説明

薄膜フィルム、薄膜フィルムの製造方法、包装材料

【課題】ポリグリコール酸樹脂の薄膜を容易にかつ低コストで形成可能とする薄膜フィルムを提供する。
【解決手段】ポリグリコール酸樹脂と、LDPE、LLDPE又はCPPからなる樹脂と、を共押出法によって積層押出した後、ポリグリコール酸樹脂(4)の層からLDPE、LLDPE又はCCPからなる樹脂(5)の層を剥離することでポリグリコール酸樹脂の薄膜フィルムを製膜する。LDPE、LLPDE又はCCPからなる樹脂は接着性ポリオレフィンとのブレンド物であってもよく、その接着性ポリオレフィンの添加量は、その樹脂に対し10質量%以下とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリグリコール酸(PGA)樹脂の薄膜フィルム、その薄膜フィルムの製造方法、及びその薄膜フィルムを用いた包装材料に関する。
【背景技術】
【0002】
下記特許文献1には、剥離性を有する少なくとも2層以上よりなる熱可塑性樹脂積層体を共押出法により積層押出し、然る後、剥離層を剥離する事により製造される薄膜フィルムにおいて、剥離層がエチレン−プロピレンブロック共重合体であることを特徴とするマットな表面を有する薄膜フィルムの製造方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特公平7−81019号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、ポリグリコール酸樹脂(PGA)は、バリア性、非吸着性能に優れ、また、生分解性能をもつため、今後、広く使用が期待される。しかしながら、前記特許文献1には、PGAを薄膜化する具体的な手法については記載されていない。PGAは、耐熱性がポリエチレンよりも悪く、且つ、製膜性能が悪いため、製膜方法は限られ、薄膜化、偏肉制御も困難であった。そこで、PGAを低コストでしかも容易に薄膜化することができるならば、安価で、優れた包装材料を提供することができる。
【0005】
本発明の目的は、ポリグリコール酸樹脂の薄膜を容易に且つ低コストで形成可能とする薄膜フィルムおよびその製造方法を提供することにある。また本発明の別の目的は、前記薄膜フィルムを用い、適度なバリア性、吸着防止、生分解性能を有し、コスト的に優れ、且つ、外観不良が比較的発生しにくい包装材料を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1に記載の発明は、ポリグリコール酸樹脂と、LDPE(低密度ポリエチレン)、LLDPE(線状低密度ポリエチレン)又はCPP(無延伸ポリプロピレン)からなる樹脂と、を共押出法により積層押出した後、前記ポリグリコール酸樹脂の層から、前記LDPE、LLDPE又はCPPからなる樹脂の剥離層を剥離することにより得られる薄膜フィルムである。
【0007】
なお、前記LDPE、LLDPE又はCPPからなる樹脂は、接着性ポリオレフィンとのブレンド物であってもよく、その接着性ポリオレフィンの添加量は、樹脂に対し10質量%以下とする。
請求項2に記載の発明は、前記共押出法により形成された前記ポリグリコール酸樹脂の層の厚みが60μm以下である請求項1に記載の薄膜フィルムである。
請求項3に記載の発明は、前記共押出法により形成された前記ポリグリコール酸樹脂の層と前記剥離層とのラミネート強度が0.01〜1N/15mmである請求項1又は2記載の薄膜フィルムである。
【0008】
請求項4に記載の発明は、ポリグリコール酸樹脂と、LDPE、LLDPE又はCPPからなる樹脂と、を共押出法により積層押出する工程と、前記共押出法により形成された前記ポリグリコール酸樹脂の層から、前記LDPE、LLDPE又はCPPからなる樹脂の剥離層を剥離する工程とを有する薄膜フィルムの製造方法である。
請求項5に記載の発明は、請求項1乃至3の何れか一項に記載の薄膜フィルムを備えた包装材料である。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、ポリグリコール酸樹脂の薄膜を容易に且つ低コストで形成可能とする薄膜フィルムおよびその製造方法を提供することができる。また、本発明によれば、前記薄膜フィルムを用い、適度なバリア性、吸着防止性能を有し、コスト的に優れ、且つ、外観不良が比較的発生しにくい包装材料を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】実施例1を示す包装材料の断面図である。
【図2】実施例2を示す包装材料の断面図である。
【図3】実施例3を示す包装材料の断面図である。
【図4】比較例1を示す包装材料の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明をさらに詳しく説明する。
上述のように、PGAは、バリア性、非吸着性能に優れ、生分解性能を持つため、今後広く使用されることが期待される。しかしながら、PGAは、耐熱性が悪く、かつ、製膜性能が悪いため、製膜方法は限られ、薄膜化、偏肉制御も困難であった。
【0012】
本発明では、PGAと、剥離層としてLDPE(低密度ポリエチレン)、LLDPE(線状低密度ポリエチレン)またはCPP(無延伸ポリプロピレン)からなる樹脂とを共押出法により積層押出し、PGAから剥離層を剥離することにより、薄膜化されたPGAを得ることができる。なお、剥離層を形成する樹脂は、接着性ポリオレフィンとのブレンド物であってもよく、その場合、その接着性ポリオレフィンの添加量は、その樹脂に対し10質量%以下である。接着性ポリオレフィンは公知の樹脂であり、酸等の官能基をポリオレフィンに導入して接着性を付与した、変性ポリエチレン・変性ポリプロピレン等の変性ポリオレフィンである。該変性ポリオレフィンは市販されており、例えば三井化学(株)からアドマーシリーズとして入手できる。また本発明において共押出法の条件は、使用する樹脂により適宜決定すればよい。形成されたPGAと剥離層との積層体は、比較的低いラミネート強度を有しており、そのラミネート強度としては、例えば0.01〜1N/15mm、好ましくは、0.1〜0.3N/15mmである。また、PGAの層の厚みは20μm以下で薄膜化が可能であり、好ましい厚みは3μm〜20μmである。得られた薄膜化されたPGAは、適度なバリア性、吸着防止性能を有し、コスト的に優れ、かつ、外観不良が比較的発生しにくいので、包装材料として有用となる。
【0013】
[実施例]
以下、本発明を実施例および比較例によりさらに説明するが、本発明は下記例に限定されるものではない。
[実施例1]
本発明の実施例1として図1に示す包装材料を作成した。この包装材料では、厚さ12μmの2軸延伸PET(1)にグラビア用インキにより印刷層(2)を形成した。この印刷側にポリウレタン系樹脂のアンカーコート剤(3)を0.5g/m2の塗布量で塗布した。このフィルムのアンカーコート剤塗布面に、2種2層の共押出機により、PGA(クレハ化学製 共押出後の厚み=10μm)(4)とMI8のLLDPE(共押出後の厚み=20μm)(5)とを共押出ラミネートにより積層し、本発明の包装材料を得た。
【0014】
[実施例2]
本発明の実施例2として図2に示す包装材料を作成した。この包装材料では、厚さ12μmの2軸延伸PET(1)にグラビア用インキにより印刷層(2)を形成した。この印刷側にポリウレタン系樹脂のアンカーコート剤(3)を0.5g/m2の塗布量で塗布した。このフィルムのアンカーコート剤塗布面に、2種2層の共押出機により、PGA(クレハ化学製 共押出後の厚み=10μm)(4)とMI8のLLDPE(接着性ポリオレフィンとして三井化学製 アドマーSF600を5質量%の割合でブレンドしたもの。共押出後の厚み=20μm)(6)とを共押出ラミネートにより積層し、本発明の包装材料を得た。
【0015】
[実施例3]
本発明の実施例3として図3に示す包装材料を作成した。この包装材料では、厚さ12μmの2軸延伸PET(1)にグラビア用インキにより印刷層(2)を形成した。この印刷側にポリウレタン系樹脂のアンカーコート剤(3)を0.5g/m2の塗布量で塗布した。このフィルムのアンカーコート剤塗布面に、2種2層の共押出機により、PGA(クレハ化学製 共押出後の厚み=10μm)(4)とMI8のLLDPE(接着性ポリオレフィンとして三井化学製 アドマーSF600を10質量%の割合でブレンドしたもの。共押出後の厚み=20μm)(7)とを共押出ラミネートにより積層し、本発明の包装材料を得た。
【0016】
[比較例1]
本発明の比較例1として図4に示す包装材料を作成した。この包装材料では、厚さ12μmの2軸延伸PET(1)にグラビア用インキにより印刷層(2)を形成した。この印刷側にポリウレタン系樹脂のアンカーコート剤(3)を0.5g/m2の塗布量で塗布した。このフィルムのアンカーコート剤塗布面に、2種2層の共押出機により、PGA(クレハ化学製 共押出後の厚み=10μm)(4)とMI8のLLDPE(接着性ポリオレフィンとして三井化学製 アドマーSF600を15質量%の割合でブレンドしたもの。共押出後の厚み=20μm)(8)とを共押出ラミネートにより積層し、比較例の包装材料を得た。
【0017】
[比較例2]
本発明の比較例2としての包装材料では、厚さ12μmの2軸延伸PET(1)にグラビア用インキにより印刷層(2)を形成した。この印刷側にポリウレタン系樹脂のアンカーコート剤(3)を0.5g/m2の塗布量で塗布した。このフィルムのアンカーコート剤塗布面に、押出機により、PGA(クレハ化学製 バレックス#3000)(4)を10μmの厚みとなるように押出したところ、サージング、膜切れが発生し、製膜できなかった。
【0018】
実施例1〜3及び比較例1の包装材料の共押出界面のラミネート強度を測定した。また、スリッター機を利用して、剥離層の剥離テストを実施した。その結果、接着性樹脂を0〜10質量%の割合でブレンド(実施例1〜3)したものは、ラミネート強度がそれぞれ0.1N/15mm、0.3N/15mm、0.8N/15mmと低強度であり、スリッター機の2軸を利用して剥離テストを行ったところ、実施例1及び2の包装材料は100m/minでの巻取りが可能であり、実施例3の包装材料は75m/15mimでの巻取りが可能であった。これに対し、比較例1のラミネート強度は、1.2N/15mmであり、剥離テストでは、ポリ切れが発生し、スリッター機による剥離ができなかった。結果をまとめて表1に示す。
【0019】
【表1】

【産業上の利用可能性】
【0020】
本発明の薄膜フィルムは、薬効成分などの低吸着性が求められる薬剤等の包装材料に広く利用が可能である。
【符号の説明】
【0021】
1…基材(PET)
2…印刷層
3…アンカー剤
4…PGA
5…線状低密度ポリエチレン(LLDPE)
6…接着性ポリオレフィンを5質量%の割合でブレンドしたLLDPE
7…接着性ポリオレフィンを10質量%の割合でブレンドしたLLDPE
8…接着性ポリオレフィンを15質量%の割合でブレンドしたLLDPE
9…接着剤
10…PGA

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリグリコール酸樹脂と、LDPE、LLDPE又はCPPからなる樹脂と、を共押出法により積層押出した後、前記ポリグリコール酸樹脂の層から、前記LDPE、LLDPE又はCPPからなる樹脂の剥離層を剥離することにより得られる薄膜フィルム。
【請求項2】
前記共押出法により形成された前記ポリグリコール酸樹脂の層の厚みが60μm以下である請求項1に記載の薄膜フィルム。
【請求項3】
前記共押出法により形成された前記ポリグリコール酸樹脂の層と前記剥離層とのラミネート強度が0.01〜1N/15mmである請求項1又は2記載の薄膜フィルム。
【請求項4】
ポリグリコール酸樹脂と、LDPE、LLDPE又はCPPからなる樹脂と、を共押出法により積層押出する工程と、前記共押出法により形成された前記ポリグリコール酸樹脂の層から、前記LDPE、LLDPE又はCPPからなる樹脂の剥離層を剥離する工程とを有する薄膜フィルムの製造方法。
【請求項5】
請求項1乃至3の何れか一項に記載の薄膜フィルムを備えた包装材料。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2013−72029(P2013−72029A)
【公開日】平成25年4月22日(2013.4.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−213107(P2011−213107)
【出願日】平成23年9月28日(2011.9.28)
【出願人】(000003193)凸版印刷株式会社 (10,630)
【Fターム(参考)】