説明

色・濁度計

【課題】検出器の小型化を実現した色・濁度計を提供する。
【解決手段】測定セルと比較セルからなる液槽に光源からの光を同時に入射させ、前記測定セルと比較セルを透過した透過光に基づいて色度及び濁度を測定する色・濁度計において、前記液層は、一方の側面に中心が所定の距離を隔てて穴の側面が重なるように形成された深さの異なる2つの穴を有する柱状の透明体であって、該2つの穴を閉塞する同一厚さの透明閉塞板を備え、前記2つの穴のうち深さが深く形成された穴と前記透明閉塞板と前記透明体の他方の面までの厚さで形成される空間を測定セルとし、前記2つの穴のうち深さが浅く形成された穴と前記透明閉塞板と前記透明体の他方の面までの厚さで形成される空間を比較セルとすると共に、前記測定セルと比較セルを透過した光を同一性能の光検出器でそれぞれ受光するように構成した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、色・濁度計、特に、透過光と散乱光の量をもとに光学的に濁度および色度を求める色・濁度計に関するものである。
【背景技術】
【0002】
浄水及び排水などの水処理プロセスでは、濁度や色度の測定及び管理は重要な項目となっており、色・濁度計が用いられている。
濁度計の方式には、透過光方式、散乱光方式、透過光散乱光方式、表面散乱光方式があるが、特に、透過光と散乱光の量の比により光学的に濁度を求める透過光散乱光方式は低濁度から高濁度まで測定が可能である。
【0003】
図2は各種濁度計の測定方式と基本構成図及び長所・短所を示す図である。基本構成としては光源、集光レンズ(図示省略)、測定槽及び透過光を検出するための受光部(光検出器)から構成され、測定液を流している測定槽の側面より平行光線を当て、測定槽内の測定液を通過した透過光量から濁度、または色度を求める。
【0004】
図2によれば、透過光方式の長所は高濁度の測定が可能であるが、窓の汚れの影響を受け、また、試料の色、気泡の影響を受けるという短所がある。散乱光方式も同様の短所を有している。
【0005】
透過光散乱光方式は、試料の色の影響が少ない、極低濃度の測定が可能という長所があるが、窓の汚れの影響を受け、また、試料の色、気泡の影響を受けるという短所がある。
表面散乱光方式は、窓の汚れの問題がない。同一測定槽で広範囲な測定が可能という長所があるが、試料の色や気泡の影響を受け、応答がやや鈍いという短所がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2005−221307号公報
【特許文献2】特開平9−311105号公報
【特許文献3】特開2000−74831号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
図3(a,b)は従来の色・濁度計の一例を示すもので、図3(a)は全体構成図、図3(b)は要部断面構成図である。これらの図に示すように色・濁度計は光源(ランプ)1、集光レンズ(凹面鏡)2、測定セル3a,比較セル3b、透過光を検出するための光検出器4から構成されている。
【0008】
そして、測定液を流している各セルの側面より平行光線を当て、セル内の測定液を通過した光を濁度用と色度用の光学フィルタを搭載したフィルタホイール6をモータ(図示省略)で回転し、1つの光検出器4で比較セル3b、測定セル3aからの透過光量を測定することで濁度および色度を求めている。
【0009】
このような色・濁度計は図3(b)に示すように測定セル3aと比較セル3bがノズル7aにより接続され測定セル3aの一端からノズル7bを介して導入された測定水が測定セル3a内を通って比較セル3b側に流れて排出されるように構成されている。このような構成の測定セル3aと比較セル3bの両側には窓8(a〜d)が取付けられており、これらの窓を介して光が透過するようになっている。このように、2つのセルを用いて光検出器の周囲温度などによる感度変化の影響や光量変動などを補正している。
【0010】
ところで、このような構成の色・濁度計においては、測定セルと比較セルの液槽を2個用いることで、光量変動、光検出器の感度変化の周囲温度による感度変化の影響などを除去可能であるが、測定セルと比較セルの液槽を別々に2個用い、同じ厚さの窓が4枚必要となるので装置が大型化してしまうという問題がある。
【0011】
また、1つの光検出器4で測定セルと比較セルを通った光を検出するために凹面鏡(集光レンズ)2などの光学部品も必要となり、部品の精密な位置調整が要求されコストアップになるなどの問題があった。
【0012】
従って本発明は、測定セルと比較セルを一つの部材を用いて一体化して形成し、窓の厚みを2個のセルで変えることで小型化を図り、光検出器として2個のPDを用いることによる暗電流の影響を演算により除去した色・濁度計を実現することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明は上記課題を解決するためになされたもので、請求項1に記載の色・濁度計においては、
測定セルと比較セルからなる液槽に光源からの光を同時に入射させ、前記測定セルと比較セルを透過した透過光に基づいて色度及び濁度を測定する色・濁度計において、
前記液層は、一方の側面に中心が所定の距離を隔てて穴の側面が重なるように形成された深さの異なる2つの穴を有する柱状の透明体であって、該2つの穴を閉塞する同一厚さの透明閉塞板を備え、
前記2つの穴のうち深さが深く形成された穴と前記透明閉塞板と前記透明体の他方の面までの厚さで形成される空間を測定セルとし、
前記2つの穴のうち深さが浅く形成された穴と前記透明閉塞板と前記透明体の他方の面までの厚さで形成される空間を比較セルとすると共に、前記測定セルと比較セルを透過した光を同一性能の光検出器でそれぞれ受光するように構成したことを特徴とする色・濁度計。
【0014】
請求項2においては、請求項1に記載の色・濁度計において、
前記他方の面と穴の深さで形成される窓の厚みの違いに基づく誤差及び光量変動の誤差を下記の式により除去したことを特徴とする。

C=1/{ε(L2−L1)}・{log(I11/I21)−log(I10/I20)}
ここで、C;物質の濃度、ε;吸光係数、
L1;光軸方向の比較セル長、L2;光軸方向の測定セル長、
10;比較セルにゼロ水が満たされている時の透過光量、
20;測定セルにゼロ水が満たされている時の透過光量
11;比較セルに測定水が満たされている時の透過光量
21;測定セルに測定水が満たされている時の透過光量
【0015】
請求項3においては、請求項1に記載の色・濁度計において、
前記光検出器の暗電流による透過光量誤差を下記の式により除去したことを特徴とする。

C=1/{ε(L2−L1)}・{log(I11−P11)}/
(I21−P21)−log{(I10−P10)/(I20−P20)}
ここで、C;物質の濃度、ε;吸光係数、
L1;光軸方向の比較セル長、L2;光軸方向の測定セル長、
10;比較セルにゼロ水が満たされ光源を消灯した時の比較セルの後段に配置された光検出器の暗電流により透過光量と測定される誤差量
20;測定セルにゼロ水が満たされ光源を消灯した時の測定セルの後段に配置された光検出器の暗電流による透過光量と測定される誤差量
11;比較セルに測定水が満たされ光源を消灯した時の比較セルの後段に配置された光検出器の暗電流による透過光量と測定される誤差量
21;測定セルに測定水が満たされ光源を消灯した時の測定セルの後段に配置された光検出器の暗電流による透過光量と測定される誤差量
【発明の効果】
【0016】
以上説明したことから明らかなように本発明の請求項1〜3によれば、
液層を柱状に形成された透明体で形成し、一方の側面に所定の距離を隔てて穴の側面が重なるように深さの異なる2つの穴を形成し、その2つの穴を閉塞する同一厚さの透明閉塞板を設け、
2つの穴のうち深さが深く形成された穴と透明閉塞板と透明体の他方の面までの厚さで形成される空間を測定セルとし、
【0017】
2つの穴のうち深さが浅く形成された穴と透明閉塞板と前記透明体の他方の面までの厚さで形成される空間を比較セルとし、測定セルと比較セルを透過した光を同一性能の光検出器でそれぞれ受光するように構成したので、
検出器の小型化を実現することができ、演算により光量変動、周囲温度による光検出器の感度変化の影響と、小型化により生じる暗電流の影響を除去可能な色・濁度計を実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の色・濁度計の要部断面構成図である。
【図2】従来の色・濁度計の基本構成図と長所・短所を示す説明図である。
【図3】従来の色・濁度計の構成を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
図1(a,b)は本発明の色・濁度計の構成を示すもので、図1(a)は要部断面構成図、図1(b)は図1(a)のZ視図である。
【0020】
図1(a,b)において、10は本発明に用いる光学ガラスなどで形成された透明体からなる柱状の液槽であり、この液槽10には一方の側面から所定の距離を隔てて穴の側面が重なるように深さの異なる2つの穴(10a,10b)が形成されている。このうち深さの深い穴10aは測定セルを構成し深さの浅い穴10bは比較セルを構成する。
【0021】
12は2つの穴10a、10bを閉塞する同一厚さの透明閉塞板(共通窓部)であり、図示しないOリングなどを用いて気密に閉塞する。一点差線で囲った(イ)の部分は測定セル範囲を示し、一点差線で囲った(ロ)の部分は比較セル範囲を示している。
なお深い穴の底部から他方の面までの厚さは透明閉塞板12の厚さと同様の厚さになるように形成されている。14aは色度光源、14bは濁度光源である。
【0022】
15はこれらの光源と測定セルを構成する透明閉塞板の間に配置されたハーフミラー、16はハーフミラーで反射した光を比較セル10bに入射する位置に配置された反射鏡である。
17cは深い穴(測定セル)10aの底部付近に形成されたノズル、17dは浅い穴(比較セル)10bに形成されたノズルであり、ノズル17cから導入された測定水(又はゼロ水)が測定セル→比較セルを通ってノズル17dから流出する。
【0023】
上述の構成において、色度光源14a、濁度光源14bを交互に点灯することで、色度、濁度を測定することが可能となる。即ち、色・濁度光源14a、14bから出射した光は例えば50%がハーフミラー15を透過して測定セルに入射して測定水(又はゼロ水)を透過して第1光検出器18aに入射する。また、ハーフミラーおよび反射鏡16で反射して比較セルに入射した光は測定水(又はゼロ水)を透過して第2光検出器18bに入射する。
【0024】
本発明では第1測定槽(測定セル)10a及び第2測定槽(比較セル)10bの穴の底部と他方の面で構成される測定槽窓部19a、19bは光学ガラスなどを削り出して作っている。そのため、従来例のように別々に液槽を設け窓ガラスを4枚用いる方法に比べ小型化が可能となる。
【0025】
ところで、図3に示す従来例では、測定セルと比較セルの窓の厚みは同じであるが、本発明では窓の厚みが異なっている。そのため、2光路を用いて下記のような演算式で得られる吸光度から色度および濁度を求めることにより窓ガラスの厚みの違いの影響を除去し、また、ゼロ水をそれぞれのセルに満たしてゼロ校正(I10、I20をそれぞれ求める)を行うことにより窓ガラス部の厚みの違いを除去することができ、更に、光量変動の影響もI11/I21を行うことにより除去することができる。
【0026】

C=1/{ε(L2−L1)}・{log(I11/I21)−log(I10/I20)}
ここで、C;物質の濃度、ε;吸光係数、
L1;光軸方向の比較セル長、L2;光軸方向の測定セル長、
10;比較セルにゼロ水が満たされている時の透過光量、
20;測定セルにゼロ水が満たされている時の透過光量
11;比較セルに測定水が満たされている時の透過光量
21;測定セルに測定水が満たされている時の透過光量
【0027】
上記のような一体構造で検出器を小型化した場合には、セル長が短くなり感度が低くなるため、光検出器の暗電流が測定に影響を及ぼす。そのため、測定水を測定中は光源を消灯した際に比較セル側の第2光検出器の暗電流による透過光量誤差、測定セル側の第1光検出器による透過光量誤差を下記の演算式により求め、I11、I21から測定毎に差分を取り演算を行う。ゼロ水測定時にも同様に暗電流による透過光量誤差を求める。
【0028】

C=1/{ε(L2−L1)}・{log(I11−P11)}/
(I21−P21)−log{(I10−P10)/(I20−P20)}
ここで、C;物質の濃度、ε;吸光係数、
L1;光軸方向の比較セル長、L2;光軸方向の測定セル長、
10;比較セルにゼロ水が満たされ光源を消灯した時の比較セルの後段に配置された光検出器の暗電流により透過光量と測定される誤差量
20;測定セルにゼロ水が満たされ光源を消灯した時の測定セルの後段に配置された光検出器の暗電流による透過光量と測定される誤差量
11;比較セルに測定水が満たされ光源を消灯した時の比較セルの後段に配置された光検出器の暗電流による透過光量と測定される誤差量
21;測定セルに測定水が満たされ光源を消灯した時の測定セルの後段に配置された光検出器の暗電流による透過光量と測定される誤差量
【0029】
なお、本発明では測定セルと比較セルを一体化して小型化したため、気泡の影響も受けやすくなる。気泡の影響を除去するには、平均化、突変時に、閾値から突変を取り除く方法があるが、透過光方式で気泡の影響を除去する場合には、気泡があると光が散乱されて透過光量はある瞬間減衰する。そのため測定中の光量の最大値を使用して上記の演算に使用する方法が考えられる。このようにすると、気泡の影響を低減することが可能となる。
【0030】
なお、以上の説明は、本発明の説明および例示を目的として特定の好適な実施例を示したに過ぎない。例えば本実施例では液層をガラス棒で形成したが溶融ガラスやプラスチック部材を型に流し込んで作製しても良い。
従って本発明は、上記実施例に限定されることなく、その本質から逸脱しない範囲で更に多くの変更、変形を含むものである。
【符号の説明】
【0031】
1 ランプ
2 凹面鏡
3a 測定セル
3b 比較セル
4 光検出器
5 フィルタ
6 フィルタホイール
7 ノズル
8 窓
10 液層
10a 深さの深い穴(測定セル)
10b 深さの浅い穴(比較セル)
12 透明閉塞板(共通窓部)
14a 色度光源
14b 濁度光源
15 ハーフミラー
16 反射鏡
17 ノズル
18a 第1光検出器
18b 第2光検出器
19a 測定槽窓部
19b 比較層窓部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
測定セルと比較セルからなる液槽に光源からの光を同時に入射させ、前記測定セルと比較セルを透過した透過光に基づいて色度及び濁度を測定する色・濁度計において、
前記液層は、一方の側面に中心が所定の距離を隔てて穴の側面が重なるように形成された深さの異なる2つの穴を有する柱状の透明体であって、該2つの穴を閉塞する同一厚さの透明閉塞板を備え、
前記2つの穴のうち深さが深く形成された穴と前記透明閉塞板と前記透明体の他方の面までの厚さで形成される空間を測定セルとし、
前記2つの穴のうち深さが浅く形成された穴と前記透明閉塞板と前記透明体の他方の面までの厚さで形成される空間を比較セルとすると共に、前記測定セルと比較セルを透過した光を同一性能の光検出器でそれぞれ受光するように構成したことを特徴とする色・濁度計。
【請求項2】
前記他方の面と穴の深さで形成される窓の厚みの違いに基づく誤差及び光量変動の誤差を下記の式により除去したことを特徴とする請求項1に記載の色・濁度計。

C=1/{ε(L2−L1)}・{log(I11/I21)−log(I10/I20)}
ここで、C;物質の濃度、ε;吸光係数、
L1;光軸方向の比較セル長、L2;光軸方向の測定セル長、
10;比較セルにゼロ水が満たされている時の透過光量、
20;測定セルにゼロ水が満たされている時の透過光量
11;比較セルに測定水が満たされている時の透過光量
21;測定セルに測定水が満たされている時の透過光量
【請求項3】
前記光検出器の暗電流による透過光量誤差を下記の式により除去したことを特徴とする請求項1に記載の色・濁度計。

C=1/{ε(L2−L1)}・{log(I11−P11)}/
(I21−P21)−log{(I10−P10)/(I20−P20)}
ここで、C;物質の濃度、ε;吸光係数、
L1;光軸方向の比較セル長、L2;光軸方向の測定セル長、
10;比較セルにゼロ水が満たされ光源を消灯した時の比較セルの後段に配置された光検出器の暗電流により透過光量と測定される誤差量
20;測定セルにゼロ水が満たされ光源を消灯した時の測定セルの後段に配置された光検出器の暗電流による透過光量と測定される誤差量
11;比較セルに測定水が満たされ光源を消灯した時の比較セルの後段に配置された光検出器の暗電流による透過光量と測定される誤差量
21;測定セルに測定水が満たされ光源を消灯した時の測定セルの後段に配置された光検出器の暗電流による透過光量と測定される誤差量

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2013−50335(P2013−50335A)
【公開日】平成25年3月14日(2013.3.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−187388(P2011−187388)
【出願日】平成23年8月30日(2011.8.30)
【出願人】(000006507)横河電機株式会社 (4,443)
【Fターム(参考)】