説明

自浄式視線誘導標示体

【課題】光の照射量が少ない場所に設置されても、また夜間においても、標示面に付着した汚れを除去することのできる自浄式視線誘導標示体を提供する。
【解決手段】空気触媒としてのリン酸チタン化合物を含有する皮膜6を標示面3の表面に形成しているので、光の照射量が少ない場所や夜間においても、活性化されたリン酸チタン化合物の酸化力によって汚れが分解されると共に、親水化された表面によって、表面に付着する汚れと表面との間に水が割り込んで汚れを浮かせるために汚れが付着しにくく、また汚れが付着しても降雨等により容易に洗い流されて除去されるため、汚れが堆積しにくく、標示面3の視認性を長期にわたって良好な状態で維持できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、道路の側縁や中央分離帯等に設置されて車両運転者に視線誘導をするためのものであって、特に標示面に付着する汚れが降雨等により洗浄されるようになされた自浄式視線誘導標示体に関するものである。
【背景技術】
【0002】
道路に設置されて車両運転者に視線誘導をするための視線誘導標示体としては、例えば支柱上端に車両のドライバーに向けて再帰性反射体からなる標示面が形成され、車両のヘッドライト等の光をこの再帰性反射体によりドライバーに向けて再帰反射させることにより、標示面が明るく輝いて視線誘導を行うようになされた、いわゆるデリニェーターやスノーポール等があり、また柱状体の側面を標示面として、その標示面に再帰性反射シートからなる反射体が貼着され、前記と同様に再帰性反射体によりドライバーに向けて再帰反射させることにより、標示面が明るく輝いて視線誘導を行うようになされた、いわゆるポールコーンと称されるもの等がある。
【0003】
そして上記の如き視線誘導標示体は、道路に設置されて常に車両の排気ガスや塵埃にさらされているために、時々洗浄しないとこれら排気ガスや塵埃等が標示面に付着して汚れ、著しくその視認性能を低下させる問題があったため、それを解消するために、例えばデリニェーターにおいては、特許文献1に記載されているように、標示面の前面に羽根片が取付けられ、その羽根片が風力により回転すると羽根片に取付けられた払拭子により標示面が自動的に清掃されるようになされたものがあり、またポールコーンにおいては、特許文献2に記載されているように、標示面の前面に風力によって揺動する払拭子を垂下し、この払拭子を風力によって揺動させることにより自動的に清掃されるようになされたものがある。
【0004】
しかしながら上記の如き風力によって標示面を清掃するものにあっては、標示面の前面に、羽根片や払拭子を取付けているために、これらによって標示面が遮られてその面積分だけ視認性が低下する問題があり、また羽根片や払拭子を取付けるには手間であり、さらに景観および美観上見苦しく、また長期的には羽根片や払拭子にも汚れが堆積し依然として視認性が低下したり見苦しくなるなどの問題があった。
【0005】
そこで上記の如き問題を解消するために、例えば特許文献3には、光触媒及びバインダー成分を含む皮膜状の表層部を備え、該表層部中における光触媒の濃度が視線誘導標示体の内部側から表面に向かって高くなされた視線誘導標示体が開示されている。
【0006】
【特許文献1】実公昭55−27685号公報
【特許文献2】特開平7−138920号公報
【特許文献3】特開2004−107965号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上記の如き視線誘導標示体においては、光が照射されることにより、表層部に含まれる光触媒が活性化され、汚れを分解すると共に、親水化された表面と汚れの間に水が入り込み、汚れを浮かせるようになされていることから、光の照射量が少ない場所に設置される場合、汚れの分解・除去が進み難いので、汚れが堆積し、視認性が低下する懸念があった。また、光の照射が殆どない夜間においては、汚れの分解は進まないものであった。
【0008】
そこで本発明は上記の如き問題点を解消し、光の照射量が少ない場所に設置されても、また夜間においても、標示面に付着した汚れを除去することのできる自浄式視線誘導標示体を提供せんとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために、本発明は次のような構成としている。
すなわち、本発明に係る自浄式視線誘導標示体は、視線誘導をするために車両運転者に視認させる標示面の少なくとも一部が反射体から形成されると共に、該標示面上に空気触媒としてのリン酸チタン化合物を含有する被膜が形成され、該被膜が空気と接触することによりリン酸チタン化合物が活性化されてその表面が親水化され、降雨等によって表面に付着した汚染物質が洗浄されるようになされたことを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、空気触媒としてのリン酸チタン化合物を含有する皮膜を標示面の表面に形成しているので、光の照射量が少ない場所や夜間においても、活性化されたリン酸チタン化合物の酸化力によって汚れが分解されると共に、親水化された表面によって、表面に付着する汚れと表面との間に水が割り込んで汚れを浮かせるために汚れが付着しにくく、また汚れが付着しても降雨等により容易に洗い流されて除去されるため、汚れが堆積しにくく、標示面の視認性を長期にわたって良好な状態で維持できる。また、付着した汚れは表面から除去されやすい状態となっているため、作業者が清掃作業を行う場合においても、容易に汚れを除去できるので、清掃作業の時間短縮を図ることができ好ましい。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
本発明に係る実施の形態について、図面に基づき以下に具体的に説明する。
すなわち図1はデリニェーターとして用いられる本発明の実施の一形態を示す正面図、図2はポールコーンとして用いられる本発明の実施の一形態を示す正面図、図3は図1における主要部の断面図、図4は図2における主要部の断面図である。
【0012】
図1において、1は鋼管の外側面に合成樹脂を塗装する等して作製した支柱であって、その上端にはアルミニウム合金等からなる枠体2が取付けられ、その枠体2に車両運転者に向けて再帰性反射体からなる標示面3が取付けられ、車両のヘッドライト等の光をこの再帰性反射体により車両運転者に向けて再帰反射させることにより、標示面3が明るく輝くものであり、この標示面3を車両運転者に視認させることにより視線誘導を行うようになされている。
【0013】
前記再帰性反射体からなる標示面3は、ポリカーボネートやアクリル樹脂等よりなる透光性合成樹脂板の裏面がダイヤカットされたものであり、この標示面3に光が照射されると裏面のダイヤカットにより再帰反射されて、照射された方向に光が反射されるようになされたものである。
【0014】
図2においては、車両等に踏みつけられても復元性を有するようにゴム又は軟質ウレタン等の柔軟性を有する合成樹脂から形成された円柱状体4の側面が標示面3となされ、この標示面3を車両運転者に視認させることにより視線誘導をするためのものであって、その標示面3には夜間の視認性を高めるために、複数の再帰性反射シートからなる反射体5が上下に間隔を開けて円周状に貼着される。
【0015】
そして図1においては、図3に示す如く、再帰性反射体からなる標示面3の全面に空気触媒としてのリン酸チタン化合物を含有する被膜6が形成され、又図2においては、図4に示す如く、円周状に貼着された複数の再帰性反射シートからなる反射体5を含めて標示面3となされた円柱状体4の側面全面に、空気触媒としてのリン酸チタン化合物を含有する被膜6が形成されている。
【0016】
そして上記リン酸チタン化合物を含有する被膜6が空気と接触することにより、被膜6の表面が高度に親水化され、表面に付着する汚れが除去される。この理由は定かではないが、空気中の酸素分子や酸化物中の酸素分子によりリン酸チタン化合物が活性化し、これによって生じた水酸基や酸素原子等からなる活性基によってその被膜6の表面が親水化されるものと考えられ、そしてこの親水化によって、表面に付着した汚れが降雨等によって洗浄されるものと考えられる。
【0017】
空気触媒としてのリン酸チタン化合物を含有する被膜6を形成するには、リン酸チタン化合物を含む溶液又は分散液をディッピングやスプレー、フローコーター等により塗布すれば、均一且つ平滑な被膜6が形成されるので好ましい。
【0018】
尚、本発明に係る自浄式視線誘導標示体をトンネル内等の降雨が当たらない場所に設置した場合でも、上記のように、皮膜6の表面が高度に親水化されていることから、水をかけて清掃すれば、表面に付着した汚れを容易に除去することができる。
【産業上の利用可能性】
【0019】
本発明に係る自浄式視線誘導標示体は、空気触媒としてのリン酸チタン化合物を含有する皮膜を標示面の表面に形成しているので、光の照射量が少ない場所や夜間においても、活性化されたリン酸チタン化合物の酸化力によって汚れが分解されると共に、親水化された表面によって、表面に付着する汚れと表面との間に水が割り込んで汚れを浮かせるために付着しにくく、また付着しても降雨等により容易に洗い流されて除去されるため、汚れが堆積しにくく、標示面の視認性を長期にわたって良好な状態で維持できる自浄式視線誘導標示体として好適に利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】デリニェーターとして用いられる本発明の実施の一形態を示す正面図である。
【図2】ポールコーンとして用いられる本発明の実施の一形態を示す正面図である。
【図3】図1における主要部の断面図である。
【図4】図2における主要部の断面図である。
【符号の説明】
【0021】
1 支柱
2 枠体
3 標示面
4 円柱状体
5 反射体
6 被膜

【特許請求の範囲】
【請求項1】
視線誘導をするために車両運転者に視認させる標示面の少なくとも一部が反射体から形成されると共に、該標示面上に空気触媒としてのリン酸チタン化合物を含有する被膜が形成され、該被膜が空気と接触することによりリン酸チタン化合物が活性化されてその表面が親水化され、降雨等によって表面に付着した汚染物質が洗浄されるようになされたことを特徴とする自浄式視線誘導標示体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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