説明

荷受台昇降装置

【目的】荷受台に荷物を移動させる際に荷物の損傷を防止する荷受台昇降装置とする。
【構成】車両に対する荷物の積み下ろしに用いられる荷受台昇降装置であって、荷物が載置される荷受台の上面には、前記車両の荷台側となる基端から前記荷受台の先端への荷物引き出し方向に沿って複数の凸部が設けられており、当該凸部は、前記基端側に向いた基端側壁部と前記先端に向いた先端側壁部とを備えており、前記複数の凸部のうち、前記基端側の凸部における基端側壁部は、前記荷受台の上面に対して、他の凸部の基端側壁部より緩傾斜した部分を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両に対する荷物の積み下ろしに使用する荷受台昇降装置、特に荷受台に設けられた滑り止め部材に関する。
【背景技術】
【0002】
主に車両の後方に架装される荷受台昇降装置のうち、例えば図6のように地面と荷台91との間で昇降される荷受台92には、荷物93の積み下ろしを行う作業者の安全性を考慮して、荷物93が載置される荷受台上面92aに滑り止め部材94が設けられている。
【0003】
滑り止め部材94としては、押出材からなる荷受台上面92aにおいて、荷受台幅方向を長手方向とする複数本の突条部材94a、94b、94c、・・・からなるものが知られている(特許文献1)。この突条部材94a、94b、94c、・・・は、荷受台基端部から先端部にかけて並んで設けられている。
【0004】
幅狭で隣り合う突条部材94a、94b、94c、・・・のピッチP11が細かく、その高さH11が大きいほど滑り止め効果が高い。つまり、荷台91から荷受台92に荷物93を引き出す作業(矢印R11)や、昇降(矢印A11)や地面への傾動(矢印A12)などの作業の際に作業者の安全性が確保される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平8−318777号公報(図3)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、滑り止め効果が高いほど、荷台91から荷物93を引き出す際にスムーズに荷受台92に移動させることが難しい場合がある。荷物93がダンボール材で構成された箱などの場合、箱の下側隅部931や底面が、例えば最初の突条部材94aの壁部941aに引っ掛かるためである。また、そのまま強引に移動させると箱が損傷する恐れもある。
【0007】
こうした引っ掛かりが生じるのは、荷受台92を荷台91の高さと略同じ高さまで上昇させることができる荷受台昇降装置90の特性に起因する。作業者が荷物94を抱え上げなくても、荷台91から荷受台92まで荷物94を滑らせて簡易に引き出すことができるため、そうした簡易な方法を作業者が選択する傾向がある。作業者に荷物94の積み下ろしの迅速性が求められる状況下では、特に選択しやすい。
本発明は、これらの点を鑑みてなされており、荷受台に荷物を移動させる際に荷物の損傷を防止する荷受台昇降装置の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の課題を解決するために、車両に対する荷物の積み下ろしに用いられる荷受台昇降装置を対象として次の構成とする。
【0009】
荷物が載置される荷受台の上面には、前記車両の荷台側となる基端から前記荷受台の先端への荷物引き出し方向に複数の凸部が設けられている。当該凸部は、前記基端側に向いた基端側壁部と前記先端側に向いた先端側壁部とを備えている。前記複数の凸部のうち、前記基端側の凸部における基端側壁部は、前記荷受台の上面に対して、他の凸部の基端側壁部より緩傾斜した部分を有する。
【0010】
ここで、「基端側の凸部」は、荷受台基端又はその近傍から複数の凸部が設けられている場合には、荷台から荷受台に引き出される際に荷物が当接する領域に設けられた凸部を意味している。また、荷受台基端又はその近傍に凸部が設けられておらず、所定距離だけ先端側に離れた領域から複数の凸部が設けられた構成の場合には、その複数の凸部の中で最も基端側に位置する凸部を少なくとも含んだ一部領域の凸部を意味する。
さらに、「緩傾斜した部分」に関しては、傾斜した平面や湾曲した面を含んだ部分を意味する。
上記構成の荷受台昇降装置において、前記緩傾斜した部分は、前記基端側壁部のうち、少なくとも上方部に設けられているものとすることができる。
また、前記緩傾斜した部分を有する基端側壁部は、前記基端側の凸部のうち、前記基端側に最も近い凸部に設けられているものとすることができる。
さらに、前記凸部は、前記荷受台の幅方向に沿って延伸する形状を有する。
【発明の効果】
【0011】
荷受台の上面に設けられた複数の凸部の中で、荷台に近い基端側の凸部には、緩傾斜した部分を有する基端側壁部が設けられているので、荷台から荷受台に荷物を滑らせて引き出す場合でも、その基端側壁部で荷物が引っ掛かることがない。一方で、この緩傾斜した部分を有する基端側壁部は、荷台から荷受台に荷物が引き出された際、又は荷物が複数の凸部のうちで最初に当接する領域に形成されている。この基端側の凸部を除いた「その他」の部分における凸部の壁部は傾斜角度が大きいため、高い滑り止め性能を維持することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の実施形態に係る荷受台昇降装置の要部斜視図である。
【図2】本発明の実施形態に係る荷受台昇降装置に設けられた滑り止め部材の要部断面図である。
【図3】本発明の滑り止め部材に係る他のレイアウトを示す斜視図である。
【図4】本発明の滑り止め部材の他の形状を示す要部断面図である。
【図5】本発明の滑り止め部材のさらに別の実施形態を示す要部断面図である。
【図6】従来形態に係る荷受台昇降装置の模式側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明に係る荷受台昇降装置について、図面を用いて実施形態の一例を説明する。
【0014】
図1は、本実施形態に係る荷受台昇降装置100で、荷受台1が接地した状態を示す要部斜視図である。荷受台昇降装置100は車両の後方に架装され、図示の状態と荷台の高さまで上昇した状態との間で昇降作動が行われる。荷受台昇降装置100を用いない(例えば、車両走行時)ときには、荷受台1は折り畳まれて荷箱2の下方に格納される。
【0015】
荷受台昇降装置100は、車両前後方向に延びる左右一対のシャシフレーム(不図示)に回動自在なリンク機構3が連結され、そのリンク機構3の先端に荷受台1が支持された周知の構成を有している。
【0016】
リンク機構3は、荷受台1を先端で支持するリフトアーム31と、リフトアーム31下方において一端がリフトアーム31に枢支されたリフトシリンダ32とを有している。左右一対のシャシフレームに横架材が架設され、その左右両端部にそれぞれブラケットを介して車両前後方向に揺動自在なチルトアーム(不図示)が軸支されている。このチルトアーム上側には、リフトアーム31の基端部及びリフトシリンダ32の基端部が枢支されており、リフトシリンダ32の先端部がリフトシリンダ31の途中部に枢支されている。リフトシリンダ32の伸縮により、リフトアーム31が上下に回動して、荷受台1が昇降される。
【0017】
また、左右一対のシャシフレームには、図示は省略するが、荷受台1を荷箱2下方に格納する際に機能するスライド部材が設けられている。このスライド部材は、車両前後方向に伸縮するスライドシリンダを駆動源として、シャシフレームに固設されたスライドレールを摺動するスライド部材にリンク機構3が連結されている。こうしたスライド部材によって、荷受台1は車両前後方向に沿って作動される。
【0018】
荷受台1のうち、荷物が載置される上面(載置面)1aには滑り止め部材4が設けられている。当該部材4によって、荷箱2の床面(荷台)と地面との間での荷物の積み下ろしを行う作業者、特に荷台と荷受台1との間における荷物の移動作業を行う作業者が荷受台1上で滑ってバランスを崩してしまうことを防止することができる。
【0019】
滑り止め部材4は、図1(b)に示すA部の断面斜視図に示すように、車両幅方向(荷受台1の幅方向)を長手方向とする複数本の突条部材41、42、43、・・・が、荷受台1の基端側から先端側に順に並んで配されてなる。突条部材41、42、43、・・・のうち、荷受台1の基端側で、荷受台1が荷台高さに達した際に最も荷台に近くなる第1突条部材41だけは断面形状が異なる。他の突条部材42、43、・・・は同じ断面形状を有している。なお、各突条部材41、42、43、・・・は、いずれも荷受台幅方向に沿って延伸して一定の断面形状を有している。
【0020】
突条部材41、42、43、・・・について図2を用いて具体的に説明する。図2(a)のように、荷台2aから荷受台1に荷物5を滑らせて引き出す(矢印R1)と、荷物5は第1突条部材41、第2突条部材42の順に摺動する。
上述のとおり、第1突条部材41、第2突条部材42は、図2(b)の拡大断面図のように異なる形状を有している。
【0021】
第1突条部材41は、荷受台1の基端部側を向いた基端側壁部S11と、荷受台1の先端部側を向いた先端側壁部S12と、荷受台1の上面と平行面となる天頂部T1とで形成された凸部を有する。荷受台1の上面1aに対する基端側壁部S11の傾斜角度d1は、先端側壁部S12の傾斜角度d2がよりも大きい。
【0022】
第2突条部材42も、基端側壁部S21と、先端側壁部S22と、天頂部T2とで形成された凸部を有するが、第1突条部材41と異なり、両壁部S21、S22の上面1aに対する傾斜角度d3、d4は略同じ大きさである。なお、これらの傾斜角度d3、d4は、第1突条部材41の先端側壁部S12の傾斜角度d2とも略同じ大きさである。
【0023】
このように凸部を有する複数本の突条部材41、42、43、・・・が順に並んで配置されていることで、作業者の靴裏面が荷受台1の上面1aに接した際に所定のグリップ力が生じ、滑り止め効果を発揮する。なお、本実施形態では、第1突条部材41の基端側壁部の長さL1は4mm、天頂部の長さW1は1mmに設定されており、第2突条部材42は全長W2が1.5mmに設定され、突条部材41、42、43、・・・の各ピッチP1は8.3mmで各高さH1は1.3mmに設定されているが、所定のグリップ力が生じれば他の大きさでも構わない。
【0024】
また、荷台2aから荷受台1に荷物が引き出された際、荷物5の下方隅部51が最初の第1突条部材41の基端側壁部S11に接してもスムーズな荷物5の移動は阻害されない。第1突条部材41の基端側壁部S11が他の基端側壁部S21や先端側壁部S12、S22よりも緩やかに傾斜する形状なので、基端側壁部S11に荷物5が当接しても、略鉛直に規律する壁部や第2突条部材42のように大きな傾斜角度d3を有する基端側壁部S21と比較して、基端側壁部S11からの反発力も小さい。その結果、荷物5の下方隅部51が変形したり損傷したりすることなく、基端側壁部S11を摺動することができる。つまり、荷物5は簡易に天頂部T1に乗り上げられる。
【0025】
上述したピッチP1等で所望のグリップ力を備えた各突条部材41、42、43、・・・によって、滑り止め部材4は、作業者に対する高いグリップ力を保持する一方、荷物5は簡易に第1突条部材41の天頂部T1に乗り上げられて、順次、隣り合う突条部材42、43、・・・の天頂部を摺動して荷受台1をスムーズに移動する。なお、作業者の靴裏面に対する基端側壁部S11の大きさは微小であり、滑り止め性能も維持されている。
【0026】
さらに、荷受台1の先端側に荷物が載置されると、図2(c)で示すように荷受台1は微小角度A10だけ傾斜する。このとき、第1突条部材41の基端側壁部S11の傾斜面は水平方向に対してさらに緩やかに傾斜した状態となる。その結果、さらに荷物51が引き出される際、荷物51をよりスムーズに荷受台1に引き出すことができる。
【0027】
緩やかに傾斜した基端側壁部S11を有することで、荷受台1と荷台2aとが同じ高さにならずに若干それぞれの高さ位置が異なる場合でも、同様の効果を得ることができる。荷受台1に荷物5等が載置された場合の重量を予め考慮して、空荷状態の荷受台1は荷台2aの高さより若干高い位置となるように設定されることがある。このとき、荷台2aと第1突条部材41の天頂部T1との高さのギャップが大きくなるが、基端側壁部S11が緩やかに傾斜するため、荷物5が第1突条部材41に引っ掛かることを抑制できる。
【0028】
なお、基端側壁部S11は、高さH1の全範囲にわたって緩やかで一定の傾斜の勾配を有しているが、その高さH1のうち天頂部T1に連なる上方部のみにその勾配を有する部分が配された構成としても良い。荷物5が基端側壁部S11の上方部に最初に当接する場合には、同様に荷物5を円滑に天頂部T1に乗り上がって移動させることができる。
【0029】
本実施形態に係る荷受台1はアルミニウム合金製による押出し材で形成されており、各突条部材41、42、43、・・・もこの押出し材形成の際に一体的に設けられている。このため、各突条部材41、42、43、・・・は一定した断面形状を有した状態で、荷受台1の幅方向を長手方向に延伸した状態となる。なお、各突条部材41、42、43、・・・の形成方法に関しては、押出し成型に限定されず、荷受台1の上面に対して各突条部材41、42、43、・・・を別部材として固設させても同様の効果を得ることができる。
次に、突条部材41、42、43、・・・のレイアウトに関して、異なる実施形態について図3を用いて説明する。
【0030】
図3(a)に示す荷受台11には、荷受台幅方向に沿って、複数本からなる突条部材群40a、40b、・・・で構成された滑り止め部材40が設けられている。いずれの群も同様の構成なので、図中手前側の突条部材群40aを代表例として説明する。
【0031】
突条部材群40aを構成する突条部材401a、402a、・・・はそれぞれ荷受台11の幅方向を長手方向として延伸している。これらの突条部材401a、402a、・・・は、第1突条部材401aの基端側壁部4011aだけ他の壁部と比較して緩やかに傾斜している。
【0032】
突条部材群40aは、押出し材によって荷受台11の形成過程において、荷受台11の幅方向の全体に延伸した突条部材(例えば図1(b)の状態)を形成した後、この突条部材の一部を荷物の引き出し方向R1に沿って削る等で切り欠き、切欠き通路U1を設けることで形成される。切欠き通路U1が設けることで、荷物の引き出し方向R1だけでなく、荷受台幅方向にも滑り止め効果が生じる。
【0033】
また、別のレイアウトとして図3(b)のようにしても良い。図3(b)に示される荷受台12の滑り止め部材400は、荷受台12の幅方向を長手方向とする突条部材401、402、・・・の中に切欠き部U11、U12、U13、・・・が散在して設けられた構成である。
【0034】
図3(b)の荷受台12には、基端部側のうち図中手前側に、切欠き部U15によって突条部材が配されていない領域を有している。こうした領域に地面から荷受台に荷物を積み込む際のストッパ部材が配された構成等にすることもできる。荷受台12において、幅方向の中央側に位置する第1突条部材401における基端側壁部401aは、他の壁部(例えば第2突条部材402)よりも緩やかに傾斜している。一方、側端側(図中手前側)に位置する第3突条部材403における基端側壁部403aは、上記他の壁部と略同じ傾斜角度を有している。
【0035】
荷台から引き出された荷物が荷受台12に移動する際には、第1突条部材401に最初に接するため、緩やかな傾斜面を有する基端側壁部によってスムーズに荷受台12上に荷物を引き出すことができる。なお、第3突条部材403の延伸する長さが大きく、荷物の種類や荷受台12への荷物の積み込み次第で、荷物の引き出しの際に最初に第3突条部材403に接することを考慮する場合には、第3突条部材403の基端側壁部が緩やかな傾斜面を有する構成としても良い。
次に、滑り止め部材のうち荷物の引き出しを阻害しない基端部側の突条部材の構成に係る他の実施形態について、図4を用いて説明する。
【0036】
図4(a)に示す荷受台13の滑り止め部材410は、上述した実施形態と同様に複数本の突条部材41a、42a、43a、・・・を有することに加えて、基端部側の最外縁にも1本の突条部材410aを有している。
【0037】
最外縁の突条部材410aは、荷受台13の上面に対して略鉛直方向に起立した壁部を有し、他の突条部材41a、42a、43a、・・・の高さH41よりも低い高さH410を有する。最外縁の突条部材410aが設けられていることで、荷受台13が荷台に対してほぼ接する状態で荷台と略同じ高さに位置する際には、荷物5は最外縁の突条部材410aに接触せず、荷台と第1突条部材41aとの高さのギャップを抑制するガイド部材として機能する。また、図4(b)のように、荷物5が引き出し方向R1に沿って引き出された際、荷物5の下方隅部51は第1突条部材41aの基端側壁部S41を摺動するので、荷物5をスムーズに荷受台13に移動させることができる。荷受台13の基端側に設けられた突条部材410a、41a、42a、43a、・・・のうち、荷物5の引き出しの際に、壁部が荷物と当接する突条部材41aに対して、他の突条部材410a、42a、43aなどの壁部よりも緩やかに傾斜する基端側壁部S41が設けられていれば良い。その結果、荷台から荷受台13に引き出された荷物5が、最初に突条部材41の基端側壁部S41に当接してもスムーズに荷物5が引き出される。つまり、荷受台13の基端側には、突条部材410a、41a、42a、43a、・・・が設けられているが、緩やかに傾斜した部分(例えば、S41)は、引き出された荷物5が最初に当接される領域に配された複数の凸部(例えば最外縁の突状部材41aを除いた突条部材41a、42a、43a)の中で最も基端側に位置する第1突条部材41aに少なくとも設けられていることとする。
【0038】
また、図4(c)で示す荷受台14のように、基端側の突条部材41b、42b、43b、44b、・・・のうち、最も基端に近い第1突条部材41bも含めて例えば3本の突条部材41b、42b、43bが、他の壁部より緩やかな傾斜面を有する基端側壁部S41b、S42b、S43bが設けられた滑り止め部材420としても良い。
【0039】
荷受台14のように、緩やかな傾斜面を有する基端側壁部S41b、S42b、S43bが設けられた突条部材41b、42b、43bが基端側に複数本配されていることで、荷受台14が荷台の高さ位置まで上昇した際、高さ方向において荷台と微小なギャップが生じる場合、例えば、図4(d)に示すように、荷受台14の基端部が下がって、荷受台先端部が水平方向に対して角度A11だけ傾斜した状態でも適宜対応できる。荷物5を引き出し方向R1に沿って引き出した際、その下方隅部51は第2突条部材42bの基端側壁部S42bに最初に当接して摺動し、荷受台14にスムーズに引き出すことができる。
【0040】
上述した実施形態に係る滑り止め部材4、40、400、410、420は、緩やかに傾斜した基端側壁部は、いずれも傾斜角度がd1と略一致する大きさ(図2(b)参照)としたが、これに限定されない。
【0041】
例えば、図5(a)に示す荷受台15は、基端側に最も寄っている第1突条部材41cと、第2突条部材42cと、第3突条部材43cにおけるそれぞれの基端側壁部S41c、S42c、S43cの傾斜角度d11、d21、d31が順に大きくなっている。一方、先端側壁部はいずれも同じ傾斜角(d12=d22=d32)を有している。基端側壁部S41c、S42c、S43cの傾斜角度が徐々に大きくなることで、荷台2aから荷受台13に引き出される際に、徐々にグリップ力(滑り止め効果)が大きくなる。つまり、荷台から荷受台15に引き出された当初の荷物に生じる摩擦力が抑制されており、荷物の損傷を防止できる。また、図5(b)のように、第1突条部材41dにおける基端側壁部S411dと先端側壁部S412dとが、互いに同じ傾斜角度(d111=d121)を有する構成とし、第2突条部材42dの壁部よりも緩やかな傾斜面であれば、荷受台16に荷物が移動した直後の摩擦力を抑制できる。
【0042】
その他、図5(c)に示す荷受台17のように、基端側の突条部材41eにおける基端側壁部S411eが平面ではなく、湾曲面を有して緩やかに傾斜した構成としても良い。
【0043】
このとき、基端側壁部S411eにおける上方部E41の部分に、先端側壁部S412eなどの他の壁部より緩やかに傾斜する湾曲面が設けられている。当該湾曲面が設けられていることで、荷物が上方部E41に当接しても、その面に沿って摺動しやすく、荷物をスムーズに移動させることができる。なお、図示する基端側壁部S411eは下方部E42も滑らかな湾曲面が設けられているが、下方部E42に荷物が当接しない場合には、下方部E42は緩やかに傾斜する形状でなくても良い。
【0044】
以上のように、荷受台の上面に設けられた滑り止め部材を構成する複数の突条部材のうち、基端部側に位置して基端側壁部が緩やかに傾斜する突条部材が、所望の滑り止め効果を生じ、荷物の移動を阻害しない構成であれば、その位置、本数または形状は適宜変更可能である。さらに、図5(c)のような湾曲面を有する基端側壁部が設けられた構成の場合、断面半円状の突条部材でも構わない。このとき、荷台側から視認できる領域を基端側壁部とし、荷受台先端側から視認できる領域を先端側壁部とする。基端側の突条部材を断面半円形状とする場合、滑り止め性能が低下することを抑制するため、他形状の突条部材と比較してピッチを小さくした構成とすることが望ましい。
【0045】
また、滑り止め部材の構成部材として、荷受台の幅方向に延伸する突条部材が配された構成としているが、延伸方向は荷受台の幅方向に限定されない。例えば、車両前後方向やその他の方向でも、荷台から荷受台に荷物が引き出される際に、荷物が当接領域の滑り止め部材における基端側壁部が他の壁部より緩やかに傾斜する形状であれば構わない。さらに、延伸する形状ではなく、基端側壁部を有する凸部であれば、複数の点状部材が設けられてなる構成でも構わない。
【0046】
なお、荷受台昇降装置として、車両後方でリンク機構を介して荷受台が昇降される構成を用いて説明したが、同様の滑り止め部材が配された荷受台であれば、他の荷受台照応装置にも適用可能である。また、車両後方に架装されたものだけでなく、車両側方に設けられたものでも同様の効果を得ることができる。
【産業上の利用可能性】
【0047】
本発明は、車両の荷台から移動された荷物が載置される荷受台を有する装置、特に、荷台の高さと略同じ高さまで上昇する荷受台昇降装置の全ての種類に対して有用である。
【符号の説明】
【0048】
1 荷受台
1a 荷受台上面(荷物載置面)
2 荷箱
2a 荷台(荷箱床面)
3 リンク機構
4 滑り止め部材
41 突条部材(基端側)
42 突条部材(基端側以外)
R1 荷物引き出し方向
S11 基端側壁部(基端部側の突条部材)
S12 先端側壁部(基端部側の突条部材)
S21 基端側壁部(基端部側以外の突条部材)
S22 先端側壁部(基端部側以外の突条部材)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両に対する荷物の積み下ろしに用いられる荷受台昇降装置であって、
荷物が載置される荷受台の上面には、前記車両の荷台側となる基端から前記荷受台の先端への荷物引き出し方向に複数の凸部が設けられており、
当該凸部は、前記基端側に向いた基端側壁部と前記先端側に向いた先端側壁部とを備えており、
前記複数の凸部のうち、前記基端側の凸部における基端側壁部は、前記荷受台の上面に対して、他の凸部の基端側壁部より緩傾斜した部分を有する
ことを特徴とする荷受台昇降装置。
【請求項2】
前記緩傾斜した部分は、前記基端側壁部のうち、少なくとも上方部に設けられている
ことを特徴とする請求項1に記載の荷受台昇降装置。
【請求項3】
前記緩傾斜した部分を有する基端側壁部は、前記基端側の凸部のうち、前記基端側に最も近い凸部に設けられている
ことを特徴とする請求項1または2に記載の荷受台昇降装置。
【請求項4】
前記凸部は、前記荷受台の幅方向に沿って延伸する形状を有する
ことを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の荷受台昇降装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−228927(P2012−228927A)
【公開日】平成24年11月22日(2012.11.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−97826(P2011−97826)
【出願日】平成23年4月26日(2011.4.26)
【出願人】(000002358)新明和工業株式会社 (919)