虫防除剤拡散器
【課題】虫防除剤の効力を十分に高めるとともに、虫防除剤の寿命を把握できるようにする。
【解決手段】揮発性を有する液状の虫防除剤を空気中に拡散させる虫防除剤拡散器10において、虫防除剤を充填する容器15を備え、容器15は、虫防除剤を視認可能に構成されるとともに、揮発した虫防除剤を通過させ、かつ、液状の虫防除剤を通過させないように構成されている。
【解決手段】揮発性を有する液状の虫防除剤を空気中に拡散させる虫防除剤拡散器10において、虫防除剤を充填する容器15を備え、容器15は、虫防除剤を視認可能に構成されるとともに、揮発した虫防除剤を通過させ、かつ、液状の虫防除剤を通過させないように構成されている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、虫防除剤を空気中に拡散させるように構成された虫防除剤拡散器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、容器に充填した揮発性の薬剤を該容器から徐々に放出して空気中に拡散させるように構成された装置が知られている(特許文献1参照)。
【0003】
特許文献1の装置は、液状の芳香剤が充填された透明容器の他に、蚊の防除剤を含浸させたネット状の含浸体を備えており、これら容器及び含浸体が1つのケースに収容されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2011−139645号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、特許文献1のような装置を使用する際、使用者は虫防除剤の効力が発揮されているか否かが気になる。特許文献1では、芳香剤に関しては透明容器に充填されているので、使用者が芳香剤の残量を外部から見て寿命を知ることができるが、虫防除剤は含浸体に含浸させているだけなので、寿命を知ることができない。特に、含浸体の虫防除剤の臭いが弱かったり、無臭である場合には、使用者は虫防除剤の効果が発揮されているか否か、臭いを手がかりにして知ることもできない。
【0006】
そこで、透明容器内の芳香剤の寿命と、含浸体の虫防除剤の寿命とを一致させておくことが考えられる。こうすることで、使用者は、透明容器内の芳香剤の残量を手がかりにして含浸体の虫防除剤の寿命も知ることが可能になり、透明容器内の芳香剤を、虫防除剤の寿命を表示するインジケータとして利用することが可能になる。
【0007】
ところが、そのように透明容器と含浸体とを設けようとすると装置が全体として大型化し、設置場所が限られるという問題がある。
【0008】
また、特許文献1のような装置の使用者は、特に虫防除剤の効力に対する要求が強く、より一層効力を向上させなければならない。
【0009】
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、虫防除剤の効力を十分に高めるとともに、虫防除剤の寿命を把握できるようにすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、容器の外部から虫防除剤を視認できるようにするとともに、虫防除剤の揮発した成分のみを容器内から外部へ通過可能にした。
【0011】
第1の発明は、揮発性を有する虫防除剤を空気中に拡散させる虫防除剤拡散器において、液状の虫防除剤を充填する容器を備え、上記容器は、上記虫防除剤を該容器の外部から視認可能な透光部と、揮発した虫防除剤を通過させ、かつ、液状の虫防除剤を通過させないように構成された揮発成分通過部とを有することを特徴とするものである。
【0012】
この構成によれば、容器内に高濃度の有効成分を含む液状の虫防除剤を充填した場合に、その虫防除剤が液状のまま外部へ出ることはないので、虫防除剤の漏れが防止される。一方、虫防除剤が容器内で揮発すると揮発成分通過部を通過して外部へ出て空気中に拡散し、虫防除剤による高い効力が得られる。
【0013】
また、使用者が虫防除剤を容器の外部から視認できるので、虫防除剤の残量を知ることが可能になる。よって、虫防除剤の残量を表示するためのインジケータを別途設ける必要はなくなる。
【0014】
第2の発明は、第1の発明において、上記虫防除剤は、虫を防除するための有効成分と、有効成分を溶かす溶剤とを含んでおり、上記有効成分の濃度は8重量%以上に設定されていることを特徴とするものである。
【0015】
この構成によれば、有効成分の濃度が高まるので、高濃度の有効成分が容器から放出されることになる。
【0016】
第3の発明は、第2の発明において、上記溶剤の蒸発速度(n−BuAc=100)は、20以上であることを特徴とするものである。
【0017】
この構成によれば、溶剤の蒸発速度が高まるので、多くの有効成分を溶剤に乗せて揮発成分通過部から放出させ続けることが可能になる。
【0018】
第4の発明は、第2または3の発明において、上記虫防除剤は、第1の溶剤と、第1の溶剤よりも蒸発速度の速い第2の溶剤とを含んでいることを特徴とするものである。
【0019】
この構成によれば、第2の溶剤の蒸発速度が速いので、使用開始直後、第2の溶剤によって有効成分を多めに放出して高い効力が素早く得られる。その後、蒸発速度の遅い第1の溶剤によって長期間に亘って有効成分を放出することが可能になる。
【0020】
第5の発明は、第4の発明において、上記容器の上部における所定位置の水平方向の断面積は、該所定位置よりも下方の水平方向の断面積よりも大きく設定されていることを特徴とするものである。
【0021】
すなわち、上記第4の発明では、使用開始直後の虫防除剤の減少量が多くなるので液面の変位量が大きくなり、使用者は虫防除剤が急激に減少しているように感じることになるが、本発明では、容器の上部の断面積が比較的大きくなっているので、使用開始直後の虫防除剤の減少量が多くても液面の変位量は小さくなる。これにより、使用開始直後とその後とで液面の変化速度が大きく変わらないようにすることが可能になる。
【発明の効果】
【0022】
第1の発明によれば、容器に虫防除剤を視認可能な透光部と虫防除剤の揮発成分を通過させる揮発成分通過部とを設けている。これにより、高濃度の虫防除剤を空気中に放出して拡散させることができ、高い効力を得ることができるとともに、容器内の虫防除剤を外部から視認して虫防除剤の寿命を把握することができる。
【0023】
第2の発明によれば、虫を防除するための有効成分の濃度を8重量%以上にしたので、より一層高い効力を得ることができる。
【0024】
第3の発明によれば、溶剤の蒸発速度を20以上にしたので、より一層高い効力を得ることができる。
【0025】
第4の発明によれば、使用開始直後、蒸発速度の速い第2の溶剤によって有効成分を多めに放出して高い効力を素早く得ることができ、その後、蒸発速度の遅い第1の溶剤によって有効成分を徐々に放出して効力を長期間得ることができる。
【0026】
第5の発明によれば、容器の上部の断面積を大きくしたので、使用開始直後の虫防除剤の減少量が多くても液面の変位量を小さくすることができ、使用者が違和感を感じにくくなる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】実施形態1にかかる虫防除剤拡散器の正面図である。
【図2】容器本体と透湿防水フィルムの側面図である。
【図3】図1におけるIII−III線断面図である。
【図4】有効成分の濃度と効力との関係を示すグラフである。
【図5】小スケールKD試験法の説明図である。
【図6】放出部の表面積と効力との関係を示すグラフである。
【図7】各種有効成分の濃度と効力との関係を示すグラフである。
【図8】有効成分の濃度を変更した場合の放出部の表面積と効力との関係を示すグラフである。
【図9】準実地忌避試験法の説明図である。
【図10】実施形態2にかかる容器の正面図である。
【図11】図10におけるXI−XI線断面図である。
【図12】実施形態2の変形例1にかかる図10相当図である。
【図13】実施形態2の変形例2にかかる図10相当図である。
【図14】図13におけるXIV−XIV線断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。尚、以下の好ましい実施形態の説明は、本質的に例示に過ぎず、本発明、その適用物或いはその用途を制限することを意図するものではない。
【0029】
(実施形態1)
図1は、本発明の実施形態1にかかる虫防除剤拡散器10を示すものである。この虫防除拡散器10は、虫防除剤が充填される容器11と、容器11を収容するケース12(仮想線で示す)とを備えており、例えば家庭の玄関や居室等に置いて使用される。
【0030】
ケース12には、図示しないが貫通孔が形成されている。この貫通孔を介して空気がケース12に出入りし、虫防除剤が拡散するようになっている。
【0031】
尚、ケース12には、虫防除剤の拡散効果を高めるためのファン等を配設してもよい。
【0032】
図2に示すように、容器11は、容器本体15と透湿防水フィルム16とを備えている。容器本体15は、全体が無色透明な樹脂製プレートを成形してなるものであり、内部の虫防除剤を視認可能な透光部を構成している。容器本体15は図1に示すように正面視で略矩形状である。
【0033】
容器本体15の外周部は全周に亘って略平坦に形成され、透湿防水フィルム16の外周部が溶着される溶着部20とされている。容器本体15の溶着部20よりも内側には、略矩形の凹部21が全体に亘って形成されている。図3に示すように、凹部21の外周部21aは、該外周部21aよりも内側に比べて深く窪むように形成されている。また、図1に示すように、凹部21の外周部21aよりも内側には、凹部21内へ向けて突出する4つの突条部21c,21c,…が形成されている。これら突条部21cは、容器本体15の4つの辺とそれぞれ略平行に延びている。
【0034】
透湿防水フィルム16は、液状の虫防除剤を通過させず、かつ、揮発した虫防除剤を通過させる周知の部材で構成されている。この透湿防水フィルム16は、半透明で柔軟性を有しており、容器本体15の溶着部20の外形状と略同じ形状に成形されている。透湿防水フィルム16の外周部は、全周に亘って容器本体15の溶着部20に溶着される溶着部16aとされている。容器本体15の溶着部20と透湿防水フィルム16の溶着部16bとを溶着することで、密封状態となる。
【0035】
透湿防水フィルム16の容器11外側に臨む面(外面)は、虫防除剤拡散器10の使用開始前に密封シート(図示せず)により覆われており、揮発した虫防除剤が通過しないようになっている。この密封シートは、透湿防水フィルム16から容易に剥離することができるものである。
【0036】
透湿防水フィルム16における溶着部16aよりも内側は、全体が容器本体15の凹部21内に臨む部分となり、この部分が、揮発した虫防除剤を容器11外部へ放出するための放出部16bとなる。放出部16bの表面積は、20cm2以上100cm2以下に設定されており、従って容器11の小型化が図られている。放出部16bの表面積としてより好ましい範囲は、40cm2以上60cm2以下である。
【0037】
虫防除剤は、蚊を防除するための有効成分としてのトランスフルトリンと、トランスフルトリンを溶かすための溶剤とを含んでいる。有効成分としては、トランスフルトリンの他、例えば、メトフルトリン、エムペントリン、プロフルトリン等を用いてもよい。また、溶剤としては、イソパラフィン系炭化水素が好ましく、例えば、出光興産株式会社製のIPソルベント等を用いることができる。
【0038】
トランスフルトリンは、虫防除剤中の濃度が8重量%以上30重量%以下となるように添加されている。また、溶剤はIPソルベントの品番IP1016、IP1620、IP2028、IP2835であり、好ましくは、IP1016、IP1620である。
尚、IP1016の蒸発速度(n−BuAc=100)は153であり、IP1620は20であり、IP2028は5であり、IP2835は1である。
【0039】
虫防除剤を容器11に充填した状態で密封シートを透湿防水フィルム16から剥離させると、液状の虫防除剤は透湿防水フィルム16を通過しないので、容器11から洩れ出すことはなく、揮発した虫防除剤が透湿防水フィルム16の放出部16bを通過して外部へ放出される。このとき、容器11内の虫防除剤の濃度が8重量%以上の高濃度であるため、外部へ放出された虫防除剤による効力は高い。
【0040】
そして、使用開始から時間が経過するに従って容器11内の虫防除剤が減少していく。容器本体15が透明であるため、使用者は虫防除剤の残量を容易に把握することができる。
【0041】
次に、有効成分であるトランスフルトリンの濃度と効力との関係について図4に示す実験結果に基づいて説明する。図4では、縦軸に相対効力値をとり、横軸にトランスフルトリンの濃度(重量%)をとっている。相対効力値とは、溶剤をIP2835とし、トランスフルトリンを2.5重量%とした場合の効力を1としたときの相対効力を示す値である。
【0042】
実験方法は図5に示す小スケールKD試験法を用いた。すなわち、内容積約665cm3の透明プラスチックカップと、ネットとを用意する。そして、プラスチックカップ内部の上下方向中間部に水平方向に延びるように上記ネットを固定する。ネットの上面には、虫防除剤が充填された容器11を置き、揮発した虫防除剤を該容器11の透湿防水フィルム16から放出させる。容器11内には、虫防除剤を1.5ml充填した。供試虫は、ヒトスジシマカの雌(成虫)である。プラスチックカップの中に供試虫を20匹入れて密封し、所定時間経過後に、動かなくなった供試虫の数を数えた。
【0043】
図4において、溶剤をIP1016とした場合を実施例1とし、IP1620とした場合を実施例2とし、IP2028とした場合を実施例3とし、IP2835とした場合を実施例4としている。
【0044】
実施例1〜4において、トランスフルトリンの濃度が8重量%以上であれば、相対効力値が2以上となり、十分に高い効力が得られる。尚、トランスフルトリンの濃度を高めるほど相対効力値が上昇していくが、虫防除剤の製造コストも上昇することになるので、効力とコストとを考慮すると、トランスフルトリンの濃度は30重量%以下が好ましく、より好ましくは、20%である。
【0045】
また、実施例1は、実施例2〜4に比べて全体的に相対効力値が高く、特にトランスフルトリンの濃度が高くなるほど実施例2〜4との差が大きくなる。これは実施例1の溶剤であるIP1016の蒸発速度が、実施例2〜4の溶剤の蒸発速度よりも速いためである。
【0046】
次に、透湿防水フィルム16の放出部16aの表面積を変更した場合の効力について図6に示す実験結果に基づいて説明する。図6では、縦軸に相対効力値をとり、横軸に放出部16bの表面積(cm2)をとっている。相対効力値とは、トランスフルトリンを5重量%とし、溶剤をIP2028とし、放出部16aの表面積を18cm2とした場合の効力を1としたときの相対効力を示す値である。実験方法は上記した小スケールKD試験法である。
【0047】
実施例1〜4のそれぞれで放出部16aの表面積が20cm2以上あれば、相対効力値を1以上とすることができ、十分な効力が得られる。また、放出部16aの表面積が40cm2では、効力が最も低い実施例4でも相対効力値が2以上であり、実用上十分である。放出部16bの表面積を広くすると高い効力が得られる反面、容器11が大きくなってしまう点で好ましくなく、よって、効力と容器11の大きさとを考慮すると、上述したように40cm2以上60cm2以下が好ましい範囲である。
【0048】
次に、有効成分をトランスフルトリン、メトフルトリン、エムペントリン、プロフルトリンとし、各々について濃度を変更した場合の効力について図7に示す実験結果に基づいて説明する。図7では、縦軸に相対効力値をとり、横軸に各有効成分の濃度(重量%)をとっている。相対効力値とは、溶剤をIP2028とし、トランスフルトリンを10重量%とした場合の効力を1としたときの相対効力を示す値である。実験方法は上記した小スケールKD試験法である。
【0049】
有効成分をトランスフルトリンとした場合を実施例5とし、メトフルトリンとした場合を実施例6とし、エムペントリンとした場合を実施例7とし、プロフルトリンとした場合を実施例8としている。相対効力値1以上とするためには、実施例5の場合は濃度が10%以上が好ましく、実施例6の場合は濃度が7.4%以上が好ましく、実施例7の場合は濃度が23.3%以上が好ましく、実施例8の場合は濃度が19.3%以上が好ましい。
【0050】
次に、有効成分の濃度と放出部16bの表面積とを変更した場合の効力について図8に示す実験結果に基づいて説明する。図8では、縦軸に忌避率をとり、横軸に放出部16bの表面積(cm2)をとっている。
【0051】
忌避率は、図9に示す準実地忌避試験法によって得た値である。まず、「屋外」と想定する12畳の第1室と、「屋内」と想定する4畳の第2室とを用意する。第1室の壁には複数の窓を設けて換気を行う。換気回数は、9.5回/時間である。第1室と第2室との間には蚊が自由に出入りできるように開放部分を設けている。第2室には、蚊の誘引源としての60℃の温水を容器に入れて置いておく。また、第2室には扇風機を設置し、空気を対流させる。室温は25℃である。虫防除剤拡散器10は、第2室の出入り口付近で床から100cmの高さに設置し、30分間、虫防除剤を放出させた。供試虫はヒトスジシマカの雌(成虫)であり、100匹を第1室に放ち、それから1.5時間経過後に、第1室と第2室とを区画する。第1室及び第2室のそれぞれについて動かなくなった供試虫の数を数えて次式により忌避率を算出した。
忌避率=(1−虫防除剤処理時の第2室への生虫侵入率)/虫防除剤無処理時の第2室への生虫侵入率
侵入率とは、全供試虫に対する第2室内に生存する供試虫(生虫)の割合である。
【0052】
図8において、トランスフルトリンが5重量%である場合を実施例9とし、トランスフルトリンが10重量%である場合を実施例10とし、トランスフルトリンが20重量%である場合を実施例11としている。溶剤は全てIP2028である。
【0053】
実施例9の場合は、表面積が95cm2までは忌避率が向上していくが、95cm2を越えると忌避率が殆ど変化しなくなる。よって、実施例9では、表面積の上限は95cm2以下が好ましい。
【0054】
実施例10の場合は、表面積が47cm2までは忌避率が向上していくが、47cm2を越えると忌避率が殆ど変化しなくなる。よって、実施例10では、表面積の上限は47cm2以下が好ましい。
【0055】
実施例11の場合は、表面積が30cm2までは忌避率が向上していくが、30cm2を越えると忌避率が殆ど変化しなくなる。よって、実施例11では、表面積の上限は30cm2以下が好ましい。
【0056】
また、虫防除剤拡散器10による効力の持続日数は、虫防除剤の容量によって調整できる他、溶剤の蒸発速度によっても調整できる。すなわち、蒸発速度の速い溶剤を使用すれば持続日数を短くでき、また、蒸発速度の遅い溶剤を使用すれば持続日数を長くできる。本実施形態では、効力持続日数が60日以上200日以下となるようにしている。
【0057】
以上説明したように、この実施形態1にかかる虫防除剤拡散器10によれば、高濃度の虫防除剤を空気中に放出して拡散させることができ、高い効力を得ることができるとともに、容器11内の虫防除剤を外部から視認して虫防除剤の寿命を把握することができる。
【0058】
また、虫を防除するための有効成分の濃度を8重量%以上にすることで、より一層高い効力を得ることができる。
【0059】
また、溶剤の蒸発速度を20以上にすることで、より一層高い効力を得ることができる。
【0060】
実施形態1において、複数種の有効成分を組み合わせて用いてもよいし、複数種の溶剤を組み合わせて用いてもよい。
【0061】
(実施形態2)
図10及び図11は、本発明の実施形態2にかかる虫防除剤拡散器10の容器11を示すものである。
【0062】
この実施形態2では、容器11の形状及び虫防除剤が実施形態1とは異なっており、他の部分は同じであるため、以下、実施形態1と異なる部分について詳細に説明する。
【0063】
容器11の上部の所定位置(破線Aで示す位置)における水平方向の断面積は、その所定位置よりも下方の破線Bで示す位置における水平方向の断面積よりも大きくなっている。すなわち、容器本体15は、正面視で下に頂点が位置する略二等辺三角形とされており、凹部21は、容器本体15の外形状と略相似な略二等辺三角形である。
【0064】
また、虫防除剤の溶剤としては、IP1016とIP2028の2種類が混合されている。IP1016はIP2028よりも蒸発速度が速いので揮発しやすく、従って、虫防除剤拡散器10の使用開始直後には、IP1016によって有効成分を多めに拡散させることができ、使用開始直後から高い効力が得られる。使用開始からある程度時間が経過すると、蒸発速度の遅いIP2028によって有効成分が徐々に拡散することになる。つまり、蒸発速度の速い溶剤と遅い溶剤とを混合することにより、使用開始直後の効力を高めながら、長期間に亘って高い効力を得ることが可能になる。本発明の第1の溶剤は、IP2028であり、第2の溶剤はIP1016である。
【0065】
IP1016の代わりに例えばエタノール等の蒸気圧の高い溶剤を使用してもよい。また、IP2028の代わりにIP2835を使用してもよい。目標持続日数が短くてもよい場合には蒸発速度が速い溶剤を用い、目標持続日数を長くしたい場合には蒸発速度が遅い溶剤を用いればよい。また、3種類以上の溶剤を混合してもよい。
【0066】
実施形態2の場合、使用開始直後の虫防除剤の減少量がそれよりも後の減少量に比べて多くなるが、容器11の上部の断面積が比較的大きくなっているので、使用開始直後の液面の変位量を小さくすることが可能になる。これにより、使用開始直後とそれよりも後とで液面の変化速度が大きく変わらないようにすることができる。よって、使用者が、使用開始直後に虫防除剤の減りが異様に速い等の違和感を感じにくくなる。
【0067】
また、虫防除剤拡散器10による効力の持続日数を120日とする場合には、虫防除剤の容量を6mlとし、溶剤としてIP2028及びIP2835を用い、IP2028及びIP2835の比を1:1にすればよい。また、虫防除剤拡散器10による効力の持続日数を180日とする場合には、虫防除剤の容量を9mlとし、120日の場合と同じ溶剤を用いればよい。
【0068】
以上説明したように、この実施形態2にかかる虫防除剤拡散器10によれば、実施形態1と同様に、高い効力を得ることができるとともに、容器11内の虫防除剤を外部から視認して虫防除剤の寿命を把握することができる。
【0069】
尚、容器11の形状としては、図12に示す変形例1のように、正面視で略T字状にしてもよい。この変形例1のものでも、上部(破線A)の水平方向の断面積を下方(破線B)に比べて大きくすることができる。
【0070】
また、容器11の形状としては、図13及び図14に示す変形例2のように、凹部21の上側(破線A)を下側(破線B)よりも深く形成してもよい。この変形例2のものでも、上部の水平方向の断面積を下方に比べて大きくすることができる。
【0071】
また、上記実施形態1,2では、防除対象が蚊である場合について説明したが、これ以外にも、ハエ等も対象にすることができる。虫防除剤の有効成分は対象とする虫を防除するのに適した成分を選択すればよく、上記に限られるものではない。また、虫防除剤の溶剤も上記に限られるものではない。
【0072】
また、容器11の形状も上記に限られるものではなく、例えば正面視で円形、長円形、楕円形であってもよい。
【産業上の利用可能性】
【0073】
以上説明したように、本発明にかかる虫防除剤拡散器は、例えば蚊を防除するのに使用できる。
【符号の説明】
【0074】
10 虫防除剤拡散器
11 容器
12 ケース
15 容器本体
16 透湿防水フィルム
16a 溶着部
16b 放出部
20 溶着部
21 凹部
21a 外周部
21c 突条部
【技術分野】
【0001】
本発明は、虫防除剤を空気中に拡散させるように構成された虫防除剤拡散器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、容器に充填した揮発性の薬剤を該容器から徐々に放出して空気中に拡散させるように構成された装置が知られている(特許文献1参照)。
【0003】
特許文献1の装置は、液状の芳香剤が充填された透明容器の他に、蚊の防除剤を含浸させたネット状の含浸体を備えており、これら容器及び含浸体が1つのケースに収容されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2011−139645号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、特許文献1のような装置を使用する際、使用者は虫防除剤の効力が発揮されているか否かが気になる。特許文献1では、芳香剤に関しては透明容器に充填されているので、使用者が芳香剤の残量を外部から見て寿命を知ることができるが、虫防除剤は含浸体に含浸させているだけなので、寿命を知ることができない。特に、含浸体の虫防除剤の臭いが弱かったり、無臭である場合には、使用者は虫防除剤の効果が発揮されているか否か、臭いを手がかりにして知ることもできない。
【0006】
そこで、透明容器内の芳香剤の寿命と、含浸体の虫防除剤の寿命とを一致させておくことが考えられる。こうすることで、使用者は、透明容器内の芳香剤の残量を手がかりにして含浸体の虫防除剤の寿命も知ることが可能になり、透明容器内の芳香剤を、虫防除剤の寿命を表示するインジケータとして利用することが可能になる。
【0007】
ところが、そのように透明容器と含浸体とを設けようとすると装置が全体として大型化し、設置場所が限られるという問題がある。
【0008】
また、特許文献1のような装置の使用者は、特に虫防除剤の効力に対する要求が強く、より一層効力を向上させなければならない。
【0009】
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、虫防除剤の効力を十分に高めるとともに、虫防除剤の寿命を把握できるようにすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、容器の外部から虫防除剤を視認できるようにするとともに、虫防除剤の揮発した成分のみを容器内から外部へ通過可能にした。
【0011】
第1の発明は、揮発性を有する虫防除剤を空気中に拡散させる虫防除剤拡散器において、液状の虫防除剤を充填する容器を備え、上記容器は、上記虫防除剤を該容器の外部から視認可能な透光部と、揮発した虫防除剤を通過させ、かつ、液状の虫防除剤を通過させないように構成された揮発成分通過部とを有することを特徴とするものである。
【0012】
この構成によれば、容器内に高濃度の有効成分を含む液状の虫防除剤を充填した場合に、その虫防除剤が液状のまま外部へ出ることはないので、虫防除剤の漏れが防止される。一方、虫防除剤が容器内で揮発すると揮発成分通過部を通過して外部へ出て空気中に拡散し、虫防除剤による高い効力が得られる。
【0013】
また、使用者が虫防除剤を容器の外部から視認できるので、虫防除剤の残量を知ることが可能になる。よって、虫防除剤の残量を表示するためのインジケータを別途設ける必要はなくなる。
【0014】
第2の発明は、第1の発明において、上記虫防除剤は、虫を防除するための有効成分と、有効成分を溶かす溶剤とを含んでおり、上記有効成分の濃度は8重量%以上に設定されていることを特徴とするものである。
【0015】
この構成によれば、有効成分の濃度が高まるので、高濃度の有効成分が容器から放出されることになる。
【0016】
第3の発明は、第2の発明において、上記溶剤の蒸発速度(n−BuAc=100)は、20以上であることを特徴とするものである。
【0017】
この構成によれば、溶剤の蒸発速度が高まるので、多くの有効成分を溶剤に乗せて揮発成分通過部から放出させ続けることが可能になる。
【0018】
第4の発明は、第2または3の発明において、上記虫防除剤は、第1の溶剤と、第1の溶剤よりも蒸発速度の速い第2の溶剤とを含んでいることを特徴とするものである。
【0019】
この構成によれば、第2の溶剤の蒸発速度が速いので、使用開始直後、第2の溶剤によって有効成分を多めに放出して高い効力が素早く得られる。その後、蒸発速度の遅い第1の溶剤によって長期間に亘って有効成分を放出することが可能になる。
【0020】
第5の発明は、第4の発明において、上記容器の上部における所定位置の水平方向の断面積は、該所定位置よりも下方の水平方向の断面積よりも大きく設定されていることを特徴とするものである。
【0021】
すなわち、上記第4の発明では、使用開始直後の虫防除剤の減少量が多くなるので液面の変位量が大きくなり、使用者は虫防除剤が急激に減少しているように感じることになるが、本発明では、容器の上部の断面積が比較的大きくなっているので、使用開始直後の虫防除剤の減少量が多くても液面の変位量は小さくなる。これにより、使用開始直後とその後とで液面の変化速度が大きく変わらないようにすることが可能になる。
【発明の効果】
【0022】
第1の発明によれば、容器に虫防除剤を視認可能な透光部と虫防除剤の揮発成分を通過させる揮発成分通過部とを設けている。これにより、高濃度の虫防除剤を空気中に放出して拡散させることができ、高い効力を得ることができるとともに、容器内の虫防除剤を外部から視認して虫防除剤の寿命を把握することができる。
【0023】
第2の発明によれば、虫を防除するための有効成分の濃度を8重量%以上にしたので、より一層高い効力を得ることができる。
【0024】
第3の発明によれば、溶剤の蒸発速度を20以上にしたので、より一層高い効力を得ることができる。
【0025】
第4の発明によれば、使用開始直後、蒸発速度の速い第2の溶剤によって有効成分を多めに放出して高い効力を素早く得ることができ、その後、蒸発速度の遅い第1の溶剤によって有効成分を徐々に放出して効力を長期間得ることができる。
【0026】
第5の発明によれば、容器の上部の断面積を大きくしたので、使用開始直後の虫防除剤の減少量が多くても液面の変位量を小さくすることができ、使用者が違和感を感じにくくなる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】実施形態1にかかる虫防除剤拡散器の正面図である。
【図2】容器本体と透湿防水フィルムの側面図である。
【図3】図1におけるIII−III線断面図である。
【図4】有効成分の濃度と効力との関係を示すグラフである。
【図5】小スケールKD試験法の説明図である。
【図6】放出部の表面積と効力との関係を示すグラフである。
【図7】各種有効成分の濃度と効力との関係を示すグラフである。
【図8】有効成分の濃度を変更した場合の放出部の表面積と効力との関係を示すグラフである。
【図9】準実地忌避試験法の説明図である。
【図10】実施形態2にかかる容器の正面図である。
【図11】図10におけるXI−XI線断面図である。
【図12】実施形態2の変形例1にかかる図10相当図である。
【図13】実施形態2の変形例2にかかる図10相当図である。
【図14】図13におけるXIV−XIV線断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。尚、以下の好ましい実施形態の説明は、本質的に例示に過ぎず、本発明、その適用物或いはその用途を制限することを意図するものではない。
【0029】
(実施形態1)
図1は、本発明の実施形態1にかかる虫防除剤拡散器10を示すものである。この虫防除拡散器10は、虫防除剤が充填される容器11と、容器11を収容するケース12(仮想線で示す)とを備えており、例えば家庭の玄関や居室等に置いて使用される。
【0030】
ケース12には、図示しないが貫通孔が形成されている。この貫通孔を介して空気がケース12に出入りし、虫防除剤が拡散するようになっている。
【0031】
尚、ケース12には、虫防除剤の拡散効果を高めるためのファン等を配設してもよい。
【0032】
図2に示すように、容器11は、容器本体15と透湿防水フィルム16とを備えている。容器本体15は、全体が無色透明な樹脂製プレートを成形してなるものであり、内部の虫防除剤を視認可能な透光部を構成している。容器本体15は図1に示すように正面視で略矩形状である。
【0033】
容器本体15の外周部は全周に亘って略平坦に形成され、透湿防水フィルム16の外周部が溶着される溶着部20とされている。容器本体15の溶着部20よりも内側には、略矩形の凹部21が全体に亘って形成されている。図3に示すように、凹部21の外周部21aは、該外周部21aよりも内側に比べて深く窪むように形成されている。また、図1に示すように、凹部21の外周部21aよりも内側には、凹部21内へ向けて突出する4つの突条部21c,21c,…が形成されている。これら突条部21cは、容器本体15の4つの辺とそれぞれ略平行に延びている。
【0034】
透湿防水フィルム16は、液状の虫防除剤を通過させず、かつ、揮発した虫防除剤を通過させる周知の部材で構成されている。この透湿防水フィルム16は、半透明で柔軟性を有しており、容器本体15の溶着部20の外形状と略同じ形状に成形されている。透湿防水フィルム16の外周部は、全周に亘って容器本体15の溶着部20に溶着される溶着部16aとされている。容器本体15の溶着部20と透湿防水フィルム16の溶着部16bとを溶着することで、密封状態となる。
【0035】
透湿防水フィルム16の容器11外側に臨む面(外面)は、虫防除剤拡散器10の使用開始前に密封シート(図示せず)により覆われており、揮発した虫防除剤が通過しないようになっている。この密封シートは、透湿防水フィルム16から容易に剥離することができるものである。
【0036】
透湿防水フィルム16における溶着部16aよりも内側は、全体が容器本体15の凹部21内に臨む部分となり、この部分が、揮発した虫防除剤を容器11外部へ放出するための放出部16bとなる。放出部16bの表面積は、20cm2以上100cm2以下に設定されており、従って容器11の小型化が図られている。放出部16bの表面積としてより好ましい範囲は、40cm2以上60cm2以下である。
【0037】
虫防除剤は、蚊を防除するための有効成分としてのトランスフルトリンと、トランスフルトリンを溶かすための溶剤とを含んでいる。有効成分としては、トランスフルトリンの他、例えば、メトフルトリン、エムペントリン、プロフルトリン等を用いてもよい。また、溶剤としては、イソパラフィン系炭化水素が好ましく、例えば、出光興産株式会社製のIPソルベント等を用いることができる。
【0038】
トランスフルトリンは、虫防除剤中の濃度が8重量%以上30重量%以下となるように添加されている。また、溶剤はIPソルベントの品番IP1016、IP1620、IP2028、IP2835であり、好ましくは、IP1016、IP1620である。
尚、IP1016の蒸発速度(n−BuAc=100)は153であり、IP1620は20であり、IP2028は5であり、IP2835は1である。
【0039】
虫防除剤を容器11に充填した状態で密封シートを透湿防水フィルム16から剥離させると、液状の虫防除剤は透湿防水フィルム16を通過しないので、容器11から洩れ出すことはなく、揮発した虫防除剤が透湿防水フィルム16の放出部16bを通過して外部へ放出される。このとき、容器11内の虫防除剤の濃度が8重量%以上の高濃度であるため、外部へ放出された虫防除剤による効力は高い。
【0040】
そして、使用開始から時間が経過するに従って容器11内の虫防除剤が減少していく。容器本体15が透明であるため、使用者は虫防除剤の残量を容易に把握することができる。
【0041】
次に、有効成分であるトランスフルトリンの濃度と効力との関係について図4に示す実験結果に基づいて説明する。図4では、縦軸に相対効力値をとり、横軸にトランスフルトリンの濃度(重量%)をとっている。相対効力値とは、溶剤をIP2835とし、トランスフルトリンを2.5重量%とした場合の効力を1としたときの相対効力を示す値である。
【0042】
実験方法は図5に示す小スケールKD試験法を用いた。すなわち、内容積約665cm3の透明プラスチックカップと、ネットとを用意する。そして、プラスチックカップ内部の上下方向中間部に水平方向に延びるように上記ネットを固定する。ネットの上面には、虫防除剤が充填された容器11を置き、揮発した虫防除剤を該容器11の透湿防水フィルム16から放出させる。容器11内には、虫防除剤を1.5ml充填した。供試虫は、ヒトスジシマカの雌(成虫)である。プラスチックカップの中に供試虫を20匹入れて密封し、所定時間経過後に、動かなくなった供試虫の数を数えた。
【0043】
図4において、溶剤をIP1016とした場合を実施例1とし、IP1620とした場合を実施例2とし、IP2028とした場合を実施例3とし、IP2835とした場合を実施例4としている。
【0044】
実施例1〜4において、トランスフルトリンの濃度が8重量%以上であれば、相対効力値が2以上となり、十分に高い効力が得られる。尚、トランスフルトリンの濃度を高めるほど相対効力値が上昇していくが、虫防除剤の製造コストも上昇することになるので、効力とコストとを考慮すると、トランスフルトリンの濃度は30重量%以下が好ましく、より好ましくは、20%である。
【0045】
また、実施例1は、実施例2〜4に比べて全体的に相対効力値が高く、特にトランスフルトリンの濃度が高くなるほど実施例2〜4との差が大きくなる。これは実施例1の溶剤であるIP1016の蒸発速度が、実施例2〜4の溶剤の蒸発速度よりも速いためである。
【0046】
次に、透湿防水フィルム16の放出部16aの表面積を変更した場合の効力について図6に示す実験結果に基づいて説明する。図6では、縦軸に相対効力値をとり、横軸に放出部16bの表面積(cm2)をとっている。相対効力値とは、トランスフルトリンを5重量%とし、溶剤をIP2028とし、放出部16aの表面積を18cm2とした場合の効力を1としたときの相対効力を示す値である。実験方法は上記した小スケールKD試験法である。
【0047】
実施例1〜4のそれぞれで放出部16aの表面積が20cm2以上あれば、相対効力値を1以上とすることができ、十分な効力が得られる。また、放出部16aの表面積が40cm2では、効力が最も低い実施例4でも相対効力値が2以上であり、実用上十分である。放出部16bの表面積を広くすると高い効力が得られる反面、容器11が大きくなってしまう点で好ましくなく、よって、効力と容器11の大きさとを考慮すると、上述したように40cm2以上60cm2以下が好ましい範囲である。
【0048】
次に、有効成分をトランスフルトリン、メトフルトリン、エムペントリン、プロフルトリンとし、各々について濃度を変更した場合の効力について図7に示す実験結果に基づいて説明する。図7では、縦軸に相対効力値をとり、横軸に各有効成分の濃度(重量%)をとっている。相対効力値とは、溶剤をIP2028とし、トランスフルトリンを10重量%とした場合の効力を1としたときの相対効力を示す値である。実験方法は上記した小スケールKD試験法である。
【0049】
有効成分をトランスフルトリンとした場合を実施例5とし、メトフルトリンとした場合を実施例6とし、エムペントリンとした場合を実施例7とし、プロフルトリンとした場合を実施例8としている。相対効力値1以上とするためには、実施例5の場合は濃度が10%以上が好ましく、実施例6の場合は濃度が7.4%以上が好ましく、実施例7の場合は濃度が23.3%以上が好ましく、実施例8の場合は濃度が19.3%以上が好ましい。
【0050】
次に、有効成分の濃度と放出部16bの表面積とを変更した場合の効力について図8に示す実験結果に基づいて説明する。図8では、縦軸に忌避率をとり、横軸に放出部16bの表面積(cm2)をとっている。
【0051】
忌避率は、図9に示す準実地忌避試験法によって得た値である。まず、「屋外」と想定する12畳の第1室と、「屋内」と想定する4畳の第2室とを用意する。第1室の壁には複数の窓を設けて換気を行う。換気回数は、9.5回/時間である。第1室と第2室との間には蚊が自由に出入りできるように開放部分を設けている。第2室には、蚊の誘引源としての60℃の温水を容器に入れて置いておく。また、第2室には扇風機を設置し、空気を対流させる。室温は25℃である。虫防除剤拡散器10は、第2室の出入り口付近で床から100cmの高さに設置し、30分間、虫防除剤を放出させた。供試虫はヒトスジシマカの雌(成虫)であり、100匹を第1室に放ち、それから1.5時間経過後に、第1室と第2室とを区画する。第1室及び第2室のそれぞれについて動かなくなった供試虫の数を数えて次式により忌避率を算出した。
忌避率=(1−虫防除剤処理時の第2室への生虫侵入率)/虫防除剤無処理時の第2室への生虫侵入率
侵入率とは、全供試虫に対する第2室内に生存する供試虫(生虫)の割合である。
【0052】
図8において、トランスフルトリンが5重量%である場合を実施例9とし、トランスフルトリンが10重量%である場合を実施例10とし、トランスフルトリンが20重量%である場合を実施例11としている。溶剤は全てIP2028である。
【0053】
実施例9の場合は、表面積が95cm2までは忌避率が向上していくが、95cm2を越えると忌避率が殆ど変化しなくなる。よって、実施例9では、表面積の上限は95cm2以下が好ましい。
【0054】
実施例10の場合は、表面積が47cm2までは忌避率が向上していくが、47cm2を越えると忌避率が殆ど変化しなくなる。よって、実施例10では、表面積の上限は47cm2以下が好ましい。
【0055】
実施例11の場合は、表面積が30cm2までは忌避率が向上していくが、30cm2を越えると忌避率が殆ど変化しなくなる。よって、実施例11では、表面積の上限は30cm2以下が好ましい。
【0056】
また、虫防除剤拡散器10による効力の持続日数は、虫防除剤の容量によって調整できる他、溶剤の蒸発速度によっても調整できる。すなわち、蒸発速度の速い溶剤を使用すれば持続日数を短くでき、また、蒸発速度の遅い溶剤を使用すれば持続日数を長くできる。本実施形態では、効力持続日数が60日以上200日以下となるようにしている。
【0057】
以上説明したように、この実施形態1にかかる虫防除剤拡散器10によれば、高濃度の虫防除剤を空気中に放出して拡散させることができ、高い効力を得ることができるとともに、容器11内の虫防除剤を外部から視認して虫防除剤の寿命を把握することができる。
【0058】
また、虫を防除するための有効成分の濃度を8重量%以上にすることで、より一層高い効力を得ることができる。
【0059】
また、溶剤の蒸発速度を20以上にすることで、より一層高い効力を得ることができる。
【0060】
実施形態1において、複数種の有効成分を組み合わせて用いてもよいし、複数種の溶剤を組み合わせて用いてもよい。
【0061】
(実施形態2)
図10及び図11は、本発明の実施形態2にかかる虫防除剤拡散器10の容器11を示すものである。
【0062】
この実施形態2では、容器11の形状及び虫防除剤が実施形態1とは異なっており、他の部分は同じであるため、以下、実施形態1と異なる部分について詳細に説明する。
【0063】
容器11の上部の所定位置(破線Aで示す位置)における水平方向の断面積は、その所定位置よりも下方の破線Bで示す位置における水平方向の断面積よりも大きくなっている。すなわち、容器本体15は、正面視で下に頂点が位置する略二等辺三角形とされており、凹部21は、容器本体15の外形状と略相似な略二等辺三角形である。
【0064】
また、虫防除剤の溶剤としては、IP1016とIP2028の2種類が混合されている。IP1016はIP2028よりも蒸発速度が速いので揮発しやすく、従って、虫防除剤拡散器10の使用開始直後には、IP1016によって有効成分を多めに拡散させることができ、使用開始直後から高い効力が得られる。使用開始からある程度時間が経過すると、蒸発速度の遅いIP2028によって有効成分が徐々に拡散することになる。つまり、蒸発速度の速い溶剤と遅い溶剤とを混合することにより、使用開始直後の効力を高めながら、長期間に亘って高い効力を得ることが可能になる。本発明の第1の溶剤は、IP2028であり、第2の溶剤はIP1016である。
【0065】
IP1016の代わりに例えばエタノール等の蒸気圧の高い溶剤を使用してもよい。また、IP2028の代わりにIP2835を使用してもよい。目標持続日数が短くてもよい場合には蒸発速度が速い溶剤を用い、目標持続日数を長くしたい場合には蒸発速度が遅い溶剤を用いればよい。また、3種類以上の溶剤を混合してもよい。
【0066】
実施形態2の場合、使用開始直後の虫防除剤の減少量がそれよりも後の減少量に比べて多くなるが、容器11の上部の断面積が比較的大きくなっているので、使用開始直後の液面の変位量を小さくすることが可能になる。これにより、使用開始直後とそれよりも後とで液面の変化速度が大きく変わらないようにすることができる。よって、使用者が、使用開始直後に虫防除剤の減りが異様に速い等の違和感を感じにくくなる。
【0067】
また、虫防除剤拡散器10による効力の持続日数を120日とする場合には、虫防除剤の容量を6mlとし、溶剤としてIP2028及びIP2835を用い、IP2028及びIP2835の比を1:1にすればよい。また、虫防除剤拡散器10による効力の持続日数を180日とする場合には、虫防除剤の容量を9mlとし、120日の場合と同じ溶剤を用いればよい。
【0068】
以上説明したように、この実施形態2にかかる虫防除剤拡散器10によれば、実施形態1と同様に、高い効力を得ることができるとともに、容器11内の虫防除剤を外部から視認して虫防除剤の寿命を把握することができる。
【0069】
尚、容器11の形状としては、図12に示す変形例1のように、正面視で略T字状にしてもよい。この変形例1のものでも、上部(破線A)の水平方向の断面積を下方(破線B)に比べて大きくすることができる。
【0070】
また、容器11の形状としては、図13及び図14に示す変形例2のように、凹部21の上側(破線A)を下側(破線B)よりも深く形成してもよい。この変形例2のものでも、上部の水平方向の断面積を下方に比べて大きくすることができる。
【0071】
また、上記実施形態1,2では、防除対象が蚊である場合について説明したが、これ以外にも、ハエ等も対象にすることができる。虫防除剤の有効成分は対象とする虫を防除するのに適した成分を選択すればよく、上記に限られるものではない。また、虫防除剤の溶剤も上記に限られるものではない。
【0072】
また、容器11の形状も上記に限られるものではなく、例えば正面視で円形、長円形、楕円形であってもよい。
【産業上の利用可能性】
【0073】
以上説明したように、本発明にかかる虫防除剤拡散器は、例えば蚊を防除するのに使用できる。
【符号の説明】
【0074】
10 虫防除剤拡散器
11 容器
12 ケース
15 容器本体
16 透湿防水フィルム
16a 溶着部
16b 放出部
20 溶着部
21 凹部
21a 外周部
21c 突条部
【特許請求の範囲】
【請求項1】
揮発性を有する虫防除剤を空気中に拡散させる虫防除剤拡散器において、
液状の虫防除剤を充填する容器を備え、
上記容器は、上記虫防除剤を該容器の外部から視認可能な透光部と、揮発した虫防除剤を通過させ、かつ、液状の虫防除剤を通過させないように構成された揮発成分通過部とを有することを特徴とする虫防除剤拡散器。
【請求項2】
請求項1に記載の虫防除剤拡散器において、
上記虫防除剤は、虫を防除するための有効成分と、有効成分を溶かす溶剤とを含んでおり、
上記有効成分の濃度は8重量%以上に設定されていることを特徴とする虫防除剤拡散器。
【請求項3】
請求項2に記載の虫防除剤拡散器において、
上記溶剤の蒸発速度(n−BuAc=100)は、20以上であることを特徴とする虫防除剤拡散器。
【請求項4】
請求項2または3に記載の虫防除剤拡散器において、
上記虫防除剤は、第1の溶剤と、第1の溶剤よりも蒸発速度の速い第2の溶剤とを含んでいることを特徴とする虫防除剤拡散器。
【請求項5】
請求項4に記載の虫防除剤拡散器において、
上記容器の上部における所定位置の水平方向の断面積は、該所定位置よりも下方の水平方向の断面積よりも大きく設定されていることを特徴とする虫防除剤拡散器。
【請求項1】
揮発性を有する虫防除剤を空気中に拡散させる虫防除剤拡散器において、
液状の虫防除剤を充填する容器を備え、
上記容器は、上記虫防除剤を該容器の外部から視認可能な透光部と、揮発した虫防除剤を通過させ、かつ、液状の虫防除剤を通過させないように構成された揮発成分通過部とを有することを特徴とする虫防除剤拡散器。
【請求項2】
請求項1に記載の虫防除剤拡散器において、
上記虫防除剤は、虫を防除するための有効成分と、有効成分を溶かす溶剤とを含んでおり、
上記有効成分の濃度は8重量%以上に設定されていることを特徴とする虫防除剤拡散器。
【請求項3】
請求項2に記載の虫防除剤拡散器において、
上記溶剤の蒸発速度(n−BuAc=100)は、20以上であることを特徴とする虫防除剤拡散器。
【請求項4】
請求項2または3に記載の虫防除剤拡散器において、
上記虫防除剤は、第1の溶剤と、第1の溶剤よりも蒸発速度の速い第2の溶剤とを含んでいることを特徴とする虫防除剤拡散器。
【請求項5】
請求項4に記載の虫防除剤拡散器において、
上記容器の上部における所定位置の水平方向の断面積は、該所定位置よりも下方の水平方向の断面積よりも大きく設定されていることを特徴とする虫防除剤拡散器。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【公開番号】特開2013−70638(P2013−70638A)
【公開日】平成25年4月22日(2013.4.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−210589(P2011−210589)
【出願日】平成23年9月27日(2011.9.27)
【出願人】(000112853)フマキラー株式会社 (155)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年4月22日(2013.4.22)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年9月27日(2011.9.27)
【出願人】(000112853)フマキラー株式会社 (155)
【Fターム(参考)】
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