説明

草刈り用鋸刃

【課題】 草刈り時に、石などの異物に鋸刃が接触した場合に損傷し難くし、取り扱いで刃先による手の怪我を無くする。
【解決手段】 円盤状の台金2の周縁部に回転方向前方に向かった多数の刃部4を有し、刃部は、刃の掬い面7が台金の中心側へ伸延し、逃げ面8が刃先5を通る刃先円14から内側へ変位しながら後方へ伸延する草刈り用鋸刃1において、刃の逃げ面8の伸延部11が途中から外方へ向かい刃先円よりも突出した凸部12を設けられ、凸部の回転方向後縁15が突出端部から台金中心側へ向かい後続する次の刃の掬い面の伸延部に向き合う状態で伸延した後に次の刃の掬い面7の伸延部18に外方に凹な湾曲部17を形成して連なっている。凸部の回転方向前縁が逃げ面から突出端部に向かう間を斜め前方の外方に凸な曲面に形成されている。凸部の突出端の側面形状を小円弧状に若しくは糸面取り形状に形成した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、草の刈払に用いる、手動操作する原動機の付いた草刈り機(刈払機)の草刈り用鋸刃に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の草刈り用鋸刃は、一般的には丸鋸状であり、以前は円盤型の金属板の外周を鋸刃状に形成したものであった。最近では、草刈り用鋸刃は、殆どが円盤状の台金の外周に耐摩耗性の高い超硬合金製のチップで形成した刃を鋸刃状に設けたものとなっている。特許文献1に記載のものは、円盤状カッターの外周部に複数の刃を備え、カッターの外周部で、刈刃の回転方向後方には該刈刃の刃先の回転軌跡よりも径方向外方に突出する凸部を設けた構成である。この構成により、凸部が刈刃の刃先よりも先に石などの障害物に接触するので、障害物のあることを検出、感得することができ、操作者がカッターをコントロールすることで、刃先の障害物への接触を未然に防止することができる。又、特許文献2記載のものは、円盤状の台金の外周部に半径方向外方に突出する刃台と半径方向内方に凹む凹部とを円周方向に交互に設けるとともに各刃台の回転面側に刃を設け、各凹部底面の半径方向の位置を各刃の基端の半径方向の位置と略同程度にした構成である。この構成により、凹部に嵌入した被刈取り物が後続側の刃に直接衝突するので円滑に切断され、刃部に絡まなくなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開10−229721号公報
【特許文献2】特開2006−288268号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の草刈り用鋸刃は、使用時に石やコンクリートなどと接触すると、早期摩耗、欠け、チップの脱落が起こり、使い方にもよるが寿命が短い問題がある。また、草刈り用鋸刃の取り扱いにおいて、例えば取り付け、取り外し等のとき、刃先で手を切りやすい問題もある。本発明は、草刈り時に、小石や木片、コンクリートや大きい石などの異物に鋸刃が接触した場合に、刃部が損傷し難くすると共に、切れ味の良さを確保して、草刈り用鋸刃の使用寿命を従来よりも長くすると共に、取り扱いにおいて刃先による手の怪我を無くすることを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の草刈り用鋸刃は、円盤状の台金の周縁部に所定の回転方向前方に向かった多数の刃部を有している。前記刃部は、刃の掬い面が前記台金の中心側へ伸延し、逃げ面が前記多数の刃部の刃先を通る刃先円から内側へ徐々に離れるように変位しながら前記回転方向後方へ伸延している。前記刃の逃げ面の伸延部が途中から外方へ向かい前記刃先円よりも突出した凸部を設けられ、前記凸部の前記回転方向後縁が突出端部から前記台金中心側へ向かい後続する次の刃の掬い面の伸延部に向き合う状態で伸延した後に前記次の刃の掬い面の伸延部に外方に凹な湾曲部を形成して連なっている(請求項1)。
【0006】
この草刈り用鋸刃は、通常の草刈り機に取り付けて従来と同様に使用するものであり、草刈り操作は従来と同じである。草刈り操作をしたとき、凸部が草に当たり、草は押し退けられるように弾かれて、一旦鋸刃側から離れるが、その反動で元に戻ってきて、鋸刃側へ押し付けられる。これによって、草は凸部と刃部の間の凹入部に入り込み、すなわち凸部が存在しても、刃部の前側への入り込みが良好であり、入り込んだ草が刃によって刈り払われることになる。また、小さい石や固い木片などの異物があった時には、最大外径部を形成していて刃の前側にある凸部先端が、異物に当たるので、異物が跳ね飛ばされる。従って、異物が、直接刃に当たることはなく、刃が確実に保護される。また、コンクリート塀やコンクリート側溝のブロック、縁石の近くの草を刈るような時には、注意してもそのコンクリートや石に鋸刃が当たることがある。この場合にも、凸部が当たって鋸刃側が弾かれて、刃が直接にコンクリート塀やコンクリート側溝のブロック、縁石に当たることはない。このように、凸部が存在することによって、刃の損傷が防止されるから、凸部が摩耗して刃を保護できなくなるまでは、刃が草のみを刈り続ける状態の切れ味を保つ。
【0007】
前記凸部の前記回転方向前縁が、前記逃げ面から突出端部に向かう間を斜め前方の外方に凸な曲面に形成されている構成とすることもできる(請求項2)。異物が当たった時に刃先が直接当たった時のように食い込み状態になるのではなく、滑る状態であるから、反力が小さい。特に、異物がフェンスのネット(針金製)である場合に、凸部が当たることで従来の刃のように巻き込む状態にはならないから、大きく損傷するようなことはない。また、前記凸部の回転方向前面は、草刈り時に草や異物に当たって摩耗するが、この構成では、斜め前方の外方に凸な曲面となっている分、摩耗代を大きくでき、凸部の寿命が長くなり、その分、刃が凸部に保護される期間が長くなるので、草刈り用鋸刃の寿命も延びることになる。また、この草刈り用鋸刃は、凸部の突出端円が刃先円よりも小さくなる前に再研磨することにより、新品時に近い状態に戻すことができる。
【0008】
前記刃の部分が超硬合金製のチップで形成され台金に、ろう付けされている構成とすることもできる(請求項3)。最近の草刈り用鋸刃の刃部は、殆どが超硬合金製のチップで形成され台金(通常工具鋼の鋼板製)に、ろう付けされている構成であるが、この草刈り用鋸刃も、この構成を適用できて、そのチップで形成された刃の寿命を延長させることができる。特に、超硬合金製のチップで形成された刃は、草だけを刈ることに対しては、耐摩耗性が大きいが、小石などの異物との接触に対しては欠けやすく脆いので、前記凸部の存在がきわめて有効である。また別に、前記凸部の突出端の側面形状を小円弧状に若しくは糸面取り形状に形成した構成とすることもできる(請求項4)。この構成では、草刈り用鋸刃を素手で取り扱う場合に、外周に最も突出した凸部が刃になっていないから、つまり切れないから、手を負傷しにくい。
【発明の効果】
【0009】
請求項1の発明は、刃が異物と直接接触することが防止されて、草刈り用鋸刃の寿命が従来よりも延長される効果を奏する。
請求項2の発明は、異物への接触に対して刃の保護期間が、より延長される効果を奏する。
請求項3の発明は、超硬合金製のチップで形成された刃が欠けや脱落のない切れ味の良い状態に維持され、超硬合金チップの刃を有する草刈り鋸刃の寿命を、従来よりも大幅に延長させる効果を奏する。
請求項4の発明は、手を負傷し難い効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の第1実施形態を示す側面図である。
【図2】図1のA−A断面図である。
【図3】図1の部分拡大図である。
【図4】本発明の第2実施形態を示す図3と同様な部分拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の第1実施例を図1〜図3を用いて説明する。この草刈り用鋸刃1は、図1、図2に見られるように、円盤状の台金2の周縁部に矢印3で示す使用時の回転方向に向かう多数、例えば30個の刃部4を有している。刃部4は、図3に拡大して示すように、刃先5を有する超硬合金チップで形成され、台金2に設けた凹所6に嵌め込んで、ろう付けしてある。刃先5が掬い角α、例えば5°の掬い面7と、逃げ角β、例えば8°の逃げ面8とを有している。つまり、掬い面7が台金2の中心と刃先を通る中心線20に対して掬い角αをなし、概ね中心側へ向かって伸延している。逃げ面8が、前記多数の刃部4の刃先5を通る刃先円9の刃先位置の接線10に対し逃げ角βをなして、内側後方へ向かって伸延している。なお、チップ(刃部4)の掬い面7、逃げ面8、両側面8aは、研削加工してある。そして両側面8aは、図2に示すように、台金2の板面よりも僅かに突出して設けられ、且つ板面に平行であり、掬い面7とで約90°の角部を両側に形成している。
【0012】
一般的な草刈り用鋸刃では、刃の部分の大略の形が、刃を有する山部と、谷部との繰り返しである。しかし、この草刈り用鋸刃1では、刃部4の逃げ面8に略続いて伸延する逃げ面伸延部11が、前記刃先円9から離れるように内側後方へ徐々に変位しながら、前記谷部に向かって伸延している。この谷部へ向かっての伸延の途中から、刃先円9よりも突出端が突出した凸部12が設けられている。その凸部12は、回転方向前面が、斜め前方外向きの凸な曲面13に形成されて突出端14に達し、これに続いて、凸部12の後面が急激に中心側へ向かって伸延した後面伸延部15に形成されている。突出端14は、側面形状でエッジにならないように微小半径、例えば0.1r程度の丸味を付けてあり、つまり円弧状に形成されている。この丸味に代えて面取り形状としてもよい。各突出端14を通る突出端円16は、前記刃先円9よりも少し大きく、その半径方向の寸法差eは、例えば0.5mm度である。後面伸延部15に続いて外向きに凹な湾曲部17(従来の前記谷部に対応する部分である)が、形成されている。この湾曲部17は外方へ向かい、後続する刃部4の掬い面7に続いて伸延形成された掬い面伸延部18に、滑らかに連なっている。これらによって、凹入部19が形成されている。凸部12の後面伸延部15と刃部4の掬い面伸延部18とは向き合う状態である。
【0013】
このように構成された草刈り用鋸刃1は、通常の草刈り機に取り付けて使用される。草の刈り払いの機構は、概略次のように考えられる。草刈り操作時に草刈り用鋸刃1に当たる草の大部分は、最初に凸部12の突出端14付近の前面に当たり、当たった草は押し退けられるように弾かれて、鋸刃側から離れようとする。しかし、その反動で元に戻ってくる作用が生じ、鋸刃側へ押し付けられる。これによって凸部12の後面伸延部15と、湾曲部17と、刃部4の掬い面7及び掬い面伸延部18とからなる凹入部19(刃部4の前側位置)に、草の大部分が入り込み、入り込んだ草が刈り払われる。この刈り払いの機構は、従来の鋸刃状のもの(凸部12が存在しないが他は殆ど同じである比較例)と、実施例1のものとを比較使用した実用試験によると、初期の切れ味に差異が認められないことから、凸部12が存在しても刃部4の前側へ草の入り込みが良好であること、凹入部19に入り込んだ草が刃によって刈り払われていること、凸部12が刃部4の前側で異物に当たり刃部4が異物に当たらないようにして保護していること、を確認できた。直接草を切断するのは、刃部4の刃、すなわち刃先5の部分である前刃と、掬い面7両側の角部である横刃とである。
【0014】
寿命の比較試験は草地の条件の変動が大きいので、厳密には比較が困難であるから行っていないが、同様な条件で草刈りを続けたと仮定すると、比較例では切れ味が徐々に低下し、適切な時期に再研磨する場合もあるが、チップの欠けた個所や脱落した個所が増加してくるから、再研磨によって切れ味を元に戻すことは困難である。これに対し、実施例1では初期の切れ味が長く持続し、チップの欠けや脱落がないことから、凸部12の突出端14が摩耗して突出端円16が刃先円9よりも小さくなる少し前に、再研磨により初期状態(新品の状態)に近い状態に戻すことができる。従って、長期間使用できるといえる。
【0015】
凸部12が刃部4の刃を保護していることについて説明を加えると、小さい石や固い木片などの異物があった時には、最大外径部を形成していて刃の前側にある凸部12の突出端が、異物に当たるので、異物が跳ね飛ばされる。従って、異物が直接刃に当たることはなく、刃が確実に保護される。また、コンクリート塀の地際部分や側溝ブロックや縁石の近くの草を刈るような時には、注意してもそのコンクリート塀や縁石等に鋸刃が当たることがある。しかし、この場合にも、凸部12が当たって鋸刃側が弾かれて、刃部4の刃の損傷は防止される。しかも、弾かれる時の反力が従来の草刈り用鋸刃と比べてかなり小さい。これは、凸部12の回転方向前側が凸曲面であるから、異物との接触が擦る状態であり、従来の刃が直接当たる場合の食い付く若しくは引っ掻くような状態とは、全く異なるからである。
【0016】
このように、凸部12が存在することによって、刃部4の刃の損傷が防止されるから、凸部12が摩耗して刃を保護できなくなるまで、草を刈る切れ味が良好に保たれる。また、草刈り用鋸刃1を素手によって取り扱う場合があっても、従来のように刃先によって手を負傷することが殆どない。これは、凸部12の突出端14に微小な丸みを形成してあるから、凸部12の突出端14で負傷することはなく、また刃先5の前側に凸部12が位置しているから、刃で負傷することもないのである。実際に指先で外周方向に撫でても引っ掛かりが感じられない。
【0017】
図4に第2実施形態を示す。この実施形態の草刈り用鋸刃1aは、刃部4aが台金の部分で形成してある点が、第1実施形態と異なるのみで、他は同等である。従って、図4に第1実施形態と同等部分を同じ図面符号で示して、説明を省略する。なお、この草刈り用鋸刃1aも、凸部12が同様に作用して、第1実施形態と同様な効果が得られる。
【符号の説明】
【0018】
1 草刈り用鋸刃
2 台金
3 矢印
4 刃部
5 刃先
6 凹所
7 掬い面
8 逃げ面
9 刃先円
10 接線
11 逃げ面伸延部
12 凸部
13 曲面
14 突出端
15 後面伸延部
16 突出端円
17 湾曲部
18 掬い面伸延部
19 凹入部
20 中心線

【特許請求の範囲】
【請求項1】
円盤状の台金の周縁部に所定の回転方向前方に向かった多数の刃部を有し、前記刃部は、刃の掬い面が前記台金の中心側へ伸延し、逃げ面が前記多数の刃部の刃先を通る刃先円から内側へ徐々に離れるように変位しながら前記回転方向後方へ伸延する草刈り用鋸刃において、前記刃の逃げ面の伸延部が途中から外方へ向かい前記刃先円よりも突出した凸部を設けられ、前記凸部の前記回転方向後縁が突出端部から前記台金中心側へ向かい後続する次の刃の掬い面の伸延部に向き合う状態で伸延した後に前記次の刃の掬い面の伸延部に外方に凹な湾曲部を形成して連なっている草刈り用鋸刃。
【請求項2】
請求項1に記載の草刈り用鋸刃において、前記凸部の前記回転方向前縁が前記逃げ面から突出端部に向かう間を斜め前方の外方に凸な曲面に形成されている草刈り用鋸刃。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の草刈り用鋸刃において、前記刃の部分が超硬合金製のチップで形成され、ろう付けされている草刈り用鋸刃。
【請求項4】
請求項1、請求項2または請求項3に記載の草刈り用鋸刃において、前記凸部の突出端の側面形状を小円弧状に若しくは糸面取り形状に形成した草刈り用鋸刃。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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