説明

色調が反転された木目を有する木材

【課題】木材の着色において、自然風合いの木材とは外観的に逆の色目であるといういう印象を与える色目の木材、つまり、冬目すなわち秋材すなわち晩材が淡く、夏目すなわち春材すなわち早材が濃く着色された木材を得る方法を開発する。
【解決手段】木材にあらかじめ大気圧以下の減圧を施し、減圧下にて着色剤を含浸させ、次に、大気圧以上に加圧することにより、木材に着色剤を含浸させて着色した木材おいて、減圧時間を加圧時間より長くすることにより自然風合いの木材とは逆の外観の木目を有する木材、すなわち、冬目が淡く、夏目が濃く着色された木材を得る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、色調が反転された木目を有する木材に関するものであり、さらに詳しくは、木材にあらかじめ大気圧以下の減圧を施し、減圧下にて着色剤を含浸させ、次に、大気圧以上に加圧することにより、木材に着色剤を含浸させて着色した木材おいて、減圧時間を加圧時間より長くすることにより得られる自然風合いの木材とは逆の外観の木目を有する木材、すなわち、冬目すなわち秋材すなわち晩材が淡く、夏目すなわち春材すなわち早材が濃く着色されたことを特徴とする、色調が反転された木目を有する木材に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、木材に減圧状態で液状にした着色剤を含浸させ、しかるのちに加圧して、木材に着色を施す方法は、広く知られている。下記特許文献1、2には、いずれも減圧と加圧を用いて木材を着色する方法が開示されている。
【特許文献1】特開平8‐309712号公報
【特許文献2】特開2006‐231581号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
上記特許文献2は、本願発明者が開発した技術であり、段落0025〜段落0026にかけて、減圧と加圧を用いて木材を着色(着色)する方法が具体的に記されている。上記特許文献2に開示された方法を用いることにより、冬目すなわち秋材すなわち晩材が濃く、夏目すなわち春材すなわち早材が淡く着色された、自然風合いの木材を得ることができ、人工林にて循環生産が可能な木材をこの方法によって着色(着色)して、黒檀、紫檀、花梨、チーク、メープル、タモ、ナラ等の所謂高級希少材の風合いを有する木材を生産することが可能となった。
【0004】
このようにして生産された自然風合いの木材は、家具や建材、木製玩具や木製文房具等、幅広い分野にて用いられ、好評をもって迎え入れられている。しかしながら、近年、木製品の各種の応用分野にて、さらに斬新な外観の木材を望む声もあがりつつあり、その一つとして、上記自然風合いの木材とは逆に、冬目すなわち秋材すなわち晩材が淡く、夏目すなわち春材すなわち早材が濃く着色された、自然の木材の着色状態からいえばネガ状態に反転されたような着色状態の木材が欲しいという声があった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであり、以下に示す解決手段を提供するものである。
<解決手段1>
木材にあらかじめ大気圧以下の減圧を施し、減圧下にて着色剤を含浸させ、次に、大気圧以上に加圧することにより、木材に着色剤を含浸させて着色した木材おいて、減圧時間を加圧時間より長くすることにより得られる自然風合いの木材とは逆の外観の木目を有する木材、すなわち、冬目すなわち秋材すなわち晩材が淡く、夏目すなわち春材すなわち早材が濃く着色されたことを特徴とする、色調が反転された木目を有する木材。
【発明の効果】
【0006】
本発明の解決手段1によれば、冬目すなわち秋材すなわち晩材が淡く、夏目すなわち春材すなわち早材が濃く着色された木材を得ることができる。すなわち、濃淡において、通常の自然風合いの木材とは逆の外観を有する木材を得ることができ、建材や家具、文房具や玩具等の分野において、木製品のデザインの自由度が上昇し、木製品がさらに広く用いられる可能性を開拓することができた。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
本発明を実施するため、最良の形態を、以下に述べる。
【実施例1】
【0008】
人工林にて循環生産が可能な木材としては、桐、ポプラ、ラジアタパイン、ホワイトウッド、ゴム等が挙げられるが、実施例1の対象としては、これらのうちから、ラジアタパインを用いた。ラジアタパインを製材して木材ブロック1(図2参照)とした後、耐圧容器(図示せず)内にて減圧し、気圧が67hPaとなったところで12時間その状態を保ち、減圧下で着色剤の溶液を含浸させた。なお、2は冬目すなわち秋材すなわち晩材を、3は夏目すなわち春材すなわち早材を示す。
【0009】
着色剤の溶液は、染料を3〜5重量%含有する水溶液であるが、顔料を使用することも無論可能である。また、染料や顔料の種類によって、溶剤は水以外にメチルアルコール、アセトン等の各種溶剤を用いることができ、さらに、色の固定剤としてフェノール、カゼイン、ウレタン等を添加することも可能である。
【0010】
次に、着色剤の含浸された木材ブロック1を8000hPaまで加圧して、その状態を3時間保った。その後、通常気圧に戻して耐圧容器内から取り出した。その結果、図1に見るように、冬目2(秋材・晩材)が淡く、夏目3(春材・早材)が濃く着色された着色木材ブロック10が得られた。
【0011】
図3には、比較例1として、同じラジアタパインの木材ブロック1を、まず67hPaの減圧下に1時間保ち、しかるのちに減圧下で着色剤の溶液を含浸させ、次に8000hPaに加圧して15時間保って着色木材ブロック100としたものを示す。着色木材ブロック100においては、冬目2が濃く、夏目3が淡く着色されており、これはすなわち自然風合いの木材である。
【0012】
ここで、実施例1と比較例1の違いを述べれば、実施例1においては減圧工程が加圧工程よりはるかに長いのに比して、比較例1にては、その逆で、加圧工程の方が減圧工程よりはるかに長くなっているという点である。すなわち、実施例1にては、減圧工程において加圧工程の4倍の時間をかけているのに対し、比較例1にては、逆に、加圧工程において減圧工程の15倍の時間をかけている。
【0013】
木材の着色において、着色前に減圧する理由は、減圧によって木材組織の中に入り込んでいる空気を取り出すことにある。したがって、減圧時間が短いと、年輪幅の広い夏目3(春材・早材)中に入り込んでいる空気が残留する状態となる。この状態で着色剤を含浸させると、夏目3にはなかなか色素が入りこまないので、夏目3が淡く着色された状態となる。これに対し、冬目2には元々空気の残留が少ないので、冬目2には自然に色素が入り込み、冬目2は比較的濃く着色される。
【0014】
次に、加圧することによって、さらに強制的に色素を木材の組織中に入れていくが、減圧時間が短いために夏目3には空気が多く残留していて、色素が中々入り込まず、夏目3の着色は進まない。一方、冬目2の方には、元々空気の残留が少ないので、加圧時間を長くすることにより十分に色素が入り込み、比較的濃く着色される。この結果として、夏目3が淡く、冬目2が濃く着色された、着色木材ブロック100(図3参照)のような自然風合いの木材が得られるのである。
【0015】
これに対し、減圧時間を長くすると、夏目3に入り込んでいる空気が十分に追い出された状態となる。したがって、この時点にて着色剤を含浸させることにより、色素は十分に夏目3に入り込んで、夏目3を濃く着色する。これに対し、冬目2の方は、元々空気の残留が少ないので、減圧時間を長くしても、着色剤の入り方は変わらない。したがって、相対的に、夏目3が濃く、冬目2が淡く着色される。
【0016】
ここで加圧を施すと、空気が抜けてスポンジのようになっている夏目3の方にはさらに多くの色素が入り込んで、夏目3はさらに濃く着色される。一方、冬目2の方は、加圧時間を長くすれば徐々に着色が進行して濃くなるが、その進行は緩慢であるので、夏目3に十分に色素が入り込んだ状態にて常圧に戻すことにより、冬目2は淡く着色されたままで着色の進行を停止させることができる。これにより、冬目2が淡く、夏目3が濃く着色された、自然風合いとは逆の外観を呈する着色木材ブロック10(図1参照)を得ることができた。
【0017】
減圧と加圧の程度、及び範囲は、素材となる木材の種類や着色剤の濃度、あるいは色合いによっても異なるが、減圧の際の圧力が40hPa〜95hPaで10〜14時間、加圧の際の圧力が7000hPa〜9000hPaにて2〜4時間というところが適切であろうと考えられる。また、実施例1にては木材ブロックを用いたが、単板を用いても良いし、集成材や集成材をスライスあるいは製材した集成板材を用いても良い。さらに、木材ブロックや単板を、着色後に集成したり、スライス、あるいは製材することも、無論自由である。
【産業上の利用可能性】
【0018】
本発明は、これまでに自然には存在しなかった外観の木材を得る方法を開示するものであり、木製品を用いる各種の産業において、幅広い利用可能性を有するものである。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の実施例1の着色木材ブロックの外観斜視図である。
【図2】本発明の実施例1の着色木材ブロックの素材となる木材ブロックの外観斜視図である。
【図3】本発明の比較例1の着色木材ブロックの外観斜視図である。
【符号の説明】
【0020】
1 木材ブロック
10 着色木材ブロック
100 着色木材ブロック
2 冬目
3 夏目

【特許請求の範囲】
【請求項1】
木材にあらかじめ大気圧以下の減圧を施し、減圧下にて着色剤を含浸させ、次に、大気圧以上に加圧することにより、木材に着色剤を含浸させて着色した木材おいて、減圧時間を加圧時間より長くすることにより得られる自然風合いの木材とは逆の外観の木目を有する木材、すなわち、冬目すなわち秋材すなわち晩材が淡く、夏目すなわち春材すなわち早材が濃く着色されたことを特徴とする、色調が反転された木目を有する木材。
























【図1】
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【図2】
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【図3】
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