説明

蓄光表示体

【課題】発光輝度が高く、耐久性があり、使用する蓄光剤が少量で、コストの低減が可能な蓄光表示体を提供する。
【解決手段】表示領域A1とその背景領域A2を有する蓄光表示体10であって、表示領域A1と背景領域A2のいずれか一方が蓄光剤4を含んだ蓄光樹脂粉粒3を表層部に散在させた白色樹脂材1からなり、他方が蓄光樹脂粉粒を含まない着色樹脂材2からなる構成とする。蓄光剤4から出る光が白色樹脂材1によって反射され、ロスを殆ど生じることなく前方へ放射されるので発光輝度が向上し、蓄光樹脂粉粒が磨滅するまで長期間にわたり発光するため耐久性が向上する。蓄光剤4を含んだ蓄光樹脂粉粒3を白色樹脂材1の表層部に散在させるので、蓄光剤を白色樹脂材に均一に分散させる場合に比べて蓄光剤の使用量が減少し、コストの低減が可能となる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、暗闇での避難誘導などに適した蓄光表示体に関する。
【背景技術】
【0002】
通路の側壁や床面に設ける避難誘導用の蓄光表示体として、絵画などが描かれたフィルム体を部分的に切欠き、その切欠き部分に蓄光部材を貼着したものが知られている(特許文献1)。
【0003】
また、床タイル(ビニル床シート)に穴をあけて文字、模様、矢印などを表示し、その穴に蓄光性蛍光材を充填したものも知られている(特許文献2)。
【0004】
しかしながら、特許文献1の蓄光表示体は、蓄光部材がフィルム体から剥がれやすいという問題があり、しかも、蓄光部材がフィルム体と同様の薄さであるため、磨滅しやすく発光の輝度も低いという問題があった。
【0005】
これに対し、特許文献2の床タイルは、特許文献1の蓄光表示体が有する欠点はないものの、蓄光性蛍光材の使用量が多いため、コスト高になるという問題があった。
【特許文献1】特開2002−341811号公報
【特許文献2】特開平9−302904号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記の問題に鑑み、本発明は、発光輝度が高く、耐久性があり、使用する蓄光剤が少量で、コストの低減が可能な蓄光表示体を提供することを解決すべき課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を解決するため、本発明の蓄光表示体は、表示領域とその背景領域を有する蓄光表示体であって、表示領域と背景領域のいずれか一方が蓄光剤を含んだ蓄光樹脂粉粒を表層部に散在させた白色樹脂材からなり、他方が蓄光樹脂粉粒を含まない着色樹脂材からなることを特徴とするものである。
【0008】
本発明の蓄光表示体においては、白色樹脂材が、蓄光剤を10〜60質量%含んだ蓄光樹脂粉粒を、該粉粒の白色樹脂材表面に占める面積の比率が30〜90%となるように散在させたものであることが好ましい。
尚、本発明において「散在」とは、蓄光樹脂粉粒が一粒ずつ離れて分散するのみならず、多数の蓄光樹脂粉粒が互いに溶着して連なった状態で分散する場合も含む広概念の用語である。
【発明の効果】
【0009】
本発明の蓄光表示体は、蓄光樹脂粉粒を表層部に散在させた白色樹脂材からなる表示領域又は背景領域の一方が、蓄光樹脂粉粒に含まれる蓄光剤によって暗闇の中で発光し、蓄光樹脂粉粒を含まない着色樹脂材からなる表示領域又は背景領域の他方が発光しないため、両領域の発光のコントラストによって表示領域の形状を暗闇でも視認することができ、その意味内容を理解することができる。
【0010】
しかも、本発明の蓄光表示体のように蓄光樹脂粉粒を白色樹脂材の表層部に散在させてあると、蓄光樹脂粉粒中の蓄光剤から出た光が白色樹脂材によって高い反射効率で反射され、ロスをほとんど生じることなく前方へ放射されるので、発光輝度が大幅に向上し、表示領域と背景領域の強い発光コントラストによって表示領域を鮮明に視認することができる。
【0011】
また、本発明の蓄光表示体のように、蓄光剤を樹脂粉粒に含有させ、この蓄光樹脂粉粒を白色樹脂材の表層部に散在させると、蓄光樹脂粉粒が磨滅するまで長期間にわたり蓄光作用が持続して暗闇で発光するため耐久性が向上し、しかも、蓄光剤を白色樹脂材に均一に分散させる場合に比べて蓄光剤の使用量が減少するため、コストの低減を図ることも可能となる。
【0012】
特に、白色樹脂材が、蓄光剤を10〜60質量%含んだ蓄光樹脂粉粒を、該粉粒の白色樹脂材表面に占める面積の比率が30〜90%となるように散在させたものであると、白色樹脂材全体に占める蓄光剤の割合が少ないにも拘わらず発光輝度が高い安価な視認性に優れた耐久性のある蓄光表示体を得ることが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、図面を参照して本発明の具体的な実施形態を詳述する。
【0014】
図1は本発明の一実施形態に係る蓄光表示体の平面図、図2は図1のX−X線拡大模式断面図である。
【0015】
図1に示す蓄光表示体10は、建物の床面に敷設される正方形の床シートに構成されたもので、避難誘導の方向を示す矢印形状の表示領域A1と、この表示領域A1を取り囲む正方形の背景領域A2とを具備している。
【0016】
この蓄光表示体10の表示領域A1は、図2に模式的に示すように、蓄光剤4を含んだ蓄光樹脂粉粒3を表層部に散在させた白色樹脂材1で形成されており、背景領域A2は蓄光樹脂粉粒を含まない着色樹脂材2で形成されている。即ち、背景領域A2を形成する正方形の着色樹脂材2の中央部分に、避難誘導の方向を示す矢印形状の切抜き部が設けられ、同じ矢印形状に切断された表示領域A1を形成する白色樹脂材1が着色樹脂材2の切抜き部に嵌め込まれて接合一体化されている。
【0017】
図1の蓄光表示体10では、上記のように表示領域A1を白色樹脂材1で形成し、背景領域A2を着色樹脂材2で形成しているが、逆に、表示領域A1を着色樹脂材2で形成し、背景領域A2を白色樹脂材1で形成してもよい。コストの低減を図るためには、面積が小さい方の領域を白色樹脂材1で形成し、蓄光剤4の使用量を少なくすることが好ましい。
【0018】
蓄光樹脂粉粒3は、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリカーボネート、アクリル樹脂、ポリ塩化ビニル、エチレン−酢酸ビニル共重合体などの透明性が良好な熱可塑性樹脂に蓄光剤4を含有させた粉粒であって、その平均粒径が0.5〜5mm、蓄光剤4の含有率が10〜60質量%であるものが好ましく使用される。
【0019】
蓄光樹脂粉粒3の平均粒径が0.5mmより小さくなると、樹脂粉粒の製造効率が低下したり、白色樹脂粉粒との分散不良がおこるなどの不都合が生じ、5mmより大きくなると、白色樹脂材1の厚みよりも蓄光樹脂粉粒の方が大きいためシーティングが困難になるなどの不都合が生じる。また、蓄光剤4の含有率が10質量%より少なくなると、蓄光作用が低下して発光輝度が低くなるなどの不都合が生じ、60質量%より多くなると、コスト高になるうえに、加工時の黒ずみにより発光輝度が低くなるなどの不都合が生じる。
【0020】
このような蓄光樹脂粉粒3は、該粉粒の白色樹脂材1表面に占める面積の比率が30〜90%となるように白色樹脂材1の表層部に散在し、該粉粒3の一部は一粒ずつ離れた状態で、その他は多数の該粉粒3が互いに溶着して連なった状態で、均一に分散している。蓄光樹脂粉粒3の白色樹脂材1表面に占める面積の比率が30%より少なくなると、蓄光作用が低下して充分な発光輝度を得ることが難しくなるといった不都合を生じ、該比率が90%より多くなると、コスト高を招くので、いずれも好ましくない。また、多数の蓄光樹脂粉粒3が互いに溶着して連なった状態で分散していると、暗闇でも、蓄光樹脂粉粒3を分散させた白色樹脂材1の表示領域A1と背景領域A2の境界を認識しやすく、表示内容の認識も更に容易になる。
【0021】
尚、図2では、蓄光樹脂粉粒3が白色樹脂材1の表層部に単層状に散在するように図示されているが、実際には、白色樹脂材1の表層部に積層状に散在しており、上下に重なる蓄光樹脂粉粒同士も溶着している。
【0022】
蓄光樹脂粉粒3に含ませる蓄光剤4としては、カルシウム、ストロンチウム、バリウム、マグネシウムなどのアルカリ土類金属の珪酸塩を母材とし、これに賦活剤としてユウロピウム、ランタン、セリウム、プラセオジム、ネオジウム、サマリウム、ガドリニウム、テルビウム、ジスプロシウム、ホルミウム、エルビウム、ツリウム、イッテルビウム、ルテチウム、マンガン、スズ、ビスマス等を添加したものが好ましく使用される。
【0023】
白色樹脂材1それ自体は、蓄光樹脂粉粒3と同様のポリエチレン、ポリプロピレン、ポリカーボネート、アクリル樹脂、ポリ塩化ビニル、エチレン−酢酸ビニル共重合体等の熱可塑性樹脂に、酸化チタン、炭酸カルシウム、タルクその他の白色顔料を含有させると共に、必要に応じて各種の添加剤や充填剤を加えたものである。また、着色樹脂材2は、上記と同様の熱可塑性樹脂に各種の着色剤を含有させると共に、必要に応じて各種の添加剤や充填剤を加えたものである。
【0024】
この蓄光表示体10の裏面には、必要に応じて、合成樹脂の裏打層(不図示)を積層一体化したり、寸法安定性を付与するためにガラス繊維層(不図示)を積層一体化してもよい。
【0025】
このような構成の蓄光表示体10は、例えば、次の方法で製造される。
【0026】
まず、白色顔料を含んだ熱可塑性樹脂の粉粒をベルトコンベア上に敷き詰め、その上に蓄光剤3を含んだ蓄光樹脂粉粒3を散布して加熱溶融させながらロール圧着することにより、表層部に蓄光樹脂粉粒3が散在する白色樹脂材(白色樹脂シート)1を作製する一方、着色剤等を含んだ熱可塑性樹脂の粉粒をベルトコンベア上に敷き詰め、加熱溶融させながらロール圧着することによって着色樹脂材(着色樹脂シート)2を作製する。
【0027】
そして、白色樹脂材(シート)1と着色樹脂材(シート)2を同じ大きさの正方形にカットすると共に、双方の樹脂材1,2の中央部を表示領域A1の矢印形状通りにコンピュータカットして切抜き部を形成し、白色樹脂材1から切抜いた切抜き片を着色樹脂材2の切抜き部に嵌め込んで接合一体化すると、暗闇で表示領域A1が発光する前記の蓄光表示体(床シート)10が製造される。一方、着色樹脂材2から切抜いた切抜き片を白色樹脂材1の切抜き部に嵌め込んで接合一体化すると、暗闇で背景領域A2が発光する蓄光表示体(床シート)が製造される。
【0028】
以上のような蓄光表示体10を床面に敷設すると、蓄光樹脂粉粒3を表層部に散在させた白色樹脂材1からなる表示領域A1が、蓄光樹脂粉粒3に含まれる蓄光剤4によって暗闇の中で発光し、蓄光樹脂粉粒を含まない着色樹脂材2からなる背景領域A2が発光しないため、両領域A1,A2の発光のコントラストによって表示領域A1の形状を暗闇で視認することができる。一方、表示領域A1が着色樹脂材2で形成され、背景領域A2が白色樹脂材A1で形成された蓄光表示体は、背景領域A2が暗闇で発光し、表示領域A1が発光しないため、両領域A1,A2の発光のコントラストによって表示領域A1の形状を暗闇で視認することができる。
【0029】
特に、本発明の蓄光表示体は、表層部の蓄光樹脂粉粒3の蓄光剤4から出た光が白色樹脂材1によって高い反射効率で反射され、ロスをほとんど生じることなく前方へ放射されるので、発光輝度が大幅に向上し、表示領域A1と背景領域A2の強い発光コントラストによって表示領域A1を鮮明に視認することができる。しかも、本発明の蓄光表示体は、蓄光樹脂粉粒3が磨滅するまで長期間にわたり蓄光作用が持続して暗闇で発光するため耐久性が良好であり、蓄光剤4を白色樹脂材1に均一に分散させる場合に比べて蓄光剤4の使用量が減少するため、コストの低減を図ることもできる。
【0030】
以上、床シートに構成した蓄光表示体10を例示して本発明を説明したが、本発明の蓄光表示体は、床シート以外の各種内装材、各種外装材、階段用シートなどに幅広く適用されるものであり、また、表示領域の形状や内容も、表示の目的に応じて任意の決定されるものである。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】本発明の一実施形態に係る蓄光表示体の平面図である。
【図2】図1のX−X線拡大模式断面図である。
【符号の説明】
【0032】
1 白色樹脂材
2 着色樹脂材
3 蓄光樹脂粉粒
4 蓄光剤
10 蓄光表示体
A1 表示領域
A2 背景領域

【特許請求の範囲】
【請求項1】
表示領域とその背景領域を有する蓄光表示体であって、表示領域と背景領域のいずれか一方が蓄光剤を含んだ蓄光樹脂粉粒を表層部に散在させた白色樹脂材からなり、他方が蓄光樹脂粉粒を含まない着色樹脂材からなることを特徴とする蓄光表示体。
【請求項2】
白色樹脂材が、蓄光剤を10〜60質量%含んだ蓄光樹脂粉粒を、該粉粒の白色樹脂材表面に占める面積の比率が30〜90%となるように分散させたものである請求項1に記載の蓄光表示体。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2007−108218(P2007−108218A)
【公開日】平成19年4月26日(2007.4.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−296258(P2005−296258)
【出願日】平成17年10月11日(2005.10.11)
【出願人】(000108719)タキロン株式会社 (421)
【Fターム(参考)】