説明

菌類と植物の関連生産システム

【課題】きのこ類等の菌類の生産と、野菜類等の植物の生産とをコスト的に有利に行うことができる菌類と植物の関連生産システムを提供する。
【解決手段】仕切り2によって上下の室3,4に区画され、下室4に野菜類栽培部5が設けられると共に、上室にきのこ類栽培部6が設けられ、上下の室3,4は、室外においてダクト7で連通され、ファン8を駆動すると、上室3の空気が下室4に送り込まれ、下室4の空気が上室3に送り込まれる空気の循環流れが形成される。下室4内の上部側には野菜類光合成用の光源9が設けられ、仕切り2は、ブラインド型の開閉可能な仕切りからなり、仕切り2が閉じられると、光源9からの光が上室3の菌類に供給されるのが阻止され、仕切り2が開くと、光源9からの光が上室3の菌類に供給される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、菌類と植物の関連生産システムに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、植物としての野菜類と、菌類としての食用きのこ類は、いずれも同じ農産物であるという点で共通しているが、前者は光合成を行うのに対し、後者は光合成を行わないという点で相違しており、そのため、従来は、野菜類は野菜類生産工場で生産し、きのこ類はきのこ類生産工場で生産するというように、別々の工場で生産していた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平9−98665号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記のような生産方法では、野菜類生産工場では、野菜類の栽培のために光合成に必要な二酸化炭素を供給してやらなければならず、また、きのこ類生産工場では、きのこ類の栽培に必要なわずかな光を供給するための専用の照明設備を用意しなければならず、栽培に要するコストが高くついてしまうという問題があった。
【0005】
本発明は、上記のような問題点に鑑み、きのこ類等の菌類の生産と、野菜類等の植物の生産とをコスト的に有利に行うことができる菌類と植物の関連生産システムを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の課題は、仕切りによって上下の室に区画され、下室に植物栽培部が設けられると共に、上室に菌類栽培部が設けられ、
該上下の室は、室外において空気通路で連通され、該空気通路に設けられたファンを駆動することにより、上室の空気が下室に送り込まれ、下室の空気が上室に送り込まれる空気の循環流れが形成されるようになされて、上室の菌類によって生成された二酸化炭素が下室の植物の光合成に使用され、下室の植物の光合成によって生成された酸素が上室の菌類の生育に使用されるようになされており、
下室内の上部側には植物光合成用の光源が設けられると共に、前記仕切りは、ブラインド型の開閉可能な仕切りからなっていて、
該仕切りが閉じられると、光源からの光が上室の菌類に供給されるのが阻止され、該仕切りが開くと、光源からの光が上室の菌類に供給されるようになされていることを特徴とする菌類と植物の関連生産システムによって解決される。
【0007】
このシステムでは、上室の菌類によって生成された二酸化炭素を下室の植物の光合成に使用し、下室の植物の光合成によって生成された酸素を上室の菌類の生育に使用する構成としているので、植物の光合成のためにわざわざ二酸化炭素を用意したり、菌類の生育のためにわざわざ酸素を用意したりする必要がなく、これら菌類と植物の栽培に要するコストを低く抑えることができる。
【0008】
しかも、上下の室を仕切る仕切りはブラインド型の開閉可能な仕切りからなっていて、仕切りを開くと、下室の光源からの光が上室の菌類にも供給されるようになされているので、菌類の生育に必要なわずかな光の供給のために専用の照明設備を用意する必要がなくなり、菌類の栽培に要するコストをより一層低く抑えることができる。
【0009】
第1発明において、前記上室の天井面が光反射面に形成され、前記仕切りが開くと、光源からの光が上室の天井面に反射して菌類に供給されるようになされているとよい(第2発明)。
【0010】
この場合は、下室の光源から発せられる光が仕切りを通じて上室へと送り込まれた後、上室の天井反射面に反射して菌類に供給されるので、菌類の生育に必要な光を菌類に効果的に供給することができる。
【0011】
第2発明において、前記下室の床面が光反射面に形成され、前記仕切りが開くと、下室の床面で反射した光源からの光が、上室の天井面に反射して菌類に供給されるようになされているとよい(第3発明)。
【0012】
この場合は、下室の光源から下方又は下寄りに向けて発せられる光も下室の床面反射面で反射されて上室に送り込まれ、上室の天井反射面に反射して菌類に供給されるので、菌類の生育に必要な光を菌類により一層効果的に供給することができる。
【0013】
第1〜第3発明において、前記仕切りの下面側が光反射面に形成され、仕切りが閉じられると、光源からの光が該光反射面に反射して植物に供給されるようになされているとよい(第4発明)。
【0014】
この場合は、仕切りが閉じられた状態において、光源からの光が仕切りの下面側の光反射面に反射することで、下室の植物に光源の光を効果的に供給することができる。
【0015】
第4発明において、前記仕切りの上面側も光反射面に形成され、仕切りが開くと、光源からの光が該光反射面に反射して上室に供給されるようになされているとよい(第5発明)。
【0016】
この場合は、仕切りが開いた状態において、光源からの光が仕切りの反射面に反射することで、上室に光源の光を効果的に供給することができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明の菌類と植物の関連生産システムは、以上のとおりのものであるから、きのこ類等の菌類の生産と、野菜類等の植物の生産とをコスト的に有利に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】図(イ)は実施形態の関連生産システムを示す断面正面図、図(ロ)は図(イ)のI−I線矢視図、図(ハ)は図(イ)のII−II線矢視図である。
【図2】図(イ)はファン作動状態を示す断面正面図、図(ロ)は仕切りが閉じた状態での光の供給状態を示す断面正面図、図(ハ)は仕切りが開いた状態での光の供給状態を示す断面正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
次に、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
【0020】
図1(イ)に示す実施形態のシステムにおいて、1は箱体であり、該箱体1は、その内部が仕切り2によって、上室3と下室4とに区画されており、下室4には植物としての野菜類の栽培部5が設けられると共に、上室3には菌類としての食用きのこ類の栽培部6…がプランター式で設けられる。
【0021】
野菜類栽培部5は水耕栽培ベッドなどで構成されており、きのこ類栽培部6はプランターなどで構成されており、きのこ類栽培部6は図1(ロ)に示すように左右方向に間隔をおくように設置され、野菜類栽培部5は図1(ハ)に示すように、箱体1の前後の壁から間隔をおくよう設けられている。
【0022】
そして、上下の室3,4は、これら室の外において通気通路としてのダクト7,7で連通され、該ダクト7に設けられたファン8を駆動することにより、図2(イ)に示すように、上室3の空気が下室4に送り込まれ、下室4の空気が上室3に送り込まれる空気の循環流れが形成され、上室3のきのこ類によって生成された二酸化炭素が下室4の野菜類の光合成に使用され、下室4の野菜類の光合成によって生成された酸素が上室3の菌類の生育に使用されるようになされている。
【0023】
また、下室4内の上部側には、図1(イ)に示すように、光合成のための蛍光灯やLEDなどからなる光源9が設けられ、仕切り2は、図1(ロ)に示すように、ブラインド型の開閉可能な仕切りからなっていて、上室3の天井面10は光反射面に形成され、下室4の床面11は高効率の光反射面に形成され、仕切り2の上下両面12,13は高効率の光反射面に形成されていて、
仕切り2が閉じられると、図2(ロ)に示すように、光源9からの光は、直接、野菜類に供給され、また、仕切り2の下面反射面12に反射して野菜類に供給され、更に、下室4の床面光反射面11に反射し、仕切り2の下面反射面12に反射して野菜類に供給され、
仕切り2が開くと、図2(ハ)に示すように、光源9からの光は、上室3に対し、仕切り2を通じて、上室3の天井反射面10に反射してきのこ類に供給され、また、下室4の床面反射面11に反射した光が、仕切り2を通じて、上室3の天井反射面10に反射してきのこ類に供給され、更に、下室4からの光が仕切り2の両反射面12,13に反射して上室3に供給されてきのこ類に供給されるようになされている。
【0024】
なお、仕切り2の開閉は、マニュアル操作で行うようになされていてもよいし、自動制御により、特定のタイミングで自動で行われるようになされていてもよい。
【0025】
上記のシステムでは、仕切り2を閉じた状態で光源9を点灯し、ファン8を駆動すると、上室3のきのこ類によって生成された二酸化炭素が下室4に送り込まれて野菜類の光合成に使用され、下室4の野菜類の光合成によって生成された酸素が上室3に送り込まれて上室3のきのこ類の生育に使用されるようになされているので、野菜類の光合成のためにわざわざ二酸化炭素を用意したり、きのこ類の生育のためにわざわざ酸素を用意したりする必要がなく、これらきのこ類と野菜類の栽培に要するコストを低く抑えることができる。
【0026】
しかも、下室4の光源9を点灯した状態で仕切り2を開くと、下室4の光源9からの光が上室3のきのこ類にも供給されるようになされているので、きのこ類の生育に必要なわずかな光の供給のために専用の照明設備を用意する必要がなくなり、きのこ類の栽培に要するコストをより一層低く抑えることができる。
【0027】
特に、上下の室3,4を仕切る仕切り2をブラインド型の開閉可能な仕切り2で構成し、それによって、下室4の植物光合成用の光源9からの光が上室3のきのこ類に供給される構成としているので、植物光合成用の光源9を、簡素な構造でかつ効果的に、上室3のきのこ類の光源として機能させることができる。
【0028】
加えて、種々の反射面10,11,12,13を備えた構造としているので、野菜類やきのこ類に対する光源9の光の供給を効果的なものにすることができる。
【0029】
以上に、本発明の実施形態を示したが、本発明はこれに限られるものではなく、発明思想を逸脱しない範囲で各種の変更が可能である。例えば、上記の実施形態では、食用きのこ類と野菜類、即ち農産物を生産の対象とした場合を示したが、農産物に限らず、各種菌類と各種植物の生産に広く用いることができるものである。
【符号の説明】
【0030】
2…仕切り
3…上室
4…下室
5…野菜類栽培部(植物栽培部)
6…きのこ類栽培部(菌類栽培部)
7…ダクト(空気通路)
8…ファン
9…光源
10…反射面
11…反射面
12…反射面
13…反射面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
仕切りによって上下の室に区画され、下室に植物栽培部が設けられると共に、上室に菌類栽培部が設けられ、
該上下の室は、室外において空気通路で連通され、該空気通路に設けられたファンを駆動することにより、上室の空気が下室に送り込まれ、下室の空気が上室に送り込まれる空気の循環流れが形成されるようになされて、上室の菌類によって生成された二酸化炭素が下室の植物の光合成に使用され、下室の植物の光合成によって生成された酸素が上室の菌類の生育に使用されるようになされており、
下室内の上部側には植物光合成用の光源が設けられると共に、前記仕切りは、ブラインド型の開閉可能な仕切りからなっていて、
該仕切りが閉じられると、光源からの光が上室の菌類に供給されるのが阻止され、該仕切りが開くと、光源からの光が上室の菌類に供給されるようになされていることを特徴とする菌類と植物の関連生産システム。
【請求項2】
前記上室の天井面が光反射面に形成され、前記仕切りが開くと、光源からの光が上室の天井面に反射して菌類に供給されるようになされている請求項1に記載の菌類と植物の関連生産システム。
【請求項3】
前記下室の床面が光反射面に形成され、前記仕切りが開くと、下室の床面で反射した光源からの光が、上室の天井面に反射して菌類に供給されるようになされている請求項2に記載の菌類と植物の関連生産システム。
【請求項4】
前記仕切りの下面側が光反射面に形成され、仕切りが閉じられると、光源からの光が該光反射面に反射して植物に供給されるようになされている請求項1乃至3のいずれか一に記載の菌類と植物の関連生産システム。
【請求項5】
前記仕切りの上面側も光反射面に形成され、仕切りが開くと、光源からの光が該光反射面に反射して上室に供給されるようになされている請求項4に記載の菌類と植物の関連生産システム。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2011−10623(P2011−10623A)
【公開日】平成23年1月20日(2011.1.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−159333(P2009−159333)
【出願日】平成21年7月3日(2009.7.3)
【出願人】(390037154)大和ハウス工業株式会社 (946)
【Fターム(参考)】