説明

薄板状蓄熱部材

【課題】耐圧性があり、過冷却現象が発生せず、また、取付け姿勢に関係なる使用できる板状の蓄熱装置を提供すること。
【解決手段】アルミ箔からなり、セルの両面が開口した薄板状ハニカム構造体1を、合成樹脂シートで形成した袋体の10内部に収容し、更に、該袋体10の内部に潜熱型の蓄熱材6を充填して前記薄板状ハニカム構造体1を蓄熱材に浸漬した状態で袋体10を閉止して構成した薄板状蓄熱部材1B。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、家屋の床暖房装置、あるいは自動車のエンジンやバッテリなどの保温、更に風呂桶などの大量の熱量の蓄熱と、これを利用した保温設備などに使用される薄板状の蓄熱装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、床構造の中に面状の電熱ヒータあるいは温水管を配置し、これに通電したりボイラより温水管へ温水を供給して床板を加熱する床暖房装置は一般的に使用されている。また、面状の電熱ヒータなどの薄いヒータと潜熱型の蓄熱材を組合わせ、それに夜間電力を利用して夜間に蓄熱材を加熱し、この蓄熱材の溶融潜熱分の熱量を蓄熱するものが多数提案されている(例えば、特許文献1,2,3参照)。
【特許文献1】特開平7−42960号公報
【特許文献2】特開2002−228174号公報
【特許文献3】特開2003−176923号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
前記特許文献1記載の発明は、ナイロンやポリプロビレンなどの合成樹脂製の筒状体の内部に蓄熱材を充填した複数本の蓄熱部材の両端を板材で連結して一体とし、これを袋の中に収容し、更に顯熱型の蓄熱材の水溶液あるいは粘ちょう水溶液を袋の中に充填して潜熱型の蓄熱部材の周囲を顯熱型の蓄熱材で囲んだものが提案されている。
【0004】
前記のように蓄熱材を収容する容器としては直径が1インチ程度の合成樹脂の筒状体を使用し、これの内部に潜熱型の蓄熱材を充填した上で全体を袋で覆っているので30mm以上もの厚さがある上に、筒状体を疎間隔に分散配置する場合がある。この蓄熱装置はかなり厚さが必要であることから、主としてコンクリート床構造の中に埋める方法しか用途がなく、例えば、通常の家屋の床下との間に空間のある木質の床の構造には適用することは可能であるが、実際には寸法上の制約がある。
【0005】
特許文献2記載の発明は、ポリプロピレンや塩化ビニル樹脂など熱可塑性樹脂を押出成形してハニカム板としたものを使用し、その空洞の内部に蓄熱材を充填する構成の板状の蓄熱部材が提案されている。
【0006】
しかし、このハニカム板は押出成形によって製造したもので、例えば厚さが4.5mm、幅が486mm、長さが2000mmのもので、耐圧力が50〜80kg/cm2 の特性を持っており、床材としてと十分使用できるものである。
【0007】
しかしながら、この構造のハニカム板を使用して蓄熱部材を構成することは問題があった。即ち、厚さが4.5mmのハニカム板であるが、一個のセルの一辺の長さは約3mm程度のストロー状のものである。しかも、この樹脂は蓄熱材との濡れ性が良くないこともあって、全長にわたって蓄熱材を充填することは困難であり、その上に蓄熱材と空気が混在した部分が発生する欠点がある。
【0008】
特許文献3に記載の発明は、合成樹脂製のハニカム板を断熱板として使用し、面状ヒータの両側と下側にハニカム板を配置し、これらを上面、側面、下面の一部からなる金属板製パネル(外郭体)の内部に収容して板状の暖房用パネルとしたものである。
【0009】
この構造の暖房用パネルは、効率的に組立てることができ、更に、これを敷設する作業も簡単であるなど優れた効果があり、また、従来の温水パイプを使用した床暖房装置などと比較すると遮音性がある。しかし、この構造の暖房用パネルの場合は、金属製パネルの空間の中に面状ヒータや蓄熱部材を挿入して使用するという制約があることから、蓄熱材を収容した袋状の蓄熱部材しか使用することができない。
【0010】
従来の蓄熱部材は、筒状体を集合させたもの、あるいは一つの袋の中に蓄熱材を充填して使用する構造のものが多く使用されており、従って大量の蓄熱方法についはては全く提案されておらず、特にに蓄熱部材を断熱部材、例えば自動車の天井部の断熱や建造物の壁構造の断熱として使用する方法については全く提案されていない。
【0011】
(積層型蓄熱部材)
本出願人は、蓄熱部材を積層して配置し、例えば、上層/下層の二層構造、あるいは上層/中間層/下層の三層構造を構成する「複合蓄熱部材」の場合は、上層に高温の融解点、中間層に中間の温度の融解点、そして下層に低温の融解点をそれぞれ持っている蓄熱材を充填した蓄熱部材を積層状態で使用する方法と平板状蓄熱シートを先に提案した(特願2006−242723号、平成18年9月7日出願、先願発明という。)。
【0012】
この出願に記載された蓄熱部材は、従来の袋状の蓄熱部材を小部屋に仕切って「過冷却現象」を抑制して平板状にしたものを積層して使用する形式の蓄熱部材や、偏平断面形状のパイプの中に蓄熱材を充填したパイプ型の蓄熱部材を並列させたものを使用する形式の蓄熱部材が使用されている。
【0013】
この特殊構造の蓄熱部材の用途の例としては、1)金属パイプを使用したものは高温適応型であり、例えば自動車のオイルパンの内部のみ、内部の外面の両方、更に外面のみに配置した蓄熱部材、2)自動車の天井の外面なるいは内面にシート状の蓄熱部材を配置し、これを断熱層として使用する蓄熱部材、3)寒冷地で使用するパッテリの保温装置、更に4)風呂桶の保温装置など、大量の熱量を蓄熱する装置に適した装置である。
【0014】
(耐圧性、吸熱・放熱の熱伝達性・熱交換性)
ところで、前記積層型の蓄熱部材に場合は、蓄熱材を充填し易い構造のものであること、耐圧性と熱伝導性に優れていること、また、水平面のみではなく、縦材・横材あるいは斜め材として任意に使用できるものは前記発明の明細書には提案していない。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明は、薄板状の蓄熱部材の耐圧性と、板材としての形態保持性を持ち、更に、蓄熱材に対して速やかに伝熱したり、あるいは蓄熱している熱量を速やかに放出することがでる薄板状蓄熱部材を提供することを目的とするものである。
【0016】
本発明に係る薄板状蓄熱部材は、次のように構成されている。
1)薄板状ハニカム構造体のセルの内部に潜熱型の蓄熱材を充填し、該セルの両開口面を薄板材で閉止したことを特徴としている。
【0017】
2)少なくとも前記薄板状ハニカム構造体はアルミ箔、銅箔など熱伝導性の良好な金属箔ないし金属薄板で構成されていることを特徴としている。
【0018】
アルミ箔を使用する場合は、蓄熱材との接触による酸化を防止するためにアルマイト加工やコーティング加工なとの酸化防止処理を行う必要がある。
【0019】
3)前記薄板状ハニカム構造体は、セルの両面が開口したアルミ箔を使用した薄板状ハニカム構造体であって、これを合成樹脂シートで形成した袋体の内部に収容し、更に、この袋体の内部に潜熱型の蓄熱材を充填し、前記薄板状ハニカム構造体を蓄熱材に浸漬した状態で袋体を閉止したことを特徴としている。
【0020】
合成樹脂シートは、複数層の構造物で、表面層として延伸されたボリエステルフイルムやナイロンフイルムなどであり、裏面層は直鎖状低密度ポリエチレンあるいは低密度ポリエチレンフイルムであり、更に、表面側にアルミ箔を配置した複合フイルムを使用するのが良い。
【0021】
4)アルミ箔からなり、セルの両面が開口している薄板状ハニカム構造体を合成樹脂シートで形成した袋体の内部に収容すると共に、潜熱型の蓄熱材を充填して袋体を閉止した薄板状蓄熱部材を、複数枚積層して使用する積層型の蓄熱部材において、前記複数枚の薄板状の蓄熱部材に、それぞれ異なる融点を持つ蓄熱材が充填され、高温側の蓄熱部材には高融点の蓄熱材が充填されたものを、低温側に位置する蓄熱部材には低融点の蓄熱材が充填されたものを順次配置したことを特徴としている。
【0022】
5)薄板状ハニカム構造体のセルの内部に潜熱型の蓄熱材を充填し、該セルの両開口面を薄板材で閉止した薄板状蓄熱部材を複数枚、積層して使用する積層型蓄熱部材において、前記複数枚の薄板状の蓄熱部材に、それぞれ異なる融点を持つ蓄熱材が充填され、高温側の蓄熱部材には高い融点の蓄熱材が充填されたものを、低温側に位置する蓄熱部材には低融点の蓄熱材が充填されたものを順次配置したことを特徴としている。
【0023】
6)前記複数枚の薄板状蓄熱部材を積層する際、アルミ箔や銅箔などの熱伝導性の良好な金属箔を介在させたことを特徴としている。
【0024】
7)薄板状蓄熱部材を保温するバッテリなとの物体の形状に合わせて賦形したことを特徴としている。
【0025】
8)車両の天井部分に、少なくとも1枚の前記薄板状蓄熱部材を載置ないし貼付け、これによって熱を遮断することを特徴としている。
【0026】
9)建造物の壁構造の内部に、前記蓄熱部材を1層あるいは複数層配置したことを特徴とする住宅の居住空間の温度調節装置である。
【0027】
10)床板の下方に薄板状蓄熱部材と面状電熱ヒータを積層配置した床構造において、前記薄板状蓄熱部材は、アルミ箔製薄板状ハニカム構造体のセルの内部に潜熱型の蓄熱材を充填し、該セルの両開口面を薄板材で閉止したもの、セルの両面が開口した薄板状ハニカム構造体を、電気絶縁性シートで形成した袋体の内部に収容し、更に、該袋体の内部に潜熱型の蓄熱材を充填して前記薄板状ハニカム構造体を蓄熱材に浸漬した状態で袋体を閉止したものであることを特徴とする床暖房装置である。
【発明の効果】
【0028】
本発明は、前記のように構成したことにより次の効果を奏することができる。
a)アルミ箔などの金属箔からなるハニカム構造体の内部に蓄熱材を充填し、両面を薄板材で閉止した平板状ハニカム体とした薄板状蓄熱部材は、耐圧性がある上に蓄熱材をハニカム構造体で区画し、これが伝熱壁を形成しているので、外部の熱を速やかに吸熱・蓄熱する。
【0029】
b)合成樹脂シート、好ましくは電気絶縁性のシートからなる袋体の内部に、両面を閉止しないカニカム構造体を収容すると共に蓄熱材を充填した袋体を閉止して薄板状蓄熱部材を構成することによって、ハニカム構造物を圧力の補強体として、また、熱伝達壁として使用することができ、従来の蓄熱シートと同様な製造工程によって薄板状蓄熱部材を形成することができる。
【0030】
c)前記aあるいはbの構成の薄板状蓄熱部材を複数枚準備し、それぞれの部材に融点の異なる蓄熱材を充填し、これを融点の高いものから低いものの順序で積層し、高融点のものを吸熱面側に使用することによって、高融点/中間融点/低融点の順序で蓄熱材が融解して全体として大量の熱量を蓄熱することになる。また、二層構造のものでもそれに応じた熱量を蓄熱することができる。
【0031】
そして保温の際には、低融点のものから中間融点のもの、そして高融点のものへと固化材しながら放熱するので、かなりの温度変化に係わらず大量の熱量を放出して保温することができる。
【0032】
d)前記c)の構造のハニカム構造体を使用した薄板状蓄熱部材を積層して使用する際、必要とする薄板状蓄熱部材の間、好ましくは全部の層にアルミ箔を配置しておくことによって蓄熱部材間に良好な熱伝達をすることができる。
【0033】
e)本発明に係る薄板状蓄熱部材は、1枚で使用したり、複数枚で使用することによって自動車の天井の受熱を遮断ないし遅延状態として車内に熱伝達することを防止ないし遅延することができる。
【0034】
また、本発明に係る薄板状蓄熱部材は、内部にハニカム構造物を内蔵していることから厚さを一定に保持することができ、縦方向など水平以外の状態でも使用することができ、例えば、壁の内部に配置することによって建造物の壁面の断熱性を高めることができる。
【0035】
f)アルミ箔製のハニカム構造体を蓄熱材を仕切る部材として、熱伝達をする部材として使用することによって、従来のシート状の蓄熱部材に比較して厚さ方向の強さを改善すると共に、蓄熱材の内部に伝熱させ、あるいは内部からの放熱を効果的に行うことができるものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0036】
(実施例1)
本発明の第1の実施例は、図1に示すように厚さ方向にセル(通常、六角形)を集合状態で形成した薄板状のハニカム板1の下面に底板2を熱融着した底板付ハニカム板3を素材として使用する例を示している。
【0037】
底板付ハニカム板3は、表面に熱接着層をコーティングした底板2(アルミ箔など)とセルの両面が開口しているハニカム板1(アルミ箔製)とを重ね、これを気密性の袋体の中に収容し、この袋体内を真空状態にして電子レンジなどの加熱器内に収容して電子加熱して底板2とハニカム板1とを溶着して底板付ハニカム板3を製造する。
【0038】
前記底板付ハニカム板3をベルトコンベアなどの移送装置4上に載置し、所定位置に移送し、所定の位置でノズル5より所定の蓄熱材6を送出して個々のセル内に充填する。
【0039】
次に、前記ハニカム板3の上面に、下面に熱接着層をコーティングした蓋シート7を積層し、次いでこの蓋シート7の上面より加熱ロール8a、8bで加熱してハニカム板1の上面に前記蓋シート7を熱接着して薄板状蓄熱部材(蓄熱シート、蓄熱板)1Aを製造する。完成した薄板状蓄熱部材1Aは図2に示す通りである。
【0040】
(材料について)
前記薄板状蓄熱部材1Aのハニカム板1、底板2、蓋シート7の全部をアルミ箔あるいはアルミ薄板を使用することによって伝熱性に優れた部材を構成することができる。
【0041】
また、底板2と蓋シート7の両方、あるいは一方、例えば、底板2に延伸フイルム用合成樹脂製シートを使用したり、この合成樹脂シートとアルミ箔や銅箔などの金属箔とをラミネートした複合シートを使用して熱伝達性を良好にすることができる。
【0042】
蓄熱材(剤)は、薄板状蓄熱部材1Aを使用する場所によって適宜選択して使用することになるが、例えばエリスリトール(融点、以下同じ:119℃)、酢酸ナトリウム(58℃)、ポリエチレングリコール(40〜50℃)、チオ硫酸ナトリウム(48℃)、パラフィンC20(45℃)、硫酸ナトリウム(32.4℃)、塩化カルシウム(29.7℃)・・・など、各種の潜熱型の蓄熱材を使用して所定の温度で融解させてその温度における蓄熱を行うように構成する。
【0043】
(蓄熱材の過冷却現象について)
大量の熱量を蓄熱しようとする場合は、それに対応して大量の蓄熱材を必要とする。蓄熱材は、ある温度において固体のものが吸熱によって融解して(相変化)その融解熱に相当する熱量を蓄熱する。そして放熱によって温度低下して元の固体に変化する。このような固体と液体の間の相変化を伴う現象を繰返すことによって、大量の熱量を蓄熱するものであるが、この相変化の繰返し回数は蓄熱材の種類によって限られている。ある回数と一体として融解・固体となる量の大小によって、固体の状態から変化しなくなる現象が発生する。この再現性に欠ける現象を「過冷却現象」と称しているが、この現象が発生すると最早、潜熱型の蓄熱作用がなくなり、また、この現象の発生が近づくと蓄熱・放熱量が次第に減少してくる。従って、蓄熱材を使用する際には、この現象の発生を避けながら、必要とする熱量を蓄熱することが重要である。
【0044】
本発明者の長い経験によると、少量のものに区画すると吸熱による融解と放熱による固化とがメリハリが付いて相変化することが多い。そこで本発明においてはハニカム板を仕切り体として使用することによって蓄熱材の内部まで伝熱することによって熱交換性を高めるものである。
【0045】
また、メリハリのある蓄熱作用を行うためには、蓄熱材の表面から内部まで伝熱させ、あるいは内部から表面に伝熱させる作用を速やかに行わせる必要がある。そこで蓄熱材の層を横断し、かつ小区画に区分する構造材料としてアルミ箔を素材とするハニカムを使用するのである。
【0046】
更に、本発明に係る薄板状蓄熱部材は床材に適している。従来は、偏平な袋体の中に蓄熱材を収容して薄い袋状の蓄熱体とし、これを床暖房装置の内部に使用しているが、このの場合は、床板の下側に重量を負担できない層が形成され、床板の一部が重量によってくぼみ易くなったり、場合によっては歩行と共に音を発するようになるなどの理由から、床構造の補強に十分に配慮する必要があった。
【0047】
ハニカム板は、軽量化の用途、例えば航空機の構造材料や仕切り材料に使用され、軽量化を図りながら補強もできる構造として使用されている。本発明は、この特性を活かして床構造を補強しながら、蓄熱材の吸熱と放熱とを効率的に行うものである。
【0048】
(大量の熱量の蓄熱方法)
前記のようにハニカム板を使用することによって多くのメリットがあるが、この構造を採用することによって大量の蓄熱が可能となる。蓄熱材を薄板状に形成した蓄熱部材は、面状ヒーターの上側に配置して使用する場合が多いが、従来の床暖房装置の場合は偏平な袋の中に蓄熱材を充填した蓄熱材シートを使用しており、耐圧性が低かったことから暖房床構造に使用した303mmピッチに設けた根太の上に床板を配置して蓄熱材への押圧力を負担させないようにしていた。従って、蓄熱材シートを2枚重ねて使用することなどは到底できなかったのである。大量に熱量を蓄熱する方法は、蓄熱材を量を増加すれば良いのであるが、この方法は耐圧力が低いことや過冷却現象を惹起するなどの問題から、到底実現することはできなかった。
【0049】
本発明者は、前記先願発明において提案しているように、複数枚の薄板状蓄熱部材を使用し、吸熱側と放熱側とで凝固温度の異なる蓄熱材を使用し、上下あるい隣接するものを段階的、連鎖的に蓄熱材を融解させ、また、連鎖的に蓄熱材を凝固させるように構成することによって過冷却現象を抑制しながら大量の熱量を蓄・放熱する方法である。
【0050】
(実施例2)
図3は第2の実施例のハニカム板封入型蓄熱部材1Bを示すもので、アルミ箔製のハニカム板1を電気絶縁性のある合成樹脂製の袋体10の内部に収容する。次いでこの袋体10の中に蓄熱材6を充填し、袋体10の口部10aを熱溶着したものである。この実施例のハニカム板1は、製造されたままの上下両面が開口したものを使用しており、このハニカム板1は蓄熱材6の中に浸漬された状態となっている。
【0051】
ハニカム板1のセルが貫通状態であるので蓄熱材6の層の中に仕切り部材と伝熱部材が配置されたような状態となり、良好な吸熱と放熱を行うことができる上に、ハニカル板1としての耐圧力を有しており、このハニカム板1自体が板状で取り扱いできることから、水平の状態のみならず、斜め方向や縦方向など、融解し液体となっても偏らず、各種の姿勢で使用することができる。
【0052】
なお、図3にはハニカム板1が1枚使用されたものを示しているが、長い袋体10を使用して複数枚のハニカム板1を収容し、隣接するハニカム板1の間の袋体を線状に溶着して仕切ったものとすることを可能である。また、ハニカム板1の適当な部分に穴を開けておき、この穴の部分の袋体1の表裏面を線状あるいはスポット的に溶着して袋体10の両面が一体的に連結することによって各種の運動マットのように取扱性を向上させることができる。
【0053】
(実施例3)
図4は、ハニカム板封入型蓄熱部材1Bを3枚使用した例を示すものである。
【0054】
最上層に蓄熱部材1Baを、次の中間層に蓄熱部材1Bbを、更に下層に1Bcを積層し、その上面と間にアルミ箔11を介在させている。
【0055】
前記3枚の蓄熱部材1Bの中に入れたハニカム板1a,1b,1cはセルの大きさが上部が最も小さく、下段が大きいものを使用している。図5はハニカム1a,1b,1cの大きさと厚さの変化を示す斜視図であって、異なる大きさのセルのハニカム板を3枚使用している。
【0056】
ハニカム板1のセルの大きさを変更する理由は、上部に高温の融点の蓄熱材を、中間部に中温の融点の蓄熱材を、更に下部に低温の融点の蓄熱材を選定している。同じ大きさのセルで構成されたハニカム板を使用しても良いが、高温の蓄熱材は固化した時に固い結晶を形成して融解し難い点があるので、融解し易いように小さく区分するためである。その他のセルは蓄熱材の持つ融解点に関係して選定している。
【0057】
上部のハニカム板1a用の蓄熱材としては、硝酸ナトリヴム・水塩が好ましい。
中間のハニカム板1b用の蓄熱材としては、55〜35℃パラフインが好ましい。
【0058】
更に、下層のハニカム板1c用の蓄熱材としては、硫酸ナトリウム・10水塩が好ましい。
【0059】
前記のように三種類の蓄熱材を使用し、上層を吸熱側、下層を放熱側とすると、蓄熱の挙動は、吸熱工程においては上層が熱源の熱量を受けて先づ融解し、次にこの上層の熱量を受けて中間層が融解し、更にこの中間層の熱量を受けて融解するが、この融解の状態はドミノ倒しのような熱伝達しながら融解していくのである。また、下層が放熱面であるから、放熱によって下層が先づ固化し、次いで中間層が固化し、更に上層が固化していくのである。
【0060】
前記のように3種類の蓄熱材を使用した蓄熱部材1Ba〜1Bcを使用することによって蓄熱量がかなり大きなものとなる。
【0061】
(実施例4)
図6は、ハニカム封入型蓄熱部材1Cを複数枚積層したものを容器形に賦形した保温容器12のの中にバッテリ13を収容し、その上を断熱蓋14で閉止している。なお、図示されていないが、前記保温容器12の周囲には発熱ヒーターや温水や蒸気の供給手段が設けられてこれによって熱量を賦与して前記蓄熱部材1Cを構成する蓄熱体に蓄熱するようになっている。このバッテリは、特に寒冷地で使用する自動車に搭載して発電作用が低下しないようにするものである。
【0062】
(実施例5)
図7は、家屋の壁構造16を示しており、発泡コンクリート等からなる外壁16aと内壁材16cと、該内壁材16cに隣接して本発明に係る薄板状蓄熱板1Dが設けられている。前記薄板状蓄熱板1Dとしては、前記各実施例に記載されたものを適宜使用することができる。
【0063】
(実施例6)
図8は、ハニカム板を使用した薄板状蓄熱部材1Eを自動車の天井面に設ける場合の例を示すもので、前記蓄熱部材1Eの下層に厚手の金属板(あるいは賦形性の断熱シート)18を設けたもので、この金属板18を利用して自動車の天井の形状などに合わせて賦形して使用することができる。また、前記蓄熱部材1Eの上面に断熱層19を設け、前記蓄熱材1Eのよる蓄熱作用と熱反射性を利用した遮熱作用と共に断熱したり、あるいは放熱を防止することができる。
【0064】
(実施例7)
図5に示すように、セルの大きさの異なるハニカム構造体1a、1bの二枚を使用した二層のハニカム構造体、あるいは前記二層ハニカム構造体に更にハニカム構造体1cを加えた三枚のハニカム構造体を積層したものを、一つの袋体の中に収容し、更に蓄熱材を充填することによって、蓄熱材を厚さ方向に複雑に仕切り、過冷却が発生せず、耐圧性にすぐれ、更に蓄熱量の大きな潜熱蓄熱型の薄板状蓄熱部材を構成することができ、これを各種の蓄熱用途に使用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0065】
【図1】ハニカム板を使用した薄板状蓄熱部材の製造工程説明図である。
【図2】前記工程で製造された薄板状蓄熱部材の断面図である。
【図3】ハニカム板封入型蓄熱部材の断面図である。
【図4】前記ハニカム板封入型蓄熱部材を積層して使用した蓄熱装置を示す図である。
【図5】ハニカム板の積層構造の斜視図である。
【図6】寒冷地用バッテリの保温装置の横断面図である。
【図7】家屋の壁構造に薄板状蓄熱部材を使用した断熱構造を示す断面図である。
【図8】自動車の天井部の断熱層の説明図である。
【符号の説明】
【0066】
1 ハニカム板 1A,1B,1C,1D,1E 薄板状蓄熱部材
2 底板 3 底板付ハニカム板 4 移送装置
5 蓄熱材充填ノズル 6 蓄熱材 7 蓋シート
8a,8b 加熱ロール 10 袋体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
薄板状ハニカム構造体のセルの内部に潜熱型の蓄熱材を充填し、該セルの両開口面を薄板材で閉止したことを特徴とする薄板状蓄熱部材。
【請求項2】
少なくとも前記薄板状ハニカム構造体は熱伝導性のある金属箔でで構成されていることを特徴とする請求項1記載の薄板状蓄熱部材。
【請求項3】
アルミ箔からなり、セルの両面が開口した薄板状ハニカム構造体を、合成樹脂シートで形成した袋体の内部に収容し、更に、該袋体の内部に潜熱型の蓄熱材を充填して前記薄板状ハニカム構造体を蓄熱材に浸漬した状態で袋体を閉止したことを特徴とする薄板状蓄熱部材。
【請求項4】
アルミ箔からなり、セルの両面が開口している薄板状ハニカム構造体を電気絶縁性のシートで形成した袋体の内部に収容すると共に、潜熱型の蓄熱材を充填して袋体を閉止した薄板状蓄熱部材を、複数枚積層して使用する積層型の蓄熱部材において、
前記複数枚の薄板状の蓄熱部材に、それぞれ異なる融点を持つ蓄熱材が充填され、
高温側の蓄熱部材には高融点の蓄熱材が充填されたものを、低温側に位置する蓄熱部材には低融点の蓄熱材が充填されたものを順次配置したことを特徴とする薄板積層型の蓄熱部材。
【請求項5】
薄板状ハニカム構造体のセルの内部に潜熱型の蓄熱材を充填し、該セルの両開口面を薄板材で閉止した薄板状蓄熱部材を複数枚、積層して使用する積層型蓄熱部材において、
前記複数枚の薄板状の蓄熱部材に、それぞれ異なる融点を持つ蓄熱材が充填され、
高温側の蓄熱部材には高い融点の蓄熱材が充填されたものを、低温側に位置する蓄熱部材には低融点の蓄熱材が充填されたものを順次配置したことを特徴とする薄板積層型の蓄熱部材。
【請求項6】
前記複数枚の薄板状蓄熱部材を積層する際、熱伝導性の良好な金属箔を介在させたことを特徴とする請求項4あるいは5に記載の薄板積層型の蓄熱部材。
【請求項7】
薄板状蓄熱部材を、保温する物体の形状に合わせて賦形したことを特徴とする請求項1ないし6の何れかに記載の蓄熱部材。
【請求項8】
車両の天井部分に、少なくとも1枚の前記薄板状蓄熱部材を載置ないし貼付したことを特徴とする車両の遮熱装置。
【請求項9】
建造物の壁構造の内部に、前記蓄熱部材を1層あるいは複数層配置したことを特徴とする住宅の居住空間の温度調節装置。
【請求項10】
床板の下方に薄板状蓄熱部材と面状電熱ヒータを積層配置した床構造において、
前記薄板状蓄熱部材は、アルミ箔製薄板状ハニカム構造体のセルの内部に潜熱型の蓄熱材を充填し、該セルの両開口面を薄板材で閉止したもの、セルの両面が開口した薄板状ハニカム構造体を、電気絶縁性シートで形成した袋体の内部に収容し、更に、該袋体の内部に潜熱型の蓄熱材を充填して前記薄板状ハニカム構造体を蓄熱材に浸漬した状態で袋体を閉止したものであることを特徴とする床暖房装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2008−89239(P2008−89239A)
【公開日】平成20年4月17日(2008.4.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−270889(P2006−270889)
【出願日】平成18年10月2日(2006.10.2)
【出願人】(592132981)
【Fターム(参考)】