説明

薄型表示装置の梱包構造及び薄型表示装置の梱包方法

【課題】梱包箱が転倒しても、梱包箱に梱包された薄型表示パネルや薄型表示装置が変形することを防止し、梱包作業がより簡単に行える薄型表示装置の梱包構造を提供する。
【解決手段】一端部(5t1)が薄型表示装置(50)の前面側に位置し他端部(5t2)が薄型表示装置(50)の後面側に位置し中間部が薄型表示装置(50)の天側に位置するよう薄型表示装置(50)に掛け置かれた補強板(5)と、薄型表示装置(50)の天側部位に装着されて天側部位を前後方向から支持するクッション部材(7)と、補強板(5)の一端部(5t1)側に固定された緩衝部材(6)と、を備える。クッション部材(7)が薄型表示装置(50)の天側部位を補強板(5)を介して前後方向から支持した状態で、緩衝部材(6)が画像表示面(1a)に当接または近接対向する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、薄型表示装置の梱包構造及び薄型表示装置の梱包方法に係る。
【背景技術】
【0002】
液晶パネルや有機ELパネルなどの薄型表示パネルや、薄型表示パネルを用いた薄型表示装置を被梱包物として輸送する際に用いる梱包構造の例として、被梱包物の四隅を緩衝材で支持する周知の一般的梱包構造や、その構造の改良として特許文献1に開示された薄型表示装置の梱包構造がある。
【0003】
特許文献1には、液晶テレビ本体の下部の左右両端と上部の左右両端に保持部材を当接させて液晶テレビ本体を段ボール箱に収納する構造において、スポンジ板を貼り付けた補強板を、そのスポンジ板が表示パネルの左右方向中央部を予圧するように液晶テレビ本体に対しその上下方向に巻回したリング状として固定する梱包構造が記載されている。そして、この梱包構造によれば、薄型表示装置の表示画面が大きくても、輸送時に付与される衝撃や振動によって生じる表示パネル中央部の揺れをスポンジ板により抑制して、輸送中の振動や衝撃に耐えられるとされる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−232360号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、薄型表示パネルや薄型表示パネルを用いた薄型表示装置は、壁掛け、吊り下げ等の様々な形態で設置し得ることから、大画面化と共に、より軽量化、薄型化されることが市場から求められている。
【0006】
軽量化については、例えば、薄型表示パネルの構造枠である表示パネル枠、あるいは薄型表示パネルを収納する筐体などを、従前の鉄系金属からアルミニウムなどの軽金属に変更することなどで対応が図られる。
この材料変更等により、表示装置として従前10kg程度あった質量が、6kg程度まで軽量化されてきている。
反面、同じ画面サイズで比較して表示パネル自体あるいは表示装置自体の剛性が低下する傾向にある。
【0007】
薄型化については、液晶を用いた液晶表示パネルの場合、セルパネル、光学シート、拡散板、などの各部材自体の厚さを薄くすると共にそれら部材間の距離を縮めて配設することなどで対応が図られる。
この対応により、表示装置として従前30mm以上あった最薄部の厚さが、10mm以下にまで薄くできている。
【0008】
ところで、このようにして軽量化、薄型化された薄型表示パネルやそれを用いた薄型表示装置を梱包して輸送する際に発生する不具合の中に、従前発生し得なかったものがある。
【0009】
具体的には、第1として、外部から付与される振動により、セルパネルとその背面(後面)側に隣接する光学シートとが擦れ合い、あるいは叩き合ってセルパネル背面に傷が付くことがある、という不具合である。
これは、セルパネル自体が薄くなって中央部がより大きく前後に振動することに加えて、薄型化のためにセルパネルと隣接する光学シートとの間の距離が狭くなっていることに起因する。
【0010】
第2として、梱包箱も薄型化され従前の箱よりも転倒し易くなっており、仮に梱包箱が転倒した場合に、梱包されたセルパネルまたは表示装置の天側の枠の中央が、転倒方向に凸となるように屈曲変形してしまう場合がある、という不具合である。
【0011】
図13(a)、(b)は、この屈曲変形を説明するための図である。
被梱包物101は、例えば薄型表示パネルであり、その四隅に緩衝材102が嵌め込まれており、被梱包物101とその四隅に嵌め込まれた緩衝材102とが梱包箱103に収められている。図では理解容易のため、梱包箱103を一点鎖線で示している。
ここで、図13(a)は、梱包箱103を床などに縦置きした状態であり、図13(b)は、それを矢印方向に転倒させてしまった状態を示している。
【0012】
図13(b)に示すように、梱包箱103の転倒により、薄型表示パネル101の天側の中央部付近に、転倒の衝撃により転倒方向に凸となるように変形した屈曲変形部Kが生じてしまう。
【0013】
これは、上述のように大型化及び薄型化によって、薄型表示装置の筐体の剛性が低下している上、その筐体の四隅は緩衝材で支持されるものの各緩衝材の間である各辺の中央部分が自由な状態になっているため、転倒で梱包箱の側面が床面に衝突した際の衝撃に、筐体の天側の枠が強度的に耐えられないことが原因である。
【0014】
これらの不具合に対し、特許文献1に記載された梱包構造によれば、表示面の中央部に当接する緩衝部材によってセルパネルの前後方向の振動が抑制されるので、第1の不具合に対しては抑制効果が得られることが推察される。
しかしながら、薄型表示パネルあるいは薄型表示装置の天側枠の中央部分は緩衝材によって支持されず、自由な状態になっているので、第2の不具合に対して充分な抑制効果が得られないものと推察される。
【0015】
また、特許文献1に記載された梱包構造は、梱包時の作業において改善されるべき点がある。
【0016】
すなわち、被梱包物が薄型表示パネルや表示装置であって、その厚さが上述した10mm以下という極薄であると、被梱包物に巻回してリング状に両端を接続する際に、弱く巻き付けると振動を抑えることができず、逆に強く巻き付けるとスポンジ材が表示面に強く当たりすぎて剛性が低下している薄型表示パネル側への悪影響が懸念される、という改善点がある。
また、被梱包物に対し、緩衝板を巻き付ける作業とその端部同士を接続してリング状にする作業とを予め施す必要があり、多くの工数がかかるという改善点がある。
また、誤って被梱包物に緩衝板を巻き付けずに梱包箱に入れてしまった場合には、梱包箱から一旦被梱包物を取り出して緩衝板を巻き付け、再度梱包箱に収納しなければならず、2度の収納工程が必要になり、梱包作業の効率化が図りにくい、という改善点がある。
【0017】
そこで、本発明が解決しようとする課題は、梱包箱が転倒しても、梱包箱に梱包された薄型表示パネルや薄型表示装置が変形することを防止し、梱包作業がより簡単に行える薄型表示装置の梱包構造及び薄型表示装置の梱包方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0018】
上記の課題を解決するために、本願発明は次の1)〜4)の構成を有する。
1) 画像表示面(1a)を有する薄型表示装置(50)を梱包する薄型表示装置の梱包構造であって、
一端部(5t1)が前記薄型表示装置(50)の前面側に位置し他端部(5t2)が前記薄型表示装置(50)の後面側に位置し中間部が前記薄型表示装置(50)の天側に位置するよう前記薄型表示装置(50)に掛け置かれた補強板(5)と、
前記薄型表示装置(50)の天側部位に装着されて前記天側部位を前後方向から支持するクッション部材(7)と、
前記補強板(5)の前記一端部(5t1)側に固定された緩衝部材(6)と、を備え、
前記クッション部材(7)が前記薄型表示装置(50)の天側部位を前記補強板(5)を介して前後方向から支持した状態で、前記緩衝部材(6)が前記画像表示面(1a)に当接または近接対向するよう構成されたことを特徴とする薄型表示装置の梱包構造である。
2) 前記薄型表示装置(50)の天側の左右の隅部それぞれに装着される左右のコーナークッション(4c)(4d)と梱包箱(8)と、を備え、
前記薄型表示装置(50)を、前記クッション部材(7)及び前記左右のコーナークッション(4c)(4d)を装着した状態で前記梱包箱(8)に収納した際に、前記左右のコーナークッション(4c)(4d)によって前記クッション部材(7)の左右方向の位置決めがなされることを特徴とする1)に記載の薄型表示装置の梱包構造である。
3) 前記クッション部材(7)は、前記薄型表示装置(50)の天側部位を左右の隅部を含めて前後方向から支持することを特徴とする1)に記載の薄型表示装置の梱包構造である。
4) 前記緩衝部材(6)は、前記画像表示面(1a)に対し、前記画像表示面(1a)の中心を含む領域で当接または近接対向することを特徴とする1)〜3)のいずれかに記載の薄型表示装置の梱包構造である。
また、上記の課題を解決するために、本願発明は次の5)〜8)の手順を有する。
5) 画像表示面(1a)を有する薄型表示装置を梱包する薄型表示装置の梱包方法であって、
一端側(5t1)に緩衝部材(6)を備え中間に屈曲部(kk)を有して断面が略J字状とされた補強板(5)を、前記緩衝部材(6)が前記画像表示面(1a)に対向し他端(5t2)側が前記薄型表示装置(50)の背面側に位置するように前記薄型表示装置(50)の天側部位に掛け置く補強板掛け置きステップと、
前記薄型表示装置(50)の天側部位を前記補強板(5)を介して前後方向から支持するクッション部材(7)を、前記補強板掛け置きステップで前記薄型表示装置(50)に掛け置かれた前記補強板(5)の上に装着するクッション部材装着ステップと、を有することを特徴とする薄型表示装置の梱包方法である。
6) 前記薄型表示装置(50)の天側の左右の隅部それぞれに、前記クッション部材(7)の左右方向の位置を規制するコーナークッション(4c)(4d)を装着するコーナークッション装着ステップを有することを特徴とする5)に記載の薄型表示装置の梱包方法である。
7) 前記クッション部材(7)は、前記薄型表示装置(50)の天側部位を左右の隅部を含めて前後方向から支持することを特徴とする5)に記載の薄型表示装置の梱包方法である。
8) 前記緩衝部材(6)は、前記画像表示面(1a)に対し、前記画像表示面(1a)の中心を含む領域で当接または近接対向することを特徴とする5)〜7)のいずれかに記載の薄型表示装置の梱包方法である。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、梱包箱が転倒しても、梱包箱に梱包された薄型表示パネルや薄型表示装置が変形することを防止し、梱包作業がより簡単に行える、という効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の実施例の薄型表示装置の梱包方法で梱包する被梱包物の例を説明する三面図である。
【図2】本発明の実施例の薄型表示装置の梱包方法を説明するための第1の図である。
【図3】本発明の実施例の薄型表示装置の梱包方法を説明するための第2の図である。
【図4】本発明の実施例の薄型表示装置の梱包方法を説明するための第3の図である。
【図5】本発明の実施例の薄型表示装置の梱包構造における主要部材の展開図である。
【図6】本発明の実施例の薄型表示装置の梱包構造における主要部材の使用状態を説明するための図である。
【図7】本発明の実施例の薄型表示装置の梱包構造を説明するための横断面図である。
【図8】本発明の実施例の薄型表示装置の梱包構造を説明するための縦断面図である。
【図9】図8の部分拡大図である。
【図10】図8の他の部分の拡大図である。
【図11】本発明の実施例の薄型表示装置の梱包構造を説明するための模式図である。
【図12】本発明の実施例の薄型表示装置の梱包構造の変形例を説明するための斜視図である。
【図13】従来の薄型表示装置の梱包構造における課題を説明するための模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明の実施の形態を、好ましい実施例により図1〜図12を用いて説明する。
【0022】
図1は、本発明により梱包する被梱包物の一例を示す三面図である。
その被梱包物の一例は薄型表示装置50であり、例えば液晶モニタである。
【0023】
薄型表示装置50は、液晶の薄型表示パネル1と、その画像表示面1aを露出する開口部2aを有して薄型表示パネル1を収納する筐体2と、を有する。
筐体2は、背面側に回路基板等を収納して突出する突出部3を有している。
【0024】
薄型表示装置50は32型の液晶モニタであり、外形の幅W,高さH,突出部3以外の厚さT1,突出部3での厚さT2は、それぞれ次のようになっている。
W=773mm,H=496mm,T1=7mm,T2=23mm
また、筐体2は突出部3を含みアルミニウムで形成されており、液晶モニタ50の質量は5.7kgである。
【0025】
図2〜図4は、薄型表示装置50を本発明の梱包方法で梱包する手順を説明する斜視図である。
【0026】
まず、薄型表示装置50をポリエチレンの梱包袋(各図には図示せず)に入れ、その後、図2に示すように、筐体2の四隅の部分に緩衝材としてコーナークッション4a〜4dを取り付ける。
すなわち、筐体2の地側の左右の二隅をそれぞれコーナークッション4a,4bで支持し、天側の左右の二隅をそれぞれ緩衝材4c,4dで支持するようにする。
梱包袋は他の部材に対して充分に薄く、また、その使用の有無は本発明で得られる効果に影響しないので、以下の説明において省略する。
【0027】
各コーナークッション4a〜4dには、筐体2の四隅の部分がほぼガタなく挿入される形状で形成された切り込み4a1〜4d1が設けられている。図2では、切り込みは4a1〜4c1についてのみ示す。
コーナークッション4a〜4dは、発泡スチロールで形成される。
【0028】
次に、図3に示すように、折り曲げて略J字状にした補強板5をそのJ字の対向する内面間に筐体2が入り込むように天側からコーナークッション4c,4dの間に装着する。
【0029】
ここで補強板5の詳細を説明する。補強板5の展開図を図5に示す。
【0030】
補強板5は、例えば段ボールを用いて形成されている。段ボールを用いた場合、図5に示すように、段ボール素材を矩形にカットし、その一方の端部5t1と他方の端部5t2との間の中間部に、紙面手前側が谷折りとなる折り筋5a〜5cを設ける。この折り筋5a〜5cは、フルート方向に直交する方向に設けると良い。
また、段ボールのフルート種類は限定されない。折り筋の代わりにミシン目としてもよい。
補強板5には、図5に示すようにフルート方向を設定した場合、そのフルート方向における一方の端部5t1側(図5では上方)に緩衝板6が固定されている。
【0031】
緩衝板6は、発泡スチロールの内のEPS(Expanded Polystyrene)やスポンジ材などで直方体に形成され、補強板5に対して糊や両面テープなどの固定手段で固定されている。
また、補強板5の使用態様で内側となる内面5eの幅W2が、幅W3(図2参照)と同じか又は僅かに小さくなるように設定されている。
【0032】
図6に、補強板5を折り筋5a〜5cで折り曲げて梱包に供する形態にしたものを示す。
折り筋5a,5bはほぼ直角に折り曲げ、折り筋5cはわずかに折リ曲げる。
これにより、補強板5は、中間に屈曲部kkを有して断面が略J字状の形態になされる。ここで略J字状とは、J字状はもとより、端部5t2が図6よりの下方に位置してコ字状となる場合を含む。
【0033】
ここで折り筋5a,5bの位置は、図6のように折り曲げた状態で、次のように設定される。
すなわち、折り筋5aと折り筋5bとの間の内面5eの天地方向位置と、緩衝板6における図6の天地方向の中央までの距離Dm1が概ねH/2(図1参照)となっている。
また、内面5eの図6における左右方向の幅T3が厚さT1(図1参照)と同じか又は僅かに大きくなっている。
折り筋5cの位置については後述する。
【0034】
また、補強板5において、折り筋5aと図5の下方側の端部との間の内面を内面5dとし、折り筋5bと折り筋5cとの間の内面を内面5fとし、折り筋5cと図5の上方側の端部との間の内面を内面5gとする。
【0035】
図3で示す梱包方法の説明に戻り、図6に示す形態に折り曲げられた補強板5を、前後の向きを、緩衝板6が薄型表示パネル1の画像表示面1a側に位置する向きとし、内面5dと内面5fとの間に薄型表示装置50の天側の部分が入り込むよう矢印D3の方向に取り付ける。
【0036】
次に、図4で示すように、コーナークッション4c,4dの間に、緩衝材としてクッション7(詳細は後述する)を天側から矢印D4の方向に装着する。
その後、薄型表示装置50にコーナークッション4a〜4dと補強板5とクッション7を取り付けた状態で梱包箱8に収め、梱包箱8の各フラップ8fを封緘して梱包作業は完了する。図4において、梱包箱8は薄型表示装置50等に対して縮小して描かれている。
【0037】
ここで、クッション7について説明する。
クッション7は、発泡スチロールなどの緩衝材料で形成される。
クッション7により、薄型表示装置50の天側の中央部が補強板5を介して支持される。その詳細を、図7〜図11を用いて説明する。
【0038】
図7は、図4におけるS2A−S2A断面図である。
図8は、図4におけるS2B−S2B断面図である。
図9は、図8における天側の部分拡大図である。
図10は、図9におけるDTエリアの拡大図である。
図11は、各部材の寸法関係を説明するための模式図である。
【0039】
図7に示すように、クッション7は、左右方向の幅W4が、コーナークッション4cと4dとの間の隙間間隔である幅W3と同じか僅かに小さい寸法に設定されている。
これにより、梱包箱8の内部では、薄型表示装置50の天側において、コーナークッション4c,クッション7,及びコーナークッション4dが、左右方向にガタがほとんどなく配列される。
【0040】
図8及び図9に示すように、クッション7には、断面形状における中央部にスリット7aが形成されている。
スリット7aの前側の内面である内面7a1と、内面7a1に対向する後側の内面である内面7a2とは、それぞれ、開口側(図8の下方)に向かうに従って互いの間隔が広がる方向の傾斜面とされている。
後側の内面7a2には、先端面が天地方向にほぼ鉛直な面となるリブ7a3が、左右方向に離隔して複数形成されている(図7も参照)。
【0041】
スリット7aの奥側の幅T5は、薄型表示装置50の厚さT1に補強板5の厚さの2倍を足した幅とされている。
すなわち、スリット7aを、薄型表示装置50の補強板5が取り付けられた部分にその補強板5の上から嵌め込むことで、クッション7は薄型表示装置50に対して前後方向にガタ無く取り付けられる。
また、クッション7の外形における前後方向の幅は、梱包箱8の前後方向の内寸と同じか僅かに小さく設定されているので、梱包箱8に対してクッション7は前後方向にガタなく収められる。これは、コーナークッション4a〜4dについても同様である。
【0042】
すなわち、薄型表示装置50は、コーナークッション4a〜4d、並びに、補強板5及びクッション7を介して、梱包箱8に対して前後方向及び左右方向にガタなく収められる。
【0043】
クッション7において、その前側の内面7a1の鉛直線に対する傾斜角度θ7(図9参照)は、例えば約4°に設定される。
この傾斜角度θ7は、補強板5における折り筋5aと折り筋5bとの間の内面5eと折り筋5cとの間の天地方向距離Dm2(図6参照)と、緩衝板6の厚さT4との関係で設定される。これについて具体的に説明する。
【0044】
図10において、筐体2の前側端面2bに対して画像表示面1aはΔdだけ奥まった位置(図10における右方)にある。
そして、緩衝板6は、梱包状態でその画像表示面1aにほぼ面当たりで接する、あるいは極めて接近した位置で対向するようになっているのが望ましい。
従って、緩衝板6の厚さをT4とすると、寸法関係を模式的に示した図11から明らかなように、
tanθ7=(T4−Δd)/Dm2 ・・・(式1)
の関係で各寸法が設定されている。
具体的には、T4=10mm,Δd=1.5mm,Dm2=120mmである。
【0045】
これに伴い、梱包状態で、補強板5における内面5fに対向する外面5fr(図6参照)は、クッション7のスリット7aの前側の内面7a1にほぼ面当たりで接する。
【0046】
リブ7a3は、筐体2の背面に補強板5の内面5dを面当たりで接触させるために設けられている。
また、リブ7a3は、所定の幅と高さを有して左右方向に離隔して設けられている。これにより、梱包状態で、前方から後方に向けて衝撃が外部から付与された場合、あるいは梱包箱が後方に転倒した場合に、薄型表示装置50の、その背面方向への移動に伴う運動エネルギーが、リブ7a3の変形(潰れ)により効果的に吸収され、良好な緩衝効果が発揮される。
【0047】
上述した実施例の梱包方法及び梱包構造によれば、被梱包物である薄型表示装置50は、梱包箱8内でコーナークッション4a〜4dにより四隅がガタなく支持され、天側は、隅部を含めてコーナークッション4c,4d及びクッション7でガタなく支持されている。
従って、梱包箱が前側又は後側に転倒した際にも、被梱包物の天側が支持されているので被梱包物の天側の変形が防止される。
【0048】
また、梱包状態において、薄型表示装置50における画像表示面1aの中央部を含む領域に緩衝板6が当てられ、又は僅かな隙間で対向配置されており、緩衝板6が固定された補強板5の前方向への変形がクッション7の前側の内面7a1により規制されているので、外部方向から付与される振動によって、薄型表示装置50の薄型表示パネル1におけるセルパネル1s(図1及び図10参照)が前後方向に振動しても、その振幅の増大が緩衝板6により抑制される。
また、折り筋5a〜5cとフルート方向とを直交する方向とすれば、緩衝板6を支持する補強板5は、前後方向の変形に対して剛性がより高くなるので、セルパネル1sの振動抑制効果を強くすることができる。
補強板5が段ボールの場合、セルパネル1sの振動を良好に抑制できるようにフルート種類,中芯等の材質,及びフルート方向を適宜選択することができる。
これにより、セルパネル1s自体の損傷が防止され、セルパネル1sの直後に配置された光学パネル(図示せず)との接触(擦れ合い、叩き合い)が回避され、セルパネル1sの後面の傷付きが防止される。
【0049】
また、梱包作業において、補強板5は、被梱包物(薄型表示装置50など)を梱包箱8に収めた後にでも取り付けることができるので、作業が容易で効率が向上する。
また、梱包後に不具合によりその補強板5を交換する場合も、被梱包物(薄型表示装置50など)を取り出すことなく交換が可能であり、作業性が極めて良好である。
【0050】
本発明の実施例は、上述した構成及び手順に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において変形例としてもよいのは言うまでもない。
補強板5の材質は段ボールに限定されない。例えば樹脂で形成されていてもよい。樹脂の例としてポリプロプロピレン(PP)がある。
上述したように、被梱包物は、薄型表示装置50に限らず、薄型表示パネル1の単体であってもよい。
また、被梱包物が表示装置や表示パネルに限らず、ガラスや樹脂などの薄板材の梱包にも適用できる。
薄型表示パネル1のセルパネル1sにおける画像表示面1aに対して当てる緩衝材6の当て位置、その面積、形状は限定されるものではないが、振幅が最大になる画像表示面1aの中央が含まれていることが望ましい。
【0051】
図12は、上述した実施例の梱包構造の変形例である。この変形例は、コーナークッション4c,4dとクッション7との替わりにそれらを一体にしたクッション71を用いた例である。
この変形例においても、被梱包物である薄型表示装置50は、梱包箱8内で、天側の二つの隅部及びそれらの間の部分がクッション71でガタなく支持されている。クッション71の外形寸法が、コーナークッション4c,4d及びクッション7が独立していた場合の各外形寸法より大きくなるものの、薄型表示装置50にクッションを装着するという工数については1/3になる。
この変形例においても、梱包箱が前側又は後側に転倒した際にも、被梱包物の天側が支持されているので被梱包物の天側の変形が防止される。
【符号の説明】
【0052】
1 薄型表示パネル
1a 画像表示面
1s セルパネル
2 筐体
2a 開口部
2b 前側端面
3 突出部
4a〜4d 緩衝材(コーナークッション)
4a1〜4d1 切り込み
5 補強板
5a〜5c 折り筋
5d,5e,5f 内面
5fr 外面
5t1,5t2 端部
6 緩衝板
7,71 クッション
7a スリット
7a1,7a2 内面
7a3 リブ
8 梱包箱
50 薄型表示装置(液晶モニタ)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
画像表示面を有する薄型表示装置を梱包する薄型表示装置の梱包構造であって、
一端部が前記薄型表示装置の前面側に位置し他端部が前記薄型表示装置の後面側に位置し中間部が前記薄型表示装置の天側に位置するよう前記薄型表示装置に掛け置かれた補強板と、
前記薄型表示装置の天側部位に装着されて前記天側部位を前後方向から支持するクッション部材と、
前記補強板の前記一端部側に固定された緩衝部材と、を備え、
前記クッション部材が前記薄型表示装置の天側部位を前記補強板を介して前後方向から支持した状態で、前記緩衝部材が前記画像表示面に当接または近接対向するよう構成されたことを特徴とする薄型表示装置の梱包構造。
【請求項2】
前記薄型表示装置の天側の左右の隅部それぞれに装着される左右のコーナークッションと梱包箱と、を備え、
前記薄型表示装置を、前記クッション部材及び前記左右のコーナークッションを装着した状態で前記梱包箱に収納した際に、前記左右のコーナークッションによって前記クッション部材の左右方向の位置決めがなされることを特徴とする請求項1記載の薄型表示装置の梱包構造。
【請求項3】
前記クッション部材は、前記薄型表示装置の天側部位を左右の隅部を含めて前後方向から支持することを特徴とする請求項1記載の薄型表示装置の梱包構造。
【請求項4】
前記緩衝部材は、前記画像表示面に対し、前記画像表示面の中心を含む領域で当接または近接対向することを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の薄型表示装置の梱包構造。
【請求項5】
画像表示面を有する薄型表示装置を梱包する薄型表示装置の梱包方法であって、

一端側に緩衝部材を備え中間に屈曲部を有して断面略J字状とされた補強板を、前記緩衝部材が前記画像表示面に対向し他端側が前記薄型表示装置の背面側に位置するように前記薄型表示装置の天側部位に掛け置く補強板掛け置きステップと、
前記薄型表示装置の天側部位を前記補強板を介して前後方向から支持するクッション部材を、前記補強板掛け置きステップで前記薄型表示装置に掛け置かれた前記補強板の上に装着するクッション部材装着ステップと、を有することを特徴とする薄型表示装置の梱包方法。
【請求項6】
前記薄型表示装置の天側の左右の隅部それぞれに、前記クッション部材の左右方向の位置を規制するコーナークッションを装着するコーナークッション装着ステップを有することを特徴とする請求項5記載の薄型表示装置の梱包方法。
【請求項7】
前記クッション部材は、前記薄型表示装置の天側部位を左右の隅部を含めて前後方向から支持することを特徴とする請求項5記載の薄型表示装置の梱包方法。
【請求項8】
前記緩衝部材は、前記画像表示面に対し、前記画像表示面の中心を含む領域で当接または近接対向することを特徴とする請求項5〜7のいずれか1項に記載の薄型表示装置の梱包方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2011−46426(P2011−46426A)
【公開日】平成23年3月10日(2011.3.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−197914(P2009−197914)
【出願日】平成21年8月28日(2009.8.28)
【出願人】(000004329)日本ビクター株式会社 (3,896)
【Fターム(参考)】