説明

荷重センサ

【課題】センサに異常が生じた場合などの交換部品のコストを低廉化すると共に無駄を少なくすることが可能な荷重センサを提供することを目的とする。
【解決手段】車輪に係る荷重を検出するための荷重センサ9をハブユニットに取付ける場合、ハブ1にV型着磁エンコーダ7を固定し、このエンコーダ7を覆うダストカバー8にハブユニット側センサ取付部10を形成すると共に、センサ素子12を内装するセンサ基体11を予め設定された一定の形状に形成し、そのセンサ基体11に、ハブユニット側センサ取付部10に取付可能なように当該ハブユニット側センサ取付部10に応じた形状のフランジ部14をオーバーモールドによって形成し、そのフランジ部14をボルト16でハブユニット側センサ取付部10に取付けることにより、荷重センサ9に異常が生じた場合などにはオーバーモールドされたフランジ部14ごとセンサ基体11を交換する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両の車輪に係る荷重を検出する荷重センサに関し、例えば車両の車軸の車輪取付部に取付けられるハブユニットやステアリングナックルに予め取付けて使用される荷重センサに好適なものである。
【背景技術】
【0002】
近年の多様化する車両制御の需要から車輪の回転速度や荷重状態を検出し、それらに応じて車両状態制御を行うことが広く行われている。一方で、車両を構成する部品をある程度まとまった形態で納品するモジュール化も進んでいる。そのため、ハブユニットやステアリングナックルなどの車輪取付部に予めセンサを取付けたセンサ付き車輪取付部が求められている。
【0003】
車両メーカーで使用される車輪取付部も多種ならば、それに取付けられるセンサの取付構造も多種であり、それらの組合せからなるセンサ付き車輪取付部も多種となる。このような多種のセンサ付き車輪取付部に対応するため、下記特許文献1では、ハブユニットに取付けられるカバー部材に取付孔を開設し、この取付孔に、センサ素子が取付けられたコネクタの先端部を差し込み、その差し込まれた先端部を樹脂成形してコネクタ、センサ素子、カバー部材を一体化する。カバー部材を品種に合わせたものとすることで、コネクタやセンサ素子を共通部品とし、且つ多品種に対応しながらコストを低廉化することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004−198305号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、前記特許文献1に記載されるセンサ付きハブユニットでは、例えばセンサに異常が生じた場合などには、カバー部材ごと交換する必要があり、交換部品のコストが高くなるし、無駄も多い。
本発明は、上記のような問題点に着目してなされたものであり、センサに異常が生じた場合などの交換部品のコストを低廉化すると共に無駄を少なくすることが可能な荷重センサを提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明の荷重センサは、車軸の車輪取付部の被取付物に予め取付けて使用される荷重センサであって、被取付物に形成された被取付物側センサ取付部と、センサ素子を内装し且つ予め設定された一定の形状に形成されたセンサ基体と、前記被取付物側センサ取付部に取付可能なようにオーバーモールドによって当該被取付物側センサ取付部に応じた形状で前記センサ基体に形成され且つ取付部材を介して前記被取付物側センサ取付部に取付けられるセンサ側取付部とを備えたことを特徴とするものである。
【0007】
また、前記被取付物がエンコーダのダストカバーであり、当該ダストカバーに予め取付けられたことを特徴とするものである。
また、前記被取付物がステアリングナックルであり、当該ステアリングナックルに予め取付けられたことを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0008】
而して、本発明の荷重センサによれば、被取付物に被取付物側センサ取付部を形成すると共に、センサ素子を内装するセンサ基体を予め設定された一定の形状に形成し、そのセンサ基体に、被取付物側センサ取付部に取付可能なように当該被取付物側センサ取付部に応じた形状のセンサ側取付部をオーバーモールドによって形成し、そのセンサ側取付部を取付部材で被取付物側センサ取付部に取付ける構成としたため、センサ素子やセンサ基体など、センサに異常が生じた場合などにはオーバーモールドされたセンサ側取付部ごとセンサ基体を交換すればよいだけなので、交換部品のコストを低廉化することができると共に無駄を少なくすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の荷重センサが取付けられたセンサ付きハブユニットの第1実施形態を示す全体縦断面図である。
【図2】図1のセンサ付きハブユニットに用いられたセンサ基体の説明図である。
【図3】図1のセンサ付きハブユニットに用いられたオーバーモールドセンサ側取付部の説明図である。
【図4】図3のオーバーモールドセンサ側取付部を図1のダストカバーに取付けた状態の説明図である。
【図5】本発明の荷重センサが取付けられたセンサ付きステアリングナックルの第2実施形態を示す全体縦断面図である。
【図6】図5のセンサ付きステアリングナックルに用いられたオーバーモールドセンサ側取付部の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
次に、本発明の荷重センサが取付けられたセンサ付きハブユニットの第1実施形態について図面を参照しながら説明する。
図1は、本実施形態のセンサ付きハブユニットの全体縦断面図である。ハブ1とは、車両の車軸に車輪(ホイール)を取付けるための車輪取付部を意味し、車輪をあてがうフランジ3や車輪を取付けるためのスタッドボルト2などが設けられている。このハブ1は、軸受4を介して車輪支持部5に回転自在に取付けられ、この車輪支持部5をハブナックルなどとも呼ぶ。これらハブ1と車輪支持部5などを総称してハブユニットと呼ぶ。図1は、駆動輪用のハブユニットである(図ではドライブシャフトは図示せず)。
【0011】
前述したような車両状態制御のために、本実施形態では、ハブユニットに予めセンサユニット6を取付けてモジュール化し、センサ付きハブユニットして製品化する。本実施形態で取付けられるセンサユニット6は、車輪の回転速度を検出すると共に車輪に係る荷重を検出することもできるセンサユニットであり、例えば本出願人が先に提案した特開2006−317420号公報に記載されるものである。このセンサユニットについて簡単に説明すると、S極とN極が交互に且つV字型に着磁されたV型着磁エンコーダを用い、荷重が変化したときのアキシャル方向又はラジアル方向へのV型着磁エンコーダの磁場変化をホール素子などのセンサ素子で検出し、その磁場変化量から荷重変化量を求めるものである。車輪に係る荷重変化量が得られると、車輪の摩擦力変化、即ち車輪の総グリップ力変化が得られるので、例えばABS(アンチロックブレーキ装置)の制御精度が向上するなどの利点がある。
【0012】
センサユニット6を構成するV型着磁エンコーダなどのエンコーダ7は前記ハブ1に取付けられ、当該ハブ1と共に、即ち車輪と共に回転する。一方、センサユニット6を異物から保護するダストカバー8がエンコーダ7の外側に被せられ、そのダストカバー8は車輪支持部5に取付けられている。そして、そのダストカバー8に荷重センサ9が取付けられている。ダストカバー8には荷重センサ9を取付けるためのハブユニット側センサ取付部10が形成され、当該ハブユニット側センサ取付部10には、取付部材であるボルトのネジ部を螺合するためのネジ孔などが設けられている。
【0013】
図2には、センサ9を構成するセンサ基体11を示す。図2aは、センサ基体11の上面を、図2bは、センサ基体11の下面を示す。このセンサ基体11は、例えばホール素子などのセンサ素子12を内装し、且つ当該センサ素子12の検出信号を取出すハーネス13と共に、予め設定された形状に一体的に形成されたものである。図2のセンサ基体11では、2個のセンサ素子12を図の横方向、即ち図1のアキシャル方向に所定距離だけ離して配設し、エンコーダ7のアキシャル方向への磁場変化量から車輪に係る荷重変化量を検出することができるように構成されている。センサ基体11には、例えば信号の処理回路やノイズ対策回路を内装してもよい。その場合、各回路は回路基板を用いてもよいし、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)などで構成してもよい。なお、検出信号の取出しには、ハーネス13に代えてコネクタを用いることもできる。
【0014】
図2に示すセンサ基体11は、例えば後述する第2実施形態にも共通して使用できるセンサ本体ともいうべきものであり、このセンサ基体11に対し、例えば図3に示すような図示下方向きのフランジ部14をセンサ側取付部として、センサ基体11にオーバーモールドによって形成する。フランジ部14には、前記取付部材であるボルトのネジ部を挿通する挿通孔15も予め開設されている。このセンサ側取付部は、前記センサ基体11をハブユニット側センサ取付部10に取付けるために、当該ハブユニット側センサ取付部10に応じた形状にオーバーモールドによって形成されたものである。オーバーモールドとは、周知のように対象物を覆うように成形された樹脂、或いは対象物を覆うように樹脂を成形することをいう。
【0015】
そして、図4に示すように、センサ基体11にセンサ側取付部であるフランジ部14がオーバーモールドされた荷重センサ9に対し、当該フランジ部14に形成された挿通孔15にボルト16のネジ部を挿通し、そのネジ部をダストカバー8に形成されたハブユニット側センサ取付部10のネジ孔に螺合し締付けてダストカバー8に荷重センサ9を取付ける。このダストカバー8をハブユニットの車輪支持部5に取付ければ、予め荷重センサ9が取付けられたハブユニットを製品化することができる。なお、荷重センサ9の取付部材としては、例えば前記フランジ部14に予め樹脂ピンを一体成形しておき、その樹脂ピンをダストカバー8に挿通した後、溶着させるような構造も挙げられる。
【0016】
もし、荷重センサ9に異常が生じた場合には、センサ側取付部であるフランジ部14ごとセンサ基体11を交換すればよいので、交換部品のコストを低廉化することができ、無駄も少ない。前記特許文献1に記載の構造では、センサと共にカバー部材も交換する必要があり、交換部品のコストが高く、無駄も多い。また、前記特許文献1に記載の構造をV型着磁エンコーダによる荷重センサに用いた場合、エンコーダとセンサがラジアル対向になるため、カバー部材の内径の曲面に合わせて2個のホール素子などのセンサ素子を配置し、仮装中心に対して位置決めをする必要があり、樹脂成形に要する手間が係ることが考えられる。また、2個のセンサ素子の位相やギャップが異なることで、位相差比がばらつくため、成形精度も必要となる。
【0017】
これに対し、本実施形態のセンサ付きハブユニットでは、荷重センサ9とハブ1、エンコーダ8の組合せは一度組合せれば、その後不変であるため、ハブ1やエンコーダ8、荷重センサ9に夫々固有の特性があったとしても、そのユニットに適した補正係数を与えることで、精度のよい荷重センサを提供できるメリットがある。また、予め2個のセンサ素子12を平面上にレイアウトしてセンサ基体11の筐体を成形することができるので、成形上の難易度は比較的低く、センサ素子11の位置精度も得られやすい。また、成形の工程も、既存のABSスティックセンサと同様となるため、コスト低減にも貢献する。
【0018】
次に、本発明の荷重センサが取付けられたセンサ付きステアリングナックルの第2実施形態について図面を参照しながら説明する。
図5は、本実施形態のセンサ付きステアリングナックルの全体縦断面図である。同図に用いられるハブユニットの構成は、駆動輪に用いられるものであるという点を除いて、前記第1実施形態のハブユニットと同様であるので、同等の構成には同等の符号を付して、その詳細な説明を省略する。
【0019】
図中の符号17は、転舵輪を転舵するために転舵輪用ハブユニットと車体との間に介装されているステアリングナックルである。ステアリングナックル17は、周知のようにタイロッドを介してステアリングギヤ装置に連結され、転舵輪を転舵する。本実施形態では、荷重センサの取付対象車輪が駆動輪であることから、前記第1実施形態のようにハブユニットに荷重センサを取付けると、荷重センサ自体或いはその取付部材などがドライブシャフトのブーツなどと干渉する恐れがある。そこで、本実施形態では、ステアリングナックル17に平坦な座面を形成し、その座面をステアリングナックル側センサ取付部18とした。
【0020】
一方、荷重センサ9のセンサ基体11には、前記第1実施形態の図2のものを用いる。即ち、ハブユニットやステアリングナックルなど、被取付物が異なり、ハブユニット側センサ取付部10とステアリングナックル側センサ取付部18のように被取付物側センサ取付部の形態が異なっても、荷重センサ9のセンサ基体11には共通のものを用いることでセンサ基体11のコストを低廉化することができる。そして、このセンサ基体11に対し、図6に示すように、図示上方向きのフランジ部14をセンサ側取付部として、センサ基体11にオーバーモールドによって形成する。フランジ部14には、当該フランジ部14をステアリングナックル側センサ取付部18に取付けるための取付部材であるボルトのネジ部を挿通する挿通孔15も予め開設されている。このセンサ側取付部は、前記センサ基体11をステアリングナックル側センサ取付部18に取付けるために、当該ステアリングナックル側センサ取付部18に応じた形状にオーバーモールドによって形成されたものである。
【0021】
そして、図5に示すように、センサ基体11にセンサ側取付部であるフランジ部14がオーバーモールドされた荷重センサ9に対し、当該フランジ部14に形成された挿通孔15にボルト16のネジ部を挿通し、そのネジ部をステアリングナックル17に形成されたステアリングナックル側センサ取付部18のネジ孔に螺合し締付けてステアリングナックル17に荷重センサ9を取付ける。荷重センサ9のフランジ部14をステアリングナックル側センサ取付部18に取付ける取付部材としては、その他の周知の取付部材も使用可能である。
【0022】
この荷重センサ9が取付けられたステアリングナックル17でも、前記第1実施形態と同様に、荷重センサ9に異常が生じた場合には、センサ側取付部であるフランジ部14ごとセンサ基体11を交換すればよいので、交換部品のコストを低廉化することができ、無駄も少ない。また、ステアリングナックル17やエンコーダ8、荷重センサ9に夫々固有の特性があったとしても、そのユニットに適した補正係数を与えることで、精度のよい荷重センサを提供できるメリットがある。また、予め2個のセンサ素子12を平面上にレイアウトしてセンサ基体11の筐体を成形することができるので、成形上の難易度は比較的低く、センサ素子11の位置精度も得られやすい。また、成形の工程も、既存のABSスティックセンサと同様となるため、コスト低減にも貢献する。
【符号の説明】
【0023】
1はハブ
2はフランジ
3はスタッドボルト
4は軸受
5は車輪支持部
6はセンサユニット
7はエンコーダ
8はダストカバー
9は荷重センサ
10はハブユニット側センサ取付部(被取付物側センサ取付部)
11はセンサ基体
12はセンサ素子
13はハーネス
14はフランジ部(センサ側取付部)
15は挿通孔
16はボルト
17はステアリングナックル
18はステアリングナックル側センサ取付部(被取付物側センサ取付部)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車軸の車輪取付部の被取付物に予め取付けて使用される荷重センサであって、被取付物に形成された被取付物側センサ取付部と、センサ素子を内装し且つ予め設定された一定の形状に形成されたセンサ基体と、前記被取付物側センサ取付部に取付可能なようにオーバーモールドによって当該被取付物側センサ取付部に応じた形状で前記センサ基体に形成され且つ取付部材を介して前記被取付物側センサ取付部に取付けられるセンサ側取付部とを備えたことを特徴とする荷重センサ。
【請求項2】
前記被取付物がエンコーダのダストカバーであり、当該ダストカバーに予め取付けられたことを特徴とする請求項1に記載の荷重センサ。
【請求項3】
前記被取付物がステアリングナックルであり、当該ステアリングナックルに予め取付けられたことを特徴とする請求項1に記載の荷重センサ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−108025(P2012−108025A)
【公開日】平成24年6月7日(2012.6.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−257715(P2010−257715)
【出願日】平成22年11月18日(2010.11.18)
【出願人】(000004204)日本精工株式会社 (8,378)
【Fターム(参考)】