説明

芝刈機

【課題】小型な芝刈機を提供する。
【解決手段】芝刈機は、車輪(前車輪、後車輪)16,17を有し、少なくとも所定の前方に移動可能な本体10と、本体10に設けられ、回転子53、固定子54、及び出力軸52を有し、出力軸52の軸線7が略鉛直に配置された電動モータ50と、出力軸52に接続された回転刃40と、本体10から離間して配置されたハンドルと、本体10とハンドルとを接続する接続部(伸縮パイプ)と、を備える。回転子53は、出力軸52の軸線7方向視において出力軸52を中心として円周方向に配列された略環状の複数のコイルを有するコイルディスクを備える。固定子54は、コイルディスクを出力軸52の軸線7方向に通過する磁束を発生する磁束発生手段を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電動モータを駆動源とする芝刈機に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、車輪を有する本体に設けられた電動モータと、電動モータに駆動される回転刃と、本体から上方かつ後方に離間して設けられたハンドルと、本体とハンドルとを接続する接続部と、回転刃が刈り取った芝が集められる集草ケースと、を備える芝刈機が知られている。このような芝刈機は、例えば特許文献1及び特許文献2に開示されている。
【0003】
特許文献1の芝刈機では、集草ケースは本体の後方に配置されている。また、特許文献2の芝刈機では、集草ケースは接続部に取り付けられ、上下方向に長く構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−219428号公報
【特許文献2】特開2004−159621号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
芝刈機は、操作性、運搬性、収納性の観点から、全体のサイズがより小さいことが望ましい。ところが、電動モータを駆動源とする芝刈機では、一般的に、回転刃の側面と地面とが略平行となるように、電動モータの出力軸が鉛直に配置されている。そのため、本体の高さを抑制することに限界があった。
【0006】
また、特許文献1の芝刈機のように、集草ケースが本体の後方に配置された芝刈機では、前後方向のサイズが大きくなるため、障害物がある場所や狭い場所における操作性が悪かった。
【0007】
一方、特許文献2の芝刈機のように、集草ケースが接続部に取り付けられ、上下方向に長く構成された芝刈機では、前後方向のサイズが比較的小さい。しかし、集草ケースには刈り取られた芝を上方に搬送するための通路を併設する必要があることに加え、集草ケース又は通路を接続部の後方に大きく突出させると操作性が損なわれることから、集草ケースの容量に限界があった。また、集草ケースを本体の上方に配置しようとすると、上述のように、本体の高さを抑制することが困難であるため、同様に集草ケースの容量を大きくすることができないという課題があった。
【0008】
上記課題に鑑み、本発明は、小型な芝刈機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するため、本発明に係る芝刈機は、
車輪を有し、少なくとも所定の前方に移動可能な本体と、
前記本体に設けられ、回転子と、固定子と、前記回転子と同軸一体に設けられた出力軸と、を有し、前記出力軸の軸線が略鉛直に配置された電動モータと、
前記出力軸に接続された回転刃と、
前記本体から離間して配置されたハンドルと、
前記本体と前記ハンドルとを接続する接続部と、を備え、
前記回転子と前記固定子との何れか一方は、前記出力軸の軸線方向視において前記出力軸を中心として円周方向に配列された略環状の複数のコイルを有する円板状のコイルディスクを備え、
前記回転子と前記固定子との何れか他方は、前記コイルディスクを前記出力軸の軸線方向に通過する磁束を発生する磁束発生手段を備える、
ことを特徴とする。
【0010】
上記芝刈機は、例えば、
本体の上方に配置された集草ケースと、
前記出力軸に接続され、前記回転刃の近傍から前記集草ケースの内部に向かう空気の流れを生成するファンと、を更に備えていても良い。
【0011】
例えば、前記集草ケースは、前記本体に載置されていても良い。
【0012】
また、例えば、前記集草ケースは、前記接続部の前方に配置されていても良い。
【0013】
例えば、前記コイルディスクは、前記コイルの導体パターンが形成されたプリント配線板から構成されていても良い。
【0014】
例えば、前記磁束発生手段は、マグネットを備えていても良い。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、電動モータを有する本体の高さを抑制することにより、小型な芝刈機を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る芝刈機を示す上面図。
【図2】図1のI−I線断面図。
【図3】図2に示された本体及び集草バッグを拡大して示す断面図。
【図4】図2に示されたモータを拡大して示す断面図。
【図5】図4に示された回転子及び出力軸を分解して示す断面図。
【図6】図5に示されたコイル・コミュテータディスクの導体パターンを示す下面図。
【図7】図5に示されたコイルディスクの導体パターンを示す下面図。
【図8】本発明の第2の実施形態に係る芝刈機を示す断面図。
【図9】図4に示されたモータの変形例を示す要部断面図。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明を実施するための形態を、図面を用いて説明する。
【0018】
(第1の実施形態)
初めに、図1〜図3を参照して、第1の実施形態に係る芝刈機1について説明する。なお、特に断らない限り、図1〜図3における右方、左方を、それぞれ芝刈機1の前方、後方とする。また、図1における上方、下方を、それぞれ芝刈機1の左方、右方とする。
【0019】
図1及び図2に示すように、芝刈機1は、本体10と、本体10に接続された左右一対の伸縮パイプ(接続部)20と、伸縮パイプ20の先端に取り付けられたハンドル25と、本体10に載置された集草バッグ(集草ケース)30と、を備える。
【0020】
図3に示すように、本体10は、主に、ハウジング11と、上カバー12と、下カバー13と、回転刃保護カバー14と、左右一対の前車輪16と、後車輪17と、回転刃40と、ファン45と、電動モータ(以下、モータ)50と、高さ調整機構15と、を備えている。
【0021】
ハウジング11は、モータ50の回転軸(出力軸52の軸線7)が略鉛直となるように、モータ50を固定している。上カバー12は、モータ50を上方から覆うように、ハウジング11の上部に取り付けられている。下カバー13は、モータ50の出力軸52に取り付けられた回転刃40の後方において、ハウジング11の下部に取り付けられている。回転刃保護カバー14は、回転刃40を下方から覆うように、ハウジング11に取り付けられている。
【0022】
ハウジング11と回転刃保護カバー14とは、回転刃40の前方の周縁部が露出するように、本体10の前方に向けて開口する前開口部19aを画成している。
【0023】
ハウジング11と下カバー13とは、前開口部19aに連続する刈芝搬送通路18と、本体10の後方に向けて開口する後開口部19bと、を画成している。刈芝搬送通路18は、回転刃40の後端部の近傍から、後方に向かって通路面積を拡大しながら、後開口部19bまで形成されている。
【0024】
前車輪16は、本体10の前端部において、左右方向に延在する前車軸16aの回りに回動可能に支持されている。前車軸16aは、高さ調整機構15を介して、ハウジング11の前端部に取り付けられている。
【0025】
後車輪17は、前車輪16よりも小径のローラから構成されており、本体10の後端部に取り付けられている。
【0026】
回転刃40とファン45とは、モータ50の出力軸52に取り付けられており、本体10のハウジング11と回転刃保護カバー14との間に収容されている。回転刃40は、モータ50の動力を受けて回転することにより、周縁部に形成された図略の複数の刃で芝を刈り取ることができる。ファン45は、モータ50の動力を受けて回転することにより、本体10の前開口部19aから刈芝搬送通路18を通って後開口部19bに向かう空気の流れを生成することができる。
【0027】
高さ調整機構15は、ハウジング11と前車軸16aとを連結するアーム15aと、アーム15aの角度を調整するためのレバー15bと、から構成されている。レバー15bを上下にスライドすることにより、前車軸16aとハウジング11との相対高さを調整することができ、従って回転刃40の地面からの高さを調整することができる。
【0028】
図2に示すように、伸縮パイプ20は、本体10の前車輪16と後車輪17との間においてハウジング11に回動可能に支持されており、本体10に対して前後方向に傾動することができる。なお、伸縮パイプ20は、相互に摺動可能に嵌合した2本のパイプから構成されており、図2では縮めた状態を示すが、使用時には伸ばすことができる。
【0029】
ハンドル25は、伸縮パイプ20の先端部に取り付けられている。ハンドル25には、商用電源に接続される電源コード26、モータ50を駆動/停止するための図略のスイッチ、モータ50に直流電圧を印加する図略の電源回路、等が設けられている。なお、電源回路とモータ50とは、伸縮パイプ20に沿って配設された配線28(図1参照)により接続されている。ハンドル25は、伸縮パイプ20と一体に傾動することができ、使用時には、図2に示すように、本体10の上方かつ後方に配置される。
【0030】
図3に示すように、集草バッグ30は、本体10の刈芝搬送通路18に連続すると共に本体10の上方に向かって湾曲した刈芝導入通路31を有し、本体10の後開口部19bに着脱可能に接続されると共に本体10に載置されている。集草バッグ30の上面には、取っ手32が設けられている。
【0031】
次に、図4乃至図7を参照して、モータ50について詳細に説明する。
【0032】
モータ50は、いわゆる整流子モータであり、図4に示すように、モータハウジング51と、出力軸52と、回転子53と、固定子54と、一対の摺動子55と、から構成されている。
【0033】
モータハウジング51は、ハウジング11に固定されている。
【0034】
出力軸52は、モータハウジング51、ハウジング11に設けられた上下一対の軸受57,58により、回転可能に支持されている。出力軸52の下端部には、上述のように、回転刃40とファン45とが取り付けられる。
【0035】
回転子53は、出力軸52と同軸一体に設けられ、軸線7を中心とする円盤状に形成されている。回転子53は、図5に示すように、フランジ61と、コイル・コミュテータディスク62と、4つのコイルディスク63と、から構成されている。
【0036】
フランジ61は、アルミニウム合金から形成されており、軸線7を中心とする円筒状の固定部61aと、軸線7と略垂直に固定部61aの外周面から延出する円板状の支持部61bと、から構成されている。フランジ61は、固定部61aと出力軸52とが嵌合して回り止め固定されることにより、出力軸52と一体に回転する。
【0037】
コイル・コミュテータディスク62とコイルディスク63とは、絶縁体基板と導体パターンとから構成されたプリント配線板である。コイル・コミュテータディスク62とコイルディスク63とは、軸線7を中心として略等しい内径と外径とを有する円板状に形成されており、コイル・コミュテータディスク62を最下層として、フランジ61の支持部61bの下面に積層されている。
【0038】
コイル・コミュテータディスク62の下面には、コミュテータ(整流子)の導体パターンが形成されたコミュテータ領域80と、コイルの導体パターンが形成されたコイル領域90aと、が設けられている。コミュテータ領域80とコイル領域90aとは、それぞれ軸線7を中心とする円環状に設けられ、コミュテータ領域80の外周側にコイル領域90aが配置されている。また、コイル・コミュテータディスク62の上面には、コイルの導体パターンを形成するためのコイル領域90bが設けられている。コイル領域90bは、軸線7を中心とする円環状に設けられ、軸線7方向視においてコイル領域90aと重なり合うように配置されている。
【0039】
図6に示すように、コイル・コミュテータディスク62下面のコミュテータ領域80には、導体パターンにより、コミュテータ81が形成されている。コミュテータ81は、軸線7を中心として放射状に形成された複数のコミュテータ片82から構成されている。なお、各コミュテータ片82の外側端部には、コイル・コミュテータディスク62を貫通するスルーホール83aが形成されている。
【0040】
また、コイル・コミュテータディスク62下面のコイル領域90aには、導体パターンにより、軸線7を中心として放射状に形成された複数のコイル片92aが形成されている。各コイル片92aの内側端部は、対応するコミュテータ片82に直接に接続されて形成されている。また、各コイル片92aの外側端部は、軸線7回りの所定方向に曲折して形成されている。なお、各コイル片92aの外側端部には、コイル・コミュテータディスク62を貫通する複数のスルーホール93aが形成されている。
【0041】
コイル・コミュテータディスク62上面のコイル領域90b(図5参照)には、図6に示されたコイル領域90aと略同様の導体パターンにより、軸線7を中心として放射状に形成された図略の複数のコイル片が形成されている。図略の各コイル片の外側端部は、スルーホール93aに充填された半田を介して、コイル領域90aの対応するコイル片92aに接続されている。また、図略の各コイル片の内側端部は、スルーホール83aに充填された半田を介して、コミュテータ領域80の対応するコミュテータ片82に接続されている。これにより、コイル領域90aの複数のコイル片92aとコイル領域90bの図略の複数のコイル片とは、軸線7方向視において略環状(略コ字状)に形成された複数のコイル91aを構成している。複数のコイル91aは、軸線7を中心として周方向に配列されている。また、各コイル91aの端末は、コミュテータ領域80の対応するコミュテータ片82に接続されている。
【0042】
図5に示すように、コイルディスク63の下面及び上面には、コイルの導体パターンが形成されたコイル領域90c,90dが、それぞれ設けられている。コイル領域90c,90dは、それぞれ軸線7を中心とする円環状に設けられ、軸線7方向視においてコイル・コミュテータディスク62のコイル領域90a,90bと重なり合うように配置されている。
【0043】
コイルディスク63のコイル領域90c,90dには、コイル・コミュテータディスク62のコイル領域90a,90bと略同様の導体パターンが形成されている。コイルディスク63下面のコイル領域90cには、図7に示すように、軸線7を中心として放射状に形成された複数のコイル片92cが形成されている。また、コイルディスク63上面のコイル領域90dには、コイル領域90cと略同様の導体パターンにより、図略の複数のコイル片が形成されている。コイル領域90cの複数のコイル片92cとコイル領域90dの図略の複数のコイル片とは、コイルディスク63を貫通するスルーホール83c,93cに充填された半田を介してそれぞれ接続され、軸線7方向視において略環状(略コ字状)に形成された複数のコイル91cを構成している。複数のコイル91cは軸線7を中心として周方向に配列されている。また、各コイル91cの端末は、コイル・コミュテータディスク62のスルーホール83aに充填された半田を介して、コミュテータ領域80の対応するコミュテータ片82に接続されている。
【0044】
なお、図6に示すように、コイル・コミュテータディスク62のコミュテータ領域80及びコイル領域90aの導体パターンは、同一のプリント配線上に形成されている。また、図5に示すように、コイル・コミュテータディスク62のコミュテータ領域80及びコイル領域90aの導体パターンは、後述する摺動子55との摩耗による損傷を防止するため、コイル領域90b及びコイルディスク63のコイル領域90c,90dよりも、厚く形成されている。
【0045】
上述のコイル・コミュテータディスク62とコイルディスク63とは、図略の絶縁層を介して、例えば、コイル91a,91cが軸線7方向視において重なり合うように、あるいはコイル91a,91cが軸線7回りに所定の角度を有して配列されるように、積層されている。
【0046】
図4に示すように、固定子54は、永久磁石であるマグネット71と、上下一対のヨーク72,73と、から構成されている。マグネット71は、図示は省略するが、軸線7の周囲に複数配列されている。一対のヨーク72,73は、鉄等の磁性体から円環板状に形成されており、モータハウジング51に固定されている。ヨーク72は、回転子53の上面と対向するように、詳細にはコイルディスク63のコイル領域90d(図5参照)と対向するように、配置されている。ヨーク73は、回転子53の下面と対向するように、詳細にはコイル・コミュテータディスク62のコイル領域90a(図5参照)と対向するように、配置されている。マグネット71は、回転子53の上面と対向するように、ヨーク72の上面に固着されている。従って、一対のヨーク72,73は、マグネット71が発生する磁束がコイル・コミュテータディスク62及びコイルディスク63を軸線7方向に通過するように、磁路を形成している。なお、マグネット71及びヨーク72,73は、磁束発生手段を構成している。
【0047】
一対の摺動子55は、回転子53の下面に摺接するように、詳細にはコイル・コミュテータディスク62の一対のコミュテータ片82(図6参照)に摺接するように、モータハウジング51に固定された一対の摺動子ホルダ59に保持され、軸線7を挟んで配置されている。摺動子55は、摺動子ホルダ59に設けられた図略の付勢手段により、軸線7方向から回転子53の下面に向けて付勢されている。なお、摺動子55は、電気伝導性を有するカーボンから形成されており、上述の配線28(図1参照)を介して、上述のハンドル25に設けられた図略の電源回路に接続されている。
【0048】
次に、上述のモータ50及びこれを備える芝刈機1の動作について説明する。
【0049】
ハンドル25に設けられた図略のスイッチをONすると、図略の電源回路からモータ50の一対の摺動子55に所定の直流電圧が印加される。
【0050】
モータ50の一対の摺動子55に印加された電圧は、コミュテータ81を介して、固定子54が発生する磁束を通過する回転子53のコイル91a,91cに印加される。電圧が印加されたコイル91a,91cには、固定子54が発生する磁束と垂直方向かつ軸線7と直交方向に電流が流れることから、軸線7を中心とする回転力が発生する。従って、回転子53、回転子53に固定された出力軸52、及び出力軸52に取り付けられた回転刃40及びファン45が、軸線7を回転軸として一体に回転する。
【0051】
次に、ハンドル25を前方に押すと、芝刈機1は、本体10の前車輪16及び後車輪17の回転に伴って前方に移動する。このとき、回転刃40は、進路上の芝を略一定の高さに刈り取りながら移動する。また、ファン45は、本体10の前開口部19aから刈芝搬送通路18を通って後開口部19bに向かう空気の流れを生成し、回転刃40が刈り取った芝を集草バッグ30に搬送する。
【0052】
上記構成のモータ50は、出力軸52の軸線7を中心として円周方向に配列されたコイル91a,91cを有する円板状のコイル・コミュテータディスク62及びコイルディスク63から構成された回転子53と、コイル・コミュテータディスク62及びコイルディスク63を軸線7方向に通過する磁束を発生する磁束発生手段(マグネット71及びヨーク72,73)から構成された固定子54と、を備える。従って、モータ50は、従来の芝刈機のモータと比較して、出力軸52の軸線7方向の幅が抑制された扁平かつ小型な形状を有する。
【0053】
また、モータ50の回転子53を構成するコイル・コミュテータディスク62及びコイルディスク63は、コイル91a,91cの導体パターンが形成されたプリント配線板から構成されている。従って、鉄等の磁性体から形成されたコアに巻回されたコイルを有するモータと比較して、回転子53が軽量であることから、モータ50は軽量であると共に起動が早い。また、回転子53がコイルエンド(コアに巻回されたコイルにおいて、コアからはみ出す屈曲部分)を要しないことから、モータ50はより扁平かつ小型に構成されるほか、コイル91a,91cの発熱が抑制される。さらに、回転子53の表面積、すなわち放熱面積が大きいことから、モータ50はコイル91a,91cの冷却能力に優れる。従って、コイル91a,91cの過熱によるモータ50の出力低下が抑制される。
【0054】
以上説明したように、上記構成の芝刈機1によれば、上述の扁平かつ小型なモータ50を採用することにより、本体10の高さを抑制することができる。
【0055】
従って、集草バッグ30を本体10の上方に配置することにより、芝刈機1の高さを抑制しながら、芝刈機1の前後方向の長さを抑制することや、集草バッグ30の容量を増大することができる。芝刈機1の前後方向の長さを抑制することにより、障害物のある場所や、狭い場所における操作性を向上すると共に、運搬性及び収納性を向上することができる。また、集草バッグ30を本体10に載置することにより、集草バッグ30を安定して支持することが可能になる共に、集草バッグ30の容量を更に増大することが可能となる。そして、集草バッグ30の容量を増大することにより、集草バッグ30に集められた芝を廃棄する頻度を低減し、作業性を向上することができる。
【0056】
(第2の実施形態)
次に、図8を参照して、第2の実施形態に係る芝刈機101について説明する。ただし、第1の実施形態の芝刈機1と共通する構成については、同一の符号を付し、その説明を省略する。なお、特に断らない限り、図8における右方、左方を、それぞれ芝刈機101の前方、後方とする。
【0057】
芝刈機101は、本体110と、本体110に接続された左右一対の伸縮パイプ120と、伸縮パイプ120の先端に配置されたハンドル125と、本体110に載置された集草バッグ(集草ケース)130と、を備える。
【0058】
本体110は、主に、ハウジング111と、左右一対の車輪116と、ブレード140と、ファン145と、第1の実施形態に示したモータ50と、高さ調整機構115と、を備えている。
【0059】
ハウジング111は、複数のケースやカバー等から構成されており、モータ50の回転軸(出力軸の軸線7)が略鉛直となるように、モータ50を収容している。また、ハウジング111は、モータ50の出力軸52に取り付けられたファン145を収容している。
【0060】
ハウジング111には、ファン145の下方において、本体10の下方に向けて開口する下開口部119aが形成されている。また、ハウジング111には、ファン145の近傍から上方に延在する刈芝搬送通路118が形成されている。また、ハウジング111には、刈芝搬送通路118の上端部において、本体110の前方に向けて開口する上開口部119bが形成されている。
【0061】
車輪116は、左右方向に延在する車軸116aの回りに回動可能に軸支されている。
【0062】
ブレード140は、軸線7の前方に配置され、上下方向に互いに重なり合う固定刃140aと回転刃140bとから構成されている。固定刃140aは、周縁部の一部に配列された図略の複数の刃を有して略円板状に形成されており、複数の刃を前方に向けると共に地面と略水平となるように、ハウジング111の下部に取り付けられている。回転刃140bは、固定刃140aの周縁部と略等しい外径を有すると共に、周縁部に配列された図略の複数の刃を有して円板状に形成されており、図略の複数の歯車を介してモータ50の出力軸52に接続されている。ブレード140は、固定刃140aと、モータ50の動力を受けて回転する回転刃140bと、の相対回転に伴って、それぞれの刃に挟まれる芝を刈り取ることができる。
【0063】
ファン145は、モータ50の動力を受けて回転することにより、ハウジング111の下開口部119aから、刈芝搬送通路118を通って、上開口部119bに向かう空気の流れを生成することができる。
【0064】
高さ調整機構115は、ハウジング111に上下方向に摺動可能に支持されたロッド115aと、ロッド115aの下端部に設けられた接地部115bと、ロッド115aの上端部に設けられたラック115cと、ハウジング111に回動可能に支持され、ラック115cと噛合するピニオン115dと、から構成されている。ピニオン115dを外部から回動させることにより、接地部115bとブレード140との相対高さを調整することができ、従ってブレード140の地面からの高さを調整することができる。なお、ロッド115aは、回転刃140bに接続された筒状の軸受141に挿通され、ブレード140と同軸に配置されている。
【0065】
伸縮パイプ120は、本体110の後端部において、ハウジング111に回動可能に支持されており、本体110に対して前後方向に傾動することができる。なお、伸縮パイプ120は、運搬時や収納時には、図8に示すように、略鉛直に配置されると共に長さが縮められる。
【0066】
ハンドル125は、伸縮パイプ120の先端部に取り付けられている。ハンドル125には、電源コード126、モータ50を駆動/停止するためのスイッチ127、モータ50に直流電圧を印加する図略の電源回路、等が設けられている。電源回路とモータ50とは、配線128により接続されている。
【0067】
集草バッグ130は、本体110の刈芝搬送通路118に連続する刈芝導入部131を有し、本体110の上開口部119bに接続されると共に本体110に載置されている。なお、集草バッグ130は、前後方向の厚みを抑え、上下方向に長く形成されているため、第1の実施形態とは異なり、伸縮パイプ120が略鉛直に配置された状態であっても、伸縮パイプ120より後方に突出せず、伸縮パイプ120より前方に配置されている。さらに、集草バッグ130は、本体110より前方及び後方に突出せず、かつハンドル125より上方に突出することもない。従って、芝刈機1は、運搬時や収納時には、容易にコンパクトにまとめることができる。また、集草バッグ130は、本体110の上面に設けられたラッチ部112と係合することで取り付けることが可能であり、上方から着脱可能に構成されている。
【0068】
次に、上述の芝刈機101の動作について説明する。
【0069】
ハンドル125に設けられたスイッチ127をONすると、図略の電源回路からモータ50に所定の直流電圧が印加され、モータ50の出力軸52と、出力軸52に取り付けられたファン145と、出力軸52に図略の減速機構を介して接続された回転刃140bと、が回転する。
【0070】
次に、ハンドル125を前方に押すと、芝刈機101は、本体110の車輪116の回転に伴って前方に移動する。このとき、ブレード140は、進路上の芝を略一定の高さに刈り取りながら移動する。また、ファン145は、本体110の下開口部119aから刈芝搬送通路118を通って上開口部119bに向かう空気の流れを生成し、ブレード140が刈り取った芝を集草バッグ130に搬送する。
【0071】
上記構成の芝刈機101によれば、上述の扁平かつ小型なモータ50を採用することにより、第1の実施形態の芝刈機1と同様に、本体110の高さを抑制することができる。
【0072】
従って、集草バッグ130を本体110の上方に配置することにより、第1の実施形態の芝刈機1と同様に、芝刈機101の高さを抑制しながら、芝刈機101の前後方向の長さを抑制することや、集草バッグ130の容量を増大することができる。
【0073】
さらに、集草バッグ130を本体110に載置することで、集草バッグ130を安定して支持することが可能となると共に、集草バッグ130の容量をさらに増大することが可能となる。また、集草バッグ130は、本体110の上面に設けられたラッチ部112に取り付けられるため、着脱作業を容易に行うことができる。
【0074】
また、集草バッグ130を、伸縮パイプ120より後方に突出しないように、伸縮パイプ20の前方に配置することにより、集草バッグ30の容量を維持しながら、芝刈機101の全体のサイズをより抑制することができる。従って、作業性を損なうことなく、操作性、運搬性、及び収納性をより向上することができる。
【0075】
(変形例)
なお、本発明は上述の実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載した範囲で種々の変形をしたものも、本発明の技術的範囲に含まれる。
【0076】
例えば、本発明に係るコイルディスクに形成されるコイルの形態、及び本発明に係る磁束発生手段の磁極の配置等は、整流子モータを構成することができるならば、任意に変更可能である。
【0077】
また、本発明に係る磁束発生手段は、マグネットを備えるものに限定されず、コイルディスクをモータの出力軸の軸線方向に通過する磁束を発生することができるならば、例えば、コイルを備えるものであっても良い。
【0078】
また、第1及び第2の実施形態の芝刈機1,101は、コイル・コミュテータディスク62及びコイルディスク63を有する回転子53と、磁束発生手段(マグネット71及びヨーク72,73)を有する固定子54と、から構成された整流子モータであるモータ50を備えていたが、本発明に係る芝刈機はこれに限定されるものではなく、例えば、マグネットを有する回転子と、コイルディスクを有する固定子と、から構成されたブラシレスモータを備えていても良い。
【0079】
また、第1及び第2の実施形態のモータ50は、コイル・コミュテータディスク62の下面に導体パターンにより形成されたコミュテータ81を備えていたが、本発明に係る電動モータはこれに限定されるものではなく、例えば、図9に示すモータ250のように、コイルディスク63の下面に配置された円筒状のコミュテータ281を備えていても良い。モータ250のコミュテータ281は、軸線7を中心として周方向に配列された複数のコミュテータ片282から構成されており、各コミュテータ片282は、コイルディスク63の対応するコイル91cと電気的に接続されている。また、一対の摺動子55は、軸線7と略直交する方向から、コミュテータ281の外周面に摺接するように配置されている。コミュテータ281は、導体パターンにより形成されたコミュテータ281と比較して、摺動子55から受ける荷重やコイルディスク63の歪み等に伴う面振れを生じにくいため、摺動子55との接続の安定性に優れ、整流性能に優れる。また、機械加工等により形成されるコミュテータ片282は、導体パターンにより形成されるコミュテータ片82と比較して、容易に厚く形成することができるため、摺動子55との摩耗による損傷が抑制される。更に、摺動子55が軸線7と略直交方向に延びるよう配置されるため、摺動子55の長さはモータ250の高さ及び芝刈機の高さに影響を及ぼさない。従って、モータ250の高さを維持しながら、摺動子55の長さを増大し、摺動子55の寿命を長くすることができる。従って、上記構成のモータ250によれば、第1及び第2の実施形態のモータ50と比較して、モータ250の高さを抑えたまま、高効率かつ長寿命なモータ250を容易に実現することができる。
【0080】
また、第1及び第2の実施形態のコイル・コミュテータディスク62及びコイルディスク63は、プリント配線板から構成されていたが、本発明に係るコイルディスクはこれに限定されず、例えば、円板状に配列された複数の薄型コイル等から構成されていても良い。
【0081】
また、第1及び第2の実施形態の集草バッグ(集草ケース)30,130は、本体10,110に載置されていたが、本発明に係る集草ケースはこれに限定されず、本体の上方に位置するように、伸縮パイプ等の接続部に設けられていても良い。このようにしても、モータ及び本体の高さが抑制されているため、集草ケースの容量を増大することができる。
【0082】
また、第1及び第2の実施形態及び変形例に示された構成を組み合わせても良い。
【0083】
その他、各構成の材質、形状、数量、配置等についても、本発明の目的を達成することが可能な範囲において、適宜変更することができる。
【符号の説明】
【0084】
1 芝刈機
10 本体
11 ハウジング
12 上カバー
13 下カバー
14 回転刃保護カバー
15 高さ調整機構
15b アーム
15c レバー
16 前車輪
16a 前車軸
17 後車輪
18 刈芝搬送通路
19a 前開口部
19b 後開口部
20 伸縮パイプ(接続部)
25 ハンドル
26 電源コード
27 スイッチ
28 配線
30 集草バッグ(集草ケース)
31 刈芝導入通路
32 取っ手
40 回転刃
45 ファン
50 電動モータ
51 モータハウジング
52 出力軸
53 回転子
54 固定子
55 摺動子
57,58 軸受
59 摺動子ホルダ
61 フランジ
61a 固定部
61b 支持部
62 コイル・コミュテータディスク
63 コイルディスク
71 マグネット
72,73 ヨーク
80 コミュテータ領域
81 コミュテータ
82 コミュテータ片
83a,83c スルーホール
90a〜90d コイル領域
91a,91c コイル
92a,92c コイル片
93a,93c スルーホール
101 芝刈機
110 本体
111 ハウジング
112 ラッチ部
115 高さ調整機構
115a ロッド
115b 接地部
115c ラック
115d ピニオン
116 車輪
116a 車軸
118 刈芝搬送通路
119a 下開口部
119b 上開口部
120 伸縮パイプ(接続部)
125 ハンドル
126 電源コード
127 スイッチ
128 配線
130 集草バッグ(集草ケース)
131 刈芝導入部
140 ブレード
140a 固定刃
140b 回転刃
141 軸受
145 ファン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車輪を有し、少なくとも所定の前方に移動可能な本体と、
前記本体に設けられ、回転子と、固定子と、前記回転子と同軸一体に設けられた出力軸と、を有し、前記出力軸の軸線が略鉛直に配置された電動モータと、
前記出力軸に接続された回転刃と、
前記本体から離間して配置されたハンドルと、
前記本体と前記ハンドルとを接続する接続部と、を備え、
前記回転子と前記固定子との何れか一方は、前記出力軸の軸線方向視において前記出力軸を中心として円周方向に配列された略環状の複数のコイルを有する円板状のコイルディスクを備え、
前記回転子と前記固定子との何れか他方は、前記コイルディスクを前記出力軸の軸線方向に通過する磁束を発生する磁束発生手段を備える、
ことを特徴とする芝刈機。
【請求項2】
本体の上方に配置された集草ケースと、
前記出力軸に接続され、前記回転刃の近傍から前記集草ケースの内部に向かう空気の流れを生成するファンと、を更に備える、
ことを特徴とする請求項1に記載の芝刈機。
【請求項3】
前記集草ケースは、前記本体に載置されている、
ことを特徴とする請求項2に記載の芝刈機。
【請求項4】
前記集草ケースは、前記接続部の前方に配置されている、
ことを特徴とする請求項2又は3に記載の芝刈機。
【請求項5】
前記コイルディスクは、前記コイルの導体パターンが形成されたプリント配線板から構成されている、
ことを特徴とする請求項1乃至4の何れか1項に記載の芝刈機。
【請求項6】
前記磁束発生手段は、マグネットを備えている、
ことを特徴とする請求項1乃至5の何れか1項に記載の芝刈機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2011−211980(P2011−211980A)
【公開日】平成23年10月27日(2011.10.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−84027(P2010−84027)
【出願日】平成22年3月31日(2010.3.31)
【出願人】(000005094)日立工機株式会社 (1,861)
【Fターム(参考)】