説明

苗巻取補助装置

【課題】 苗巻取補助装置において、倒伏手段によりマット苗の葉部を倒伏させることで径の小さいロール苗を作ることができるが、倒伏したマット苗の葉部は直立状態へ復元しようとするため、葉部を倒伏させた状態のままでロール状に巻き取るには、葉部を倒伏させた直後に苗をロール状に巻き取る必要があった。
【解決手段】 マット苗3上を走行させるための走行手段5と、マット苗3をロール状に巻き取ってできるロール苗を案内するロール苗案内手段と、該ロール苗案内手段の前側で巻き取る前のマット苗の葉部に作用して該葉部を倒伏させる倒伏手段13とを備える苗巻取補助装置において、前記ロール苗案内手段は、ロール苗の側面を案内するロール苗案内側板29と、ロール苗の前面を案内するロール苗案内前板19とを備え、該ロール苗案内前板19は、前記倒伏手段13の斜め後上側に位置し、後下がりに傾斜した傾斜面を備える構成とした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、マット苗をロール状に巻き取る際に使用できる苗巻取補助装置の技術分野に属する。
【背景技術】
【0002】
長いマット苗をロール状に巻き取ってできるロール苗をロール苗供給部へ装填し、該ロール苗供給部に装填されたロール苗の外周側から順次マット苗を繰り出して該マット苗を植付装置側へ移送し、植付装置がマット苗から一株分の苗を取って圃場に植え付ける構成の苗移植機がある。この苗移植機により、前記ロール苗供給部へ長いマット苗からなるロール苗を装填することができるので、多量の苗を一度に装填することができるため、苗補給回数を低減でき、ひいては苗補給作業の省力化が図れると共に、植付作業能率の向上が図れる。この苗移植機においては、植付装置側へ移送されるマット苗の葉部を植付装置とは反対側に向けて植付装置が葉部を傷付けずに一株分の苗を良好に取り出せるようにする必要がある。そのため、マット苗上を走行させるための走行手段と、マット苗をロール状に巻き取ってできるロール苗を案内するロール苗案内手段と、該ロール苗案内手段の前側で巻き取る前のマット苗の葉部に作用して該葉部を巻取側に倒伏させるベルトで構成される倒伏手段とを備える苗巻取補助装置において、前記ロール苗案内手段はロール苗の側面を案内するロール苗案内側板を備える苗巻取補助装置がある(特許文献1参照。)。
【特許文献1】特開2004−97124号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
上記苗巻取補助装置において、倒伏手段によりマット苗の葉部を倒伏させることで径の小さいロール苗を作ることができるが、倒伏したマット苗の葉部は直立状態へ復元しようとするため、葉部を倒伏させた状態のままでロール状に巻き取るには、葉部を倒伏させた直後に苗をロール状に巻き取る必要があった。
【課題を解決するための手段】
【0004】
この発明は、上記課題を解決すべく次のような技術的手段を講じた。
すなわち、請求項1の発明は、マット苗(3)をロール状に巻き取る際にその巻き取りに合わせてマット苗(3)上を走行させるための走行手段(5)と、マット苗(3)をロール状に巻き取ってできるロール苗を案内するロール苗案内手段と、該ロール苗案内手段の前側で巻き取る前のマット苗の葉部に作用して該葉部を倒伏させる倒伏手段(13)とを備える苗巻取補助装置において、前記ロール苗案内手段は、ロール苗の側面を案内するロール苗案内側板(29)と、ロール苗の前面を案内するロール苗案内前板(19)とを備え、該ロール苗案内前板(19)は、前記倒伏手段(13)の斜め後上側に位置し、後下がりに傾斜した傾斜面を備える構成とした苗巻取補助装置とした。
【0005】
従って、この苗巻取補助装置は、走行手段によりマット苗上を走行しながら、倒伏手段によりマット苗の葉部を倒伏させ、ロール苗案内側板とロール苗案内前板とにより葉部が倒伏した苗を倒伏手段の後側で適正に巻き取られるよう案内しながら巻き取ることができる。ロール苗案内前板は倒伏手段の斜め後上側に位置し後下がりに傾斜した傾斜面を備える構成としているので、ロール苗案内前板をできるだけ倒伏手段に近づけることができ、ひいては倒伏手段による葉部を倒伏作用させる位置にロール苗の下端部を近づけることができ、葉部を倒伏させた直後に苗を巻き取ることができる。
【発明の効果】
【0006】
よって、適確に葉部を倒伏させた直後に苗を巻き取ることができ、径の小さい適正なロール苗を作ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
この発明の実施の一形態を以下に説明する。
苗巻取補助装置1は、一定幅(約30cm)で縦方向に長い形態の育苗トレイ2内で育苗された長さ約6mの長いマット苗3上を移動させながら、このマット苗3の葉を巻取側となる後側へ倒伏させるものであり、苗巻取補助装置1の後側で育苗トレイ2上のマット苗3をパイプ状の巻取軸4の外周に巻き付けて巻き取るようになっている。巻取軸4を人手で育苗トレイ2に沿って回動させながら、該巻取軸4にマット苗3を巻き付ける。苗巻取補助装置1の前後には走行手段となる各々左右一対の走行車輪5を設け、原動機となる駆動モータ6からの動力が左右の走行伝動用チエーン7を介して左右各々の前後の走行車輪5に伝達され、計4輪の走行車輪5の駆動により育苗トレイ2の左右両側部の壁部2aをレールとして走行車輪5が案内されながら苗巻取補助装置1が走行する。前記駆動モータ6及び該駆動モータ6の電源となるバッテリー8は、苗巻取補助装置1の上部に配置されている。また、苗巻取補助装置1の上部の前後には、該苗巻取補助装置1を持ち運びするための把持部9を設けている。苗巻取補助装置1の上部上面側には速度調節操作具10を設けており、この速度調節操作具10の操作で駆動モータ6の駆動速度を変更して走行速度を調節できる構成となっている。尚、前記速度調節操作具10は、駆動モータ6の駆動を入切する電源スイッチを兼ねている。
【0008】
苗巻取補助装置1の後部には、左右方向の回動軸11周りに上下回動可能のアーム12を左右各々設けている。尚、前記回動軸11は、斜め後下がりに延びる前記アーム12の略中央位置に配置されている。左右のアーム12の間には、平ベルトで構成される苗倒伏用ベルト13を巻掛けるための移動ローラ14を前記アーム12の下側の先端部に軸装している。前記苗倒伏用ベルト13は、苗巻取補助装置1の本体カバー15の所定位置に軸支される前側の固定ローラ16と後側の前記移動ローラ14との間に斜め後下がり姿勢で巻掛けられ、駆動モータ6からの動力が右側に配置した苗倒伏伝動用チエーン17を介して前記固定ローラ16へ伝達されて駆動する。従って、この苗倒伏用ベルト13が、巻き取る直前のマット苗の葉部に作用して該葉部を巻取側に倒伏させる倒伏手段となる。移動ローラ14の上方には左右のアーム12を連結する連結ロッド18を設けている。アーム12の上側の先端部には左右のアーム12を連結する連結軸20を設け、該連結軸20を苗巻取補助装置1の本体カバー15に形成した左右の円弧状の長穴21に嵌合させている。この連結軸20の中間部に挿通される調節ロッド22を設け、該調節ロッド22の肩部で連結軸20の後側への移動が規制されて左右のアーム12の下部が前側下方へ回動するのを規制している。尚、苗倒伏用ベルト13がマット苗から受ける抵抗により、調節ロッド22に沿って連結軸20が前側へ移動して左右のアーム12の下部が上側へ回動し得る構成となっており、苗倒伏用ベルト13に過大な負荷がかかるような状態でマット苗を損傷してしまうようなことを防止している。また、前記調節ロッド22の中途部を苗巻取補助装置1の後部に設けたブラケット23に螺合させており、この調節ロッド22と一体回転するハンドル24を回動操作することによって、調節ロッド23が前後に移動し左右のアーム12を上下に回動調節して苗倒伏用ベルト13の下端の位置を調節することができる。従って、前記調節ロッド22及びハンドル24は、苗倒伏用ベルト13がマット苗の葉部に作用する上下位置を変更する位置変更手段となる。苗倒伏用ベルト13は、下面側が斜め後下側へ移行し、移動ローラ14で上側へ転じて移行するように回転駆動する。また、この苗倒伏用ベルト13の周回速度は苗巻取補助装置1の走行速度よりも速くなるように設定されている。この苗倒伏用ベルト13の駆動により、マット苗の苗床に対して葉部yが後側へ傾斜するように押し倒された状態になり、この状態で巻取軸4にマット苗を巻きつけるようになっている。苗倒伏用ベルト13の内周面で左右両側端部には突条を一体形成し、固定ローラ16と移動ローラ14との左右両側端部には前記突条を嵌合させる溝25を形成する。また、固定ローラ16における溝25の左右両側部には歯車状の凹凸条面からなる歯車面26を形成して、苗倒伏用ベルト13をスリップなく駆動回転させる構成となっている。
【0009】
苗巻取補助装置1の本体カバー15の下部は透明に構成され、走行車輪5を側方から視認できるようにして、育苗トレイ2の壁部2a上へ走行車輪5をセットし易くしている。また、本体カバー15の前端の左右両端部には、マット苗の左右外端部の葉部yを左右方向内側へ収束させて案内する収束案内板27を備えている。本体カバー15の前側下端部には外力で変形可能な弾性体からなる苗寄せ案内杆28を左右各々取り付けており、この苗寄せ案内杆28は、後側へいくほど左右方向内側で且つ下側に位置するよう傾斜した構成となっており、後端を苗倒伏用ベルト13の下面に接近させている。苗巻取補助装置1の前進走行により、左右の収束案内板27で左右内側へ案内されたマット苗の左右外端部の葉部yを更に苗寄せ案内杆28の変形作用によって損傷しないように左右内側へ押し寄せ、葉部yが左右外側へはみ出ないようにして苗倒伏用ベルト13の作用位置へ案内する。また、図5に示すように、本体カバー15の左右の下端縁15aは、左右方向内側に屈曲しており、マット苗の左右外端部の葉部yが左右外側の育苗トレイ2の壁部2a上に位置しないように案内し、葉部yが前記壁部2aと走行車輪5との間に挟まれるようなことを防止している。また、苗倒伏用ベルト13の左右両側部の表面には該ベルト13の下面側で左右方向外側が後側に位置するように該ベルト13の周回方向に対して斜めの突条13aを設けており、該突条13aにより苗倒伏用ベルト13の駆動でマット苗の左右外端部の葉部yが左右方向内側へ向くように修正される。従って、前記収束案内板27、苗寄せ案内杆28、本体カバー15の下端縁15a及び突条13a等が、巻き取る前のマット苗の巻取方向と交差する方向における外端部の葉部を内側に案内する案内手段となる。
【0010】
本体カバー15から後側に左右のロール苗案内側板29を突出させて設け、この左右のロール苗案内側板29の間に形成されるロール苗が位置するようにし、巻取軸4及びロール苗を案内する。ロール苗案内側板29の上端縁部29a及び下端縁部29bは、左右方向外側に屈曲して設けられている。これにより、左右のロール苗案内側板29の間でロール苗を回転させながら巻取作業を行う際、ロール苗の左右端部がロール苗案内側板29の上端縁部29a及び下端縁部29bにひっかからないようにでき、ロール苗をスムーズに回転させることができる。また、ロール苗案内側板29の左右方向内側面には左右方向内側に突出するロール苗位置指標30を設けており、ロール苗の外径の変化に拘らずロール苗の前端外周面が前記ロール苗位置指標30の位置となるように巻取作業を行うことにより、苗倒伏用ベルト13とロール苗の前端との位置関係を一定に保って苗倒伏用ベルト13で葉部が倒伏した直後の苗を巻き取ることができる。従って、苗倒伏用ベルト13で葉部を倒伏させた後マット苗を巻き取るまでの間に葉部が復元してマット苗を良好に巻き取れなくなるようなことを防止できる。尚、ロール苗位置指標30は、上下鉛直方向に長く構成され、ロール苗の外径の変化に伴うロール苗の上下位置に拘らずロール苗の前端を合わせやすく構成している。尚、ロール苗位置指標30を突条物で構成したが、穴や単なる印等、指標となるものであればよい。
【0011】
また、左右のアーム12を連結する連結ロッド18の後側に、ロール苗の前面に接触してロール苗を案内するロール苗案内前板19を取り付けて設けている。該ロール苗案内前板19は、苗倒伏用ベルト13の斜め後上側に位置し、苗倒伏用ベルト13と同じ傾斜方向となる後下がりに傾斜した傾斜面を備えている。尚、ロール苗案内前板19の下端は、前記傾斜面に対して下側へ屈曲した構成となっている。ロール苗案内前板19は、苗倒伏用ベルト13の後端より前側に配置されているが、側面視で前記傾斜面の延長線が苗倒伏用ベルト13より上側且つ後側に位置するよう構成されている。従って、仮に後側で形成されるロール苗が苗巻取補助装置1側(前側)に近づき過ぎても、ロール苗の外周面が前記ロール苗案内前板19に接触してロール苗が苗倒伏用ベルト13やその周辺の構造物に干渉して巻き込まれないようにしている。また、ロール苗案内前板19の傾斜面の延長線が苗倒伏用ベルト13の下端の位置を調節するためのハンドル24より後側に位置しているので、ロール苗の外周面が前記ハンドル24に接触してロール苗がハンドル24に干渉しないようにしている。尚、ロール苗案内前板19は前記ハンドル24の操作により左右のアーム12と一体で回動するため、左右のアーム12の回動位置に拘らず、ロール苗案内前板19の傾斜面の延長線がハンドル24より後側に位置する構成としている。
【0012】
よって、この苗巻取補助装置1によると、ハンドル24の操作により苗倒伏用ベルト13の下端位置を変えることによりマット苗の葉部の倒伏作用状態を所望に変更して調節できるので、苗の葉の強度が小さい場合は、苗倒伏用ベルト13の下端位置を上昇させることにより倒伏作用位置を上昇させ、葉が折れたりして損傷するようなことを防止できる。逆に、苗の葉の強度が大きく葉が倒伏しにくい場合は、苗倒伏用ベルト13の下端位置を下降させることにより倒伏作用位置を下降させ、十分な倒伏作用を得ることができる。従って、苗の条件に応じて倒伏作用位置を変更することにより、苗を傷めずに且つ所望の外径で適正にロール苗を形成することができ、ひいては苗移植機による苗の植付を適正に行える。また、苗寄せ案内杆28等の案内手段によりマット苗の外端部の葉部が内側に案内されるので、苗倒伏用ベルト13の倒伏作用でマット苗の葉部が外側に大きくはみ出るようなことを防止でき、葉部を外側にはみ出さないようにして適正にロール苗を形成することができる。
【0013】
苗巻取補助装置1の前部には本体カバー15から斜め前下側に延びる左右の苗押さえ用アーム32を上下に回動可能に設け、左右の苗押さえ用アーム32の間で該アーム32の回動先端部に苗押さえローラ33を設けている。この苗押さえローラ33は、重量のある鉄製であり、駆動モータ6からの動力が苗押さえ伝動用チエーン34を介して伝動されて走行速度と略同じ周速で駆動する。従って、マット苗の葉の強度があり該葉が硬く倒伏し難い場合に、ハンドル24を操作して苗倒伏用ベルト13をマット苗の葉部に作用しない高さまで上動させ、育苗トレイ2においてマット苗の巻取作業時とは逆方向から走行させることにより、苗押さえローラ33でマット苗の葉部を予め一方側に倒伏させるべく押さえることができる。その後、苗押さえ用アーム32を上側に回動させて苗押さえローラ33をマット苗の葉部に作用しない高さまで上動させ、ハンドル24を操作して苗倒伏用ベルト13をマット苗の葉部に作用させるべく所望の高さに下動させ、苗巻取補助装置1の走行により苗倒伏用ベルト13により苗の葉を確実に巻取側へ倒伏させながらマット苗を巻き取ることができる。尚、駆動モータ6を逆転させて苗巻取補助装置1を後進走行できる構成とし、この後進で苗押さえローラ33によりマット苗の葉部を一方側に倒伏させる構成としてもよい。また、苗押さえローラ33及び苗押さえ用アーム32等を着脱可能に設け、予め苗の葉を倒伏させる必要のない場合には苗押さえローラ33を取り外せる構成としてもよい。
【0014】
尚、上述はロール苗案内前板19を回動可能なアーム12から支持する構成について説明したが、ロール苗案内前板19を機体側に移動しないように固定して支持することもできる。また、ロール苗案内前板19の一部(例えば下端部)を傾斜面に対して後側に突出させ、この突出部にロール苗の外周部が接する程度の位置で苗の巻き取り作業を行えば、ロール苗の外周部がロール苗案内前板19に接触する面積が小さくなるので、ロール苗の回転抵抗を小さくでき、苗の巻き取り作業を円滑に行えると共に、苗の巻き取りにつれてロール苗の径が変化しても、ロール苗がロール苗案内前板19に接触することによる回転抵抗の変化が少ないので、ロール苗の径に拘らず同じ回転抵抗でロール苗の巻き取り作業を行うことができ、巻き取り作業性が向上する。
【0015】
尚、上述に代えて、ハンドル24を、アーム12より左右方向外側に配置する等してマット苗の上方から離れた位置に配置することができる。これにより、ハンドル24にロール苗が干渉することがなく、またハンドル24がロール苗の前方にない分、苗倒伏用ベルト13にロール苗を近づける(ロール苗案内前板19を近づける)ことができ、マット苗の葉部を倒伏させた直後に苗を巻き取ることができる。また、苗巻取補助装置1の左右一側方から前記ハンドル24を容易に操作することができる。尚、ハンドル24は、左右一側のみに設けてもよい。また、ハンドル24として、アーム12と一体回動する操作レバーを採用してもよい。
【0016】
尚、上述は苗巻取補助装置1の前部に苗押さえローラ33を取り付ける構成について説明したが、左右のロール苗案内側板29により苗押さえローラ33の左右両端部を回動自在に支持する構成としてもよい。左右のロール苗案内側板29に上側へ切り欠いた切り欠き溝を設けるとともに、苗押さえローラ33の左右両端部に前記切り欠き溝に入る突出部を設ける構成とすることができる。このとき、苗押さえローラ33は非駆動状態でマット苗に上側から押し当てられ、機体の前進で回転するようになる。これにより、苗押さえ用アーム32等の苗押さえローラ33を支持する格別の部材が不要となり、機体の軽量化が図れる。
【0017】
尚、苗巻取補助装置1の前部には、マット苗の葉部を切り揃えるための切断刃40を設けている。この切断刃40により、マット苗の葉部の高さが略均一にできるので、苗倒伏用ベルト13による葉部の倒伏作用を適切に得ることができ、ひいてはロール苗の径を適正にして移植機による苗の移植精度を向上させることができる。また、苗の巻き取り作業と同時にマット苗の葉部を切断できるので、別途葉部の切断を行う場合と比較して作業能率が向上する。尚、マット苗の葉部を切断しないときのために、切断刃40を退避させることができる構成とすればよい。
【0018】
尚、苗巻取補助装置1の前部にマット苗の葉部を検出する苗センサを設け、該苗センサが苗を検出しなくなると苗巻取補助装置1の走行が自動的に停止する構成としてもよい。これにより、作業者はマット苗の終端での苗巻取補助装置1の走行停止操作に気をとられず苗の巻き取り作業に専念することができる。
【0019】
尚、苗巻取補助装置1の後部で苗倒伏用ベルト13より後側にマット苗に薬剤を散布する薬剤散布装置を設け、苗の巻き取りと同時に苗に薬剤を散布する構成とすることができる。これにより、格別に薬剤散布作業を行う必要がなく、作業能率が向上する。この薬剤散布装置は、苗倒伏用ベルト13により苗の葉部を倒伏させた後に薬剤を散布するので、薬剤が苗の床部に供給されやすく、苗移植後の薬剤の効用を高めることができる。
【0020】
また、左右のロール苗案内側板29を左右方向に若干量回動する構成とし、ロール苗案内側板29の回動により苗巻取補助装置1の進行方向が左右にずれたことをすばやく検出し、この検出に基づいて左右の走行車輪5の駆動回転数を異ならせて進行方向が適正となるように機体を操向させることができる。この構成によると、育苗トレイ2の左右両側部の壁部2aを走行車輪5と合致するレール形状にしなくてよいため、コストダウンが図れる。尚、上記構成において、左右のロール苗案内側板29の一部(後部)のみが左右に回動するようにしてもよい。また、ロール苗案内側板29による進行方向の誤検出を防ぐため、左右のロール苗案内側板29が共に同じ側に回動したときのみ、左右の走行車輪5の駆動制御を行う構成としてもよい。
【0021】
尚、図7に示すように、巻取軸4の左右中央部の径を左右両端部の径に比べて小さくすれば、巻き取られる苗の左右両端部の葉部は左右中央部側へ案内され易くなり、ロール苗の側面から苗の葉が突出するようなことを防止でき、ひいては移植機による苗の移植を円滑に行える。
【0022】
また、図8は異なる苗巻取補助装置を示すものであり、左右一対の走行車輪5の回転で苗倒伏用ベルト13が駆動するものである。この走行車輪5は大径であるので、左右の走行車輪5を繋ぐ車軸41をマット苗の葉部が干渉しないような高い位置に配置でき、左右の走行車輪5で個別の伝動装置を設ける必要がなく、軽量化及びコストダウンが図れる。尚、この苗巻取補助装置においては、前記走行車輪5とは別個に機体を支持するための非駆動の補助車輪42を設けている。
【0023】
図9は、前記補助車輪42を走行車輪5の前後に配置し、この前後の補助車輪を天秤アーム43の両端部に各々設けた構成を示すものである。この構成によると機体の前部及び後部の何れに育苗トレイ2の前後端の壁部2bが位置しても、補助車輪42を前記壁部2bに乗り上げて育苗トレイ2の端まで機体を走行させることができ、マット苗の端まで確実に葉部を倒伏させることができる。尚、前記補助車輪42は、通常は前側の補助車輪42が接地するべく該車輪42を下方に付勢している。
【0024】
ところで、上述のような長いマット苗を育苗する育苗トレイ2は、図10に示すように、左右に複数並列に設けられ、作業者はこの育苗トレイ2の側方から苗の巻き取り作業を行うことになる。従って、左右中央部の育苗トレイ2上で苗の巻き取り作業を行うときは、手が届きにくい。そこで、図10に示すように、育苗トレイ2の外側に該育苗トレイ2に沿うステップ44を出し入れ可能に設け、巻き取り作業位置に手が届きにくいときは、ステップ44を出して作業者が該ステップ44上を歩行しながら苗の巻き取り作業を容易に行える構成とすることができる。これにより、ロール苗の径を小さくするために苗をきつく巻き取るべく、ロール苗に上方から作業者の体重を容易にかけながら苗の巻き取り作業を行える。前記ステップ44は、育苗トレイ2を支持する支脚45に設けたL字状の長孔46に該ステップ44と一体の複数のピン47を挿入した構成とし、前記長孔46に沿ってピン47を移動させることによりステップ44を略90度回転させて出し入れする構成となっている。従って、左右方向端部の育苗トレイ2上で苗の巻き取り作業を行うときは、ステップ44を収納することにより、該ステップ44が邪魔にならずに作業が行える。また、苗押さえローラ33を単体でマット苗上で転がせてマット苗の葉部を予め一方側に倒伏させる作業を行うとき、ステップ44により苗押さえローラ33に上方から作業者の体重を容易にかけながら行え、葉部の倒伏作用を確実に得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】苗巻取補助装置を示す側面図
【図2】苗巻取補助装置を示す一部断面平面図
【図3】苗巻取補助装置を示す一部断面背面図
【図4】苗倒伏用ベルトを示す側面図
【図5】本体カバーの下端縁を示す背面図
【図6】苗倒伏用ベルトを示す断面平面図
【図7】異なる巻取軸を示す図
【図8】異なる苗巻取補助装置の概要を示す側面図
【図9】異なる補助車輪の形態を示す側面図(a:通常時、b:トレイ終端に到達時)
【図10】育苗トレイを示す斜視図
【符号の説明】
【0026】
1:苗巻取補助装置、3:マット苗、5:走行車輪、13:苗倒伏用ベルト、19:ロール苗案内前板、29:ロール苗案内側板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
マット苗(3)をロール状に巻き取る際にその巻き取りに合わせてマット苗(3)上を走行させるための走行手段(5)と、マット苗(3)をロール状に巻き取ってできるロール苗を案内するロール苗案内手段と、該ロール苗案内手段の前側で巻き取る前のマット苗の葉部に作用して該葉部を倒伏させる倒伏手段(13)とを備える苗巻取補助装置において、前記ロール苗案内手段は、ロール苗の側面を案内するロール苗案内側板(29)と、ロール苗の前面を案内するロール苗案内前板(19)とを備え、該ロール苗案内前板(19)は、前記倒伏手段(13)の斜め後上側に位置し、後下がりに傾斜した傾斜面を備える構成とした苗巻取補助装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2008−109902(P2008−109902A)
【公開日】平成20年5月15日(2008.5.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−295860(P2006−295860)
【出願日】平成18年10月31日(2006.10.31)
【出願人】(000000125)井関農機株式会社 (3,813)
【Fターム(参考)】