説明

芳香族炭化水素の製造方法および芳香族炭化水素の製造プラント

【課題】水素化処理のための水素製造プラントを別途設ける必要がなく、芳香族炭化水素を低コストで製造できる製造方法および製造プラントを提供する。
【解決手段】(a)LCO等の原料油を芳香族製造触媒と接触させて芳香族炭化水素を含む反応生成物を得る工程と、(b)反応生成物を蒸留塔によって塔頂留分と塔底留分とに分離する工程と、(c)塔頂留分をLPG留分を含む粗芳香族留分と水素を含むオフガスとに分離する工程と、(d)LPG留分を含む粗芳香族留分をLPG留分と粗芳香族留分とに分離する工程と、(e)水素を含むオフガスを水素とオフガスとに分離する工程と、(f)前記工程(e)にて得られた水素を用いて粗芳香族留分を水素化処理し、芳香族留分を得る工程とを有する芳香族炭化水素の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、接触芳香族製造反応により芳香族炭化水素を製造する方法および製造プラントに関する。
【背景技術】
【0002】
流動接触分解(以下、FCCと記す。)装置から得られる分解軽油(ライトサイクルオイル。以下、LCOと記す。)、原油蒸留装置から得られる軽質ナフサ、重質ナフサ等の原料油から、芳香族製造触媒を用いた接触芳香族製造反応により、BTX(ベンゼン、トルエン、キシレン等)等の芳香族炭化水素を製造する方法はよく知られている。一般に、これらの製造方式としては、固定床による方式(特許文献1)、移動床による方式(特許文献2)、または流動床による方式(特許文献3)が採用されている。
【0003】
ところで、FCC装置から得られるLCO、原油蒸留装置から得られる軽質ナフサ、重質ナフサ等の原料油には、通常、硫黄分が含まれているため、あらかじめ原料油を水素化処理する、または製造されたBTXを多く含む粗芳香族留分には硫黄分やオレフィン類が存在するため水素化処理する必要がある。
しかし、水素化処理には水素が必要なため、芳香族炭化水素の製造プラント以外に、水素製造プラントを別途設ける必要がある。その結果、芳香族炭化水素の製造プラントを含むシステム全体が複雑になり、芳香族炭化水素の製造コストも高くなってしまう。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平3−277692号公報
【特許文献2】特開昭48−85605号公報
【特許文献3】特表平3−503656号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、水素化処理のための水素製造プラントを別途設ける必要がなく、芳香族炭化水素を低コストで製造できる製造方法および製造プラントを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の芳香族炭化水素の製造方法は、(a)流動接触分解装置から得られる分解軽油、該分解軽油を水素化処理したものならびに原油蒸留装置から得られるナフサおよび直留軽油からなる群から選ばれる1種以上の原料油を、芳香族製造触媒と接触させて芳香族炭化水素を含む反応生成物を得る工程と、(b)前記反応生成物を、蒸留塔によって塔頂留分と塔底留分とに分離する工程と、(c)前記塔頂留分を、LPG留分を含む粗芳香族留分と、水素を含むオフガスとに分離する工程と、(d)前記LPG留分を含む粗芳香族留分を、LPG留分と粗芳香族留分とに分離する工程と、(e)前記水素を含むオフガスを、水素とオフガスとに分離する工程と、(f)前記工程(e)にて得られた水素を用いて、前記粗芳香族留分中のオレフィン類や硫黄分を水素化処理し、芳香族留分を得る工程とを有することを特徴とする。
【0007】
前記工程(a)においては、前記原料油を、流動床反応器内にて流動床状態にある芳香族製造触媒と接触させて芳香族炭化水素を含む反応生成物を得ると同時に、外部から供給された熱付け用燃料を酸素含有ガスの存在下に燃焼させることによって、前記流動床反応器内から抜き出された前記芳香族製造触媒に熱付けを行うことが好ましい。
本発明の芳香族炭化水素の製造方法は、(g)前記工程(e)にて得られた水素を用いて、前記塔底留分を水素化処理する工程をさらに有していてもよい。
【0008】
本発明の芳香族炭化水素の製造プラントは、流動接触分解装置から得られる分解軽油、該分解軽油を水素化処理したものならびに原油蒸留装置から得られるナフサおよび直留軽油からなる群から選ばれる1種以上の原料油を、芳香族製造触媒と接触させて芳香族炭化水素を含む反応生成物を得る芳香族製造装置と、前記反応生成物を、蒸留塔によって塔頂留分と塔底留分とに分離する第1の分離手段と、前記塔頂留分を、LPG留分を含む粗芳香族留分と、水素を含むオフガスとに分離する第2の分離手段と、前記LPG留分を含む粗芳香族留分を、LPG留分と粗芳香族留分とに分離する第3の分離手段と、前記水素を含むオフガスを、水素とオフガスとに分離する第4の分離手段と、前記粗芳香族留分を水素化処理し、芳香族留分を得る第1の水素化処理装置と、前記第4の分離手段にて得られた水素を、前記第1の水素化処理装置に供給する第1の水素供給手段とを有することを特徴とする。
【0009】
前記芳香族製造装置は、前記原料油を、流動床状態にある芳香族製造触媒と接触させて芳香族炭化水素を含む反応生成物を得る流動床反応器と、外部から供給された熱付け用燃料を酸素含有ガスの存在下に燃焼させることによって、前記流動床反応器内から抜き出された前記芳香族製造触媒に熱付けを行う熱付け槽とを有するものであることが好ましい。
本発明の芳香族炭化水素の製造プラントは、前記塔底留分を水素化処理する第2の水素化処理装置と、前記第4の分離手段にて得られた水素を、前記第2の水素化処理装置に供給する第2の水素供給手段とをさらに有していてもよい。
【発明の効果】
【0010】
本発明の芳香族炭化水素の製造方法および製造プラントによれば、水素化処理のための水素製造プラントを別途設ける必要がなく、芳香族炭化水素を低コストで製造できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の芳香族炭化水素の製造プラントの一例を示す概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
<芳香族炭化水素の製造プラント>
図1は、本発明の芳香族炭化水素の製造プラントの一例を示す概略構成図である。製造プラント10は、流動床反応器12(芳香族製造装置)と、熱付け槽14(芳香族製造装置)と、蒸留装置16(第1の分離手段)と、吸収分離装置18(第2の分離手段)と、デブタナイザ20(第3の分離手段)と、PSA装置22(第4の分離手段)と、第1の水素化処理装置24と、第2の水素化処理装置25と、末端が流動床反応器12に接続された触媒ライザ26と、基端が流動床反応器12に接続され、末端が熱付け槽14に接続された第1の傾斜パイプ28と、基端が熱付け槽14に接続され、末端が触媒ライザ26の基端に接続された第2の傾斜パイプ30と、末端が触媒ライザ26の基端に接続されたフィードパイプ32と、基端が流動床反応器12に接続され、末端が蒸留装置16に接続された反応生成物パイプ34と、基端が後述する塔底油パイプ60から分岐し、末端が熱付け槽14に接続された燃料パイプ36と、末端が熱付け槽14に接続されたエアパイプ38と、基端が熱付け槽14に接続された排気パイプ40と、基端が蒸留装置16の蒸留塔の塔頂に接続され、末端が吸収分離装置18に接続された塔頂油パイプ42と、基端が吸収分離装置18に接続され、末端がデブタナイザ20に接続されたLPG留分含有粗芳香族留分パイプ44と、末端がデブタナイザ20の塔頂に接続されたLPG留分パイプ46と、基端が吸収分離装置18に接続され、末端がPSA装置22に接続された水素含有オフパイプ48と、基端がPSA装置22に接続されたオフガスパイプ50と、基端がデブタナイザ20の塔底に接続され、末端が第1の水素化処理装置24に接続された粗芳香族留分パイプ52と、基端がPSA装置22に接続された水素パイプ54と、基端が水素パイプ54から分岐し、末端が第1の水素化処理装置24に接続された第1の水素供給パイプ56(第1の水素供給手段)と、基端が第1の水素化処理装置24に接続された芳香族留分パイプ58と、基端が蒸留装置16の蒸留塔の塔底に接続され、末端が第2の水素化処理装置25に接続された塔底油パイプ60と、基端が第2の水素化処理装置25に接続されたC10+A留分パイプ62と、基端が第1の水素供給パイプ56から分岐し、末端が第2の水素化処理装置25に接続された第2の水素供給パイプ64(第2の水素供給手段)とを備える。
【0013】
芳香族製造装置は、原料油を、芳香族製造触媒と接触させて芳香族炭化水素を含む反応生成物を得るものであり、流動床反応器12と、熱付け槽14と、触媒ライザ26とを備える。なお、芳香族製造装置として、固定床反応器を備えた装置または移動床反応器を備えた装置を用いても構わない。ただし、温度制御や触媒再生の点から、本発明においては、流動床反応器を備えた芳香族製造装置が好ましい。
【0014】
流動床反応器12は、原料油を流動床状態にある芳香族製造触媒と接触させてBTXを多く含む反応生成物を得るためのものである。流動床反応器12は、触媒ライザ26を通って移送された原料油の蒸気および芳香族製造触媒を内部に導入する供給口と、芳香族製造触媒を第1の傾斜パイプ28へ抜き出す抜出口と、反応生成物の蒸気と芳香族製造触媒とを分離するサイクロン(図示略)と、サイクロンで分離された反応生成物の蒸気を反応生成物パイプ34へ排出する排出口とを備える。
【0015】
熱付け槽14は、芳香族製造触媒に付着したコークの燃焼による熱だけではなく、外部から供給されたエネルギーによって芳香族製造触媒に積極的に熱付けするためのもの、すなわちこれ自体が大きな加熱装置そのものである。熱付け槽14は、第1の傾斜パイプ28を通って移送されてきた芳香族製造触媒を内部に導入する供給口と、芳香族製造触媒を第2の傾斜パイプ30へ抜き出す抜出口と、燃料パイプ36を通って蒸留装置16から供給された塔底油(熱付け用燃料)を内部に導入する供給口と、エアブロアからエアパイプ38を通って供給された空気(酸素含有ガス)を内部に導入する供給口と、燃焼によって発生した燃焼ガスを排気パイプ40へ排気する排気口とを備える。
なお、熱付け槽については、複数段、例えば二段とすることができる。すなわち、熱付け槽を二段にし、熱付け槽内の個々の熱付け温度を段階的に高めることによって、芳香族製造触媒の劣化を抑えるような措置を講ずることができる。
【0016】
触媒ライザ26は、垂直方向に延びるパイプ状のものであり、第2の傾斜パイプ30を通って移送された芳香族製造触媒を内部に導入する供給口と、フィードパイプ32を通って供給された原料油を内部に導入する供給口とを備える。
【0017】
蒸留装置16(第1の分離手段)は、反応生成物を、BTXを多く含む塔頂留分と、C10+A(炭素数10以上の芳香族炭化水素)を含む塔底留分とに分離するものである。蒸留装置16としては、例えば、蒸留塔と、蒸留塔の塔頂から排出される塔頂留分を冷却するコンデンサとを備えるものが挙げられる。また、蒸留塔の塔底から排出される塔底留分の熱によって、フィードパイプ32を通って芳香族製造装置に供給される原料油を加熱する予熱器を別途設けてもよい。
【0018】
吸収分離装置18(第2の分離手段)は、塔頂留分を、循環液(吸収分離装置18にて得られるLPG留分を含む粗芳香族留分、デブタナイザ20にて得られる粗芳香族留分等)に接触させることによって、塔頂留分に含まれるLPG留分および粗芳香族留分を循環液に吸収させ、LPG留分を含む粗芳香族留分と、水素を含むオフガスとに分離するものである。吸収分離装置18としては、例えば、塔頂留分を循環液(LPG留分を含む粗芳香族留分)に接触させる第1の吸収塔と、第1の吸収塔の塔頂から排出されるガスを循環液(粗芳香族留分)に接触させる第2の吸収塔と、第1の吸収塔および第2の吸収塔の塔底から排出されるLPG留分を含む粗芳香族留分を一旦貯留する貯留タンクと、貯留タンクのLPG留分を含む粗芳香族留分を循環液として第1の吸収塔に返送する返送パイプと、貯留タンクから送り出されたLPG留分を含む粗芳香族留分から、これに吸収されていたガスを分離するストリッパとを備えるものが挙げられる。
【0019】
デブタナイザ20(第3の分離手段)は、LPG留分を含む粗芳香族留分を、ブタン等を含むLPG留分と、BTXを多く含む粗芳香族留分とに分離するものである。デブタナイザ20としては、例えば、蒸留塔と、蒸留塔の塔頂から排出されるLPG留分を冷却するコンデンサとを備えるものが挙げられる。また、蒸留塔の塔底から排出される粗芳香族留分の熱エネルギーを回収する廃熱ボイラを別途設けてもよい。
【0020】
PSA装置22(第4の分離手段)は、常温、常圧にて、水素を含むオフガスを、吸着剤(ゼオライト、活性炭、シリカゲル等)に接触させて、水素以外のオフガスを吸着剤に吸着させ、水素を高純度で回収した後、常温下で圧力を下げて吸着剤からオフガスをパージして吸着剤を再生させることによって、水素とオフガスとに分離するものである。PSA装置22としては、例えば、吸着剤が充填された吸着塔を並列に複数設置したものが挙げられる。PSAとは、Pressure Swing Absorptionの略称であり、圧力差吸着プロセスまたは無加熱吸着プロセスとも呼ばれる。
【0021】
第1の水素化処理装置24は、粗芳香族留分中のオレフィンおよび硫黄分を水素化処理し、芳香族留分を得るものである。水素化処理としては、オレフィンの水素化を抑制し、ジエン類および硫黄分を選択的に低減する選択的水素化処理が好ましい。選択的水素化処理装置としては、例えば、選択的水素化触媒(Co−Mo/Al触媒等)が充填された固定床反応塔を備えた装置もしくは白土処理装置等が挙げられる。
【0022】
第2の水素化処理装置25は、塔底留分を水素化処理することによって、脱硫等の処理がなされたC10+A留分を得るものである。水素化処理装置としては、例えば、水素化触媒(Co−Mo/Al触媒、Ni−Mo/Al触媒、Ni−Co−Mo/Al触媒等)が充填された固定床反応塔を備えた装置等が挙げられる。
なお、本発明は、流動床反応器12に供給される原料の水素化処理をも含むが、この場合の水素化処理には、前記第2の水素化処理装置に用いられる水素化触媒と同等なものが用いられる。
【0023】
<芳香族炭化水素の製造方法>
図1の製造プラント10を用いた芳香族炭化水素の製造は、例えば、以下のように行われる。
【0024】
(工程(a))
フィードパイプ32の途中に設けられた予熱器によってあらかじめ加熱された原料油を、フィードパイプ32から触媒ライザ26に連続的に導入する。これと同時に、熱付け槽14にて熱付けされた芳香族製造触媒を、第2の傾斜パイプ30から触媒ライザ26に連続的に導入し、触媒ライザ26を上昇する原料油の蒸気を移送媒体として、流動床反応器12へ移送する。
【0025】
触媒ライザ26から流動床反応器12に原料油の蒸気とともに連続的に導入された芳香族製造触媒は、原料油の蒸気によって流動床状態となる。流動床状態にて原料油の蒸気と芳香族製造触媒とが接触し、BTXを多く含む反応生成物の蒸気が得られる。反応生成物の蒸気と芳香族製造触媒とを、サイクロンによって分離し、反応生成物の蒸気を反応生成物パイプ34へ連続的に排出する。原料油の蒸気との接触によってコークが付着し、部分的に不活性化した芳香族製造触媒の一部を、流動床反応器12から第1の傾斜パイプ28へ連続的に抜き出す。
【0026】
燃料パイプ36を通って外部から供給された熱付け用燃料を、エアパイプ38を通ってエアブロアから供給された空気(酸素含有ガス)の存在下に燃焼させることによって、第1の傾斜パイプ28から熱付け槽14に連続的に導入された芳香族製造触媒に、流動床反応器12内の反応温度以上に連続的に熱付けする。また、熱付け時には、芳香族製造触媒に付着したコークも燃焼するため、芳香族製造触媒の再生も行われる。燃焼によって発生した燃焼ガスを、第1の排気パイプ40へ連続的に排気する。熱付けされた芳香族製造触媒を、熱付け槽14から第2の傾斜パイプ30へ連続的に抜き出し、第2の傾斜パイプ30から触媒ライザ26に再び導入する。このように、芳香族製造触媒は、流動床反応器12と熱付け槽14との間を絶えず循環している。
【0027】
原料油としては、FCC装置から得られるLCO、該LCOを水素化処理したものならびに原油蒸留装置からのナフサおよび直留軽油等からなる群から選ばれる1種以上を用いる。これら原料油を用いた場合、該原料油と芳香族製造触媒とが接触した際に芳香族製造触媒に付着するコーク量は流動床反応器に必要な熱量を当該コーク燃焼によって供給する量としては必ずしも十分ではない。よって、これら原料油から芳香族炭化水素を含む反応生成物を効率的に、かつ安定して製造するためには、熱付け槽を備えた芳香族製造装置が有効となる。
【0028】
芳香族製造触媒は、結晶性アルミノシリケートを含むものである。
芳香族製造触媒における結晶性アルミノシリケートの含有量は、特に限定されないが、芳香族製造触媒全体を100質量%とした場合、10〜95質量%が好ましく、20〜80質量%がより好ましく、25〜70質量%がさらに好ましい。結晶性アルミノシリケートの含有量が10質量%以上かつ95質量%以下であれば、充分に高い触媒活性が得られる。
【0029】
結晶性アルミノシリケートとしては、特に限定されないが、例えば、中孔径ゼオライトであるMFI、MEL、TON、MTT、MRE、FER、AEL、EUOタイプのゼオライトが好ましく、単環芳香族炭化水素の収率がより高くなることから、ペンタシル型ゼオライトがより好ましく、MFIタイプおよび/またはMELタイプの結晶構造体がより好ましい。MFIタイプ、MELタイプ等の結晶性アルミノシリケートは、The Structure Commission of the International Zeolite Associationにより公表された種類の公知ゼオライト構造型に属する(Atlas of Zeolite Structure Types,W.M.Meiyer and D.H.Olson (1978).Distributed by Polycrystal Book Service,Pittsburgh,PA,USA)。
【0030】
結晶性アルミノシリケートとしては、ガリウムおよび/または亜鉛とリンとを含むものが好ましい。ガリウムおよび/または亜鉛を含むことにより、より効率的にBTXを製造できると同時に、炭素数3〜6の非芳香族炭化水素の副生を大幅に抑制できる。また、リンを担持することにより触媒の水熱劣化を抑制することが可能となる。
ガリウムおよび/または亜鉛を含む結晶性アルミノシリケートとしては、結晶性アルミノシリケートの格子骨格内にガリウムおよび/または亜鉛が組み込まれたもの(結晶性アルミノガロシリケートおよび/または結晶性アルミノジンコシリケート)、結晶性アルミノシリケートにガリウムおよび/または亜鉛を担持したもの(ガリウム担持結晶性アルミノシリケートおよび/または亜鉛担持結晶性アルミノシリケート)、その両方を含んだものが挙げられる。
【0031】
ガリウム担持結晶性アルミノシリケートおよび/または亜鉛担持結晶性アルミノシリケートは、結晶性アルミノシリケートにガリウムおよび/または亜鉛をイオン交換法、含浸法等の公知の方法によって担持したものである。この際に用いるガリウム源および/または亜鉛源としては、特に限定されないが、硝酸ガリウム、塩化ガリウム等のガリウム塩、酸化ガリウム、硝酸亜鉛、塩化亜鉛等の亜鉛塩、酸化亜鉛等が挙げられる。
【0032】
結晶性アルミノガロシリケートおよび/または結晶性アルミノジンコシリケートは、SiO、AlOおよびGaO/ZnO構造が骨格中において四面体配位をとる構造のものである。結晶性アルミノガロシリケートおよび/または結晶性アルミノジンコシリケートは、水熱合成によるゲル結晶化、結晶性アルミノシリケートの格子骨格中にガリウムおよび/または亜鉛を挿入する方法、または結晶性ガロシリケートおよび/または結晶性ジンコシリケートの格子骨格中にアルミニウムを挿入する方法で得ることができる。
【0033】
芳香族製造触媒におけるガリウムおよび/または亜鉛の含有量は、触媒全量を100質量%とした場合、1.2質量%以下であり、0.8質量%以下であることがより好ましい。ガリウムおよび/または亜鉛の含有量が1.2質量%を超えると、単環芳香族炭化水素の収率が低くなる。
また、ガリウムおよび/または亜鉛の含有量は、触媒全量を100質量%とした場合、0.01質量%以上であることが好ましく、0.1質量%以上であることがより好ましい。ガリウムおよび/または亜鉛含有量が0.01質量%未満であると、単環芳香族炭化水素の収率が低くなることがある。
【0034】
芳香族製造触媒は、ガリウム、亜鉛をおのおの単独で含有する触媒であっても、両方含有する触媒であっても構わない。また、ガリウムおよび/または亜鉛に加え、さらにその他の金属を含有しても構わない。
【0035】
芳香族製造触媒にリンを含有させる方法としては、特に限定されないが、例えばイオン交換法、含浸法等により、結晶性アルミノシリケートまたは結晶性アルミノガロシリケート、結晶性アルミノジンコシリケートにリンを担持する方法、ゼオライト合成時にリン化合物を含有させて結晶性アルミノシリケートの骨格内の一部をリンと置き換える方法、ゼオライト合成時にリンを含有した結晶促進剤を用いる方法、等が挙げられる。その際に用いるリン酸イオン含有水溶液は、特に限定されないが、リン酸、リン酸水素二アンモニウム、リン酸二水素アンモニウムおよびその他の水溶性リン酸塩等を任意の濃度で水に溶解させて調製したものを好ましく用いることができる。
【0036】
また、リンの含有量は、触媒全量を100質量%とした場合、0.1〜10.0質量%である。さらには、下限は0.2質量%以上が好ましく、上限は5.0質量%であることが好ましい。結晶性アルミノシリケートに担持されたリンの含有量が0.1質量%以上であることで、経時的な単環芳香族炭化水素の収率低下を防止でき、10.0質量%以下であることで、単環芳香族炭化水素の収率を高くできる。
【0037】
芳香族製造触媒は、上記のようにリンを担持した結晶性アルミノガロシリケート、または、ガリウムおよびリンを担持した結晶性アルミノシリケートを焼成することにより得られる。焼成温度は、300〜900℃が好ましい。
【0038】
熱付け用燃料としては、芳香族製造触媒に付着したコーク以外の燃料であって、外部から供給された燃料(いわゆるトーチオイル)、例えば、蒸留装置16からの塔底油等が挙げられ、特に芳香族製造触媒の水蒸気による劣化の問題を回避するという点から、水素原子に対する炭素原子の比率(C/H)が比較的大きい塔底油が好ましい。
酸素含有ガスとしては、空気、純酸素等が挙げられ、経済的な点から、空気が好ましい。
【0039】
予熱器による原料油の加熱温度は、流動床反応器12内での芳香族製造反応に必要な熱は熱付けされた芳香族製造触媒によって供給される点から、流動床反応器12内の反応温度未満であればよく、150〜350℃が好ましい。
【0040】
流動床反応器12内の圧力は、目標とする反応収率にもよるが、0.1MPaG〜1.5MPaGが好ましく、0.2MPaG〜1.0MPaGがより好ましい。圧力が0.1MPaG以上であれば、BTXを効率的に製造できる。圧力が1.5MPaG以下であれば、分解によって副生する軽質ガスの量を抑制できる。
【0041】
流動床反応器12内の反応温度は、下限としては350℃が好ましく、450℃がより好ましく、500℃がさらに好ましい。一方上限としては700℃が好ましく、600℃がより好ましい。反応温度が350℃以上であれば、芳香族製造触媒の活性が十分となる。反応温度が700℃以下であれば、過度の分解反応が抑制される。
【0042】
流動床反応器12内における原料油と芳香族製造触媒との接触時間は、下限としては5秒が好ましく、10秒がより好ましく、15秒がさらに好ましい。一方上限としては300秒が好ましく、150秒がより好ましく、100秒がさらに好ましい。接触時間が5秒以上であれば、芳香族製造反応が十分に進行する。接触時間が300秒以下であれば、分解によって副生する軽質ガスの量を抑制できる。
【0043】
流動床反応器12内から抜き出される芳香族製造触媒の量(循環量)は、流動床反応器12に供給される原料油1トンあたり5〜30トンが好ましく、これは全体の熱バランスとも関連し決められるものである。
【0044】
熱付け槽14内の圧力は、熱付けされた芳香族製造触媒を流動床反応器12へ移送する点から、流動床反応器12内の圧力よりも高いことが好ましい。
二段による熱付けの場合、第1の熱付け槽の圧力は、第1の熱付け槽が、第2の熱付け槽より低い位置に置かれる場合、熱付けされた芳香族製造触媒を第2の熱付け槽へ移送する必要上、第2の熱付け槽の圧力よりも高くする。第1の熱付け槽14内の圧力は、第2の熱付け槽の圧力より0.1MPa程度高いことが好ましく、0.2MPa以上であることがより好ましく、0.9MPa以上であることがさらに好ましい。
次に、第2の熱付け槽の圧力は、下限としては0.1MPaGが好ましく、0.2MPaGがより好ましく、0.3MPaGがさらに好ましい。一方上限としては0.8MPaGが好ましく、0.7MPaGがより好ましく、0.6MPaGがさらに好ましい。
【0045】
熱付け槽14内の温度は、流動床反応器12内での芳香族製造反応に必要な熱は熱付けされた芳香族製造触媒によって供給される点から、流動床反応器12内の反応温度以上であり、500〜800℃が好ましく、600〜700℃がより好ましい。
二段による熱付けの場合、第1の熱付け槽の温度は、流動床反応器12内での芳香族製造反応に必要な熱は熱付けされた芳香族製造触媒によって供給される必要上、流動床反応器12内の反応温度以上にするのが好ましい。また、第1の熱付け槽内の温度は、熱付け用燃料の燃焼によって発生する高温の水蒸気による芳香族製造触媒の水熱劣化を抑えるため、第2の熱付け槽内の温度より低くする。具体的には、650℃以下が好ましく、630℃以下がより好ましい。
次に、第2の熱付け槽内の温度は、流動床反応器12での芳香族製造反応に必要な熱は熱付けされた芳香族製造触媒によって供給されるため、下限としては流動床反応器12内の反応温度が好ましく、500℃がより好ましく、600℃がさらに好ましい。一方上限としては800℃が好ましく、700℃がより好ましい。
【0046】
熱付け槽14への熱付け用燃料(塔底油の場合)の供給量は、流動床反応器12に供給される原料油1トンあたり0.005〜0.08トンが好ましく、これはコーク生成量と全体の熱バランスから決まる。
なお、二段による熱付けの場合、熱付け用燃料は、原則、第1の熱付け槽に全量供給するのが好ましい。
【0047】
(工程(b))
流動床反応器12から排出された反応生成物を、反応生成物パイプ34を通して蒸留装置16へ移送する。蒸留装置16に導入された反応生成物を、蒸留装置16内の蒸留塔にて蒸留することによって、BTXを多く含む塔頂留分と、C10+Aを含む塔底留分とに分離する。
【0048】
(工程(c))
蒸留装置16の蒸留塔の塔頂から排出され、コンデンサによって冷却された塔頂留分を、塔頂油パイプ42を通して吸収分離装置18に移送する。吸収分離装置18に導入された塔頂留分を、吸収分離装置18の吸収塔内にて循環液(LPG留分を含む粗芳香族留分または粗芳香族留分)に接触させることによって、塔頂留分に含まれるLPG留分および粗芳香族留分を循環液に吸収させ、LPG留分を含む粗芳香族留分と、水素を含むオフガスとに分離する。分離されたLPG留分を含む粗芳香族留分の一部は、循環液として吸収塔に返送される。
【0049】
(工程(d))
吸収分離装置18から排出されたLPG留分を含む粗芳香族留分を、LPG留分含有粗芳香族留分パイプ44を通してデブタナイザ20に移送する。デブタナイザ20に導入されたLPG留分を含む粗芳香族留分を、デブタナイザ20内の蒸留塔にて蒸留することによって、ブタン等を含むLPG留分と、BTXを多く含む粗芳香族留分とに分離する。蒸留塔の塔頂から排出され、コンデンサによって冷却されたLPG留分を、LPG留分パイプ46を通して製造プラント10外に移送する。蒸留塔の塔底から排出される粗芳香族留分の一部は、必要に応じて、吸収分離装置18にて用いる循環液として、吸収分離装置18の吸収塔に返送される。
【0050】
(工程(e))
吸収分離装置18から排出された水素を含むオフガスを、水素含有オフガスパイプ48を通してPSA装置22に移送する。PSA装置22に導入された水素を含むオフガスを、PSA装置22の吸着塔内の吸着剤に接触させて、水素以外のオフガスを吸着剤に吸着させ、水素を高純度で回収した後、常温下で圧力を下げて吸着剤からオフガスをパージして吸着剤を再生させることによって、水素とオフガスとに分離する。PSA装置22から排出されたオフガスを、オフガスパイプ50を通して製造プラント10外に移送する。
【0051】
(工程(f))
デブタナイザ20の蒸留塔の塔底から排出された粗芳香族留分を、粗芳香族留分パイプ52を通して第1の水素化処理装置24に移送する。また、PSA装置22から排出され、水素パイプ54を通して製造プラント10外に移送される水素の一部を、第1の水素供給パイプ56を通して第1の水素化処理装置24に移送する。第1の水素化処理装置24に導入された粗芳香族留分を、水素の存在下にて、第1の水素化処理装置24の固定床反応塔内の選択的水素化触媒に接触させ、粗芳香族留分を選択的水素化処理してオレフィン類および硫黄分を除去し、処理された芳香族留分を得る。第1の水素化処理装置24から排出された芳香族留分を、芳香族留分パイプ58を通して製造プラント10外に移送する。
【0052】
第1の水素化処理装置24における水素化処理としては、公知の、水素化触媒を用いた改質ガソリン等の水素化処理方法による処理が好ましい。公知の処理方法としては、特開2001−279263号、特開2009−62517号等の公報に記載された方法が挙げられる。
水素化処理は、具体的には、水素の存在下、温度:約200〜350℃、圧力:1MPa〜4MPa、液空間速度:約1〜20hr−1の条件下で、水素/炭化水素比が50〜600リットル−水素/1リットル−炭化水素となるように、水素化触媒に粗芳香族留分を接触させて行う。
水素化触媒としては、少なくとも一部硫化物形態で、第VIII族の少なくとも一つの元素および/または第VIB族の少なくとも一つの元素を含むものが挙げられる。
【0053】
また、水素化処理は、特開2009−62517号等に記載されるように、第1の水素化処理領域および第2の水素化処理領域を含む多段階プロセスで行うことが好ましい。すなわち、第1の水素化処理領域では、硫黄分の大部分を硫化水素へと転化させる。一方、第2の水素化処理領域では、オレフィン類の除去および脱硫とともに、メルカプタンの生成とオレフィンの残存を極力抑制する。
第1の水素化処理領域の条件は、硫黄分の大部分を除去し、かつオレフィンの飽和を最小に抑えるために、温度:260〜315℃、圧力:0.7MPa〜3.5MPa、液空間速度:0.5〜10hr−1とする。
第2の水素化処理領域の条件は、メルカプタンの生成を抑えるために、第1の水素化処理領域より高い温度、すなわち温度:315〜398℃の条件とし、さらにオレフィンの飽和を最小に抑えるために、圧力:0.7MPa〜20.0MPa、液空間速度:0.5〜15hr−1とする。
【0054】
第1の水素化処理領域にて用いる水素化触媒としては、公知の水素化触媒が挙げられ、例えば、アルミナ等の高表面積担体上に、第VIII族金属(好ましくは鉄、コバルト、ニッケル等)および第VI族金属(好ましくはモリブデン、タングステン)からなる触媒が挙げられる。通常、触媒中には、第VIII族金属は0.5〜20質量%、第VI族金属は1〜25質量%の割合で存在する。他の適当な水素化触媒としては、ゼオライト触媒、または貴金属がパラジウムおよび白金から選択される貴金属触媒が挙げられる。
第2の水素化処理領域にて用いる水素化触媒としては、例えば、内部コアと活性脱硫金属を含む外層とを有する層状または卵殻構造を有する触媒が挙げられる。内部コアの材質としては、耐火性の無機酸化物としてのアルファアルミナ、シータアルミナ、炭化珪素、ジルコニア、チタニア等が挙げられる。活性脱硫金属を除く外層の材質は、内部コアと同様の耐火性の無機酸化物であってもよく、非耐火性の無機酸化物であってもよい。
【0055】
(工程(g))
蒸留装置16の蒸留塔の塔底から排出された塔底留分を、塔底油パイプ60を通して第2の水素化処理装置25に移送する。また、PSA装置22から排出され、水素パイプ54を通して製造プラント10外に移送される水素の一部を、第1の水素供給パイプ56および第2の水素供給パイプ64を通して第2の水素化処理装置25に移送する。第2の水素化処理装置25に導入された塔底留分を、水素の存在下にて、第2の水素化処理装置25の固定床反応塔内の水素化触媒に接触させ、塔底留分を水素化処理し、水素化処理されたC10+A留分を得る。第2の水素化処理装置25から排出されたC10+A留分を、C10+A留分パイプ62を通して製造プラント10外に移送する。なお、当該パイプ62の一部を芳香族製造装置12に循環することも可能である。
【0056】
第2の水素化処理装置25における水素化処理としては、公知の水素化触媒を用いた、灯油留分または軽油留分の水素化処理方法による処理が挙げられる。公知の水素化触媒およびこれを用いた水素化処理方法としては、特開2003−105349号公報、特開2005−247959号公報、特開2007−100013号公報、特開2007−222751号公報、特開2007−284565号公報等に記載された触媒および方法が挙げられる。
なお、本発明は、流動床反応器12に送られる原料油の水素化処理をも含むものであるが、この場合の水素化処理の触媒および処理の条件は、前記第2の水素化処理の触媒および処理条件を適宜選択すればよい。
【0057】
以上説明した本発明の芳香族炭化水素の製造方法および製造プラントにあっては、流動接触分解装置から得られる分解軽油、該分解軽油を水素化処理したものならびに原油蒸留装置から得られるナフサおよび直留軽油からなる群から選ばれる1種以上の原料油を、芳香族製造触媒と接触させて芳香族炭化水素を含む反応生成物を得ているため、反応生成物には、芳香族製造反応、すなわち脱水素反応に伴う副生水素が多く含まれている。そして、反応生成物からの副生水素を、各分離工程(分離手段)を経て効率的に回収し、これを、同じく反応生成物から各分離工程(分離手段)を経て回収された粗芳香族留分の水素化処理に有効に利用しているため、水素化処理のための水素製造プラントを別途設ける必要がなく、芳香族炭化水素を低コストで製造できる。
【0058】
ちなみに、原料油の製造装置の1つであるFCC装置においては、水素はあまり副生しないため、水素が回収されることはなく、装置内で発生した水素を用いて原料油を水素化処理することも当然ない。よって、FCC装置において、あらかじめLCO等の原料油を水素化処理するためには、水素化処理のための水素製造プラントを別途設ける必要がある。
【実施例】
【0059】
以下、実施例を示す。
〔実施例1〕
図1に示す構成の芳香族炭化水素の製造プラント10を用い、下記の運転条件にて芳香族製造装置にてBTXの製造を行い、このデータをもとに後段の各分離工程を経て回収される粗芳香族留分および水素の量等を計算で求めた。
【0060】
(運転条件)
予熱器による原料油の加熱温度:200℃、
触媒ライザ26への原料油(蒸気)の供給量:1トン/hr、
流動床反応器12内の圧力:0.3MPaG、
流動床反応器12内の反応温度:560℃、
流動床反応器12内における原料油と芳香族製造触媒と接触時間:18秒、
熱付け槽14内の圧力:0.3MPaG、
熱付け槽14内の温度:650℃、
熱付け槽14への熱付け用燃料の供給量:0.015トン/原料油1トン、
熱付け槽14への空気の供給量:17.2トン/原料油1トン。
【0061】
なお、原料油としては、未水素化処理のLCOを用いた。
熱付け用燃料(トーチオイル)としては、蒸留装置16で得られた塔底油を用いた。
芳香族製造触媒としては、格子骨格内にガリウムが組み込まれたMFIタイプのゼオライト(粒子寸法:約0.3μm)を含む芳香族製造触媒を用いた。
【0062】
運転中、熱付け槽14で熱付けされた芳香族製造触媒によって効率よく熱を流動床反応器12に供給でき、流動床反応器12内の温度が大きく変動することはなく、安定して反応生成物を得ることができた。後段の各分離工程を経て回収される粗芳香族留分の量は、0.35トン/hrであり、水素の量は、206Nm/hrであり、粗芳香族留分の水素化処理および塔底油の水素化処理に必要十分な水素を回収できることが確認された。
【産業上の利用可能性】
【0063】
本発明は、FCC装置から得られるLCOおよび原油蒸留装置から得られるナフサ等を原料にした芳香族炭化水素の製造に有用である。
【符号の説明】
【0064】
10 製造プラント
12 流動床反応器(芳香族製造装置)
14 熱付け槽(芳香族製造装置)
16 蒸留装置(第1の分離手段)
18 吸収分離装置(第2の分離手段)
20 デブタナイザ(第3の分離手段)
22 PSA装置(第4の分離手段)
24 第1の水素化処理装置
25 第2の水素化処理装置
26 触媒ライザ
56 第1の水素供給パイプ(第1の水素供給手段)
64 第2の水素供給パイプ(第2の水素供給手段)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)流動接触分解装置から得られる分解軽油、該分解軽油を水素化処理したものならびに原油蒸留装置から得られるナフサおよび直留軽油からなる群から選ばれる1種以上の原料油を、芳香族製造触媒と接触させて芳香族炭化水素を含む反応生成物を得る工程と、
(b)前記反応生成物を、蒸留塔によって塔頂留分と塔底留分とに分離する工程と、
(c)前記塔頂留分を、LPG留分を含む粗芳香族留分と、水素を含むオフガスとに分離する工程と、
(d)前記LPG留分を含む粗芳香族留分を、LPG留分と粗芳香族留分とに分離する工程と、
(e)前記水素を含むオフガスを、水素とオフガスとに分離する工程と、
(f)前記工程(e)にて得られた水素を用いて、前記粗芳香族留分を水素化処理し、芳香族留分を得る工程と
を有する、芳香族炭化水素の製造方法。
【請求項2】
前記工程(a)においては、前記原料油を、流動床反応器内にて流動床状態にある芳香族製造触媒と接触させて芳香族炭化水素を含む反応生成物を得ると同時に、外部から供給された熱付け用燃料を酸素含有ガスの存在下に燃焼させることによって、前記流動床反応器内から抜き出された前記芳香族製造触媒に熱付けを行う、請求項1に記載の芳香族炭化水素の製造方法。
【請求項3】
(g)前記工程(e)にて得られた水素を用いて、前記塔底留分を水素化処理する工程をさらに有する、請求項1または2に記載の芳香族炭化水素の製造方法。
【請求項4】
流動接触分解装置から得られる分解軽油、該分解軽油を水素化処理したものならびに原油蒸留装置から得られるナフサおよび直留軽油からなる群から選ばれる1種以上の原料油を、芳香族製造触媒と接触させて芳香族炭化水素を含む反応生成物を得る芳香族製造装置と、
前記反応生成物を、蒸留塔によって塔頂留分と塔底留分とに分離する第1の分離手段と、
前記塔頂留分を、LPG留分を含む粗芳香族留分と、水素を含むオフガスとに分離する第2の分離手段と、
前記LPG留分を含む粗芳香族留分を、LPG留分と粗芳香族留分とに分離する第3の分離手段と、
前記水素を含むオフガスを、水素とオフガスとに分離する第4の分離手段と、
前記粗芳香族留分を水素化処理し、芳香族留分を得る第1の水素化処理装置と、
前記第4の分離手段にて得られた水素を、前記第1の水素化処理装置に供給する第1の水素供給手段と
を有する、芳香族炭化水素の製造プラント。
【請求項5】
前記芳香族製造装置が、
前記原料油を、流動床状態にある芳香族製造触媒と接触させて芳香族炭化水素を含む反応生成物を得る流動床反応器と、
外部から供給された熱付け用燃料を酸素含有ガスの存在下に燃焼させることによって、前記流動床反応器内から抜き出された前記芳香族製造触媒に熱付けを行う熱付け槽と
を有する、請求項4に記載の芳香族炭化水素の製造プラント。
【請求項6】
前記塔底留分を水素化処理する第2の水素化処理装置と、
前記第4の分離手段にて得られた水素を、前記第2の水素化処理装置に供給する第2の水素供給手段と
をさらに有する、請求項4または5に記載の芳香族炭化水素の製造プラント。

【図1】
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【公開番号】特開2011−202083(P2011−202083A)
【公開日】平成23年10月13日(2011.10.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−72373(P2010−72373)
【出願日】平成22年3月26日(2010.3.26)
【出願人】(000003285)千代田化工建設株式会社 (162)
【出願人】(000004444)JX日鉱日石エネルギー株式会社 (1,898)
【Fターム(参考)】