説明

蛍光ランプ

【課題】加工による製造費上昇を抑え、ランプの全光束及び発光効率を改善した蛍光ランプを提供する。
【解決手段】環径が異なる複数本の環形発光管を備え、前記環形発光管をブリッジ接合部によって連結し、最外輪の環形発光管と最内輪の環形発光管の端部にそれぞれ設けられた電極によって放電路を形成した環形蛍光ランプにおいて、ランプ電力が120W以上の環形蛍光ランプは、最外輪の環形発光管の最大外径が408mm以下であり、かつ前記放電路の距離が3910mm以下として、前記環形発光管を4本用いて構成し、ランプ電力が85W以上の環形蛍光ランプは、使用する環形発光管は、ランプ電力が120W以上の環形蛍光ランプに使用する環形蛍光環の最外輪から順に3本用い、ランプ電力が65W以上の環形蛍光ランプは、使用する環形発光管は、ランプ電力が120W以上の環形蛍光ランプに使用する環形蛍光環の最内輪から順に3本用いたことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は4本または3本の環形発光管を略同一平面内に略同一心円状に設けた蛍光ランプに関するものである。
【背景技術】
【0002】
環形蛍光ランプの1種として、図7に示すような放電路が二重環形状になる発光管51a,発光管51bを備えた蛍光ランプ50が公知である(特許文献1)。図7の蛍光ランプは、いわゆる二重環形蛍光ランプであって、発光管51aと発光管51bがブリッジ接合部52で連結され、発光管51aの管端部にある電極(図示せず)から発光管51bの管端部にある電極(図示せず)で一つの放電路が形成されている。
【0003】
蛍光ランプ50の発光管51a,51bは2本の環形発光管を連結し、一つの放電路を形成しているため、1本の環形発光管で一つの放電路を形成している蛍光ランプに比べ、同じ最大外径で蛍光ランプを作成した場合、発光管51aの内側に発光管51bが形成されていることにより、1本の環形発光管よりも放電路を長くすることができる。したがって、発光管の放電路が長くなり発光面積が増えたことで、全光束を大きく、発光効率を向上させたランプを作成することができる。
【0004】
蛍光ランプ50は最大外径が1本の環形発光管からなる蛍光ランプと同等の大きさで、全光束が大きく、発光効率が良いランプであり、ランプを装着する器具も従来と同等の大きさで設計でき、リビングやダイニングルーム等に好適な家庭用照明器具を実現するのに適した蛍光ランプである。
【0005】
例えば、従来の非特許文献1に掲載している二重環形蛍光ランプ40W形のFHD40EDK−Aは、発光管51a,51bの管外径が20.0mm、管内径が17.6mmであり、発光管51aの環外径は192mm、環内径は152mm、環形発光管51bの環外径は146mm、環内径は106mm、ブリッジ接合部52の外径が9.0mm、内径が6.0mmであり、発光管51a,51bのそれぞれの管壁同士の隙間が3.0mm、発光管51a,51bの2本の環形発光管を連結し、形成される一つの放電路の距離が840mmである。外輪の発光管51aの環外径192mmが最大外径であり、したがってFHD40EDK−Aの大きさは192mmである。さらにFHD40EDK−Aを高周波点灯形蛍光ランプ専用の点灯装置で点灯させ諸特性を測定すると、ランプ電流430mA,ランプ電圧96V,ランプ電力41W,全光束2900lm,ランプ効率70.7lm/W,周囲温度25℃の雰囲気での最冷点は39.5℃であった。
【0006】
同様に従来の二重環形蛍光ランプ85W形のFHD85EDK−Aは、発光管51a,51bの管外径が20.0mm、管内径が17.6mmであり、発光管51aの環外径は342mm、環内径は302mm、環形発光管51bの環外径は296mm、環内径は256mm、ブリッジ接合部52の外径が9.0mm、内径が6.0mmであり、発光管51a,51bのそれぞれの管壁同士の隙間が3.0mm、発光管51a,51bの2本の環形発光管を連結し、形成される一つの放電路の距離が1780mmである。外輪の発光管51aの環外径342mmが最大外径であり、したがってFHD85EDK−Aの大きさは342mmである。さらにFHD85EDK−Aを高周波点灯形蛍光ランプ専用の点灯装置で点灯させ諸特性を測定すると、ランプ電流430mA,ランプ電圧195V,ランプ電力83W,全光束7100lm,ランプ効率85.5lm/W,周囲温度25℃の雰囲気での最冷点は39.5℃であった。
【0007】
また、従来の二重環形蛍光ランプ100W形のFHD100EDK−Aは、発光管51a,51bの管外径が20.0mm、管内径が17.6mmであり、発光管51aの環外径は400mm、環内径は360mm、環形発光管51bの環外径は354mm、環内径は314mm、ブリッジ接合部52の外径が9.0mm、内径が6.0mmであり、発光管51a,51bのそれぞれの管壁同士の隙間が3.0mm、発光管51a,51bの2本の環形発光管を連結し、形成される一つの放電路の距離が2145mmである。外輪の発光管51aの環外径400mmが最大外径であり、したがってFHD100EDK−Aの大きさは400mmである。さらにFHD100EDK−Aを高周波点灯形蛍光ランプ専用の点灯装置で点灯させ諸特性を測定すると、ランプ電流430mA,ランプ電圧229V,ランプ電力97W,全光束8200lm,ランプ効率84.5lm/W,周囲温度25℃の雰囲気での最冷点は39.5℃であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特許第2776840号公報
【非特許文献】
【0009】
【非特許文献1】ランプ総合カタログ2010−2011 日立アプライアンス株式会社発行(カタログNo.LA−200)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
図7の蛍光ランプ50は、発光管51a,51bをブリッジ接合部52で連結し、一つの放電路を形成している二重環形状のランプである。放電路を長くするために、発光管51aの最大外径を大きくし、それに伴い内側の発光管51bの外径も大きくして、二重環形状に並べると、蛍光ランプ50の最大外径が大きくなり、装着する器具の最大外径も大きくする必要が生じ、従来の器具よりも大きくなり好ましくない。また、同様に放電路を長くするために発光管51aの外側に環形発光管を追加し並べていくと、最外輪の環形発光管の最大外径は大きくなり、同様に従来の器具を大きくする必要が生じ、好ましくない。
【0011】
したがって、本発明者らは従来のランプの大きさが400mmである二重環形蛍光ランプ100W形のFHD100EDK−Aの発光管51a,51bをそのまま利用し、最大外径を大きくすることなく、放電路の距離を長くし、管壁負荷を上昇させることなく、発光面積を増やす方法を考えることとした。
【0012】
本発明は、上記の課題を鑑み、ランプの最大外径を大きくすることなく、ランプの全光束が大きく、発光効率が高く、ランプの電力に応じて異なって製造していた複数の環径の異なる環形発光管を4本に統一することで、加工による製造費の上昇を抑えることができる蛍光ランプを提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記目的を達成するため、環径が異なる複数本の環形発光管を備え、前記複数本の環形発光管を略同一平面内に略同心円状に略均一の隙間Sを設け、前記環形発光管をブリッジ接合部によって連結し、最外輪の環形発光管と最内輪の環形発光管の端部にそれぞれ設けられた電極によって放電路を形成し、前記環形発光管の管端部を包囲する形で一つの口金を備えた環形蛍光ランプにおいて、ランプ電力が120W以上の環形蛍光ランプは、最外輪の環形発光管の最大外径が408mm以下であり、かつ前記放電路の距離が3910mm以下として、前記環形発光管を4本用いて構成し、ランプ電力が85W以上の環形蛍光ランプは、最外輪の環形発光管の最大外径が408mm以下であり、かつ放電路の距離が3150mm以下として、使用する環形発光管は、ランプ電力が120W以上の環形蛍光ランプに使用する環形蛍光環の最外輪から順に3本用いて構成し、ランプ電力が65W以上の環形蛍光ランプは、最外輪の環形発光管の最大外径が362mm以下であり、かつ放電路の距離が2510mm以上とし、使用する環形発光管は、ランプ電力が120W以上の環形蛍光ランプに使用する環形蛍光環の最内輪から順に3本用いて構成したものである。
【発明の効果】
【0014】
本発明の140W形に係る蛍光ランプは、環径が異なる4本の環形発光管を作成し、前記4本の環形発光管は略同一平面内に略同心円状に略均一の隙間Sで並べられ、前記環形発光管の端部をブリッジ接合により順次連結していき、最外輪の環形発光管と最内輪の環形発光管の端部にそれぞれ設けた電極で一つの放電路が形成されており、最外輪の環形発光管及び外側から2番目の環形発光管は従来の二重環形蛍光ランプ100W形のFHD100EDK−Aの環形発光管とほぼ同一の環形状であり、さらに内側に並べる2本の環形発光管は隙間Sが略均一になるような新しい環径の環形発光管を設けていくことで、4本の環形発光管で形成される放電路を最大で3910mm程度と長くすることができる。放電路が長くなったことで発光面積が増え、管壁負荷を上昇させることなくランプ電力を120W以上とすることができ、全光束を大きく、発光効率を向上させることができる。
【0015】
また、従来の140W相当の照明器具には二重環形蛍光ランプ40W形の従来品FHD40EDK−Aと100W形の従来品FHD100EDK−Aの2本を同時に装着しており、前記FHD40EDK−Aは放電路が短くランプ効率低いため、2本を同時に装着した従来の140W相当の照明器具の総合的な器具消費効率は、FHD100EDK−Aを単品で使用する場合よりも低くなっていたが、本発明の蛍光ランプにより2本の二重環形蛍光ランプと同等の全光束を1本の蛍光ランプで達成でき、器具へ装着するランプの本数を低減し、ランプの発光効率の向上で、照明器具の器具消費効率も向上することができる。
【0016】
本発明の100W形に係る蛍光ランプにおいて、環形発光管は前記4本の環形発光管のうち、最外輪から内側へ順に3本の環形発光管を使用するため、新しい環形発光管を作成せずにすみ、加工による製造費上昇を抑えることができる。前記3本の環形発光管は同一平面内に略同心円状に略均一に隙間Sで並べられ、前記環形発光管の端部をブリッジ接合部により順次連結していき、最外輪の環形発光管と最内輪の環形発光管の端部にそれぞれ設けた電極で一つの放電路が形成されている。また、3本の環形発光管で形成される放電路を最大で3150mm程度と長くすることができる。放電路が長くなったことにより発光面積が増え、管壁負荷を上昇させることなくランプ電力を85W以上とすることができ、全光束を大きく、発光効率を向上させることができる。
【0017】
また、従来の100W相当の照明器具には二重環形蛍光ランプ100W形の従来品FHD100EDK−Aを装着していたが、本発明の蛍光ランプにより同等の全光束を90W程度で達成でき、ランプの発光効率の向上で、照明器具の器具消費効率も向上することができる。
【0018】
本発明の85W形に係る蛍光ランプにおいて、環形発光管は前記4本の環形発光管のうち、最内輪から外側へ順に3本の環形発光管を使用するため、新しい環形発光管を作成せずにすみ、加工による製造費上昇を抑えることができる。前記3本の環形発光管は同一平面内に略同心円状に略均一の隙間Sで並べられ、前記環形発光管の端部をブリッジ接合部により順次連結していき、最外輪の環形発光管と最内輪の環形発光管の端部にそれぞれ設けた電極で一つの放電路が形成されている。また、3本の環形発光管で形成される放電路を最小で2510mm程度と長くすることができる。放電路が長くなったことにより発光面積が増え、管壁負荷を上昇させることなくランプ電力を65W以上とすることができ、全光束を大きく、発光効率を向上させることができる。
【0019】
また、従来の85W相当の照明器具には二重環形蛍光ランプ85W形の従来品FHD85EDK−Aを装着していたが、本発明の蛍光ランプにより同等の全光束を72W程度で達成でき、ランプの発光効率の向上で、照明器具の器具消費効率も向上することができる。
【0020】
したがって、本発明によれば、従来の二重環形蛍光ランプに比べ、蛍光ランプの発光効率を向上し、また、ランプの電力に応じて異なって製造していた複数の環径の異なる環形発光管を4本に統一し、前記4本の環形発光管で3種類の異なったランプ電力の蛍光ランプを作成することができ、加工による製造費の上昇を抑えることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の第一の実施の形態である蛍光ランプを示す正面図。
【図2】本発明の第一の実施の形態である蛍光ランプの発光管を示す正面断面図。
【図3】本発明の第二の実施の形態である蛍光ランプを示す正面図。
【図4】本発明の第二の実施の形態である蛍光ランプの発光管を示す正面断面図。
【図5】本発明の第一の実施の形態と第二の実施の形態である蛍光ランプの管外径20.0mm,管内径17.6mmの場合のランプ電流と発光効率の関係を示す図。
【図6】本発明の第一の実施の形態と第二の実施の形態である蛍光ランプの管外径20.0mm,管内径17.6mmの場合の最冷点と全光束の関係を示す図。
【図7】従来の例を示す蛍光ランプの正面図。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の実施の形態に係る蛍光ランプについて、図面を参照しながら説明する。
【0023】
図1は、本発明の140W形に係る蛍光ランプを示す図である。本発明の140W形に係る蛍光ランプ20は、主にリビングやダイニングルーム等に好適な家庭用照明器具に用いられる蛍光ランプであって、環形発光管21a,21b,21c,21dは管壁同士の隙間S1,S2,S3を略均一に略同一平面内に略同心円状に並べられ、前記環形発光管21a,21bを連結するブリッジ接合部22a、前記環形発光管21b,21cを連結するブリッジ接合部22b、前記環形発光管21c,21dを連結するブリッジ接合部22c、前記環形発光管21a,21b,21c,21dの管端部を包囲する形の口金23、前記環形発光管21a,21b,21c,21dの管壁同士を固着する接着剤24を備えている。
【0024】
接着剤24は長さ30mm,幅6mmで管壁同士を固着している。接着剤24には、例えばシリコーン樹脂,エポキシ樹脂,アクリル樹脂あるいはセメント等が用いられる。
【0025】
図2は、本発明の140W形である蛍光ランプの発光管を示す正面断面図である。発光管41は、口金23,接着剤24を取り付ける前の状態を示す断面図である。発光管41は、環形発光管21aの一方の管端部に配置された電極45aと環形蛍光管21dの一方の管端部に配置された電極45bで形成される一つの放電路が4本の環形発光管21a,21b,21c,21dの環中央を中心として、略同一平面内に略同心円状に並べられた形状を有している。また、発光管41の環形発光管21a,21b,21c,21dは管壁同士の隙間S1,S2,S3は略均一である。
【0026】
前記隙間S1,S2,S3は平均的に3.0〜15.0mmの範囲とする必要がある。前記隙間S1,S2,S3を3.0mmよりも狭く設計すると、発光管21a,21b,21c,21dを同一平面内に並べるためには、4本とも真円環状に精度よく加工しなければならず、製造費が著しく高くなる。また、隙間S1,S2,S3が狭い場合は、発光管21a,21b,21c,21dから放射される赤外線で、互いに管壁温度が上昇し、特に密閉形器具に装着した場合、最冷点温度の上昇による発光効率の低下が顕著になる。また、前記隙間S1,S2,S3が15.0mmを超えると、発光管21a,21b,21c,21dがそれぞれ独立して存在するように見え、均一な発光が得られず、密閉形器具に装着した場合に器具のカバー部材で光を拡散する必要性が多くなり、カバー部材での光の反射,吸収が増え、前記発光管41から得られる照度が低くなる。
【0027】
発光管の特性は、従来の140W相当の照明器具に二重環形蛍光ランプの従来品FHD40EDK−Aと従来品FHD100EDK−Aの2本を同時に装着した時と比べ、放電路の長さを最大で3910mm程度とすることで、発光面積が増え、管壁負荷を上昇させることなくランプ電力を120W以上とすることができ、全光束を大きく、発光効率を向上させた。
【0028】
放電路の長さの上限は、発光管の中心部に制御基板(図示無し)などの制御装置や常夜灯(図示無し)を設置できるようにし、また、発光管の熱が制御基板に悪影響を与えない程度とした。そのため、前記常夜灯などの設置スペースを小さく、照明器具を大きくして更に放電路を長く設定することも可能で5本の環形発光管を用いて製造することも可能である。
【0029】
発光管41は、140W形の蛍光ランプの場合、環形発光管21a,21b,21c,21dの管外径が20.0mm、管内径が17.6mmであり、環形発光管21aの環外径は二重環形蛍光ランプ100W形の従来品FHD100EDK−Aとほぼ同一の400mmとすると、環内径は360mm、環形発光管21bの環外径は354mm、環内径は314mm、環形発光管21cの環外径は308mm、環内径は268mm、環形発光管21dの環外径は262mm、環内径は222mm、ブリッジ接合部22a,22b,22cの外径が9.0mm、内径が6.0mmであり、環形発光管21a,21b,21c,21dのそれぞれの管壁同士の隙間S1,S2,S3が3.0mm、電極45aと電極45bで形成される一つの放電路の距離が3720mmである。蛍光管41は、例えば、鉛フリーガラス(軟化点665℃の軟質ガラス)で形成されている。
【0030】
発光管41の内面には、酸化セリウム(CeO2)からなる保護膜層(図示せず),赤色蛍光体(Y23:Eu),緑色蛍光体(LaPO4:Ce,Tb)及び青色蛍光体((Sr,Ca,Ba,Mg)5(PO4)3Cl:Eu)からなる希土類蛍光体によって蛍光体膜層(図示せず)が形成されている。
【0031】
発光管41の内部には、水銀(図示せず)が約15mg封入されているとともに、緩衝ガスとしてのアルゴンが約300Paとなるように封入されている。封入する水銀は、水銀単体の他に亜鉛水銀,錫水銀等の水銀合金であっても良く、また緩衝ガスはアルゴン単体の他にネオン,クリプトン,キセノンの混合ガスでも良い。
【0032】
ブリッジ接合部22aの管軸中心位置は、発光管21aの電極45a側ではない管端部から30mmの位置にあり、ブリッジ接合部22bの管軸中心位置は、発光管21bのブリッジ接合部22aの近傍ではない他方の管端部から25mmの位置にあり、ブリッジ接合部22cの管軸中心位置は、発光管21cのブリッジ接合部22bの近傍ではない他方の管端部から25mmの位置にある。発光管21aの電極45a側ではない管端部が発光管41の最冷点となる。
【0033】
電極45a,45bはタングステン製フィラメントと一対の給電のためのリード線とを備え、発光管21a及び発光管21dの管端部で気密封着されている。
【0034】
図5は、本発明の形態である蛍光ランプのランプ電流(放電電流)と発光効率の関係を示しており、前記発光管41のランプ電流と発光効率の関係を示す。発光管41の発光効率を高くするためには、ランプ電流を150〜320mAの範囲にすることが好適である。ランプ電流が150mAより小さい場合は、発光管41内の放電で流れる電子が少ないため、電子と水銀原子との衝突が減少し、水銀原子から発生する紫外線が減少する。紫外線の発生が減ることにより、蛍光体膜層で紫外線を可視光に変換する量が減り、発光効率が低下する。ランプ電流が320mAを超えると、発光管41内の放電で流れる電子は多くなるため、電子と水銀原子との衝突が増加し、水銀原子から発生する紫外線が増加する。しかし、ランプ電流が大きくなると発光管41の管壁温度が上昇し、蛍光体膜層の温度が上昇する。蛍光体膜層の発光効率(紫外線を可視光に変換する変換効率)には温度依存性があるため、蛍光体膜層の温度上昇で発光効率が低下する。したがって、ランプ電流を150〜320mAの範囲にすることで発光効率の高い発光管41を作成することができる。なお、前記ランプ電流の範囲で作成した発光管41は、放電路の距離が3720mmであるため、ランプ電力の最適範囲は、84〜138Wとなる。
【0035】
図6は、140W形である蛍光ランプの最冷点と全光束の関係を示しており、前記発光管41の最冷点温度と全光束の関係を示す。ランプ電力が前記範囲である場合は、発光管41の大きさに対し、発光管への管入力が低くなるため、発光管41の管壁温度が低くなり、最冷点の温度も低くなる。器具に装着した場合に全光束を大きくするためには、最冷点を45〜55℃の範囲にすることが好適である。密閉形器具に装着した場合、器具内の温度は常温に比べ、著しく上昇し、最冷点は前記範囲内になる可能性が高く、発光管41は実使用状態で全光束が大きくなる。
【0036】
本実施の形態に係る蛍光ランプ20を用いて、諸特性について評価した。実験は、蛍光ランプ20を高周波点灯形蛍光ランプ専用の点灯装置で点灯させ、前記蛍光ランプ20の諸特性を測定した。光源色を昼光色とし、130Wの蛍光ランプ20では、ランプ電流290mA,ランプ電圧455V,全光束11760lm,ランプ効率90.5lm/Wという優れたランプ特性を示した。また、周囲温度25℃の雰囲気での最冷点は32℃となり、図7に示す従来の蛍光ランプ50よりも約8℃低くなった。
【0037】
したがって、前記蛍光ランプ20を密閉形器具に装着し、器具内での最冷点温度が約50℃であった場合、器具内での全光束は13720lmとなる。
【0038】
図3は、本発明の85W形と後述する100W形に係る蛍光ランプ10を示す図である。本発明の85W形に係る蛍光ランプ10は、主にリビングやダイニングルーム等に好適な家庭用照明器具に用いられる蛍光ランプであって、環形発光管11a,11b,11cは管壁同士の隙間S1,S2を略均一に略同一平面内に略同心円状に並べられ、前記環形発光管11a,11bを連結するブリッジ接合部12a、前記環形発光管11b,11cを連結するブリッジ接合部12b、前記環形発光管11a,11b,11cの管端部を包囲する形の口金13、前記環形発光管11a,11b,11cの管壁同士を固着する接着剤14を備えている。
【0039】
85W形に使用する三本の環形発光管11a,11b,11cは、前記140W形で使用する四本の環形発光管21a,21b,21c,21d(図1)の内側の三本と同じ環形発光管21b,21c,21dを用いている。
【0040】
接着剤14は長さ30mm,幅6mmで管壁同士を固着している。接着剤14には、例えばシリコーン樹脂,エポキシ樹脂,アクリル樹脂あるいはセメント等が用いられる。
【0041】
従来の二重環の100W形の最大外径は408mmであり、これはJISで規格化されている。
【0042】
図4は、85W形と後述する100W形の形態である蛍光ランプの発光管を示す正面断面図である。発光管31は、口金13,接着剤14を取り付ける前の状態を示す断面図である。発光管31は、環形発光管11aの一方の管端部に配置された電極35aと環形蛍光管11cの一方の管端部に配置された電極35bで形成される一つの放電路が3本の環形発光管11a,11b,11cの環中央を中心として、略同一平面内に略同心円状に並べられた形状を有している。また、発光管31の環形発光管11a,11b,11cは管壁同士の隙間S1,S2は略均一である。
【0043】
前記隙間S1,S2は平均的に3.0〜15.0mmの範囲とする必要がある。前記隙間S1,S2を3.0mmよりも狭く設計すると、発光管11a,11b,11cを同一平面内に並べるためには、3本とも真円環状に精度よく加工しなければならず、製造費が著しく高くなる。加えて、隙間S1,S2が狭い場合は、発光管11a,11b,11cから放射される赤外線で、互いに管壁温度が上昇し、特に密閉形器具に装着した場合、最冷点温度の上昇による発光効率の低下が顕著になる。また、前記隙間S1,S2が15.0mmを超えると、発光管11a,11b,11cがそれぞれ独立して存在するように見え、均一な発光が得られず、密閉形器具に装着した場合に器具のカバー部材で光を拡散する必要性が多くなり、カバー部材での光の反射,吸収が増え、前記発光管31から得られる照度が低くなる。
【0044】
発光管31は、85W形の蛍光ランプの場合、環形発光管11a,11b,11cの管外径が20.0mm、管内径が17.6mmであり、環形発光管は、前記140W形で構成した環形発光管を使用し、環形発光管11aの環外径は354mm、環内径は314mm、環形発光管11bの環外径は308mm、環内径は268mm、環形発光管11cの環外径は262mm、環内径は222mm、ブリッジ接合部12a,12bの外径が9.0mm、内径が6.0mmであり、環形発光管11a,11b,11cのそれぞれの管壁同士の隙間S1,S2が3.0mm、電極35aと電極35bで形成される一つの放電路の距離が2570mmである。蛍光管31は、例えば、鉛フリーガラス(軟化点665℃の軟質ガラス)で形成されている。なお、最外輪の環形発光管11aの環外径354mmが発光管31の最大外径であり、したがって蛍光ランプ10の大きさは354mmとなる。
【0045】
発光管31の内面には、酸化セリウム(CeO2)からなる保護膜層(図示せず),赤色蛍光体(Y23:Eu),緑色蛍光体(LaPO4:Ce,Tb)及び青色蛍光体((Sr,Ca,Ba,Mg)5(PO4)3Cl:Eu)からなる希土類蛍光体によって蛍光体膜層(図示せず)が形成されている。
【0046】
発光管31の内部には、水銀(図示せず)が約15mg封入されているとともに、緩衝ガスとしてのアルゴンが約300Paとなるように封入されている。封入する水銀は、水銀単体の他に亜鉛水銀,錫水銀等の水銀合金であっても良く、また緩衝ガスはアルゴン単体の他にネオン,クリプトン,キセノンの混合ガスでも良い。
【0047】
ブリッジ接合部12aの管軸中心位置は、発光管11aの電極35a側ではない管端部から30mmの位置にあり、ブリッジ接合部12bの管軸中心位置は、発光管11bのブリッジ接合部12aの近傍ではない他方の管端部から25mmの位置にある。発光管11aの電極35a側ではない管端部が発光管31の最冷点となる。
【0048】
電極35a,35bはタングステン製フィラメントと一対の給電のためのリード線とを備え、発光管11a及び発光管11cの管端部で気密封着されている。
【0049】
図5は、本発明の形態である蛍光ランプのランプ電流(放電電流)と発光効率の関係を示しており、前記発光管31のランプ電流と発光効率の関係を示す。発光管31の発光効率を高くするためには、ランプ電流を150〜320mAの範囲にすることが好適である。ランプ電流が150mAより小さい場合は、発光管31内の放電で流れる電子が少ないため、電子と水銀原子との衝突が減少し、水銀原子から発生する紫外線が減少する。紫外線の発生が減ることにより、蛍光体膜層で紫外線を可視光に変換する量が減り、発光効率が低下する。ランプ電流が320mAを超えると、発光管31内の放電で流れる電子は多くなるため、電子と水銀原子との衝突が増加し、水銀原子から発生する紫外線が増加する。しかし、ランプ電流が大きくなると発光管31の管壁温度が上昇し、蛍光体膜層の温度が上昇する。蛍光体膜層の発光効率(紫外線を可視光に変換する変換効率)には温度依存性があるため、蛍光体膜層の温度上昇で発光効率が低下する。したがって、ランプ電流を150〜320mAの範囲にすることで発光効率の高い発光管31を作成することができる。なお、前記ランプ電流の範囲で作成した発光管31は、放電路の距離が2570mmであるため、ランプ電力の最適範囲は、53〜90Wとなる。
【0050】
図6は、本発明の形態である蛍光ランプの最冷点と全光束の関係を示す図であり、発光管31の最冷点温度と全光束の関係を示す。ランプ電力が前記範囲である場合は、発光管31の大きさ(放電路の長さ)に対し、発光管への管入力が低くなるため、発光管31の管壁温度が低くなり、最冷点の温度も低くなる。器具に装着した場合に全光束を大きくするためには、最冷点を45〜55℃の範囲にすることが好適である。密閉形器具に装着した場合、器具内の温度は常温に比べ、著しく上昇し、最冷点は前記範囲内になる可能性が高く、発光管31は実使用状態で全光束が大きくなる。
【0051】
本実施の85W形に係る蛍光ランプ10を用いて、諸特性について評価した。実験は、蛍光ランプ10を高周波点灯形蛍光ランプ専用の点灯装置で点灯させ、前記蛍光ランプ10の諸特性を測定した。光源色を昼光色とし、72Wの蛍光ランプ10では、ランプ電流220mA,ランプ電圧331V,全光束6420lm,ランプ効率89.2lm/Wという優れたランプ特性を示した。また、周囲温度25℃の雰囲気での最冷点は31℃となり、図7に示す従来の蛍光ランプ50よりも約9℃低くなった。
【0052】
したがって、前記蛍光ランプ10を密閉形器具に装着し、器具内での最冷点温度が約50℃であった場合、器具内での全光束は7480lmとなる。
【0053】
次に、100W形の蛍光ランプについて図3を用いて説明する。85W形との違いは各環形発光管の環径が異なる。環形発光管11a,11b,11cの管外径が20.0mm、管内径が17.6mmであり、環形発光管は、前記140W形で構成した環形発光管を使用し、環形発光管11aの環外径は400mm、環内径は360mm、環形発光管11bの環外径は354mm、環内径は314mm、環形発光管11cの環外径は308mm、環内径は268mm、ブリッジ接合部12a,12bの外径が9.0mm、内径が6.0mmであり、環形発光管11a,11b,11cのそれぞれの管壁同士の隙間S1,S2が3.0mm、電極35aと電極35bで形成される一つの放電路の距離が3000mmである。最外輪の環形発光管11aの環外径400mmが発光管31の最大外径であり、したがって蛍光ランプ10の大きさは400mmとなる。
【0054】
また前記隙間S1,S2は平均的に3.0〜15.0mmの範囲とする必要がある。前記隙間S1,S2を3.0mmよりも狭く設計すると、発光管11a,11b,11cを同一平面内に並べるためには、3本とも真円環状に精度よく加工しなければならず、製造費が著しく高くなる。また、隙間S1,S2が狭い場合は、発光管11a,11b,11cから放射される赤外線で、互いに管壁温度が上昇し、特に密閉形器具に装着した場合、最冷点温度の上昇による発光効率の低下が顕著になる。
【0055】
100W形に使用する三本の環形発光管11a,11b,11cは、140W形で使用する四本の環形発光管21a,21b,21c,21d(図1)の外側の三本と同じ環形発光管21a,21b,21cを用いている。
【0056】
前記隙間S1,S2が15.0mmを超えると、発光管11a,11b,11cがそれぞれ独立して存在するように見え、均一な発光が得られず、密閉形器具に装着した場合に器具のカバー部材で光を拡散する必要性が多くなり、カバー部材での光の反射,吸収が増え、前記発光管31から得られる照度が低くなる。
【0057】
ブリッジ接合部12aの管軸中心位置は、発光管11aの電極35a側ではない管端部から30mmの位置にあり、ブリッジ接合部12bの管軸中心位置は、発光管11bのブリッジ接合部12aの近傍ではない他方の管端部から25mmの位置にある。発光管11aの電極35a側ではない管端部が発光管31の最冷点となる。
【0058】
図5の本発明の形態である蛍光ランプの最冷点と全光束の関係を示す図は、前記発光管31のランプ電流(放電電流)と発光効率の関係を示しており、前記発光管31の発光効率を高くするためには、ランプ電流を150〜320mAの範囲にすることが好適である。なお、前記ランプ電流の範囲で作成した前記発光管31は、放電路の距離が3000mmであるため、ランプ電力の最適範囲は、63〜106Wとなる。
【0059】
図6は、本発明の形態である蛍光ランプの最冷点と全光束の関係を示しており、前記発光管31の最冷点温度と全光束の関係を示す。ランプ電力が前記範囲である場合は、発光管31の大きさに対し、発光管への管入力が低くなるため、発光管31の管壁温度が低くなり、最冷点の温度も低くなる。器具に装着した場合に全光束を大きくするためには、最冷点を45〜55℃の範囲にすることが好適である。密閉形器具に装着した場合、器具内の温度は常温に比べ、著しく上昇し、最冷点は前記範囲内になる可能性が高く、発光管31は実使用状態で全光束が大きくなる。
【0060】
本実施の形態に係る蛍光ランプ10を用いて、諸特性について評価した。実験は、蛍光ランプ10を高周波点灯形蛍光ランプ専用の点灯装置で点灯させ、前記蛍光ランプ10の諸特性を測定した。光源色を昼光色とし、90Wの蛍光ランプ10では、ランプ電流240mA,ランプ電圧378V,全光束8120lm,ランプ効率90.2lm/Wという優れたランプ特性を示した。また、周囲温度25℃の雰囲気での最冷点は31℃となり、図7に示す従来の蛍光ランプ50よりも約9℃低くなった。
【0061】
したがって、前記蛍光ランプ10を密閉形器具に装着し、器具内での最冷点温度が約50℃であった場合、器具内での全光束は9460lmとなる。
【0062】
上記した本実施例によれば、蛍光ランプの発光効率は向上し、また、ランプ電力に応じて異なって製造していた複数の環形発光管の環径を統一することができる。
【符号の説明】
【0063】
10,20,50 蛍光ランプ
11,21,31,41,51 発光管
12,22,52 ブリッジ接合部
13,23,53 口金
14,24,54 接着剤
35,45 電極

【特許請求の範囲】
【請求項1】
環径が異なる複数本の環形発光管を備え、前記複数本の環形発光管を略同一平面内に略同心円状に略均一の隙間Sを設け、前記環形発光管をブリッジ接合部によって連結し、最外輪の環形発光管と最内輪の環形発光管の端部にそれぞれ設けられた電極によって放電路を形成し、前記環形発光管の管端部を包囲する形で一つの口金を備えた環形蛍光ランプにおいて、ランプ電力が120W以上の環形蛍光ランプは、最外輪の環形発光管の最大外径が408mm以下であり、かつ前記放電路の距離が3910mm以下として、前記環形発光管を4本用いて構成し、ランプ電力が85W以上の環形蛍光ランプは、最外輪の環形発光管の最大外径が408mm以下であり、かつ放電路の距離が3150mm以下として、使用する環形発光管は、ランプ電力が120W以上の環形蛍光ランプに使用する環形蛍光環の最外輪から順に3本用いて構成し、ランプ電力が65W以上の環形蛍光ランプは、最外輪の環形発光管の最大外径が362mm以下であり、かつ放電路の距離が2510mm以上とし、使用する環形発光管は、ランプ電力が120W以上の環形蛍光ランプに使用する環形蛍光環の最内輪から順に3本用いて構成したことを特徴とする蛍光ランプ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2013−4486(P2013−4486A)
【公開日】平成25年1月7日(2013.1.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−137953(P2011−137953)
【出願日】平成23年6月22日(2011.6.22)
【出願人】(399048917)日立アプライアンス株式会社 (3,043)
【Fターム(参考)】