説明

蒸気混合物のガス分離方法およびガス分離装置

【課題】 この発明は、蒸気混合物を含むガス混合物をガス分離膜モジュールを用いて分離回収する方法及び装置において、分離膜モジュールの供給側圧力を安定化することを特徴とする方法及び装置を提供することを目的とする。
【解決手段】 蒸気混合物を含むガス混合物をガス分離膜モジュールの供給側へ供給し、蒸気混合物を含むガス混合物中の少なくとも第1蒸気を選択的に透過させて、第1蒸気が高濃度化した透過流と第1蒸気が低濃度化した非透過流とに分離回収するガス分離方法において、ガス分離膜モジュールからの非透過流が凝縮器を介して調圧槽に導かれ、且つ前記調圧槽は雰囲気ガスの出し入れによる圧力調整手段を備えており、前記圧力調整手段によって分離膜モジュールの供給側圧力を安定化することを特徴とするガス分離方法およびガス分離装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、蒸気混合物を含むガス混合物をガス分離膜モジュールの供給側へ供給し、蒸気混合物を含むガス混合物中の少なくとも第1蒸気を選択的に透過させて、第1蒸気が高濃度化した透過流と第1蒸気が低濃度化した非透過流とに分離回収するガス分離方法であって、ガス分離膜モジュールからの非透過流が凝縮器を介して調圧槽に導入され、且つ前記調圧槽は雰囲気ガスの出し入れによる圧力調整手段を備えており、前記圧力調整手段によって分離膜モジュールの供給側圧力を安定化することを特徴とするガス分離方法およびそのガス分離装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、有機物を含有する水溶液を蒸発器で気化させて有機物蒸気と水蒸気とを含むガス混合物を生成させ、前記ガス混合物をガス分離膜と接触させて水蒸気を選択的に透過させることによって有機物を脱水濃縮し、次いで脱水濃縮された有機蒸気は冷却凝縮して製品タンクに回収する方法が開示されている。
このように、液体混合物を蒸発器で気化させて蒸気混合物を含むガス混合物としてガス分離膜に供給し、蒸気混合物の第1蒸気を選択的に透過させて第1蒸気が高濃度化した透過流と第1蒸気が低濃度化した非透過流とに分離し、次いで第1蒸気が低濃度化した非透過流を冷却凝縮して液体として回収する場合には、供給する液体や凝集して回収する液体の系内への出し入れ及び気化工程や凝縮工程の不安定性のために圧力変動が避け難いので、ガス分離膜の供給側(非透過側)の圧力を安定化させることが難しい。ガス分離膜における特定成分の透過速度は分離膜を挟む両側のガス成分の分圧差に依存するので、ガス分離膜の供給側(非透過側)の圧力変動が生じるとその都度透過速度が変動して、高精度で分離回収することが困難になる。このため、圧力変動を抑制した分離回収方法が求められてきた。
【0003】
【特許文献1】特開平5−177111号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
この発明は、蒸気混合物を含むガス混合物をガス分離膜モジュールの供給側へ供給し、蒸気混合物を含むガス混合物中の少なくとも第1蒸気を選択的に透過させて、第1蒸気が高濃度化した透過流と第1蒸気が低濃度化した非透過流とに分離回収するガス分離方法であって、ガス分離膜モジュールからの非透過流が凝縮器を介して調圧槽に導入され、且つ前記調圧槽は雰囲気ガスの出し入れによる圧力調整手段を備えており、前記圧力調整手段によって分離膜モジュールの供給側圧力を安定化することを特徴とするガス分離方法およびそのガス分離装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
この発明は、蒸気混合物を含むガス混合物をガス分離膜モジュールの供給側へ供給し、蒸気混合物を含むガス混合物中の少なくとも第1蒸気を選択的に透過させて、第1蒸気が高濃度化した透過流と第1蒸気が低濃度化した非透過流とに分離回収するガス分離方法において、ガス分離膜モジュールからの非透過流が凝縮器を介して調圧槽に導かれ、且つ前記調圧槽は雰囲気ガスの出し入れによる圧力調整手段を備えており、前記圧力調整手段によって分離膜モジュールの供給側圧力を安定化することを特徴とするガス分離方法に関する。
さらに、この発明は、蒸気混合物を含むガス混合物をガス分離膜モジュールの供給側へ供給し、蒸気混合物を含むガス混合物中の少なくとも第1蒸気を選択的に透過させて、第1蒸気が高濃度化した透過流と第1蒸気が低濃度化した非透過流とに分離回収するガス分離装置において、ガス分離膜モジュールからの非透過流が凝縮器を介して調圧槽に導かれ、且つ前記調圧槽は雰囲気ガスの出し入れによる圧力調整手段を備えており、前記圧力調整手段によって分離膜モジュールの供給側圧力を安定化するように構成されたことを特徴とするガス分離装置に関する。
【発明の効果】
【0006】
この発明においては、液体混合物を蒸発器で気化させて蒸気混合物を含むガス混合物とし、前記ガス混合物をガス分離膜に供給し、蒸気混合物の第1蒸気を選択的に透過させて第1蒸気が高濃度化した透過流と第1蒸気が低濃度化した非透過流とに分離し、次いで第1蒸気が低濃度化した非透過流を冷却凝縮して液体として回収する場合でも、より簡便な装置で圧力変動を容易に抑制することができ、分離膜モジュールの供給側圧力を安定化してガス分離回収をおこなうことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
図1はこの発明のガス分離方法の概要を説明するためのフロー図である。以下図1に基づき説明する。
図1において、液体混合物がヒーター3を底部に備えた蒸発器2へ供給される。蒸発器2ではヒーター3によって液体混合物が加熱されて蒸気混合物を発生する。前記蒸気混合物は雰囲気ガスと共にガス分離膜モジュール5へ供給される。供給された蒸気混合物と雰囲気ガスとからなるガス混合物はガス分離膜モジュール5の供給側(非透過側)をガス分離膜と接触しながら流れ、その間に第1蒸気が選択的に分離膜を透過し、第1蒸気が高濃度化した透過流6と第1蒸気が低濃度化した非透過流7とに分離する。そして前記透過流6と非透過流7はそれぞれガス分離膜モジュール5から排出する。ガス分離膜モジュール5から排出した非透過流7は凝縮器8によって冷却凝縮されて蒸気成分が液化され、液体と雰囲気ガスになる。次いでこの液体と雰囲気ガスは調圧槽9へ導かれる。液体は調圧槽9に溜められ、必要に応じて調圧槽9から排出される。この発明において調圧槽9は雰囲気ガスの出し入れによる圧力調整手段10(破線で囲んでいる)を備えている。この圧力調整手段10は、図1の場合には、雰囲気ガスを供給及び排出する導管11に圧力を調製するための圧力調整弁12と背圧調整弁13とを配置し、圧力調整弁12と背圧調整弁13との間の導管から枝分かれした導管14によって調圧槽9と連通するように構成されている。
【0008】
この発明のガス分離方法では、供給する液体や冷却凝縮して回収する液体の出し入れ及び気化工程や冷却凝縮工程での不安定性のためにガス分離膜モジュールの供給側(非透過側)の圧力が影響を受けた場合でも、圧力調整手段10によって圧力変動が抑制されて供給側(非透過側)の圧力は安定化される。具体的には、分離膜モジュールの供給側(非透過側)の圧力が所定圧よりも低下すると調圧槽9の圧力も低下するが、圧力調整弁12によって加圧されて所定圧に維持され、一方分離膜モジュールの供給側(非透過側)の圧力が所定圧よりも増大すると調圧槽9の圧力も増大するが、背圧調整弁13によって減圧されて所定圧に維持される。
【0009】
すなわち、この発明では、ガス分離膜モジュールからの非透過流(蒸気を含有するガス混合物)が凝縮器で蒸気成分が液化されて調圧槽へ導かれ、調圧槽に溜められ且つ必要に応じて調圧槽から排出される一連の流れにおいて、その流れから枝分れした雰囲気ガスの出し入れによる圧力調整手段によって、ガス分離膜モジュールの供給側(非透過側)の圧力変動を抑制して安定化させている。
【0010】
この発明のガス分離方法では、液体混合物は断続的又は連続的に蒸発器へ供給される。液体混合物は蒸発器のヒーターによって加熱・蒸気化され、雰囲気ガスと混合してガス混合物になる。蒸気化は一定量の蒸気混合物が分離膜モジュールへ供給されるように液体混合液の蒸発器の液体混合物量や蒸発器の加熱の程度を制御することが好適である。通常は、蒸発器内の液体混合物量が一定に保たれるように蒸発器の液面コントローラによって送液ポンプを制御し、且つ蒸発器の蒸発量を一定にするために温度コントローラによってヒーター温度を制御する。
【0011】
この発明のガス分離方法では、蒸気混合物を含むガス混合物は、ガス分離膜モジュールへ供給する前に、加熱手段(過熱器)でスーパーヒート(過熱)することが好ましい。スーパーヒートはガス分離膜モジュールで処理中に蒸気混合物が凝縮することを防止するためであり、蒸発器で蒸気化した蒸気温度よりも2〜3℃程度以上好ましくは5℃以上高い温度になるようにするのが好適である。スーパーヒートする場合はガス混合物の温度を一定にするためにスーパーヒート後のガス混合物の温度を測定して過熱器を制御することが好適である。
【0012】
この発明のガス分離方法では、ガス分離膜モジュールへ供給する蒸気混合物と雰囲気ガスを含むガス混合物の温度と圧力は、蒸気の種類と処理量などによって決まるが、通常は50〜250℃好ましくは80〜200℃特に80〜150℃で、0.01〜1MPa(絶対圧)好ましくは大気圧〜0.6MPa(絶対圧)である。また、ガス分離膜モジュールは供給されるガス混合物の温度が保たれるように、同程度の温度に加熱されることが好適である。ガス分離膜モジュールや凝縮器に至る配管などは、凝縮器前で凝縮が起こらないように断熱材等で保温するのが好適である。
【0013】
この発明のガス分離方法では、ガス分離膜モジュールの非透過側から得られる非透過流は、第1蒸気がガス分離膜を選択的に透過した結果第1蒸気が低濃度化した(第2蒸気が高濃度化した)蒸気混合物を含むガス混合物になっている。このガス混合物は冷却機能を備えた凝縮器に導入されて、蒸気成分が液化されて調圧槽へ送られる。この分離回収した液体は第1蒸気成分が低濃度化した(第2蒸気成分が高濃度化した)液体混合物であり、調圧槽で溜められるか、又は更に調圧槽と連通した貯蔵槽へ送られて溜められる。調圧槽又は貯蔵槽へ液体混合物が溜まる工程では、調圧槽又は貯蔵槽と連通したガス分離膜モジュールの供給側(非透過側)の空間は、液体量の増加のために空間の体積が減少するから、圧力は増大するが、圧力調整手段によって(図1では、閉じていた背圧調整弁13が開いて)、圧力が一定に保たれる。また、調圧槽又は貯蔵槽に所定量の液体混合物が溜まると、液体混合部は調圧槽又は貯蔵槽から抜き出される。この工程では、調圧槽又は貯蔵槽と連通しているガス分離膜モジュールの供給側(非透過側)の空間は、液体量が減って空間の体積が増加するから、圧力は減少するが、圧力調整手段によって(図1では、閉じていた圧力調整弁12が開いて)、圧力が一定に保たれる。
【0014】
この発明のガス分離方法では、ガス分離膜モジュールの透過側は、エジェクターや真空ポンプによって0.01〜70kPa(絶対圧)程度特に5〜70kPa(絶対圧)程度の減圧にすること、及び/又は透過ガスを分離膜の透過側の空間から掃引するための掃引ガスを流通することが好適である。さらに、ガス分離膜モジュールからの透過流が凝縮器を介して別の調圧槽に接続され、且つ前記調圧槽は圧力調整手段によって分離膜モジュールの透過側圧力を安定化しても構わない。ガス分離膜モジュールの透過側から得られる第1蒸気が高濃度化した透過流は、冷却機能を備えた凝縮器によって液化されて、調圧槽又は貯蔵槽に溜められることが好適である。
【0015】
前記掃引ガスは、第1蒸気を含有しないガスであれば、いずれのガスでも使用することができ、例えばガス分離膜モジュールの非透過側から得られる第1蒸気が低濃度化したガス混合物の一部を循環して使用することもできるが、空気、又は窒素ガスやアルゴンガスなどの不活性ガスを好適に用いることができる。また、掃引ガスは分離膜の供給側(非透過側)のガス流に対して向流に流通させることが好適である。
【0016】
この発明において、前記圧力調整手段は雰囲気ガスの出し入れによって圧力を調整するもので、圧力調整弁と背圧調整弁とを配置し、圧力調整弁と背圧調整弁との間から導管によって圧力を調整すべき空間に連通させたものが好適であるが、その他の背圧調節機能を備えた調圧弁や電子調圧器で調整しても構わない。このような圧力調整手段は、簡便な装置であるが、非透過側の圧力を高精度で調整できる。
【0017】
この発明において、雰囲気ガスは圧力を調節するために分離装置外から必要に応じて分離装置内へ出し入れするものである。あらかじめ所定の圧力以上に調圧される。凝縮器で凝縮しない沸点を有し且つ分離対象の有機蒸気に対して不活性なガスが好適であって、蒸発器内の雰囲気ガスと同じガスでよく、例えば空気、又は窒素ガスやアルゴンガスなどの不活性ガスを好適に挙げることができる。
【0018】
この発明において、蒸気とは蒸気相で存在し得るものであって、1気圧、−100℃で液体のもの、好ましくは1気圧、−50℃で液体のもの、更に1気圧、10℃で液体のものが加熱などによって沸点以上になって気化し蒸気相になったものを意味する。特に限定されないが、例えば、水、フレオンなどのクロロフルオロカーボン類、六フッ化エタンなどのパーフルオロ化合物類、塩化メチレン、クロロベンゼンなどのハロゲン化炭化水素類、ベンゼン、トルエン、シクロヘキサンなどの非ハロゲン化炭化水素類、メタノール、イソプロパノールなどのアルコール類、アセトンなどのケトン類、酢酸エチル、MEKなどのエステル類、フェノール、クレゾールなどのフェノール類、ギ酸、酢酸などの有機酸類、トリエチルアミン、ピリジンなどのアミン類、アセトニロリル、ジメチルホルムアミド、N−メチル−2−ピロリドンなどの有機溶媒などを好適に挙げることができる。
【0019】
蒸気混合物は、化学工業分野や食品分野や半導体分野などの、例えば化学反応プロセス、蒸留プロセス、醗酵プロセス、洗浄プロセスなどの工業的プロセスから供給される。これらの蒸気混合物はガス分離膜を用いないで分離精製できる場合もあるが、蒸気混合物を構成する各成分の沸点が近い場合や共沸性を有する場合はガス分離膜による方法が好適に採用される。分離精製された蒸気成分は通常再利用するのが目的であるから高純度を要求される。従って、ガス分離膜で分離精製するときには、特定の高純度で分離回収されるように分離工程での圧力の安定化が重要になる。さらに、このような分離精製工程では微量な不純物の混入を防ぐことを要求される場合がある。圧力調整手段を蒸発器からガス分離膜を経て精製液槽までの一連の流路に挿入すると圧力調整手段の駆動部などから不純物が混入することを防ぎきれない。この発明のように、ガス分離膜の後流側だけでしかも枝分れした部分で圧力調整するように構成すると、駆動部からの不純物の混入は極力排除できるので好適である。
【0020】
この発明において、ガス分離膜モジュールは、用いられる条件下で蒸気混合物のいずれかの成分を選択的に透過できるガス分離膜を、ガス供給口、透過ガス排出口、非透過ガス排出口を備えた容器内にガス分離膜の供給側(非透過側)と透過側の空間が隔絶するようにして装着されたものを好適に用いることができる。
【0021】
ガス分離膜は、平膜などでもよいが、厚みが薄く径が小さい中空糸膜が、装置が小型化でき高膜面積になるので分離効率がよく経済的であるので好適である。また、ガス分離膜は、均質性でもよく、複合膜や非対称膜などの不均一性でもよく、また微多孔性でも非多孔性でもよい。前記中空糸膜の膜厚は10〜500μmで外径は50〜2000μmのものを好適に挙げることができる。更に、この発明のガス分離膜は、蒸気混合物と化学反応することがなく、又蒸気混合物によって分離性能が低下しないガス分離膜であることが好適である。ガス分離膜は、例えばポリイミド、ポリエーテルイミド、ポリアミド、ポリアミドイミド、ポリスルホン、ポリカーボネート、ポリ(ホスファゼン)、フルオロカーボン重合体、シリコーン樹脂、セルロース系ポリマーなどのポリマー材料、ゼオライトなどのセラミックス材料などで形成されるガス分離膜を用いたものを挙げることができるが、特にポリイミドやセラミックス材料から形成されたものが、耐熱性や耐溶剤性が優れるので好適である。
【0022】
中空糸膜を用いた中空糸ガス分離膜モジュールは、中空糸膜の多数本(例えば、数百本から数十万本)を集束して中空糸束とし、その中空糸束の少なくとも一方の端部をエポキシ樹脂のような硬化性樹脂やポリアミド樹脂のような熱可塑性樹脂などで前記端部において中空糸膜が開口状態となるように固着して中空糸分離膜エレメントを構成し、更に単数個又は複数個の前記中空糸エレメントを、少なくともガス供給口、透過ガス排出口、及び非透過ガス排出口を有する容器内に、中空糸の内側へ通じる空間と中空糸の外側へ通じる空間が隔絶するように装着して構成されている。
この発明では、中空糸ガス分離膜モジュールは中空フィードタイプのもの、すなわち中空糸分離膜の中空糸内空間を供給側(非透過側)とし中空糸分離膜の外側空間を透過側とするものが好適に用いられる。
【0023】
この発明のガス分離装置は、少なくとも蒸発器と分離膜モジュールと凝縮器と調圧槽とを備え、前記分離膜モジュールの非透過ガス排出口が凝縮器を介して調圧槽と接続し且つ前記調圧槽が雰囲気ガスの出し入れによる圧力調製手段を備えており、前記雰囲気ガスの出し入れによる圧力調製手段を備えた調圧槽によって分離膜モジュールの供給側圧力を安定化するように構成されたことを特徴とするガス分離装置である。
【0024】
この発明のガス分離装置の一つの実施態様は、例えば図2の概略のフロー図ように構成されている。図2において、原液槽20の液体は送液ポンプ21によって、ヒーター22を有する蒸発器23へ送付される。24は温度コントローラ、25は液面コントローラであり、蒸発器23内の液量と温度は温度コントローラ24や液面コントローラ25によって送液ポンプ21やヒーター22が制御されて所定の値に維持される。蒸発器23で発生した蒸気混合物を含む混合ガスは過熱器26でオーバーヒートされた後でガス分離膜モジュール29へ供給される。このガス混合物の温度は温度コントローラ27によって制御される。ガス分離膜モジュール29から排出される非透過流31は凝縮器33によって冷却凝縮されて蒸気成分が液化し調圧槽34へ導入されて溜められる。この調圧槽34は雰囲気ガス導入管35、圧力調整弁36及び背圧調整弁37からなる圧力調整手段を備えている。圧力調整弁36及び背圧調整弁37にはそれぞれ制御装置が付属しており、調圧槽内及び調圧槽と連通しているガス分離膜モジュール29の非透過側の圧力を予め設定した所定圧に保持するように作動する。ガス分離膜モジュール29から排出される透過流30は凝縮器41によって冷却凝縮されて蒸気成分は液化し、透過液槽42へ導入されて溜められる。さらにガス分離膜モジュール29の透過側は排気ポンプ43によって所定の減圧に保たれる。またガス分離膜モジュール29の透過側へは掃引ガス導入管32を通じて掃引ガスが導入される。この掃引ガスの流量は流量計45で制御される。
【実施例】
【0025】
この発明を以下の実施例によって更に詳細に説明する。なお、実施例においては共沸性を有する含水イソプロピルアルコールを脱水して高純度のイソプロピルアルコールを分離回収する例を示す。なお、この発明は実施例に限定されるものではない。
【0026】
〔参考例1〕
3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物100モル%のテトラカルボン酸成分と、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル40モル%、及び1,4−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン60モル%からなるジアミン成分とを重合して得られた芳香族ポリイミド溶液を用いて、乾湿式製膜法によって芳香族ポリイミド製の非対称性中空糸膜(外径:500μm、内径:310μm)を準備した。この非対称性中空糸分離膜は、120℃における、水蒸気の透過速度が7.0×10−4cm/cm・sec・cmHgであって、水蒸気とイソプロピルアルコール蒸気との透過速度比(PH2O/Pi−PrOH)が約1350であった。前記非対称性中空糸膜を使用して中空糸束を作成し、その両端を硬化性樹脂で硬化・結束し、端面を裁断して各中空糸の両端が開口した有効長0.81mの糸束エレメントを作成し、ガス供給口、透過ガス排出口、非透過ガス排出口を備えた円筒形の容器内にガス分離膜の供給側(非透過側)と透過側の空間が隔絶するようにして装着して有効膜面積が5.9mのガス分離膜モジュールを製造した。
【0027】
〔実施例1〕
参考例1で製造したガス分離膜モジュールを装着した図2で説明したようなガス分離装置を準備し、原液槽にはイソプロピルアルコール90重量%と水10重量%からなる混合液を入れた。前記混合液を送液ポンプで蒸発器へ供給し、蒸発器のヒーターを必要な蒸発量が得られる255℃に設定し、その温度を保持しながら、平均18kg/時間の蒸発量になるように調整した。前記平均流量は原液槽の重量変化から求めた。約106℃で蒸発した蒸気混合物を含むガス混合物は過熱器で約120℃にスーパーヒートしてガス分離膜モジュールへ供給した。
ガス分離膜モジュールの透過側へは掃引ガスの乾燥窒素ガスを供給ガス流に対して向流方向に5.0リットル/分で流し、且つ分離膜を透過した主に水蒸気からなる蒸気混合物は凝縮器で冷却・凝縮し透過液槽へ導いて溜めた。また、ガス分離膜モジュールの透過側は、透過液槽に備えられた排気ポンプによって掃引ガスを排気し8kPa(絶対圧)の減圧に保持した。
調圧槽の圧力調整手段によって、具体的には圧力調整弁で0.143MPa(ゲージ圧)に調節した窒素で加圧し且つ背圧調整弁の設定を0.148MPa(ゲージ圧)にして、圧力調整をおこなった。ガス分離膜モジュールの非透過流は、高濃度化したイソプロピルアルコール蒸気からなるが、凝縮器で冷却凝縮されて液化され調圧槽に導入され、そこに一旦溜めてその液量を調整しながら精製液槽へ送液した。
ガス分離膜モジュールのガス供給口の上流側に取り付けた圧力計で測定したガス分離膜モジュールの供給側圧力は0.157MPa(ゲージ圧)であり、変動幅は0.003MPaと少なく安定していた。
精製液槽には非透過流の凝縮液が平均16.23kg/時間で回収された。前記回収量は精製液槽の重量変化から求めた。凝縮器と調圧器の間から定期的にサンプルを採取し電量滴定水分測定装置で水分を測定した結果、水分量は0.50±0.01重量%であった。精製液槽には純度99.50重量%のイソプロピルアルコールが回収された。
【0028】
〔実施例2〕
調圧槽の圧力調整手段によって、具体的には圧力調整弁で0.165MPa(ゲージ圧)に調節した窒素で加圧し且つ背圧調整弁の設定を0.167MPa(ゲージ圧)にして、圧力調整をおこなった以外は実施例1と同じ操作をおこなった。
ガス分離膜モジュールのガス供給口の上流側に取り付けた圧力計で測定したガス分離膜モジュールの供給側圧力は0.179MPa(ゲージ圧)であり、変動幅は0.003MPaと少なく安定していた。
精製液槽には非透過流の凝縮液が平均15.42kg/時間で回収された。前記回収量は精製液槽の重量変化から求めた。凝縮器と調圧器の間から定期的にサンプルを採取し電量滴定水分測定装置で水分を測定した結果、水分量は0.42±0.01重量%であった。精製液槽には純度99.58重量%のイソプロピルアルコールが回収された。
【0029】
〔実施例3〕
蒸発器からの蒸発量が平均9kg/時間になるように調整したこと以外は実施例2と同じ操作をおこなった。
ガス分離膜モジュールのガス供給口の上流側に取り付けた圧力計で測定したガス分離膜モジュールの供給側圧力は0.179MPa(ゲージ圧)であり、変動幅は0.003MPaと少なく安定していた。
精製液槽には非透過流の凝縮液が平均8.05kg/時間で回収された。前記回収量は精製液槽の重量変化から求めた。凝縮器と調圧器の間から定期的にサンプルを採取し電量滴定水分測定装置で水分を測定した結果、水分量は0.039±0.001重量%であった。精製液槽には純度99.96重量%のイソプロピルアルコールが回収された。
【0030】
〔比較例1〕
実施例1のものから圧力調整手段を備えた調圧槽を外し且つガス分離膜モジュールからの非透過流がオリフィスを介して凝縮器に接続した、概略のフロー図が図3に示されたガス分離装置を用いた。すなわち、ガス分離膜モジュールの非透過側の圧力を非透過流のライン中に組み込んだオリフィスで調整するように構成したガス分離装置を用いた。
原液槽にはイソプロピルアルコール90重量%と水10重量%からなる混合液を入れ、前記混合液を送液ポンプで蒸発器へ供給し、蒸発器のヒーターを必要な蒸発量が得られる255℃に設定し、その温度を保持しながら、平均18kg/時間の蒸発量になるように調整した。前記平均流量は原液槽の重量変化から求めた。約102〜108℃で蒸発した蒸気混合物を含むガス混合物は過熱器で120℃にスーパーヒートしてガス分離膜モジュールへ供給した。
ガス分離膜モジュールの透過側へは掃引ガスの乾燥窒素ガスを供給ガス流に対して向流方向に5.0リットル/分で流し、且つ分離膜を透過した主に水蒸気からなる蒸気混合物は凝縮器で冷却・凝縮し精製液槽へ導いて溜めた。また、ガス分離膜モジュールの透過側は、透過液槽に備えられた排気ポンプによって掃引ガスを排気し8kPa(絶対圧)の減圧に保持した。
ガス分離膜モジュールの非透過側の圧力はオリフィスによって設定された。ガス分離膜モジュールのガス供給口の上流側に取り付けた圧力計で測定したガス分離膜モジュールの供給側圧力は0.157MPaであり、変動幅は0.024MPaと大きく変動した。
精製液槽には非透過流の凝縮液が平均16.23kg/時間で回収された。前記回収量は精製液槽の重量変化から求めた。凝縮器と精製液槽の間から定期的にサンプルを採取し電量滴定水分測定装置で水分を測定した結果、水分量は0.51±0.10重量%であった。精製液槽には純度99.49重量%のイソプロピルアルコールが回収された。
【0031】
〔比較例2〕
比較例2と同じガス分離装置を用いた。
原液槽にはイソプロピルアルコール90重量%と水10重量%からなる混合液を入れ、蒸発器からの蒸発量が平均9kg/時間になるように調整したこと以外は比較例1と同じ操作をおこなった。
ガス分離膜モジュールの非透過側の圧力はオリフィスによって設定された。ガス分離膜モジュールのガス供給口の上流側に取り付けた圧力計で測定したガス分離膜モジュールの供給側圧力は0.157MPa(ゲージ圧)であり、変動幅は0.023MPaと大きく変動した。
精製液槽には非透過流の凝縮液が平均8.05kg/時間で回収された。前記回収量は精製液槽の重量変化から求めた。凝縮器と精製液槽の間から定期的にサンプルを採取し電量滴定水分測定装置で水分を測定した結果、水分量は0.06±0.02重量%であった。精製液槽には純度99.94重量%のイソプロピルアルコールが回収された。
また、同じ圧力及び温度で、処理量のみを調整して、精製液槽に回収されるイソプロピルアルコールの純度を99.96重量%まで高めた。蒸発器からの蒸発量は平均8kg/時間となり、水分量は0.04±0.01重量%で、精製液槽には非透過流の凝縮液が平均7.15kg/時間で回収された。
【0032】
実施例1〜3における非透過側の圧力変動幅は0.003MPaであり安定化することができたが、比較例1、2における非透過側の圧力変動幅は0.023〜0.024MPaと大きかった。このように圧力変動が大きいと、ガス分離を安定化しておこなうことは難しくなる。例えば、圧力変動が大きいと蒸気混合物の気化温度も変動するから、蒸発器や過熱器の温度制御などは極めて高精度であることが要求される。さらに、分離回収されるイソプロピルアルコールの純度も、長期間運転したときの平均値ではそれ程の差異はないが、圧力変動に伴ってその都度変動(多くの場合脈動)するから、頻繁に精製液槽から取り出して再利用するような場合には回収物の純度が変動するという不都合が生じる。また、比較例1、2ではガス分離膜モジュールの供給側圧力を0.157MPaに設定して運転したが、これ以上の高圧に設定すると圧力変動によって圧力が0.2MPaを越える可能性が生じる。運転圧力が0.2MPaを越える場合には高圧ガス取締法により装置に求められる耐圧性を高圧仕様に変更する必要がある。通常の耐圧仕様の装置では、実施例1〜3の方が比較例1、2よりもより高圧運転が可能になり高効率を達成し易い。
【産業上の利用可能性】
【0033】
この発明は、例えば化学反応プロセス、蒸留プロセス、醗酵プロセス、洗浄プロセスなどのから発生する蒸気相で存在し得る混合物から蒸気混合物を発生させて、ガス分離膜モジュールからなるガス分離装置に供給し、分離膜モジュールの供給側圧力の変動を抑制して安定した状態で分離回収が可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】この発明のガス分離方法の概要を説明するためのフロー図
【図2】この発明のガス分離装置の一つの実施態様の概略のフロー図
【図3】比較例で用いたガス分離装置の概略のフロー図
【符号の説明】
【0035】
1:液体混合物導入管
2:蒸発器
3:ヒーター
4:蒸気混合物をグ汲むガス混合物流
5:ガス分離膜モジュール
6:透過流
7:非透過流
8:凝縮器
9:調圧器
10:圧力調整手段
11:雰囲気ガス導入管
12:圧力調整弁
13:背圧調整弁
14:導管
20:原液槽
21:送液ポンプ
22:ヒーター
23:蒸発器
24:温度コントローラ
25:液面コントローラ
26:過熱器
27:温度コントローラ
28:圧力計
29:ガス分離膜モジュール
30:透過流
31:非透過流
32:掃引ガス導入管
33:凝縮器
34:調圧器
35:雰囲気ガス導入管
36:圧力調整弁
37:背圧調整弁
38:液面コントローラ
39:バルブ
40:精製液槽
41:凝縮器
42:透過液槽
43:排気ポンプ(エジェクター)
44:圧力計
45:流量計
46:試料採取口
47:オリフィス

【特許請求の範囲】
【請求項1】
蒸気混合物を含むガス混合物をガス分離膜モジュールの供給側へ供給し、蒸気混合物を含むガス混合物中の少なくとも第1蒸気を選択的に透過させて、第1蒸気が高濃度化した透過流と第1蒸気が低濃度化した非透過流とに分離回収するガス分離方法において、
ガス分離膜モジュールからの非透過流が凝縮器を介して調圧槽に導かれ、且つ前記調圧槽は雰囲気ガスの出し入れによる圧力調整手段を備えており、前記圧力調整手段によって分離膜モジュールの供給側圧力を安定化することを特徴とするガス分離方法。
【請求項2】
蒸気混合物を含むガス混合物をガス分離膜モジュールの供給側へ供給し、蒸気混合物を含むガス混合物中の少なくとも第1蒸気を選択的に透過させて、第1蒸気が高濃度化した透過流と第1蒸気が低濃度化した非透過流とに分離回収するガス分離装置において、
ガス分離膜モジュールからの非透過流が凝縮器を介して調圧槽に導かれ、且つ前記調圧槽は雰囲気ガスの出し入れによる圧力調整手段を備えており、前記圧力調整手段によって分離膜モジュールの供給側圧力を安定化するように構成されたことを特徴とするガス分離装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2006−720(P2006−720A)
【公開日】平成18年1月5日(2006.1.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−177988(P2004−177988)
【出願日】平成16年6月16日(2004.6.16)
【出願人】(000000206)宇部興産株式会社 (2,022)
【Fターム(参考)】