介して結合したベンジル基、C〜C20アルケニル基又はC〜C20アリール基、
【0043】
【化10】

【0044】
【化11】

【0045】
【化12】

などが挙げられるが、これらに限定されない。前記式中、sは1から約20、例えば1から約10の整数である。一実施形態において、sは、1、2、3、4、5又は6から選択することができる。
【0046】
式(II)中、r=3の場合、Zはトリリンカーである。これは、3個のWY配位単位が同じスペーサと結合し得ることを意味する。このようなスペーサZの例は、
【0047】
【化13】

などであり得るが、これらに限定されない。
【0048】
式(II)中、r=4の場合、Zはテトラキスリンカーである。これは、四つのWY配位単位が同じスペーサと結合し得ることを意味する。このようなスペーサZの例は、
【0049】
【化14】

等であり得るが、これらに限定されない。
【0050】
前記例以外に、Zは五つ以上の連結部位を有していてもよい。すなわち、式(II)中のrは、5又は6又はそれ以上でもあり得る。加えて、Zは、マクロポリマーマルチリンカーを形成する複数の連結部位を有するポリマー骨格でもあり得る。ポリマー骨格は、たとえば、ポリエチレン、ポリプロピレン等であり得る。
【0051】
前記又は下記式中のR及びRからR20は、同一又は異なり、かつ、それぞれ、H、任意に置換されていてもよい直鎖又は分岐C〜C20アルキル、任意に置換されていてもよい直鎖又は分岐C〜C20アルケニル、任意に置換されていてもよい直鎖又は分岐C〜C20アルキニル、任意に置換されていてもよいC〜C20アリール、任意に置換されていてもよいC〜C20ヘテロアリール、ハロゲン、OH、NO、及びCNからなる群より選択され、ここで、2以上のR〜R20は互いに結合して環を形成し得る。
【0052】
からR20によって表される「任意に置換されていてもよい直鎖又は分岐C〜C20アルキル」という用語は、完全に飽和した脂肪族炭化水素を意味する。本明細書で記載される場合はいつでも、1から20の又はC〜C20などの数値範囲は、所与の範囲中の各整数を意味し、例えば、アルキル基が、1個だけの炭素原子、2個の炭素原子、3個の炭素原子等から20個以下の炭素原子を含むことを意味する。アルキル基の例は、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、s−ブチル、t−ブチル、tert−アミル、ペンチル、n−ヘキシル、n−ヘプチル、n−オクチル、n−ノニル又はn−デシル等であり得るが、これらに限定されない。
【0053】
「任意に置換されていてもよい直鎖又は分岐C〜C20アルケニル」という用語は、一つ以上の炭素−炭素二重結合を有する脂肪族炭化水素を意味する。アルケニル基の例は、エテニル、プロペニル、アリル又は1,4−ブタジエニル等であり得るが、これらに限定されない。
【0054】
「任意に置換されていてもよい直鎖又は分岐C〜C20アルキニル」という用語は、一つ以上の炭素−炭素三重結合を有する脂肪族炭化水素を意味する。アルキニル基の例は、エチニル、プロピニル、ブチニル等である得るが、これらに限定されない。
【0055】
「任意に置換されていてもよいC〜C20アルコキシ」という用語は、式−OR基を意味し、RはC〜C20アルキル基である。アルコキシ基の例は、メトキシ、エトキシ、プロポキシ等であり得るが、これらに限定されない。
【0056】
「任意に置換されていてもよいC〜C10脂環式基」という用語は、環を形成する原子のそれぞれが炭素原子である非芳香族環を含む基を意味する。このような環は、3から10個の炭素原子によって形成することができる。脂環式基の例は、シクロプロパン、シクロブタン、シクロペンタン、シクロペンテン、シクロペンタジエン、シクロヘキサン、シクロヘキセン、シクロヘプタン、シクロヘプテン等であり得るが、これらに限定されない。
【0057】
「任意に置換されていてもよいC〜C20アリール」という用語は、環を形成する原子のそれぞれが炭素原子である芳香族環を意味する。これに関して、芳香族とは、4w+2π電子(ここで、wは、少なくとも1、例えば1、2、3又は4の整数である)を含む非局在化π電子系を有する共有結合により閉鎖された平面環を含む基を意味する。アリール基の例は、フェニル、ナフタレニル、フェナントレニル、アントラセニル、テトラリニル、フルオレニル、インデニル、及びインダニル等であり得るが、これらに限定されない。
【0058】
「任意に置換されていてもよいC〜C20ヘテロアリール」という用語は、芳香族ヘテロ環を意味する。ヘテロアリールは、少なくとも一つ以上の酸素原子又は少なくとも一つ以上の硫黄原子又は一から四つの窒素原子あるいはこれらの組み合わせを含み得る。ヘテロアリール基の例は、フラン、ベンゾフラン、チオフェン、ベンゾチオフェン、ピロール、ピリジン、インドール、オキサゾール、ベンゾオキサゾール、イソオキサゾール、ベンズイソオキサゾール、チアゾール、ベンゾチアゾール、イミダゾール、ベンズイミダゾール、ピラゾール、インダゾール、テトラゾール、キノリン、イソキノリン、ピリダジン、プリン、ピラジン、フラザン、トリアゾール、ベンゾトリアゾール、プテリジン、フェノキサゾール、オキサジアゾール、ベンゾピラゾール、キノリジン、シンノリン、フタラジン、キナゾリン又はキノキサリン等であり得るが、これらに限定されない。
【0059】
「ハロゲン」という用語は、フッ素、塩素、臭素又はヨウ素を意味する。
「任意に置換されていてもよいSi基」という用語は、水素又はアルキル基又はアリール基によって置換された、1から5個のケイ素原子を含有する基を意味する。Si基の例は、モノシラン、メチルシリル、ジメチルシリル、エチルシリル、ジエチルシリル、フェニルシリル、メチルフェニルシリル等であり得るが、これらに限定されない。
【0060】
「縮合核系」という用語は、少なくとも二つの芳香族又は非芳香族縮合環系を有する化合物を意味する。縮合核の例は、デカリン、ヒドリンダン、ナフタレン、アントラセン、フェナントレン、ナフタセン、ペンタセン、ヘキサセン、ピレン、インデン、フルオレン等であり得るが、これらに限定されない。
【0061】
「二つ、三つ、又は四つの任意に置換されていてもよいC〜C20アリール基が、N原子、Si原子、C〜C20アルキル基、C〜C20アルケニル基又はC〜C20アリール基を介して結合している系」という用語は、二つ、三つ又は四つのアリール基が結合した中心結合単位としてN原子、Si原子、アルキル基、アルケニル基又はアリール基を有する化合物を意味する。
【0062】
特に記載しない限り、「任意に置換されていてもよい」という用語は、〇個、一個、又は一個より多い水素原子が、アルキル、アリール,ヘテロアリール、ヒドロキシ,アルコキシ、ハロゲン、カルボニル、C−アミド、N−アミド、イソシアナート、チオシアナート、イソチオシアナート、ニトロ、シリル、及びアミノ、たとえば一置換及び二置換アミノ基、ならびにアミノ基の保護誘導体からなる群より独立して選択される一つ以上の基で置換されている基を意味する。二個以上の水素原子が置換されている実施形態において、置換基は結合して、環を形成することができる。
【0063】
「結合して環を形成する」という用語は、単独の原子又はそれら自体が最終的に結合する、複数の原子のいずれかと結合した二つの原子が、それぞれ連結基と結合して、結果として得られる構造が環を形成する状況を意味する。結果として得られる環は、二つの原子、これらの原子とあらかじめ結合している原子(又は複数の原子)、及びリンカーを含む。
【0064】
本発明の一実施形態において、リガンドLは、
【0065】
【化15】

【0066】
【化16】

【0067】
【化17】

【0068】
【化18】

【0069】
【化19】

等で有り得るが、これらに限定されない。
【0070】
一実施形態において、リガンドLは
【0071】
【化20】

であり得、式中、Z及びRからRは、前記定義の通りである。
【0072】
配位単位WYの遷移金属に対するモル比は、約0.5:1から約6:1、たとえば約1:1から約3:1の範囲であり得る。
一般的に、リガンド化合物Lは、各アルデヒド又はケトン及びアミノ置換スペーサ分子のシッフ塩基縮合によって調製することができる。リガンドの所望の幾何学的配置に応じて、一種より多いアルデヒド及び/又はケトンと反応するために、スペーサ分子は一つより多いアミノ置換基を有し得る。たとえば、リガンドは、アルデヒド又はケトンとジアニリン、トリアニリン又はテトラキスアニリンとの間のシッフ塩基縮合によって調製することができる。たとえば、アルデヒド又はケトンとしては、
【0073】
【化21】

等が挙げられ、式中、RからRは前記のとおりであるが、これらに限定されない。ジアニリン、トリアニリン又はテトラキスアニリンとしては、
【0074】
【化22】

等が挙げられ、式中、Zは前記のとおりであるが、これらに限定されない。
【0075】
別の実施形態において、リガンド化合物Lは、アニリンと、ジアルデヒド/ジケトン、トリアルデヒド/トリケトン又はテトラキスアルデヒド/テトラキスケトンとの間のシッフ塩基縮合によって調製することもできる。アニリンとしては、
【0076】
【化23】

が挙げられ、式中、R〜Rは前記のとおりであるが、これらに限定されない。ジアルデヒド/ジケトン、トリアルデヒド/トリケトン又はテトラキスアルデヒド/テトラキスケトンとしては、
【0077】
【化24】

等が挙げられ、式中、R及びZは前記定義のとおりであるが、これらに限定されない。
【0078】
前記のリガンド化合物を調製するために、本発明において、アルデヒド又はケトンと各アニリン化合物との任意の他の組み合わせが可能であると解釈される。
本発明のリガンド化合物を調製するための前記方法において、シッフ塩基縮合は、酸触媒又は固体触媒によって促進することができる。酸触媒としては、ギ酸、酢酸、p−トルエンスルホン酸又はルイス酸等が挙げられるが、これらに限定されない。
【0079】
有機リチウム化合物又は水素化ナトリウム(NaH)との反応後、形成されたリガンド化合物を各金属化合物と反応させて、本発明の触媒を形成する。この種類の反応の一般原則は、図20aから20cで理解することができる。図20aにおいて、バイリンカーベースのリガンド及び自己組織化触媒の調製を示し、図20bにおいて、トリリンカーベースのリガンド及び自己組織化触媒の調製を示し、図20cにおいて、テトラキスリンカーベースのリガンド及び自己組織化触媒を示す(Zは、本発明で記載するスペーサ分子の一つである)。
【0080】
この調製法の一具体例は、図9で理解することができ、ここでは、ビスフェノキシイミンリガンド(XVIII)を、4,4’−ジアミノジフェニルメタンと3−tert−ブチル−2−ヒドロキシベンズアルデヒドとの間のシッフ塩基縮合によって調製する。n−ブチルリチウムとの反応後、形成されたビスフェノキシイミンの二リチウム塩は、チタン/ジルコニウム四塩化物と反応して、定量的収率で自己組織化触媒をもたらす。
【0081】
この調製法の別の例は、図15から得ることができ、ここでは、ビスフェノキシイミンリガンド(XIX)を、ベンジジンと3−tert−ブチル−2−ヒドロキシベンズアルデヒドとの間のシッフ塩基縮合によって調製する。ビスフェノキシイミンリガンド(XIX)の分子構造は、図16に示すような単結晶X線回折によって確認され、この図は、この化合物の二つのNO配位単位がビフェニル基によって分離されていることを明確に示す。配位単位間の空間は、ビフェニルスペーサのために大きすぎるので、各配位単位は、異なる金属原子と配位しなければならず、図15に例示されるような自己組織化触媒構造を形成する。
【0082】
リガンドLの特定の配位構造が、スペーサのサイズ、長さ及び角度に起因して、Lの少なくとも二つのWY配位単位が同一の遷移金属と配位して単核錯体を形成することを許容せず、したがって少なくとも二つのWY単位は二つ以上の異なる遷移金属と配位しなければならず、それにより自己組織化多核触媒を形成することが本発明の方策である。この概念は、図7から例示的に理解することができ、ここでは、リガンドLは、二つの配位部位及びスペーサ(リンカー)によって形成される。連結したビス−リガンドのそれぞれの部位が一つの金属原子に配位して自己組織化が始まり、長寿命かつ高性能の重合触媒が得られる。
【0083】
自己組織化構造は、図8a及び8bに見られるように、直線状又は大環状であり得る。この種類の自己組織化触媒の構造は、使用されるスペーサZの幾何学的配置ならびにリガンドLの置換基の種類及び数に依存するであろう。スペーサZ上の連結部位の数に応じて、本発明の自己組織化触媒は、例えば、3次元フレームワークを形成し得る。
【0084】
本発明の自己組織化オレフィン重合触媒を、少なくとも一つの共触媒と併せて用いることができる。この場合、オレフィン重合又は共重合の触媒系が形成され、これをそのまま用いてもよいし、又は触媒化合物又は重合プロセスで必要な他の成分と併せて用いてもよい。本発明の少なくとも一つの共触媒は、有機金属化合物、有機アルミニウムオキシ化合物、又はイオン化イオン化合物等であり得るが、これらに限定されない。
【0085】
一実施形態において、共触媒は、有機金属化合物から選択することができ、ここで、有機金属化合物は、周期律表の1族、2族、12族及び13族の金属の有機金属化合物であり得るが、これらに限定されない。たとえば、Al化合物の場合、化合物は、一般式:
【0086】
【化25】

によって表すことができ、式中、R及びRは、同一又は異なり、かつ、1から15個、例えば1から4個の炭素原子を有する炭化水素基で有り得、Xは、ハロゲン原子であり得、m、n、p及びqは、0<m≦3、0≦n<3、0≦p<3、0≦q<3及びm+n+p+q=3の条件を満たす整数である。
【0087】
前記有機アルミニウム化合物の例としては、一般式
【0088】
【化26】

によって表される有機アルミニウム化合物が挙げられ、式中、R及びRは、同一又は異なり、かつ、1から15個、例えば1から4個の炭素原子を有する炭化水素基であり得、mは、1.5≦m≦3の条件を満たす数であり得るが、これらに限定されない。
【0089】
さらなる化合物例は、一般式
【0090】
【化27】

によって表され、式中、Rは、1から15個、例えば1から4個の炭素原子を有する炭化水素基であり、Xはハロゲン原子であり、mは、0<m<3の条件を満たす整数であり得る。
【0091】
さらなる化合物例は、一般式
【0092】
【化28】

によって表され、式中、Rは、1から15個、例えば1から4個の炭素原子を有する炭化水素基であり、mは、2≦m<3の条件を満たす整数であり得る。
【0093】
さらなる化合物例は、一般式
【0094】
【化29】

によって表され、式中、R及びRは、同一又は異なり、かつ、1から15個、例えば1から4個の炭素原子を有する炭化水素基であり得、Xはハロゲン原子であり得、m、n及びqは、0<m≦3、0<n≦3、0≦q<3及びm+n+q=3の条件を満たす整数である。
【0095】
前記有機アルミニウム化合物の具体例としては、トリ−n−アルキルアルミニウム、たとえば、トリメチルアルミニウム、トリエチルアルミニウム、トリ−n−ブチルアルミニウム、トリプロピルアルミニウム、トリペンチルアルミニウム、トリヘキシルアルミニウム、トリオクチルアルミニウム及びトリデシルアルミニウム;分岐鎖トリアルキルアルミニウム、たとえば、トリイソプロピルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウム、トリ−sec−ブチルアルミニウム、トリ−t−ブチルアルミニウム、トリ−2−メチルブチルアルミニウム、トリ−3−メチルブチルアルミニウム、トリ−2−メチルペンチルアルミニウム、トリ−3−メチルペンチルアルミニウム、トリ−4−メチルペンチルアルミニウム、トリ−2−メチルヘキシルアルミニウム、トリ−3−メチルヘキシルアルミニウム及びトリ−2−エチルヘキシルアルミニウム;トリシクロアルキルアルミニウム、たとえば、トリシクロヘキシルアルミニウム及びトリシクロオクチルアルミニウム;トリアリールアルミニウム、たとえば、トリフェニルアルミニウム及びトリトリルアルミニウム;ジアルキルアルミニウムヒドリド、たとえば、ジイソブチルアルミニウムヒドリド;式(i−CAl(C10(式中、x、y及びzは正数であり、z≧2xである)によって表されるトリアルケニルアルミニウム、たとえば、トリイソプレニルアルミニウム;アルキルアルミニウムアルコキシド、たとえば、イソブチルアルミニウムメトキシド、イソブチルアルミニウムエトキシド及びイソブチルアルミニウムイソプロポキシド;ジアルキルアルミニウムアルコキシド、たとえば、ジメチルアルミニウムメトキシド、ジエチルアルミニウムエトキシド及びジブチルアルミニウムブトキシド;アルキルアルミニウムセスキアルコキシド、たとえば、エチルアルミニウムセスキエトキシド及びブチルアルミニウムセスキブトキシド;R2.5Al(OR0.5によって表される平均組成を有する部分アルコキシル化アルキルアルミニウム;ジアルキルアルミニウムアリールオキシド、たとえば、ジエチルアルミニウムフェノキシド、ジエチルアルミニウム(2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノキシド)、エチルアルミニウムビス−(2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノキシド)、ジイソブチルアルミニウム(2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノキシド)及びイソブチルアルミニウムビス(2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノキシド);ジアルキルアルミニウムハライド、たとえば、ジメチルアルミニウムクロリド、ジエチルアルミニウムクロリド、ジブチルアルミニウムクロリド、ジエチルアルミニウムブロミド及びジイソブチルアルミニウムクロリド;アルキルアルミニウムセスキハライド、たとえば、エチルアルミニウムセスキクロリド、ブチルアルミニウムセスキクロリド及びエチルアルミニウムセスキブロミド、部分ハロゲン化アルキルアルミニウム、たとえば、アルキルアルミニウムジハライド、たとえば、エチルアルミニウムジクロリド、プロピルアルミニウムジクロリド及びブチルアルミニウムジブロミド;ジアルキルアルミニウムヒドリド、たとえば、ジエチルアルミニウムヒドリド及びジブチルアルミニウムヒドリド;部分水素化アルキルアルミニウム、たとえば、アルキルアルミニウムジヒドリド、例えば、エチルアルミニウムジヒドリド及びプロピルアルミニウムジヒドリド;ならびに部分アルコキシル化及びハロゲン化アルキルアルミニウム、たとえば、エチルアルミニウムエトキシクロリド、ブチルアルミニウムブトキシクロリド及びエチルアルミニウムエトキシブロミドが挙げられるが、これらに限定されない。
【0096】
前記有機アルミニウム化合物に類似した化合物も用いることができる。たとえば、二つ以上のアルミニウム化合物が窒素原子によって結合した有機アルミニウム化合物、たとえば、(CAlN(C)Al(Cを挙げることができる。
【0097】
一実施形態において、前記有機金属化合物は、一般式
【0098】
【化30】

によって表される周期律表の1族金属及びアルミニウムの化合物で有り得、式中、Mは、Li、Na又はKであり、Rは、1から15個、例えば1から4個の炭素原子を有する炭化水素基である。これらの有機アルミニウム化合物の例としては、LiAl(C及びLiAl(C15等が挙げられるが、これらに限定されない。
【0099】
さらなる実施形態において、前記有機金属化合物は、一般式
【0100】
【化31】

によって表される周期律表の2族金属又は12族金属の化合物であり得、式中、R及びRは、同一又は異なり、かつ、1から15個、好ましくは1から4個の炭素原子を有する炭化水素基であり得、Mは、Mg、Zn又はCdである。
【0101】
さらに、他の化合物、たとえば、メチルリチウム、エチルリチウム、プロピルリチウム、ブチルリチウム、メチルマグネシウムブロミド、メチルマグネシウムクロリド、エチルマグネシウムブロミド、エチルマグネシウムクロリド、プロピルマグネシウムブロミド、プロピルマグネシウムクロリド、ブチルマグネシウムブロミド、ブチルマグネシウムクロリド、ジメチルマグネシウム、ジエチルマグネシウム、ジブチルマグネシウム及びブチルエチルマグネシウムも前記有機金属化合物として用いることができる。さらに、重合系で前記有機アルミニウム化合物を形成することができる化合物の組み合わせ、たとえば、ハロゲン化アルミニウムとアルキルリチウムとの組み合わせ及びハロゲン化アルミニウムとアルキルマグネシウムとの組み合わせも用いることができる。前記有機金属化合物は単独又は組み合わせで用いることができる。
【0102】
有機アルミニウムオキシ化合物は、従来のアルミノキサン又は特開平2−78687に例示されているようなベンゼン不溶性有機アルミニウムオキシ化合物であり得る。従来のアルミノキサンは、たとえば、以下の方法によって調製することができ、通常、炭化水素溶媒溶液として得られる。
(1)トリアルキルアルミニウムなどの有機アルミニウム化合物を、吸収した水分を含有する化合物又は結晶水を含有する塩、たとえば、塩化マグネシウム水和物、硫酸銅水和物、硫酸アルミニウム水和物、硫酸ニッケル水和物又は塩化セリウム水和物の炭化水素媒体懸濁液に添加して、吸収された水分又は結晶水を有機アルミニウム化合物と反応させる方法。
(2)水、氷又は水蒸気を、トリアルキルアルミニウムなどの有機アルミニウム化合物に、たとえば、ベンゼン、トルエン、エチルエーテル又はテトラヒドロフランなどの媒体中で直接作用させる方法。
(3)有機スズ酸化物、たとえば、ジメチルスズオキシド又はジブチルスズオキシドを、トリアルキルアルミニウムなどの有機アルミニウム化合物と、たとえば、デカン、ベンゼン又はトルエンなどの媒体中で反応させる方法。
【0103】
アルミノキサンは、少量の有機金属成分を含有し得る。溶媒又は未反応有機アルミニウム化合物を回収されたアルミノキサンの溶液から留去し、残りを溶媒中に再溶解させるか、又はアルミノキサンの貧溶媒中に懸濁させることができる。アルミノキサンを調製するために用いられる有機アルミニウム化合物の例としては、前記と同じ有機アルミニウム化合物が挙げられる。有機アルミニウム化合物を単独又は組み合わせで用いることができる。
【0104】
アルミノキサンを調製するために用いられる溶媒の例としては、芳香族炭化水素、たとえば、ベンゼン、トルエン、キシレン、クメン及びシメン;脂肪族炭化水素、たとえば、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、デカン、ドデカン、ヘキサデカン及びオクタデカン;脂環式炭化水素、たとえば、シクロペンタン、シクロヘキサン、シクロオクタン及びメチルシクロペンタン;石油留分、たとえば、ガソリン、灯油及び軽油;ならびにこれらの芳香族、脂肪族及び脂環式炭化水素のハロゲン化物、特にこれらの塩化物及び臭化物が挙げられる。エチルエーテル及びテトラヒドロフランなどのエーテルも用いることができる。これらの溶媒のうち、芳香族炭化水素及び脂肪族炭化水素が特に好ましい。
【0105】
本発明において用いられるベンゼン不溶性有機アルミニウムオキシ化合物は、好ましくは約60℃でベンゼン中に可溶性であるAl成分の含有量が、Al原子に関して、通常約10%以下、例えば約5%以下、たとえば約2%以下である。すなわち、ベンゼン不溶性有機アルミニウムオキシ化合物は、好ましくはベンゼン中に不溶性であるか、又はほとんど溶解しない。
【0106】
本発明で使用できる有機アルミニウムオキシ化合物は、たとえば、ボロンを含有する有機アルミニウムオキシ化合物であり、次式(XX)
【0107】
【化32】

によって表され、式中、Rは、1から10個の炭素原子を有する炭化水素基であり、R基は、同一又は異なり、かつ、水素原子、ハロゲン原子又は1から10個の炭素原子を有する炭化水素基であり得る。
【0108】
式(XX)によって表されるボロンを含有する有機アルミニウムオキシ化合物は、次式(XXI):
【0109】
【化33】

によって表されるアルキルボロン酸を、有機アルミニウム化合物と、不活性溶媒中、不活性ガス雰囲気下、約−80℃から室温の温度で約1分から約24時間反応させることによって調製することができ、式中、Rは前記と同じである。式(XXI)によって表されるアルキルボロン酸の例としては、メチルボロン酸、エチルボロン酸、イソプロピルボロン酸、n−プロピルボロン酸、n−ブチルボロン酸、イソブチルボロン酸、n−ヘキシルボロン酸、シクロヘキシルボロン酸、フェニルボロン酸、3,5−ジフルオロボロン酸、ペンタフルオロフェニルボロン酸及び3,5−ビス(トリフルオロメチル)フェニルボロン酸が挙げられる。これらのうち、メチルボロン酸、n−ブチルボロン酸、イソブチルボロン酸、3,5−ジフルオロフェニルボロン酸及びペンタフルオロフェニルボロン酸が好ましい。これらのアルキルボロン酸は、単独又は組み合わせで用いられる。アルキルボロン酸と反応させる有機アルミニウム化合物の例としては、前記有機アルミニウム化合物について記載したものと同じ有機アルミニウム化合物が挙げられる。これらの有機アルミニウム化合物は、単独又は組み合わせで用いることができる。
【0110】
一実施形態において、共触媒は、有機アルミニウム化合物から選択することができ、この有機アルミニウム化合物は、トリアルキルアルミニウム、たとえば、トリメチルアルミニウム、トリエチルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウム、トリヘキシルアルミニウム、トリオクチルアルミニウム、及びトリデシルアルミニウム;アルキルアルミニウムハライド、たとえば、ジエチルアルミニウムモノクロリド、ジイソブチルアルミニウムモノクロリド、エチルアルミニウムセスキクロリド、及びエチルアルミニウムジクロリド;アルキルアルミニウムヒドリド、たとえば、ジエチルアルミニウムヒドリド、及びジイソブチルアルミニウムヒドリドであり得るが、これらに限定されない。本発明の一実施形態において、共触媒は、メチルアルミノキサン(MAO)及び/又は修飾メチルアルミノキサン(MMAO)であり得る。
【0111】
前記有機アルミニウムオキシ化合物は、単独又は組み合わせで用いられる。
遷移金属化合物と反応して、イオン対を形成する化合物(イオン化イオン化合物とも称する)としては、特開平1−501950号公報、特開平1−502036号公報、特開平3−179005号公報、特開平3−179006号公報、特開平3−207703号公報及び特開平3−207704号公報、ならびに米国特許第5321106号明細書に記載されているようなルイス酸、イオン化合物、ボラン化合物及びカルボラン化合物が挙げられるが、これらに限定されない。例としてはさらに、ヘテロポリ化合物及びイソポリ化合物が挙げられる。
【0112】
ルイス酸の例としては、BR(式中、Rは、置換基、たとえば、フッ素、メチル又はトリフルオロメチルを有し得るフェニル基、又はフッ素原子である)によって表される化合物、たとえば、トリフルオロボロン、トリフェニルボロン、トリス(4−フルオロフェニル)ボロン、トリス(3,5−ジフルオロフェニル)ボロン、トリス(4−フルオロメチルフェニル)ボロン、トリス(ペンタフルオロフェニル)ボロン、トリス(p−トリル)ボロン、トリス(o−トリル)ボロン及びトリス(3,5−ジメチルフェニル)ボロンが挙げられるが、これらに限定されない。
【0113】
イオン化合物の例としては、次式(XXII)
【0114】
【化34】

によって表される化合物が挙げられる。前記式中、Rは、H、カルボニウムカチオン、オキソニウムカチオン、アンモニウムカチオン、ホスホニウムカチオン、シクロヘプチルトリエニルカチオン、遷移金属を有するフェロセニウムカチオンなどであり得る。R10からR13は、同一又は異なり、かつ、それぞれ、有機基、好ましくはアリール基又は置換アリール基であり得る。カルボニウムカチオンの例としては、三置換カルボニウムカチオン、たとえば、トリフェニルカルボニウムカチオン、トリ(メチルフェニル)カルボニウムカチオン及びトリ(ジメチルフェニル)カルボニウムカチオンが挙げられる。アンモニウムカチオンの例としては、トリアルキルアンモニウムカチオン、たとえば、トリメチルアンモニウムカチオン、トリエチルアンモニウムカチオン、トリプロピルアンモニウムカチオン、トリブチルアンモニウムカチオン及びトリ(n−ブチル)アンモニウムカチオン;N,N−ジアルキルアニリニウムカチオン、たとえば、N,N−ジメチルアニリニウムカチオン、N,N−ジエチルアニリニウムカチオン及びN,N−2,4,6−ペンタメチルアニリニウムカチオン;ならびにジアルキルアンモニウムカチオン、たとえば、ジ(イソプロピル)アンモニウムカチオン及びジシクロヘキシルアンモニウムカチオンが挙げられる。ホスホニウムカチオンの例としては、トリアリールホスホニウムカチオン、たとえば、トリフェニルホスホニウムカチオン、トリ(メチルフェニル)ホスホニウムカチオン及びトリ(ジメチルフェニル)ホスホニウムカチオンが挙げられる。
【0115】
は、好ましくは、カルボニウムカチオン又はアンモニウムカチオン、特に好ましくは、トリフェニルカルボニウムカチオン、N,N−ジメチルアニリニウムカチオン又はN,N−ジエチルアニリニウムカチオンである。
【0116】
イオン化合物の例としては、トリアルキル置換アンモニウム塩、N,N−ジアルキルアニリニウム塩、ジアルキルアンモニウム塩及びトリアリールホスホニウム塩がさらに挙げられる。トリアルキル置換アンモニウム塩の例としては、トリエチルアンモニウムテトラ(フェニル)ボロン、トリプロピルアンモニウムテトラ(フェニル)ボロン、トリ(n−ブチル)アンモニウムテトラ(フェニル)ボロン、トリメチルアンモニウムテトラ(p−トリル)ボロン、トリメチルアンモニウムテトラ(o−トリル)ボロン、トリ(n−ブチル)アンモニウムテトラ(ペンタフルオロフェニル)ボロン、トリプロピルアンモニウムテトラ−(o,p−ジメチルフェニル)ボロン、トリ(n−ブチル)アンモニウムテトラ(m,m−ジメチルフェニル)ボロン、トリ(n−ブチル)アンモニウムテトラ(p−トリフルオロメチルフェニル)ボロン、トリ(n−ブチル)アンモニウムテトラ(3,5−ジトリフルオロメチルフェニル)ボロン及びトリ(n−ブチル)アンモニウムテトラ(o−トリル)ボロンが挙げられる。
【0117】
N,N−ジアルキルアニリニウム塩の例としては、N,N−ジメチルアニリニウムテトラ(フェニル)ボロン、N,N−ジエチルアニリニウムテトラ(フェニル)ボロン及びN,N−2,4,6−ペンタメチルアニリニウムテトラ(フェニル)ボロンが挙げられる。
【0118】
ジアルキルアンモニウム塩の例としては、ジ(1−プロピル)アンモニウムテトラ(ペンタフルオロフェニル)ボロン及びジシクロヘキシルアンモニウムテトラ(フェニル)ボロンが挙げられる。イオン化合物の例としては、トリフェニルカルベニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、N,N−ジメチルアニリニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、フェロセニウムテトラ(ペンタフルオロフェニル)ボレート、トリフェニルカルベニウムペンタフェニルシクロペンタジエニル錯体、N,N−ジエチルアニリニウムペンタフェニルシクロペンタジエニル錯体及び次式(XXIII)又は(XXIV)
【0119】
【化35】

【0120】
【化36】

によって表されるボロン化合物がさらに挙げられ、式中、Etはエチル基である。
【0121】
ボラン化合物の例としては、デカボラン;アニオンの塩、たとえば、ビス[トリ(n−ブチル)アンモニウム]ノナボレート、ビス[トリ(n−ブチル)アンモニウム]デカボレート、ビス[トリ(n−ブチル)アンモニウム]ウンデカボレート、ビス[トリ(n−ブチル)アンモニウム]ドデカボレート、ビス[トリ(n−ブチル)アンモニウム]デカクロロデカボレート及びビス[トリ(n−ブチル)アンモニウム]ドデカクロロドデカボレート;ならびに金属ボランアニオンの塩、たとえば、トリ(n−ブチル)アンモニウムビス(ドデカヒドリドドデカボラート)コバルテート(III)及びビス[トリ(n−ブチル)アンモニウム]ビス(ドデカヒドリドドデカボラート)ニッケレート(III)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0122】
カルボラン化合物の例としては、アニオンの塩、たとえば、4−カルバノナボラン、1,3−ジカルバノナボラン、6,9−ジカルバデカボラン、ドデカヒドリド−1−フェニル−1,3−ジカルバノナボラン、ドデカヒドリド−1−メチル−1,3−ジカルバノナボラン、ウンデカヒドリド−1,3−ジメチル−1,3−ジカルバノナボラン、7,8−ジカルバウンデカボラン、2,7−ジカルバウンデカボラン、ウンデカヒドリド−7,8−ジメチル−7,8−ジカルバウンデカボラン、ドデカヒドリド−11−メチル−2,7−ジカルバウンデカボラン、トリ(n−ブチル)アンモニウム−1−カルバデカボレート、トリ(n−ブチル)アンモニウム−1−カルバウンデカボレート、トリ(n−ブチル)アンモニウム−1−カルバドデカボレート、トリ(n−ブチル)アンモニウム−1−トリメチルシリル−1−カルバデカボレート、トリ(n−ブチル)アンモニウムブロモ−1−カルバドデカボレート、トリ(n−ブチル)アンモニウム−6−カルバデカボレート、トリ(n−ブチル)アンモニウム−6−カルバデカボレート、トリ(n−ブチル)アンモニウム−7−カルバウンデカボレート、トリ(n−ブチル)アンモニウム−7,8−ジカルバウンデカボレート、トリ(n−ブチル)アンモニウム−2,9−ジカルバウンデカボレート、トリ(n−ブチル)アンモニウムドデカヒドリド−8−メチル−7,9−ジカルバウンデカボレート、トリ(n−ブチル)アンモニウムウンデカヒドリド−8−エチル−7,9−ジカルバウンデカボレート、トリ(n−ブチル)アンモニウムウンデカヒドリド−8−ブチル−7,9−ジカルバウンデカボレート、トリ(n−ブチル)アンモニウムウンデカヒドリド−8−アリル−7,9−ジカルバウンデカボレート、トリ(n−ブチル)アンモニウムウンデカヒドリド−9−トリメチルシリル−7,8−ジカルバウンデカボレート及びトリ(n−ブチル)アンモニウムウンデカヒドリド−4,6−ジブロモ−7−カルバウンデカボレート;ならびに金属カルボランアニオンの塩、たとえば、トリ(n−ブチル)アンモニウムビス(ノナヒドリド−1,3−ジカルバノナボラート)コバルテート(III)、トリ(n−ブチル)アンモニウムビス(ウンデカヒドリド−7,8−ジカルバウンデカボラート)フェレート(III)、トリ(n−ブチル)アンモニウムビス(ウンデカヒドリド−7,8−ジカルバウンデカボラート)コバルテート(III)、トリ(n−ブチル)アンモニウムビス(ウンデカヒドリド−7,8−ジカルバウンデカボラート)ニッケレート(III)、トリ(n−ブチル)アンモニウムビス(ウンデカヒドリド−7,8−ジカルバウンデカボラート)クプラート(III)、トリ(n−ブチル)アンモニウムビス(ウンデカヒドリド−7,8−ジカルバウンデカボラート)アウレート(III)、トリ(n−ブチル)アンモニウムビス(ノナヒドリド−7,8−ジメチル−7,8−ジカルバウンデカボラート)フェレート(III)、トリ(n−ブチル)アンモニウムビス(ノナヒドリド−7,8−ジメチル−7,8−ジカルバウンデカボラート)クロメート(III)、トリ(n−ブチル)アンモニウムビス(トリブロモオクタヒドリド−7,8−ジカルバウンデカボラート)コバルテート(III)、トリス[トリ(n−ブチル)アンモニウム]ビス(ウンデカヒドリド−7−カルバウンデカボラート)クロメート(III)、ビス[トリ(n−ブチル)アンモニウム]ビス(ウンデカヒドリド−7−カルバウンデカボラート)マンガナート(IV)、ビス[トリ(n−ブチル)アンモニウム]ビス(ウンデカヒドリド−7−カルバウンデカボラート)コバルテート(III)及びビス[トリ(n−ブチル)アンモニウム]ビス(ウンデカヒドリド−7−カルバウンデカボラート)ニッケレート(IV)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0123】
ヘテロポリ化合物は、ケイ素、リン、チタン、ゲルマニウム、ヒ素及びスズから選択される原子、及びバナジウム、ニオブ、モリブデン及びタングステンから選択される少なくとも一つの原子を含む。ヘテロポリ化合物の例としては、ホスホバナジン酸、ゲルマノバナジン酸、アルセノバナジン酸、ホスホニオブ酸、ゲルマノニオブ酸、シリコノモリブデン酸、ホスホモリブデン酸、チタノモリブデン酸、ゲルマノモリブデン酸、アルセノモリブデン酸、スタンノモリブデン酸、ホスホタングステン酸、ゲルマノタングステン酸、スタンノタングステン酸、ホスホモリブドバナジン酸、ホスホタングストバナジン酸、ゲルマノタングストバナジン酸、ホスホモリブドタングストバナジン酸、ゲルマノモリブドタングストバナジン酸、ホスホモリブドタングステン酸及びホスホモリブドニオブ酸、これらの酸の周期律表の1族又は2族の金属、たとえば、リチウム、ナトリウム、カリウム、ルビジウム、セシウム、ベリリウム、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム又はバリウムとの塩、ならびにこれらの酸のトリフェニルエチル塩との有機塩が挙げられるが、これらに限定されない。
【0124】
本発明の一実施形態において、共触媒は、従来のメチルアルミノキサン(MAO)、修飾メチルアルミノキサン(MMAO)、(Cの金属塩又はアルキルアルミニウム化合物のMgClとの組み合わせであり得る。
【0125】
前記のイオン化イオン化合物は、単独又は組み合わせで用いることができる。
触媒:共触媒比は、約1:1から約1:5000の範囲、たとえば約1:10から約1:2000の範囲ぐらいであり得る。
【0126】
本発明の自己組織化オレフィン重合触媒は、無機又は有機担体材料によって担持され得る。担体用無機化合物としては、無機酸化物、無機塩化物、及び他の無機塩、たとえば、硫酸塩、炭酸塩、リン酸塩、硝酸塩、ケイ酸塩等を挙げることができるが、これらに限定されない。
【0127】
一実施形態において、担体用無機化合物は、無機酸化物、たとえば、シリカ、チタニア、アルミナ、ジルコニア、クロミア、マグネシア、酸化ホウ素、酸化カルシウム、酸化亜鉛、酸化バリウム、シリカキセロゲル、シリカエアロゲル、及びこれらの混合物、たとえば、シリカ/クロミア、シリカ/クロミア/チタニア、シリカ/アルミナ、シリカ/チタニア、シリカ/マグネシア、シリカ/マグネシア/チタニア、リン酸アルミニウムゲルであり得る。無機酸化物は、NaCO、KCO、CaCO、MgCO、NaSO、Al(SO、BaSO、KNO、Mg(NO、Al(NO、NaO、KO、及びLiOをはじめとする炭酸塩、硝酸塩、硫酸塩、酸化物を含有し得る。
【0128】
本発明において用いられる無機化合物としては、無機化合物ポリマー、たとえば、カルボシロキサン、ホスファジン、シロキサン、及びポリマー/シリカ複合体も挙げられるが、これらに限定されない。
【0129】
本発明の一実施形態において、無機担体材料は、シリカ、アルミナ、チタニア、塩化マグネシウム、及びこれらの混合物であり得るが、これらに限定されない。
本発明のさらなる実施形態において、担体として有用な有機化合物としては、ポリエチレン、エチレン/[α]−オレフィンコポリマー、ポリプロピレン、ポリスチレン、官能化ポリエチレン、官能化ポリプロピレン、官能化ポリスチレン、ポリケトン及びポリエステルが挙げられるが、これらに限定されない。
【0130】
本発明の別の実施形態は、本発明の自己組織化オレフィン重合触媒の存在下、及び場合によって少なくとも一つの前記共触媒の存在下で、オレフィン又はオレフィンの混合物を重合又は共重合するための方法に関する。
【0131】
オレフィン重合触媒を用いる重合の温度は、通常、約−50から約+200℃、たとえば、約−20℃から約150℃の範囲である。別の実施形態において、温度は、約0℃から約100℃の範囲である。別の実施形態において、温度は約40から約60℃の範囲であり得る。重合圧力は、通常、大気圧(約0.1MPa)から約10MPaの範囲である。たとえば、圧力は、約0.5から約1.0MPaの範囲であり得る。重合は、バッチシステム、半連続システム、及び連続システムなどのいずれかによって実施することができる。重合は、異なる反応条件下で、二つ以上の工程で実施することができる。
【0132】
生成するオレフィンポリマーの分子量は、たとえば、重合系中の水素の存在、又は重合温度又は圧力の変化によって制御することができる。本発明の触媒を用いて、約3,000から約3,000,000の数分子量を有するポリマーを得ることができる。本発明の触媒が、低分子量ポリオレフィンならびに狭い分子量分布を有する100万を超える超高分子量ポリオレフィンを製造できることは、非常に有用である。
【0133】
分子量は、いくつかの因子に依存し得る。たとえば、触媒系の置換基は、分子量に影響を及ぼし得、たとえば、(特にWY配位単位に隣接する)置換基が嵩高いほど、高い分子量をもたらし得る。さらに、高いエチレン圧も、高い分子量に寄与する。さらに、高い水素圧は、低い分子量をもたらし得る。触媒中の金属原子の種類も決定的な役割を果たす。たとえば、チタンの使用は、ジルコニウムの使用よりも高い分子量をもたらし得る。本発明によってさらに、自己組織化は、対応する単核触媒と比較して、分子量を増大させることが明らかになった。一般的に、特定の理論に拘束されることなく、より高い分子量は、より高い融点及びより良好な機械的特性をもたらし得ると言うことができる。
【0134】
本発明にしたがって重合できるオレフィンとしては、2〜30個、たとえば2〜20個の炭素原子を有する直線状又は分岐α−オレフィンが挙げられる。一実施形態において、オレフィンは、エチレン、プロピレン、1−ブテン、2−ブテン、1−ペンテン、3−メチル−1−ブテン、1−ヘキセン、4−メチル−1−ペンテン、3−メチル−1−ペンテン、1−オクテン、1−デセン、1−ドデセン、1−テトラデセン、1−ヘキサデセン、1−オクタデセン、及び1−イコセン;3〜30個、たとえば3〜20個の炭素原子を有するシクロオレフィン、たとえば、シクロペンテン、シクロヘプテン、ノルボルネン、5−メチル−2−ノルボルネン、及びテトラシクロドデセン;極性モノマー:たとえば、α、β−不飽和カルボン酸、たとえば、アクリル酸、メタクリル酸、フマル酸、無水マレイン酸、イタコン酸、無水イタコン酸、及びビシクロ[2.2.1]−5−ヘプテン−2,3−ジカルボン酸無水物、ならびにα,β−不飽和カルボン酸金属塩、たとえば、そのナトリウム、カリウム、リチウム、亜鉛、マグネシウム、及びカルシウム塩;α,β−不飽和カルボン酸エステル、たとえば、メチルアクリレート、エチルアクリレート、n−プロピルアクリレート、イソプロピルアクリレート、n−ブチルアクリレート、イソブチルアクリレート、t−ブチルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、n−プロピルメタクリレート、イソプロピルメタクリレート、n−ブチルメタクリレート、及びイソブチルメタクリレート;ビニルエステル、たとえば、ビニルアセテート、ビニルプロピオネート、ビニルカプロエート、ビニルカプリレート、ビニルラウレート、ビニルステアレート、及びビニルトリフルオロアセテート;ならびに不飽和グリシジルエステル、たとえば、グリシジルアクリレート、グリシジルメタクリレート、及びモノグリシジルイタコネートであり得るが、これらに限定されない。
【0135】
ビニルシクロヘキサン、ジエン、及びポリエンも有用である。ジエン及びポリエンとしては、4〜30個、たとえば、4〜20個の炭素原子を有する二つ以上の二重結合を有する環状又は直線状化合物、特にたとえば、ブタジエン、イソプレン、4−メチル−1,3−ペンタジエン、1,3−ペンタジエン、1,4−ペンタジエン、1,5−ヘキサジエン、1,4−ヘキサジエン、1,3−ヘキサジエン、1,3−オクタジエン、1,4−オクタジエン、1,5−オクタジエン、1,6−オクタジエン、1,7−オクタジエン、エチリデンノルボルネン、ビニルノルボルネン、ジシクロペンタジエン、7−メチル−1,6−オクタジエン、4−エチリデン−8−メチル−1,7−ノナジエン、及び5,9−ジメチル−1,4,8−デカトリエンが挙げられる。芳香族ビニル化合物、たとえば、スチレン、o−メチルスチレン、m−メチルスチレン、p−メチルスチレン、o,p−ジメチルスチレン、o−エチルスチレン、m−エチルスチレン、p−エチルスチレンなどのモノ−又はポリアルキルスチレン;メトキシスチレン、エトキシスチレン、ビニル安息香酸、メチルビニルベンゾエート、ビニルベンジルアセテート、ヒドロキシスチレン、o−クロロスチレン、p−クロロスチレン、及びジビニルベンゼンなどの官能基含有スチレン誘導体;3−フェニルプロピレン、4−フェニルプロピレン、及び[アルファ]−メチルスチレンがさらに有用である。
【0136】
本発明の一実施形態において、オレフィンは、C〜C30α−オレフィン、C〜C30官能化アルケン、シクロアルケン、ノルボレン及びこれらの誘導体、ジエン、アセチレン、スチレン、アルケノール、アルケン酸及びこれらの誘導体又は混合物であり得るが、これらに限定されない。したがって、オレフィンは、エチレン、プロピレン、ブテン、ペンテン、ヘキセン、4−メチル−1−ペンテン、オクテン、ノルボレン又はメタクリレートであり得る。一実施形態において、オレフィンは、エチレン又はプロピレンである。これらのα−オレフィン又は官能化アルケンは、単独又はこれらの二つ以上の組み合わせで用いることができる。
【0137】
本発明のオレフィン重合触媒は、高重合活性を有し、狭い分子量分布を有するポリマーをもたらし、そして二つ以上のオレフィンの共重合において狭い組成分布を有するオレフィンコポリマーをもたらす。
【0138】
本発明のオレフィン重合触媒は、α−オレフィン及び共役ジエンの共重合に用いることもできる。
共役ジエンとしては、4〜30個、たとえば、4〜20個の炭素原子を有する脂肪族共役ジエンが挙げられる。このようなジエンの例は、1,3−ブタジエン、イソプレン、クロロプレン、1,3−シクロヘキサジエン、1,3−ペンタジエン、4−メチル−1,3−ペンタジエン、1,3−ヘキサジエン、及び1,3−オクタジエンであり得るが、これらに限定されない。これらの共役ジエンは、単独又はこれらの二つ以上の組み合わせで用いることができる。
【0139】
本発明では、α−オレフィン及び共役ジエンの共重合において、非共役ジエン又はポリエンをさらに用いることができる。非共役ジエン及びポリエンとしては、1,4−ペンタジエン、1,5−ヘキサジエン、1,4−ヘキサジエン、1,4−オクタジエン、1,5−オクタジエン、1,6−オクタジエン、1,7−オクタジエン、エチリデンノルボルネン、ビニルノルボルネン、ジシクロペンタジエン、7−メチル−1,6−オクタジエン、4−エチリデン−8−メチル−1,7−ノナジエン、及び5,9−ジメチル−1,4,8−デカトリエンが挙げられるが、これらに限定されない。
【0140】
本発明のオレフィンポリマーを製造する方法では、前記オレフィン重合触媒の存在下での重合によって、狭い分子量分布を有するオレフィンポリマーが高収率で得られる。本発明の触媒さらなる好ましい効果は、リアクタ付着物の減少に関連する。付着物とは、硬質表面上のある物質の蓄積及び堆積をいう。付着物は偏在し、浸食に似た莫大な作業上の損失をもたらす。通常の単核触媒と同様に、既知Ti触媒は図19に示すように著しいリアクタ付着物を生成したので、単核均一触媒は工業的に利用するためには支持体上に担持させなければならない。しかし、本発明の触媒は、リアクタ付着物を防止する不均一触媒の性質を示した。重合後でも、リアクタはきれいなままであった。
【実施例】
【0141】
以下の実施例は、本発明をさらに説明するために記載し、本発明の範囲を限定することを目的としない。
空気感受性物質にかかわる全ての操作は、標準的シュレンク技術を用いることによるか、又はグローブボックス中、アルゴン雰囲気下で行った。4,4’−ジアミノジフェニルメタン、ベンジジン、3−tert−ブチル−2−ヒドロキシ−ベンズアルデヒド及び無水ヘキサンをSigma−Aldrichから購入し、前処理をせずに使用した。メタノールを4Åモレキュラシーブ上で乾燥させた。ジクロロメタン及びTHFを、MBRAUN−SPS溶媒精製システムを用いて精製した。H−NMR及び13C−NMRをCDCl中、BRUCKER400分光計で記録した。元素分析を、EuroEA3000 Series Elemental Analyzerで実施した。トルエン中メチルアルミノキサン溶液(Al%:約5.2%)をChemtura Organometallics GmbHから購入して、前処理せずに直接使用した。フェノキシ−イミンベースの既知Ti及びZr触媒(図10参照)を、以下の報告されている方法[7]にしたがい、下記のようなSA−Ti−1、SA−Ti−2及びSA−Zr触媒の合成の手順とまったく同じ手順で調製した(図9及び図15参照)。ポリエチレンの高温GPC分析を、トリプル検出器システム(屈折率、PL−BV400粘度計及びPD2040デュアル・アングル光散乱検出器)を有するPolymer Labs GPC−220で実施した。ポリエチレンを分析するための典型的な操作条件は次のとおりである:二つのPLgel、10μm Mixed Bカラム(300×7.5mm)及び一つのPLGeI 10μmガードカラム(50×7.5mm)、160℃、0.0125重量%のBHTで安定化させた1,2,4−トリクロロベンゼンを溶離剤として使用。Polymer Labs SP260試料調製システムを用いて溶解するまで150℃に保ち(典型的には、約4から約6時間)、続いて必要ならば濾過して、濃度1mg/mlのポリマー試料を調製した。
【0142】
(実施例1)
ビスフェノキシ−イミンリガンド(XVIII)の調製
乾燥した150mlフラスコの中で、4,4’−ジアミノジフェニルメタン(1.34g、6.76mmol)を25mlの無水メタノール中に溶解させた。数分間撹拌した後、3−tert−ブチル−2−ヒドロキシ−ベンズアルデヒド(2.65g、14.87mmol)を添加し、続いて数滴のギ酸を添加した。結果として得られた混合物を1時間、室温で撹拌し、次いで、アルゴン雰囲気下で1日還流した。室温まで冷却した後、生成物を濾過により単離し、12mlのメタノールで洗浄し、真空中で乾燥させて、3.45gの黄色粉末生成物(収率98%)を得た。H−NMR(CDCl、400MHz,δ):1.50(s,18H,−C(CH)、4.04(s,2H,−CH−)、6.87〜7.42(多重項,14H,芳香族−H)、8.63(s,2H,−CH=N−)、13.96(s,2H,−OH)。13C−NMR(CDCl,400MHz,δ):29.38、34.93、41.04、118.34、119.13、121.37、129.89、130.30、130.62、137.67、139.64、146.66、160.55、162.90。元素分析C3538(518.71):計算値:C81.05%、H7.38%、N5.40、実測値:C80.89%、H7.41%、N5.46%。HRMS(El、m/z):計算値518.2933、実測値518.2903(M)。
【0143】
(実施例2)
ビスフェノキシ−イミンリガンド(XIX)の調製
ビスフェノキシ−イミンリガンド(XIX)を、リガンド(XVIII)の合成の手順と同じ手順で、30mlの無水メタノール中ベンジジン(1.06g、5.74mmol)及び3−tert−ブチル−2−ヒドロキシ−ベンズアルデヒド(2.09g、11.49mmol)を使用して合成した。2.80gの黄色粉末(収率99%)を得た。H−NMR(CDCl、400MHz,δ):1.51(s,18H,−C(CH)、6.90〜7.71(多重項,14H,芳香族−H)、8.71(s,2H,−CH=N−)、13.96(s,2H,−OH)。13C−NMR(CDCl,400MHz,δ):29.36、34.94、118.41、119.12、121.74、127.87、130.48、130.71、137.72、138.80、147.64、160.61、163.11。元素分析C3436(504.68):計算値C80.92%、H7.19%、N5.55%、実測値C80.98%、H7.12%、N5.62%。HRMS(EI,m/z):計算値504.2777、実測値504.2823(M)。単結晶をトルエン中で晶出させた。X線分子構造を図16に示した。結晶は、単斜晶、空間群C2/cである。非対称ユニットセルあたり一つのC3434Cl分子が存在する。最終R値は、R1=0.0536及びwR2=0.1311(2シータ、55°Cまで)。
【0144】
(実施例3)
フェノキシ−イミンリガンド(I)の調製
乾燥した100mlフラスコの中で、アニリン(1.44g、15.46mmol)を撹拌しながら25mlの無水メタノール中に溶解させた。次いで、3−tert−ブチル−2−ヒドロキシ−ベンズアルデヒド(2.5g、14.03mmol)を添加し、続いて数滴のギ酸を添加した。結果として得られた混合物を1時間、室温で撹拌し、次いでアルゴン雰囲気下、8時間還流した。室温まで冷却した後、メタノールを真空下で除去して、黄色残渣を得、これをカラムクロマトグラフィによって精製し、ヘキサン/酢酸エチル(10:1)で溶出して、生成物を淡黄色油状物として得た。3.2g、収率90%。H−NMR(CDCl,400MHz,δ):1.54(s,9H,terf−ブチル)、6.91−7.48(m,8H,芳香族−H)、8.66(s,1H,−CH=N−)、13.97(s,1H,−OH)。13C−NMR(CDCl,400MHz,δ):29.39、34.96、118.37、119.10、121.23、126.75、129.41、130.39、130.71、137.69、148.51、160.58、163.42。
【0145】
(実施例4)
触媒SA−Ti−1の合成
精密な比較のために、触媒SA−Ti−1、SA−Ti−2及びSA−Zrを、フェノキシ−イミンベースの既知Ti及びZr触媒の合成の手順とまったく同じ手順を用いて合成した。乾燥したシュレンク管の中で、リガンド(XVIII)(1.00g、1.93mmol)を20mlのTHF中に溶解させた。−78℃まで冷却した後、2.41mlの1.60Mのn−ブチルリチウム(3.86mmol)ヘキサン溶液を10分間にわたって滴下した。次いで、混合物を室温まで昇温させ、2時間撹拌した。結果として得られた溶液を、−50℃で、カニューレを通してTiCl(0.3657g、1.93mmol)/THF(15ml)溶液中に20分間にわたり滴下した。結果として得られた混合物を再度室温まで温め、18時間撹拌した。THFを除去した後、残留固体を30mlのジクロロメタンで抽出し、これを次いで濾過して、透明溶液を得た。ジクロロメタンを除去して、繰り返し単位C3536ClTi・xTHFを有する自己組織化Ti触媒である深紅色を帯びた褐色固体を得、これを室温の真空中で数時間乾燥させた。元素分析は、xが1に近いことを示した。C3536ClTi・THF(FW707.61)についての計算値:C66.20%、H6.27%、N3.96%、Ti6.77%、実測値:C65.50%、H6.59%、N3.75%、Ti5.82%。得られた触媒:1.35g、収率99%。
【0146】
(実施例5)
触媒SA−Ti−2の合成
表記触媒SA−Ti−2を、30mlのTHF中1.00gのリガンド(XIX)(1.98mmol)及び30mlのTHF中、等モルのTiClを用いて、SA−Ti−1の合成の手順とまったく同じ手順を用いて合成した。生成物を40mlのDCMで抽出した。DCMを真空下で除去して、繰り返し単位C3434ClTi・xTHFを有する深紅色を帯びた褐色固体として自己組織化SA−Ti−2触媒を得た。元素分析は、xが1に近いことを示した。C3434ClTi・THF(FW693.58)についての計算値:C65.81%、H6.10%、N4.04%、実測値:C63.52%、H5.98%、N4.01%。得られた触媒:1.37g、収率99%。
【0147】
(実施例6)
触媒SA−Zrの合成
表記触媒SA−Zrを、1.00gのリガンド(XVIII)(1.93mmol)及び等モルのZrClを用いて、SA−Ti−1の合成の手順とまったく同じ手順を用いて合成した。自己組織化Zr触媒を、繰り返し単位C3536ClZr・xTHFを有する淡黄色固体として得た。元素分析は、xが1に近いことを示した。C3536ClZr・THF(FW750.93)についての計算値:C62.38%、H5.91%、N3.73%、Zr12.15%、実測値:C63.50%、H6.51%、N3.69%、Zr10.60%。得られた触媒:1.42g、収率98%。
【0148】
(実施例7)
フェノキシ−イミンベースの既知Ti触媒(既知Ti)の合成
表記Ti触媒を、1.00gのリガンド(I)(3.947mmol)及び等モルのTiClを用いて、SA−Ti−1の合成の手順とまったく同じ手順を用いて合成した。一般式C3436ClTi・xTHFを有する深紅色を帯びた褐色固体として触媒を得た。元素分析は、xが1に近いことを示した。C3436ClTi・THF(FW695.59)についての計算値:C65.62%、H6.38%、N4.03%、Ti6.89%、実測値:C66.10%、H6.56%、N4.01%、Ti6.31%。得られた触媒:1.34g、収率98%。
【0149】
(実施例8)
フェノキシ−イミンベースの既知Zr触媒(既知Zr)の合成
1.00gのリガンド(I)(3.947mmol)及び等モルのZrClを用い、SA−Ti−1の合成の手順とまったく同じ手順を用いて、表記触媒を合成した。一般式C3436ClZr・xTHFを有する黄色固体として触媒を得た。元素分析は、xが1に近いことを示した。C3436ClZr・THF(FW738.91)についての計算値:C61.77%、H6.00%、N3.79%、Zr12.35%、実測値:C62.62%、H6.06%、N3.74%、Zr11.84%。得られた触媒:1.37g、収率94%。
【0150】
(実施例9)
エチレン重合(一般的手順)
重合は、その撹拌速度が調節可能なメカニカルスターラを備えた300mlのステンレス鋼オートクレーブ中で行った。オートクレーブを加熱マントルによって加熱した。反応前に、オートクレーブを真空下、80℃で1時間乾燥し、その期間中に、オートクレーブを無水アルゴンで少なくとも3回洗い流した。次いで、温度を所望の反応温度(60℃)まで下げ、リアクタを真空にし、エチレンを再充填した。次いで、100mlのヘキサン、2.0mmolのMAO及びジクロロメタンを溶媒とする触媒溶液を、エチレン(〜0.7bar(10PSI))及び300RPMの撹拌速度下で、この順にシリンジで添加した。次いで、エチレンを急速に5.5bar(80PSI)まで加圧し、撹拌速度を500RPMに調節した。重合を所定の時間行った後、エチレン圧を急速に抜き、反応を2mlのエタノールで停止させた。ポリエチレンを濾過によって集め、エタノール及びヘキサンで洗浄し、真空下、50℃で乾燥させた。得られた白色ポリマーを秤量し、GPCで分析した。活性を、KgPEmol−1−1bar−1の単位で計算した。
【0151】
(a)触媒活性及び触媒寿命
工業的生産ラインにおける触媒の保持時間は、通常1〜2時間の間であるので、新規な自己組織化チタン及びジルコニウム触媒(SA−Ti−1、SA−Ti−2及びSA−Zr)の両方を、フェノキシ−イミンリガンドベースの対応する既知触媒(既知Ti及び既知Zr)と、60℃で2時間までの実際条件下で比較した。SA−Ti−1は、異なる反応時間で既知Tiよりもはるかに高い活性を示した。反応時間が長いほど、活性の増加は高く、2時間の反応の場合、141%活性まで増加した。下記表1を参照。
【0152】
【表1】

SA−Ti−1は、既知Tiと比較してより安定でもあり、はるかに遅い触媒不活性化を示す。2時間後、SA−Ti−1は依然としてかなり活性であり、非常に安定で、長寿命かつ強固な触媒であることを示す。既知Ti触媒の活性は2時間後に非常に低くなったが、このことは、触媒が急速に分解されたことを示す。下記表2及び図11を参照。図13は、SA−Ti−1触媒では、ポリエチレンは反応時間の延長とともに急速に増加し、一方、既知Ti触媒では、ポリエチレンは非常にゆっくりと増加することを明確に示した。
【0153】
【表2】

自己組織化SA−Zr触媒も、異なる反応時間で、既知Zr触媒よりもはるかに高い活性を示した。反応時間が長いほど、高い活性増加をもたらし、2時間の反応の場合、332%までの活性増加であった。表3を参照。
【0154】
【表3】

SA−Zrは、既知Zrよりもはるかに遅い触媒不活性化も示した。表4及び図12を参照。2時間後、SA−Zrは依然としてかなり活性であり、一方、既知Zr触媒は非常に弱くなり、このことは、触媒の大部分が分解されたことを示す。図14は、SA−Zr触媒では、ポリエチレンは反応時間の延長とともに急速に増加し、一方、既知Zr触媒では、ポリエチレンは異なる反応時間でもほとんど同じように見えることを明確に示した。
【0155】
【表4】

これらの結果は、SA−Ti−1及びSA−Zrが、どちらも既知触媒と比較して数倍高い生産性を示す、長寿命かつ高性能のエチレン重合触媒であることを明確に示した。
【0156】
SA−Ti−2触媒についてもエチレン重合に関して調査を行い、実際条件下、60℃で2時間まで、既知Ti触媒と比較した(表5を参照)。既知Ti触媒と比較して、SA−Ti−2は、三つの反応時間(それぞれ、30分、60分及び120分)で、52%、125%及び208%活性増加を示した。SA−Ti−2触媒も、既知Ti触媒よりもはるかに高い活性を示し、反応時間が長いほど、高い活性増加をもたらしたと結論づけることができる。
【0157】
【表5】

三つの反応期間の間の触媒SA−Ti−2活性(0〜30分、30〜60分及び60〜120分)を計算し、既知Ti触媒と比較した。表6及び図17を参照。はるかに高い活性を示すこととは別に、SA−Ti−2は、はるかに遅い触媒不活性化を提示し、これは長寿命かつ強固な触媒であることを示している。図18は、SA−Ti−2触媒では、ポリエチレンは反応時間の延長とともに急速に増大し、一方、既知Ti触媒では、ポリエチレンは非常にゆっくりと増加することを明確に示した。
【0158】
【表6】

既知Ti及び既知Zrの急速な触媒分解は、担持リガンドの共触媒混合物中に含んでいるアルミニウムへの移動によって主に引き起こされる(図4を参照)。自己組織化触媒SA−Ti−1、SA−Ti−2及びSA−Zrは、より安定な構造を有しており、リガンドの移動は自己組織化系を破壊する必要があり、これはより高いエネルギーを必要とし得る結果、リガンド移動が抑制される。そのため、自己組織化触媒ははるかに長い触媒寿命及びはるかに高い活性を示した。
【0159】
(b)分子量(M
実際の工業用触媒は、市販の最終製品、たとえば、フィルム、包装材及び管等を製造するために用いられる高分子量(M)ポリマーを生成する。ほとんどの非シクロペンタジエニル・シングルサイト触媒に関して、一つの大きな問題は、生成されるポリマーのMが低すぎることである。GPC分析により、新規自己組織化Ti及びZr触媒は、対応する既知Ti及び既知Zr触媒と比較してはるかに高いMPEを生成することが明らかになった(前記表1、3及び5を参照)。例えば、Ti触媒に関して30分間の実施で、SA−Ti−1の分子量(M:651.1×10、M:1656.1×10)及びSA−Ti−2の分子量(M:642.2×10、M:2878.9×10)は既知Tiの分子量(M:329.0×10;M:670.8×10)よりもはるかに高く、Zr触媒に関して、2時間の実施で、SA−Zrの分子量(M:23.37×10、M:900.9×10)も既知Zrの分子量(M:5.10×10、M:183.5×10)よりもはるかに高かった。
【0160】
実際条件下において、従来のチーグラー・ナッタ触媒及びほとんどのメタロセンならびに非シクロペンタジエニル・シングルサイト均一触媒によって高活性で生成することが困難である、狭い分子量分布を有し、かつ100万を超える超高分子量PEを、SA−Ti−1及びSA−Ti−2触媒が生成可能であることは非常に有用であり、興味深い。SA−Ti−1は、低圧(5.5bar)下かつ30分間の実施でも、最大1,656,000のMを有するPEを生成した。2時間の実施では、Mは最大2,391,000の高さである。さらに、生成されるPEは狭い分子量分布(M/M=2.5〜3.2)を有する。SA−Ti−2は、低圧(5.5bar)下かつ30分間の実施でも、最大2,879,000のMを有するPEを生成した。2時間の実施では、Mは最大3,012,000の高さである。さらに、生成されたPEは依然として狭い分子量分布(M/M=3.7〜4.5)を有する。超高分子量PEは、例えば、結束ひも、ローラ、ギア、歯車などの広い用途を有する非常に有用な物質の一種である。これらの結果は、SA−Ti−1及びSA−Ti−2が高品質のPEを低圧下かつ高活性で生成可能であることを明確に示した。
【0161】
(c)リアクタ付着物
通常の単核触媒と同様に、既知Ti触媒は図19に示すように著しいリアクタ付着物を引き起こすため、単核均一触媒は、工業的用途のためには支持体上に担持されなければならない。さらに高い活性、はるかに遅い触媒不活性化及びはるかに高分子量のポリマーを生成することに加えて、触媒SA−Ti−2は、不均一触媒のリアクタ付着物を防止する性質を示した。重合後、リアクタは図19に示すようにきれいなままであった。防汚特性は、産業における連続製造を達成するために非常に重要である。
【0162】
参考文献
本願では、下記の参考文献が引用されている。
【0163】
【表7】

【0164】
【表8】

【0165】
【表9】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I)
【化1】

の遷移金属化合物を含む自己組織化オレフィン重合触媒であって、
Mは、周期律表の3〜11族からなる群より選択される遷移金属であり、
Xは、H、ハロゲン、CN、任意に置換されていてもよいN(R、OH、任意に置換されていてもよいC〜C20アルキル、任意に置換されていてもよいC〜C20アルコキシからなる群より独立して選択され、ここでRは、任意に置換されていてもよいC〜C20アルキル、任意に置換されていてもよいC〜C20アリール及びハロゲンからなる群より独立して選択され、
qは少なくとも2の整数であり、
mは少なくとも2の整数であり、
nは(I)を電気的に中性にする整数であり、
Lは、独立して、少なくとも二つの結合した配位単位を有するリガンドであり、各配位単位は異なる遷移金属と結合する、自己組織化オレフィン重合触媒。
【請求項2】
前記リガンドLが、次式(II)
【化2】

を有し、式中、
各WY単位は配位単位を形成し、
rは少なくとも2の整数であり、
Zは、約2から約100個の炭素原子を有する炭化水素及び約2から約100個の炭素原子を有するヘテロ炭化水素からなる群より選択される架橋スペーサであり、Zは、各配位単位WYが異なる遷移金属と結合するようなサイズ、長さ及び角度を有し、
Wは、中性又は荷電した形態の酸素原子、硫黄原子、セレン原子、窒素原子、リン原子、及びカルベンならびに任意に置換されていてもよいC〜C20アリールからなる群より選択される金属配位部分であり、
Yは、中性又は荷電した形態の酸素原子、硫黄原子、セレン原子、窒素原子、リン原子、及びカルベンならびに共役C〜C20系からなる群より選択される金属配位部分であり、
WY単位中の半円は、金属配位部分W及びYが結合している炭化水素骨格を表す、
請求項1に記載の自己組織化オレフィン重合触媒。
【請求項3】
前記金属配位部分W及びYが結合している前記炭化水素骨格が、任意に置換されていてもよいC〜C20アリール基、任意に置換されていてもよいC〜C20ヘテロアリール基及び任意に置換されていてもよいSi基からなる群より選択される、請求項2に記載の自己組織化オレフィン重合触媒。
【請求項4】
前記WY単位が、
【化3】

【化4】

からなる群より選択され、
式中、R、R、R、R、R、R、及びRは、同一又は異なり、かつ、それぞれ、H、任意に置換されていてもよい直鎖又は分岐C〜C20アルキル、任意に置換されていてもよい直鎖又は分岐C〜C20アルケニル、任意に置換されていてもよい直鎖又は分岐C〜C20アルキニル、任意に置換されていてもよいC〜C20アリール、任意に置換されていてもよいC〜C20ヘテロアリール、ハロゲン、OH、NO、及びCNからなる群より選択され、ここで、R〜Rの二つ以上は、互いに結合して環を形成し得る、請求項2又は3に記載の自己組織化オレフィン重合触媒。
【請求項5】
Zが、任意に置換されていてもよいC〜C10脂環式基、任意に置換されていてもよいC〜C20アリール基、任意に置換されていてもよいC〜C20ヘテロアリール基、縮合核系、及び二つ、三つ又は四つの任意に置換されていてもよいC〜C20アリール基が、N原子、Si原子、C〜C20アルキル基、C〜C20アルケニル基又はC〜C20アリール基を介して結合された系からなる群より選択される、請求項2から4のいずれか一項に記載の自己組織化オレフィン重合触媒。
【請求項6】
Zが、
【化5】

【化6】

【化7】

からなる群より選択されるビスリンカーであって、R11〜R20は前記R〜Rと同じであり、かつsは1〜20の整数である、請求項5に記載の自己組織化オレフィン重合触媒。
【請求項7】
Zが、
【化8】

からなる群より選択されるトリリンカーであって、R〜R12は前記R〜Rと同じである、請求項5に記載の自己組織化オレフィン重合触媒。
【請求項8】
Zが、
【化9】

からなる群より選択されるテトラキスリンカーであって、R〜R16は前記R〜Rと同じである、請求項5に記載の自己組織化オレフィン重合触媒。
【請求項9】
Zが、その連結部位が五つ以上であるマルチリンカーである、請求項5に記載の自己組織化オレフィン重合触媒。
【請求項10】
Zがマクロポリマーマルチリンカーである、請求項2から9のいずれか一項に記載の自己組織化オレフィン重合触媒。
【請求項11】
リガンドLが、
【化10】

【化11】

【化12】

【化13】

【化14】

【化15】

からなる群より選択される、請求項1から10のいずれか一項に記載の自己組織化オレフィン重合触媒。
【請求項12】
配位単位WYの金属に対するモル比が約0.5:1から約6:1である、請求項2から11のいずれか一項に記載の自己組織化オレフィン重合触媒。
【請求項13】
配位単位WYの金属に対するモル比が、約1:1から約3:1である、請求項12に記載の自己組織化オレフィン重合触媒。
【請求項14】
遷移金属が、Sc、Y、La、Ti、Zr、Hf、V、Nb、Ta、Sm、Yb、Cr、Mo、W、Mn、Tc、Re、Fe、Ru、Os、Co、Rh、Ir、Ni、Pd、Pt、Cu、Zn及びこれらの混合物からなる群より選択される、請求項1から13のいずれか一項に記載の自己組織化オレフィン重合触媒。
【請求項15】
遷移金属が、Ti、Zr、Hf、V、Nb、Ta、Sm、Yb及びこれらの混合物からなる群より選択される、請求項14に記載の自己組織化オレフィン重合触媒。
【請求項16】
遷移金属が、Ti、Zr及びこれらの混合物からなる群より選択される、請求項15に記載の自己組織化オレフィン重合触媒。
【請求項17】
Xが、F、Cl、Br、I、H、CH、CHCH、OCH、OCHCH、OCH(CH、OC(CH、OC、CN、N(CH、及びN(CHCHからなる群より選択される、請求項1から16のいずれか一項に記載の自己組織化オレフィン重合触媒。
【請求項18】
触媒が、均一触媒又は不均一触媒である、請求項1から17のいずれか一項に記載の自己組織化オレフィン重合触媒。
【請求項19】
固体支持体をさらに含む、請求項1から18のいずれか一項に記載の自己組織化オレフィン重合触媒。
【請求項20】
前記固体支持体が無機物質又は有機物質である、請求項19に記載の自己組織化オレフィン重合触媒。
【請求項21】
前記固体支持体が、シリカ、アルミナ、チタニア、塩化マグネシウム、及びこれらの混合物からなる群より選択される無機物質である、請求項20に記載の自己組織化オレフィン重合触媒。
【請求項22】
触媒が、三次元有機金属フレームワークを形成する、請求項1から21のいずれか一項に記載の自己組織化オレフィン重合触媒。
【請求項23】
前記触媒が、直線状組織化構造を形成する、請求項1から22のいずれか一項に記載の自己組織化オレフィン重合触媒。
【請求項24】
前記触媒が、少なくとも二つの金属中心を含有する大環状組織化構造を形成する、請求項1から23のいずれか一項に記載の自己組織化オレフィン重合触媒。
【請求項25】
有機金属化合物、有機アルミニウムオキシ化合物、及びイオン化イオン化合物からなる群より選択される少なくとも一つの共触媒をさらに含む、請求項1から24のいずれか一項に記載の自己組織化オレフィン重合触媒。
【請求項26】
前記共触媒が、従来型メチルアルミノキサン(MAO)、修飾メチルアルミノキサン(MMAO)、(Cの金属塩及びアルキルアルミニウム化合物とMgClとの組み合わせである、請求項25に記載の自己組織化オレフィン重合触媒。
【請求項27】
オレフィン又はオレフィンの混合物を、請求項1から26のいずれか一項に記載の自己組織化オレフィン重合触媒の存在下で重合又は共重合する方法。
【請求項28】
前記方法を、約0.1MPaから約10MPaの範囲の圧力で実施する、請求項27に記載の方法。
【請求項29】
前記方法を約−50℃から約150℃の温度範囲で実施する、請求項27又は28に記載の方法。
【請求項30】
約1:1から約1:5000の触媒:共触媒モル比で前記方法を実施する、請求項27から29のいずれか一項に記載の方法。
【請求項31】
約1:1から約1:2000の触媒:共触媒モル比で前記方法を実施する、請求項30に記載の方法。
【請求項32】
前記オレフィンが、C〜C30αオレフィン、C〜C30官能化アルケン、シクロアルケン、ノルボレン及びこれらの誘導体、ジエン、アセチレン、スチレン、アルケノール、アルケン酸及びこれらの誘導体又は混合物からなる群より選択される、請求項27から31のいずれか一項に記載の方法。
【請求項33】
前記オレフィンが、エチレン、プロピレン、ブテン、ペンテン、ヘキセン、オクテン、ノルボレン及びメタクリレートからなる群より選択される、請求項32に記載の方法。
【請求項34】
前記オレフィンがエチレンである、請求項33に記載の方法。
【請求項35】
請求項27から34のいずれか一項に記載の方法にしたがって得られるポリオレフィン。
【請求項36】
低分子量ポリオレフィンから超高分子量ポリオレフィンまでの範囲の分子量を有する、請求項35に記載のポリオレフィン。
【請求項37】
次式(II)
【化16】

の化合物であって、
各WY単位は配位単位を形成し、
rは少なくとも2の整数であり、
Zは、約2〜約100個の炭素原子を有する炭化水素及び約2〜約100個の炭素原子を有するヘテロ炭化水素からなる群より選択される架橋スペーサであり、ここで、Zは、各配位単位WYが異なる遷移金属原子と結合するようなサイズ、長さ、及び角度を有し、
Wは、中性又は荷電した形態の酸素原子、硫黄原子、セレン原子、窒素原子、リン原子、及びカルベンならびにC〜C20の共役系からなる群より選択される金属配位部分であり、
Yは、中性又は荷電した形態の酸素原子、硫黄原子、セレン原子、窒素原子、リン原子、及びカルベンならびに共役C〜C20系からなる群より選択される金属配位部分であり、
WY単位中の半円は、金属配位部分W及びYが結合している炭化水素骨格を表す化合物。
【請求項38】
前記金属配位部分W及びYが結合している前記炭化水素骨格が、任意に置換されていてもよいC〜C20アリール基、任意に置換されていてもよいC〜C20ヘテロアリール基及び任意に置換されていてもよいSi基からなる群より選択される、請求項37に記載の化合物。
【請求項39】
前記WY単位が、
【化17】

【化18】

からなる群より選択され、
式中、R、R、R、R、R、R、及びRは、同一又は異なり、かつ、それぞれ、H、任意に置換されていてもよい直鎖又は分岐C〜C20アルキル、任意に置換されていてもよい直鎖又は分岐C〜C20アルケニル、任意に置換されていてもよい直鎖又は分岐C〜C20アルキニル、任意に置換されていてもよいC〜C20アリール、任意に置換されていてもよいC〜C20ヘテロアリール、ハロゲン、OH、NO、及びCNからなる群より選択され、ここで、R〜Rの二つ以上は、互いに結合して環を形成し得る、請求項37又は38に記載の化合物。
【請求項40】
Zが、任意に置換されていてもよいC〜C10脂環式基、任意に置換されていてもよいC〜C20アリール基、任意に置換されていてもよいC〜C20ヘテロアリール基、縮合核系、及び二つ、三つ又は四つの任意に置換されていてもよいC〜C20アリール基が、N原子、Si原子、C〜C20アルキル基、C〜C20アルケニル基又はC〜C20アリール基を介して結合された系からなる群より選択される、請求項37から39のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項41】
Zが、
【化19】

【化20】

【化21】

【化22】

【化23】

からなる群より選択され、式中、R11〜R20は前記R〜Rと同じであり、かつsは1〜20の整数である、請求項40に記載の化合物。
【請求項42】
アルデヒド又はケトンと、ジアニリン、トリアニリン又はテトラキスアニリンとの間のシッフ塩基縮合によって、請求項37から41のいずれか一項に記載の化合物を製造する方法。
【請求項43】
アルデヒド又はケトンが、
【化24】

からなる群より選択され、式中、R〜Rは請求項1から42のいずれか一項に記載のとおりである、請求項42に記載の方法。
【請求項44】
ジアニリン、トリアニリン又はテトラキスアニリンが、
【化25】

からなる群より選択され、式中、Zは請求項1から43のいずれか一項に記載のとおりである、請求項42に記載の方法。
【請求項45】
アニリンと、ジアルデヒド/ジケトン、トリアルデヒド/トリケトン又はテトラキスアルデヒド/テトラキスケトンとの間のシッフ塩基縮合によって、請求項37から41のいずれか一項に記載の化合物を製造する方法。
【請求項46】
アニリンが、
【化26】

からなる群より選択され、かつ、R〜Rは請求項1から45のいずれか一項に記載のとおりである、請求項45に記載の方法。
【請求項47】
ジアルデヒド/ジケトン、トリアルデヒド/トリケトン又はテトラキスアルデヒド/テトラキスケトンが、
【化27】

からなる群より選択され、かつ、R及びZは前記定義の通りである、請求項45に記載の方法。
【請求項48】
シッフ塩基縮合が、ギ酸、酢酸、p−トルエンスルホン酸、ルイス酸及び固体触媒からなる群より選択される酸触媒によって促進され得る、請求項42から47のいずれか一項に記載の化合物を製造する方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8a】
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【図8b】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20a】
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【図20b】
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【図20c】
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【公表番号】特表2011−510132(P2011−510132A)
【公表日】平成23年3月31日(2011.3.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−543087(P2010−543087)
【出願日】平成20年1月14日(2008.1.14)
【国際出願番号】PCT/SG2008/000015
【国際公開番号】WO2009/091334
【国際公開日】平成21年7月23日(2009.7.23)
【出願人】(503231882)エージェンシー フォー サイエンス,テクノロジー アンド リサーチ (179)
【Fターム(参考)】