説明

自転車用制御装置

【課題】電動機で走行補助を行う自転車においてスムーズな変速動作を実現する。
【解決手段】自転車用制御装置は、内装変速機120と走行アシスト用モータ142とを有する自転車を制御する装置であって、アシスト出力制御部13を備えている。出力制御部13は、走行アシスト用モータ142の出力を制御し、変速の指示を受けると、走行アシスト用モータ142の出力を増加させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、変速機と走行補助用電動機とを有する自転車を制御する自転車用制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
人の踏力に加え、モータ駆動力で走行補助を行う電動アシスト自転車が、最近では普及してきている。この電動アシスト自転車に変速機が装備されているものが、特許文献1に開示されている。この自転車では、ペダルによって与えられた人力が、チェーンを介して後輪の車軸に設けられた変速機に伝わり、変速された後、後輪に伝達される。また、この自転車では、後輪にモータ駆動力も伝達される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平9−58569号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に示される自転車では、内装変速機を後輪の車軸に設けている。一般に、このような変速機では、変速動作時に、内部の歯車などの部品に回転トルクが作用していないことが望ましい。変速機の部品が高いトルクを伝えている状態では、変速動作のスムーズさが損なわれることがある。他の変速機においても、過剰な力が作用している状況下では、変速動作のスムーズさが損なわれることがある。
【0005】
本発明の課題は、電動機で走行補助を行う自転車においてスムーズな変速動作を実現することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
発明1に係る自転車用制御装置は、変速機と走行補助用電動機とを有する自転車を制御する装置であって、出力制御部を備えている。出力制御部は、走行補助用電動機の出力を制御し、変速の指示を受けると、走行補助用電動機の出力を増加させる。
【0007】
この自転車用制御装置では、変速の指示の後に走行補助用電動機の出力が増加するため、変速機の変速動作時においてペダルを踏む力が小さくなる。すなわち、本発明に係る制御装置では、チェーンに作用する人の踏力が変速動作時に小さくなり、スムーズな変速動作が実現される。
【0008】
発明2に係る自転車用制御装置は、発明1の制御装置であって、出力制御部は、変速機の変速動作の開始時に走行補助用電動機の出力が増加している状態にする。
【0009】
この制御装置では、変速動作の開始時に走行補助用電動機の出力が増加している状態になるため、変速動作が行われているときにはチェーンに作用する踏力が既に小さくなっており、変速動作が確実にスムーズになる。
【0010】
発明3に係る自転車用制御装置は、発明1又は2の制御装置であって、変速の指示は、手動あるいは自動の変速制御部によって出力制御部に与えられる。
【0011】
本発明は、人の操作にしたがって変速の指示が出力制御部に与えられたときでも、車速などの情報に応じて自動的に変速の指示が変速制御部から出力制御部に与えられたときでも、適用できる。いずれのときでも、変速の指示が出力制御部に与えられると、走行補助用電動機の出力が増加し、スムーズな変速動作が実現される。
【0012】
発明4に係る自転車用制御装置は、発明1又は2の制御装置であって、変速制御部をさらに備える。変速機は、変速用電動機を含む。変速制御部は、変速の指示に基づいて、変速用電動機を動作させる。また、変速制御部は、出力制御部が走行用電動機の出力を増加させた後に、変速用電動機を動作させる。
【0013】
この制御装置では、変速機の変速用電動機の動作開始のタイミングが、走行用電動機の出力の増加のあとになる。したがって、変速動作の開始時に走行補助用電動機の出力が増加している状態になり、変速動作が確実にスムーズになる。
【0014】
発明5に係る自転車用制御装置は、発明1〜4のいずれかの制御装置であって、変速機は、内装変速機である。
【0015】
内装変速機は、歯車を用いた変速機であり、その取付位置によって、後輪ハブ変速機と呼ばれるものや、クランク軸変速機と呼ばれるものがある。この内装変速機では、伝達するトルクが小さいときのほうが大きいときよりも変速動作が一般にスムーズであるが、本発明では変速動作時に変速機に掛かるトルクが小さくなるため、スムーズな変速動作が実現される。
【0016】
発明6に係る自転車用制御装置は、発明1〜4のいずれかの制御装置であって、変速機は、外装変速機である。
【0017】
外装変速機は、ディレーラによってチェーンをスプロケット間で移動させることで変速を行う変速機である。クランク軸のスプロケット間でチェーンを掛けかえるフロントディレーラ、及び/又は、後輪のスプロケット間でチェーンを掛けかえるリアディレーラを、シフターから延びるワイヤー(ケーブル)または電動モータで動かすことで、変速が行われる。この外装変速機では、ある程度の張力がチェーンに掛かっていても変速動作に悪影響が出ることは少ないが、チェーンに過度の張力が掛かっていると変速しにくい。しかし、本発明によれば、変速動作時にチェーンに過度の張力が掛かることがなくなるので、変速動作がスムーズになる。
【0018】
発明7に係る自転車用制御装置は、発明1〜6のいずれかの制御装置であって、走行補助用電動機は、車輪の1つである前輪あるいは後輪に設けられている。
【0019】
ここでは、変速の指示の後に走行補助用電動機の出力が増加するが、それによって前輪あるいは後輪に増加した走行補助力が作用する。これにより、ペダル及びクランクからチェーンに伝わる人の踏力が相対的に小さくなり、その状態で変速機の変速動作が行われることになる。したがって、スムーズな変速動作が実現される。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、変速の指示の後に走行補助用電動機の出力が増加し、変速機の変速動作時においてペダルを踏む力が小さくなるため、スムーズな変速動作が実現される。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の一実施形態に係る自転車用制御装置を採用する自転車の側面図。
【図2】ハンドルに装着された変速操作ユニットを示す図。
【図3】自転車用制御装置のブロック図。
【図4】変速制御のフローチャート。
【図5】他の実施形態に係る変速制御のフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0022】
<全体構成>
本発明の一実施形態に係る自転車用制御装置を採用した自転車101を図1に示す。自転車101は、主として、フレーム102と、ハンドル104と、表示装置118と、前輪106と、後輪107と、チェーン110と、クランク116と、内装変速機120と、リアキャリア130と、充電池134と、アシストモータユニット140と、自転車用制御装置を構成するマイクロコンピュータ12と、図示しないフロントブレーキ装置及びリアブレーキ装置と、を備えている。
【0023】
<フレーム>
フレーム102は、フレーム体111とフロントフォーク112とを有する。フロントフォーク112は、フレーム体111の前部に、斜めの軸回りに揺動自在に装着されている。フレーム102には、サドル113およびハンドル104を含む各部が取り付けられている。
【0024】
<クランク>
クランク116は、水平に延びるクランク軸116aと、その軸方向の両端に設けられ180度位相の異なる左右のクランクアーム116bと、を備える。クランク軸116aは、フレーム体111のハンガー部122に回転自在に支持されている。クランクアーム116bの先端には、ペダル119が装着されている。チェーン110は、クランク軸116aに固定されているフロントスプロケットと、後述する内装変速機120の内装変速ハブ121に設けられるリアスプロケットとに掛け渡されている。
【0025】
<内装変速機>
内装変速機120は、図3に示すように、内装変速ハブ121と、変速用モータ122と、モータドライバ123とを備えている。チェーン110により駆動される内装変速ハブ121は、後輪107の中心部に配置される。内装変速ハブ121は、8段変速のハブである。内装変速ハブ121は、遊星歯車機構を含む変速機構を備える。内装変速ハブ121には、変速機構を電動駆動するための変速用モータ122が連結されている。モータドライバ123は、後述する変速制御部14から信号を受けて、変速用モータ122を駆動する。また、内装変速ハブ121には、リアブレーキ装置が連結されている。
【0026】
<ハンドルに装着される変速操作ユニットおよび表示装置>
ハンドル104は、フロントフォーク112の上部に固定されたハンドルステム114と、ハンドルステム114に固定されたハンドルバー115とを有している。ハンドルバー115の両端には、ブレーキレバーおよびグリップ115aがそれぞれ装着されている。
【0027】
図2に示すように、ハンドル104のグリップ115aの近傍には、変速操作ユニット90が装着されている。変速操作ユニット90は、第1変速操作ボタン91、第2変速操作ボタン92および操作ダイヤル93を1つにまとめたユニットである。第1および第2変速操作ボタン91,92および操作ダイヤル93は、図2に示すように、グリップ115aを握りながら人の手で操作できる位置にある。第1および第2変速操作ボタン91,92は、押しボタンである。左側の第1変速操作ボタン91は、低速段から高速段への変速を行うためのボタンである。右側の第2変速操作ボタン92は、高速段から低速段への変速を行うためのボタンである。操作ダイヤル93は、2つの変速モードとパーキング(P)モードとを切り換えるためのダイヤルであり、3つの停止位置P,A,Mを有している。ここで2つの変速モードとは、自動変速(A)モードと手動変速(M)モードである。自動変速モードは、後述する車速センサ143からの車速信号に基づいて内装変速機120の内装変速ハブ121を自動変速するモードである。また、手動変速モードは、第1および第2変速操作ボタン91,92の操作により、所望の変速段に内装変速ハブ121を変速するモードである。パーキングモードは、内装変速ハブ121をロックして後輪107の回転を規制するモードである。
【0028】
ハンドルバー115の中央部には、ハンドルステム114を跨いで表示装置118が固定されている。表示装置118は、液晶ディスプレイ画面を有し、変速モード、自転車の速度、変速段数、走行距離および充電池134の残量、などを表示する。
【0029】
<リアキャリア>
フレーム体111の後部には、リアキャリア130が取り付けられている。リアキャリア130には、マイクロコンピュータ12を含むリアキャリアユニット133が装着されている。リアキャリアユニット133は、充電池134を着脱可能に搭載している。充電池134は、変速用モータ122、後述する走行アシスト用モータ142、マイクロコンピュータ12等の電源となる、充電池134は、例えばニッケル水素電池およびリチウムイオン電池等を用いた蓄電池である。充電池134には、尾灯139が一体で取り付けられている。
【0030】
<アシストモータユニット>
前輪106の中心部には、前輪106の駆動補助用のアシストモータユニット140が装着されている。アシストモータユニット140には、フロントブレーキ装置が連結されている。アシストモータユニット140に、フロントブレーキ装置が連結されない場合には、フロントフォーク112にブレーキ装置を設ければよい。アシストモータユニット140の内部には、図3に示すように、走行アシスト用モータ142と、モータドライバ141と、車速センサ143とが設けられている。走行アシスト用モータ142は、たとえば3相ブラシレスDCモータまたは交流モータである。モータドライバ141は、充電池134から直流出力された電流を、走行アシスト用モータ142の駆動に適した交流電流に変換する。車速センサ143は、走行アシスト用モータ142の回転速度、つまり自転車101の速度を検出する。
【0031】
アシストモータユニット140は、人の踏力に応じたトルク(例えば、クランク軸116aに作用するトルクの所定倍のトルク)を、走行アシスト用モータ142で補助的に発生させる。その走行アシスト用モータ142のトルクは、前輪106に伝えられる。クランク軸116aに作用するトルク(ペダル119を踏む人の踏力)は、踏力センサ95により検出する。
【0032】
踏力センサ95は、フレーム102のハンガー部122に取り付けられる。踏力センサ95は、クランク軸116aのトルクを、非接触で、或いは、クランク軸116aまたはクランクアーム116bに接触して検出する。たとえば踏力センサ95は、たとえばクランク軸116aに設けられる磁歪素子とその磁歪素子に対向して配置される検出コイルを備える磁歪センサ、クランク軸116aまたはクランクアーム116bに設けられる歪ゲージ、またはクランク軸116aを支持する支持部に設けられる歪ゲージによって実現される。踏力センサ95は、これらの構成に限られず、クランク軸116aに生じるトルクに応じて出力が変化するセンサであればよい。踏力センサ95は、クランク軸116aに作用する踏力に応じて変化する信号を、トルク値を表す情報としてマイクロコンピュータ12に送る。
【0033】
<マイクロコンピュータ>
自転車用制御装置を構成するマイクロコンピュータ12は、上述のように、リアキャリアユニット133の内部に配置されており、電気的に接続された電装品を制御する。マイクロコンピュータ12は、CPU(Central processing unit),RAM(random access memory),ROM(read only memory),I/Oインターフェイスを含み、幾つかの機能部を備える。図3に示すように、マイクロコンピュータ12は、その機能部として、走行アシスト用モータ142の出力を制御するアシスト出力制御部13と、内装変速機120の変速用モータ122を制御する変速制御部14と、を備えている。
【0034】
マイクロコンピュータ12には、各種センサからの情報および人の操作指示が入力される。具体的には、マイクロコンピュータ12に、第1変速操作ボタン91、第2変速操作ボタン92、操作ダイヤル93、車速センサ143、踏力センサ95などが電気的に接続されている。
【0035】
マイクロコンピュータ12のアシスト出力制御部13は、アシストモードのとき、乗り手の踏力の所定倍のアシスト力が発生するように、走行アシスト用モータ142を制御する。アシスト出力制御部13は、複数のアシストモードで走行アシスト用モータ142を制御する。具体的には、アシストモードとして、踏力の最大2倍のアシスト力で補助する強アシストモード、最大1.5倍のアシスト力で補助する中アシストモード、および最大1倍のアシスト力で補助する弱アシストモードの3つのアシストモードを、アシスト出力制御部13は有している。また、アシスト出力制御部13は、アシストを行わないオフモードも有している。アシストモードの切換は、ハンドル104に設けられる図示しないスイッチによって行ってもよく、また前記の操作ダイヤル93によって行われても良い。
【0036】
マイクロコンピュータ12の変速制御部14は、第1および第2変速操作ボタン91,92の操作から変速の指示を受け、変速用モータ122を動かして内装変速ハブ121の段数を変更するか、或いは、車速に応じて自動的に生成される変速の指示を受け、変速用モータ122を動かして内装変速ハブ121の段数を変更する。但し、図4を参照して後述するように、変速制御部14は、内装変速ハブ121の段数を変更する前に、手動あるいは自動の変速の指示を、アシスト出力制御部13へ伝える。手動あるいは自動の変速の要求があったことを認識したアシスト出力制御部13は、走行アシスト用モータ142によるアシスト力を一時的に増加させる。これについての詳細は、後述する。
【0037】
操作ダイヤル93が停止位置Mにあって、手動変速モードが人によって選択されているときには、変速制御部14は、第1変速操作ボタン91が押されたときに、低速段から高速段への変速を行わせ、第2変速操作ボタン92が押されたときに高速段から低速段への変速を行わせる。すなわち、変速制御部14は、第1および第2変速操作ボタン91,92が押されたときに、変速の指示があったと認識する。
【0038】
操作ダイヤル93が停止位置Aにあって、自動変速モードが人によって選択されているときには、変速制御部14は、車速センサ143からの車速信号に基づく車速情報から、変速が必要だと判断すると、変速の指示を生成する。そして、後述の図4に示すステップS5において、変速の指示を内装変速機120の変速用モータ122を駆動するモータドライバ123に送る。変速制御部14は、自動変速のための2種類のテーブルを保持しており、踏力センサ95で検出した踏力値(クランク軸116aのトルク)に応じていずれのテーブルを使用するかを決定する。具体的には、高トルクモードおよびノーマルモードの各テーブルを保持しており、各テーブルには自動変速モード時のシフトアップ及びシフトダウンの車速しきい値が記憶されている。高トルクモードにおける車速しきい値は、踏力値が所定値以上になっているときの車速しきい値であり、ノーマルモードにおける車速しきい値は、踏力値が所定値に達していない場合の車速しきい値である。
【0039】
次に、図4を参照して、上記の変速制御部14による変速制御の主要点を整理して説明する。手動変速モードであっても、自動変速モードであっても、図4のフローに従って変速制御が行われる。
【0040】
内装変速ハブ121の段数を変更したいという変速要求、すなわち変速の指示があると、ステップS1からステップS2に移行する。ステップS2では、車速センサ143からの信号に基づいて算出した車速がゼロであるか否かを判断する。車速がゼロの場合には、ステップS2からステップS5に移行し、直ちに変速用モータ122に動作指令を送って変速動作を実行させる。車速がゼロであれば、内装変速ハブ121の内部部品にトルクが殆ど作用していないため、変速動作がスムーズに行われる。ステップS2で車速がゼロではないと判断したときには、ステップS3に移行する。ステップS3では、どのアシストモードになっているかに関わらず、アシスト出力制御部13がモータドライバ141に信号を送って走行アシスト用モータ142によるアシスト力を増加させる。次に、ステップS4に移行し、走行アシスト用モータ142によるアシスト力が実際に増加したか否かを判断する。ステップS4では、例えば、アシスト出力制御部13からモータドライバ141に走行アシスト用モータ142のアシスト力増加の信号を送ってから所定の微少時間が経過したことで、アシスト力が実際に増加したと判断することができる。また、ステップS4では、アシスト力増加の信号を送り終わったことで、アシスト力が実際に増加したと判断してもよい。ステップS4でアシスト力が増加したと判断されると、ステップS5に移行し、変速制御部14がモータドライバ123に信号を送って変速用モータ122を動かし、内装変速ハブ121での変速動作を実行させる。この変速動作の開始の時点では、既に、走行アシスト用モータ142によるアシスト力が実際に増加した状態となっており、代わりにペダル119を踏む人の踏力が小さくなっている。このため、人の踏力によって内装変速ハブ121の内部部品に作用するトルクが、変速動作のときには、変速の指示の前に較べて小さくなっており、スムーズな変速動作が行われる。ステップS5の変速動作が完了すると、ステップS6に移行する。ステップS6では、ステップS3で増加させた走行アシスト用モータ142によるアシスト力の増加状態を解除する。すなわち、ステップS6では、ステップS3で一時的に増加させていた走行アシスト用モータ142によるアシスト力を、アシストモードに基づく通常の大きさに戻す。ステップS6では、ステップS5で変速動作を実行してから所定時間後に、走行アシスト用モータ142の出力低下状態を解除してもよく、またたとえば変速機または変速モータに現在の変速段を検出するためのセンサを設けておき、このセンサからの出力に基づいて変速が完了したと判断したときに、走行アシスト用モータ142の出力低下状態を解除してもよい。
【0041】
<他の実施形態>
以上、本発明の一実施形態に係る自転車用制御装置について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。
【0042】
(a)上記実施形態では、内装変速機120の内装変速ハブ121を後輪107に装着した自転車101に本発明を適用している。これに代えて、クランク軸に付けた遊星歯車機構によって変速を行う変速機を持つ自転車に本発明を適用してもよい。
【0043】
(b)上記実施形態では、内装変速機120の内装変速ハブ121を後輪107に装着した自転車101に本発明を適用している。これに代えて、電動駆動されるフロントディレーラまたはリアディレーラを有する外装変速機を備える自転車に本発明を適用してもよい。この場合、チェーンに過度の張力が掛かった状態で変速動作が行われることがなくなり、変速動作がスムーズになる。外装変速機の場合、図5に示すように、ステップS12で、車速センサ143からの信号に基づいて算出した車速がゼロであるか否かを判断し、車速がゼロであると判断するとステップS13に移り、車速がゼロではないと判断すると、ステップS13以降の処理を待機する構成とする。
【0044】
(c)上記実施形態では、アシストモータユニット140を前輪106に装着している。これに代えて、特許文献1(特開平9−58569号公報)に開示されている自転車のように、アシストモータユニットを後輪に設けてもよい。アシストモータユニットは、変速機の出力側に設けられる。
【0045】
(d)上記実施形態では、クランク軸に作用するトルクを検出する踏力センサ95の出力に基づいて、アシスト出力制御部13が、走行アシスト用モータ142を制御しているが、この踏力センサ95に代えて、ペダルの踏力を検出するセンサを設けてもよく、またチェーンのテンションを検出するセンサを設けてもよい。アシスト出力制御部13は、これらのセンサからの情報に基づいて、走行アシスト用モータ142を制御する。
【0046】
(e)上記実施形態では、ステップS2で車速がゼロか否かを判断しているが、ステップS2では、クランクが回転しているか否かを判断してもよい。たとえばクランク位置センサを、クランクの回転を検出するセンサとして用いることができる。クランク位置センサで検出されるクランクの位置が変化しない場合には、変速制御部においてクランクが回転していないと判断する。ステップS2において、変速制御部は、クランク位置センサから出力される信号が所定時間内に変化する場合に、クランクが回転していると判断して、ステップS3に移る。またステップS2において、変速制御部は、クランク位置センサから出力される信号が所定時間内に変化ない場合に、クランクが回転していないと判断して、ステップS5に移る。クランクの回転を検出するセンサは、上記の構成に限らず、磁石と、リードスイッチとによって実現してもよい。外装変速機においては、図5のステップS12で、クランク位置センサから出力される信号が所定時間内に変化する場合に、クランクが回転していると判断して、ステップS13に移り、ステップS12でクランクが回転していないと判断すると、クランクが回転していると判断するまでは、ステップS13以降の処理を待機する構成とする。
【0047】
(f)上記実施形態では、ステップS2で車速がゼロか否かを判断しているが、ステップS2では、踏力センサにおいて踏力が検出されるか否かを判断してもよい。ステップS2において、変速制御部は、踏力センサから出力される信号に基づいて、踏力が与えられていると判断すると、ステップS3に移り、踏力が与えられていないと判断すると、ステップS5に移る。外装変速機においては、図5のステップS12で、踏力が与えられていると判断すると、ステップS13に移り、踏力が与えられていないと判断すると、踏力を検出するまでは、ステップS13以降の処理を待機する構成とする。
【0048】
(g)上記各実施形態において、ステップS2、S12を省略して、ステップS1で変速要求があると判断すると、ステップS3またはS13に移行する構成としてもよい。
【0049】
(h)上記各実施形態では、変速用モータによって変速を行っているが、本発明はこれに限らず、シフターと変速機とがワイヤー(ケーブル)で機械的に接続され、シフターを動かすことによってワイヤーを介して変速機を動作させてもよい。この場合には、シフターまたはワイヤーの動作を検出するためのセンサを設けておき、シフターまたはワイヤーが動作するとセンサが変速要求を出力する。たとえば前記センサはシフターに設けられ、ライダーがシフターの操作部を操作して、実際にワイヤーが動作する前にセンサが変速要求を出力するのが好ましい。
【0050】
(i)上記実施形態では、ステップS2およびS12で車速がゼロではないと判断したとき、さらに変速制御部は、車速が所定の範囲(ゼロよりも大きく所定の速度以下)であるか否かを判断してもよい。変速制御部は、車速が所定の範囲であると判断すると、ステップS3およびS13に移り、車速が所定の範囲でないと判断すると車速が所定の範囲になるまで、ステップS3およびS13以降の処理を待機する。この場合には、高速域でさらにアシスト力が増加されることを防止することができる。またここでは、変速制御部は、車速が所定の範囲であるか否かを判断するが、これに代えるか、さらに追加して、アシスト力を増加したときに踏力に対するモータの出力の比率が所定の範囲内となるか否かを判断してもよい。踏力に対するモータの出力の比率は、いわゆるアシスト比である。変速制御部は、アシスト比が所定の範囲であると判断すると、ステップS3およびS13に移り、アシスト比が所定の範囲であると車速が所定のアシスト比にならない場合には、ステップS3およびS13以降の処理を待機するか、また走行アシストモータの出力を増加させないで、変速動作を実行させる。
【符号の説明】
【0051】
12 マイクロコンピュータ
13 アシスト出力制御部
14 変速制御部
95 踏力センサ
101 自転車
106 前輪
107 後輪
110 チェーン
116 クランク
116a クランク軸
120 内装変速機
121 内装変速ハブ
122 変速用モータ
140 アシストモータユニット
142 走行アシスト用モータ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
変速機と、走行補助用電動機と、を有する自転車、を制御する自転車用制御装置であって、
前記走行補助用電動機の出力を制御し、変速の指示を受けると、前記走行補助用電動機の出力を増加させる出力制御部、
を備える自転車用制御装置。
【請求項2】
前記出力制御部は、前記変速機の変速動作の開始時に前記走行補助用電動機の出力が増加している状態にする、
請求項1に記載の自転車用制御装置。
【請求項3】
前記変速の指示は、手動あるいは自動の変速制御部によって前記出力制御部に与えられる、
請求項1又は2に記載の自転車用制御装置。
【請求項4】
前記変速機は、変速用電動機を含み、
前記変速の指示に基づいて、前記変速用電動機を動作させる変速制御部をさらに備え、
前記変速制御部は、前記出力制御部が前記走行用電動機の出力を増加させた後に、前記変速用電動機を動作させる、
請求項1又は2に記載の自転車用制御装置。
【請求項5】
前記変速機は、内装変速機である、
請求項1から4のいずれか1項に記載の自転車用制御装置。
【請求項6】
前記変速機は、外装変速機である、
請求項1から4のいずれか1項に記載の自転車用制御装置。
【請求項7】
前記走行補助用電動機は、前記車輪の1つである前輪あるいは後輪に設けられている、
請求項1から6のいずれか1項に記載の自転車用制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2013−47085(P2013−47085A)
【公開日】平成25年3月7日(2013.3.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−186597(P2011−186597)
【出願日】平成23年8月29日(2011.8.29)
【出願人】(000002439)株式会社シマノ (1,038)