説明

表示パネルおよび画像表示装置

【課題】 板状のスペーサや板状のスペーサが当接している当接部材の破損などを抑制可能な表示パネルおよび画像表示装置を提供する。また、薄型、軽量化を実現可能な表示パネルおよび画像表示装置を提供する。
【解決手段】 前面板が接着された前面基板と、該前面基板と対向する面を備える背面基板と、該前面基板と該背面基板との間に、互いの長手方向が平行になるように設けられた複数の板状のスペーサと、を備える真空容器と、該背面基板の該前面基板と対向する面とは反対側の面に接着された、複数のライン状の固定部材と、を少なくとも備える表示パネルであって、該複数のライン状の固定部材の各々は、互いに所定の間隔を置いて、且つ、該複数のスペーサの前記長手方向に沿うように、該背面基板の前記面に剛性が異なる接着構造により接着されていることを特徴とする表示パネル。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、表示パネルおよび画像表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
FEDなどの電子放出素子から放出された電子を蛍光体等の発光体に照射するタイプの画像表示装置が知られている。このような画像表示装置は、内部が大気圧よりも低い圧力(真空)に維持された扁平な矩形状の真空容器を備える表示パネル(ディスプレイパネル)を用いる。内部の空間を真空に維持するために、扁平な矩形状の真空容器の内部には、一般に、複数のスペーサが設けられる。
【0003】
このような扁平な矩形状の真空容器を備える表示パネルを有する画像表示装置では、画像表示装置に加えられる衝撃により真空容器が破損する事を防ぐことが求められる。また、真空容器の外形状の破損だけでなく、真空容器の内部の画像表示に係る部材の破損を防ぐことも求められる。真空容器が破損する要因となる衝撃としては、画像表示装置への外部からの衝撃、輸送時や設置時における衝撃、不注意な取り扱いによる落下衝撃などがある。
【0004】
特許文献1には、真空容器の機械的強度を向上するために、表示パネルを構成する真空容器の背面(表示面とは反対側の面)に取付けられた補強フレームが開示されている。補強フレームは、扁平な矩形状の真空容器の長辺とほぼ平行に延びた一対の第1枠部と、真空容器の短辺とほぼ平行に延びているとともに一対の第1枠部を連結した一対の第2枠部とを有することが開示されている。
【0005】
特許文献2には、各々の長手方向が平行になるように配列された複数の細長い板状のスペーサを備える真空容器が開示されている。そして、蛍光面を被覆するメタルバック層の上に間欠的に設けられた複数のスペーサ当接層に、細長い板状のスペーサを当接させた形態が開示されている。また、特許文献3には、表示パネルを構成する真空容器の表示面に保護板を設けることが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2005−011764号公報
【特許文献2】特開2006−185723号公報
【特許文献3】特開平10‐326580号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
従来は、特許文献1に開示されている補強フレームのような高強度な背面支持部材を表示パネルを構成する真空容器の背面に設けて、真空容器の強度を補強する必要があった。具体的には、十分な強度を得るために、背面支持部材強度の厚みを厚くすることによって真空容器の耐衝撃性(補強強度)を増していた。そのため、画像表示装置は、重量が重く、コストが高くなる、といった問題があった。また、大きな背面支持部材が存在することで、駆動回路などの電気回路基板や電源を実装することのできる領域が制限されるなどして、画像表示装置の薄型化に影響を与えるなどの問題もあった。
【0008】
本発明は上記問題を解決するためになされたものであって、補強強度を損なわずに、軽量化、低コスト化を実現可能な表示パネルおよび該表示パネルを用いた画像表示装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係る第1の態様は、前面板が接着された前面基板と、該前面基板と対向する面を備える背面基板と、前記前面基板と前記背面基板との間に、互いの長手方向が平行になるように設けられた複数の板状のスペーサと、を備える真空容器と、前記背面基板の前記前面基板と対向する面とは反対側の面に接着された、複数のライン状の固定部材と、を少なくとも備える表示パネルであって、前記複数のライン状の固定部材の各々は、互いに所定の間隔を置いて、且つ、前記複数のスペーサの前記長手方向に沿うように、前記背面基板に接着部材によって接着されており、前記複数のライン状の固定部材の各々は、前記背面基板に接着部材によって接着された板状部材と、該板状部材の、前記背面基板とは反対側の表面に設けられた複数の突起部とを備えており、前記接着部材は、前記板状部材と前記背面基板との間に開孔を備えることを特徴とする。
【0010】
また、本発明に係る第2の態様は、前面板が接着された前面基板と、該前面基板と対向する面を備える背面基板と、前記前面基板と前記背面基板との間に、互いの長手方向が平行になるように設けられた複数の板状のスペーサと、を備える真空容器と、前記背面基板の前記前面基板と対向する面とは反対側の面に接着された、複数のライン状の固定部材と、該真空容器を該固定部材を介して支持する支持体と、を少なくとも備える画像表示装置であって、前記複数のライン状の固定部材の各々は、互いに所定の間隔を置いて、且つ、前記複数のスペーサの前記長手方向に沿うように、前記背面基板に接着部材によって接着されており、前記複数のライン状の固定部材の各々は、前記背面基板に接着部材によって接着された板状部材と、該板状部材の、前記背面基板とは反対側の表面に設けられ、且つ、各々が前記支持体に固定される、複数の突起部とを備えており、前記接着部材は、前記板状部材と前記背面基板との間に開孔を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、薄型、軽量化、低コスト化を実現可能な画像表示装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】表示パネルの分解図の一例を示す模式図である。
【図2】表示パネルの構成例を示す模式図である。
【図3】前面基板に発生する応力を示すグラフである。
【図4】衝撃が入力された際の固定部材の変形の様子を示す模式図である。
【図5】変形例を示す模式図である。
【図6】変形例を示す模式図である。
【図7】表示パネルの模式図である。
【図8】表示パネルの前面基板側の模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施形態について説明する。尚、各図において共通する符号を用いている部材は、同じ部材を指す。本発明は、図7(A)に示すような扁平な矩形状の真空容器10を備える表示パネルおよび当該表示パネルを用いた画像表示装置に有効である。特に、落下衝撃時などにおいて真空容器10の特定方向の変形の緩和や特定方向の応力発生の緩和が必要な、画像表示装置および表示パネルに有効である。扁平な矩形状の真空容器10は、その内部空間が大気圧よりも低い圧力に維持されており、扁平な矩形状の真空容器の長手方向と同じ方向に長手方向を有する細長い板状のスペーサを複数有する。
【0014】
表示パネル(ディスプレイパネル)は、いわゆるディスプレイモジュールを指し、少なくとも真空容器10と、真空容器10を支持体に固定するための固定部材および固定部材を真空容器に接着する接着部材を備える。更に、一般に、真空容器内の電子放出素子やアノード電極を駆動するための駆動回路を備える。一方、画像表示装置は、表示パネルに加え、少なくとも表示パネルを設置面に載せるための支持体を備える装置を指す。そして、さらに、必要に応じて、テレビ信号を受信する受信機や、入力された画像信号を表示パネルの特性に合わせて所定の処理を加える画像処理回路や、スピーカーなども備えた装置を指す。
【0015】
図7(A)〜(C)を用いて、本発明が好ましく適用される表示パネルについて先ず説明する。図7(A)は表示パネルを構成する真空容器10の一部を切り欠いて模式的に示した斜視図であり、図7(B)は図7(A)のA−A線における断面模式図である。また、図7(C)は前面基板11の一部を背面基板12側から見た際の模式図である。このような表示パネルの一例としては、FED(Field Emisson Display)がある。図7(A)に示すように、真空容器10は、それぞれ矩形状のガラス板からなる前面基板11、および背面基板12を備えており、これらの基板は1〜2mmのギャップを置いて対向配置されている。前面基板11および背面基板12の厚みは、0.5mm〜3mmであり、好ましくは2mm以下である。前面基板11および背面基板12の周縁部同士を矩形枠状の側壁13を介して接合し、前面基板11と背面基板12との間を10−4Pa程度以下の高真空に維持することで、偏平な矩形状の真空容器10が構成されている。尚、前面基板11と背面基板12との間(空間)は、所定の間隔に維持されている。その間隔としては、例えば、200μm以上3mm以下、より実用的な範囲としては、1mm以上2mm以下である。側壁13は、例えば、ガラスや金属で構成することができる。また、例えば、低融点ガラスや低融点金属等のシール機能を備える接着剤を接着部材23として用いることができる。接着部材23が、前面基板11および背面基板12と側壁13とを接着することにより、前面基板11の周縁部と背面基板12の周縁部とが封着され、これらの基板同士が接合されている。ここでは、接合部材を側壁13と接着部材23とから構成したが、前面基板11と背面基板12との間に維持する間隔によっては、側壁13を省略することもできる。即ち、接合部材は、前面基板11と背面基板12との間に維持する空間を、取り囲み且つ気密に保持すると共に、前面基板11と背面基板12とを接合することができれば、その構造は限定されるものではない。
【0016】
また、図7(B)に示すように、前面基板11の内面には蛍光体などの発光体層15が設けられている。この発光体層15は、赤、緑、青に発光する発光体R,G,Bと、マトリックス状の遮光体17とを有している。発光体層15上には、例えば、アルミニウムを主成分としアノード電極として機能するメタルバック層20が形成されている。更に、メタルバック層20の上にゲッター膜22が形成される場合がある。表示動作時、メタルバック層20には所定のアノード電圧が印加される。
【0017】
背面基板12の前面基板11に対向する面(内面)には、発光体層15の発光体R、G、Bを励起する電子源として、それぞれが電子ビームを放出する多数の電子放出素子18が設けられている。これらの電子放出素子18は、画素(発光体R,G,B)に対応してマトリクス状に配列されている。なお、電子放出素子18としては、例えば、表面伝導型電子放出素子や電界放出型電子放出素子などを適用できる。背面基板12の内面上には、電子放出素子18を駆動する多数本の配線21がマトリクス状に設けられ、その端部は真空容器10の外部に引出されている。
【0018】
背面基板12と前面基板11の間には、これらの基板に作用する大気圧を支持するため、多数の細長い板状のスペーサ14が配置されている。前面基板11および背面基板12の長手方向(長辺方向)を第1方向X、これと直交する方向(幅方向又は短辺方向)を第2方向Yとした場合、板状のスペーサ14は第1方向Xに延びている。言い換えると、板状のスペーサ14の長手方向110が、第1方向Xとなる。そして、多数の板状のスペーサ14は、第2方向Yに所定の間隔を置いて配設されている。第2方向Yにおける間隔としては、例えば1mm〜50mmとすることができる。スペーサ14は細長いガラスの板やセラミックスの板から構成することができる。また、必要に応じて、上記の板の表面に、高抵抗膜を配置したり、凹凸を設けたりする場合もある。スペーサ14は、その幅(第2方向Yにおける長さ)に比べて高さ(Z方向における長さ)が数倍から十数倍大きく、また、その長さ(第1方向Xにおける長さ)は、高さに比べて数十倍から数百倍大きい。
【0019】
上記した真空容器を備える表示パネルおよび画像表示装置では、画像を表示する場合、メタルバック層20を介して発光体層R、G、Bにアノード電圧を印加する。また、同時に、電子放出素子18から放出された電子ビームをアノード電圧により加速して発光体へ衝突させる。これにより、対応する発光体R、G、Bが励起されて発光し、カラー画像を表示する。
【0020】
図7(C)に示すように、発光体層15は、赤、青、緑に発光する多数の矩形状の発光体R、G、Bを有している。発光体R、G、Bは、第1方向Xに所定のギャップをおいて交互に繰り返し配列され、第2方向には同一色の発光体が所定のギャップをおいて配列されている。第1方向Xのギャップは、第2方向Yのギャップよりも小さく設定されている。遮光層17は、前面基板11の周縁部に沿って延びた矩形枠部17a、および矩形枠部の内側で発光体層R、G、Bの間をマトリックス状に延びたマトリックス部17bを有している。
【0021】
次に、画像表示装置の支持構造について、図1、図2(A)、図2(B)を用いて説明する。図1は、表示パネルの、背面側から見た、分解図の一例である。なお、図1において、通常、表示パネルの背面側(画像表示面とは反対側)に表示パネルを駆動するための電気回路基板を設けているが、ここでは説明の都合上、各種の電気回路基板は省いている。図2(A)は、表示パネルの背面側の斜視図である。図2(B)は、図2(A)の表示パネルに支持体108を取り付けた画像表示装置において、図2(A)の一点鎖線A−A’における断面を含む画像表示装置の断面の模式図である。尚、図2(A)では一点鎖線A−A’が固定部材の突起部207を通っていないが、図2(B)では、上記一点鎖線A−A’が突起部207を通っている場合について図示している。また、実際の画像表示装置では、見栄えを良くする等の目的で、一般に、図2(B)に示した構成に加えて、更に、外装パネル等のカバー(不図示)を取り付ける。尚、一点鎖線144は、表示パネル(真空容器10)の画像表示領域(又は背面基板12)の鉛直方向(図7(A)における第2方向Y)の中心線に相当する。
【0022】
真空容器10を剛体である支持体108に固定するための複数の固定部材103(図1では103Aと103Bで表記されている)が、背面基板12の裏面(前面基板11に対向する面(内面)とは反対側の面)に、接着部材122を用いて接着されている。この様に固定部材103が真空容器10の裏面に強固に接着される(固着される)ので、複数の固定部材103を介して、真空容器10を支持体108で支持することができる。尚、真空容器10に加えて、少なくとも固定部材103と接着部材122を備える表示パネルに対して、支持体108は、着脱可能に固定することができる。また、図1、図2(A)、図2(B)における矢印110は、図7の矢印110と同様に、細長い板状のスペーサ14の長手方向(スペーサ長手方向)を表す矢印である。即ち、図1、図2(A)、図2(B)の例では、スペーサの長手方向は、画像表示装置の水平方向(幅方向;横方向)である。
【0023】
また、前面板102が、真空容器10の前面基板11の前面側の表面(背面基板12に対向する面とは反対側の面)に接着部材121によって接着されている。本実施形態では、前面板102の長手方向と表示パネル10の長手方向及びスペーサ長手方向110を平行になるように配置することにより、スペーサ長手方向110に対する変形や応力集中を少なくすることができる。前面板102は、平板状とし、表示パネル(真空容器10)の画像表示領域(蛍光体R,G,Bが配置されている領域または面積)より大きいことが望ましい。前面板は、可視光に対して透明な部材で構成され、例えば、ガラスの板やポリカーボネートの板を用いることができるが、光学特性の観点からガラスの板が特に好ましい。前面板の厚みとしては、真空容器10に所定の強度を持たせるために、ガラスであれば、1.5mm〜3.5mmとすることが望ましい。特に、強度の観点から、前面基板11および背面基板12の厚みよりも厚く設定することが望ましい。
【0024】
接着部材121の材質、形状、厚み、面積等は、接着部材121の強度、衝撃吸収、熱伝導率、前面板の平面度等を考慮して適宜設定される。接着部材121は、特に限定されないが、真空容器10を形成した後に、前面板102を真空容器10に接着するために、高温加熱を必要としない接着剤を用いることが望ましい。例えば、常温下で、ガラスからなる真空容器10にガラスからなる前面板102を紫外線を照射することで接着することのできる、UV硬化型の樹脂接着剤を用いることができる。より具体的には、アクリル系のUV硬化型の樹脂接着剤を用いることができる。前面板102を真空容器10に接着部材121によって接着させることにより、真空容器10の剛性、特に面方向におけるねじりの剛性が上がる。これにより、従来必要であった、背面基板12の裏面に設ける補強フレームなどの補強部材の大幅な薄型化、軽量化を図ることができる。
【0025】
表示パネル(真空容器10)を剛体である支持体108に固定するための複数の固定部材103は、図1及び図2(A)、図2(B)に示す例では、互いに離間した、2つのライン状の固定部材(103A、103B)で構成されている。固定部材103は、金属薄板をベースに構成されているため、柔構造部品となっている。ライン状の固定部材の各々(103A、103B)は、その長手方向が板状スペーサの長手方向110に対して平行になるように配置される。これにより、スペーサ14の変形やスペーサ14が前面基板11と当接する部分への応力集中(詳しくは後述する)を低減することができる。
【0026】
複数の固定部材103は、画像表示領域(又は背面基板12)の水平方向(図7(A)における第1方向X)の中心線144を対称軸として、一方の固定部材103Aが他方の固定部材103Bに対して線対称な関係を満たす様に配置する。また同時に、各々の固定部材は、画像表示領域(又は背面基板12)の鉛直方向(図7(A)における第2方向Y)の中心線(図2(A)のA−A’線に相当する線)を対称軸として、線対称な関係を満たす様に配置する。この関係は、画像表示領域の鉛直方向の中心線(図2(A)のA−A’線に相当する線)で折り返した形状となる関係と言い換えることができる。尚、ここでは、2つの固定部材(103A、103B)を用いた例を説明するが、固定部材103の数は2つ以上であればよい。奇数(例えば3つ)の固定部材を用いる場合には、例えば、1つの固定部材は、真空容器10の画像表示領域の水平方向の中心線144上に位置するように、背面基板12上に接着する。そして残る固定部材は、中心線144上に設けた固定部材から離れ、且つ、上記した2つの関係を満たすように、背面基板12上に接着して配置すればよい。
【0027】
各々の固定部材(103A、103B)は、薄板の板状部材(206、208)と板状部材206に設けた突起部207とを備えており、突起部207により支持点の機能を持たせている。図1及び図2(A)、図2(B)に示す例では、板状部材が、幅が広い部分206と幅が狭い部分208とが連結されており、突起部207が、幅が広い部分206に設けられた形態を示している。板状部材(206、208)の背面基板12に接着する側の面とは反対側の面に突起部207が設けられている。この構成により、剛体である支持体108と複数の固定部材103とが固定され、表示パネル(真空容器)が支持体108に固定される。板状部材と突起部207は強固に接続されており、接続の方法は、カシメ、圧着、溶接、接着等、どのような方法であってもよい。板状部材の幅や面積は、少なくとも突起部207が設けられている部分(突起部207の直下)において、突起部207の基部(板状部材との固定部)の幅及び又は面積よりも大きく設定する。これは、衝撃が真空容器10に突起部207を介して入力された際に、真空容器に生じる応力を低減するためである。
【0028】
板状部材及び突起部はアルミニウム、鉄、マグネシウム等の金属や合金で形成されていることが好ましい。板状部材206及び突起部207を金属製にすることによるメリットを以下に記す。
・電気回路や表示パネルのGND規定部材として利用可能である。
・難燃性に優れる。
・強度的に優れる。
【0029】
また、板状部材はプレス加工によって成形することにより、安価で良好な平面度が得られる。突起部207は、間隔規定部材として機能することができ、突起部207の形状は円柱型、四角柱型、多角柱型とあらゆる形状が可能である。突起部207の制作方法としては、ヘッダー加工、機械加工などを用いることができる。また、突起部207に支持点としての機能を持たせる為にメネジ加工を施し、真空容器10に強固に接着された固定部材を支持体108にネジで固定する構造を備えることができる。また、板状部材と突起部207を組み合わせ、プレス加工すれば、カシメ、圧着を一度に複数箇所行うことができる。それにより、製造に必要な工数を低減できるため、固定部材の製造コストを低減できる。
【0030】
接着部材122としては、両面テープや接着剤などを用いることができる。接着部材122の材質、形状、厚み、面積等は、接着部材122の強度、衝撃吸収、熱伝導率、支持部材の平面度等を考慮して適宜設定される。接着部材122は、固定部材と同じ形状で真空容器10の表面に設けることが好ましい。即ち、接着部材122の長手方向を板状スペーサの長手方向110に対して平行になるように配置されることが好ましい。これによっても、スペーサの変形、応力集中を低減することができる。
【0031】
そして、詳しくは後述するが、接着部材122は、落下などの衝撃が固定部材103に入力された際に真空容器10に発生する応力集中を低減するために、図1に示す様に、中空部211を備えることが望ましい。尚、中空部211は、開孔211と言い換えることができる。中空部(開孔)211は、固定部材103と真空容器10の表面(背面基板12の表面)との間に配置される。特には、固定部材103を構成する突起部207と真空容器10の表面(背面基板12の表面)との間に配置されることが望ましい。即ち、中空部(開孔)211は、突起部207の直下に設けられることが望ましい。
【0032】
この例では、支持体108は、支持台(台座)118と支持台118の上に立設させた支柱119を備えている。より具体的には、支持台(台座)は、机やオーディラックなどの画像表示装置を設置する設置面である。また、支柱119は、表示パネルの表示面を設置面に対して垂直に保持するために、支持台118の上に立設させた支柱である。即ち、支柱119の基部は支持台118で固定されている。尚、台座118と支柱119は、着脱可能なように、ネジなどで、結合することができる。支持体108は、更に、支柱119に対して、表示面を左右上下方向に角度調整できるように角度調整部を備えることもできる。また、支柱119の基部または支持台118に、支柱119を回転可能にせしめる回転機構を設けることもできる。また、ここでは、支持台118と支柱119とを別部材で構成した例を示したが、支持台と支柱を一つの部材とすることもできる。また、支柱119は複数設けることができる。また、支持体108は、画像表示装置を安定に設置することができれば、特にその形態は限定されるものではない。そのため、例えば、画像表示装置を直接壁に固定する場合には、支持台118に相当する部材が省略される場合や、支柱に相当する部材が省略される場合もある。
【0033】
次に、スペーサ14と当接する前面基板11の構成について説明する。図7(B)、図7(C)で示した遮光層17の上には、抵抗調整層30が形成される場合がある。図8を用いて、前面基板11の詳細な構成を模式的に示す。抵抗調整層30は、遮光層17のマトリクス部17bの領域では、それぞれ第1方向Xに隣合う発光体間を第2方向Yに延びた複数の第1抵抗調整層31Vと、それぞれ第2方向に隣合う発光体間を第1方向Xに延びた複数の第2抵抗調整層31Hとを備える。発光体は第1方向XにR、G、Bと並んでいるため、第1抵抗調整層31Vは、第2抵抗調整層31Hよりも幅が狭くなっている。
例えば、第1抵抗調整層31Vの幅は40μm、第2抵抗調整層31Hの幅は300μm
である。ここで、図8(B)は図8(A)のB−B断面図であり、図8(C)は図8(A)のC−C断面図である。
【0034】
抵抗調整層30の上には、薄膜分断層32が形成されている。薄膜分断層32は、それぞれ抵抗調整層30の第1抵抗調整層31V上に形成された縦線部33V、およびそれぞれ抵抗調整層30の第2抵抗調整層31H上に形成された横線部33Hを有している。薄膜分断層32は、表面が凸凹になるように適切な密度で分散された粒子とバインダとを含んで形成され、これにより、この後に蒸着などにより形成される薄膜(メタルバック)20が分断される。薄膜分断層32を構成する粒子としては、蛍光体、シリカ等を用いることができる。薄膜分断層32は、遮光層17よりも少し細めに形成されており、数値例を示すと、薄膜分断層の横線部33Hの幅は260μm、縦線部33Vの幅は20μmとなっている。
【0035】
薄膜分断層32の形成後、メタルバック層20を平滑に形成するためにラッカーなどによる平滑化処理が行われる。この平滑化のための膜は、メタルバック層20が形成された後には、焼成により焼失する。
【0036】
平滑化処理の後、蒸着等の薄膜形成プロセスにより、メタルバック層20が形成される。これにより、薄膜分断層32により第1方向Xおよび第2方向Yに2次元分断された分断メタルバック層20aが形成される。分断メタルバック層20aは、それぞれ発光体R、G、Bに重なって位置している。この場合、分断メタルバック層20a間のギャップは薄膜分断層32の横線部33Hおよび縦線部33Vの幅とほぼ同じであり、第1方向Xには20μm、第2方向Yには260μmとなる。なお、図8(A)では、図面の複雑化を避けるため、メタルバック層20を省略して示している。
【0037】
メタルバック層20の上に重ねてゲッター膜22が形成される場合もある。FEDにおいては、長期に渡り真空度を確保するために、このようにメタルバック層上にゲッター膜22を形成することが必要になるケースがある。メタルバック層20の形成後も薄膜分断層の作用は失われていないため、ゲッター膜22は、メタルバック層20と同様のパターンで2次元分断され、分断ゲッター膜22aが形成することができる。
【0038】
図8(A)、図8(C)に示すように、複数のスペーサ14の各々は、薄膜分断層32の横線部33Hと対向して配設されている。スペーサ14と対向する各横線部33H上には、複数のスペーサ当接層40が形成されている。各スペーサ当接層40は、例えば銀粒子を含むペーストを印刷し焼成することにより形成される。銀以外にもPtやAuなど導電性を有する粒子が好ましく適用される。印刷の精度の面からあまり小さいサイズは形成できないので、スペーサ当接層40の第2方向Yの両端部は、横線部33Hの第2方向両側に2つずつ位置した4つの発光体層、分断メタルバック層20aに僅かに重なっている。また、複数のスペーサ当接層40は、図8(A)に示す様に、第1方向Xに所定の隙間を置いて間欠的に設けられている。スペーサ当接層40の上面は薄膜分断層32の上面よりも背面基板12側にあるように膜厚が調整されている。これにより、スペーサ14は、薄膜分断層32に直接、接触することなく、スペーサ当接層40に当接して設けられている。
【0039】
スペーサ当接層40はスペーサとの接触性、帯電防止などの観点から、導電性であることが望ましいが、絶縁性のものを用いることも許容される。尚、上述した例で説明した薄膜分断層や抵抗調整層は、メタルバック20の形態や作成方法によっては省略する場合もある。あるいはまた、薄膜分断層や抵抗調整層に加えてスペーサ当接層40も設けない場合もある。このような場合には、メタルバック20にスペーサ14が当接することになり、メタルバックがスペーサ当接層となる。
【0040】
図8を用いて説明したように、スペーサ14は、前面基板11にスペーサ当接層40を介して当接する場合がある。このような場合、画像表示装置への外部からの衝撃、輸送時や設置時における衝撃、不注意な取り扱いによる落下衝撃などによって、画像表示装置にダメージが生じる場合があった。より具体的には、上記衝撃により真空容器10がZ方向に凸形状や凹形状にたわむ等の変形を起こす。この変形に付随して、スペーサ当接層40やメタルバック20などのスペーサ14が当接する部分に位置する前面基板11上の部材が、細長い板状のスペーサ14によるせん断力を受けて破砕されてしまう事があった。スペーサ14と当接する前面基板11上の部材(スペーサ当接層40やメタルバック等)が破砕されると、その破片が、背面基板12側に落下する等して、メタルバックと電子放出素子との間や分断メタルバック間での望まない放電が発生する場合がある。その結果、画像表示装置として機能しなくなったり、表示画像が著しく劣化する場合などがあった。
【0041】
しかしながら、本実施形態の表示パネルでは、前面基板11の表面に前面板102を接着し、複数のライン状の固定部材103をスペーサの長手方向110と平行になるように配置している。そのため、前述した各種の衝撃が支持体108から複数の固定部材103を介して真空容器10に入力されても、スペーサ14の変形やスペーサ14が当接する部分(スペーサ当接層40)に発生するせん断応力を低減できる。本実施形態の表示パネルでは、入力された衝撃は、スペーサの長手方向と平行に、複数のライン状に、真空容器10に入力されることになる。例えば、衝撃が複数の固定部材103を介して入力された際に、図1や図2の鉛直方向に沿った真空容器10の断面では、基板(11、12)の表面(真空側の表面)が凹凸状に変形する(あるいは正弦波の様な変形を起こす)。しかし、図1や図2の水平方向に沿った真空容器10の断面では、鉛直方向に沿った断面に比べて、真空容器10の変形(前面基板11や背面基板12の変形)を大きく抑制できる。つまり、水平方向に沿った真空容器10の断面において、板状のスペーサ14が、弓状に反るような変形を起こす(あるいは正弦波のような変形を起こす)ことを抑制できる。一方、スペーサ14の長手方向と垂直な方向に沿って固定部材を設けると、衝撃が入力された際に、真空容器10の水平方向に沿った断面では、前面基板11と背面基板12の表面が凹凸状に変形(正弦波の様に変形)する。同時に、スペーサも、真空容器10の水平方向に沿った断面では、凹凸状に変形(正弦波の様に変形)する力を受ける。この現象は、表示パネルの水平方向に沿った断面では、固定部材が間隔を置いて点在する(周期的に存在する)ことになるためである。従って、衝撃が支持体108から固定部材(及び接着部材)を介して真空容器10に入力されると、真空容器10の固定部材が接着されている部分には衝撃が加わるが、固定部材が接着されていない部分には衝撃が加わらない。その結果、スペーサ14と、前面基板11と背面基板12とが接する部分において、応力が集中する部分が、周期的に生じることになる。応力集中部では、スペーサを湾曲させる力が加わる事によるスペーサの破損や、後述するように、スペーサが当接する部分(スペーサ当接部)にせん断応力が発生する事によるスペーサ当接部の破損を生じ易くなる。
【0042】
しかし、本実施形態で説明した表示パネルでは複数のライン状の固定部材103をスペーサの長手方向110と平行になるように配置しているので、上述した応力集中を抑制することができる。そのため、前述した、画像表示装置として機能しなくなることや、表示画像が著しく劣化することを防ぐ事が可能となる。
【0043】
また、前述したように、接着部材122はライン状とし、その長手方向とライン状の固定部材103の長手方向とを、板状スペーサ14の長手方向110と平行にすることが好ましい。このようにすることでスペーサ14の長手方向110の断面において、接着部材122が存在するため、応力集中をさらに低減することができる。そして、さらに、接着部材122と複数のライン状の固定部材103とが、背面基板12を挟んで、スペーサ14の真裏に位置することが、応力低減の観点から、一層望ましい。
【0044】
前述したように、接着部材122は、突起部207と真空容器10との間に、中空部(開孔)211を備えることが望ましい(図1参照)。また、その面積は、突起部207の外形面積以上とすることが望ましい。尚、突起部207が半径rの円柱であれば、その外形面積はπrと定義される。言い換えれば、突起部207の外形面積は、突起部207の、固定部材103を構成する板状部材(より詳細には幅が広い部分206)への正射影像(板状部材に垂直に投影された影)の面積とみなすことができる。
【0045】
図3は、ある1つの突起部207に外部から衝撃が入力された時の真空容器10に発生する応力と、突起部207の外形面積に対する接着部材122の中空部211の面積の比と、の関係を示したグラフである。図3では、横軸が中空部211と外形面積の比を、縦軸が衝撃が入力された突起部207上に位置する真空容器10の前面基板11に発生する応力を示している。ここで、グラフ中の”X応力”と”Y応力”は、それぞれ、図2(A)に示す水平方向(X方向)に対する応力と鉛直方向(Y方向)に対する応力である。図3に示す様に、横軸が1以上、つまり中空部211の面積を突起部207の外形面積以上とすることで、中空部211を設けない場合(横軸が0)と比較して、発生する応力を10%以上低減することができる。また、中空部211の面積を突起部207の外形面積よりも広くすることで、応力がより一層低減することがわかる。
【0046】
この応力低減効果について、図4(A)および図4(B)の模式図を用いて以下に説明する。図4(A)、図4(B)は、板状部材(より詳細には幅が広い部分206)と突起部207を備える固定部材103と接着部材122の、鉛直方向に沿った、一部の断面模式図に相当する。板状部材の裏面(真空容器10側の面)の全てに接着部材210を設けた場合(図3のグラフで横軸が0に相当)、図4(A)に模式的に示す様に、突起部207に入力された衝撃は突起部207の直下に集中し、これが真空容器10に伝えられる。一方、突起部207の直下に、突起部の外形面積よりも広い面積の中空部211を接着部材122に設けることで、板状部材(より詳細には幅が広い部分206)の面に対する垂直方向(奥行方向)の拘束力が弱まる。そのため、突起部207に衝撃が入力されたときに、板状部材が奥行方向に撓む効果を得ることができ、真空容器10に伝わる衝撃を分散することができる。その結果、表示パネルに発生する応力を低減することができる。これにより、前述した放電の発生を抑制することができ、安定した良好な表示画像を得ることができる。
【0047】
図1及び図2(A)、図2(B)の例では、各々の固定部材(103A、103B)は、交互に、且つ、連続させた、幅が広い部分206と幅が狭い部分208とを備えている。ここで、「幅が広い部分」又は「幅が狭い部分」における「幅は」、第2方向Y(スペーサの長手方向110と直交する方向)における長さである。また、幅が広い部分206の上に突起部207を設けるのは、落下等の衝撃が突起部207を通じて真空容器10に印加された際、幅が広い部分206において応力の拡散を行い、真空容器10に印加される衝撃を低減するためである。この幅が広い部分206、つまり面積が大きい部分は、真空容器10の剛性や、想定される落下衝撃力等により、面積及び形状、板厚が適宜決定される。また、突起部207のピッチ、個数も、真空容器10の剛性や、許容する落下衝撃力等により適宜決定される。突起部207の第2方向Y(スペーサの長手方向110と直交する方向)におけるピッチ(間隔)は、突起部207の第1方向X(スペーサの長手方向110と平行な方向)におけるピッチ(間隔)よりも大きく設定する。実用的には、突起部207の第2方向Yのピッチの1/2よりも小さいピッチに突起部207の第1方向Xのピッチを設定する。尚、突起部207の第2方向Yにおけるピッチは、背面基板12に接着された複数の固定部材103の中の隣合う2つの固定部材のピッチ(間隔)と考えることができる(図2の例では103Aと103Bとの間隔と考えることができる)。この様に設定することで、衝撃が真空容器10に突起部を介して入力された際、スペーサ14の長手方向110に沿って応力を低減でき、真空容器の変形を抑制することができるので、真空容器10の破損を抑制できる。一方、突起部207の第2方向Yにおけるピッチ(間隔)を突起部207の第1方向Xにおけるピッチ(間隔)よりも小さく設定すると、スペーサ14の長手方向110に沿って応力を低減できず、好ましくない。この場合は、ライン状の固定部材を、その長手方向をスペーサの長手方向110と直交する方向に沿って設けた場合と同様になる。
【0048】
次に上述した固定部材103の第1の変形例を図6(A)、図6(B)を用いて説明する。図6(A)は図2(A)と同様、本変形例の表示パネルの背面側の斜視図である。図6(B)は、図1と同様、本変形例の表示パネルの、背面側から見た、分解図である。尚、本変形例の画像表示装置の、鉛直方向に沿った、断面図は図2(B)と同様であるので省略する。
【0049】
第1の変形例としては、図6(A)に示す様に、板状部材406と突起部407とから構成されるユニット410を、多数、ライン状に並べて、2つの固定部材403(403A、403B)を構成することができる。各々のユニット410は板状部材406とその上に固定された突起部407とを備えている。複数のユニットは、板状スペーサ14の長手方向110に沿って、互いに所定距離だけ離れる(離間する)ように、且つ、複数のライン状に配列されるように、真空容器10の裏面に接着固定される。その他の点については、図1、図2(A)、図2(B)を用いて説明した例と同様である。従って、第1の変形例は、図1、図2で示した固定部材103を構成していた幅が狭い部分208を取り除いた構成(幅が広い部分206と狭い部分208とが連続していない構成)に相当する。
【0050】
上記した変形例においても、真空容器10内のスペーサ14の変形やスペーサ14が当接する部分(スペーサ当接層40)に発生するせん断応力を低減できる。本発明における固定部材は、従来、真空容器の裏面に設けられていた補強フレームのような真空容器の補強のための部材としての機能は実施的に備えてない。真空容器10の剛性、特に面方向におけるねじりの剛性については、前面板102が、その役割を担っている。そのため、本発明の表示パネルおよび画像表示装置では、真空容器10の裏面に従来設けていた複雑で重厚な補強フレームのような部材を設けずに済む。
【0051】
次に上述した固定部材103の第2の変形例を図5(A)、図5(B)を用いて説明する。図5(A)は、図1と同様、表示パネルの、背面側から見た、分解図である。図5(B)は図2(B)と同様、画像表示装置の、鉛直方向に沿った、断面模式図である。尚、本変形例の表示パネルの背面側の斜視図は図2(A)と同様であるので省略する。図1、図2(A)、図2(B)では、接着部材122に中空部(開孔)211を設けた例を説明した。しかしながら、図5(A)、図5(B)に示すように、開孔211内に、接着部材122とは異なる材料からなる部材311を設けることもできる。この場合、部材311の材料は、接着部材122よりもヤング率を低い材料とすることが望ましい。部材311は、各々の開孔211を充填するように設けることができるが、各々の開孔211を埋める形態だけでなく、部材311がその一部に気泡のような空間を有する形態とすることもできる。また、一部の開孔211のみを部材311によって埋める形態とすることもできる。また、部材311は、突起部307と幅が広い部分306と幅が狭い部分308とを備える固定部材303を、表示パネル10に接着する、接着部材としての機能を有することが、固定部材303の安定な固定を実現する上で望ましい態様である。部材311は、実用的には、接着部材211のヤング率の10分の1以下のヤング率を備えることが望ましい。また、この形態においても、固定部材303は、上述した第1の変形例のように、固定部材303を構成する幅が狭い部分308を取り除いた構成とすることもできる。
【実施例】
【0052】
以下、具体的な実施例について説明する。
まず、下記実施例1及び2に係る画像表示装置に共通する事項について説明する。実施例1および2において、真空容器10を構成する前面基板11の表面(大気側の面)に前面板102が接着部材121を用いて接着固定されている。また、真空容器10を構成する背面基板12の表面(大気側の面)に固定部材(103、403)が接着部材122を介して接着固定されている。真空容器10の詳細は、基本的に、図7、図8を用いて説明したものと同じである。画像表示領域は対角55インチとした。また電子放出素子18として表面伝導型電子放出素子を用いた。電子放出素子18は、銀粒子を含有する導電性ペーストを焼成して形成した走査配線と信号配線のそれぞれに接続している。前面基板11と背面基板12の厚みは1.8mmとし、前面基板11と背面基板12との間隔を1.6mmとした。
【0053】
扁平で矩形状の真空容器10は真空中で封着され、その内部は1.0×10−5Paに保たれている。側壁13はガラスからなり、接着部材23としてインジウムを用いた。前面基板11と背面基板12との接合は、真空チャンバー内で、接合部材を局所的に加熱しながら、背面基板12を前面基板11側に押しつけることによって行った。そして、また、複数の細長い板状のスペーサ14は、扁平で矩形状の真空容器10の長手方向(”第1方向X”又は”水平方向”)と同じ方向に長手方向110を有する。複数の細長い板状のスペーサ14は、真空容器10の長手方向と直交する方向(”第2方向Y”または”鉛直方向”)に、15mmの間隔を置いて、配置されている。スペーサ14はガラスからなり、その厚みは200μmとした。スペーサ14は走査配線上に設け、その長手方向の両端部を背面基板12に無機接着剤(東亞合成製のアロンセラミックD)によって固定した。また、前面板102の長手方向と真空容器10の長手方向及び板状のスペーサ14の長手方向110を平行になるように配置している。また、前面板102は、前面基板11及び背面基板12と同じガラス板であり、真空容器10の画像表示領域より大きい。実施例では、前面板102の厚みは2.5mmとした。その大きさは前面基板11と同じとしたが、ガラスであれば厚みは実用上1.5mmから3.5mmの範囲であればよい。接着部材121はアクリル系のUV硬化樹脂接着剤を使用した。そして、前面板102の前面基板11に対向する面の全面にアクリル系のUV硬化樹脂接着剤を塗布し、その厚みは0.5mmとしたが、実用上厚みは0.1mmから1mmの範囲であればよい。アクリル系のUV硬化樹脂はヤング率1〜10MPaで、破断伸びが100%以上のものを使用する。このような前面板102と接着部材121との組み合わせによるメリットとして、画像表示部における、外光の反射や写り込みを防止できる。
【0054】
接着部材122としては接着剤や両面テープなどが考えられるが、接着剤としてはシリコーン系の弾性を有する樹脂接着剤を用いることができ、両面テープとしてはアクリル基材の両面テープを用いることができる。実施例では、シリコーン系の弾性を有する樹脂接着剤を用いた。シリコーン樹脂接着剤はヤング率1〜10MPaで、破断伸びが100%以上のものを使用する。シリコーン樹脂接着剤は、固定部材103の背面基板12に対向する面の所定の面に塗布され、厚みを1mmとしたが、実用上、厚みは0.1〜2mmの範囲であればよい。
【0055】
<実施例1>
本実施例で用いた固定部材103は、図2に示した構成を備える。図2(A)は、本実施例における表示パネルの背面側の斜視図である。図2(B)は、図2(A)の真空容器10を用いた画像表示装置の、図2(A)の一点鎖線B−B’に相当する断面における、断面模式図である。尚、図2(A)では一点鎖線A−A’が固定部材の突起部207を通っていないが、図2(B)では、一点鎖線C−C’が突起部207を通っている場合について図示している。本実施例で用いた固定部材103は、図1、図2に示した構成を備える。2本のライン状の固定部材(103A、103B)を、互いに離間して、真空容器10を構成する背面基板12の裏面に接着部材122によって接着した。それぞれの固定部材(103A、103B)は、複数の幅が広い部分206と複数の幅が狭い部分208とが交互に設けられて構成された板状部材と、幅が広い部分206のそれぞれの上に固着された複数の突起部207と、により形成される。板状部材はプレス加工により成型した。突起部207は、支持体108に真空容器10を固定し真空容器を支持する為の支持点としての機能を持たせる為に、メネジ加工を施した。本実施例では、突起部207はヘッダー加工により形成した。板状部材と突起部207の固定は、板状部材と接する箇所における突起部207に対し、ローレット加工及び溝加工を施し、裏面からの圧入カシメを実施した。
【0056】
固定部材103の形状は、幅が広い部分206は縦60mm×横60mmであり、幅が狭い部分208は縦10mm×横140mmとした。また、固定部材103の厚みは2mmとした。ここでは厚みを2mmに設定したが、材質が金属や合金であれば、実用上は1mm以上30mm未満とすることが好ましく、10mm未満とすることがより好ましい。また、固定部材103の材料としては、亜鉛メッキ鋼板を用いた。また、1つの幅が広い部分206の中央部に1つの突起部207を固定した。尚、ここでは、突起部207は、その頂部(背面基板12の裏面から最も離れた部分)の背面基板12の裏面からの高さが25mmとした。実用的には、回路基板の配置などを考慮して、突起部207の背面基板12の裏面からの高さは、5mm以上30mm未満であればよい。突起部207の材料としては、ステンレス鋼を用いた。また突起部207(支持点)の水平方向ピッチは200mmとした。2本の固定部材(103A、103B)は、間隔を空けて、真空容器10の裏面(背面基板12の大気側の面)上に設けた。そして、固定部材103にネジ留めにより支持体108を固定した。尚、本実施例では、2つの固定部材(103A、103B)を用いたが、固定部材の数は2つ以上であることができる。また、本実施例では、突起部207(支持点)の鉛直方向ピッチは420mmとしたが、実用上400〜430mmの範囲であれば良い。真空容器10に対する固定部材103の位置は、真空容器10の画像表示領域(又は背面基板12)の水平方向(板状スペーサ14の長手方向110)の中心線を対称軸として、一方の固定部材103Aが他方の固定部材103Bに対して線対称な関係を満たす。また、それぞれの固定部材(103A、103B)は、画像表示領域(又は背面基板12)の鉛直方向の中心線を対称軸として、線対称な関係(画像表示領域の鉛直方向の中心線で折り返した形状)となるように配置した。突起部207はφ16mmの円柱形状とした。尚、突起部207の形状としては円柱型ではなく、四角柱型、多角柱型でもよい。これらの寸法は、真空容器10の剛性、前面板102の剛性、接着部材121の機械的特性、接着部材122の機械的特性、また複数の固定部材103の剛性により変化させ、適正値を導き出す事ができる。
【0057】
接着部材122の形状は、固定部材103と同じ形状になるように、幅が広い部分206の直下では縦60mm×横60mmとし、幅が狭い部分208の直下では縦10mm×横140mmとした。また、中空部211の形状を突起部207の外形面積以上になる縦40mm×横40mmとなるようにした。即ち、接着部材122の幅が広い部分206の直下は、幅10mm、縦60mm×横60mmの口の字形状で、厚みは0.5mmとした。このような形状にすることにより、真空容器10の前面基板11の応力が40%低減することを確認した。尚、中空形状211は四角形という限定はなく、円形、多角形でもよい。これらの寸法は、真空容器10の剛性および重量、前面板102の剛性および重量、接着部材121の機械的特性、接着部材122の機械的特性、また複数の固定部材103の剛性により変化させ、適正値を導き出す事ができる。
【0058】
前面板102が接着部材121によって接着された真空容器10が、複数の固定部材103を介して、支持体108に支持されたことによる効果を確認するために、20cmの高さからの落下衝撃試験および振動試験を行った。尚、その際に、直接的な衝撃および振動が支持体108に加わるようにして行った(衝撃および振動が、真空容器10に対して支持体108(固定部材103)を介して加わるようにした)。その結果、真空容器10の割れが無い事、また真空容器10の割れ応力より低い応力発生であることを確認した。
【0059】
また、真空容器に発生する応力は、支持点となる突起部207の数を増加させる事により、下げる事が可能となる。また、上記した落下衝撃試験を行った後に、画像表示装置として、画像を表示させたところ放電現象は確認されず、長期に渡って安定な表示画像を得ることができた。また、真空容器10を解体したところ、スペーサ14自体の破損はなく、スペーサ14によって、メタルバック20やスペーサ当接層40が破砕された痕跡は見られなかった。
【0060】
また、複数の固定部材103を上記した形状とする事により、電気回路基板の実装面を平らにすることができ、支持体108と背面基板12との間に従来のような補強フレームの位置をほとんど考慮せずに電気回路を好ましい位置に配置することができた。そのため、電気回路の設計上の制約を減らすことができた。設計上の制約としては、突起部207との干渉を回避することが挙げられる。しかし、突起部207の形状に応じて、回路基板または回路基板を固定した基板の一部に穴を空けるか、突起部207が無い箇所に回路基板を配置する事により、設計上の制約が小さくすることができた。また、従来と同程度の表示パネルの強度を得るために従来必要であった補強フレームなどの支持部材に比べて、表示パネルの大幅な重量削減、費用削減効果が得られた。
【0061】
尚、比較例として、本実施例1の2つの固定部材と接着部材122を90°回転させて(鉛直方向に沿うように配置して)、真空容器10を構成する背面基板12の裏面に設けた。そして、実施例1と同様の落下衝撃試験を行ったところ、スペーサ14による、スペーサ当接層40の一部の破砕が確認された。また、一部のスペーサにも破損が確認された。尚、鉛直方向とは、板状スペーサ14の長手方向110と直交する方向である。
【0062】
<実施例2>
本実施例は、接着部材の構成が実施例1とは異なる構成となっている。以下では、実施例1と異なる点についてのみ説明する。本実施例での接着部材は、図5に示すように、実施例1の接着部材122とは異なる機械的特性を有する接着部材311を、実施例1の接着部材122の中空部211に充填して構成している。機械的特性とは、ここでは、具体的には、ヤング率を指しており、接着部材311のヤング率は1MPa、接着部材122のヤング率は10MPaである。また、接着部材311は突起部307の外形面積以上の面積となる、縦40mm×横40mmの正方形とした。尚、前記接着部材311は四角形という限定はなく、円形、多角形でもよい。また、接着部材122と接着部材311の厚みは0.5mmとした。
【0063】
固定部材(303A、303B)を構成する、板状部材(306、308)と突起部307は、実施例1の板状部材(206、208)と突起部207と同様に形成する。また、それらの形状及び突起部間のピッチ、板状部材と突起部307の固定方法も実施例1と同様とした。実施例1と同様の落下衝撃試験を行ったところ、本実施例においても、実施例1と同様、スペーサの破損や、メタルバック20やスペーサ当接層40が破砕された痕跡は見られなかった。
【0064】
<実施例3>
本実施例で用いた2つの固定部材(403A、403B)は、図6に示した構成を備える。以下では、実施例1と異なる点についてのみ説明する。図6(A)は、本実施例における真空容器10の背面側の斜視図である。図6(B)は、図6(A)の真空容器10を用いた画像表示装置の、図6(A)における鉛直方向に沿った断面(一点鎖線C−C’に相当する断面)における、断面模式図である。尚、図6(A)では一点鎖線C−C’が固定部材を通っていないが、図6(B)では、一点鎖線C−C’が固定部材と交差している場合について図示している。各々が板状部材406と突起部407とから構成される複数のユニット410を、2列(各列が水平方向に平行)に並べることによって、2つの固定部材(403A、403B)を構成している。
【0065】
本実施例は、実施例1と比較して、幅が狭い部分208が省かれた構成(幅が広い部分206と狭い部分208とが連続していない構成)に相当する。従って、本実施例における板状部材406が、実施例1における幅が広い部分206に相当し、板状部材406は、縦60mm×横60mmである。そして、本実施例における突起部407は実施例1における突起部207に相当する。各々の板状部材406の中央部に1つの突起部407が固定されて、ユニット410が構成されている。本実施例では、突起部207の水平方向のピッチが150mmとなるように、7個のユニット410を水平方向(スペーサ14の長手方向110)に一列に並べることによって、1つの固定部材403を構成した。そして、2つの固定部材403が鉛直方向(スペーサ14の長手方向110に直交する方向)に離間するように、真空容器10の背面(背面基板12の大気側の面)上に、中空部411を設けた接着部材122によって接着されている。中空部411は、実施例1と同様に、突起部407の外形面積以上に設定されている。尚、各ユニットを構成する突起部207(支持点)の鉛直方向のピッチが420mmとなるように各ユニットを接着した。尚、1つの固定部材(403Aまたは403B)を構成するユニット410の数は7個に限定されるものではないが、各列(1つの固定部材)を構成するユニット410の数は等しくすることが好ましい。
【0066】
固定部材(403A、403B)を構成する、板状部材406(実施例1における幅が広い部分206)と突起部407(実施例1における突起部207)は、実施例1と同様に形成する。また、形状及び支持点のピッチ、板状部材406と突起部407の固定方法も実施例1と同様とした。実施例1と同様の落下衝撃試験を行ったところ、本実施例においても、スペーサの破損や、メタルバック20やスペーサ当接層40が破砕された痕跡は見られなかった。
【0067】
固定部材を本実施例の構成にする事により、実施例1における幅が狭い部分208を省く事ができ、更に表示パネルの重量削減、費用削減効果が得られる。
【0068】
以上述べたように、本発明により、画像表示装置に落下衝撃などの大きな衝撃が入力された場合においても、スペーサの変形やスペーサ当接部のせん断応力を低減でき、放電の発生を抑制し、安定した良好な表示画像を得ることができた。また、画像表示装置の薄型、軽量化、低コスト化を実現できた。
【符号の説明】
【0069】
10 真空容器
11 前面基板
12 背面基板
14 スペーサ
102 前面板
103 固定部材
108 支持体
122 接着部材
207 突起部
211 中空部(開孔部)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
前面板が接着された前面基板と、該前面基板と対向する面を備える背面基板と、前記前面基板と前記背面基板との間に、互いの長手方向が平行になるように設けられた複数の板状のスペーサと、を備える真空容器と、
前記背面基板の前記前面基板と対向する面とは反対側の面に接着された、複数のライン状の固定部材と、
を少なくとも備える表示パネルであって、
前記複数のライン状の固定部材の各々は、互いに所定の間隔を置いて、且つ、前記複数のスペーサの前記長手方向に沿うように、前記背面基板に接着部材によって接着されており、
前記複数のライン状の固定部材の各々は、前記背面基板に接着部材によって接着された板状部材と、該板状部材の、前記背面基板とは反対側の表面に設けられた複数の突起部とを備えており、
前記接着部材は、前記板状部材と前記背面基板との間に開孔を備えることを特徴とする表示パネル。
【請求項2】
前記開孔は、前記突起部の直下に位置していることを特徴とする請求項1に記載の表示パネル。
【請求項3】
前記開孔の内部に、前記接着部材よりもヤング率の低い材料が配置されることを特徴とする請求項2に記載の表示パネル。
【請求項4】
前記板状部材は、幅が広い部分と幅が狭い部分とを、前記複数のスペーサの該長手方向に沿うように交互に且つ複数、備えており、前記複数の突起部は、前記幅が広い部分に設けられていることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の表示パネル。
【請求項5】
前記幅が広い部分と幅が狭い部分とが連続していることを特徴とする請求項4に記載の表示パネル。
【請求項6】
前面板が接着された前面基板と、該前面基板と対向する面を備える背面基板と、前記前面基板と前記背面基板との間に、互いの長手方向が平行になるように設けられた複数の板状のスペーサと、を備える真空容器と、
前記背面基板の前記前面基板と対向する面とは反対側の面に接着された、複数のライン状の固定部材と、
該真空容器を該固定部材を介して支持する支持体と、
を少なくとも備える画像表示装置であって、
前記複数のライン状の固定部材の各々は、互いに所定の間隔を置いて、且つ、前記複数のスペーサの前記長手方向に沿うように、前記背面基板に接着部材によって接着されており、
前記複数のライン状の固定部材の各々は、前記背面基板に接着部材によって接着された板状部材と、該板状部材の、前記背面基板とは反対側の表面に設けられ、且つ、各々が前記支持体に固定される、複数の突起部と、を備えており、
前記接着部材は、前記板状部材と前記背面基板との間に開孔を備えることを特徴とする画像表示装置。
【請求項7】
前記開孔は、前記突起部の直下に位置していることを特徴とする請求項6に記載の画像表示装置。
【請求項8】
前記開孔の内部に、前記接着部材よりもヤング率の低い材料が配置されることを特徴とする請求項7に記載の画像表示装置。
【請求項9】
前記板状部材は、幅が広い部分と幅が狭い部分とを、前記複数のスペーサの該長手方向に沿うように交互に且つ複数、備えており、前記複数の突起部は、前記幅が広い部分に設けられていることを特徴とする請求項6乃至8のいずれか1項に記載の画像表示装置。
【請求項10】
前記幅が広い部分と幅が狭い部分とが連続していることを特徴とする請求項9に記載の画像表示装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2011−119033(P2011−119033A)
【公開日】平成23年6月16日(2011.6.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−272574(P2009−272574)
【出願日】平成21年11月30日(2009.11.30)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】