説明

蓄電デバイス用電極およびその製造方法、蓄電デバイス要素並びにリチウムイオンキャパシタ

【課題】集電体に複数の貫通孔が形成されており、当該集電体の両面に活物質層が形成されてなる構成のものであっても、大きな静電容量と共に高い信頼性の得られる蓄電デバイス用電極、およびその製造方法、並びに優れた性能を有すると共に、高い生産性の得られる蓄電デバイス要素およびリチウムイオンキャパシタを提供すること。
【解決手段】蓄電デバイス用電極は、多孔質集電体と、多孔質集電体の一面上に形成されてなる第1の活物質層と、多孔質集電体の他面上に形成されてなる第2の活物質層とを備え、多孔質集電体の複数の貫通孔のうちの少なくとも1つの貫通孔の内周面が第2の活物質層に覆われており、第1の活物質層が、多孔質集電体の一面側において、多孔質集電体の複数の貫通孔のうちの少なくとも1つの貫通孔を塞ぎ、当該貫通孔に対応する位置において多孔質集電体の一面側方向に凸起する突部を有するものであることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、蓄電デバイス用電極およびその製造方法、蓄電バイス要素並びにリチウムイオンキャパシタに関し、更に詳しくは、リチウムイオンキャパシタを構成する蓄電デバイス要素を構成する正極および負極として好適に用いられる蓄電デバイス用電極およびその製造方法、当該蓄電デバイス用電極を正極および/または負極として備えた蓄電デバイス要素、並びに当該蓄電デバイス要素を備えたリチウムイオンキャパシタに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、リチウムイオンキャパシタとしては、正極と負極とがセパレータを介して巻回または交互に積層されてなる構成の蓄電デバイス要素と有機電解液とを備え、当該正極および負極として、各々、表裏面を貫通する貫通孔を複数有する集電体を備えてなる構成のものが提案されている。
【0003】
このような構成のリチウムイオンキャパシタの正極および負極として用いられる電極は、例えば集電体材料としての金属箔に孔あけ加工を施すことによって複数の貫通孔が形成された集電体を得、この集電体上に活物質およびバインダーが水系媒体中に分散されたスラリーを塗布して塗膜を得、この塗膜を乾燥させて活物質層を形成する手法によって製造される(例えば、特許文献1参照。)。
【0004】
しかしながら、全面に複数の貫通孔が形成されている集電体上に、活物質およびバインダーが水系媒体中に分散されたスラリーを塗布する手法で活物質層を形成して得られる電極においては、活物質層と集電体との接触面積が小さいことから、活物質層と集電体とに高い接着性が得られない、という問題がある。
特に集電体の両面に活物質層を形成しようとする場合には、通常、集電体の両面に対して同時に塗工処理が行われることから、両面の塗膜を乾燥させるためには時間がかかり、広大な作業場所が必要であるために管理維持面において製造コストが大きくなり、しかも、液垂れの発生を防止することが困難であることから、製造される電極において静電容量のばらつきが生じてしまうためにキャパシタ性能の信頼性が低いものとなってしまう、という問題もある。また、塗膜を乾燥させるためには、集電体の片面のみに塗工処理を行った場合の3倍を超える長い時間が必要となるためにタクトタイムが長くなってしまう、という問題もある。そして、通常、複数の貫通孔を有する集電体に両面塗工を行う際には、集電体に対して貫通孔を形成した後に両面塗工を施すため、貫通孔から塗液(スラリー)の液垂れが生じ、形成される活物質層が集電体の貫通孔部に抜けが生じた状態のものとなってしまうため、必然的に静電容量が低下するという問題が起こっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2008−090844号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、以上の事情に基づいてなされたものであって、その目的は、集電体に複数の貫通孔が形成されており、当該集電体の両面に活物質層が形成されてなる構成のものであっても、大きな静電容量と共に高い信頼性の得られる蓄電デバイス用電極を提供することにある。

本発明の他の目的は、集電体に複数の貫通孔が形成されており、当該集電体の両面に活物質層が形成されてなる構成のものであっても大きな静電容量と共に高い信頼性を有する蓄電デバイス用電極を、高い生産性によって得ることのできる蓄電デバイス用電極の製造方法を提供することにある。
本発明の更に他の目的は、優れた性能を有すると共に、高い生産性の得られる蓄電デバイス要素およびリチウムイオンキャパシタを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の蓄電デバイス用電極は、複数の貫通孔が形成されてなる金属箔よりなる多孔質集電体と、当該多孔質集電体の一面上に形成されてなる第1の活物質層と、当該多孔質集電体の他面上に形成されてなる第2の活物質層とを備え、
前記多孔質集電体の複数の貫通孔のうちの少なくとも1つの貫通孔の内周面が第2の活物質層に覆われており、
第1の活物質層が、多孔質集電体の一面側において、当該多孔質集電体の複数の貫通孔のうちの少なくとも1つの貫通孔を塞ぎ、当該貫通孔に対応する位置において多孔質集電体の一面側方向に凸起する突部を有するものであることを特徴とする。
【0008】
本発明の蓄電デバイス用電極においては、多孔質集電体の貫通孔が、当該多孔質集電体の一面側方向に突出する突縁部を有するものであることが好ましい。
【0009】
また、本発明の蓄電デバイス用電極においては、多孔質集電体の複数の貫通孔のうちの少なくとも1つの貫通孔に第2の活物質層が埋入されており、これにより当該貫通孔の内周面が第2の活物質層に覆われていることが好ましい。
【0010】
本発明の蓄電デバイス用電極の製造方法は、前記の蓄電デバイス用電極を製造するための蓄電デバイス用電極の製造方法であって、
金属箔よりなる集電体材料の一面に活物質層形成用塗液を塗布して乾燥処理した後に他面側から貫通孔形成手段により当該集電体材料に対して貫通孔を形成することによって複数の貫通孔を有する多孔質集電体の一面に第1の活物質層が積層されており、当該第1の活物質層によって多孔質集電体の複数の貫通孔のうちの少なくとも1つの貫通孔が塞がれてなる積層体を得、当該積層体における集電体側の表面全域に活物質層形成用塗液を塗布して第2の活物質層を形成する工程を経ることを特徴とする。
【0011】
本発明の蓄電デバイス用電極の製造方法においては、貫通孔形成手段が、外周面に突起を有するローラーであることが好ましい。
【0012】
本発明の蓄電デバイス要素は、正極および負極がセパレータを介して積層されてなる構成を有する蓄電デバイス要素であって、
前記正極および負極が前記の蓄電デバイス用電極よりなるものであることを特徴とする。
【0013】
本発明のリチウムイオンキャパシタは、前記の蓄電デバイス要素を備えてなることを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明の蓄電デバイス用電極においては、集電体として複数の貫通孔を有する多孔質集電体が用いられているものの、第2の活物質層が、多孔質集電体の複数の貫通孔のいくつかの内周面を覆うように形成されていると共に、第1の活物質層が、いくつかの貫通孔を塞ぎ、その貫通孔に対応する位置に突部を有するものであることから、活物質層の形成面積が大きくなっており、これにより大きな静電容量を得ることができる。また、第2の活物質層が多孔質集電体の貫通孔の内周面を覆うように形成されていることによっては、当該第2の活物質層と多孔質集電体の接触面積が大きくされるため、活物質層と多孔質集電体とに高い接着性を得ることができる。
従って、本発明の蓄電デバイス用電極によれば、集電体に複数の貫通孔が形成されており、当該集電体の両面に活物質層が形成されてなる構成のものであっても、大きな静電容量と共に、高い信頼性を得ることができる。
【0015】
本発明の蓄電デバイス用電極においては、多孔質集電体の貫通孔が突縁部を有するものであることにより、多孔質集電体と活物質層との接触面積が大きくなるため、多孔質集電体と活物質層との接着性が大きくなり、その結果、より一層高い信頼性を得ることができる。
【0016】
また、本発明の蓄電デバイス用電極においては、多孔質集電体の貫通孔に第2の活物質層が埋入されてなる構造を有することにより、第2の活物質層の形成面積が大きくなるため、より一層高い静電容量を得ることができる。
【0017】
本発明の蓄電デバイス用電極の製造方法においては、集電体材料の一面に活物質層形成用塗液を塗布して乾燥処理した後に当該集電体材料に対して貫通孔を形成することによって複数の貫通孔を有する多孔質集電体の一面に第1の活物質層が積層されており、当該第1の活物質層によって多孔質集電体の複数の貫通孔のうちの少なくとも1つの貫通孔が塞がれてなる積層体を得、この積層体上に第2の活物質層を積層することにより、多孔質集電体の両面に対して個別に活物質層を形成する。そのため、第1の活物質層の形成過程において液垂れを生じることがなく、また第2の活物質層の形成過程においても第1の活物質層によって塞がれた貫通孔からは液垂れが生じることがないため、製造される電極に静電容量にばらつきが生じることを抑制することができ、しかも、第1の活物質層の形成および第2の活物質層の形成に係る塗膜の乾燥処理に要する合計時間を、貫通孔の形成された多孔質集電体の両面に対して同時に活物質層を形成する手法を用いる場合に比して、極めて短くすることができる。
そして、最終的に得られる蓄電デバイス用電極が、集電体として複数の貫通孔を有する多孔質集電体が用いられているものの、第2の活物質層が多孔質集電体の複数の貫通孔のいくつかの内周面を覆うように形成されていると共に、第1の活物質層が多孔質集電体の複数の貫通孔のいくつかの貫通孔を塞ぐように形成されているものとなることから、活物質層の形成面積が大きくなっており、これにより大きな静電容量を得ることができる。また、第2の活物質層が多孔質集電体の貫通孔の内周面を覆うように形成されていることによっては、当該第2の活物質層と多孔質集電体の接触面積が大きくされるため、活物質層と多孔質集電体とに高い接着性を得ることができる。
従って、本発明の蓄電デバイス用電極の製造方法によれば、集電体に複数の貫通孔が形成されており、当該集電体の両面に活物質層が形成されてなる構成のものであっても大きな静電容量と共に高い信頼性を有する蓄電デバイス用電極を、高い生産性で得ることができる。
【0018】
また、本発明の蓄電デバイス用電極の製造方法においては、貫通孔形成手段として外周面に突起を有するローラーを用いることにより、集電体材料に貫通孔を形成する過程において、形成される貫通孔を、当該多孔質集電体の一面側方向に突出する突縁部を有するものとすることができることから、第2の活物質層と多孔質集電体との接触面積をより一層大きくすることができるため、多孔質集電体と第2の活物質層との接着性が大きくなり、その結果、より一層高い信頼性を得ることができる。
【0019】
本発明の蓄電デバイス要素によれば、正極および負極として、本発明の蓄電デバイス用電極よりなるものが用いられていることから、優れた性能を有すると共に、高い生産性が得られる。
【0020】
本発明のリチウムイオンキャパシタによれば、電気デバイス要素として、本発明の蓄電デバイス要素が用いられていることから、優れた性能を有すると共に、高い生産性が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の蓄電デバイス用電極の構成の一例を示す説明用平面図である。
【図2】図1におけるA−A断面を示す説明用断面図である。
【図3】図2の部分拡大図である。
【図4】図1の蓄電デバイス用電極の製造工程において得られる、集電体材料の一面に最終的には第1の活物質層とされる活物質層が形成された積層体を示す部分拡大断面図である。
【図5】図1の蓄電デバイス用電極の製造工程において、その一面に塗膜の形成された集電体材料の他面側から貫通孔形成手段によって貫通孔を形成している状態を示す説明図である。
【図6】図1の蓄電デバイス用電極の製造工程において得られる、多孔質集電体の一面側に第1の活物質層が形成された積層体を示す部分拡大断面図である。
【図7】本発明のリチウムイオンキャパシタの構成の一例を説明するための組立斜視図である。
【図8】本発明の蓄電デバイス用電極の構成の他の例を示す説明用部分拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の実施の形態について詳細に説明する。
【0023】
〔蓄電デバイス用電極〕
図1は、本発明の蓄電デバイス用電極の構成の一例を示す説明用平面図であり、図2は、図1におけるA−A断面を示す説明用断面図であり、図3は、図2の部分拡大図である。
この蓄電デバイス用電極10は、図1に示すように、平板状の全体形状を有し、複数の貫通孔24が形成された多孔質集電体20と、当該多孔質集電体20の一面(図2および図3における上面)上に形成された第1の活物質層30と、当該多孔質集電体20の他面(図2および図3における下面)上に形成された第2の活物質層35とを備えており、多孔質集電体20の両面に活物質層が積層されてなる構成のものである。
【0024】
そして、蓄電デバイス用電極10においては、第1の活物質層30により、多孔質集電体20の複数の貫通孔24の少なくとも1つの貫通孔24が塞がれており、しかも当該第1の活物質層30には、貫通孔24を塞いでいる部位に多孔質集電体20の一面側方向(図2および図3における上方向)に凸起する突部31が形成されている。
また、第2の活物質層35によっては、多孔質集電体20の複数の貫通孔24の内周面が覆われている。
【0025】
この図の例においては、第1の活物質層30が多孔質集電体20の一面側全域に連続して延びるよう形成されていると共に、第2の活物質層35が多孔質集電体20の他面側全域に連続して延びるよう形成されており、従って多孔質集電体20のすべての貫通孔24が第1の活物質層30と第2の活物質層35とによって塞がれた状態となっており、また、第1の活物質層30と第2の活物質層35とが一体化されている。
すなわち、蓄電デバイス用電極10において、多孔質集電体20の貫通孔24が形成されている部分においては、多孔質集電体20の貫通孔24の当該多孔質集電体20の一面側の開口が第1の活物質層30によって塞がれ、これにより、貫通孔24よりなる内周面および第1の活物質層30よりなる底面を有する凹部が形成されており、この凹部の内周面および底面を連続して覆うように第2の活物質層35が形成されている。また、第2の活物質層35には、多孔質集電体20の貫通孔24に対応する位置において窪み36が形成されている。
【0026】
〔多孔質集電体〕
本発明の電気二重層キャパシタ用電極10を構成する多孔質集電体20は、その全体形状が矩形状であり、表裏面を貫通する貫通孔24が複数形成された金属箔よりなるものである。
【0027】
多孔質集電体20には、その全面において複数の貫通孔24が形成されており、その配置位置に特に制限はないが、千鳥配列であることが好ましい。千鳥配列とすることにより、電極を重畳した場合において、各電極へのプレドープ性を向上させることができ、これによって信頼性が向上する。
また、貫通孔24は、どのような形状を有するものであってもよいが、例えば円形状、十文字状、三角形状、角を丸めた三角形状、ひし形状、正方形状、角を丸めた正方形状、長方形状、角を丸めた長方形状、六角形状、楕円形状、円形状などであることが好ましく、特に円形状であることが好ましい。
ここに、多孔質集電体20としては、複数の貫通孔24が円形状の形状を有し、千鳥配列で配置されてなる構成のものが好ましい。
【0028】
多孔質集電体20に形成されている複数の貫通孔24は、当該多孔質集電体20の一面側方向に突出する突縁部24Aを有するものであることが好ましい。
この突縁部24Aは、連続的に伸びるものであってもよく、断続的に伸びるものであってもよい。
この図の例においては、多孔質集電体20の貫通孔24のすべてが突縁部24Aを有するものとされおり、この突縁部24Aによって貫通孔24の内周面が形成されている。
【0029】
多孔質集電体20における貫通孔24の寸法は、その開口面積が4mm2 以下であることが好ましく、更に好ましくは2mm2 以下であり、特に好ましくは1mm2 以下であることが好ましい。
貫通孔24の開口面積が過大である場合には、多孔質集電体20上に形成した活物質層(第1の活物質層30および第2の活物質層35)の保持性が低下し、長期信頼性が低下する傾向にある。
【0030】
また、多孔質集電体20は、開口率が10%以上であることが好ましく、更に好ましくは30%以上であり、特に好ましくは40%以上である。
開口率が過小である場合には、プレドープ性が低下し、生産性が低下する傾向にある。
【0031】
多孔質集電体20を構成する金属箔は、蓄電デバイス用電極10の使用用途に応じて適宜に選択することができる。
【0032】
以下、本発明の蓄電デバイス用電極10をリチウムイオンキャパシタの正極および負極として用いる場合について説明する。
【0033】
リチウムイオンキャパシタの正極における多孔質集電体20を構成するための金属箔としては、例えばアルミニウム、ステンレスなどよりなり、その厚みが5〜50μmであるものが好ましく、特に7〜35μmであるものが好ましい。
正極に係る多孔質集電体20を構成する金属箔の厚みが5μm未満である場合には、多孔質集電体20自体の強度が不足し、その取扱が困難なものとなるおそれがあり、一方、その厚みが50μmを超える場合には、多孔質集電体20自体の重量が大きくなることに伴って正極の重量が大きくなり、エネルギー密度が低下する傾向にある。
【0034】
また、リチウムイオンキャパシタの負極における多孔質集電体20を構成するための金属箔としては、例えば銅、ステンレス、ニッケルなどよりなり、その厚みが5〜40μmであるものが好ましく、特に7〜25μmであるものが好ましい。
負極に係る多孔質集電体20を構成する金属箔の厚みが5μm未満である場合には、多孔質集電体20自体の強度が不足し、その取扱が困難なものとなるおそれがあり、一方、その厚みが50μmを超える場合には、多孔質集電体20自体の重量が大きくなることに伴って負極の重量が大きくなり、エネルギー密度が低下する傾向にある。
【0035】
〔第1の活物質層および第2の活物質層〕
本発明の蓄電デバイス用電極10を構成する第1の活物質層30および第2の活物質層35においては、各々、蓄電デバイス用電極10の使用用途に応じて、当該蓄電デバイス用電極10を構成する活物質およびバインダー、並びに必要に応じて用いられる導電剤を適宜に選択することができる。
ここに、第1の活物質層30と、第2の活物質層35とは、同様の組成を有するものであってもよく、また異なる組成を有するものであってもよい。
【0036】
以下、本発明の蓄電デバイス用電極10をリチウムイオンキャパシタの正極および負極として用いる場合について、具体的には、リチウムイオンキャパシタの正極を構成するための活物質層(正極活物質層)、およびリチウムイオンキャパシタの負極を構成するための活物質層(負極活物質層)について説明する。
【0037】
〔正極活物質層〕
(正極活物質)
リチウムイオンキャパシタの正極における正極活物質層を構成するための正極活物質は、リチウムイオンおよび/または、例えばテトラフルオロボレートのようなアニオンを可逆的に担持できる物質である。
このような正極活物質としては、種々のものが挙げられるが、活性炭、および芳香族系縮合ポリマーの熱処理物であって水素原子/炭素原子の原子比が0.50〜0.05であるポリアセン系骨格構造を有するポリアセン系有機半導体(PAS)などが好ましく挙げられ、特に活性炭が好ましい。
【0038】
PASは、アモルファス構造を有することから、リチウムイオンの挿入・脱離に対して膨潤・収縮といった構造変化を伴わず、このために得られるリチウムイオンキャパシタが優れたサイクル特性を有するものとなる。また、リチウムイオンの挿入・脱離に対して等方的な分子構造(高次構造)であるために、得られるリチウムイオンキャパシタが急速充電および急速放電の実現されたものとなる。
PASの前駆体である芳香族系縮合ポリマーは、芳香族炭化水素化合物とアルデヒド類との縮合物であり、芳香族炭化水素化合物としては、例えばフェノール、クレゾール、キシレノールなどのフェノール類;下記一般式(1)で表されるメチレン・ビスフェノール類;ヒドロキシ・ビフェニル類;ヒドロキシナフタレン類などを挙げることができ、これらのうち、特にフェノール類を好適に用いることができる。
【0039】
【化1】

【0040】
〔上記一般式(1)中、xおよびyは、それぞれ独立に0〜2の整数である。〕
【0041】
また、芳香族系縮合ポリマ−としては、上記のフェノール性水酸基を有する芳香族炭化水素化合物の一部をフェノール性水酸基を有さない芳香族炭化水素化合物、例えばキシレン、トルエン、アニリンなどで置換した変成芳香族系縮合ポリマー、具体的には例えばフェノールとキシレンとホルムアルデヒドとの縮合物や、メラミン、尿素で置換した変成芳香族系ポリマーなどを用いることもできる。また、フラン樹脂も好適に用いることができる。
【0042】
このようなPASは以下のように製造することができる。すなわち、芳香族系縮合ポリマーを、非酸化性雰囲気下(真空も含む)中で400〜800℃の適当な温度まで徐々に加熱することにより、水素原子/炭素原子の原子比(以下、「H/C」と記す。)が0.5〜0.05、好ましくは0.35〜0.10の不溶不融性基体とし、この不溶不融性基体を、非酸化性雰囲気下(真空も含む)中で、350〜800℃の温度まで、好ましくは400〜750℃の適当な温度まで徐々に加熱した後、水あるいは希塩酸などによって充分に洗浄することにより、H/Cが上記範囲にあり、かつ、BET比表面積が例えば600m2 /g以上であるPASを得ることができる。
上記のように得られたPASは、X線回折(CuKα)によって、メイン・ピークの位置は2θで表して24°以下に存在し、また当該メイン・ピークの他に41〜46°の間にブロードな他のピークが存在することが検出されるものである。すなわち、当該PASは、芳香族系多環構造が適度に発達したポリアセン系骨格構造を有し、かつアモルファス構造を有するものであり、これにより、リチウムイオンを安定にドーピングすることができると考えられる。
【0043】
正極活物質としては、広い粒度分布を有するものが好ましく使用され、例えば、50%体積累積径(D50)が2μm以上であるものが好ましく、より好ましくは2〜50μm、特に好ましくは2〜20μmである。
また、正極活物質としては、平均細孔径が10nm以下であるものが好ましく、比表面積が600〜3000m2 /gであるものが好ましく、より好ましくは1300〜2500m2 /gである。
【0044】
(バインダー)
正極活物質層を形成するためのバインダーとしては、例えば、スチレン−ブタジエンゴム(SBR)、ニトリルゴム(NBR)などのゴム系バインダー;ポリ四フッ化エチレン、ポリフッ化ビニリデンなどの含フッ素系樹脂;ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリアクリレートなどの熱可塑性樹脂などを用いることができる。
バインダーの使用量は、正極活物質の電気伝導度、形成すべき正極の形状などによっても異なるが、正極活物質100質量部に対して1〜20質量部の割合で添加することが好ましく、より好ましくは2〜20質量部とされる。
【0045】
(導電剤)
正極活物質層を形成するために必要に応じて使用される導電剤としては、アセチレンブラック、ケッチェンブラック、ファーネスブラック、チャンネルブラック、ランプブラック、グラファイト、金属粉末などが挙げられる。
導電剤の使用量は、正極活物質の電気伝導度、形成すべき正極の形状などによっても異なるが、正極活物質100質量部に対して好ましくは1〜20質量部、より好ましくは2〜20質量部とされる。
【0046】
このような構成の正極活物質層は、その厚みが0.01〜1mmであることが好ましい。
なお、上記の正極活物質層の厚みとは、第1の活物質層30および第2の活物質層35の合計の厚みを示す。
【0047】
〔負極活物質層〕
(負極活物質)
リチウムイオンキャパシタの負極における負極活物質層を構成するための負極活物質は、リチウムイオンを可逆的に担持できる物質である。
このような負極活物質としては、黒鉛、難黒鉛化炭素、ハードカーボン、コークスなどの炭素材料や、上記に正極活物質として記載したポリアセン系有機半導体(PAS)などを挙げることができる。負極活物質としては、具体的には、フェノール樹脂などを炭化させ、必要に応じて賦活され、次いで粉砕したものを用いることができる。
【0048】
負極活物質としては、50%体積累積径(D50)が例えば0.5〜30μmであるものが好ましく、より好ましくは0.5〜15μm、特に好ましくは0.5〜6μmである。
また、負極活物質としては、比表面積が0.1〜2000m2 /gであるものが好ましく、より好ましくは0.1〜1000m2 /g、更により好ましくは0.1〜600m2 /gである。
【0049】
(バインダー)
正極活物質層を形成するためのバインダーとしては、前述の正極活物質層を形成するためのバインダーと同様のものを挙げることができる。
バインダーの使用量は、負極活物質の電気伝導度、形成すべき負極の形状などによっても異なるが、負極活物質100質量部に対して1〜20質量部の割合で添加することが好ましい。
【0050】
(導電剤)
負極活物質層を形成するために必要に応じて使用される導電剤としては、前述の正極活物質層を形成するために必要に応じて使用される導電剤と同様のものを挙げることができ、その使用量も同様の範囲とすることができる。
【0051】
このような構成の負極活物質層は、その厚みが0.01〜1mmであることが好ましい。
なお、上記の負極活物質層の厚みとは、第1の活物質層30および第2の活物質層35の合計の厚みを示す。
【0052】
以上のような構成の蓄電デバイス用電極10の寸法の一例としては、例えば多孔質集電体20が縦100mm、横150mm、厚み0.02mmであり、第1の活物質層30が縦100mm、横130mm、厚み0.02〜0.3mmであって第2の活物質層35が縦100mm、横130mm、厚み0.02〜0.3mmである。
また、多孔質集電体20は、開口率が42%であって貫通孔24が開口面積0.79mm2 の円形状の形状を有し、互いに隣り合う貫通孔の中心間距離が1.5mmとなるように千鳥配列で配置されている。
【0053】
〔蓄電デバイス用電極の製造方法〕
本発明の蓄電デバイス用電極10は、長尺な金属箔よりなる集電体材料の一面に活物質層形成材料を塗布して塗膜を乾燥させることによって貫通孔の形成されていない状態の活物質層 (以下、「未貫通孔形成活物質層」ともいう。)を形成し、この未貫通孔形成活物質層が一面に形成された集電体材料に対して、当該集電体材料の他面側から貫通孔形成手段によって集電体材料に対して複数の貫通孔を形成することにより、多孔質集電体20と第1の活物質層30の積層体を得、得られた積層体における多孔質集電体20側の表面全域に第2の活物質層35を形成する工程を経ることによって製造することができる。
【0054】
未貫通孔形成活物質層の形成された集電体材料に対して貫通孔24を形成するための貫通孔形成手段としては、外周面に突起を有するローラーを好適に用いることができる。
ローラーにおける突起の形状および配置位置などにより、貫通孔24の形状および配置位置などを調整することができる。
【0055】
以下、本発明の蓄電デバイス用電極10を製造する方法について具体的に、図4〜図6を用いて説明する。
【0056】
先ず、ロール芯に巻回された状態の長尺な平板状の金属箔よりなる集電体材料20Aを用意し、この集電体材料20Aが巻回されてなるロール体から集電体材料20Aを巻き出しながら当該集電体材料20Aの一面に活物質層形成用塗液を適宜の手法によって塗布して塗膜を形成し、この塗膜を乾燥処理することにより、図4に示すように、集電体材料20Aの一面に平板状の未貫通孔形成活物質層30Aが積層されてなる積層体40Aを得、この積層体40Aをロール芯49A(図5参照)に巻き取とることによってロール体を得る。
【0057】
次いで、図5に示すように、得られた積層体40Aがロール芯49Aに巻回されてなるロール体から積層体40Aを巻き出しながら、この積層体40Aに対して、貫通孔形成手段として外周面に複数の突起45Aを有するローラー45を用い、突起45Aを、未貫通孔形成活物質層30Aの形成されていない集電体材料20Aの他面側(図5における下面側)から貫入することにより、少なくとも集電体材料20Aに貫通孔24を形成する。このローラー45の突起45Aの貫入によっては、図6に示すように、積層体40Aを構成する集電体材料20Aに対して複数の貫通孔24が形成されると共に、未貫通孔形成活物質層30Aが、これらの複数の貫通孔24に対応する位置の少なくとも1ヵ所において、集電体材料20Aの一面側(図5における上面側)方向に凸起する突部31が形成されて変形されることとなる。
このようにして、複数の貫通孔24を有する多孔質集電体20と、当該多孔質集電体20の複数の貫通孔24のうちの少なくとも1つの貫通孔24を塞ぎ、多孔質集電体20の一面側方向に凸起する突部31を有する第1の活物質層30とが積層された構成の積層体40を得る。
得られた積層体40においては、当該積層体40を構成する多孔質集電体20の複数の貫通孔24が、突縁部24Aを有するものとされている。
図5の例においては、形成された積層体40は、ロール芯49Bに巻き取られて巻回された状態とされている。
【0058】
その後、積層体40がロール芯49Bに巻回されてなるロール体から積層体40を巻き出しながら積層体40を構成する多孔質集電体20上、すなわち積層体40を構成する多孔質集電体20の第1の活物質層30が形成されていない面の全域に活物質層形成用塗液を適宜の手法によって塗布して塗膜を形成する。
積層体40上において、塗膜は、当該積層体40を構成する多孔質集電体20の内周面に沿って活物質層形成用塗液が流れ込んだ状態とされている。
【0059】
そして、得られた塗膜を乾燥処理することにより、積層体40の表面全域、すなわち積層体40における多孔質集電体20側の表面、多孔質集電体20の貫通孔24の内周面および第1の活物質層の貫通孔24によって露出された面に第2の活物質層35を形成し、必要に要じて適宜の手段によって適宜の大きさに切断することにより、図1によって示される構成を有する蓄電デバイス用電極10が作製される。
【0060】
ここに、第1の活物質層30および第2の活物質層35を形成するための活物質層形成用塗液としては、各々、活物質、バインダーおよび必要に応じて導電剤が、水系媒体中に分散されてなるスラリーが用いられる。
活物質層形成用塗液を構成する水系媒体としては、例えばイオン交換水、蒸留水などを用いることができる。
【0061】
以上のような蓄電デバイス用電極10においては、集電体として複数の貫通孔24を有する多孔質集電体20が用いられているものの、第1の活物質層30により、多孔質集電体の貫通孔24が塞がれており、また当該第1の活物質層30が貫通孔24に対応する位置に突部31を有するものであると共に、第2の活物質層35により、多孔質集電体20の貫通孔24の内周面および第1の活物質層における貫通孔24の一面側の開口を塞いでいる部分が覆われていることから、活物質層(具体的には、第1の活物質層30および第2の活物質層35)の形成面積が大きくなっており、これにより大きな静電容量を得ることができる。また、第2の活物質層35が多孔質集電体20の貫通孔24の内周面を覆うように形成されていることによっては、当該第2の活物質層35と多孔質集電体20の接触面積が大きくされるため、活物質層と多孔質集電体とに高い接着性を得ることができる。
従って、蓄電デバイス用電極10には、大きな静電容量および高い信頼性が得られる。
【0062】
また、蓄電デバイス用電極10においては、多孔質集電体20の貫通孔24が突縁部24Aを有するものであることにより、多孔質集電体20と活物質層(具体的には、第1の活物質層30および第2の活物質層35)との接触面積が大きくなるため、多孔質集電体20と活物質層との接着性が大きくなり、その結果、より一層高い信頼性が得られる。
【0063】
このような構成の蓄電デバイス用電極10は、多孔質集電体20と第1の活物質層30との積層体40を得、この積層体40における多孔質集電体20側の表面全域に活物質層形成用塗液を塗布して第2の活物質層20を形成することにより製造することができる。 このような製造方法によれば、集電体材料20Aの一面に活物質層形成用塗液を塗布して乾燥処理した後に当該集電体材料20Aに対して貫通孔24を形成することによって複数の貫通孔24を有する多孔質集電体20の一面に第1の活物質層30が積層されており、当該第1の活物質層30によって多孔質集電体20の複数の貫通孔24が塞がれてなる積層体40を得、この積層体40上に第2の活物質層35を積層することにより、多孔質集電体20の両面に対して個別に活物質層を形成する。そのため、第1の活物質層30の形成過程において液垂れを生じることがなく、また第2の活物質層35の形成過程においても貫通孔24が第1の活物質層30によって塞がれているために液垂れが生じることがないため、製造される蓄電デバイス用電極10に静電容量にばらつきが生じることを抑制することができる。しかも、第1の活物質層30の形成および第2の活物質層35の形成に係る塗膜の乾燥処理に要する合計時間を、貫通孔の形成された多孔質集電体の両面に対して同時に活物質層を形成する手法を用いる場合に比して、極めて短くすることができる。
従って、本発明の蓄電デバイス用電極の製造方法によれば、複数の貫通孔24を有する多孔質集電体20の両面に活物質層(第1の活物質層30および第2の活物質層35)が形成されてなる構成のものであっても大きな静電容量と共に高い信頼性を有する蓄電デバイス用電極を、高い生産性で得ることができる。更に、集電体の片面のみに塗工処理を行うための装置および作業場所により、集電体の両面に活物質層が形成された構成の電極を製造することができることから、貫通孔の形成された多孔質集電体の両面に対して同時に活物質層を形成する手法を用いる場合に比して、管理維持面における製造コストが小さくなる。
【0064】
また、このような製造方法においては、貫通孔形成手段として外周面に突起45Aを有するローラー45を用いることにより、多孔質集電体20の貫通孔24を、当該多孔質集電体の一面側方向に突出する突縁部24Aを有するものとすることができることから、第1の活物質層30と多孔質集電体20との接触面積をより一層大きくすることができるため、多孔質集電体20と第1の活物質層30との接着性が大きくなり、その結果、より一層高い信頼性を得ることができる。
【0065】
〔蓄電デバイス要素〕
本発明の蓄電デバイス要素は、正極および負極がセパレータを介して積層されてなる構成を有し、正極および負極として、本発明の蓄電デバイス用電極10よりなるものが備えられていることを特徴とするものである。
【0066】
本発明の蓄電デバイス要素は、セパレータを介して複数の平板状の正極と、複数の平板状の負極とが交互に積層され、さらにその上にセパレータを介してリチウム箔を金属製支持体上に貼り付けたリチウム極が積層されてなる構成を有するものである。
ここに、セパレータは、正極および負極を電気的に絶縁して有機電解液を保持するものであり、具体的には、例えばポリエチレン、ポリプロピレンなどの樹脂製の多孔性フィルムよりなるものを好適に用いることができる。
【0067】
このような蓄電デバイス要素によれば、正極および負極として、本発明の蓄電デバイス用電極10が用いられていることから、優れた性能を有すると共に、高い生産性が得られる。
【0068】
〔リチウムイオンキャパシタ〕
本発明のリチウムイオンキャパシタは、蓄電デバイス要素として、本発明の蓄電デバイス要素が備えられてなることを特徴とするものであり、特に、板状の正極と負極とがセパレータを介して各々3層以上積層された積層型セル、帯状に構成した正極と負極とがセパレータを介して積層された積層体を、隣接する正極と負極とが互いに接触しないようセパレータを介して捲回された捲回型セル、または、積層型セルが外装フィルム内に封入されたフィルム型セルなどの大容量を実現するセル構造よりなるものとすることができる。これらのセル構造は、国際公開WO00/07255号公報、国際公開WO03/003395号公報、特開2004−266091号公報などに開示されている。
【0069】
図7は、本発明のリチウムイオンキャパシタの構成の一例を示す組立斜視図である。
このリチウムイオンキャパシタ50は、蓄電デバイス要素51として、本発明の蓄電デバイス要素が用いられているものである。
リチウムイオンキャパシタ50においては、蓄電デバイス要素51は、複数の正極が共通の正極リード部材としての、例えばアルミニウム製の正極端子52Aに電気的に接続されると共に、複数の負極とリチウム極とが共通の負極リード部材としての、例えば銅製の負極端子52Bに電気的に接続されており、これらの正極端子52Aおよび負極端子52Bの各々の先端部が突出した状態で、上部外装フィルム54Aおよび下部外装フィルム54Bにより挟まれ、周縁部全周を熱融着されることで、外装容器に収容されている。この外装容器の内部の電気デバイス要素収容用気密空間に有機電解液を注入することによって、リチウム極と、負極および/または正極との間に電気化学的接触が生じることから、正極の各々を構成する集電体の貫通孔および負極の各々を構成する集電体の貫通孔を介してリチウムイオンが移動され、これにより、負極および/または正極に予めリチウムイオンが担持されることとなる。
【0070】
〔電解質〕
リチウムイオンキャパシタ50を構成する有機電解液としては、リチウムイオンを移送可能なものであれば特に限定されず、適宜の溶媒中に電解質が溶解されてなるものであり、溶媒としては、例えばエチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、1−フルオロエチレンカーボネート、1−(トリフルオロメチル)エチレンカーボネート、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、メチルエチルカーボネート、γ−ブチロラクトン、アセトニトリル、ジメトキシエタン、テトラヒドロフラン、ジオキソラン、塩化メチレン、スルホラン等の非プロトン性有機溶媒が挙げられ、これらは単独でも、2種類以上を組み合わせて用いることもできる。また、電解質としては、リチウムイオンを生成しうる、例えばLiI、LiCIO4 、LiAsF4 、LiBF4 、LiPF6 、LiN(C2 5 SO2 2 、LiN(CF3 SO2 2 、LiN(FSO2 2 などが挙げられる。
【0071】
以上のようなリチウムイオンキャパシタ50によれば、蓄電デバイス要素51として、本発明の蓄電デバイス要素が用いられていることから、優れた性能を有すると共に、高い生産性が得られる。
【0072】
以上、本発明について具体的に説明したが、本発明は以上の例に限定されるものではなく、種々の変更を加えることができる。
例えば、蓄電デバイス用電極は、図8に示すように、複数の貫通孔24のうちの少なくとも1つが、貫通孔13内に第2の活物質層35が埋入された構成のものであってもよい。
図8の例においては、第2の活物質層よりなる表面が平坦なものとされている。
このような構成の蓄電デバイス用電極15は、前述の図1〜図3に係る蓄電デバイス用電極10の製造方法において、第2の活物質層35を形成するための活物質層形成用塗液を構成する活物質として、レベリング性の高いものを選択して用いることにより製造することができる。また、活物質層形成材料を調製する際に、濃度および粘度を調整することによって適宜対応することも可能である。
【0073】
以上の蓄電デバイス用電極15によれば、静電容量を大きくすることができるため、エネルギー密度を向上させることができ、また第2の活物質層35に高い保持性が得られるる。
【0074】
また、電気デバイス要素は、正極と負極とがセパレータを介して捲回されてなる構造を有するものであってもよい。
【符号の説明】
【0075】
10 蓄電デバイス用電極
15 蓄電デバイス用電極
20 多孔質集電体
20A 集電体材料
24 貫通孔
24A 突縁部
30 第1の活物質層
30A 活物質層(未貫通孔形成活物質層)
31 突部
35 第2の活物質層
36 窪み
40、40A 積層体
45 ローラー
45A 突起
49A、49B ロール芯
50 リチウムイオンキャパシタ
51 蓄電デバイス要素
52A 正極端子
52B 負極端子
54A 上部外装フィルム
54B 下部外装フィルム

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の貫通孔が形成されてなる金属箔よりなる多孔質集電体と、当該多孔質集電体の一面上に形成されてなる第1の活物質層と、当該多孔質集電体の他面上に形成されてなる第2の活物質層とを備え、
前記多孔質集電体の複数の貫通孔のうちの少なくとも1つの貫通孔の内周面が第2の活物質層に覆われており、
第1の活物質層が、多孔質集電体の一面側において、当該多孔質集電体の複数の貫通孔のうちの少なくとも1つの貫通孔を塞ぎ、当該貫通孔に対応する位置において多孔質集電体の一面側方向に凸起する突部を有するものであることを特徴とする蓄電デバイス用電極。
【請求項2】
多孔質集電体の貫通孔が、当該多孔質集電体の一面側方向に突出する突縁部を有するものであることを特徴とする請求項1に記載の蓄電デバイス用電極。
【請求項3】
多孔質集電体の複数の貫通孔のうちの少なくとも1つの貫通孔に第2の活物質層が埋入されており、これにより当該貫通孔の内周面が第2の活物質層に覆われていることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の蓄電デバイス用電極。
【請求項4】
請求項1〜請求項3のいずれかに記載の蓄電デバイス用電極を製造するための蓄電デバイス用電極の製造方法であって、
金属箔よりなる集電体材料の一面に活物質層形成用塗液を塗布して乾燥処理した後に他面側から貫通孔形成手段により当該集電体材料に対して貫通孔を形成することによって複数の貫通孔を有する多孔質集電体の一面に第1の活物質層が積層されており、当該第1の活物質層によって多孔質集電体の複数の貫通孔のうちの少なくとも1つの貫通孔が塞がれてなる積層体を得、当該積層体における集電体側の表面全域に活物質層形成用塗液を塗布して第2の活物質層を形成する工程を経ることを特徴とする蓄電デバイス用電極の製造方法。
【請求項5】
貫通孔形成手段が、外周面に突起を有するローラーであることを特徴とする請求項4に記載の蓄電デバイス用電極の製造方法。
【請求項6】
正極および負極がセパレータを介して積層されてなる構成を有する蓄電デバイス要素であって、
前記正極および負極が請求項1〜請求項3のいずれかに記載の蓄電デバイス用電極よりなるものであることを特徴とする蓄電デバイス要素。
【請求項7】
請求項6に記載の蓄電デバイス要素を備えてなることを特徴とするリチウムイオンキャパシタ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2010−238876(P2010−238876A)
【公開日】平成22年10月21日(2010.10.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−84617(P2009−84617)
【出願日】平成21年3月31日(2009.3.31)
【出願人】(307037543)JMエナジー株式会社 (57)
【Fターム(参考)】