説明

蓄電装置のガス排出補助装置及び車両

【課題】収容容器からガスとともに流出した冷却液が凝集した状態で、車道などの車外環境に排出されるのを防止することを目的とする。
【解決手段】組電池12と、組電池12と熱交換を行う冷却液23と、組電池12及び冷却液23を収容する電池収容ケース13と、組電池12から発生したガスを電池収容ケース13の外部に排出するためのガス排出管15と、を有する蓄電装置1のガス排出補助装置であって、前記ガスとともに電池収容ケース13に流入した冷却液23をミスト化するミスト化手段を有する。ミスト化手段としては、ノズル部材16を用いることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、蓄電体と該蓄電体を熱交換により温度調節する液状の熱交換媒体とを収容容器に収容した蓄電装置のガス排出補助装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、電気自動車、ハイブリッド自動車などの電動車両の開発が活発に行われており、電動車両の駆動用又は補助電源として、性能、信頼性、安全性に優れた蓄電装置への要望が高まっている。
【0003】
この種の蓄電装置として、高出力による温度上昇を抑制するために、複数の二次電池を直列に接続した組電池と、この組電池を冷却する冷却液と、これらの組電池及び冷却液を収容する収容容器とを有する蓄電装置が提案されている。
【0004】
各二次電池には、電池異常の際に発生したガスを放出するためのガス放出弁が設けられており、このガス放出弁から冷却液の中にガスが放出されると、収容容器の内圧が上昇する。このため、蓄電装置に耐圧対策を施す必要がある。
【0005】
耐圧対策として、収容容器に弁を設けて、この弁からガスを放出させることにより、収容容器の内圧を減圧する方法が考えられる。
【特許文献1】実開昭63−61758号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、ガスにより収容容器の内圧が高まっているため、収容容器の弁からガスを放出して内圧を低下させる際に、ガスとともに冷却液が放出される場合がある。そのため、車道などの車外環境に対して冷却液が凝集した状態で排出されるおそれがある。
【0007】
そこで、本願発明は、収容容器からガスとともに流出した冷却液が凝集した状態で、車道などの車外環境に排出されるのを防止することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本願発明は、蓄電体と、該蓄電体と熱交換を行う液状の熱交換媒体と、前記蓄電体及び前記熱交換媒体を収容する収容容器と、前記蓄電体から発生したガスを前記収容容器の外部に排出するための排出管と、を有する蓄電装置のガス排出補助装置であって、前記ガスとともに前記排出管に流入した前記熱交換媒体をミスト化するミスト化手段を有することを特徴とする。
【0009】
このように、熱交換媒体をミスト化することにより、熱交換媒体が凝集した状態で車外の環境に排出されるのを防止できる。
【0010】
ここで、前記ミスト化手段としては、前記排出管の排出口に設けられたノズル部材、前記排出管から排出される前記熱交換媒体に対して空気を送風するファンを用いることができる。
【0011】
熱交換媒体は内圧上昇した収容容器からガスとともに排出されるため、ノズル部材に対してミストを生成するための圧縮空気を供給する空気供給部を省略することもできる。空気供給部を省略することにより、コストの削減及び小型化を図ることができる。
【0012】
また、ファンを用いることにより、簡易な構成で熱交換媒体をミスト化することができる。さらに、ファンとしてタイヤのホイールを使用することにより、独立したファンが不要となるため、コストを削減することができる。
【0013】
ミスト化手段として、前記排出管から排出される前記熱交換媒体に当接する当接部材と、前記当接部材を振動させる加振手段とを含む振動ユニットを用いることもできる。
【0014】
これらのガス排出補助装置は、例えば、電気自動車、ハイブリッド自動車、燃料電池自動車に搭載された蓄電装置に用いることができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、収容容器からガスとともに排出される冷却液をミスト化できるため、冷却液が凝集した状態で車外環境に排出されるのを防止できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、本発明の実施形態について説明する。
(実施形態1)
図1は蓄電装置の分解斜視図であり、図2は蓄電装置の断面図である。図3は、車幅方向から視た車両の側面図であり、必要に応じて、車両の内部構造を投影して図示している。本願発明の概要は、下記の通りである。
【0017】
これらの図において、蓄電装置1は、組電池(蓄電体)12、組電池12及び冷却液(液状の熱交換媒体)23を収容する電池収容ケース(収容容器)13、電池収容ケース13の上蓋であるケースカバー14を含んでおり、ハイブリッド自動車、電気自動車、燃料電池自動車の駆動用又は補助電源として使用される。図3に図示するように、蓄電装置1は車両の後部座席の下部に設置されている。
【0018】
組電池12は、複数の円筒型電池(蓄電要素)122を並設することにより構成されており、各円筒型電池122には、電池異常の際に車外にガスを放出するためのガス放出弁139´(図4参照)が形成されている。なお、電池異常とは、過充電などの際に電解液が電気分解することによりガスが発生する現象などを意味する。
【0019】
ケースカバー14にはガス放出口14aが形成されており、このガス放出口14aにはガス排出管(排出管)15が接続されている。ガス排出管15は、図3に図示するようにクウォータトリムに設けられたノズル部材16に接続されている。
【0020】
ガス排出管15のガス流入端にはガスリリーフ弁21が設けられており、電池収容ケース13の内圧が所定値を超えると、ガスリリーフ弁21が開いて、電池収容ケース13からガス排出管15の内部にガスが流入する。また、この際に、ガスとともに冷却液23の一部がガス排出管15に流入する。
【0021】
ガス排出管15に流入した冷却液23は、ノズル部材16においてミスト化され、クウォータトリムから車外に排出される。これにより、冷却液23が凝集した状態で車外環境に流出するのを防止できる。
【0022】
次に、図1及び図2を参照しながら、蓄電装置の構造を詳細に説明する。
(電池収容ケース13について)
電池収容ケース13は、上側が開口した箱型形状であり、ケース外周面には多数の放熱フィン31が形成されている。このように多数の放熱フィン31を設けることにより、外気との接触面積を増大させ、組電池12の放熱を促進することができる。電池収容ケース13には、熱伝導性の高いステンレスなどの金属材料(ステンレスなど)を用いることができる。
【0023】
(組電池12について)
組電池12は、複数の円筒型電池122を並設することにより構成されており、一対の電池フォルダ123の間に支持されている。円筒型電池122としては、リチウムイオン電池、ニッケル水素電池を用いることができる。
【0024】
各円筒型電池122の各電極ネジ軸部131、132は、一対の電池フォルダ123から突出しており、バスバー124を介して直列に接続されている。電極ネジ軸部131、132には、バスバー124を固定するための締結ナット125が締結されている。
【0025】
このように複数の円筒型電池122を並設した電池集合体では、充放電に伴う発熱温度が高くなるため、冷却風を用いた気体冷却のみでは冷却不足になる。そこで、本願発明では、気体よりも冷却能力に優れた冷却液23に組電池12を浸漬させることにより、組電池12を冷却している。
【0026】
ここで、冷却液23としては、比熱、熱伝導性と沸点が高く、電池収容ケース13、組電池12を腐食させず、熱分解、空気酸化、電気分解などを受けにくい物質が適している。さらに、電極端子間の短絡を防止するために、電気的絶縁性の液体が望ましい。例えば、フッ素系不活性液体を使用することができる。フッ素系不活性液体としては、スリーエム社製フロリナート、Novec HFE(hydrofluoroether)、Novec1230を用いることができる。
【0027】
また、フッ素系不活性液体以外の液体、例えば、水を用いることができる。この場合、水を電池収容ケース13に収容する際に、異物の混入を阻止して電池短絡を防止する必要がある。
【0028】
次に、図4を参照しながら、各円筒型電池122の構成を詳細に説明する。図4は、円筒型電池の断面図である。筒状の電池外套缶134の内側には電極体135が組み込まれている。
【0029】
この電極体135は、両面に正活物質が塗布された帯状の正電極体135bと両面に負
活物質が塗布された帯状の負電極体135cとをセパレータ135aを介して渦巻状に巻
き回すことにより構成されている。
【0030】
電池外套缶134には、電解液が注入されている。なお、この電解液は、セパレータ1
35aの中に含浸させてもよい。
【0031】
正活物質として、リチウム−遷移元素複合酸化物であるLiCoO2、LiNiO2
LiFeO2、LiCuO2、LiMnO2、LiMO2(MはCo、Ni、Fe、Cu
及びMnよりなる群から選ばれた少なくとも2種の遷移元素)、LiMn24を例示で
きる。負活物質としては、リチウムイオンを電気化学的に吸蔵及び放出することが可能な
ものであれば特に限定されない。具体例としては、天然黒鉛、人造黒鉛、コークス、有機
物焼成体、金属カルコゲン化物を例示することができる。
【0032】
電解液の溶質として使用するリチウム塩としては、LiClO4、LiCF3SO3
LiPF6、LiN(CF3SO22、LiN(C25SO22、LiBF4 、LiSbF6及びLiAsF6 を例示でき、リチウム塩を溶かすために使用する有機溶媒としては、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、ビニレンカーボネート、ブチレンカーボネート等の環状炭酸エステルと、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、メチルエチルカーボネート等の鎖状炭酸エステルとの混合溶媒を例示することができる。
【0033】
電極体135の電池長手方向(Y方向)の両端には、円板状の集電板136が溶接され
ている。集電板136の資材としては、アルミニウム箔、ステンレス箔、銅箔を例示でき
る。
【0034】
集電板136は、導電線137を介して、正及び負極ネジ軸部131、132を保持す
る保持板139に対して電気的に接続されている。
【0035】
保持板139には、正及び負極ネジ軸部131、132の取り付け位置とは異なる位置
に破壊式の弁139´が形成されており、この破壊式の弁139´は保持板139に対してパンチ加工を施すことにより形成することができる。
【0036】
電磁異常状態の際に発生したガスにより、電池外套缶134の内圧が限界圧力値(例えば、2気圧)以上に昇圧されると、破壊式の弁139´が破壊され、そこから円筒型電池122の外部、つまり、電池収容ケース13の冷却液23内にガスが放出され、電池外套缶134の内圧上昇を抑制することができる。
【0037】
(ケースカバー14について)
ケースカバー14は、電池収容ケース13のカバー取付面13eに対して、不図示の締
結ボルトにより固定されている。ケースカバー14の平面視中央部には、ガス放出口14aが形成されており、このガス放出口14aには車外にガスを排出するためのガス排出管15が接続されている。
【0038】
(ガス排出管15)
ガス排出管15のガス流入端には、ガスリリーフ弁21が設けられており、このガスリリーフ弁21は電池収容ケース13の内圧が所定値(例えば、2気圧)を超えると、作動する。
【0039】
したがって、電池異常でない場合には、ガスリリーフ弁21が閉じているため、電池収容ケース13の内部を密閉構造にすることができる。これにより、電池収容ケース13の外部から冷却液23の中に異物が混入するのを阻止することができる。ガス排出管15には、樹脂、金属(例えばステンレス)を用いることができる。
【0040】
次に、図5を参照しながら、ノズル部材16の構造を詳細に説明する。図5は、ガス排出管15及びノズル部材16の断面図である。ただし、ガス排出管15の一部を省略して図示している。
【0041】
ノズル部材16の噴霧路16aは、先端部に向かって拡径しており、ガス排出管15の中心軸と同軸上に配置されている。噴霧路16aの先端部は、図3に図示するように、車両のクウォータトリムに設けられており、このクウォータトリムから車外にミスト化された冷却液23が排出される。
【0042】
本実施形態では、通常の噴霧装置に備え付けられているミスト生成のための圧縮空気供給部を不要としている。これは、電池収容ケース13の内圧上昇に伴ってガス排出管15にガスが放出されるため、圧縮空気供給部が無くても、ノズル部材16のみで冷却液23をミスト化できるからである。これにより、ミスト化手段の小型化及びコストの削減を図ることができる。
【0043】
また、ノズル部材16により冷却液23がミスト化されるため、ノズル部材16による噴霧方向の制約を少なくすることができる。これにより、ガス排出管15のガス排出位置の自由度を高めることができる。
【0044】
次に、図2及び図5を参照しながら、電池異常時における蓄電装置及びノズル部材16の挙動を説明する。過充電などの電池異常により円筒型電池122の電解液が電気分解すると、ガスが発生して、円筒型電池122の内圧が上昇する。円筒型電池122の内圧が所定値を超えると、破壊式の弁139´が破壊され、そこから冷却液23の中にガスが放出される。
【0045】
冷却液23の中にガスが放出されると、電池収容ケース13の内圧が上昇する。電池収容ケース13の内圧が2気圧に達すると、ガスリリーフ弁21が作動して、ガス放出口14aを介して、電池収容ケース13の内部のガスがガス排出管15に流入する。この際、ガスとともに一部の冷却液23が凝集した状態でガス排出管15に流入する。
【0046】
ガス排出管15に流入したガスは、ノズル部材16の噴霧路16aから排出される際に流速が増し、冷却液23がミスト化される。これにより、車道などの車外環境に対して冷却液23が凝集した状態で排出されるのを防止できる。
【0047】
ここで、ケースカバー14のガス放出口14aから放出されるガス及び冷却液23をガス収容容器に収容することにより耐圧対策とすることもできる。しかしながら、この方法では、放出されるガスのガス量及び冷却液23の液量に応じた容積のガス収容容器を設ける必要があるため、蓄電装置が大型化する。
【0048】
これに対して、本実施形態では、ガス排出管15の先端部に取り付けられたノズル部材16により、電池収容ケース13から放出される冷却液23を全てミスト化できるため、ガス収容容器を不要とすることができる。これにより、蓄電装置1を小型化することができる。
【0049】
また、ガス収容容器に対して車外に連通するガス排出パイプを接続する構成も考えられる。しかしながら、この構成では、ガス収容容器に一旦収容された冷却液23が走行時の振動により車外に流出しないように流出防止策を施す必要がある。
【0050】
具体的には、ガス排出パイプの排出口をガス収容容器よりも高い位置に配置して、冷却液の流出を防止する必要がある。これに対して、本実施形態では、電池収容ケース13から放出された冷却液23を全てミスト化して車外に排出するため、排出位置に対する制約を少なくすることができる。
【0051】
(実施形態1の変形例)
圧縮空気を供給するための空気供給部を設けて、この空気供給部から供給される空気とガス排出管15の内部を移動するガスとを混合してミスト化し、ノズル部材から排出する構成にすることもできる。
【0052】
この場合、ノズル部材は、空気導入口、冷却液流入口及び排出口が形成されたノズル部を有しており、空気導入口及び冷却液流入口からそれぞれ導入された空気及び冷却液23をノズル部内で混合してミスト化し、排出口から排出する構成にすることができる(内部混合方式)。また、ノズル部の外側で冷却液23と空気とを混合する方式(外部混合方式)を用いても良い。
【0053】
これにより、実施形態1と同様に、冷却液23が凝集化した状態で車外の環境に排出されるのを防止できる。また、空気供給部から供給される空気を用いることにより、冷却液23を容易にミスト化することができる。
【0054】
(実施形態2)
次に、図6を参照しながら、本実施形態のガス排出補助装置について説明する。図6は、ファンの正面図である。本実施形態では、実施形態1のノズル部材16を省略して、ガス排出管15の排出口近傍にファン(ミスト化手段)17を配置している。なお、蓄電装置の構造については、実施形態1と同様であるため、説明を省略する。
【0055】
ファン17は、車両のイグニションONと同時に回転させる構成であってもよいし、電池異常のときにのみ回転させる構成であってもよい。電池異常のときにのみファン17を回転させる構成として、下記の構成を例示することができる。本実施形態によれば、ファン17を用いた簡易な構成で冷却液23をミスト化することができる。
【0056】
不図示のコントローラは、円筒型電池122に設けられた温度センサから出力される温度情報に基づき、円筒型電池122の電池温度を監視している。円筒型電池122の電池温度が所定温度(例えば、リチウムイオン電池の場合には70℃)を越えると、該コントローラからファン17の駆動回路に作動信号が出力される。
【0057】
次に、図2及び図6を参照しながら、本実施形態のガス排出補助装置の動作について説明する。ケースカバー14のガス放出口14aから放出された冷却液23は、ガスとともにガス排出管15の排出口に向かって移動する。この際、冷却液23は凝集した状態でガス排出管15の内部を移動する。
【0058】
ガス排出管15から排出された冷却液23は、ファン17の回転作用により送風された空気と混合して、ミスト化される。これにより、実施形態1と同様に、冷却液23が凝集化した状態で車外の環境に排出されるのを防止できる。
(実施形態2の変形例)
ファン17の代わりにタイヤのホイール(ミスト化手段)3(図3参照)を用いこともできる。この場合、ガス排出管15の排出口をホイール3の近傍に設けて、ホイール3の回転作用により冷却液23をミスト化することができる。これにより、ファン17を省略して、構造を簡素化するとともにコストを削減することができる。
【0059】
(実施形態3)
次に、図7を参照しながら、本実施形態のガス排出補助装置について説明する。図7は、振動ユニットの概略図である。本実施形態では、実施形態1のノズル部材16を省略して、ガス排出管15の排出口近傍に振動ユニット(ミスト化手段)18を配置している。なお、蓄電装置の構造については、実施形態1と同様であるため、説明を省略する。
【0060】
振動ユニット18は、振動板(当接部)181と、一対の超音波振動子(加振手段)182とを含む。振動板181は、ガス排出管15の管路方向視において、ガス排出管15の排出口とオーバラップした位置に配置されており、ガス排出管15からガスとともに排出された冷却液23が振動板181に当接するようになっている。
【0061】
振動板181の裏面(ガス排出管15に対して反対側の面)には、一対の超音波振動子182が設置されており、これらの超音波振動子182は、リード線(加振手段)183を介して駆動回路(加振手段)184に接続されている。駆動回路184から出力された駆動信号は、リード線183を介して超音波振動子182に入力する。その結果、超音波振動子182が駆動され、振動板181が振動する。
【0062】
次に、図2及び図7を参照しながら、本実施形態のガス排出補助装置の動作について説明する。ケースカバー14のガス放出口14aから放出された冷却液23は、ガスとともにガス排出管15の排出口に向かって移動する。この際、冷却液23は凝集した状態でガス排出管15の内部を移動する。
【0063】
ガス排出管15から排出された冷却液23は、振動板181に当接して、振動板181の振動作用によりミスト化される。これにより、実施形態1と同様に、冷却液23が凝集化した状態で車外の環境に排出されるのを防止できる。
【0064】
さらに変形例として、実施形態1と同様に、ガス排出管15の排出口にノズル部材を設けることもできる。この場合、ノズル部材から噴射された冷却液23を振動板181に当接させることにより、冷却液23をより確実にミスト化することができる。
【0065】
なお、超音波振動子182は、車両のイグニションONと同時に駆動させる構成であってもよいし、電池異常のときにのみ駆動させる構成であってもよい。
【0066】
(実施形態4)
図8を参照しながら、本実施形態の蓄電装置の構成を説明する。図8は、蓄電装置の斜視図であり、(a)が電池正常時、(b)が電池異常時の状態を図示している。本実施形態の蓄電装置10は、実施形態1の蓄電装置に、ガスを収容するためのガス収容容器71を付加した構成になっている。実施形態1と同一の構成要素については、同一符号を付して、詳細な説明を省略する。
【0067】
ケースカバー14には、ガス放出口14a(以下、第1のガス放出口14aという)と異なる位置に、ガス放出口(以下、第2のガス放出口という)が形成されており、この第2のガス放出口には膨張及び収縮可能なガス収容容器71が接続されている。このガス収容容器71の接続方法としては、溶接、接着剤による接着などを用いることができる。
【0068】
ガス収容容器71には、ナイロン66を用いることができる。ここで、ナイロン66の表面にクロロプレンゴム、シリコンゴムなどをコーティングして、耐熱処理を施すのが好ましい。
【0069】
第2のガス放出口には弁(不図示)が形成されており、この第2のガス放出口の弁は、電池収容ケース13の内圧が所定値(以下、破壊圧力という)になると破壊する。この第2のガス放出口の弁の破壊圧力は、ガスリリーフ弁21の作動圧よりも高い値に設定するのが好ましい。例えば、ガスリリーフ弁21の作動圧が2気圧である場合には、第2のガス放出口の弁の破壊圧力を4気圧に設定することができる。
【0070】
第2のガス放出口の弁が破壊されると、電池収容ケース13からガス収容容器71へのガスの排出が許容され、電池収容ケース13の内圧上昇を抑制することができる。
【0071】
上述の構成において電池異常により円筒型電池122からガスが放出されると、電池収容ケース13の内圧が上昇する。放出されたガスが少ない場合には、ガス排出管15からのガス排出のみで電池収容ケース13の内圧上昇を十分に抑制することができる。この場合、実施形態1と同様の効果をえることができる。
【0072】
他方、円筒型電池122から放出されたガス量が多く、ガス排出管15からのガス放出のみでは、電池収容ケース13の内圧上昇を十分に抑制できない場合には、第2のガス放出口の弁が破壊される。
【0073】
次に、第2のガス放出口を介して電池収容ケース13の内部のガスがガス収容容器71に放出され、図7(b)に図示するように、ガス収容容器71が膨張するとともに、電池収容ケース13の内圧が低下する。なお、ガス収容容器71が膨張をしている間、ガス排出管15からのガスの排出は継続している。
【0074】
このように、本実施形態では、電池異常の際に、最初にガス排出管15からガスの排出を行い、ガス排出管15からのガス排出のみでは内圧上昇を抑制できない場合には、ガス収容容器71にガスを放出させて、電池収容ケース13の内圧上昇を抑制している。
【0075】
これにより、ガス収容容器71を有しない蓄電装置よりも電池収容ケース13の耐圧強度を低く設定することができる。その結果、蓄電装置を軽量化することができる。
【0076】
電池収容ケース13の内圧が下がると、ガス収容容器71に流入したガスは、第2のガス放出口を通って電池収容ケース13に流入し、ガス放出口14aからガス排出管15に放出される。
【0077】
この際に、ガス排出管15の中にガスとともに流入した冷却液23は、実施形態1と同様にノズル部材16によってミスト化される。したがって、冷却液23が凝集した状態で車外の環境に流出するのを防止できる。
【0078】
ガス排出管15からのガスの放出に伴い、ガス収容容器71は徐々に収縮する。このように、一旦膨張したガス収容容器71を収縮させることにより、蓄電装置10を交換する際に車両構造物にガス収容容器71が当接するのを防止できる。これにより、蓄電装置10を小型化して、交換作業を容易化することができる。
【0079】
(他の実施形態)
組電池12を複数の角型電池(蓄電体)を接続することにより構成してもよいし、キャパシタにより構成することもできる。
【0080】
また、上述の各実施形態では、蓄電装置を後部座席の下部に設置したが、他の位置、例えば、助手席の下部、コンソールボックス、トランクルームに配置することもできる。このように、本発明では、冷却液23をミスト化して排出できるため、蓄電装置の搭載位置の自由度をも高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0081】
【図1】蓄電装置の分解斜視図である。
【図2】蓄電装置の断面図である。
【図3】車幅方向から視た車両の側面図である。
【図4】円筒型電池の断面図である。
【図5】ノズル部材の断面図である。
【図6】ファンの正面図である。
【図7】振動ユニットの概略図である。
【図8】実施形態4の蓄電装置の斜視図であり、(a)が電池正常時、(b)が電池異常時の状態を図示している。
【符号の説明】
【0082】
1 10 蓄電装置
3 ホイール
12 組電池
13 電池収容ケース
14 ケースカバー
14a ガス放出口
15 ガス排出管
16 ノズル部材
16a 噴霧路
17 ファン
18 振動ユニット
181 振動板
182 超音波振動子
183 リード線
184 駆動回路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
蓄電体と、
該蓄電体と熱交換を行う液状の熱交換媒体と、
前記蓄電体及び前記熱交換媒体を収容する収容容器と、
前記蓄電体から発生したガスを前記収容容器の外部に排出するための排出管と、を有する蓄電装置のガス排出補助装置であって、
前記ガスとともに前記排出管に流入した前記熱交換媒体をミスト化するミスト化手段を有することを特徴とする蓄電装置のガス排出補助装置。
【請求項2】
前記ミスト化手段は、前記排出管の排出口に設けられたノズル部材であることを特徴とする請求項1に記載の蓄電装置のガス排出補助装置。
【請求項3】
前記ミスト化手段は、前記排出管から排出される前記熱交換媒体に対して空気を送風するファンであることを特徴とする請求項1に記載の蓄電装置のガス排出補助装置。
【請求項4】
前記ファンは、タイヤのホイールを兼ねることを特徴とする請求項3に記載の蓄電装置のガス排出補助装置。
【請求項5】
前記ミスト化手段は、前記排出管から排出される前記熱交換媒体に当接する当接部材と、前記当接部材を振動させる加振手段とを有することを特徴とする請求項1に記載の蓄電装置のガス排出補助装置。
【請求項6】
前記蓄電体は、複数の蓄電要素を電気的に接続した集合体であることを特徴とする請求項1乃至5のうちいずれか一つに記載の蓄電装置のガス排出補助装置。
【請求項7】
請求項1乃至6のうちいずれか一つに記載の蓄電装置のガス排出補助装置を有する車両。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2009−193882(P2009−193882A)
【公開日】平成21年8月27日(2009.8.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−35022(P2008−35022)
【出願日】平成20年2月15日(2008.2.15)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】