薬剤拡散装置及び薬剤拡散方法
【課題】大風量の気流を効率よく発生させると共に、気流を通過させる開口の配置制約が少なく、小型化などの任意形状のデザインを可能とした使い勝手のよい薬剤拡散装置及び薬剤拡散方法を提供する。
【解決手段】薬剤拡散装置100は、薬剤が含浸された薬剤保持体14と、送風手段13と、を備える。送風手段13は、複数の平板22がモータ11の回転軸17の軸方向と略平行となるように前記回転軸17に取り付けられた平板状ファン12により構成され、モータ11を回転駆動することにより薬剤保持体14に対して気流を発生させて、薬剤保持体14に含浸された薬剤を空気中に拡散する。
【解決手段】薬剤拡散装置100は、薬剤が含浸された薬剤保持体14と、送風手段13と、を備える。送風手段13は、複数の平板22がモータ11の回転軸17の軸方向と略平行となるように前記回転軸17に取り付けられた平板状ファン12により構成され、モータ11を回転駆動することにより薬剤保持体14に対して気流を発生させて、薬剤保持体14に含浸された薬剤を空気中に拡散する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、薬剤拡散装置及び薬剤拡散方法に関し、より詳細には、使用者が身につけて屋外などで携帯使用するのに好適な薬剤拡散装置及び薬剤拡散方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、薬剤を含浸させた薬剤保持体にファンからの気流を当て、有効成分を拡散させる薬剤拡散装置がある。このような薬剤拡散装置に使用されるファンとしては、シロッコファン、プロペラファン、など種々の形状のものが知られている(例えば、特許文献1、2参照)。
【0003】
特許文献1に開示されているファン式薬剤放散装置は、シロッコファンの側面に薬剤保持体を着脱自在に取り付けて装置の薄型化を図ると共に、薬剤保持体の交換が容易に行えるようにしたものである。
また、特許文献2に開示されている送風式害虫防除装置は、シロッコファンなどを用いる装置で、2つの排気口をファンの回転方向に対して傾斜させた形状によって、害虫防除成分を上下に拡散、到達させ易くしたものである。
【0004】
【特許文献1】特開2005−237320号公報
【特許文献2】特開2005−204517号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1、2の装置は、いずれもプロペラファンやシロッコファンを用いて気流を発生させるようにしたものであり、吸気口及び排気口の開口及び薬剤保持体の位置などがファンの形式によって制約を受けることがある。例えば、プロペラファンの場合、ファンの軸方向後方から吸い込まれた空気が前方に向けて排気され、気流がファンの回転軸に沿った方向に発生する。また、シロッコファンによると、ファンの軸方向から吸い込まれた空気が半径方向外方に排気されると共に、回転方向が決まっていた。このように、気流の発生方向が決まっているので、吸気口及び排気口の開口及び薬剤保持体の位置などの設計時におけるデザインが制約される問題があった。さらに、吸排気口の開口が閉鎖されないように配慮する必要があり、使用時の薬剤拡散装置の設置が制限を受ける。また、プロペラファンやシロッコファンは、ファンが逆回転すると発生風量が極端に減少し、且つ気流が逆方向の流れとなり、薬剤拡散作用が阻害されるので使用方法が制限される問題があった。
【0006】
また、薬剤拡散装置を携帯用とした場合、小型且つ効率的な薬剤拡散が強く要求され、少ない消費電力でより多くの風量の気流を発生させることができる送風手段が強く求められていた。
【0007】
本発明は、前述した課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、大風量の気流を効率よく発生させると共に、気流が通過する開口の配置制約が少なく、任意形状のデザインで小型化などを可能とした使い勝手のよい薬剤拡散装置及び薬剤拡散方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の上記目的は、下記の構成により達成される。
(1) 薬剤が含浸された薬剤保持体と、モータを有して当該モータが回転駆動されることにより、当該薬剤保持体に対して気流を発生させて前記薬剤を空気中に拡散する送風手段と、を備えた薬剤拡散装置であって、
前記送風手段は、
複数の平板が前記モータの回転軸の軸方向と略平行となるように前記回転軸に取り付けられた平板状ファンにより構成される
ことを特徴とする薬剤拡散装置。
(2) 前記複数の平板が、
前記回転軸の周方向に対し、対称にして等間隔に配置されている
ことを特徴とする上記(1)に記載の薬剤拡散装置。
(3) 前記複数の平板が、
前記回転軸の周方向に対し、45°、60°、72°、90°、120°、180°のいずれかの間隔毎にそれぞれ離間配置されている
ことを特徴とする上記(2)に記載の薬剤拡散装置。
(4) 前記送風手段により発生する前記気流の流路中に、前記薬剤保持体が配置されている
ことを特徴とする上記(1)から上記(3)のいずれか1つに記載の薬剤拡散装置。
(5) 前記複数の平板が、
前記薬剤保持体を備える
ことを特徴とする上記(1)から上記(3)のいずれか1つに記載の薬剤拡散装置。
(6) 前記送風手段により発生する前記気流が通過し得る開口を複数、備えた
ことを特徴とする上記(1)から上記(5)のいずれか1つに記載の薬剤拡散装置。
(7) 複数の前記開口は、互いに異なる方向に前記気流が通過し得る
ことを特徴とする上記(6)に記載の薬剤拡散装置。
(8) 前記送風手段は、
前記モータに供給される電流値が50mA以下であり、0.1リットル/秒以上の風量の前記気流を発生させる
ことを特徴とする上記(1)から上記(7)のいずれか1つに記載の薬剤拡散装置。
(9) 前記送風手段は、
前記モータの回転軸が時計回り及び反時計回りに回転したとき、略同一風量の前記気流を発生させる
ことを特徴とする上記(1)から上記(8)のいずれか1つに記載の薬剤拡散装置。
(10) 前記薬剤が、
害虫防除剤である
ことを特徴とする上記(1)から上記(9)のいずれか1つに記載の薬剤拡散装置。
(11) 前記平板状ファンの前記平板は、前記モータ側の端部に半径方向にわたって、軸方向と直交方向に延在する補強板が一体に設けられている
ことを特徴とする前記(1)から(10)のいずれか1つに記載の薬剤拡散装置。
(12) 上記(1)から上記(11)のいずれか1つに記載の薬剤拡散装置によって、前記薬剤保持体に含浸された前記薬剤を外部に拡散する
ことを特徴とする薬剤拡散方法。
【0009】
本発明の発明者らは、鋭意検討の結果、モータの回転軸と軸方向と略平行になるように複数の平板をモータの回転軸に取付けて送風手段を構成し回転させることにより、少ない消費電力で十分な風量を得ることができて、開口の配置によらず気流を発生させ、薬剤保持体に対し十分な気流を供給し得ることを見出した。即ち、発明者らは、このような送風手段を設けることにより、消費電力に対する風量効率、前記開口の配置、回転方向などの制約を受けることなく薬剤揮散装置の設計に小型化などの自由度をもたせられることを発見した。
【0010】
したがって、上記構成の薬剤拡散装置によれば、薬剤が含浸された薬剤保持体と、回転軸の軸方向と略平行になるように複数の平板をモータの回転軸に取り付けられた平板状ファンにより構成される送風手段とを備え、モータを回転駆動することにより薬剤保持体に対して気流を発生させて、薬剤保持体に含浸された薬剤を空気中に拡散するようにしたので、吸気口及び排気口の開口の位置を任意位置に設定することができ、設計の自由度が向上して任意のデザインが可能となる。これにより、使用態様に応じた自由な設計ができ、又は配置の仕方によって吸気口及び排気口の開口が閉鎖される虞をなくして、使い勝手のよい薬剤拡散装置が得られる。さらに、少ない消費電力で多くの風量を供給することができる。
【0011】
また、平板は、回転軸の周方向に対し、対称にして等間隔に配置されていることが好ましく、更に45°、60°、72°、90°、120°、180°のいずれかの間隔毎にそれぞれ離間配置されていることが好ましい。これにより、非常に簡単な構成のファンでありながら風量を確保し、且つ回転バランスに優れ、振動や騒音の少ない送風手段が得られる。また、このような形態の平板は、構造が簡単であるので、射出成型によって容易且つ安価に成形することができ、生産性を向上させることができる。
【0012】
更に、送風手段により発生する気流の流路中に薬剤保持体を配置し、或いは、平板に薬剤保持体を備えることができる。これによって、薬剤拡散装置を小型化すると共に、薬剤保持体から効率的に薬剤を拡散することができる。
【0013】
また、送風手段により発生する気流を外部に通過させる開口を複数、備えると共に、当該複数の開口は、互いに異なる方向に気流を通過させ得るので、仮に薬剤拡散装置の配置位置によって前記複数の開口の一部が閉鎖されたとしても、十分な気流が発生しないという虞がなく、したがって効果的に薬剤を拡散することができる。例えば、ネックレスのような形状の薬剤拡散装置とした場合、正面に開口が設けられていたとしても、裏面にも開口を配置すれば、裏表を確認することなく使用することができ、使い勝手が向上する。
【0014】
更に、送風手段は、モータに供給される電流値が1〜100mA、好ましくは1〜50mAであり、0.1〜6リットル/秒、好ましくは0.3〜6リットル/秒の風量の気流を発生できることが好ましい。これにより、少ない電力で薬剤を拡散させるに十分な風量が得られ、例えば、電池駆動される携帯型薬剤拡散装置とするのに好適である。
【0015】
また、送風手段は、回転方向は任意であり、モータの回転方向が時計回りから逆転しても、風向き、風量とも略同一風量の気流を発生させることができ、これにより、正負極を気にすることなく電池などを装着することができるので、使用が容易で、且つ常に一定性能の薬剤拡散性能を維持することが可能な薬剤拡散装置が得られる。
【0016】
薬剤として害虫防除剤を薬剤保持体に含浸させることができ、これにより害虫防除剤を拡散させて、例えば昆虫綱双翅目(ハエ目)のハエ、蚊、ブユ、アブなど、隠翅目(ノミ目)のノミなど、網翅目(ゴキブリ目)のゴキブリなど、膜翅目(ハチ目)のハチ、アリなど、等翅目(シロアリ目)のシロアリなど、半翅目(カメムシ目)のカメムシなど、鞘翅目(コウチュウ目)のキクイムシなど、鱗翅目(チョウ目)のイガなど、昆虫以外に蛛形綱(クモ綱)ダニ目のダニなどの害虫を防除することができる。
【0017】
また、平板状ファンの平板が、モータ側の端部に半径方向にわたって、軸方向と直交方向に延在する補強板が一体に設けられているので、平板の剛性が高まり、平板の撓み変形等を防止することができ、風量及び風速の安定化を図ることができる。
【0018】
また、本発明の薬剤拡散方法によれば、上記(1)〜(11)のいずれか1つに記載の薬剤拡散装置によって、薬剤保持体に含浸された薬剤を外部に拡散するようにしたので、送風手段が発生する大風量の気流で効果的に薬剤を拡散することができる。
【発明の効果】
【0019】
本発明の薬剤拡散装置によれば、少ない消費電力で大風量の気流を効率よく発生させると共に、開口の配置制約が少なく、任意形状のデザインで小型化も可能とした使い勝手のよい薬剤拡散装置及び薬剤拡散方法を提供する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、本発明に係る薬剤拡散装置の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。
図1は本発明の実施形態である薬剤拡散装置の分解斜視図、図2は図1における平板状ファンの斜視図、図3は平板状ファンの他の形態を示す斜視図、図4は平板状ファンの更に他の形態を示す斜視図である。
【0021】
図1に示すように、薬剤拡散装置100は、ケーシング10と、該ケーシング10内に配置されたモータ11と、モータ11及び平板状ファン12を有する送風手段13と、薬剤が保持された薬剤保持体14と、を備えている。
【0022】
ケーシング10は、合成樹脂などによって略中空直方体形状に形成されており、両側面に矩形の開口15、15が設けられ、上面には円形の開口16が設けられている。ケーシング10内には、開口16の中心とモータ11の回転軸17の軸心とを略一致させてモータ11が配設されている。回転軸17には、平板状ファン12が圧入などによって固定されて、回転軸17と共に回転するようになっている。
【0023】
平板状ファン12は、例えば、合成樹脂で射出成型された略平板状部材であり、中心に形成された円筒状ボス21から半径方向外方に2枚の平板22が180°の間隔で形成されている(図2参照)。円筒状ボス21には、回転軸17の直径よりわずかに小さい内径の取付穴23が形成されており、モータ11の回転軸17が圧入・固定される。2枚の平板22の板厚方向(回転方向)と直交する面22aは、取付穴23の中心軸CLと略平行に形成されている。平板22は、回転軸17の周方向に対して等間隔に配置されているので、その重心は円筒状ボス21の中心軸CL上に位置しており、回転時のバランスが極めて優れ、振動することなく滑らかに回転することとなる。また、平板状ファン12の形状は、上記したように単純な形状であるので、合成樹脂を射出成型することにより極めて簡単、且つ安価に製作することができ、更に、成形金型の製作も容易である。
【0024】
薬剤保持体14は、薬剤を保持する担体30と、担体30を収容・保持する保持器31とを有する。担体30は、略矩形シート状の外形を有しており、害虫防除剤を含む薬剤が保持されている。
【0025】
担体30は、形態、材質、サイズ等を任意に設定できるが、簡単な構造で、通気性の大きいものが好ましい。例えば、ハニカム形状、スノコ形状、蛇腹形状、網形状、スリット形状、格子形状、粒状、顆粒状、または開孔を設けた紙類等の構造のものを採用できる。上記した以外の形状として、例えば6角形蜂の巣形状でも、円形状、S字形状でもよい。通気性ケース(保持体ケース)中に、粒体、ブロック、粉砕物、シート等を、通気性を阻害しないように収納した通気性担体も、担体30として使用し得る。
【0026】
担体30を形成する材質は、薬剤中の害虫防除剤を十分に保持できるものであれば特に限定されない。しかし、保持した有効成分を一時に揮散させるようなものより所定の時間にわたって略同量の害虫防除剤を連続的に揮散させることができるような材質であることが好ましい。例えば紙類(濾紙、パルプ、リンター、厚紙、ダンボール等)、樹脂類(ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル、高吸油性ポリマー等)、セラミック、ガラス繊維、炭素繊維、化学繊維(ポリエステル、ナイロン、アクリル、ビニロン、ポリエチレン、ポリプロピレン等)、天然繊維(木綿、絹、羊毛、麻等)、ガラス繊維、炭素繊維、化学繊維、天然繊維等からなる不織布、編織布等の布綿、多孔性ガラス材料、多孔性金属材料、金網等が挙げられる。
【0027】
また、担体30は、有効成分を含む薬剤を保持し、これらの一種または二種以上を組み合わせて任意の形状にして使用するものであってもよい。担体30に有効成分等を保持させるには、担体30に薬剤を滴下塗布、含浸塗布、スプレー塗布等の液状塗布方法、液状印刷、はけ塗り等の方法、或いは担体30へ貼り付けする方法等を用いることができる。更に、使用する組成物が液状のものでない場合、或いは溶剤を使用しない場合、混練、練り込み、塗布、印刷等の方法を適用できる。
【0028】
担体30に保持させる薬剤の有効成分としては、害虫防除剤、殺菌剤、芳香剤、消臭剤等を例示できる。代表的な害虫防除剤としてはピレスロイド系であるアレスリン、ビフェントリン、シフルスリン、サイパーメスリン、シフェノトリン、デルタメスリン、エムペントリン、エトフェンプロックス、フェンプロパトリン、フェンバレレート、イミプロトリン、メトフルトリン、ペルメトリン、フェノトリン、フタルスリン、プラレトリン、プロフルトリン、ピレトリン、レスメトリン、シラフルオフェン、トランスフルスリンなどが挙げられる。また、殺菌剤としてはイソプロピルメチルフェノール、o−フェニルフェノール、チモールなど、芳香剤としてはピネン、リモネン、バニリンなど、消臭剤としては、メタクリル酸ラウリル、メチル化シクロデキストリン、カテキンなどが挙げられる。
【0029】
また、上記した化合物に例えば構造上類似し、実質的には同様の薬効のある化合物も挙げることができる。例えばエンペントリンの場合3位の2個の置換基はメチル基であるが、その置換基として他のアルキル基、不飽和アルキル基またはハロゲン原子である化合物を用いることもできる。この他にも、カーバメイト系としてカルバリル、プロポクスルなど、有機リン系としてジクロルボス、フェニトロチオンなど、ネオニコチノイド系としてジノテフラン、イミダクロプリドなど、その他としてスルホンアミド系のアミドフルメト、フェニルピラゾール系のフィプロニル、オキサジアゾール系のメトキサジアゾン、また、植物精油などの殺虫剤やメトプレン、ハイドロプレンなどの昆虫幼若ホルモン、テフルベンズロンなどの昆虫キチン形成阻害化合物などが挙げられる。
【0030】
こうした中でもエムペントリン、メトフルトリン、プロフルトリン、トランスフルスリンが特に好ましい。このような害虫防除剤は単独で用いてもよく、組み合わせて用いてもよい。また、これらの類縁体も用いられる。これらのうち常温で揮散しやすいものについては、例えば、揮散を調整するためのカバーを設けたり、ポリブテン、イソパラフィン、ノルマルパラフィン等の炭化水素類や、ラウリン酸ヘキシル、ミリスチン酸イソプロピル、フタル酸ブチルなどのエステル類からなる揮散調整剤を併用したりすることで、揮散の割合を適切に調整でき、長時間にわたって害虫防除効果を得ることができる。
【0031】
担体30に薬剤を保持させる際に、例えば、担体30に薬剤を容易に含浸させるために薬剤を低粘度化する目的で、ミリスチン酸イソプロピル、パルミチン酸イソプロピル、ラウリル酸ヘキシルなどの脂肪酸エステルやイソプロピルアルコール、ポリエチレングリコール、脱臭ケロシンなどの溶剤を必要に応じて使用することができる。また、担体30に薬剤を保持させる際に、その他の補助成分とともにこれを保持させることができ、例えば、蒸散促進用助剤として昇華性物質を添加すると揮散効果が高まってよい。害虫防除剤としてピレスロイド系化合物などを使用する場合には、これに対して有効な既知の共力剤を混合することも好ましい。さらにBHTやBHAなどの酸化防止剤や紫外線吸収剤を添加すると光、熱、酸化などに対する安定性が高まる。
【0032】
保持器31は、担体30を挟持して保持するための部材であり、例えば一対の略矩形枠体32、33を備える。一対の略矩形枠体32、33には、担体30を外部に露出させる略4角形の開口34が形成されている。担体30は、その周辺部が一対の略矩形枠体32、33によって挟持されて保持される。そして、前記送風手段13により発生する気流の流路中に配置されるように、例えば開口16を塞ぐようにケーシング10上に載せられて装着される。
【0033】
尚、害虫防除剤が保持された担体30は消耗品であり、薬剤拡散装置100の使用により害虫防除剤が消費されたとき、担体30の交換が必要となる。消耗品の販売形態としては、担体30のみを供給してもよく、或いは担体30と保持器31を一体に組み付けた薬剤保持体14を消耗品として供給してもよい。
【0034】
薬剤拡散装置100は上述した構成を有し、モータ11に電池(図示せず)などから電力を供給して回転軸17を回転駆動すると、平板状ファン12が回転軸17と共に回転する。平板状ファン12の回転により、外部の空気が薬剤保持体14を通過して開口16から矢印A方向にケーシング10内に吸い込まれ、両側面に設けられた開口15、15から矢印B方向に排気される気流が発生する。この気流が薬剤保持体14を通過する際に、気流中に害虫防除剤が含まれ、開口15、15から拡散されて害虫が防除される。なお、回転軸17を逆に回転駆動する際にも、略同風量の気流が略同一方向に発生する。即ち、開口15、15及び開口16ともに気流の通過の機能を有することとなる。
また、開口16はモータ11の設置面側にあってもよいし、両側にあってもよい。
【0035】
そして、本実施形態においては、開口15がケーシング10の両側面に設けられているとして説明したが、本発明の平板状ファン12の回転によって発生する気流は、回転軸17の全ての半径方向全域に通過可能であるので、開口15は回転軸17の円周方向任意の位相に、且つ任意の個数を設けることができる。
【0036】
このように、吸排気方向の制約がなく、任意の位置に設定することができ、設計の自由度が向上して、小型化などの任意のデザインが可能となる。このため、使用態様に応じた自由な設計ができ、又は配置の仕方によって排気口及び吸気口の開口が閉鎖される虞をなくして、使い勝手のよい薬剤拡散装置が得られる。
【0037】
さらに、例えば、ネックレスのような形状の薬剤拡散装置とした場合に裏表を確認することなく使用することができる等、配置の仕方によって排気口及び吸気口の開口が閉鎖されても十分な気流が発生しないという虞が少ない、使い勝手のよい薬剤拡散装置が得られる。
【0038】
更に、本実施形態によれば、例えばシロッコファンのように送風手段13の回転方向に制約がなく、正回転及び逆回転と任意の回転方向で、風量を損なうことなく気流を発生できるので、デザインの自由度が向上する上、電池の交換の際などの正負極を気にする必要がないので、使い勝手が向上する。
【0039】
そして、薬剤拡散装置100を携帯型とする場合、小型、且つ省電力であることが望ましく、薬剤拡散装置100の大きさは、幅、奥行き共に7cm以下、高さ3cm以下とするのが好ましく、幅、奥行き共に2〜6cm、高さ1.0〜2.5cmとするのがより好ましい。このため、平板状ファン12は直径6cm以下、高さ2cm以下とし、1000〜10000rpmの回転速度で回転させることが好ましく、直径2〜5cm、高さ0.2〜1.0cmとし、1000〜3000rpmで回転させることがより好ましい。また、開口15、16の面積は、いずれも36cm2以下とするのが好ましく、1〜25cm2とするのがより好ましい。更に、モータ11に供給する電流値が50mA以下であり、その時の風量が0.1リットル/秒以上、換言すれば、単位電流値当たりの風量は、0.002リットル/(秒・mA)以上とするのが好ましく、電流値1〜12mA、風量0.3〜1.5リットル/秒とするのがより好ましい。また、薬剤拡散装置100、平板状ファン12の材質は共にポリエチレン、ポリプロピレンなどの合成樹脂製であることが好ましく、当該平板状ファン12の重量は0.1〜5gであるものが好ましい。
なお、図1に示した実施形態においては、薬剤拡散装置100の幅、奥行き共に5cm、高さ2cmであり、平板状ファン12の直径は3.8cm、高さ0.5mmで、8〜12mAの電流によって約2000rpmで回転させた場合、1.0〜1.5リットル/秒の風量を得る。
【0040】
なお、平板状ファン12は、必ずしも平板22が2枚である必要はなく、他の形態とすることもできる。他の形態を示す例を図3及び図4に示す。図3は4枚の平板を有するファンの斜視図、図4は8枚の平板を有するファンの斜視図である。
【0041】
図3に示すファン40は、中心に形成された円筒状ボス41から半径方向外方に4枚の平板42が90°の等間隔で形成されている。円筒状ボス41には、回転軸17の直径よりわずかに小さい内径の取付穴43が設けられ、モータ11の回転軸17が圧入・固定される。4枚の平板42の板厚方向と直交する面42aは、取付穴43の中心軸CLと略平行に形成されている。4枚の平板42は、周方向に等間隔(90°間隔)に配置されているので、その回転のバランスはよい。
【0042】
図4に示すファン50は、中心に形成された円筒状ボス51から半径方向外方に8枚の平板52が45°の等間隔で形成されている。円筒状ボス51には、回転軸17の直径よりわずかに小さい内径の取付穴53が設けられ、モータ11の回転軸17が圧入・固定される。8枚の平板52の板厚方向と直交する面52aは、取付穴53の中心軸CLと略平行に形成されている。8枚の平板52は、周方向に等間隔に配置されているので、その回転のバランスはよい。
【0043】
図3及び図4に示すファン40、50は、モータ11の回転軸17に固定されて回転し、その作用及び効果は、既に説明済みの平板状ファン12と同様であるので説明を省略する。なお、生産コスト性及び消費電力対風量効率などのバランスを考慮すると平板42が4枚である平板状ファン40が好適である。
【0044】
前記平板状ファン40については、図5〜図7に示すように、各平板22を補強板53により補強した構成にしてもよい。平板状ファン40の平板22は、モータ側の端部に半径方向にわたって、軸方向と直交方向に延在する補強板53が一体に設けられている。
【0045】
本実施形態では、円筒状ボス41(本発明でいう円筒状突部に相当する)と、その外側面から等間隔で放射状に設けられた4つの平板42が補強板53と一体化されている。
【0046】
すなわち、補強板53は円筒状ボス41の下面及び平板42の下面において、円筒状ボス41及び平板42と一体化されている。しかも、補強板53は円筒状ボス41の周囲で幅広に形成され、そのまま4つの平板42の両端部において所定幅で端部近傍まで延長されている。
【0047】
前記のように、モータ駆動に伴い円筒状ボス41、平板42、補強板53が一体で高速回転するが、補強板53によって平板42が補強されているので、平板42のたわみ変形、ねじれ変形等を防止できる。この結果、モータ駆動により発生する気流の風量を安定化できる。
【0048】
なお、本実施形態では4つの平板42を有する平板状ファン40について補強板53が設けられているが、図2に示した2枚の平板を有する平板状ファン12、及び図4に示した8枚の平板を有する平板状ファン50、及び他の枚数の平板を有する平板状ファンについても補強板53を適用することができる。
【実施例】
【0049】
本発明の効果を確認するため、本発明の平板状ファンを用いた実施例と、従来のシロッコファン及びプロペラファンを用いた比較例について説明する。
実施例及び比較例ともに、モータはRF400CA−5Z700(マブチモーター社製)、一方の開口16の面積:12.56cm2(Φ40mm)、他方の開口15の面積:20cm2(10cm2×2)とし、モータへ直流3Vの電圧を印加して駆動したときの電流値(mA)、その時の回転数、及び各ファンの風量を測定して比較した。
【0050】
図1に模した装置を用い、ファン形状のみを変えて試験を行った。
実施例で使用した平板状ファンはABS樹脂製であり、その平板の枚数は、2枚(図2参照)、4枚(図3参照)、8枚(図4参照)とし、4枚の平板状ファンについては平板の高さ(回転軸の軸方向の厚さ)の効果を確認するため3、5、7mmの3種類の試験を行った。また、従来のシロッコファン及びプロペラファンはPP樹脂製であり、その斜視図をそれぞれ、図10及び図11に示す。なお、図10及び図11に示したファンは周知のものであるので説明を省略する。
【0051】
尚、モータへ供給する電流値はCDM−27D DIGITAL MULTIMETER(CUSTOM社製)、ファンの回転数はMODEL3632 POCKET TACHOMETER(YOKOGAWA社製)、風量はGeY MODEL−40(HONFIELD社製)を用いて次の通りに測定した。
・電流値は、上記の電流計を回路に直列接続して測定した。
・回転数は、ファンの一部に反射テープを張り、上記の回転計で測定した。
・風量は、薬剤拡散装置の開口の一つに、正四角柱状の筒の一端を隙間なく取り付け、筒内において該装置から37cmの距離に風速センサのプローブを設置して風速計により風速を測定し、そこから風量を求めた。
【0052】
測定結果を図8及び表1に示す。
【0053】
【表1】
【0054】
図8及び表1から分かるように、実施例1〜5の平板状ファンは、いずれも1.0リットル/秒以上の風量が確保されている。またこの時の電流値は、8.8(平板4枚、高さ3mm)〜11.4mA(平板8枚)である。一方、従来のシロッコファンの風量は、1.20リットル/秒であり、1.0リットル/秒以上の風量が確保されているが、電流値が14.0mAと大きく、電池の消耗を考慮すると小型化には必ずしも適していない。また、従来のプロペラファンは、電流値が9.0mAと小さいが、風量が0.86リットル/秒と少ない。本発明の平板状ファンは、いずれの形態のものでも、低電流値且つ大風量の条件を同時に満足させることができ、本発明の有効性が実証された。
【0055】
更に、ファンの径を変えることで、電流値、風量にどのような特性が現れるかを試験した。
【0056】
実施例6〜9として、図3に示す構成の平板状ファンとして、異なるファン直径(ファン直径φ29,32,35,38mm、高さ5mm)の4種のものをそれぞれ装備して試験を行った。比較例3として、図11に示すフマキラー株式会社製「どこでもベープNo.1 NEO(ファン直径φ38mm、高さ5mm)」を用いた。平板状ファンはABS樹脂製であり、使用したモータは、実施例1〜5と同じであるが、器具は市販品の仕様を想定して、天面の開口の面積:4cm2、側面の開口の面積:2.5cm2であるものを使用した。
結果を表2及び図9に示す。
【0057】
【表2】
【0058】
表2及び図9に示すように、実施例6は比較例3に比べて電流値が少ないものの風量も少ない。実施例7は比較例3に比べて、電流値は少なく、風量は多い。実施例8は比較例3に比べて、電流値は少なく、風量は格段に多い。実施例9は比較例3に比べて風量は多いものの電流値も多くなっている。
【0059】
従って、実施例7,実施例8のファンが、電流値が少ない上に、風量が多く、好ましいことが分かる。
【0060】
尚、本発明は、上記した実施形態に限定されるものではなく、適宜、変形、改良、等が可能である。例えば、本実施形態においては、薬剤保持体は開口側に配置したものとして説明したが、これに限定されるものではなく、開口側など、気流の通路内であればどの位置にも配置することができ、例えばモータの側面方向に薬剤保持体を配設してもよく、図1の開口16に、あるいは開口15,16の両方に保持体を配設してもよい。また、平板状ファンに薬剤保持体を設けて平板状ファンと共に回転させるようにしてもよい。また、平板状ファンに設けられた取付穴を貫通穴として説明したが、これに限定されるものではなく、モータの回転軸に対し圧入・固定される構造であればよいため、別に貫通穴であることを要せず、ねじ込み式などでもよい。
【0061】
また、前記実施形態において、前記補強板53は平板42の幅方向両側部に長手状に設けられているが、いずれか一方の片側であってもよい。この場合、平板42の横断面はL字形になる。
【図面の簡単な説明】
【0062】
【図1】本発明の実施形態である薬剤拡散装置の分解斜視図である。
【図2】図1における平板状ファンの斜視図である。
【図3】平板状ファンの他の形態を示す斜視図である。
【図4】平板状ファンの更に他の形態を示す斜視図である。
【図5】平板を補強した平板状ファンの形態を示す斜視図である。
【図6】平板を補強した平板状ファンの形態を示す平面図である。
【図7】平板を補強した平板状ファンの形態を示す底面図である。
【図8】ファンの形態(枚数と厚さ)を変えて試験した結果の、モータに供給する電流値と風量の関係を比較して示すグラフである。
【図9】ファン径を変えて試験した結果の、モータに供給する電流値、風量の関係を比較して示すグラフである。
【図10】従来のシロッコファンの斜視図である。
【図11】従来のプロペラファンの斜視図である。
【符号の説明】
【0063】
11 モータ
12 平板状ファン
13 送風手段
14 薬剤保持体
15,16 開口
17 回転軸
22,42,52 平板
100 薬剤拡散装置
【技術分野】
【0001】
本発明は、薬剤拡散装置及び薬剤拡散方法に関し、より詳細には、使用者が身につけて屋外などで携帯使用するのに好適な薬剤拡散装置及び薬剤拡散方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、薬剤を含浸させた薬剤保持体にファンからの気流を当て、有効成分を拡散させる薬剤拡散装置がある。このような薬剤拡散装置に使用されるファンとしては、シロッコファン、プロペラファン、など種々の形状のものが知られている(例えば、特許文献1、2参照)。
【0003】
特許文献1に開示されているファン式薬剤放散装置は、シロッコファンの側面に薬剤保持体を着脱自在に取り付けて装置の薄型化を図ると共に、薬剤保持体の交換が容易に行えるようにしたものである。
また、特許文献2に開示されている送風式害虫防除装置は、シロッコファンなどを用いる装置で、2つの排気口をファンの回転方向に対して傾斜させた形状によって、害虫防除成分を上下に拡散、到達させ易くしたものである。
【0004】
【特許文献1】特開2005−237320号公報
【特許文献2】特開2005−204517号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1、2の装置は、いずれもプロペラファンやシロッコファンを用いて気流を発生させるようにしたものであり、吸気口及び排気口の開口及び薬剤保持体の位置などがファンの形式によって制約を受けることがある。例えば、プロペラファンの場合、ファンの軸方向後方から吸い込まれた空気が前方に向けて排気され、気流がファンの回転軸に沿った方向に発生する。また、シロッコファンによると、ファンの軸方向から吸い込まれた空気が半径方向外方に排気されると共に、回転方向が決まっていた。このように、気流の発生方向が決まっているので、吸気口及び排気口の開口及び薬剤保持体の位置などの設計時におけるデザインが制約される問題があった。さらに、吸排気口の開口が閉鎖されないように配慮する必要があり、使用時の薬剤拡散装置の設置が制限を受ける。また、プロペラファンやシロッコファンは、ファンが逆回転すると発生風量が極端に減少し、且つ気流が逆方向の流れとなり、薬剤拡散作用が阻害されるので使用方法が制限される問題があった。
【0006】
また、薬剤拡散装置を携帯用とした場合、小型且つ効率的な薬剤拡散が強く要求され、少ない消費電力でより多くの風量の気流を発生させることができる送風手段が強く求められていた。
【0007】
本発明は、前述した課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、大風量の気流を効率よく発生させると共に、気流が通過する開口の配置制約が少なく、任意形状のデザインで小型化などを可能とした使い勝手のよい薬剤拡散装置及び薬剤拡散方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の上記目的は、下記の構成により達成される。
(1) 薬剤が含浸された薬剤保持体と、モータを有して当該モータが回転駆動されることにより、当該薬剤保持体に対して気流を発生させて前記薬剤を空気中に拡散する送風手段と、を備えた薬剤拡散装置であって、
前記送風手段は、
複数の平板が前記モータの回転軸の軸方向と略平行となるように前記回転軸に取り付けられた平板状ファンにより構成される
ことを特徴とする薬剤拡散装置。
(2) 前記複数の平板が、
前記回転軸の周方向に対し、対称にして等間隔に配置されている
ことを特徴とする上記(1)に記載の薬剤拡散装置。
(3) 前記複数の平板が、
前記回転軸の周方向に対し、45°、60°、72°、90°、120°、180°のいずれかの間隔毎にそれぞれ離間配置されている
ことを特徴とする上記(2)に記載の薬剤拡散装置。
(4) 前記送風手段により発生する前記気流の流路中に、前記薬剤保持体が配置されている
ことを特徴とする上記(1)から上記(3)のいずれか1つに記載の薬剤拡散装置。
(5) 前記複数の平板が、
前記薬剤保持体を備える
ことを特徴とする上記(1)から上記(3)のいずれか1つに記載の薬剤拡散装置。
(6) 前記送風手段により発生する前記気流が通過し得る開口を複数、備えた
ことを特徴とする上記(1)から上記(5)のいずれか1つに記載の薬剤拡散装置。
(7) 複数の前記開口は、互いに異なる方向に前記気流が通過し得る
ことを特徴とする上記(6)に記載の薬剤拡散装置。
(8) 前記送風手段は、
前記モータに供給される電流値が50mA以下であり、0.1リットル/秒以上の風量の前記気流を発生させる
ことを特徴とする上記(1)から上記(7)のいずれか1つに記載の薬剤拡散装置。
(9) 前記送風手段は、
前記モータの回転軸が時計回り及び反時計回りに回転したとき、略同一風量の前記気流を発生させる
ことを特徴とする上記(1)から上記(8)のいずれか1つに記載の薬剤拡散装置。
(10) 前記薬剤が、
害虫防除剤である
ことを特徴とする上記(1)から上記(9)のいずれか1つに記載の薬剤拡散装置。
(11) 前記平板状ファンの前記平板は、前記モータ側の端部に半径方向にわたって、軸方向と直交方向に延在する補強板が一体に設けられている
ことを特徴とする前記(1)から(10)のいずれか1つに記載の薬剤拡散装置。
(12) 上記(1)から上記(11)のいずれか1つに記載の薬剤拡散装置によって、前記薬剤保持体に含浸された前記薬剤を外部に拡散する
ことを特徴とする薬剤拡散方法。
【0009】
本発明の発明者らは、鋭意検討の結果、モータの回転軸と軸方向と略平行になるように複数の平板をモータの回転軸に取付けて送風手段を構成し回転させることにより、少ない消費電力で十分な風量を得ることができて、開口の配置によらず気流を発生させ、薬剤保持体に対し十分な気流を供給し得ることを見出した。即ち、発明者らは、このような送風手段を設けることにより、消費電力に対する風量効率、前記開口の配置、回転方向などの制約を受けることなく薬剤揮散装置の設計に小型化などの自由度をもたせられることを発見した。
【0010】
したがって、上記構成の薬剤拡散装置によれば、薬剤が含浸された薬剤保持体と、回転軸の軸方向と略平行になるように複数の平板をモータの回転軸に取り付けられた平板状ファンにより構成される送風手段とを備え、モータを回転駆動することにより薬剤保持体に対して気流を発生させて、薬剤保持体に含浸された薬剤を空気中に拡散するようにしたので、吸気口及び排気口の開口の位置を任意位置に設定することができ、設計の自由度が向上して任意のデザインが可能となる。これにより、使用態様に応じた自由な設計ができ、又は配置の仕方によって吸気口及び排気口の開口が閉鎖される虞をなくして、使い勝手のよい薬剤拡散装置が得られる。さらに、少ない消費電力で多くの風量を供給することができる。
【0011】
また、平板は、回転軸の周方向に対し、対称にして等間隔に配置されていることが好ましく、更に45°、60°、72°、90°、120°、180°のいずれかの間隔毎にそれぞれ離間配置されていることが好ましい。これにより、非常に簡単な構成のファンでありながら風量を確保し、且つ回転バランスに優れ、振動や騒音の少ない送風手段が得られる。また、このような形態の平板は、構造が簡単であるので、射出成型によって容易且つ安価に成形することができ、生産性を向上させることができる。
【0012】
更に、送風手段により発生する気流の流路中に薬剤保持体を配置し、或いは、平板に薬剤保持体を備えることができる。これによって、薬剤拡散装置を小型化すると共に、薬剤保持体から効率的に薬剤を拡散することができる。
【0013】
また、送風手段により発生する気流を外部に通過させる開口を複数、備えると共に、当該複数の開口は、互いに異なる方向に気流を通過させ得るので、仮に薬剤拡散装置の配置位置によって前記複数の開口の一部が閉鎖されたとしても、十分な気流が発生しないという虞がなく、したがって効果的に薬剤を拡散することができる。例えば、ネックレスのような形状の薬剤拡散装置とした場合、正面に開口が設けられていたとしても、裏面にも開口を配置すれば、裏表を確認することなく使用することができ、使い勝手が向上する。
【0014】
更に、送風手段は、モータに供給される電流値が1〜100mA、好ましくは1〜50mAであり、0.1〜6リットル/秒、好ましくは0.3〜6リットル/秒の風量の気流を発生できることが好ましい。これにより、少ない電力で薬剤を拡散させるに十分な風量が得られ、例えば、電池駆動される携帯型薬剤拡散装置とするのに好適である。
【0015】
また、送風手段は、回転方向は任意であり、モータの回転方向が時計回りから逆転しても、風向き、風量とも略同一風量の気流を発生させることができ、これにより、正負極を気にすることなく電池などを装着することができるので、使用が容易で、且つ常に一定性能の薬剤拡散性能を維持することが可能な薬剤拡散装置が得られる。
【0016】
薬剤として害虫防除剤を薬剤保持体に含浸させることができ、これにより害虫防除剤を拡散させて、例えば昆虫綱双翅目(ハエ目)のハエ、蚊、ブユ、アブなど、隠翅目(ノミ目)のノミなど、網翅目(ゴキブリ目)のゴキブリなど、膜翅目(ハチ目)のハチ、アリなど、等翅目(シロアリ目)のシロアリなど、半翅目(カメムシ目)のカメムシなど、鞘翅目(コウチュウ目)のキクイムシなど、鱗翅目(チョウ目)のイガなど、昆虫以外に蛛形綱(クモ綱)ダニ目のダニなどの害虫を防除することができる。
【0017】
また、平板状ファンの平板が、モータ側の端部に半径方向にわたって、軸方向と直交方向に延在する補強板が一体に設けられているので、平板の剛性が高まり、平板の撓み変形等を防止することができ、風量及び風速の安定化を図ることができる。
【0018】
また、本発明の薬剤拡散方法によれば、上記(1)〜(11)のいずれか1つに記載の薬剤拡散装置によって、薬剤保持体に含浸された薬剤を外部に拡散するようにしたので、送風手段が発生する大風量の気流で効果的に薬剤を拡散することができる。
【発明の効果】
【0019】
本発明の薬剤拡散装置によれば、少ない消費電力で大風量の気流を効率よく発生させると共に、開口の配置制約が少なく、任意形状のデザインで小型化も可能とした使い勝手のよい薬剤拡散装置及び薬剤拡散方法を提供する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、本発明に係る薬剤拡散装置の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。
図1は本発明の実施形態である薬剤拡散装置の分解斜視図、図2は図1における平板状ファンの斜視図、図3は平板状ファンの他の形態を示す斜視図、図4は平板状ファンの更に他の形態を示す斜視図である。
【0021】
図1に示すように、薬剤拡散装置100は、ケーシング10と、該ケーシング10内に配置されたモータ11と、モータ11及び平板状ファン12を有する送風手段13と、薬剤が保持された薬剤保持体14と、を備えている。
【0022】
ケーシング10は、合成樹脂などによって略中空直方体形状に形成されており、両側面に矩形の開口15、15が設けられ、上面には円形の開口16が設けられている。ケーシング10内には、開口16の中心とモータ11の回転軸17の軸心とを略一致させてモータ11が配設されている。回転軸17には、平板状ファン12が圧入などによって固定されて、回転軸17と共に回転するようになっている。
【0023】
平板状ファン12は、例えば、合成樹脂で射出成型された略平板状部材であり、中心に形成された円筒状ボス21から半径方向外方に2枚の平板22が180°の間隔で形成されている(図2参照)。円筒状ボス21には、回転軸17の直径よりわずかに小さい内径の取付穴23が形成されており、モータ11の回転軸17が圧入・固定される。2枚の平板22の板厚方向(回転方向)と直交する面22aは、取付穴23の中心軸CLと略平行に形成されている。平板22は、回転軸17の周方向に対して等間隔に配置されているので、その重心は円筒状ボス21の中心軸CL上に位置しており、回転時のバランスが極めて優れ、振動することなく滑らかに回転することとなる。また、平板状ファン12の形状は、上記したように単純な形状であるので、合成樹脂を射出成型することにより極めて簡単、且つ安価に製作することができ、更に、成形金型の製作も容易である。
【0024】
薬剤保持体14は、薬剤を保持する担体30と、担体30を収容・保持する保持器31とを有する。担体30は、略矩形シート状の外形を有しており、害虫防除剤を含む薬剤が保持されている。
【0025】
担体30は、形態、材質、サイズ等を任意に設定できるが、簡単な構造で、通気性の大きいものが好ましい。例えば、ハニカム形状、スノコ形状、蛇腹形状、網形状、スリット形状、格子形状、粒状、顆粒状、または開孔を設けた紙類等の構造のものを採用できる。上記した以外の形状として、例えば6角形蜂の巣形状でも、円形状、S字形状でもよい。通気性ケース(保持体ケース)中に、粒体、ブロック、粉砕物、シート等を、通気性を阻害しないように収納した通気性担体も、担体30として使用し得る。
【0026】
担体30を形成する材質は、薬剤中の害虫防除剤を十分に保持できるものであれば特に限定されない。しかし、保持した有効成分を一時に揮散させるようなものより所定の時間にわたって略同量の害虫防除剤を連続的に揮散させることができるような材質であることが好ましい。例えば紙類(濾紙、パルプ、リンター、厚紙、ダンボール等)、樹脂類(ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル、高吸油性ポリマー等)、セラミック、ガラス繊維、炭素繊維、化学繊維(ポリエステル、ナイロン、アクリル、ビニロン、ポリエチレン、ポリプロピレン等)、天然繊維(木綿、絹、羊毛、麻等)、ガラス繊維、炭素繊維、化学繊維、天然繊維等からなる不織布、編織布等の布綿、多孔性ガラス材料、多孔性金属材料、金網等が挙げられる。
【0027】
また、担体30は、有効成分を含む薬剤を保持し、これらの一種または二種以上を組み合わせて任意の形状にして使用するものであってもよい。担体30に有効成分等を保持させるには、担体30に薬剤を滴下塗布、含浸塗布、スプレー塗布等の液状塗布方法、液状印刷、はけ塗り等の方法、或いは担体30へ貼り付けする方法等を用いることができる。更に、使用する組成物が液状のものでない場合、或いは溶剤を使用しない場合、混練、練り込み、塗布、印刷等の方法を適用できる。
【0028】
担体30に保持させる薬剤の有効成分としては、害虫防除剤、殺菌剤、芳香剤、消臭剤等を例示できる。代表的な害虫防除剤としてはピレスロイド系であるアレスリン、ビフェントリン、シフルスリン、サイパーメスリン、シフェノトリン、デルタメスリン、エムペントリン、エトフェンプロックス、フェンプロパトリン、フェンバレレート、イミプロトリン、メトフルトリン、ペルメトリン、フェノトリン、フタルスリン、プラレトリン、プロフルトリン、ピレトリン、レスメトリン、シラフルオフェン、トランスフルスリンなどが挙げられる。また、殺菌剤としてはイソプロピルメチルフェノール、o−フェニルフェノール、チモールなど、芳香剤としてはピネン、リモネン、バニリンなど、消臭剤としては、メタクリル酸ラウリル、メチル化シクロデキストリン、カテキンなどが挙げられる。
【0029】
また、上記した化合物に例えば構造上類似し、実質的には同様の薬効のある化合物も挙げることができる。例えばエンペントリンの場合3位の2個の置換基はメチル基であるが、その置換基として他のアルキル基、不飽和アルキル基またはハロゲン原子である化合物を用いることもできる。この他にも、カーバメイト系としてカルバリル、プロポクスルなど、有機リン系としてジクロルボス、フェニトロチオンなど、ネオニコチノイド系としてジノテフラン、イミダクロプリドなど、その他としてスルホンアミド系のアミドフルメト、フェニルピラゾール系のフィプロニル、オキサジアゾール系のメトキサジアゾン、また、植物精油などの殺虫剤やメトプレン、ハイドロプレンなどの昆虫幼若ホルモン、テフルベンズロンなどの昆虫キチン形成阻害化合物などが挙げられる。
【0030】
こうした中でもエムペントリン、メトフルトリン、プロフルトリン、トランスフルスリンが特に好ましい。このような害虫防除剤は単独で用いてもよく、組み合わせて用いてもよい。また、これらの類縁体も用いられる。これらのうち常温で揮散しやすいものについては、例えば、揮散を調整するためのカバーを設けたり、ポリブテン、イソパラフィン、ノルマルパラフィン等の炭化水素類や、ラウリン酸ヘキシル、ミリスチン酸イソプロピル、フタル酸ブチルなどのエステル類からなる揮散調整剤を併用したりすることで、揮散の割合を適切に調整でき、長時間にわたって害虫防除効果を得ることができる。
【0031】
担体30に薬剤を保持させる際に、例えば、担体30に薬剤を容易に含浸させるために薬剤を低粘度化する目的で、ミリスチン酸イソプロピル、パルミチン酸イソプロピル、ラウリル酸ヘキシルなどの脂肪酸エステルやイソプロピルアルコール、ポリエチレングリコール、脱臭ケロシンなどの溶剤を必要に応じて使用することができる。また、担体30に薬剤を保持させる際に、その他の補助成分とともにこれを保持させることができ、例えば、蒸散促進用助剤として昇華性物質を添加すると揮散効果が高まってよい。害虫防除剤としてピレスロイド系化合物などを使用する場合には、これに対して有効な既知の共力剤を混合することも好ましい。さらにBHTやBHAなどの酸化防止剤や紫外線吸収剤を添加すると光、熱、酸化などに対する安定性が高まる。
【0032】
保持器31は、担体30を挟持して保持するための部材であり、例えば一対の略矩形枠体32、33を備える。一対の略矩形枠体32、33には、担体30を外部に露出させる略4角形の開口34が形成されている。担体30は、その周辺部が一対の略矩形枠体32、33によって挟持されて保持される。そして、前記送風手段13により発生する気流の流路中に配置されるように、例えば開口16を塞ぐようにケーシング10上に載せられて装着される。
【0033】
尚、害虫防除剤が保持された担体30は消耗品であり、薬剤拡散装置100の使用により害虫防除剤が消費されたとき、担体30の交換が必要となる。消耗品の販売形態としては、担体30のみを供給してもよく、或いは担体30と保持器31を一体に組み付けた薬剤保持体14を消耗品として供給してもよい。
【0034】
薬剤拡散装置100は上述した構成を有し、モータ11に電池(図示せず)などから電力を供給して回転軸17を回転駆動すると、平板状ファン12が回転軸17と共に回転する。平板状ファン12の回転により、外部の空気が薬剤保持体14を通過して開口16から矢印A方向にケーシング10内に吸い込まれ、両側面に設けられた開口15、15から矢印B方向に排気される気流が発生する。この気流が薬剤保持体14を通過する際に、気流中に害虫防除剤が含まれ、開口15、15から拡散されて害虫が防除される。なお、回転軸17を逆に回転駆動する際にも、略同風量の気流が略同一方向に発生する。即ち、開口15、15及び開口16ともに気流の通過の機能を有することとなる。
また、開口16はモータ11の設置面側にあってもよいし、両側にあってもよい。
【0035】
そして、本実施形態においては、開口15がケーシング10の両側面に設けられているとして説明したが、本発明の平板状ファン12の回転によって発生する気流は、回転軸17の全ての半径方向全域に通過可能であるので、開口15は回転軸17の円周方向任意の位相に、且つ任意の個数を設けることができる。
【0036】
このように、吸排気方向の制約がなく、任意の位置に設定することができ、設計の自由度が向上して、小型化などの任意のデザインが可能となる。このため、使用態様に応じた自由な設計ができ、又は配置の仕方によって排気口及び吸気口の開口が閉鎖される虞をなくして、使い勝手のよい薬剤拡散装置が得られる。
【0037】
さらに、例えば、ネックレスのような形状の薬剤拡散装置とした場合に裏表を確認することなく使用することができる等、配置の仕方によって排気口及び吸気口の開口が閉鎖されても十分な気流が発生しないという虞が少ない、使い勝手のよい薬剤拡散装置が得られる。
【0038】
更に、本実施形態によれば、例えばシロッコファンのように送風手段13の回転方向に制約がなく、正回転及び逆回転と任意の回転方向で、風量を損なうことなく気流を発生できるので、デザインの自由度が向上する上、電池の交換の際などの正負極を気にする必要がないので、使い勝手が向上する。
【0039】
そして、薬剤拡散装置100を携帯型とする場合、小型、且つ省電力であることが望ましく、薬剤拡散装置100の大きさは、幅、奥行き共に7cm以下、高さ3cm以下とするのが好ましく、幅、奥行き共に2〜6cm、高さ1.0〜2.5cmとするのがより好ましい。このため、平板状ファン12は直径6cm以下、高さ2cm以下とし、1000〜10000rpmの回転速度で回転させることが好ましく、直径2〜5cm、高さ0.2〜1.0cmとし、1000〜3000rpmで回転させることがより好ましい。また、開口15、16の面積は、いずれも36cm2以下とするのが好ましく、1〜25cm2とするのがより好ましい。更に、モータ11に供給する電流値が50mA以下であり、その時の風量が0.1リットル/秒以上、換言すれば、単位電流値当たりの風量は、0.002リットル/(秒・mA)以上とするのが好ましく、電流値1〜12mA、風量0.3〜1.5リットル/秒とするのがより好ましい。また、薬剤拡散装置100、平板状ファン12の材質は共にポリエチレン、ポリプロピレンなどの合成樹脂製であることが好ましく、当該平板状ファン12の重量は0.1〜5gであるものが好ましい。
なお、図1に示した実施形態においては、薬剤拡散装置100の幅、奥行き共に5cm、高さ2cmであり、平板状ファン12の直径は3.8cm、高さ0.5mmで、8〜12mAの電流によって約2000rpmで回転させた場合、1.0〜1.5リットル/秒の風量を得る。
【0040】
なお、平板状ファン12は、必ずしも平板22が2枚である必要はなく、他の形態とすることもできる。他の形態を示す例を図3及び図4に示す。図3は4枚の平板を有するファンの斜視図、図4は8枚の平板を有するファンの斜視図である。
【0041】
図3に示すファン40は、中心に形成された円筒状ボス41から半径方向外方に4枚の平板42が90°の等間隔で形成されている。円筒状ボス41には、回転軸17の直径よりわずかに小さい内径の取付穴43が設けられ、モータ11の回転軸17が圧入・固定される。4枚の平板42の板厚方向と直交する面42aは、取付穴43の中心軸CLと略平行に形成されている。4枚の平板42は、周方向に等間隔(90°間隔)に配置されているので、その回転のバランスはよい。
【0042】
図4に示すファン50は、中心に形成された円筒状ボス51から半径方向外方に8枚の平板52が45°の等間隔で形成されている。円筒状ボス51には、回転軸17の直径よりわずかに小さい内径の取付穴53が設けられ、モータ11の回転軸17が圧入・固定される。8枚の平板52の板厚方向と直交する面52aは、取付穴53の中心軸CLと略平行に形成されている。8枚の平板52は、周方向に等間隔に配置されているので、その回転のバランスはよい。
【0043】
図3及び図4に示すファン40、50は、モータ11の回転軸17に固定されて回転し、その作用及び効果は、既に説明済みの平板状ファン12と同様であるので説明を省略する。なお、生産コスト性及び消費電力対風量効率などのバランスを考慮すると平板42が4枚である平板状ファン40が好適である。
【0044】
前記平板状ファン40については、図5〜図7に示すように、各平板22を補強板53により補強した構成にしてもよい。平板状ファン40の平板22は、モータ側の端部に半径方向にわたって、軸方向と直交方向に延在する補強板53が一体に設けられている。
【0045】
本実施形態では、円筒状ボス41(本発明でいう円筒状突部に相当する)と、その外側面から等間隔で放射状に設けられた4つの平板42が補強板53と一体化されている。
【0046】
すなわち、補強板53は円筒状ボス41の下面及び平板42の下面において、円筒状ボス41及び平板42と一体化されている。しかも、補強板53は円筒状ボス41の周囲で幅広に形成され、そのまま4つの平板42の両端部において所定幅で端部近傍まで延長されている。
【0047】
前記のように、モータ駆動に伴い円筒状ボス41、平板42、補強板53が一体で高速回転するが、補強板53によって平板42が補強されているので、平板42のたわみ変形、ねじれ変形等を防止できる。この結果、モータ駆動により発生する気流の風量を安定化できる。
【0048】
なお、本実施形態では4つの平板42を有する平板状ファン40について補強板53が設けられているが、図2に示した2枚の平板を有する平板状ファン12、及び図4に示した8枚の平板を有する平板状ファン50、及び他の枚数の平板を有する平板状ファンについても補強板53を適用することができる。
【実施例】
【0049】
本発明の効果を確認するため、本発明の平板状ファンを用いた実施例と、従来のシロッコファン及びプロペラファンを用いた比較例について説明する。
実施例及び比較例ともに、モータはRF400CA−5Z700(マブチモーター社製)、一方の開口16の面積:12.56cm2(Φ40mm)、他方の開口15の面積:20cm2(10cm2×2)とし、モータへ直流3Vの電圧を印加して駆動したときの電流値(mA)、その時の回転数、及び各ファンの風量を測定して比較した。
【0050】
図1に模した装置を用い、ファン形状のみを変えて試験を行った。
実施例で使用した平板状ファンはABS樹脂製であり、その平板の枚数は、2枚(図2参照)、4枚(図3参照)、8枚(図4参照)とし、4枚の平板状ファンについては平板の高さ(回転軸の軸方向の厚さ)の効果を確認するため3、5、7mmの3種類の試験を行った。また、従来のシロッコファン及びプロペラファンはPP樹脂製であり、その斜視図をそれぞれ、図10及び図11に示す。なお、図10及び図11に示したファンは周知のものであるので説明を省略する。
【0051】
尚、モータへ供給する電流値はCDM−27D DIGITAL MULTIMETER(CUSTOM社製)、ファンの回転数はMODEL3632 POCKET TACHOMETER(YOKOGAWA社製)、風量はGeY MODEL−40(HONFIELD社製)を用いて次の通りに測定した。
・電流値は、上記の電流計を回路に直列接続して測定した。
・回転数は、ファンの一部に反射テープを張り、上記の回転計で測定した。
・風量は、薬剤拡散装置の開口の一つに、正四角柱状の筒の一端を隙間なく取り付け、筒内において該装置から37cmの距離に風速センサのプローブを設置して風速計により風速を測定し、そこから風量を求めた。
【0052】
測定結果を図8及び表1に示す。
【0053】
【表1】
【0054】
図8及び表1から分かるように、実施例1〜5の平板状ファンは、いずれも1.0リットル/秒以上の風量が確保されている。またこの時の電流値は、8.8(平板4枚、高さ3mm)〜11.4mA(平板8枚)である。一方、従来のシロッコファンの風量は、1.20リットル/秒であり、1.0リットル/秒以上の風量が確保されているが、電流値が14.0mAと大きく、電池の消耗を考慮すると小型化には必ずしも適していない。また、従来のプロペラファンは、電流値が9.0mAと小さいが、風量が0.86リットル/秒と少ない。本発明の平板状ファンは、いずれの形態のものでも、低電流値且つ大風量の条件を同時に満足させることができ、本発明の有効性が実証された。
【0055】
更に、ファンの径を変えることで、電流値、風量にどのような特性が現れるかを試験した。
【0056】
実施例6〜9として、図3に示す構成の平板状ファンとして、異なるファン直径(ファン直径φ29,32,35,38mm、高さ5mm)の4種のものをそれぞれ装備して試験を行った。比較例3として、図11に示すフマキラー株式会社製「どこでもベープNo.1 NEO(ファン直径φ38mm、高さ5mm)」を用いた。平板状ファンはABS樹脂製であり、使用したモータは、実施例1〜5と同じであるが、器具は市販品の仕様を想定して、天面の開口の面積:4cm2、側面の開口の面積:2.5cm2であるものを使用した。
結果を表2及び図9に示す。
【0057】
【表2】
【0058】
表2及び図9に示すように、実施例6は比較例3に比べて電流値が少ないものの風量も少ない。実施例7は比較例3に比べて、電流値は少なく、風量は多い。実施例8は比較例3に比べて、電流値は少なく、風量は格段に多い。実施例9は比較例3に比べて風量は多いものの電流値も多くなっている。
【0059】
従って、実施例7,実施例8のファンが、電流値が少ない上に、風量が多く、好ましいことが分かる。
【0060】
尚、本発明は、上記した実施形態に限定されるものではなく、適宜、変形、改良、等が可能である。例えば、本実施形態においては、薬剤保持体は開口側に配置したものとして説明したが、これに限定されるものではなく、開口側など、気流の通路内であればどの位置にも配置することができ、例えばモータの側面方向に薬剤保持体を配設してもよく、図1の開口16に、あるいは開口15,16の両方に保持体を配設してもよい。また、平板状ファンに薬剤保持体を設けて平板状ファンと共に回転させるようにしてもよい。また、平板状ファンに設けられた取付穴を貫通穴として説明したが、これに限定されるものではなく、モータの回転軸に対し圧入・固定される構造であればよいため、別に貫通穴であることを要せず、ねじ込み式などでもよい。
【0061】
また、前記実施形態において、前記補強板53は平板42の幅方向両側部に長手状に設けられているが、いずれか一方の片側であってもよい。この場合、平板42の横断面はL字形になる。
【図面の簡単な説明】
【0062】
【図1】本発明の実施形態である薬剤拡散装置の分解斜視図である。
【図2】図1における平板状ファンの斜視図である。
【図3】平板状ファンの他の形態を示す斜視図である。
【図4】平板状ファンの更に他の形態を示す斜視図である。
【図5】平板を補強した平板状ファンの形態を示す斜視図である。
【図6】平板を補強した平板状ファンの形態を示す平面図である。
【図7】平板を補強した平板状ファンの形態を示す底面図である。
【図8】ファンの形態(枚数と厚さ)を変えて試験した結果の、モータに供給する電流値と風量の関係を比較して示すグラフである。
【図9】ファン径を変えて試験した結果の、モータに供給する電流値、風量の関係を比較して示すグラフである。
【図10】従来のシロッコファンの斜視図である。
【図11】従来のプロペラファンの斜視図である。
【符号の説明】
【0063】
11 モータ
12 平板状ファン
13 送風手段
14 薬剤保持体
15,16 開口
17 回転軸
22,42,52 平板
100 薬剤拡散装置
【特許請求の範囲】
【請求項1】
薬剤が含浸された薬剤保持体と、モータを有して当該モータが回転駆動されることにより、当該薬剤保持体に対して気流を発生させて前記薬剤を空気中に拡散する送風手段と、を備えた薬剤拡散装置であって、
前記送風手段は、
複数の平板が前記モータの回転軸の軸方向と略平行となるように前記回転軸に取り付けられた平板状ファンにより構成される
ことを特徴とする薬剤拡散装置。
【請求項2】
前記複数の平板が、
前記回転軸の周方向に対し、対称にして等間隔に配置されている
ことを特徴とする請求項1に記載の薬剤拡散装置。
【請求項3】
前記複数の平板が、
前記回転軸の周方向に対し、45°、60°、72°、90°、120°、180°のいずれかの間隔毎にそれぞれ離間配置されている
ことを特徴とする請求項2に記載の薬剤拡散装置。
【請求項4】
前記送風手段により発生する前記気流の流路中に、前記薬剤保持体が配置されている
ことを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか1つに記載の薬剤拡散装置。
【請求項5】
前記複数の平板が、
前記薬剤保持体を備える
ことを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか1つに記載の薬剤拡散装置。
【請求項6】
前記送風手段により発生する前記気流が通過し得る開口を複数、備えた
ことを特徴とする請求項1から請求項5のいずれか1つに記載の薬剤拡散装置。
【請求項7】
複数の前記開口は、互いに異なる方向に前記気流が通過し得る
ことを特徴とする請求項6に記載の薬剤拡散装置。
【請求項8】
前記送風手段は、
前記モータに供給される電流値が50mA以下であり、0.1リットル/秒以上の風量の前記気流を発生させる
ことを特徴とする請求項1から請求項7のいずれか1つに記載の薬剤拡散装置。
【請求項9】
前記送風手段は、
前記モータの回転軸が時計回り及び反時計回りに回転したとき、略同一風量の前記気流を発生させる
ことを特徴とする請求項1から請求項8のいずれか1つに記載の薬剤拡散装置。
【請求項10】
前記薬剤が、
害虫防除剤である
ことを特徴とする請求項1から請求項9のいずれか1つに記載の薬剤拡散装置。
【請求項11】
前記平板状ファンの前記平板は、前記モータ側の端部に半径方向にわたって、軸方向と直交方向に延在する補強板が一体に設けられている
ことを特徴とする請求項1から10のいずれか1つに記載の薬剤拡散装置。
【請求項12】
請求項1から請求項11のいずれか1つに記載の薬剤拡散装置によって、前記薬剤保持体に含浸された前記薬剤を外部に拡散する
ことを特徴とする薬剤拡散方法。
【請求項1】
薬剤が含浸された薬剤保持体と、モータを有して当該モータが回転駆動されることにより、当該薬剤保持体に対して気流を発生させて前記薬剤を空気中に拡散する送風手段と、を備えた薬剤拡散装置であって、
前記送風手段は、
複数の平板が前記モータの回転軸の軸方向と略平行となるように前記回転軸に取り付けられた平板状ファンにより構成される
ことを特徴とする薬剤拡散装置。
【請求項2】
前記複数の平板が、
前記回転軸の周方向に対し、対称にして等間隔に配置されている
ことを特徴とする請求項1に記載の薬剤拡散装置。
【請求項3】
前記複数の平板が、
前記回転軸の周方向に対し、45°、60°、72°、90°、120°、180°のいずれかの間隔毎にそれぞれ離間配置されている
ことを特徴とする請求項2に記載の薬剤拡散装置。
【請求項4】
前記送風手段により発生する前記気流の流路中に、前記薬剤保持体が配置されている
ことを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか1つに記載の薬剤拡散装置。
【請求項5】
前記複数の平板が、
前記薬剤保持体を備える
ことを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか1つに記載の薬剤拡散装置。
【請求項6】
前記送風手段により発生する前記気流が通過し得る開口を複数、備えた
ことを特徴とする請求項1から請求項5のいずれか1つに記載の薬剤拡散装置。
【請求項7】
複数の前記開口は、互いに異なる方向に前記気流が通過し得る
ことを特徴とする請求項6に記載の薬剤拡散装置。
【請求項8】
前記送風手段は、
前記モータに供給される電流値が50mA以下であり、0.1リットル/秒以上の風量の前記気流を発生させる
ことを特徴とする請求項1から請求項7のいずれか1つに記載の薬剤拡散装置。
【請求項9】
前記送風手段は、
前記モータの回転軸が時計回り及び反時計回りに回転したとき、略同一風量の前記気流を発生させる
ことを特徴とする請求項1から請求項8のいずれか1つに記載の薬剤拡散装置。
【請求項10】
前記薬剤が、
害虫防除剤である
ことを特徴とする請求項1から請求項9のいずれか1つに記載の薬剤拡散装置。
【請求項11】
前記平板状ファンの前記平板は、前記モータ側の端部に半径方向にわたって、軸方向と直交方向に延在する補強板が一体に設けられている
ことを特徴とする請求項1から10のいずれか1つに記載の薬剤拡散装置。
【請求項12】
請求項1から請求項11のいずれか1つに記載の薬剤拡散装置によって、前記薬剤保持体に含浸された前記薬剤を外部に拡散する
ことを特徴とする薬剤拡散方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2009−102(P2009−102A)
【公開日】平成21年1月8日(2009.1.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−132963(P2008−132963)
【出願日】平成20年5月21日(2008.5.21)
【出願人】(000100539)アース製薬株式会社 (191)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年1月8日(2009.1.8)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年5月21日(2008.5.21)
【出願人】(000100539)アース製薬株式会社 (191)
【Fターム(参考)】
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