説明

落果防止兼用果実掛袋

【課題】袋の片側に設けた止金封入部で、袋の口元を果軸に固定し、且つ、強風などによる落下防止のための袋の枝への固定が可能な製造コストの安価な落果防止兼用果実掛袋の提供。
【解決手段】袋本体1と、袋本体1の側部に設けられた止金封入部2と、止金封入部2の全長に渡って封入された止金3とを備えた落果防止兼用果実掛袋であって、止金封入部2は袋本体1よりも所定長さ上方に配置されており、且つ、袋本体1に対して上部接続部4と下部接続部5により接続され、止金封入部2の長さが袋の縦方向長の60パーセント以上100パーセント以下を有する落果防止兼用果実掛袋。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、袋掛けをして栽培する果実に関し、台風など強風により落下する被害を防止することに適した落果防止兼用果実掛袋に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、梨、ブドウ等の果実栽培において、果実を病害や虫害、風雨、散布薬剤による汚れなどから保護する為に一重または二重または三重袋が果実に掛けて使われている。このように果実掛袋を掛けた果実は袋を掛けたまま或いは収穫直前に除袋して、果実の軸を一つ一つ切り取りまたはもぎ取ったりして収穫している。
【0003】
果実を被袋している期間、台風などの強風が吹いた時に果実が袋と共に果軸から取れて地上に落下してしまい、果実が未成熟のまま損傷したり、収穫直前の商品価値のある果実が減ってしまうという問題が発生していた。
【0004】
果実の落下を防止する為に、果実掛袋に付属の止金で袋の口元を果軸に固定すると共に、別の針金や紐を用いて果実を近傍の枝に固定するという栽培方法があるが、別の針金や紐を取り出し、改めて持ち直して固定するという工数では農家の手間が大変である。
また、これまでにも果実の落果防止を目的とした果実掛袋は、下に示す通りいくつか開示されている。
【特許文献1】実開平5−70257(落下防止果実袋)
特許文献1に開示された考案は、袋の片端部分に針金の緊縛帯を縦または横位置に貼着した果実用の掛け袋において、緊縛帯を利用した袋口を緊縛すると同時に、緊縛帯の一端を枝に巻き付けて固定させる果実用掛袋であって、テープで長い緊縛帯の一箇所のみを固定しているだけである。そのため、袋掛け時袋口を緊縛した後、残りの貼着下部の針金を枝方向に折り曲げて枝に巻き付けて袋を固定する際にテープの貼着部が剥離し易い。また、緊縛帯の両端が固定されていないので、テープの貼着部を支点として長い針金は動き易いので、製袋工程上、荷造包装工程上針金が脱落したり、引っ掛かったりすることがあった。
【特許文献2】実開平6−3054(落果防止を兼ねた果実保護袋)
特許文献2に開示された考案は、紙製の袋本体と同袋本体の上部に端部を固着した複数のワイヤとからなる落果防止を兼ねた果実保護袋であり、複数のワイヤ(止金)を必要とするため製造コストが高くつくことや、また、従来の構成と比較するとワイヤが袋本体よりも大幅に伸び出した構造であるために生産設備の大幅な改造が必要であった。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記各特許文献等の従来の果実掛袋は確かに果実を雨水などから保護し、同時に果実の落下を防止するというものではある。しかし上記に示した課題が残されていた。そこで、本発明は、これまでの果実掛袋の形状を保ちながらも、簡単な構成により落下防止機能を付加することにより、製造工程上効率をよくし、また袋かけ作業を大幅に変更させないことで袋かけ作業の効率を向上させた落果防止兼用果実掛袋を提供することを目的としたものである。
【課題を解決する為の手段】
【0006】
本発明の落果防止兼用果実掛袋は、袋本体と当該袋本体の側部に設けられた止金封入部と、該止金封入部の全長に渡って封入された止金とを備えた落果防止兼用果実掛袋であって、前記止金封入部は前記袋本体よりも所定長さ上方に配置されており、且つ、袋本体に対して上部接続部と下部接続部により接続されていることを特徴とする。
【0007】
さらに、本発明の落果防止兼用果実掛袋は、一重、または二重または三重袋の果実掛袋において、袋を果軸に巻きつけるためと、枝に袋を固定するための止金を袋の片側に封入しており、前記止金封入部の長さが袋の縦方向長の60パーセント以上100パーセント以下を有することを特徴とする。
【0008】
さらに、本発明の落果防止兼用果実掛袋は、上記止金封入部分と袋本体との間の接続部である上部接続部の長さをaとすると、a=5〜50mmであり、下部接続部の長さをbとすると、b=10mm以下の接続部を設けるために、上部接続部と下部接続部の間は切込またはミシン目を設けたことを特徴とする。
【0009】
本発明の落果防止兼用果実掛袋は上記止金の近くに切込又はミシン目を設け、また、止金封入部分は袋本体の開口上縁部から縦方向に飛び出しており、外観は従来と同じ果実掛袋の形状となっている。止金の上方向は従来の果実掛袋と同じく果軸に巻きつける。上部接続部は、袋本体と止金封入部とを一体化するための部分である。また下方止金部分は袋本体から切り離して、止金を上部接続部付近で折り曲げて果実近くの枝に巻き付ける形状を特長としている。
【0010】
本発明の落果防止兼用果実掛袋は袋本体と、上記止金を封入した部分との接続部が2ヶ所以上あるので、製造工程上長い止金がばらつくことなく効率よく袋を揃える事が可能となることを特徴とする。また本発明の落果防止兼用果実掛袋を使用時、袋の束から一枚ずつ取り出す際に止金が他の袋と絡まり止金を脱落させることなく取り出せる形状を特徴とする。
【0011】
本発明の落果防止兼用果実掛袋は袋本体の上記止金を封入した、切込もしくはミシン目の内側部分全体に縦方向に糊付けされて、袋本体が糊でしっかりと閉じている形状を特長とする。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
本発明の最良の実施形態は、紙製の果実掛袋に特に適したものであり、1枚、または2枚または3枚の袋素材を折り曲げて作った袋の片側の袋素材に止金を封入する。その止金の長さは、袋を果軸に巻き付けまた同時に果実の近くの枝に固定するため、袋の縦方向長と同じ長さとする。また止金部分を袋本体より袋本体の開口上縁部から縦方向に突出させ、袋本体の上辺部分は切込を縦方向に適度に入れ、接続部を数センチ設け、その下方に止金の長さに応じた切込を入れ、止金の最下部に更に接続部を設ける。更に袋本体に切込に沿うように縦方向の糊付けを行う。以上の形状からなる果実掛袋である。
【0013】
以下、本発明の具体的実施例について、図面を参照しながら説明する。
【実施例1】
【0014】
本発明の落果防止兼用果実掛袋は図1に示すように、果実掛袋本体1の片側に袋の縦方向長と同じ長さの止金3を封入する。さらに、上部接続部4(長さをaとすると、a=5〜50mm)と下部接続部5(長さをbとすると、b=10mm以下)を残して上部切込部6と、上部接続部4と下部接続部5の間に下部切込部7を設けて止金封入部2を形成する。さらに果実掛袋本体1側に切込部6、7に沿うように縦方向のほぼ全袋長に渡って接着部8を設けて袋本体をしっかりと閉じる。
【実施例2】
【0015】
図2は本発明果実掛袋の別の実施例を示している。すなわち、本実施例の果実掛袋の止金封入部2の長さが、袋本体1の縦方向長の60パーセントになるように、止金封入部2の下端に止金3とほぼ直角に下端切込9を設けたものである。止金封入部2は、実施例1と同様に上部接続部4および下部接続部5によって果実袋本体1と接続している。この場合は、落果防止兼用果実掛袋のサイズが比較的大きいので、この長さの止金でも十分に落果防止機能を付与することが可能である。
【0016】
果実掛袋本体1を果実及び枝に掛ける作業に移る前の状態が図3である。止金封入部2のうち、上部接続部4より上部10を果軸に巻き付け、袋を固定する。この方法は従来から農家が果実掛袋を使用する作業と同じであり、作業が慣れた効率の良い袋掛け方法を実現できる。このとき、上部接続部4の長さaが5mmに満たないと、果実掛袋本体1と、止金封入部2が簡単に分離してしまう恐れがあり、効率のよい袋掛け作業が出来ない。また、止金封入部2のうち、下部接続部5を果実掛袋本体1から切り離して、果実の近くの枝に巻き付けるものであるが、下部接続部5を切り離すときに長さbが10mmを超えると、切り離し作業が難しくなる。さらに、上部接続部4の長さaが50mmを超えると、袋を枝に巻きつけるために利用される止金3の実質的な長さが不足して袋掛け作業が困難となり、止金が果実近くの枝に固定できない。
【0017】
果実掛袋本体1を果実13及び枝12に掛けている状態が図4である。止金上部10で果実袋本体1と果軸14とを固定する。また止金下部11は枝12方向に折り曲げて枝12に巻き付ける。上部接続部4で止金下部11と果実掛袋本体1とが接続している。これにより、果実13と枝12を果軸14と止金下部11との2箇所で支えることができる。万一果軸14と枝12が台風などの強風で揺すられて果実13が枝12からとれて落下しても、袋本体1の中に留まり地面まで落ちてしまうことはないので、果実に損傷を与えることはない。また、本来の果実を病害や虫害、風雨、散布薬剤による汚れなどから保護する為の役割も果たしている。
【0018】
果実掛袋本体1を製造する概略図が図5である。止金3が糊と共に流れてきて、果実掛袋本体1の端部に封入される。その後、袋に上部切込6、下部切込7を入れて上部接続部4、下部接続部5を設ける。上部接続部4と下部接続部5があるため、止金封入部2と袋本体1とが常に一体である。このことで止金をテープなどで貼着する場合と違い、本発明の果実掛袋は止金の脱落がない。製袋工程の最後に袋を揃える工程でも、容易に折り曲げられて出てくる紙と、折り曲がりがない止金が揃わない状態で出てくることもない。以上から本発明の落果防止兼用果実掛袋は効率よく製袋できる。
【発明の効果】
【0019】
以上より袋かけ作業も製造コストも従来と変わらない、落果防止機能を付加した果実掛袋の提供が可能となる。そして本発明の落果防止兼用果実掛袋を使用することで、従来の風雨、散布薬剤による汚れから果実を保護できる効果に加え、台風などの強風が吹いた時にも果実が袋と共に枝から取れる被害が少なくなる。これによって果実栽培者はより多くの商品価値のある果実を収穫、出荷できる
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施例1を示す果実掛袋の正面図
【図2】本発明の実施例2を示す果実掛袋の正面図
【図3】本発明の実施例1の果実掛袋を果実及び枝に掛ける前の状態を示す図
【図4】本発明の実施例1の果実掛袋を果実及び枝に掛けている状態を示す図
【図5】本発明の実施例1の果実掛袋の製造工程図(部分)
【符号の説明】
1 果実掛袋本体
2 止金封入部
3 止金
4 上部接続部
5 下部接続部
6 切込部(上部)
7 切込部(下部)
8 接着部
9 下端切込
10 止金上部
11 止金下部
12 枝
13 果実
14 果軸
a 上部接続部の長さ
b 下部接続部の長さ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
袋本体と、当該袋本体の側部に設けられた止金封入部と、該止金封入部の全長に渡って封入された止金とを備えた落果防止兼用果実掛袋であって、前記止金封入部は前記袋本体よりも所定長さ上方に配置されており、且つ、袋本体に対して上部接続部と下部接続部により接続されていることを特徴とする落果防止兼用果実掛袋。
【請求項2】
前記止金封入部の長さが袋の縦方向長の60パーセント以上100パーセント以下を有することを特徴とする請求項1記載の落果防止兼用果実掛袋。
【請求項3】
上記止金封入部分と袋本体との間の接続部である上部接続部の長さをaとすると、a=5〜50mmであり、下部接続部の長さをbとすると、b=10mm以下の接続部を設けるために、上部接続部と下部接続部の間は切込またはミシン目を設けたことを特徴とする請求項1または請求項2記載の落果防止兼用果実掛袋。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2006−262883(P2006−262883A)
【公開日】平成18年10月5日(2006.10.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−122907(P2005−122907)
【出願日】平成17年3月24日(2005.3.24)
【出願人】(594099820)柴田屋加工紙株式会社 (4)
【Fターム(参考)】