説明

蛍光標識ポリヌクレオチド

【課題】 RNAポリメラーゼの基質となる蛍光標識ポリヌクレオチドおよび該蛍光標識ポリヌクレオチドを用いたRNAポリメラーゼ阻害剤を同定する方法を提供することを目的とする。
【解決手段】 RNAポリメラーゼの基質となる蛍光標識ポリヌクレオチドオを設計、調製し、被検物質の共存下または非共存下、該蛍光標識ポリヌクレオチドとRNAポリメラーゼ反応させ、蛍光強度を測定することを手段とするRNAポリメラーゼ阻害剤の同定方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、蛍光標識ポリヌクレオチドに関する。より詳細にはRNAポリメラーゼの基質として用いることができる蛍光標識ポリヌクレオチドに関する。さらには、該ポリヌクレオチドを用いたRNAポリメラーゼ阻害剤の同定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
インフルエンザは、毎年流行を繰り返し、重篤な風邪として他の風邪と区別されている。高齢者の肺炎、小児の脳症等の重篤な合併症を引き起こす場合もあり、毎年多数の死亡者も報告されている。
【0003】
現在、臨床的に使用されている抗インフルエンザ薬は、プロトンポンプインヒビター(PPI)とノイラミニダーゼインヒビター(NAI)の2種類に分類され、特に、NAIであるタミフル(登録商標)は近年急速に普及してきた。しかし、タミフル耐性ウイルスの出現、A型ウイルスに比したB型ウイルスに対する治療効果の弱さ、さらには、因果関係は明確ではないものの異常行動等の重篤な副作用発現などが報告されるなど、問題点が明らかになりつつあり、PPIやNAIとは異なる薬理作用をもつ薬剤の開発が望まれている。
【0004】
PPIやNAIとは異なる薬剤標的として、RNAポリメラーゼに注目した研究が進行している。インフルエンザウイルスは感染細胞中で宿主のmRNAを利用して自己のRNAの転写・複製を行う。これらの転写・複製を担う酵素がRNAポリメラーゼであり、PB1、PB2、PAの3つのサブユニットからなる。インフルエンザウイルスのRNAポリメラーゼは、宿主mRNAのキャップ構造を認識し、キャップ構造を含む9〜13塩基(キャップ構造の塩基は数に含めない)の断片を切断するエンドヌクレアーゼ活性と、宿主mRNAから切断した断片をプライマーにしてウイルス蛋白質をコードするmRNAを転写するエロンゲーション活性を有する。宿主mRNAのキャップ構造を認識し、キャップ構造を含む9〜13塩基(キャップ構造の塩基は数に含めない)の断片を切断する過程は、cap snatchingといわれ、宿主が有さないウイルス特異的な活性であるため、抗インフルエンザ薬の創薬標的になると考えられている(非特許文献1)。
【0005】
RNAポリメラーゼを阻害する物質としては、flutimideやT−705、4−substituted 2,4−dioxobutanoic acidなどが報告されているが、未だ臨床で抗インフルエンザ薬として使用されるには到っていない。
【0006】
一方で、インフルエンザウイルスのRNAポリメラーゼを阻害する物質のスクリーニング系としては、ラジオアイソトープを用いた系がいくつか報告されている(非特許文献2、非特許文献3)。しかし、ラジオアイソトープを用い、かつ、スループットが比較的低い系のみであり、安全面、施設面、効率面等において多くの問題を有していた。
【0007】
【非特許文献1】J.Virol 21:1187−1195,1977
【非特許文献2】Analytical Biochemistry231,309−314, 1955
【非特許文献3】Antimicrob.Agents Chemother.40,1189−1193,1996
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、既存の抗インフルエンザ薬とは異なる作用機序を有する新規な抗インフルエンザ薬の獲得に有用なツールおよび当該ツールを用いた薬剤の同定方法を提供するものである。より具体的には、インフルエンザウイルスのRNAポリメラーゼを阻害する物質の同定に有用なRNAポリメラーゼの基質、およびそれを用いたRNAポリメラーゼを阻害する物質の同定方法を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者は鋭意研究を重ね、インフルエンザウイルスのRNAポリメラーゼの基質となり得るポリヌクレオチドを設計し、さらにこれに蛍光物質を附してもRNAポリメラーゼの酵素活性に影響がないことを見出した。さらに、当該蛍光標識ポリヌクレオチドを用いることにより、RNAポリメラーゼを阻害する物質の同定が効率よくかつ安全に行えることを見出し、本発明を完成した。
【0010】
すなわち、本発明は、以下の(1)〜(62)を提供する。
(1)一般式(I)
Cap(N...N)(N...N) (I)
(式中、Capはキャップ構造を示し、
(N...N)は9個の単一または複数種類の塩基からなる塩基配列であって、該塩基配列を構成する塩基のうちいずれか1つが蛍光物質、消光物質およびビオチンからなる群から選択されるいずれか1の標識物質により標識されている塩基配列を示し、
(N...N)は、5ないし51個の単一または複数種類の塩基からなる塩基配列を示す。
ただし、(N...N)以降の塩基配列中、5’側から数えて9番目〜13番目の間にある標識されていない塩基のうちの少なくとも1つがアデニンまたはグアニンである。)
で表されるポリヌクレオチド。
(2)(N...N)を構成する塩基のうち、(N...N)以降の塩基配列中、5’側から数えて14番目以降のいずれか1つの塩基が蛍光物質、消光物質およびビオチンから選択されるいずれか1の標識物質により標識されている上記(1)に記載のポリヌクレオチド(ただし、(N...N)中の標識物質と(N...N)中の標識物質の組合わせは、ともに消光物質、あるいは、ともにビオチンであることはない)。
(3)(N...N)を構成する塩基のうちの標識物質により標識されている塩基が3’末端の塩基である上記(2)に記載のポリヌクレオチド。
(4)(N...N)中の標識物質と(N...N)中の標識物質の組合わせが、エネルギートランスファーを生じるドナーとアクセプターの組合わせである上記(2)〜(3)のいずれか1つに記載のポリヌクレオチド。
(5)(N...N)中の標識物質により標識されている塩基から(N...N)中の標識物質により標識されている塩基までの塩基数が6〜60個である上記(2)〜(4)のいずれか1つに記載のポリヌクレオチド。
(6)Capがキャップ0である上記(1)〜(5)のいずれか1つに記載のポリヌクレオチド。
(7)Capがキャップ1である上記(1)〜(5)のいずれか1つに記載のポリヌクレオチド。
(8)Capがキャップ2である上記(1)〜(5)のいずれか1つに記載のポリヌクレオチド。
(9)ポリヌクレオチドを構成する塩基のうち、(N...N)中の標識物質により標識されている塩基がウリジン又はシトシンであり、他の塩基はグアニンまたはアデニンである上記(1)〜(8)のいずれか1つに記載のポリヌクレオチド。
(10)ポリヌクレオチドを構成する塩基のうち、(N...N)中の標識物質により標識されている塩基がウリジンであり、(N...N)中の標識物質により標識されている塩基がシトシンであり、他の塩基はグアニンまたはアデニンである上記(2)〜(9)のいずれか1つに記載のポリヌクレオチド。
(11)ポリヌクレオチドを構成する塩基のうち、(N...N)中の標識物質により標識されている塩基がシトシンであり、(N...N)中の標識物質により標識されている塩基がウリジンであり、他の塩基はグアニンまたはアデニンである上記(2)〜(9)のいずれか1つに記載のポリヌクレオチド。
(12)配列表の配列番号1に記載の塩基配列からなるポリヌクレオチド。
(13)配列表の配列番号2に記載の塩基配列からなるポリヌクレオチド。
(14)配列表の配列番号3に記載の塩基配列からなるポリヌクレオチド。
(15)配列表の配列番号4に記載の塩基配列からなるポリヌクレオチド。
(16)配列表の配列番号5に記載の塩基配列からなるポリヌクレオチド。
(17)配列表の配列番号6に記載の塩基配列からなるポリヌクレオチド。
(18)配列表の配列番号7に記載の塩基配列からなるポリヌクレオチド。
(19)配列表の配列番号8に記載の塩基配列からなるポリヌクレオチド。
(20)配列表の配列番号9に記載の塩基配列からなるポリヌクレオチド。
(21)配列表の配列番号10に記載の塩基配列からなるポリヌクレオチド。
(22)配列表の配列番号11に記載の塩基配列からなるポリヌクレオチド。
(23)配列表の配列番号12に記載の塩基配列からなるポリヌクレオチド。
(24)配列表の配列番号13に記載の塩基配列からなるポリヌクレオチド。
(25)配列表の配列番号1に記載の塩基配列からなるポリヌクレオチドの5’末端から6番目のシトシンが蛍光物質、消光物質およびビオチンからなる群から選択されるいずれか1の標識物質で標識されており、さらに、5’末端にキャップ構造が結合しているポリヌクレオチド。
(26)配列表の配列番号2に記載の塩基配列からなるポリヌクレオチドの5’末端から6番目のウリジンが蛍光物質、消光物質およびビオチンからなる群から選択されるいずれか1の標識物質で標識されており、さらに、5’末端にキャップ構造が結合しているポリヌクレオチド。
(27)配列表の配列番号3に記載の塩基配列からなるポリヌクレオチドの5’末端から6番目のウリジンが蛍光物質、消光物質およびビオチンからなる群から選択されるいずれか1の標識物質で標識されており、さらに、5’末端にキャップ構造が結合しているポリヌクレオチド。
(28)配列表の配列番号4に記載の塩基配列からなるポリヌクレオチドの5’末端から8番目のウリジンが蛍光物質、消光物質およびビオチンからなる群から選択されるいずれか1の標識物質で標識されており、さらに、5’末端にキャップ構造が結合しているポリヌクレオチド。
(29)配列表の配列番号5に記載の塩基配列からなるポリヌクレオチドの5’末端から8番目のウリジンが蛍光物質、消光物質およびビオチンからなる群から選択されるいずれか1の標識物質で標識されており、さらに、5’末端にキャップ構造が結合しているポリヌクレオチド。
(30)配列表の配列番号6に記載の塩基配列からなるポリヌクレオチドの5’末端から8番目のウリジンが蛍光物質、消光物質およびビオチンからなる群から選択されるいずれか1の標識物質で標識されており、さらに、5’末端にキャップ構造が結合しているポリヌクレオチド。
(31)配列表の配列番号7に記載の塩基配列からなるポリヌクレオチドの5’末端から8番目のウリジンが蛍光物質、消光物質およびビオチンからなる群から選択されるいずれか1の標識物質で標識されており、さらに、5’末端にキャップ構造が結合しているポリヌクレオチド。
(32)配列表の配列番号8に記載の塩基配列からなるポリヌクレオチドの5’末端から8番目のウリジンが蛍光物質、消光物質およびビオチンからなる群から選択されるいずれか1の標識物質で標識されており、さらに、5’末端にキャップ構造が結合しているポリヌクレオチド。
(33)配列表の配列番号9に記載の塩基配列からなるポリヌクレオチドの5’末端から8番目のウリジンが蛍光物質、消光物質およびビオチンからなる群から選択されるいずれか1の標識物質で標識されており、さらに、5’末端にキャップ構造が結合しているポリヌクレオチド。
(34)配列表の配列番号10に記載の塩基配列からなるポリヌクレオチドの5’末端から8番目のウリジンが蛍光物質、消光物質およびビオチンからなる群から選択されるいずれか1の標識物質で標識されており、さらに、5’末端にキャップ構造が結合しているポリヌクレオチド。
(35)配列表の配列番号11に記載の塩基配列からなるポリヌクレオチドの5’末端から8番目のウリジンが蛍光物質、消光物質およびビオチンからなる群から選択されるいずれか1の標識物質で標識されており、さらに、5’末端にキャップ構造が結合しているポリヌクレオチド。
(36)配列表の配列番号12に記載の塩基配列からなるポリヌクレオチドの5’末端から9番目のウリジンが蛍光物質、消光物質およびビオチンからなる群から選択されるいずれか1の標識物質で標識されており、さらに、5’末端にキャップ構造が結合しているポリヌクレオチド。
(37)配列表の配列番号13に記載の塩基配列からなるポリヌクレオチドの5’末端から16番目のウリジンが蛍光物質、消光物質およびビオチンからなる群から選択されるいずれか1の標識物質で標識されており、さらに、5’末端にキャップ構造が結合しているポリヌクレオチド。
(38)キャップ構造がキャップ0である上記(25)〜(37)のいずれか1つに記載のポリヌクレオチド。
(39)キャップ構造がキャップ1である上記(25)〜(37)のいずれか1つに記載のポリヌクレオチド。
(40)キャップ構造がキャップ2である上記(25)〜(37)のいずれか1つに記載のポリヌクレオチド。
(41)蛍光物質が、Cy5、アレキサフローラ488、アレキサフローラ647、フルオレセインのうちのいずれか1つである、上記(25)〜(40)のいずれか1つに記載のポリヌクレオチド。
(42)3’末端の塩基がビオチン化されている上記(25)〜(41)のいずれか1つに記載のポリヌクレオチド。
(43)3’末端の塩基にさらにランタニドが結合している上記(25)〜(42)のいずれか1つに記載のポリヌクレオチド。
(44)上記(1)〜(11)、(25)〜(43)のいずれか1つに記載のポリヌクレオチドを用いることを特徴とするRNAポリメラーゼを阻害する物質の同定方法。
(45)上記(1)〜(11)、(25)〜(43)のいずれか1つに記載のポリヌクレオチドを用い、RNAポリメラーゼの活性を変性ポリアクリルアミドゲルを用いた電気泳動法を利用して測定する工程を含む、RNAポリメラーゼを阻害する物質の同定方法。
(46)上記(1)〜(11)、(25)〜(43)のいずれか1つに記載のポリヌクレオチドを用い、RNAポリメラーゼのエンドヌクレアーゼ活性を蛍光偏光(Fluorescence Polarization:FP)法を利用して測定する工程を含む、RNAポリメラーゼを阻害する物質の同定方法。
(47)上記(1)〜(11)、(25)〜(43)のいずれか1つに記載のポリヌクレオチドを用い、RNAポリメラーゼのエンドヌクレアーゼ活性を蛍光共鳴エネルギー転移(Fluorescence Resonance Energy Transfer:FRET)法を利用して測定する工程を含む、RNAポリメラーゼを阻害する物質の同定方法。
(48)上記(1)〜(11)、(25)〜(43)のいずれか1つに記載のポリヌクレオチドを用い、RNAポリメラーゼのエンドヌクレアーゼ活性を時間分解蛍光共鳴エネルギー転移(Time Resolved Fluorescence Resonance Energy Transfer:TR−FRET)法を利用して測定する工程を含むRNAポリメラーゼを阻害する物質の同定方法。
(49)RNAポリメラーゼがインフルエンザウイルスのRNAポリメラーゼである上記(44)〜(48)のいずれか1つに記載の同定方法。
(50)配列表の配列番号14に記載の塩基配列からなるポリヌクレオチド。
(51)配列表の配列番号15に記載の塩基配列からなるポリヌクレオチド。
(52)配列表の配列番号16に記載の塩基配列からなるポリヌクレオチド。
(53)配列表の配列番号17に記載の塩基配列からなるポリヌクレオチド。
(54)配列表の配列番号18に記載の塩基配列からなるポリヌクレオチド。
(55)配列表の配列番号19に記載の塩基配列からなるポリヌクレオチド。
(56)配列表の配列番号20に記載の塩基配列からなるポリヌクレオチド。
(57)配列表の配列番号21に記載の塩基配列からなるポリヌクレオチド。
(58)配列表の配列番号22に記載の塩基配列からなるポリヌクレオチド。
(59)配列表の配列番号23に記載の塩基配列からなるポリヌクレオチド。
(60)配列表の配列番号24に記載の塩基配列からなるポリヌクレオチド。
(61)配列表の配列番号25に記載の塩基配列からなるポリヌクレオチド。
(62)配列表の配列番号26に記載の塩基配列からなるポリヌクレオチド。
【発明の効果】
【0011】
本発明を用いることにより、RNAポリメラーゼ阻害物質の同定を効率的かつ安全に行うことができ、ひいては、新規な抗インフルエンザ薬を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
本発明は、一つの態様として、RNAポリメラーゼの基質として用いることができるポリヌクレオチドに関する。より具体的には、一般式(I)
Cap(N...N)(N...N) (I)
(式中、Capはキャップ構造を示し、
(N...N)は9個の単一または複数種類の塩基からなる塩基配列であって、該塩基配列を構成する塩基のうちいずれか1つが蛍光物質、消光物質およびビオチンからなる群から選択されるいずれか1の標識物質により標識されている塩基配列を示し、
(N...N)は、5ないし51個の単一または複数種類の塩基からなる塩基配列を示す。
ただし、(N...N)以降の塩基配列中、5’側から数えて9番目〜13番目の間にある標識されていない塩基のうちの少なくとも1つがアデニンまたはグアニンである。)
で表されるポリヌクレオチドに関する。本発明のポリヌクレオチドはポリリボヌクオチドであることが好ましいが、RNAポリメラーゼの基質としての機能を保持し得る限りにおいては、デオキシリボヌクレオチドを含有していてもよく、また、構成する塩基としては、一般的なmRNAの構成塩基であるアデニン、グアニン、シトシン、ウリジンまたは必要に応じてメチル化されているこれらの塩基であることが好ましいが、チミンやイノシン等の塩基、糖修飾体やジヒドロキシ体、その他の天然のもしくは人工的な化学修飾を受けた塩基であってもよい。
【0013】
本発明のポリヌクレオチドはRNAポリメラーゼの基質として用いることを目的として設計されたため、上記一般式(I)に示したとおり、5’末端にキャップ構造を有している。真核生物や真核生物を宿主とするウイルスのmRNAの大部分の5’末端には7−メチルグアノシンが3個のリン酸基を介して結合している。この構造はm5’ppp−で表され(ここで、mは7メチルグアノシンを意味し、pはリン酸基を意味する。)、RNAの頭部の帽子という意味でキャップ構造とよばれる。なお、本発明において、「キャップ構造」はここに説明するキャップ構造を意味する。キャップ構造を含めたmRNAの核酸成分の表式としては、m5’ppp−5’(m)pN(m)pNpNp・・・(ここで、mは7メチルグアノシンを意味し、N、N、N、Nは塩基、mはメチル化構造、pはリン酸基を意味する。)と表される。NおよびNのヌクレオシドの糖の2’位置にメチル基がついているか否かはmRNAによって異なっており、NおよびNいずれにもメチル基がついていない場合はキャップ0、Nのみにメチル基がついている場合はキャップ1、NおよびNいずれにもメチル基がついている場合はキャップ2とよばれる。キャップ構造は蛋白質合成に際し、mRNAがリボソームと結合する際に結合効率を高める働きがある。
【0014】
インフルエンザウイルスのRNAポリメラーゼは、宿主のmRNAのキャップ構造を認識し結合する。そして、宿主mRNAからこのキャップ構造を含む5’末端から9〜13塩基(キャップ構造の塩基は数に含めない)を切断し、この切断したキャップ構造を含む5’末端から9〜13塩基(キャップ構造の塩基は数に含めない)からなるポリヌクレオチドを引き続くインフルエンザウイルスのmRNAの転写のプライマーとすることが知られている。また、インフルエンザウイルスのRNAポリメラーゼは、5’末端から9〜13番目(キャップ構造の塩基は数に含めない)のアデニン塩基またはグアニン塩基の後方を切断することが知られている。
【0015】
上記一般式(I)で表される本発明のポリヌクレオチドはキャップ構造を有し、(N...N)以降の塩基配列中、5’側から数えて9番目〜13番目の間にある塩基のうちの少なくとも1つがアデニンまたはグアニンであるので、RNAポリメラーゼの切断を受け、切断されたキャップ構造を有する9〜13塩基からなるポリヌクレオチドは引き続き起こる転写のプライマーとなる。
【0016】
本発明のポリヌクレオチドのキャップ構造はキャップ0、キャップ1、キャップ2のいずれでもよいが、より好ましくはキャップ0またはキャップ1である。
【0017】
また、本発明のポリヌクレオチドは、ループ構造等の複雑な高次構造を形成しないように構成塩基配列を選定するとさらに好ましい。RNAポリメラーゼを阻害する物質のスクリーニング系においては、従来、複雑な高次構造を有するRNAがRNAポリメラーゼの基質として用いられてきたため、核酸のインターカレーター作用を有すると思われる化合物がヒット化合物として獲得されることが少なくなかった。本発明のポリヌクレオチドは塩基数(キャップ構造の塩基は数に含めない)が14〜60個、好ましくは14〜50個、より好ましくは14〜40個、さらに好ましくは14〜29個であるので、RNAポリメラーゼ特異的でない化合物をヒット化合物から除外できる複雑な高次構造を形成しないポリヌクレオチドの設計が容易である。そのように設計された高次構造を形成しないポリヌクレオチドも本発明の範囲に包含される。
【0018】
さらに、本発明のポリヌクレオチドは、キャップ構造を含まない塩基配列の5’側から数えて1〜9番目、好ましくは4〜9番目、より好ましくは6〜9番目のいずれかの位置に蛍光物質、消光物質およびビオチンからなる群から選択されるいずれか1の標識物質により標識された塩基を含んでいる。本発明のポリヌクレオチドにおける標識物質による標識部位は、インフルエンザウイルスRNAポリメラーゼによるキャップ構造認識部位と切断部位の間に位置する。本発明者は、酵素であるインフルエンザウイルスのRNAポリメラーゼの認識部位および切断部位の近傍にかさ高い化合物の修飾を行うと、立体障害等により酵素活性に影響が出ることを当初予測していた。しかし、本発明者が設計、作製した本発明のポリヌクレオチドは、インフルエンザウイルスのRNAポリメラーゼにより効率よく切断され、標識物質による修飾の影響を受けなかった。
【0019】
修飾に用いる蛍光物質としては、ポリヌクレオチドの塩基に修飾可能なものであれば特に限定されないが、例えば、フルオレセイン類(フルオレセイン、オレゴングリーン、エオシン、エリスロシン)、ローダミン類(テトラメチルローダミン誘導体、テキサスレッド誘導体、ローダミンB base、リサミンローダミンB、ローダミン6G)、クマリン類、ダンシル型(ジメチルアミノナフタレンスルホン酸型)蛍光色素、NBD型色素、ピレン、フィコビリプロテイン(R−フィコエリスリン、フロフィコシアニン、アロフィコシアニン)、BODIPY誘導体、Cy(登録商標)色素(Cy3、Cy3.5、Cy5、Cy5.5)、アレキサ(登録商標)フローラ(Alexa Fluor350、405、430、488、532、546、555、568、594、633、647、680、700、750)、好適にはフルオレセイン類(フルオレセイン、オレゴングリーン、エオシン、エリスロシン)、ローダミン類(テトラメチルローダミン誘導体、テキサスレッド誘導体、ローダミンB base、リサミンローダミンB、ローダミン6G)、Cy色素(Cy3、Cy3.5、Cy5、Cy5.5)、またはアレキサフローラ(Alexa Fluor350、405、430、488、532、546、555、568、594、633、647、680、700、750)、さらに好ましくはフルオレセイン類(フルオレセイン、オレゴングリーン、エオシン、エリスロシン)、Cy色素(Cy3、Cy3.5、Cy5、Cy5.5)、またはアレキサフローラ(Alexa Fluor350、405、430、488、532、546、555、568、594、633、647、680、700、750)、特に好ましくはフルオレセイン、Cy5、アレキサフローラ488、またはアレキサフローラ647が挙げられる。
また、修飾に用いる消光物質としては、ポリヌクレオチドの塩基に修飾可能なものであれば特に限定されないが、例えば、DABCYL、TAMRA、BHQ(登録商標)、Cy5Q、Cy3Q等が挙げられる。
【0020】
上記の蛍光物質または消光物質の塩基への標識は、直接または間接的に、例えば、ビオチン―ストレプトアビジン結合を介して標識物質を結合できる。
【0021】
本発明のポリヌクレオチドの修飾に用いるビオチンは、ストレプトアビジンとの結合を介して、上記の蛍光物質や消光物質を標識できるので有用である。
【0022】
本発明のポリヌクレオチドは、一般式(I)の(N...N)中のいずれか1の塩基が蛍光物質、消光物質およびビオチンからなる群から選択されるいずれか1の標識物質で標識されているので、RNAポリメラーゼによるポリヌクレオチドのエンドヌクレアーゼ活性またはエロンゲーション活性を、蛍光を検出する工程を含む系を用いることにより、効率よく検出することができる。
【0023】
これまでは、インフルエンザのRNAポリメラーゼ活性を測定する系としては、感度とスループットの観点から、ラジオアイソトープ(RI)を用いた系が汎用されており、実験者の危険を伴うばかりでなく、RIを取り扱うための特殊な実験設備を要するなどの多大な問題点を有していた。これに対し、本発明のポリヌクレオチドは蛍光を検出する工程を含む系に用いることができるので、非常に安全かつ高感度なRNAポリメラーゼ活性測定を可能にする。
具体的には、本発明のポリヌクレオチドは、例えば次に示すアッセイ系で用いることができる。
【0024】
好ましい系の1つとして、電気泳動を利用した系が挙げられる。このアッセイ系で使用する本発明のポリヌクレオチドは、(N...N)中のいずれか1の塩基を標識する標識物質が蛍光物質であることが好ましい。該蛍光物質は、直接的または間接的に、例えばビオチン―ストレプトアビジン結合を介して塩基に標識されていてもよい。
【0025】
本発明のポリヌクレオチドにRNAポリメラーゼを反応させ、反応液全体を変性アクリルアミドゲルを用いた電気泳動等により分離した後、FLA−3000(フジフィルム社)などの蛍光強度を画像で検出できる機器等を用いて、修飾した蛍光物質に合わせた励起波長(excitation)および吸収波長(emission)を選択して、蛍光強度をイメージとして検出する。切断されたポリヌクレオチドは切断されていないポリヌクレオチドより移動度が大きいため、切断されたポリヌクレオチドと切断されていないポリヌクレオチドは移動度の異なるバンドとして検出されるので、バンド濃度等を測定することにより、エンドヌクレアーゼ活性を検出することができる。
【0026】
また、上記のアッセイ系はRNAポリメラーゼのエロンゲーション活性も検出することが可能である。ここでエロンゲーション活性とは、RNAポリメラーゼにより切断されたポリヌクレオチドをプライマーとして、ウイルスタンパクをコードするmRNAを転写する活性を意味する。切断されたポリヌクレオチドをプライマーとしてmRNAの転写が行われた場合、種々の塩基長のmRNAが生じ、これをアクリルアミドゲルを用いた電気泳動等で分離すると、移動度の異なるバンドとして検出されるので、バンドを検出することによりエロンゲーション活性を検出することができる。エロンゲーション活性が認められなければ、RNAポリメラーゼ活性が阻害されていることが確認できる。
【0027】
さらに、(N...N)中のいずれか1の塩基を標識する標識物質がビオチンである本発明のポリヌクレオチドを用いて、上記のアッセイ系でエンドヌクレアーゼ活性を検出できる。具体的には、該ポリヌクレオチドにRNAポリメラーゼを反応させ、反応液全体を変性アクリルアミドゲルを用いた電気泳動等により分離した後、蛍光物質、ALP(アルカリフォスフォターゼ)またはHRP(ホースラデッシュペルオキシダーゼ)などの標識物質が標識されたストレプトアビジンを反応させ、ビオチンで標識されたポリヌクレオチドのバンドを検出することができる。例えば、蛍光物質が標識されたストレプトアビジンを用いた場合、ビオチンを有するポリヌクレオチドのバンドは、蛍光標識ストレプトアビジンと反応するので、FLA−3000(フジフィルム社)などの蛍光強度を画像で検出できる機器等を用いて、蛍光物質に合わせた励起波長(excitation)および吸収波長(emission)を選択して、蛍光強度をイメージとして検出する。切断されたポリヌクレオチドは切断されていないポリヌクレオチドより移動度が大きいため、切断されたポリヌクレオチドと切断されていないポリヌクレオチドは移動度の異なるバンドとして検出されるので、エンドヌクレアーゼ活性を検出することができる。ALP−ストレプトアビジンやHRP−ストレプトアビジンは市販品として生化学工業社などから入手可能である。
【0028】
他の好ましい系の1つとして、蛍光偏光(Fluorescence Polarization:FP)法を利用した系が挙げられる。このアッセイ系で使用する本発明のポリヌクレオチドは、(N...N)中のいずれか1の塩基を標識する標識物質が蛍光物質であることが好ましい。該蛍光物質は直接的または間接的に、例えばビオチン―ストレプトアビジン結合を介して標識されていてもよいが、直接的に標識されていることが好ましい。
【0029】
FP法は、分子の相対的な大きさを蛍光偏光度(FP値)を用いて測定する方法である。蛍光偏光度(FP値)は蛍光物質が励起されてから蛍光を発するまでの間に回転する度合いを数値化(単位:mP)したものであり、小さな分子ほど運動性が激しいため偏光が解消され、低いFP値として表される。FP値の測定には、Analyst AD(モルキュラーデバイス社)やBEACON(インビトロジェン社)等の蛍光偏光度測定装置が使用できる。
【0030】
本発明のポリヌクレオチドは、インフルエンザウイルスのRNAポリメラーゼ非存在下ではFP値としては低い値が得られるのに対し、RNAポリメラーゼ存在下では、RNAポリメラーゼがポリヌクレオチドのキャップ構造部分に結合することにより分子として大きくなり、FP値としては値が高くなる。この原理を利用し、RNAポリメラーゼとCapped RNAの結合を阻害する化合物を検出する事ができる。
他の好ましい系の1つとして、蛍光共鳴エネルギー転移(Fluorescence Resonance Energy Transfer:FRET)法が挙げられる。このアッセイ系で使用する本発明のポリヌクレオチドは、好ましくは上記の本発明のポリヌクレオチドにおいて、さらに(N...N)を構成する塩基のうち、(N...N)以降の塩基配列中、5’側から数えて14番目以降のいずれか1つの塩基が、蛍光物質、消光物質およびビオチンから選択されるいずれか1の標識物質により標識されている後述のポリヌクレオチドである。
【0031】
FRETとは、励起された蛍光分子(ドナー)が発する蛍光が他の蛍光分子(アクセプター)の励起光となり、アクセプターから蛍光が放出される現象である。また、アクセプターが消光分子である場合は、励起された蛍光分子(ドナー)が発する蛍光が他の消光分子(アクセプター)により除去または消光される。このエネルギー転移は、ドナーとアクセプターがある一定の距離内に近接している条件下でのみ認められる。さらに、類似な方法として、蛍光寿命が長いランタニド、例えばユーロピウムを用いることで、バックグラウンドの低減を実現した時間分解蛍光共鳴エネルギー転移(Time Resolved Fluorescence Resonance Energy Transfer:TR−FRET)法がある。
【0032】
本発明のポリヌクレオチドの別の一つの態様は、上記の本発明のポリヌクレオチドにおいて、さらに(N...N)を構成する塩基のうち、(N...N)以降の塩基配列中、5’側から数えて14番目以降のいずれか1つの塩基が、蛍光物質、消光物質およびビオチンから選択されるいずれか1の標識物質により標識されているポリヌクレオチドである(以下、「(N...N)を構成する塩基のうち、(N...N)以降の塩基配列中、5’側から数えて14番目以降のいずれか1つの塩基」を「(N...N)中のいずれか1の塩基」という)。2箇所が標識された本発明のポリヌクレオチドは、上述のFRET(TR−FRETを含む)を利用した系に好適に用いることができる。ただし、(N...N)中のいずれか1の塩基を標識する標識物質と(N...N)中のいずれか1の塩基を標識する標識物質がともに消光物質、あるいはビオチンであることはない。
【0033】
(N...N)中のいずれか1の塩基を標識する標識物質は、上記の蛍光物質、消光物質またはビオチンと同じである。また、(N...N)中のいずれか1の塩基を標識する該蛍光物質または該消光物質は、直接的または間接的に、例えばビオチン―ストレプトアビジン結合を介して塩基に標識されていてもよい。
【0034】
(N...N)中のいずれか1の塩基を標識する標識物質と(N...N)中のいずれか1の塩基を標識する標識物質の組合わせは、FRETに対応できるようエネルギートランスファーを生じるドナーとアクセプターの関係にある組合わせを選択する。ドナーとアクセプターの関係にある標識物質の組合わせであれば、(N...N)中のいずれか1の塩基を標識する標識物質がドナーであり、(N...N)中のいずれか1の塩基を標識する標識物質がアクセプターであってもよく、逆に(N...N)中のいずれか1の塩基を標識する標識物質がアクセプターであり、(N...N)中のいずれか1の塩基を標識する標識物質がドナーであってもよい。ドナーとアクセプターの関係にある標識物質の組合わせは、蛍光物質と蛍光物質、蛍光物質と消光物質の組合わせが例示できる。
【0035】
TR−FRETとして測定するためには、ドナーが、長い蛍光寿命を有することが必要であり、具体的には、ランタニドまたはその塩若しくは錯体が望ましい。ランタニドとしては、好ましくはユーロピウム(Eu)、テルビウム(Tb)、サマリウム(Sm)、ジスプロシウム(Dy)、特に好ましくはユーロピウム、テルビウムが挙げられる。ランタニドの塩または錯体としては、例えばMathisらのユーロピウム・クリプテート錯体(Lopez−Crapez, E., et al. 2001, Nucleic Acids Research, 29, e70)や、通常のBHHCT(4,4’−bis(1”,1”,1”,2”,2”,3”,3”−heptafluoro−4”,6”−hexanedion−6”−yl)−chlorosulfo−o−terphenyl)などのβジケトン類のユーロピウム錯体が挙げられる。
【0036】
TR−FRETとして測定するためのドナーとアクセプターの組合わせ例としては、ユーロピウム(Eu)錯体とアロフィコシアニン(APC)、あるいはユーロピウム(Eu)錯体とCy5の組合わせが好ましい例として挙げられる。
【0037】
FRET(TR−FRETを含む)で有用なドナーとアクセプターの組合わせ(以下、ドナー/アクセプターと記載する)は、ドナー発光波長スペクトルがアクセプター吸収波長スペクトルと重なるドナーおよびアクセプターを選択すればよい。例えば、Alexa488/Alexa555、Alexa568/Alexa647、Alexa594/Alexa647、Alexa647/Alexa594、Cy3/Cy5、BODIPY FL/BODIPY FL、フルオレセイン/TMR、IEDANS/フルオレセイン、フルオレセイン/フルオレセイン、フルオレセイン/TAMRA、FAM/TAMRA、EDANS/DABCYL、Cy3/Cy5Q、テルビウム/フルオレセイン、テルビウム/GFP、テルビウム/TMR、テルビウム/Cy3、テルビウム/Rフィコエリトリン、ユーロピウム/Cy5、およびユーロピウム/APCなどを例示できる。当該分野で知られた、または知られるようになった、ドナーおよびアクセプターを含む他の組合わせを用いることもできる。
【0038】
蛍光物質または消光物質の塩基への標識は、直接または間接的に、例えば、ビオチン―ストレプトアビジン結合を介して標識物質を結合できる。
【0039】
さらに本発明のポリヌクレオチドは、分子としての塩基配列の長さもFRETに対応できる長さに設計されているので、FRETの原理を利用して、RNAポリメラーゼの活性を測定することができる。例えば、本発明のポリヌクレオチドを標識するドナーとアクセプターが蛍光物質と蛍光物質である場合、ドナーの励起波長にあわせた励起光を照射し、アクセプターの発光波長における蛍光強度をARVOmx(パーキンエルマー社)などの蛍光測定装置で検出する。RNAポリメラーゼを本発明のポリヌクレオチドと反応させると、RNAポリメラーゼのエンドヌクレアーゼ活性により該ポリヌクレオチドが切断され、ドナーからアクセプターへのエネルギートランスファーが解消され、アクセプターの発光が検出されなくなる。
【0040】
また、本発明のポリヌクレオチドを標識するドナーとアクセプターが、蛍光物質と消光物質である場合、ドナーの励起波長にあわせた励起光を照射し、ドナーの発光波長における蛍光強度をARVOmx(パーキンエルマー社)などの蛍光測定装置で検出する。RNAポリメラーゼを本発明のポリヌクレオチドと反応させると、RNAポリメラーゼのエンドヌクレアーゼ活性により該ポリヌクレオチドが切断され、ドナーからアクセプターへのエネルギートランスファーが解消されるため、ドナーの発光がアクセプターによって除去されなくなり、ドナーの発光が検出される。
【0041】
FRET(TR−FRETを含む)に用いる本発明のポリヌクレオチドにおける、(N...N)中のいずれか1の塩基を標識する標識物質と(N...N)中のいずれか1の塩基を標識する標識物質の距離は、1〜10ナノメートル、好ましくは1〜7ナノメートル、より好ましくは1〜5ナノメートルである。標識物質の距離は、塩基への標識物質の標識が直接的にされているのか、ビオチンーストレプトアビジン結合などを介して間接的にされているのかによって異なるが、塩基数で表すと、(N...N)中の標識された塩基から(N...N)中の標識された塩基までの数は、6〜60個、好ましくは6〜50個、より好ましくは6〜40個、さらに好ましくは7〜22個である。
【0042】
また本発明のポリヌクレオチドにおいて、(N...N)中のいずれか1の塩基を標識する標識物質は、該ポリヌクレオチドの3’末端に標識されることが好ましい。3’末端を標識することで、合成収量を向上させることが可能である。
本発明のポリヌクレオチドの作製方法は限定されないが、例えば、特表平11−506756号に記載の方法によりキャップ構造、標識物質、ビオチン化塩基を含むポリヌクレオチドの合成が可能である。また、T7RNAポリメラーゼなどのRNAポリメラーゼを利用して目的のポリヌクレオチドを得ることもできる。
【0043】
T7RNAポリメラーゼなどのRNAポリメラーゼはアンビオン社等から入手できる。T7RNAポリメラーゼなどのRNAポリメラーゼにより目的の配列のRNAを得る場合は、各RNAポリメラーゼ特有のプライマーを有するテンプレート配列鎖を通常のポリヌクレオチド合成方法等によって作製し、各ヌクレオチド存在下で転写反応を行う。目的のポリヌクレチド配列を構成する塩基のうち、例えば(N...N)中の標識される塩基がウリジンであり、(N...N)中の標識される塩基がシトシンであり、他の塩基はグアニンまたはアデニン(5’末端の塩基および5’末端から2番目の塩基はメチル化されていてもよい。)である場合は、(N...N)中の標識される塩基のみにウリジン、(N...N)中の標識される塩基のみにシトシンが入り、他の塩基はアデニンまたはグアニンになるようにテンプレートDNAを設計し、当該テンプレートDNAとアミノアリル化UTP、ビオチン化CTP、ATP、GTP存在下で上記のT7RNAポリメラーゼを用いた転写反応を行えば、所望位置にアミノアリル化UTP、ビオチン化CTPが取り込まれたポリヌクレオチドを得ることができる。
【0044】
合成収量を向上させるために、(N...N)中の標識される塩基は、3’末端の塩基であることが好ましく、(N...N)中の標識される塩基のみにウリジン、3’末端の塩基のみにシトシンが入り、他の塩基はアデニンまたはグアニンになるようにテンプレートDNAを設計し、上述の転写反応を行えば、所望位置にアミノアリル化UTP、ビオチン化CTPが取り込まれたポリヌクレオチドを得ることができる。アミノアリル化UTP、ビオチン化ヌクレオチドはアンビオン社、インビトロジェン社などから入手できる。
【0045】
かくして得られた目的配列を有するポリヌクレオチドは変性ポリアクリルアミドゲル電気泳動等で精製等した後に、標識物質による標識工程に利用できる。蛍光標識物質のサクシニミルジエステル体を該ポリヌクレオチドに用いることにより、アミノアリル化された所望の塩基位置に蛍光標識物質を容易に導入可能である。さらに、ストレプトアビジンが結合した標識物質を該ポリヌクレオチドに反応させることにより、ビオチン化された所望の塩基位置に標識物質を容易に導入可能である。蛍光標識のサクシニミルジエステル体はCy5(GEヘルスケア社)、アレキサフローラ(インビトロジェン社)などが市販品として入手できる。また、ストレプトアビジンが結合した標識物質は、ユーロピウム(パーキンエルマー社)、アレキサフローラ(インビトロジェン社)などが市販品として入手可能である。
【0046】
また、アミノアリル化UTP、ビオチン化CTPを用いず、直接T7RNAポリメラーゼを用いた転写反応に、蛍光標識ヌクレオチドたとえば蛍光標識UTPや蛍光標識CTPを添加して所望位置に蛍光標識を導入することが可能である。蛍光標識ヌクレオチドはパーキンエルマー社などから市販品として入手できる。
【0047】
5’末端のキャップ構造の付加は、グアニリルトランスフェラーゼを用いて行うことができる。グアニリルトランスフェラーゼはアンビオン社などから入手できる。該グアニリルトランスフェラーゼにより、5’末端にキャップ構造を付加するためには、5’末端の塩基がグアニンかアデニンであり、さらに5’末端の塩基に3リン酸基か2リン酸基が結合している必要がある。かくして得られるポリヌクレオチドは、キャップ0である。キャップ1のポリヌクレオチドは、ワクチニアウイルスのmRNA(nucleoside−2’−)−methyltransferaseを用いて作成が可能である(J.Biol.Chem.253,7698−7702,1978)。
【0048】
また本発明のポリヌクレオチドは、RNA合成機を用いて合成することも可能である。RNA合成機を用いれば、標識物質やビオチンを所望の塩基位置に導入したポリヌクレオチドの合成が可能である。該方法により合成されたポリヌクレオチドは、5’末端にリン酸基を持たないため、化学的にこの5’末端に3リン酸基を導入した後、グアニリルトランスフェラーゼを作用させてキャップ構造を付加するとよい(Methods Enzymol.342,451−466,2001)。
【0049】
本発明のポリヌクレオチドは、また、3’末端の塩基にランタニドが結合しているポリヌクレオチドであり得る。3’末端の塩基にランタニドが結合しているポリヌクレオチドは、FRET法、TR−FRET法に有用である。ランタニドの塩基への結合の様式は限定されず、共有結合であってもよいし、介在物質等を介した間接的な結合であってもよい。例えば、3’末端の塩基がビオチン化されている場合は、ストレプトアビジンが結合しているランタニドを用いることにより、ビオチン―ストレプトアビジン結合を利用した間接的な結合が実現できる。上記のポリヌクレオチドの作製法において、3’末端の塩基にユーロピウムが結合した塩基が取り込まれるように合成あるいは転写を行ってもよい。ランタニドの種類は限定されないが、ユーロピウム、テルビウムが好ましい。各種ランタニド、ストレプトアビジンが結合しているランタニドはパーキンエルマー社、インビトロジェン社から入手できる。
【0050】
本発明のポリヌクレオチドには、より具体的には、配列表の配列番号1〜13のいずれか1に記載の配列からなるポリヌクレオチドが包含される。これらのポリヌクレオチドは、さらにそれぞれのウリジン塩基部分および/またはシトシン塩基部分は蛍光物質、消光物質およびビオチンからなる群から選択されるいずれか1の標識物質により標識されていてもよく、また、5’末端にキャップ構造が結合していていもよい。配列番号1〜13のいずれか1に記載の配列からなるポリヌクレオチドを標識する蛍光物質、消光物質またはビオチンは、上述の蛍光物質、消光物質またはビオチンと同じであり、該蛍光物質または該消光物質は直接的あるいは間接的に、例えばビオチン―ストレプトアビジン結合を介して塩基に標識されていてもよい。これらの標識物質やキャップ構造の付加は前述の手法によりそれぞれ行うことができる。これらのポリヌクレオチドはインフルエンザウイルスのRNAポリメラーゼにより切断され、また、RNAポリメラーゼによるRNAの伸長反応の基質になり得ることが確認されている。
【0051】
配列表の配列番号1〜13のいずれか1に記載のポリヌクレオチドの作製には、T7RNAポリメラーゼのプライマーを含むテンプレート配列である、配列番号14〜26のいずれか1に記載の配列からなるポリヌクレオチドを好適に用いることができ、これらのポリヌクレオチドも本発明に一態様として包含される。
【0052】
上記手段により作製した本発明のポリヌクレオチドはより均一化させるためには、アクリルアミドゲルなどを用いた電気泳動により分離精製することが好ましい。例えば、20%の変性アクリルアミドゲルを用いて作製した粗ポリヌクレオチドを分離し、目的バンドを切り出し、引き続きゲルからのRNAの抽出を行う。ゲルからのRNAの抽出はSmall RNA Gel Extraction Kit(タカラバイオ社)などのキットを用いて行えば簡便であるがこれに限定されない。また、flashPAGE Fractionator(アンビオン社、Cat#13100)を用いることもできる。
【0053】
本発明は、別の一つの態様として、上記の本発明のポリヌクレオチドを用いることを特徴とするRNAポリメラーゼを阻害する物質の同定方法に関する。本発明のポリヌクレオチドを用いると、簡便かつ安全に、また、効率よく、RNAポリメラーゼ活性を検出することができるので、RNAポリメラーゼを阻害する物質の同定に有用である。
【0054】
本発明の同定方法が適用可能なRNAポリメラーゼとしては、インフルエンザウイルスのRNAポリメラーゼが挙げられる。インフルエンザウイルスは抗原性の違いにより、A型、B型、C型に分類され、A型ウイルスはさらに、表面抗原の違いによりHA(H1〜H15)、NA(N1〜N9)の亜型に分類されているが、RNAポリメラーゼは型間の差異はなく保存されていることが知られている。
【0055】
インフルエンザRNAポリメラーゼは、発育鶏卵を用いてインフルエンザウイルスを培養し、ウイルス粒子を精製後、界面活性剤処理してウイルス粒子を破壊し、RNAポリメラーゼとウイルスRNA、NP(ヌクレオプロテイン)からなるRNP(リボヌクレオプロテイン)をグリセロール密度勾配遠心処理で精製することにより得ることができるがこれに限定されない。
【0056】
被検物質の存在または非存在下で、RNPと本発明のポリヌクレオチドをRNAポリメラーゼが反応し得る緩衝液中で反応させ、上記のような電気泳動と画像解析を組合わせた系やFP法やFRET法などを利用してRNAポリメラーゼ活性を測定し、被検物質非存在下と比較して被検物質存在下のRNAポリメラーゼ活性が低い場合、その被検物質はRNAポリメラーゼを阻害する物質であるとして同定できる。反応時間は十分なRNAポリメラーゼ活性が検出できる時間であれば特に限定されないが1分〜12時間程度が好ましく、10分〜3時間程度がより好ましく、30分〜2時間程度がさらに好ましい。インフルエンザウイルスのRNAポリメラーゼはマグネシウム(Mg)要求性であるので、インフルエンザウイルスのRNAポリメラーゼを用いる場合は、Mgの添加、非添加や、EDTAなどのキレート剤の添加により、酵素反応の開始や停止を制御することができる。
【0057】
反応温度も特には限定されないが、0℃〜70℃が好ましく、10℃〜50℃がより好ましく、25℃〜40℃がさらに好ましい。
【0058】
被検物質は天然物、合成物など特に限定されず、また、高分子化合物であっても低分子化合物であってもよいが、医薬品として用いることを考慮すれば低分子化合物であることが好ましい。これらの被検物質はその物質に対応して適宜溶媒を選択して溶解後、アッセイ系に添加することが好ましい。被検物質非存在下の対照群には被検物質の溶媒を同量添加するとよい。RNAポリメラーゼを阻害する物質としてCapアナログ(m7GpppG)(Biochemistry 42,6234−6240,2003)、Flutimide(Antimicrob.Agents Chemother 40,1189−1193,1996)、L735882(Antimicrob.Agents Chemother 40,1304−1307,1996)などが知られているが、これらの誘導体なども好ましい。被検物質の添加は、酵素、基質と同時添加であってもよいし、基質を添加する前に事前に添加して、数分〜数時間程度、酵素とプレインキュベーションさせてもよい。
【0059】
本発明の同定方法はHigh Throughput screeng(HTS)にも好適に用いることができる。例えば、FRET法またはTR−FRET法を利用する場合、容器を移し変えたり、反応液をフィルターにトラップしてシンチレーターを加えるといった煩雑および/または危険な作業はなく、反応から蛍光測定まで単一のウェルで行うことができるホモジニアスなアッセイが可能である。HTSに本発明のポリヌクレオチドを使用する場合には、RNAポリメラーゼ活性の検出感度を向上するために、さらに精製した本発明のポリヌクレオチドを使用するとよい。具体的には、合成した蛍光標識ポリヌクレオチドにキャップ構造を付加した後、さらに20%の変性アクリルアミドゲルを用いて、作製した蛍光標識Cappedポリヌクレオチドを分離する。キャップ構造が付加された蛍光標識ポリヌクレオチドのバンドは1塩基分ほど上にシフトするので、このバンドを切り出し、引き続きゲルからのRNAの抽出を行うことにより、より精製された蛍光標識ポリヌクレオチドを得ることができる。ゲルからのRNAの抽出はSmall RNA Gel Extraction Kit(タカラバイオ社)などのキットを用いて行えば簡便であるがこれに限定されない。
【0060】
さらに、本発明のポリヌクレオチドとして予めユーロピウムなどのランタニドを直接または間接的に結合させているものを用いることによりさらにアッセイ系の簡略化を図ることができる。また、EDTAを用いて反応を停止させる工程を含む場合は、EDTAに抵抗性であるランタニド試薬を用いるとよい。例えば、LANCE Eu−W1024 streptavidin(パーキンエルマー社)はEDTA感受性であるので、LANCE Eu−W8044 streptavidin(パーキンエルマー社)などのEDTA抵抗性のものを選択する方がよい。
【0061】
また、本発明の同定方法を実施する際においては、本発明の同定方法により得られた阻害物質の特異性を確認するために、他の酵素系における確認試験(カウンタースクリーニング)を行ってもよい。例えば、同様にポリヌクレオチドに作用する酵素として、ヌクレアーゼやDNA複製酵素、RNA転写酵素、制限酵素などに対する阻害活性を測定するとよい。特に、リボヌクレアーゼが好ましく、中でも、リボヌクレアーゼT1(以下、Rnase T1と記載する)はRNAポリメラーゼと同様にグアニン塩基の3’側を特異的に切断するエンドヌクレアーゼであることから、RNAポリメラーゼのカウンタースクリーニングに用いる酵素として好適である。本発明のポリヌクレオチドは、Rnase T1の基質にもなり得ることが確認されており、同一の基質を用いて異なる酵素系のアッセイ系を施行でき、特異性の高い阻害物質を獲得しやすくなる点からも、本発明のポリヌクレオチドは有用である。
【実施例】
【0062】
以下に実施例を挙げて本発明を説明するが、本発明の範囲はこれに限定されない。
【0063】
本明細書中、XNTP(Y)(ただし、XおよびYは整数、Nは塩基である)の記載は5’末端からX番目の塩基がNTPであり、総塩基数がY個のポリヌクレオチドを表す。例えば、8UTP(18)RNAは、5’末端から8番目の塩基がUTPであり総塩基数が18であるRNAを意味する。また、Capped8UTP(18)RNAは該RNAにさらにキャップ構造が付加されたRNAを意味し、蛍光標識Capped8UTP(18)RNAはキャップ構造が付加された該RNAの8番目のUTPが蛍光物質で標識されていることを意味する。また、蛍光標識Capped8UTP(18)RNA−Eu complexは、上記の蛍光標識Capped8UTP(18)RNAの3’末端の塩基にビオチン―ストレプトアビジン結合を介して、ユーロピウム(Eu)が結合している複合体を意味する。また、例えば、T7−8UTP(18)DNAは8UTP(18)RNAのテンプレートDNAを表す。
(実施例1:ribonucleoprotein(RNP)の調製)
1)インフルエンザウイルスの培養
ウイルス株はA/PR/8/34株(H1N1)を用い、3.0×10PFU/mLのシードウイルス保存液を希釈培地(Eagle’s MEM(イワキ社)、60μg/mLゲンタシン)で10,000倍に希釈し、接種用ウイルス希釈液を2.5mLシリンジ(+23G針)に用意した。10日齢の発育鶏卵について生死の確認を行い、卵殻を消毒し、気嚢部分の卵殻に感染用の穴を開け、用意した103〜4PFU/mLのウイルスを0.2mL/eggの割合で尿膜腔へ接種した。卵殻の穴をアルコール綿で消毒後、木工用ボンドで封をして34〜35℃で72時間インキュベートした後、4℃にて18時間インキュベーションし、胚を殺した。
【0064】
気嚢部分の卵殻を取り除き、尿膜液を回収用漏斗もしくは18G針付10mLシリンジを用いて回収した。回収した尿膜液は、8000rpmで20分間遠心して夾雑物を取り除いた後、30,000rpmで60分間、超遠心し(Rotor P45AT、日立工機社)、ウイルス粒子を沈殿させた。得られた沈渣を3mL/tubeのNET buffer(10mM Tris−HCl(pH7.5)、100mM NaCl、1mM EDTA)に再浮遊(4℃、一晩)させ、濃縮ウイルス液とした。濃縮ウイルス液をホモジナイザーで懸濁後、8,000rpmで20分間遠心して上清を回収した。濃縮ウイルス液を30%、60% w/vのショ糖/NET buffer密度勾配上に重層し、25,000rpmで90分間遠心し(Rotor SPR28SA、日立工機社)、ウイルス層(30%と60%の境界面)を回収した。
【0065】
2)RNPの精製
1)で回収したウイルス層をNET bufferに懸濁し、Virus disruption buffer(1.5 % Triton N101、1 % lysolecithin、100 mM Tris(pH7.8)、100mM KCl、5mM MgCl、5% Glycerol、1.5mM DTT)1mLを添加し、氷上でゆるやかに1時間振盪した。その後、30−70%グリセロール(wt/vol)(50mM Tris(pH7.8)、100mM NaCl、5mM MgCl、1.5mM DTT)密度勾配上に重層し、45,000rpm、4時間4℃で遠心し、RNP画分を回収した。
(実施例2:蛍光標識Capped8UTP(18)RNAの合成)
1)T7 oligo DNA(AATTTAATACGACTCACTATAGG)およびTemplate oligo DNA(GTCTTCTCTTATTTTCCCTATAGTGAGTCGTATTAAATT)を合成委託(シグマ社)した。なおTemplate oligo DNAは転写RNAがインフルエンザポリメラーゼの基質となるよう設計した。
【0066】
10mM Hepes pH7.8、100mM NaCl、20pmol/μL(20μM) T7 oligo DNA、20pmol/μL(20μM) Template oligo DNA溶液を調製し、94℃、3分間加熱した後、緩やかに(約1〜2時間かけて)室温に戻した。上記反応溶液を、8UTP(18)RNAのTemplate Solutionとして以降の操作に供した。
【0067】
2)T7 RNA polymeraseを用いたRNAの転写
MEGAshortscript(アンビオン社、AM1354)を用いてRNAへの転写を行った。ただし、UTPには5−(3−aminoallyl)−UTP(アンビオン社、8437)を、CTPにはbiotin−14−CTP(インビトロジェン社19519−016)を用い、Template DNAには1)のTemplate solutionを用いた。転写反応は37℃、4時間の条件下で行った。
【0068】
3) 合成RNAの精製
2)の転写産物を20%変性アクリルアミドゲルを用いた電気泳動により分離し、Gell Indicator RNA Staining solution(バイオダイナミックスラボラトリー社、DM595)を用いて染色した後、目的の画分を切り出してSmall RNA Gel Extraction Kit(タカラバイオ社、9106)を用いてRNAを精製した。
【0069】
4)Cy5標識Capped8UTP(18)RNAの調製
Cy5Mono−reactive Dye(アマシャムバイオサイエンス社、PA25001)を用いて、3)で得られた8UTP(18)RNAのaminoallyl部位にCy5標識した。方法はCy5Mono−reactive Dye添付の取扱説明書に従った。得られた蛍光標識8UTP(18)RNA(約100pmol)の5’端を、Guanyril Transferase(アンビオン社)を用いてCappingした。反応産物は、酸性フェノールクロロホルムを用いて抽出した後、エタノール沈殿を行い精製して50μLの水に溶解し基質RNAとして試験に供した。
【0070】
5)Cy5標識Capped8UTP(18)RNA−Eu(ユーロピウム)complexの調製
Cy5Mono−reactive Dye(アマシャムバイオサイエンス社、PA25001)を用いて、3)で得られた8UTP(18)RNAのaminoallyl部位にCy5標識した。方法はCy5Mono−reactive Dye添付の取扱説明書に従った。0.05μg/mL Cy5標識8UTP(18)RNA、0.5μg/mL LANCE Eu−W8044 Streptavidin(パーキンエルマー社、AD0061)溶液を作製し、氷上で10分間反応させた。得られた蛍光標識RNA(約100pmol)の5’末端を、Guanyril Transferase(アンビオン社、Cat#2032)を用いてCappingした。反応産物は、酸性フェノールクロロホルムを用いて抽出した後、エタノール沈殿を行い精製し、50μLの水に溶解し基質RNAとして試験に供した。
【0071】
6)上記の方法と同様の方法で、Alexa488標識6UTP(22)RNA、Cy5標識6UTP(22)RNA、Alexa488標識6UTP(21)RNA、Cy5標識6UTP(21)RNA、Alexa647標識8UTP(18)RNA、Alexa488標識8UTP(18)RNA 、Alexa647標識8UTP(16)RNA、Cy5標識8UTP(16)RNA、Cy5標識8UTP(22)RNA、Alexa488標識8UTP(14)RNA、Alexa488標識8UTP(15)RNA、Cy5標識8UTP(26)RNA、Cy5標識8UTP(21)RNA、Cy5標識8UTP(29)RNA、Alexa647標識9UTP(17)RNA 、Alexa488標識16UTP(16)RNA、Cy5標識Capped8UTP(16)RNA−Eu complex、Cy5標識Capped8UTP(22)RNA−Eu complex、Cy5標識Capped8UTP(14)RNA−Eu complex、Cy5標識Capped8UTP(15)RNA−Eu complex、Cy5標識Capped8UTP(26)RNA−Eu complex、Cy5標識Capped8UTP(29)RNA−Eu complexおよびCy5標識Capped8UTP(21)RNA−Eu complexを調製した。
【0072】
なお、精製した合成RNAへのAlexa647またはAlexa488の標識は、Alexa647またはAlexa488のサクシニミルジエステル体(インビトロジェン社)を得られた合成RNAのaminoallyl部位に、添付の取扱説明書に従って標識した。
【0073】
また、Alexa488標識6UTP(22)RNA、Cy5標識6UTP(22)RNA、Alexa488標識6UTP(21)RNA、Cy5標識6UTP(21)RNA、Alexa647標識8UTP(18)RNA、Alexa488標識8UTP(18)RNA 、Alexa647標識8UTP(16)RNA、Cy5標識8UTP(16)RNA、Cy5標識8UTP(22)RNA、Alexa647標識9UTP(17)RNA 、Alexa488標識16UTP(16)RNA 、Cy5標識Capped8UTP(16)RNA−Eu complexおよびCy5標識Capped8UTP(22)RNA−Eu complexは、2)で得られた転写産物の精製において、flashPAGE(アンビオン社、Cat#13100)を用い、その後の4)または5)の調製に供した。精製はflashPAGE添付の取扱い説明書に従って行った。
【0074】
7)フルオレセイン標識Capped6CTP(24)RNAを調製した。方法は1)に準じてTemplate solutionを調製し、2)のT7−RNA PolymeraseによるRNA転写において、CTPにFluorescein−12−CTP (パーキンエルマー社、NEL−434)を使用してフルオレセイン標識RNAを合成した。その後、flashPAGE(アンビオン社、Cat#13100)を用いて精製し、4)に準じた方法でキャップ付加を行い試験に供した。
(実施例3:電気泳動によるエンドヌクレアーゼアッセイ1)
精製を行っていない合成RNAには、目的のRNAと異なる長さのRNAが多く含まれていることが20%変性アクリルアミドゲルを用いた電気泳動により確認されている(図1、Pre)。感度の高いスクリーニング系構築のためには、均一なRNAの精製が必要であるため、20%変性アクリルアミドゲルを用いて均一な目的RNAの精製を試みた。具体的には、実施例2−2)に準じて得られた転写後の8UTP(29)RNAを20%変性アクリルアミドゲルを用いた電気泳動により分離し、Gell Indicator RNA Staining solution(バイオダイナミックスラボラトリー社、DM595)を用いて染色した後、目的の画分を切り出してSmall RNA Gel Extraction Kit(タカラバイオ社、9106)を用いてRNAを精製した。20μg(約3.3μmol)以上のRNAが効率よくゲルから抽出でき、精製後のRNAは単一なバンドとして確認することができた(図1、Post)。
【0075】
精製した8UTP(29)RNAを用いてCy5標識Capped8UTP(29)RNAを作製し、エンドヌクレアーゼ活性評価を実施した。具体的には、Cy5標識Capped8UTP(29)RNA1μL(約2pmol)と、実施例1において調製されたウイルスRNP(対照として50%グリセロール)1μLをRNP反応溶液(50mM Tris pH7.8、100mM NaCl,5mM MgOAc、0.02% Triton N101、0.5mM EDTA、2mM DTT)中で31℃で30分間反応させた。反応後のRNAは、酸性フェノール/クロロホルム処理し、エタノールで沈殿、続いて水に溶解させた後、20%変性アクリルアミドゲルを用いた電気泳動により分離し、FLA−3000(フジフィルム社)を用いて、excitation:633nm、emission:675nmの条件で検出した。
【0076】
Cy5標識Capped8UTP(29)RNAはRNAポリメラーゼによって切断され(図2)、RNAポリメラーゼのエンドヌクレアーゼ活性評価に供試可能であることが確認された。
【0077】
また、同様にAlexa488標識6UTP(22)RNA、Cy5標識6UTP(22)RNA、Alexa488標識6UTP(21)RNA、Cy5標識6UTP(21)RNA、Alexa647標識8UTP(18)RNA、Alexa488標識8UTP(18)RNA 、Cy5標識8UTP(18)RNA、Alexa647標識8UTP(16)RNA、Cy5標識8UTP(16)RNA、Cy5標識8UTP(22)RNA、Alexa488標識8UTP(14)RNA 、Alexa488標識8UTP(15)RNA、Cy5標識8UTP(26)RNA、Cy5標識8UTP(21)RNA、Alexa647標識9UTP(17)RNA、Alexa488標識16UTP(16)RNA、Cy5標識Capped8UTP(18)RNA−Eu complexおよびフルオレセイン標識Capped6CTP(24)RNAを用いてエンドヌクレアーゼ活性評価を行い、いずれの蛍光標識CappedRNAにおいてもRNAポリメラーゼによるエンドヌクレアーゼ活性が認められた(図3、4、5)。
(実施例4:電気泳動によるエンドヌクレアーゼアッセイ2)
実施例2−2)で得られた転写産物のaminoallyl部位にAlexa Fluora 647 サクシニミルジエステル体(インビトロジェン社)を標識した。方法はAlexa Fluora 647添付の取扱説明書に従った。得られたAlexa647標識8UTP(18)RNA(約100pmol)の5’端を、Guanyril Transferase(Ambion)を用いてCappingした。反応産物は、酸性フェノールクロロホルムを用いて抽出した後、エタノール沈殿を行い精製して50μLの水に溶解し基質RNAとして試験に供した。
【0078】
Alexa647標識Capped8UTP(18)RNA1μL(約2pmol)と、実施例1で調製したウイルスRNP(対照として50%グリセロール)1μLをRNP反応溶液(50mM Tris pH7.8、100mM NaCl、5mM MgOAc、0.02% Triton N101、0.5mM EDTA、2mM DTT)中で31℃で30分間反応させた。反応後のRNAは20%変性アクリルアミドゲルを用いた電気泳動により分離し、FLA−3000(フジフィルム社)を用いて、excitation:633nm、emission:675nmの条件で検出した。
ウイルスRNP非添加時には約20baseの位置にバンドが確認できるのに対して、ウイルスRNP添加時には、10〜13base前後の短い位置に2本のバンドが認められ、精製を行っていないポリヌクレオチドにおいてもRNAポリメラーゼによるエンドヌクレアーゼ活性が認められた(図6)。
(実施例5:電気泳動によるエロンゲーション活性評価)
0.5μg/mL Cy5標識Capped8UTP(29)RNA、50mM Tris pH7.8、100mM NaCl、2.5mM MgOAc、0.02% Triton N101、2mM DTT、0.5mM NTPの溶液50μLに対し、実施例1で調製したRNP溶液(1mg/mL)を0、0.5、1.0、2.0、4.0μLの各条件で添加し、反応溶液とした。
【0079】
31℃で1時間、反応させた後、得られた反応産物について20%ポリアクリルアミドゲルによる電気泳動法を用いて解析した。検出は、イメージアナライザー:FLA−3000(フジフィルム社)で行った。
【0080】
RNAポリメラーゼ添加量に依存したエロンゲーション活性が認められ、蛍光標識CappedRNAがRNPの基質になりうることが確認された(図7)。
(実施例6:TR−FRET法によるエンドヌクレアーゼ活性阻害評価系)
Cy5標識Capped8UTP(29)RNAおよび実施例1で調製したRNPを使用した。×2 RNP reaction buffer(100mM Tris pH7.8、200mM NaCl、10mM MgOAc、0.04% Triton N101、1mM EDTA、4mM DTT)10μLに、ddHO 8.5 μL、RNA 1μL(約0.3pmol)を添加後、RNP0.5μL(対照として50%グリセロール溶液0.5μL)を添加して反応液とした。31℃、30分間インキュベーションした後、1024 Avidin−Europium(パーキンエルマー社)20μLを添加して30分間反応させ、反応後のサンプルは340nm励起時の665nmにおける蛍光強度を測定した(パーキンエルマー社、ARVOmx)。
【0081】
Cy5標識Capped8UTP(29)RNAを用いてTR−FRETを実施した結果を図8に示した。RNP非添加時において、FRET値が約3500cpsを示すのに対してRNP添加時には約400cpsを示し、明らかな値の解離が認められ、TR−FRETによるエンドヌクレアーゼ活性が検出可能であることが確認された。
さらにCy5標識Capped8UTP(16)RNA−Eu complex、Cy5標識Capped8UTP(22)RNA−Eu complex、Cy5標識Capped8UTP(14)RNA−Eu complex、Cy5標識Capped8UTP(15)RNA−Eu complex、Cy5標識Capped8UTP(26)RNA−Eu complexおよびCy5標識Capped8UTP(21)RNA−Eu complexを用いて同様の検討を行い、これらのcomplexを用いてTR−FRETによるエンドヌクレアーゼ活性の検出が可能であることを確認した。
(実施例7:TR−FRET法によるCap Analogを用いたエンドヌクレアーゼ活性阻害試験)
PB2へのCap bindingを阻害することが報告されているCap Analog(Lisa Hooker et al. Biochemistry 42,6234−6240,2003)と、RNAポリメラーゼの基質となることが知られているrabbit globin mRNAをcompetitorとして用い、エンドヌクレアーゼ活性阻害効果の評価を実施した。
【0082】
Cy5標識Capped8UTP(18)RNAおよび実施例1で調製したRNPを供試した。RNA5μL(約0.3pmol)に、段階希釈したCap Analogもしくはrabbit globin mRNA 5μLを添加後、インフルエンザウイルスRNP含有×2 RNP反応溶液(50mM Tris pH7.8、100mM NaCl、5mM MgOAc、0.02% Triton N101、0.5mM EDTA、2mM DTT)を10μL添加した。31℃で30分間反応後、2000倍希釈した1024 Avidin−Europium(パーキンエルマー社)20μLを添加して30分間反応させた。反応後のサンプルは340nm励起時の665nmにおける蛍光強度を測定した(パーキンエルマー社、ARVOmx)。
【0083】
Cap analog、rabbit globin mRNAを当該capped RNAのcompetitorとして添加した際には、濃度依存的なFRET値の上昇が認められ、Cap Analogおよびrabbit globin mRNAによるエンドヌクレアーゼ活性阻害効果を確認することができた(図9)。また、これまでに報告のあるUVクロスリンク法を用いたPB2へのCap binding阻害試験では、Cap AnalogのIC50値が120μM程度であるのに対し(Lisa Hooker et al. Biochemistry 42,6234−6240,2003)、当該試験系におけるCap AnalogのIC50値は26.8μMであり、当該評価系は比較的感受性の高い評価方法であると考えられた。さらに、rabbit globin mRNA添加時のIC50値にあたる1.25μg/mLでは、反応液中rabbit globin mRNA(約650bs相当)のモル数が当該RNAの添加モル数とほぼ同等であり、当該評価系の妥当性を支持する結果が得られた。
(実施例8:TR−FRET試験系のHTS化検証)
HTS実施に向けた当該評価系反応スケールの縮小化について検証した。
【0084】
実施例2の方法に準じ、0.013μM LANCE Eu−W1024 Streptavidin(パーキンエルマー社)を用いて、Cy5標識Capped8UTP(29)RNA−Eu Complex溶液を調製した。RNPは実施例1で調製したものを供試した。Corning 384 well Black Plate上で5% DMSOもしくは希釈したCap Analog(320、240、120μM)5μLに、RNA−Eu Complex 5μLを添加後、RNP含有もしくは不活化RNP含有×3 RNP反応溶液(150mM Tris pH7.8、300mM NaCl、15mMもしくは3mM MgOAc、0.06% Triton N101、1.5mM EDTA、6mM DTT)を5μL添加して、室温にて2時間反応させた。反応後のサンプルは340nm励起時の665nmにおける蛍光強度を測定した(パーキンエルマー社、ARVOmx)。
【0085】
15μLスケールで実施したエンドヌクレアーゼ活性評価結果を図10に示した。不活化RNP添加時;RNP(−)では約5000countsのTR−FRET値が得られるのに対してRNP添加時;RNP(+)では約300counts程度の低い値を示し、40μL反応系と同等のS/N比(≒16)を得ることができた。アッセイ系の質を表現するZ’−factor(J Biomol Screen 4,67−73,1997)を算出したところ、Z’> 0.85でありHTS実施が可能であることが示された。また、Cap Analogのエンドヌクレアーゼ活性阻害効果についても、40μL反応系における値と大きな差は認められず、濃度依存的な活性阻害効果を確認することができた。
(実施例9:TR−FRET法によるRNPおよびRNase T1を用いたエンドヌクレアーゼ活性阻害評価系)
RNase T1に対する阻害評価系(カウンタースクリーニング系)の構築を目的として、TR−FRET法によるRNPおよびRNase T1を用いたエンドヌクレアーゼ活性阻害評価を行った。
【0086】
実施例2の方法に準じ、T7−8UTP(29)を用いてCy5標識Capped8UTP(29)RNA−Eu complex溶液を調製した。RNPは実施例1で調製したものを供試した。阻害剤にはCap Analogを用い、無処置対照には5% DMSOを用いた。
Corning 384 well Black Plate上で5% DMSOもしくは希釈したCap Analog(320、240、120μM)5μLに、RNA−Eu Complex5μLを添加後、RNP含有もしくは不活化RNP含有×3 RNP反応溶液(150mM Tris pH7.8、300mM NaCl、15mMもしくは3mM MgOAc、0.06% Triton N101、1.5mM EDTA、6mM DTT)を5μL添加して、室温にて2時間反応させた。反応後のサンプルは340nm励起時の665nmにおける蛍光強度を測定し(パーキンエルマー社、ARVOmx)、T/C値を算出し阻害曲線をプロットした。T/C値は式T/C=1−(阻害剤添加ウェルの蛍光強度−DMSO添加対照ウェルの蛍光強度)/(不活化酵素添加対照ウェルの蛍光強度−DMSO添加対照ウェルの蛍光強度)により算出した。また、供試酵素をRNPからRNase T1に置換する事により、RNase T1のエンドヌクレアーゼ活性阻害評価を同様に実施した。
【0087】
Cap Analogは濃度依存的にウイルスRNAポリメラーゼのエンドヌクレアーゼ活性を阻害した(図11)。当該Cap Analogは、その構造から、PB2によるcap binding活性を阻害することで、引き続いて起こるPB1のエンドヌクレアーゼ活性を阻害したものと考察される。一方、RNase T1は当該評価系において、酵素濃度依存的なエンドヌクレアーゼ活性を示し、当該RNAがRNase T1の基質としても有用であることが確認された。また、RNase T1のエンドヌクレアーゼ活性に対してCap Analogは2000μMでも阻害することはなく、RNase T1を用いたエンドヌクレアーゼ活性阻害評価系が、RNPを用いたエンドヌクレアーゼ活性評価系(TR−FRET)のカウンタースクリーニングに有用であると考えられた。
(実施例10:FP法を利用したCap Binding阻害評価)
実施例2−4)で調製した蛍光標識Capped8UTP(18)RNA1μL(約0.15pmol)と、実施例1で調製したRNP1μLをRNP反応溶液(50mM Tris pH7.8、100mM NaCl、5mM MgOAc、0.02% Triton N101、0.5mM EDTA、2mM DTT)中で31℃、30分間反応後、Analyst AD(モルキュラーデバイス社)にてFP値を測定した。
【0088】
RNP非存在下(RNP−)では90mP前後の低いFP値を示すのに対して、RNP添加時(RNP+)にはFP値が上昇(約350mP)し、RNAとRNPが結合していることを確認することができた(図12)。
【図面の簡単な説明】
【0089】
【図1】T7−8UTP(18)DNAを転写した8UTP(18)RNAと、転写後さらに精製した8UTP(18)RNAの電気泳動像である。preは精製前のRNAを、Postは精製後のRNAのレーンを表し、矢頭は8UTP(18)RNAのバンド位置を示す。
【図2】精製後の8UTP(18)RNAを使用したAlexa488標識Capped8UTP(18)RNAを用いたエンドヌクレアーゼ活性評価結果を示した図である。(+)はマグネシウム(Mg2+)添加を、(−)はマグネシウム(Mg2+)非添加を表し、*はRNAポリメラーゼにより切断されたRNAのバンド位置を示す。
【図3】フルオレセイン標識Capped6CTP(24)RNAを用いたエンドヌクレアーゼ活性評価結果を示した図である。(+)はRNP添加を、(−)はRNP非添加を表す。
【図4】Alexa488で標識されたCapped8UTP(18)RNA、Capped8UTP(14)RNA 、Capped8UTP(15)RNAおよびCapped8UTP(21)RNAを用いたエンドヌクレアーゼ活性評価結果を示した図である。(+)はRNP添加を、(−)はRNP非添加を表す。
【図5】Cy5で標識されたCapped8UTP(18)RNA、Capped 8UTP(21)RNA 、Capped 8UTP(26)RNAおよび Capped 8UTP(29)RNAを用いたエンドヌクレアーゼ活性評価結果を示した図である。(+)はRNP添加を、(−)はRNP非添加を表す。
【図6】未精製の8UTP(18)RNAを用いて調製したAlexa647標識Capped8UTP(18)RNAを用いたエンドヌクレアーゼ活性評価結果を示した図である。(+)はRNP添加を、(−)はRNP非添加を表す。
【図7】Cy5標識Capped8UTP(29)RNAを用いたエロンゲーション活性評価結果を示した図である。電気泳動像の上部の数値は各レーンにおけるRNP添加量を示す。
【図8】TR−FRET法によるエンドヌクレアーゼ活性評価結果を示した図である。縦軸は蛍光強度を表し、RNP(+)はRNP添加を、RNP(−)はRNP非添加を表す。
【図9】TR−FRET法によるRNAポリメラーゼ阻害剤存在下におけるエンドヌクレアーゼ活性評価結果を示した図である。左図はCap analog存在下におけるエンドヌクレアーゼ活性評価結果を示し、縦軸は蛍光強度を、横軸は添加したCap analogの濃度を表す。右図はRabbit Globlin mRNA存在下におけるエンドヌクレアーゼ活性評価結果を示し、縦軸は蛍光強度を、横軸は添加したRabbit Globlin mRNAの濃度を表す。
【図10】TR−FRET法によるエンドヌクレアーゼ活性評価結果を示した図である。縦軸は蛍光強度を表し、RNP(+)はRNP添加を、RNP(−)はRNP非添加を表す。
【図11】RNAポリメラーゼおよびRNase T1のエンドヌクレアーゼ活性評価結果を示した図である。縦軸はT/C値を、横軸はCap Analog添加濃度を表す。
【図12】FP法によるCap binding評価結果を示した図である。縦軸は蛍光偏光度(FP値)を表し、RNP(+)はRNP添加を、RNP(−)はRNP非添加を表す。
【配列表フリーテキスト】
【0090】
配列番号1:6CTP(24)と称するインフルエンザRNAポリメラーゼの基質となるよう設計されたRNAの塩基配列。
配列番号2:6UTP(21)と称するインフルエンザRNAポリメラーゼの基質となるよう設計されたRNAの塩基配列。
配列番号3:6UTP(22)と称するインフルエンザRNAポリメラーゼの基質となるよう設計されたRNAの塩基配列。
配列番号4:8UTP(14)と称するインフルエンザRNAポリメラーゼの基質となるよう設計されたRNAの塩基配列。
配列番号5:8UTP(15)と称するインフルエンザRNAポリメラーゼの基質となるよう設計されたRNAの塩基配列。
配列番号6:8UTP(16)と称するインフルエンザRNAポリメラーゼの基質となるよう設計されたRNAの塩基配列。
配列番号7:8UTP(18)と称するインフルエンザRNAポリメラーゼの基質となるよう設計されたRNAの塩基配列。
配列番号8:8UTP(21)と称するインフルエンザRNAポリメラーゼの基質となるよう設計されたRNAの塩基配列。
配列番号9:8UTP(22)と称するインフルエンザRNAポリメラーゼの基質となるよう設計されたRNAの塩基配列。
配列番号10:8UTP(26)と称するインフルエンザRNAポリメラーゼの基質となるよう設計されたRNAの塩基配列。
配列番号11:8UTP(29)と称するインフルエンザRNAポリメラーゼの基質となるよう設計されたRNAの塩基配列。
配列番号12:9UTP(17)と称するインフルエンザRNAポリメラーゼの基質となるよう設計されたRNAの塩基配列。
配列番号13:16UTP(16)と称するインフルエンザRNAポリメラーゼの基質となるよう設計されたRNAの塩基配列。
配列番号14:6CTP(24)のテンプレートDNAの塩基配列。
配列番号15:6UTP(21)のテンプレートDNAの塩基配列。
配列番号16:6UTP(22)のテンプレートDNAの塩基配列。
配列番号17:8UTP(14)のテンプレートDNAの塩基配列。
配列番号18:8UTP(15)のテンプレートDNAの塩基配列。
配列番号19:8UTP(16)のテンプレートDNAの塩基配列。
配列番号20:8UTP(18)のテンプレートDNAの塩基配列。
配列番号21:8UTP(21)のテンプレートDNAの塩基配列。
配列番号22:8UTP(22)のテンプレートDNAの塩基配列。
配列番号23:8UTP(26)のテンプレートDNAの塩基配列。
配列番号24:8UTP(29)のテンプレートDNAの塩基配列。
配列番号25:9UTP(17)のテンプレートDNAの塩基配列。
配列番号26:16UTP(16)のテンプレートDNAの塩基配列。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一般式(I)
Cap(N...N)(N...N) (I)
(式中、Capはキャップ構造を示し、
(N...N)は9個の単一または複数種類の塩基からなる塩基配列であって、該塩基配列を構成する塩基のうちいずれか1つが蛍光物質、消光物質およびビオチンからなる群から選択されるいずれか1の標識物質により標識されている塩基配列を示し、
(N...N)は、5ないし51個の単一または複数種類の塩基からなる塩基配列を示す。
ただし、(N...N)以降の塩基配列中、5’側から数えて9番目〜13番目の間にある標識されていない塩基のうちの少なくとも1つがアデニンまたはグアニンである。)
で表されるポリヌクレオチド。
【請求項2】
(N...N)を構成する塩基のうち、(N...N)以降の塩基配列中、5’側から数えて14番目以降のいずれか1つの塩基が蛍光物質、消光物質およびビオチンから選択されるいずれか1の標識物質により標識されている請求項1に記載のポリヌクレオチド(ただし、(N...N)中の標識物質と(N...N)中の標識物質の組合わせは、ともに消光物質、あるいは、ともにビオチンであることはない)。
【請求項3】
(N...N)を構成する塩基のうち、標識物質により標識されている塩基が3’末端の塩基である請求項2に記載のポリヌクレオチド。
【請求項4】
(N...N)中の標識物質と(N...N)中の標識物質の組合わせが、エネルギートランスファーを生じるドナーとアクセプターの組合わせである請求項2〜3のいずれか1項に記載のポリヌクレオチド。
【請求項5】
(N...N)中の標識物質により標識されている塩基から(N...N)中の標識物質により標識されている塩基までの塩基数が6〜60個である請求項2〜4のいずれか1項に記載のポリヌクレオチド。
【請求項6】
Capがキャップ0である請求項1〜5のいずれか1項に記載のポリヌクレオチド。
【請求項7】
Capがキャップ1である請求項1〜5のいずれか1項に記載のポリヌクレオチド。
【請求項8】
Capがキャップ2である請求項1〜5のいずれか1項に記載のポリヌクレオチド。
【請求項9】
ポリヌクレオチドを構成する塩基のうち、(N...N)中の標識物質により標識されている塩基がウリジン又はシトシンであり、他の塩基はグアニンまたはアデニンである請求項1〜8のいずれか1項に記載のポリヌクレオチド。
【請求項10】
ポリヌクレオチドを構成する塩基のうち、(N...N)中の標識物質により標識されている塩基がウリジンであり、(N...N)中の標識物質により標識されている塩基がシトシンであり、他の塩基はグアニンまたはアデニンである請求項2〜9のいずれか1項に記載のポリヌクレオチド。
【請求項11】
ポリヌクレオチドを構成する塩基のうち、(N...N)中の標識物質により標識されている塩基がシトシンであり、(N...N)中の標識物質により標識されている塩基がウリジンであり、他の塩基はグアニンまたはアデニンである請求項2〜9のいずれか1項に記載のポリヌクレオチド。
【請求項12】
配列表の配列番号1に記載の塩基配列からなるポリヌクレオチド。
【請求項13】
配列表の配列番号2に記載の塩基配列からなるポリヌクレオチド。
【請求項14】
配列表の配列番号3に記載の塩基配列からなるポリヌクレオチド。
【請求項15】
配列表の配列番号4に記載の塩基配列からなるポリヌクレオチド。
【請求項16】
配列表の配列番号5に記載の塩基配列からなるポリヌクレオチド。
【請求項17】
配列表の配列番号6に記載の塩基配列からなるポリヌクレオチド。
【請求項18】
配列表の配列番号7に記載の塩基配列からなるポリヌクレオチド。
【請求項19】
配列表の配列番号8に記載の塩基配列からなるポリヌクレオチド。
【請求項20】
配列表の配列番号9に記載の塩基配列からなるポリヌクレオチド。
【請求項21】
配列表の配列番号10に記載の塩基配列からなるポリヌクレオチド。
【請求項22】
配列表の配列番号11に記載の塩基配列からなるポリヌクレオチド。
【請求項23】
配列表の配列番号12に記載の塩基配列からなるポリヌクレオチド。
【請求項24】
配列表の配列番号13に記載の塩基配列からなるポリヌクレオチド。
【請求項25】
配列表の配列番号1に記載の塩基配列からなるポリヌクレオチドの5’末端から6番目のシトシンが蛍光物質、消光物質およびビオチンからなる群から選択されるいずれか1の標識物質で標識されており、さらに、5’末端にキャップ構造が結合しているポリヌクレオチド。
【請求項26】
配列表の配列番号2に記載の塩基配列からなるポリヌクレオチドの5’末端から6番目のウリジンが蛍光物質、消光物質およびビオチンからなる群から選択されるいずれか1の標識物質で標識されており、さらに、5’末端にキャップ構造が結合しているポリヌクレオチド。
【請求項27】
配列表の配列番号3に記載の塩基配列からなるポリヌクレオチドの5’末端から6番目のウリジンが蛍光物質、消光物質およびビオチンからなる群から選択されるいずれか1の標識物質で標識されており、さらに、5’末端にキャップ構造が結合しているポリヌクレオチド。
【請求項28】
配列表の配列番号4に記載の塩基配列からなるポリヌクレオチドの5’末端から8番目のウリジンが蛍光物質、消光物質およびビオチンからなる群から選択されるいずれか1の標識物質で標識されており、さらに、5’末端にキャップ構造が結合しているポリヌクレオチド。
【請求項29】
配列表の配列番号5に記載の塩基配列からなるポリヌクレオチドの5’末端から8番目のウリジンが蛍光物質、消光物質およびビオチンからなる群から選択されるいずれか1の標識物質で標識されており、さらに、5’末端にキャップ構造が結合しているポリヌクレオチド。
【請求項30】
配列表の配列番号6に記載の塩基配列からなるポリヌクレオチドの5’末端から8番目のウリジンが蛍光物質、消光物質およびビオチンからなる群から選択されるいずれか1の標識物質で標識されており、さらに、5’末端にキャップ構造が結合しているポリヌクレオチド。
【請求項31】
配列表の配列番号7に記載の塩基配列からなるポリヌクレオチドの5’末端から8番目のウリジンが蛍光物質、消光物質およびビオチンからなる群から選択されるいずれか1の標識物質で標識されており、さらに、5’末端にキャップ構造が結合しているポリヌクレオチド。
【請求項32】
配列表の配列番号8に記載の塩基配列からなるポリヌクレオチドの5’末端から8番目のウリジンが蛍光物質、消光物質およびビオチンからなる群から選択されるいずれか1の標識物質で標識されており、さらに、5’末端にキャップ構造が結合しているポリヌクレオチド。
【請求項33】
配列表の配列番号9に記載の塩基配列からなるポリヌクレオチドの5’末端から8番目のウリジンが蛍光物質、消光物質およびビオチンからなる群から選択されるいずれか1の標識物質で標識されており、さらに、5’末端にキャップ構造が結合しているポリヌクレオチド。
【請求項34】
配列表の配列番号10に記載の塩基配列からなるポリヌクレオチドの5’末端から8番目のウリジンが蛍光物質、消光物質およびビオチンからなる群から選択されるいずれか1の標識物質で標識されており、さらに、5’末端にキャップ構造が結合しているポリヌクレオチド。
【請求項35】
配列表の配列番号11に記載の塩基配列からなるポリヌクレオチドの5’末端から8番目のウリジンが蛍光物質、消光物質およびビオチンからなる群から選択されるいずれか1の標識物質で標識されており、さらに、5’末端にキャップ構造が結合しているポリヌクレオチド。
【請求項36】
配列表の配列番号12に記載の塩基配列からなるポリヌクレオチドの5’末端から9番目のウリジンが蛍光物質、消光物質およびビオチンからなる群から選択されるいずれか1の標識物質で標識されており、さらに、5’末端にキャップ構造が結合しているポリヌクレオチド。
【請求項37】
配列表の配列番号13に記載の塩基配列からなるポリヌクレオチドの5’末端から16番目のウリジンが蛍光物質、消光物質およびビオチンからなる群から選択されるいずれか1の標識物質で標識されており、さらに、5’末端にキャップ構造が結合しているポリヌクレオチド。
【請求項38】
キャップ構造がキャップ0である請求項25〜37のいずれか1項に記載のポリヌクレオチド。
【請求項39】
キャップ構造がキャップ1である請求項25〜37のいずれか1項に記載のポリヌクレオチド。
【請求項40】
キャップ構造がキャップ2である請求項25〜37のいずれか1項に記載のポリヌクレオチド。
【請求項41】
蛍光物質が、Cy5、アレキサフローラ488、アレキサフローラ647、フルオレセインのうちのいずれか1つである請求項25〜40のいずれか1項に記載のポリヌクレオチド。
【請求項42】
3’末端の塩基がビオチン化されている請求項25〜41のいずれか1項に記載のポリヌクレオチド。
【請求項43】
3’末端の塩基にさらにランタニドが結合している請求項25〜42のいずれか1項に記載のポリヌクレオチド。
【請求項44】
請求項1〜11、25〜43のいずれか1項に記載のポリヌクレオチドを用いることを特徴とするRNAポリメラーゼを阻害する物質の同定方法。
【請求項45】
請求項1〜11、25〜43のいずれか1項に記載のポリヌクレオチドを用い、RNAポリメラーゼの活性を変性ポリアクリルアミドゲルを用いた電気泳動法を利用して測定する工程を含む、RNAポリメラーゼを阻害する物質の同定方法。
【請求項46】
請求項1〜11、25〜43のいずれか1項に記載のポリヌクレオチドを用い、RNAポリメラーゼのエンドヌクレアーゼ活性を蛍光偏光(Fluorescence Polarization:FP)法を利用して測定する工程を含む、RNAポリメラーゼを阻害する物質の同定方法。
【請求項47】
請求項1〜11、25〜43のいずれか1項に記載のポリヌクレオチドを用い、RNAポリメラーゼのエンドヌクレアーゼ活性を蛍光共鳴エネルギー転移(Fluorescence Resonance Energy Transfer:FRET)法を利用して測定する工程を含む、RNAポリメラーゼを阻害する物質の同定方法。
【請求項48】
請求項1〜11、25〜43のいずれか1項に記載のポリヌクレオチドを用い、RNAポリメラーゼのエンドヌクレアーゼ活性を時間分解蛍光共鳴エネルギー転移(Time Resolved Fluorescence Resonance Energy Transfer:TR−FRET)法を利用して測定する工程を含むRNAポリメラーゼを阻害する物質の同定方法。
【請求項49】
RNAポリメラーゼがインフルエンザウイルスのRNAポリメラーゼである請求項44〜48のいずれか1項に記載の同定方法。
【請求項50】
配列表の配列番号14に記載の塩基配列からなるポリヌクレオチド。
【請求項51】
配列表の配列番号15に記載の塩基配列からなるポリヌクレオチド。
【請求項52】
配列表の配列番号16に記載の塩基配列からなるポリヌクレオチド。
【請求項53】
配列表の配列番号17に記載の塩基配列からなるポリヌクレオチド。
【請求項54】
配列表の配列番号18に記載の塩基配列からなるポリヌクレオチド。
【請求項55】
配列表の配列番号19に記載の塩基配列からなるポリヌクレオチド。
【請求項56】
配列表の配列番号20に記載の塩基配列からなるポリヌクレオチド。
【請求項57】
配列表の配列番号21に記載の塩基配列からなるポリヌクレオチド。
【請求項58】
配列表の配列番号22に記載の塩基配列からなるポリヌクレオチド。
【請求項59】
配列表の配列番号23に記載の塩基配列からなるポリヌクレオチド。
【請求項60】
配列表の配列番号24に記載の塩基配列からなるポリヌクレオチド。
【請求項61】
配列表の配列番号25に記載の塩基配列からなるポリヌクレオチド。
【請求項62】
配列表の配列番号26に記載の塩基配列からなるポリヌクレオチド。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2008−212033(P2008−212033A)
【公開日】平成20年9月18日(2008.9.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−52257(P2007−52257)
【出願日】平成19年3月2日(2007.3.2)
【出願人】(000002831)第一製薬株式会社 (129)
【Fターム(参考)】