説明

蓄熱システム

【課題】エマルジョンの輸送動力の増大を抑制しつつ、システムの確実な小型化および簡略化を図ることができる蓄熱システムを提供する。
【解決手段】水と、固液相変化に伴って発生する潜熱を利用して蓄熱可能であるともに水と非相溶性である有機物と、水および有機物を混濁可能とする界面活性剤とを含有するエマルジョン2と、エマルジョン2を収容する蓄熱槽3と、冷却水の有する熱によりエマルジョン2を加熱する加熱用熱交換器4と、エマルジョン2の有する熱を空調用空気へ放熱する放熱用熱交換器7とを備え、エマルジョン2を、水および有機物の混濁時に、有機物の粒子の単位体積あたりの表面積が0.05nm−1以上に調整する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、相変化に伴って発生する潜熱を利用した潜熱蓄熱材(以下、PCMともいう)を用いて蓄熱を行う蓄熱システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、エマルジョンタイプのPCMを用いた蓄熱システムとしては、PCMとしてパラフィン、油脂またはオレフィン等の有機物を含有するものが採用されている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
この従来技術では、収容部(蓄熱槽)に高濃度のエマルジョンを貯留しておき、放熱用熱交換器に輸送する直前でアスピレータによりエマルジョンを低濃度にして流動性を確保している。さらに、蓄熱用熱交換器において放熱したエマルジョンを、収容部の手前で連続相分離装置により濃縮し、高濃度にして収容部に戻している。
【0004】
これによれば、放熱時にはエマルジョンの流動性を確保できるので、エマルジョンを搬送するための特殊なポンプが不要となる。さらに、収容部では高濃度のエマルジョンを貯留することができるので、収容部を小型化することができる。
【0005】
なお、高濃度のエマルジョンとは、エマルジョン中に含まれるPCMとしての有機物(以下、PCM有機物ともいう)の量が多いことをいい、低濃度のエマルジョンとは、エマルジョン中に含まれるPCM有機物の量が少ないことをいう。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平5−322465号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上記従来技術によると、エマルジョン中のPCM有機物の粒子径や濃度等の特性値について全く言及されていない。
【0008】
このため、一般に、PCM有機物の粒子径はマイクロメートルオーダーであり、エマルジョンの濃度を増大させると、粘度が著しく増大してしまう。このため、エマルジョンを輸送するための輸送動力も大きくなってしまう。
【0009】
また、PCM有機物の粒子径がマイクロメートルオーダーの蓄熱システムでは、エマルジョンの濃度を増大させると粘度が著しく増大するので、配管等に詰まりが発生するおそれがある。このため、結局はエマルジョンを低濃度に維持せざるを得ず、収容部を確実に小型化することは困難である。
【0010】
また、PCM有機物の粒子径がマイクロメートルオーダーのエマルジョンでは、相分離が発生し易いので、上記従来技術のように、蓄熱槽内に攪拌装置を別途設ける必要がある。このため、システムが複雑化してしまう。
【0011】
本発明は上記点に鑑みて、エマルジョンの輸送動力の増大を抑制しつつ、システムの確実な小型化および簡略化を図ることができる蓄熱システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記目的を達成するため、請求項1に記載の発明では、水と、固液相変化に伴って発生する潜熱を利用して蓄熱可能であるともに水と非相溶性である有機物と、水および有機物を混濁可能とする界面活性剤とを含有するエマルジョン(2)と、エマルジョン(2)を収容する収容部(3)と、エマルジョン(2)が流入可能になっており、かつ、熱源とエマルジョン(2)との間で熱交換を行うことで熱源の有する熱によりエマルジョン(2)を加熱する加熱手段(4)と、エマルジョン(2)が流入可能になっており、かつ、加熱対象物とエマルジョン(2)との間で熱交換を行うことでエマルジョン(2)の有する熱を加熱対象物へ放熱する放熱手段(7)と、収容部(3)から加熱手段(4)へエマルジョン(2)を導く加熱側流路(50)と、収容部(3)から放熱手段(7)へエマルジョン(2)を導く放熱側流路(80)と、加熱側流路(50)に設けられるとともに、収容部(3)から加熱手段(4)へエマルジョン(2)を圧送する加熱側ポンプ(51)と、放熱側流路(80)に設けられるとともに、収容部(3)から放熱手段(7)へエマルジョンを圧送する放熱側ポンプ(81)とを備え、エマルジョン(2)は、水および有機物の混濁時に、有機物の粒子の単位体積あたりの表面積が0.05nm−1以上に調整されていることを特徴とする。
【0013】
本発明は、エマルジョンに含まれる有機物粒子のサイズを、有機物粒子の単位体積あたりの表面積が0.05nm−1以上となるように微小化することで、エマルジョンの粘性が低下するという本発明者の実験検討の結果、得られた知見に基づいて創出されたものである。つまり、有機物の粒子の単位体積あたりの表面積を0.05nm−1以上とすることで、エマルジョン(2)の粘性を飛躍的に低下させることができる。
【0014】
このようなエマルジョン(2)を蓄熱システムの潜熱蓄熱材として用いることで、エマルジョン(2)を循環させる加熱側ポンプ(51)および放熱側ポンプ(81)の輸送動力を小さくすることができる。すなわち、出力の小さいポンプを用いて、蓄熱システムを駆動することができる。
【0015】
また、エマルジョン(2)の濃度を増大させても粘度が著しく増大することはないので、配管等に詰まりが発生することを抑制できる。さらに、エマルジョン(2)の濃度を増大させることができるので、収容部(3)を確実に小型化することができる。
【0016】
さらに、エマルジョン(2)に含まれる有機物粒子のサイズを微小化することで、同体積で有機物粒子の界面面積、すなわち界面活性剤が付着する面積が増大する。このため、エマルジョン(2)が相分離することを抑制できるので、収容部(3)内を撹拌するための撹拌装置を設ける必要がなくなり、蓄熱システムを簡略化できる。
【0017】
したがって、エマルジョン(2)の輸送動力の増大を抑制しつつ、システムの確実な小型化および簡略化を図ることが可能となる。
【0018】
また、請求項2に記載の発明のように、請求項1に記載の蓄熱システムにおいて、エマルジョン(2)は、水および有機物の混濁時に、有機物の粒子の単位体積あたりの表面積が0.05nm−1以上0.3nm−1以下に調整されていてもよい。
【0019】
また、請求項3に記載の発明のように、請求項1または2に記載の蓄熱システムにおいて、エマルジョン(2)は、有機物の濃度が5wt%以上40wt%以下に調整されていてもよい。
【0020】
また、請求項4に記載の発明では、請求項1ないし3のいずれか1つに記載の蓄熱システムにおいて、収容部(3)内のエマルジョン(2)における有機物の重量パーセント濃度が、加熱手段(4)内のエマルジョン(2)における有機物の重量パーセント濃度および放熱手段(7)内のエマルジョン(2)における有機物の重量パーセント濃度の双方よりも高いことを特徴とする。
【0021】
これによれば、収容部(3)内のエマルジョン(2)における有機物の重量パーセント濃度を高くすることで、蓄熱密度を高くできるので、収容部(3)を確実に小型化することが可能となる。一方、加熱手段(4)内のエマルジョン(2)における有機物の重量パーセント濃度および放熱手段(7)内のエマルジョン(2)における有機物の重量パーセント濃度を低くすることで、加熱側流路(50)および放熱側流路(80)におけるエマルジョン(2)の流動性を確保することができる。
【0022】
また、請求項5に記載の発明では、請求項1ないし4のいずれか1つに記載の蓄熱システムにおいて、加熱側流路(50)は、加熱手段(4)と収容部(3)との間でエマルジョン(2)を循環させるように構成されており、放熱側流路(80)は、放熱手段(7)と収容部(3)との間でエマルジョン(2)を循環させるように構成されており、さらに、加熱手段(4)および放熱手段(7)の少なくとも一方に流入するエマルジョン(2)に水を供給する水供給手段(91、92)と、供給手段(91、92)によって水が供給されるとともに加熱手段(4)および放熱手段(7)の少なくとも一方から流出したエマルジョン(2)から水を分離させる水分離手段(93、94)とを備えることを特徴とする。
【0023】
これによれば、水供給手段(91、92)により、加熱手段(4)および放熱手段(7)の少なくとも一方に流入するエマルジョン(2)に水を供給することで、加熱側流路(50)および放熱側流路(80)におけるエマルジョン(2)の流動性を確保することが可能となる。また、水分離手段(93、94)により、加熱手段(4)および放熱手段(7)の少なくとも一方から流出したエマルジョン(2)より水を分離させることで、収容部(3)内のエマルジョン(2)における有機物の重量パーセント濃度を高くすることができる。これにより、蓄熱密度を高くできるので、収容部(3)を確実に小型化することが可能となる。
【0024】
すなわち、これによれば、収容部(3)内のエマルジョン(2)における有機物の重量パーセント濃度が、加熱手段(4)内のエマルジョン(2)における有機物の重量パーセント濃度および放熱手段(7)内のエマルジョン(2)における有機物の重量パーセント濃度の双方よりも高い構成を容易かつ確実に実現できる。
【0025】
また、請求項6に記載の発明では、請求項5に記載の蓄熱システムにおいて、水供給手段(91、92)は、水分離手段(93、94)によってエマルジョン(2)から分離させた水を、加熱手段(4)および放熱手段(7)の少なくとも一方に流入するエマルジョン(2)に供給することを特徴とする。
【0026】
これによれば、水分離手段(93、94)にてエマルジョン(2)から分離させた水を貯留するための容器(装置)を設ける必要がなくなるので、システムのさらなる小型化を図ることができる。
【0027】
また、請求項7に記載の発明のように、請求項1ないし6のいずれか1つに記載の蓄熱システムにおいて、熱源は、エネルギ変換システムにおけるエネルギ変換装置(EG)の排熱であり、加熱対象物は、エネルギ変換システムにおける暖機対象機器または暖房用熱源であってもよい。
【0028】
また、請求項8に記載の発明のように、エネルギ変換システムを備える車両に搭載される請求項7に記載の蓄熱システムにおいて、エネルギ変換装置は、車両の走行用駆動源である内燃機関(EG)であり、加熱対象物は、車両の車室内に供給される空調用空気であり、加熱手段(4)は、エマルジョン(2)と内燃機関(EG)の冷却水との間で熱交換を行うことによりエマルジョン(2)を加熱し、放熱手段(7)は、エマルジョン(2)と空調用空気との間で熱交換を行うことにより空調用空気を加熱し、内燃機関(EG)が定常運転状態である際に、加熱手段(4)において冷却水の有する熱によりエマルジョン(2)を加熱する蓄熱モードと、内燃機関(EG)が停止またはアイドル状態である際に、放熱手段(7)においてエマルジョン(2)の有する熱を空調用空気に放熱する放熱モードとを実行可能に構成されていてもよい。
【0029】
また、請求項9に記載の発明のように、エネルギ変換システムを備える車両に搭載される請求項7または8に記載の蓄熱システムにおいて、エネルギ変換装置は、車両に搭載されるバッテリであり、加熱対象物は、車両の車室内に供給される空調用空気であり、加熱手段(4)は、バッテリの有する熱によりエマルジョン(2)を加熱し、放熱手段(7)は、エマルジョン(2)と空調用空気との間で熱交換を行うことにより空調用空気を加熱し、加熱手段(4)においてバッテリの有する熱によりエマルジョン(2)を加熱する蓄熱モードと、放熱手段(7)においてエマルジョン(2)の有する熱を空調用空気に放熱する放熱モードとを実行可能に構成されていてもよい。
【0030】
なお、この欄および特許請求の範囲で記載した各手段の括弧内の符号は、後述する実施形態に記載の具体的手段との対応関係を示すものである。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】第1実施形態の蓄熱システム1の全体構成図である。
【図2】第2実施形態の蓄熱システム1の全体構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
以下、本発明の実施形態について図に基づいて説明する。なお、以下の各実施形態相互において、互いに同一もしくは均等である部分には、図中、同一符号を付してある。
【0033】
(第1実施形態)
以下、図面を用いて本発明の第1実施形態を説明する。図1は、本第1実施形態の蓄熱システム1の全体構成図である。この蓄熱システム1は、車両に適用されており、車両走行用の駆動力を出力するエネルギ出力手段としてのエンジン(内燃機関)EGの排熱を蓄熱して、この熱を所望時に取り出して車室内へ送風する送風空気の加熱(暖房)に有効利用するものである。
【0034】
本実施形態の蓄熱システムは、エンジンEGの排熱、すなわちエンジンEGの冷却水が有する熱を蓄熱する蓄熱モードと、蓄熱モードで蓄熱された熱を加熱対象物である送風空気(空調用空気)に放熱して送風空気を加熱する放熱モードとを切り替え可能に構成されている。
【0035】
まず、蓄熱システム1は、潜熱蓄熱材(PCM)として、水からなる連続相に、当該連続相(水)と非相溶性である有機物(蓄熱材)からなる分散層を分散させてなるエマルジョン2を備えている。エマルジョン2は、水および当該有機物を混濁可能とする界面活性剤を含有している。
【0036】
本実施形態では、有機物として、70〜90℃で相変化する材料を採用している。具体的には、有機物としてパラフィンワックス系の材料(1605−0350)を用いることができる。また、界面活性剤としては、グリコール系化合物を用いることができる。なお、このエマルジョン2の詳細は後述する。
【0037】
蓄熱システム1は、エマルジョン2を収容する収容部としての蓄熱槽3を備えている。また、蓄熱システム1は、エマルジョン2を加熱する加熱手段としての加熱用熱交換器4と、加熱用熱交換器4と蓄熱槽3との間でエマルジョン2を循環させる加熱側流路としての加熱用循環流路50とを備えている。
【0038】
ここで、加熱用循環流路50について説明する。加熱用循環流路50は、エマルジョン2を循環させる回路で、蓄熱槽3、加熱側ポンプ51、加熱用熱交換器4を環状に接続したものである。
【0039】
蓄熱槽3の鉛直方向下方側には、加熱用循環流路50に接続されるとともに、エマルジョン2を蓄熱槽3から流出させる加熱用流出口31が設けられている。加熱用流出口31には、加熱側ポンプ51の吸入側が接続されている。
【0040】
加熱側ポンプ51は、加熱用熱交換器4へエマルジョン2を圧送する電動式のポンプであり、図示しないシステム制御装置から出力される制御信号によって回転数(流量)が制御される。
【0041】
加熱側ポンプ51の吐出側には、加熱用熱交換器4の入口側が接続されている。加熱用熱交換器4は、加熱用循環流路50内を流通するエマルジョン2と、後述する冷却水循環流路60内を流通するエンジンEGの冷却水と熱交換させることで、エンジン冷却水の有する熱によりエマルジョン2を加熱する熱交換器である。
【0042】
加熱用熱交換器4の出口側には、蓄熱槽3の加熱用流入口32が接続されている。加熱用流入口32は、加熱用循環流路50から蓄熱槽3にエマルジョン2を流入させるものであり、蓄熱槽3の鉛直方向上方側に設けられている。
【0043】
システム制御装置が加熱側ポンプ51を作動させると、エマルジョン2は、蓄熱槽3の加熱用流出口31→加熱側ポンプ51→加熱用熱交換器4→蓄熱槽3の加熱用流入口32の順に循環する。このため、蓄熱槽3の加熱用流出口31から流出したエマルジョン2が加熱用熱交換器4を通過することで、エマルジョン2が加熱される。そして、加熱されたエマルジョン2が加熱用流入口2から蓄熱槽3に流入し、蓄熱槽3内に貯留されることで、エンジンEGの排熱を蓄熱することができる。
【0044】
続いて、冷却水循環流路60について説明する。冷却水循環流路60は、エンジンEGを冷却する冷却水(例えば、エチレングリコール水溶液)を循環させる回路で、前述した加熱用熱交換器4、冷却水ポンプ61、エンジンEG内に形成されたエンジンEGの冷却用通路62を環状に接続したものである。
【0045】
冷却水ポンプ61は、加熱用熱交換器4へ冷却水を圧送する電動式のポンプであり、システム制御装置から出力される制御信号によって回転数(流量)が制御される。そして、システム制御装置が、冷却水ポンプ61を作動させると、冷却水は、冷却水ポンプ61→加熱用熱交換器4→エンジンEG内の冷却用通路62→冷却水ポンプ61の順に循環する。
【0046】
このため、エンジンEG内の冷却用通路62で加熱された冷却水が加熱用熱交換器4を通過することで、エマルジョン2が加熱されるとともに、冷却水が冷却される。そして、冷却された冷却水がエンジンEG内の冷却用通路62を通過することで、エンジンEGが冷却される。
【0047】
また、蓄熱システム1は、エマルジョン2の有する熱を送風空気へ放熱する放熱手段としての放熱用熱交換器7と、放熱用熱交換器7と蓄熱槽3との間でエマルジョン2を循環させる放熱側流路としての放熱用循環流路80とを備えている。放熱用循環流路80は、エマルジョン2を循環させる回路で、蓄熱槽3、放熱側ポンプ81、放熱用熱交換器7を環状に接続したものである。
【0048】
蓄熱槽3の鉛直方向上方側には、放熱用循環流路80に接続されるとともに、エマルジョン2を蓄熱槽3から流出させる放熱用流出口33が設けられている。放熱用流出口33には、放熱側ポンプ81の吸入側が接続されている。
【0049】
放熱側ポンプ81は、放熱用熱交換器7へエマルジョン2を圧送する電動式のポンプであり、システム制御装置から出力される制御信号によって回転数(流量)が制御される。
【0050】
放熱側ポンプ81の吐出側には、放熱用熱交換器7の入口側が接続されている。放熱用熱交換器7は、放熱用循環流路80内を流通するエマルジョン2と、送風機71により車室内へ向けて送風される送風空気とを熱交換させることで、エマルジョン2の有する熱を送風空気に放熱して、送風空気を加熱する熱交換器である。この送風機71は、システム制御装置から出力される制御電圧によって回転数(送風量)が制御される電動式送風機である。
【0051】
放熱用熱交換器7の出口側には、蓄熱槽3の放熱用流入口34が接続されている。放熱用流入口34は、放熱用循環流路80から蓄熱槽3にエマルジョン2を流入させるものであり、蓄熱槽3の鉛直方向下方側に設けられている。
【0052】
システム制御装置が放熱側ポンプ81を作動させると、エマルジョンは、蓄熱槽3の放熱用流出口33→放熱側ポンプ81→放熱用熱交換器7→蓄熱槽3の放熱用流入口34の順に循環する。このため、蓄熱槽3の放熱用流出口33から流出したエマルジョン2が放熱用熱交換器7を通過することで、エマルジョン2を放熱させるとともに、送風空気を加熱することができる。
【0053】
以下、実施例に基づいて本発明のエマルジョン2について詳細に説明する。
【0054】
(実施例1)
水に対して、有機物(蓄熱材)および界面活性剤を混合して、エマルジョン2を作成した。
【0055】
有機物としては、オクタデカンおよびテトラデカンを用いた。また、界面活性剤としては、ソルビタンモノオレアート(商品名;Span80、東京化成工業株式会社製)とポリオキシエチレンソルビタンモノオレアート(商品名;Tween80、東京化成工業株式会社製)とを3:7の割合で配合したものを用いた。なお、界面活性剤の量は、有機物の量に応じて変化させた。本実施例では、界面活性剤の濃度が有機物の濃度の0.9倍となるように、界面活性剤の量を調整した。
【0056】
続いて、作成したエマルジョン2に含まれる有機物粒子の粒径を測定した。具体的には、有機物濃度が5wt%および40wt%のエマルジョン2について、ファイバー光学動的光散乱光度計FDLS−3000(大塚電子株式会社製)にて粒度分布を測定し、その平均値を粒径とした。
【0057】
その結果、本実施例1のエマルジョン2は、有機物粒子の粒径が10nm、有機物粒子の単位体積あたりの表面積(以下、比表面積ともいう)が0.3nm/nmであった。
【0058】
(実施例2)
上記実施例1に対して、有機物粒子の粒径が43nm、有機物粒子の比表面積が0.07nm/nmのエマルジョン2を作成した。
【0059】
(実施例3)
上記実施例1に対して、有機物粒子の粒径が60nm、有機物粒子の比表面積が0.05nm/nmのエマルジョン2を作成した。
【0060】
(比較例1)
上記実施例1に対して、有機物粒子の粒径が128nm、有機物粒子の比表面積が0.023nm/nmのエマルジョン2を作成した。
【0061】
(比較例2)
上記実施例1に対して、有機物粒子の粒径が232nm、有機物粒子の比表面積が0.013nm/nmのエマルジョン2を作成した。
【0062】
ここで、実施例1〜3および比較例1、2における有機物粒子の粒径および比表面積を表1に示す。
【0063】
【表1】

(粘度の評価)
粘度の評価は、上記実施例1〜3および比較例1、2のエマルジョン2の粘度をそれぞれ測定し、その測定結果より、加熱用循環流路50および放熱用循環流路80を容易に循環可能な流動性を有するか否かを判定した。
【0064】
具体的には、上記実施例1〜3および比較例1、2のエマルジョン2の粘度を、音叉型振動式粘度計SV−10(株式会社エー・アンド・ディ社製)にて測定し、5mPa・s未満であれば、容易に循環可能な流動性を有するとして○とし、そうでない場合を×とした。当該評価結果を表2に示す。
【0065】
(寿命の評価)
寿命の評価は、上記実施例1〜3および比較例1、2のエマルジョン2を、生成後1週間経過時点で目視にて確認し、相分離しているか否かを判定した。エマルジョン2が相分離していない場合を○とし、相分離している場合を×とした。当該評価結果を表2に示す。
【0066】
【表2】

表2に示すように、比較例1、2のエマルジョン2、すなわちエマルジョン2に含まれる有機物粒子の粒径が大きい場合の評価結果では、エマルジョン2の粘度が5mPa・s以上であった。これにより、比較例1、2のエマルジョン2は、流動性が低く、加熱用循環流路50および放熱用循環流路80を容易に循環させることができないことがわかった。換言すると、比較例1、2のエマルジョン2を蓄熱システム1に用いた場合、加熱用循環流路50および放熱用循環流路80を循環させるために出力の大きいポンプが必要となることがわかった。
【0067】
これに対し、実施例1〜3のエマルジョン2、すなわちエマルジョン2に含まれる有機物粒子の粒径が小さい(具体的には、有機物粒子の粒径が60nm以下、有機物粒子の比表面積が0.05nm/nm以下)場合の評価結果では、エマルジョン2の粘度が5mPa・s未満であった。より詳細には、実施例1〜3のエマルジョン2の評価結果では、エマルジョン2の粘度が水とほぼ同等(2mPa・s)となった。
【0068】
これにより、実施例1〜3のエマルジョン2は、流動性が高く、加熱用循環流路50および放熱用循環流路80を容易に循環可能であることがわかった。換言すると、実施例1〜3のエマルジョン2を蓄熱システム1に用いた場合は、加熱用循環流路50および放熱用循環流路80を循環させるために出力の大きいポンプを設ける必要がないことがわかった。
【0069】
また、比較例1、2のエマルジョン2、すなわちエマルジョン2に含まれる有機物粒子の粒径が大きい場合の評価結果では、生成後1週間でエマルジョン2が相分離していた。これにより、比較例1、2のエマルジョン2は、相分離し易く、蓄熱システム1に用いた場合に、蓄熱槽3内を撹拌する装置が別途必要となることがわかった。
【0070】
これに対し、実施例1〜3のエマルジョン2、すなわちエマルジョン2に含まれる有機物粒子の粒径が小さい(具体的には、有機物粒子の粒径が60nm以下、有機物粒子の比表面積が0.05nm/nm以下)場合の評価結果では、生成後1週間でエマルジョン2が相分離していなかった。これにより、実施例1〜3のエマルジョン2は、相分離し難く、蓄熱システム1に用いた場合に、蓄熱槽3内を撹拌する装置を設ける必要がないことがわかった。
【0071】
以上説明したように、エマルジョン2を、水および有機物の混濁時に、有機物粒子の比表面積が0.05nm/nm、すなわち0.05nm−1以上となるように調整することで、エマルジョン2の粘性を飛躍的に低下させることができる。
【0072】
そして、このようなエマルジョン2を蓄熱システムの潜熱蓄熱材として用いることで、エマルジョン2を循環させる加熱側ポンプ51および放熱側ポンプ81の輸送動力を小さくすることができる。すなわち、出力の小さいポンプを用いて、蓄熱システム1を駆動することができる。
【0073】
また、エマルジョン2の粘性が低下すると、エマルジョン2の流動性が高くなるので、加熱用熱交換器4および放熱用熱交換器7における熱交換性能を向上させることができる。
【0074】
また、本実施形態のエマルジョン2では、エマルジョン2の濃度を増大させても粘度が著しく増大することはないので、加熱用循環流路50および放熱用循環流路80を構成する配管等に詰まりが発生することを抑制できる。さらに、エマルジョン2の濃度を増大させることができるので、蓄熱槽3を確実に小型化することができる。
【0075】
さらに、エマルジョン2に含まれる有機物粒子のサイズを微小化することで、同体積で有機物粒子の界面面積、すなわち界面活性剤が付着する面積が増大する。このため、エマルジョン2が相分離することを抑制できるので、蓄熱槽3内を撹拌するための撹拌装置を設ける必要がなくなり、蓄熱システム1を簡略化できる。
【0076】
また、本実施形態のように、エマルジョン2に含まれる有機物(蓄熱材)として、70〜90℃で相変化するパラフィンワックス系の材料を用いることで、エンジンEGの排熱を有効に蓄熱および利用することができる。すなわち、車両の走行後のエンジンEG停止後に、蓄熱槽3に蓄えた熱量を利用して一定期間車室内を暖房することが可能となる。例えば、容積が12lの蓄熱槽3を採用した場合、暖房能力1kWの暖房を30分間行うことができる。
【0077】
また、本実施形態では、蓄熱槽3の鉛直方向下方側にある加熱用流出口31に加熱用循環流路50を接続し、蓄熱モードにおいて、蓄熱槽3内のうちエマルジョン2の温度が低い部分からエマルジョン2を取り出している。また、蓄熱槽3の鉛直方向上方側にある加熱用流入口32に加熱用循環流路50を接続し、蓄熱モードにおいて、蓄熱槽3の鉛直方向上方側から加熱用熱交換器4にて加熱された高温のエマルジョン2を蓄熱槽3内に流入させている。これにより、蓄熱槽3内における下方側はエマルジョン2の温度が低く、上方側はエマルジョン2の温度が高くなる。
【0078】
さらに、本実施形態では、蓄熱槽3の鉛直方向上方側にある放熱用流出口33に放熱用循環流路80を接続し、放熱モードにおいて、蓄熱槽3内のうちエマルジョン2の温度が高い部分からエマルジョン2を取り出している。また、蓄熱槽3の鉛直方向下側にある放熱用流入口34に放熱用循環流路80を接続し、放熱モードにおいて、蓄熱槽3の鉛直方向下方側から放熱用熱交換器7にて放熱した後の低温のエマルジョン2を蓄熱槽3内に流入させている。
【0079】
このように加熱用循環流路50および放熱用循環流路80を蓄熱槽3に接続することで、蓄熱槽3内に温度勾配を生じさせ、エマルジョン2の有する熱エネルギを有効に利用することができる。
【0080】
(第2実施形態)
次に、本発明の第2実施形態について図2に基づいて説明する。本第2実施形態では、上記第1実施形態と比較して、エマルジョンに水を混合する水混合装置、およびエマルジョンから水を分離させる水分離装置を設けた点が異なるものである。
【0081】
図2は、本第2実施形態の蓄熱システム1の全体構成図である。図2に示すように、加熱用循環流路50における蓄熱槽3の加熱用流出口31と加熱側ポンプ51との間には、加熱用熱交換器4に流入する前のエマルジョン2に水を供給して混合させる水供給手段としての加熱側水混合装置91が設けられている。また、放熱用循環流路80における蓄熱槽3の放熱用流出口33と放熱側ポンプ81との間には、放熱用熱交換器7に流入する前のエマルジョン2に水を供給して混合させる水供給手段としての放熱側水混合装置92が設けられている。
【0082】
加熱側水混合装置91および放熱側水混合装置92としては、例えばホモジナイザーを採用することができる。加熱側水混合装置91および放熱側水混合装置92としてホモジナイザーを採用することで、確実にエマルジョン2を分散させることができる。
【0083】
加熱用循環流路50における加熱用熱交換器4と蓄熱槽3の加熱用流入口32との間には、蓄熱槽3に流入する直前のエマルジョン2から水を分離させる水分離手段としての加熱側水分離装置93が設けられている。また、放熱用循環流路80における放熱用熱交換器7と蓄熱槽3の放熱用流入口34との間には、蓄熱槽3に流入する直前のエマルジョン2から水を分離させる水分離手段としての放熱側水分離装置94が設けられている。
【0084】
加熱側水分離装置93および放熱側水分離装置94としては、エマルジョン2から水のみを透過流出させる逆浸透膜を備える装置、電気泳動装置、遠心分離器を採用することができる。
【0085】
加熱側水混合装置91と加熱側水分離装置93とは、水が流通する加熱側水配管95にて接続されている。このため、蓄熱槽3に流入する直前のエマルジョン2から加熱側水分離装置93にて分離した水は、加熱側水配管95を介して加熱側水混合装置91に供給され、加熱用熱交換器4に流入する前のエマルジョン2に混合される。
【0086】
放熱側水混合装置92と放熱側水分離装置94とは、水が流通する放熱側水配管96にて接続されている。このため、蓄熱槽3に流入する直前のエマルジョン2から放熱側水分離装置94にて分離した水は、放熱側水配管96を介して放熱側水混合装置92に供給され、放熱用熱交換器7に流入する前のエマルジョン2に混合される。
【0087】
すなわち、本実施形態では、蓄熱槽3内のエマルジョン2における有機物の重量パーセント濃度が、加熱用熱交換器4内のエマルジョン2における有機物の重量パーセント濃度および放熱用熱交換器7内のエマルジョン2における有機物の重量パーセント濃度の双方よりも高くなっている。
【0088】
これによれば、蓄熱槽3内のエマルジョン2における有機物の重量パーセント濃度を高くすることで、蓄熱密度を高くできるので、蓄熱槽3を確実に小型化することが可能となる。一方、加熱用熱交換器4内のエマルジョン2における有機物の重量パーセント濃度および放熱用熱交換器7内のエマルジョン2における有機物の重量パーセント濃度を低くすることで、加熱用循環流路50および放熱用循環流路80におけるエマルジョン2の流動性を確保することができる。このため、加熱用熱交換器4および放熱用熱交換器7における熱交換性能を確保することができる。
【0089】
具体的には、本実施形態のように、水混合装置91、92により、加熱用熱交換器4または放熱用熱交換器7に流入するエマルジョン2に水を供給することで、加熱用循環流路50および放熱用循環流路80におけるエマルジョン2の流動性を確保することが可能となる。また、水分離装置93、94により、加熱用熱交換器4または放熱用熱交換器7から流出したエマルジョン2より水を分離させることで、蓄熱槽3内のエマルジョン2における有機物の重量パーセント濃度を高くし、蓄熱密度を高くすることができる。例えば、水分離装置93、94においてエマルジョン2を2倍に濃縮すれば、蓄熱槽3の容積を1/2にすることができる。
【0090】
また、本実施形態では、水混合装置91、92は、水分離装置93、94によってエマルジョン2から分離させた水を、加熱用熱交換器4または放熱用熱交換器7に流入するエマルジョン2に供給するように構成されている。
【0091】
これによれば、水分離装置93、94にてエマルジョン2から分離させた水を貯留するための容器(装置)を設ける必要がなくなるので、システムのさらなる小型化を図ることができる。さらに、水分離装置93、94においてエマルジョン2から完全に水を分離できない場合、すなわちエマルジョン2から分離させた水に有機物等が含まれている場合であっても、水分離装置93、94にて分離させた水を加熱用熱交換器4または放熱用熱交換器7に流入するエマルジョン2に供給することができる。つまり、水分離装置93、94においてエマルジョン2から完全に水を分離できない場合でも、当該水をシステムにおいて再利用することができる。
【0092】
(他の実施形態)
本発明は上述の実施形態に限定されることなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内で、以下のように種々変形可能である。
【0093】
(1)上記実施形態では、本発明の蓄熱システムを、エンジンから走行用の駆動力を得る車両に適用した例について説明したが、これに限らず、走行用電動モータから走行用の駆動力を得る電気自動車に適用してもよい。電気自動車では、車両停止時に外部電源(商用電源)から供給される電力をバッテリに充電しておき、車両走行時には、バッテリに充電された電力を走行用電動モータに供給することによって走行する。
【0094】
この場合、蓄熱システムを、バッテリの有する熱によりエマルジョンを加熱する加熱装置と、エマルジョンと空調用空気との間で熱交換を行うことにより空調用空気を加熱する放熱装置とを備え、加熱装置においてバッテリの有する熱によりエマルジョンを加熱する蓄熱モードと、放熱装置においてエマルジョンの有する熱を空調用空気に放熱する放熱モードとを実行可能に構成することができる。
【0095】
同様に、本発明の蓄熱システムを、エンジンおよび走行用電動モータから走行用の駆動力を得るハイブリッド車両や、ハイブリッド車両において車両停止時に外部電源から供給される電力をバッテリに充電可能に構成された、いわゆるプラグインハイブリッド車両に適用してもよい。
【0096】
(2)上記実施形態では、本発明の加熱対象物として暖房用熱源である空調用空気を採用した例について説明したが、これに限らず、加熱対象物としてエンジンEG等の暖機対象機器を採用してもよい。
【符号の説明】
【0097】
2 エマルジョン
3 蓄熱槽(収容部)
4 加熱用熱交換器(加熱手段)
7 放熱用熱交換器(放熱手段)
50 加熱用循環流路(加熱側流路)
51 加熱側ポンプ
80 放熱用循環流路(放熱側流路)
81 放熱側ポンプ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
水と、固液相変化に伴って発生する潜熱を利用して蓄熱可能であるともに前記水と非相溶性である有機物と、前記水および前記有機物を混濁可能とする界面活性剤とを含有するエマルジョン(2)と、
前記エマルジョン(2)を収容する収容部(3)と、
前記エマルジョン(2)が流入可能になっており、かつ、熱源と前記エマルジョン(2)との間で熱交換を行うことで前記熱源の有する熱により前記エマルジョン(2)を加熱する加熱手段(4)と、
前記エマルジョン(2)が流入可能になっており、かつ、加熱対象物と前記エマルジョン(2)との間で熱交換を行うことで前記エマルジョン(2)の有する熱を前記加熱対象物へ放熱する放熱手段(7)と、
前記収容部(3)から前記加熱手段(4)へ前記エマルジョン(2)を導く加熱側流路(50)と、
前記収容部(3)から前記放熱手段(7)へ前記エマルジョン(2)を導く放熱側流路(80)と、
前記加熱側流路(50)に設けられるとともに、前記収容部(3)から前記加熱手段(4)へ前記エマルジョン(2)を圧送する加熱側ポンプ(51)と、
前記放熱側流路(80)に設けられるとともに、前記収容部(3)から前記放熱手段(7)へ前記エマルジョンを圧送する放熱側ポンプ(81)とを備え、
前記エマルジョン(2)は、前記水および前記有機物の混濁時に、前記有機物の粒子の単位体積あたりの表面積が0.05nm−1以上に調整されていることを特徴とする蓄熱システム。
【請求項2】
前記エマルジョン(2)は、前記水および前記有機物の混濁時に、前記有機物の粒子の単位体積あたりの表面積が0.05nm−1以上0.3nm−1以下に調整されていることを特徴とする請求項1に記載の蓄熱システム。
【請求項3】
前記エマルジョン(2)は、前記有機物の濃度が5wt%以上40wt%以下に調整されていることを特徴とする請求項1または2に記載の蓄熱システム。
【請求項4】
前記収容部(3)内の前記エマルジョン(2)における前記有機物の重量パーセント濃度が、前記加熱手段(4)内の前記エマルジョン(2)における前記有機物の重量パーセント濃度および前記放熱手段(7)内の前記エマルジョン(2)における前記有機物の重量パーセント濃度の双方よりも高いことを特徴とする請求項1ないし3のいずれか1つに記載の蓄熱システム。
【請求項5】
前記加熱側流路(50)は、前記加熱手段(4)と前記収容部(3)との間で前記エマルジョン(2)を循環させるように構成されており、
前記放熱側流路(80)は、前記放熱手段(7)と前記収容部(3)との間で前記エマルジョン(2)を循環させるように構成されており、
さらに、前記加熱手段(4)および前記放熱手段(7)の少なくとも一方に流入する前記エマルジョン(2)に前記水を供給する水供給手段(91、92)と、
前記水供給手段(91、92)によって前記水が供給されるとともに前記加熱手段(4)および前記放熱手段(7)の少なくとも一方から流出した前記エマルジョン(2)から水を分離させる水分離手段(93、94)とを備えることを特徴とする請求項1ないし4のいずれか1つに記載の蓄熱システム。
【請求項6】
前記水供給手段(91、92)は、前記水分離手段(93、94)によって前記エマルジョン(2)から分離させた前記水を、前記加熱手段(4)および前記放熱手段(7)の少なくとも一方に流入する前記エマルジョン(2)に供給することを特徴とする請求項5に記載の蓄熱システム。
【請求項7】
前記熱源は、エネルギ変換システムにおけるエネルギ変換装置(EG)の排熱であり、
前記加熱対象物は、前記エネルギ変換システムにおける暖機対象機器または暖房用熱源であることを特徴とする請求項1ないし6のいずれか1つに記載の蓄熱システム。
【請求項8】
前記エネルギ変換システムを備える車両に搭載される請求項7に記載の蓄熱システムであって、
前記エネルギ変換装置は、前記車両の走行用駆動源である内燃機関(EG)であり、
前記加熱対象物は、前記車両の車室内に供給される空調用空気であり、
前記加熱手段(4)は、前記エマルジョン(2)と前記内燃機関(EG)の冷却水との間で熱交換を行うことにより前記エマルジョン(2)を加熱し、
前記放熱手段(7)は、前記エマルジョン(2)と前記空調用空気との間で熱交換を行うことにより前記空調用空気を加熱し、
前記内燃機関(EG)が定常運転状態である際に、前記加熱手段(4)において前記冷却水の有する熱により前記エマルジョン(2)を加熱する蓄熱モードと、前記内燃機関(EG)が停止またはアイドル状態である際に、前記放熱手段(7)において前記エマルジョン(2)の有する熱を前記空調用空気に放熱する放熱モードとを実行可能に構成されていることを特徴とする蓄熱システム。
【請求項9】
前記エネルギ変換システムを備える車両に搭載される請求項7または8に記載の蓄熱システムであって、
前記エネルギ変換装置は、前記車両に搭載されるバッテリであり、
前記加熱対象物は、前記車両の車室内に供給される空調用空気であり、
前記加熱手段(4)は、前記バッテリの有する熱により前記エマルジョン(2)を加熱し、
前記放熱手段(7)は、前記エマルジョン(2)と前記空調用空気との間で熱交換を行うことにより前記空調用空気を加熱し、
前記加熱手段(4)において前記バッテリの有する熱により前記エマルジョン(2)を加熱する蓄熱モードと、前記放熱手段(7)において前記エマルジョン(2)の有する熱を前記空調用空気に放熱する放熱モードとを実行可能に構成されていることを特徴とする蓄熱システム。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2013−87989(P2013−87989A)
【公開日】平成25年5月13日(2013.5.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−226922(P2011−226922)
【出願日】平成23年10月14日(2011.10.14)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【出願人】(504229284)国立大学法人弘前大学 (162)
【Fターム(参考)】