表示体及び表示体付き物品
【課題】偽造防止効果が高い表示体及び表示体付き物品を提供する。
【解決手段】本発明に係る表示体は、一方の主面に、複数の凹部又は凸部が設けられ且つ白色光で照明した際に指向性散乱光を射出するように構成された第1領域を備えたレリーフ層と、前記レリーフ層の何れか一方の主面の少なくとも一部と向き合っているか、又は、前記レリーフ層と面内方向に隣り合った印刷層とを具備している。この表示体は、前記表示体の前面側から白色光で照明した際に前記散乱光に対応した色を表示する第1表示部と、前記表示体の前面側から白色光で照明した際に前記印刷層に起因した色を表示する第2表示部とを備えている。前記第1表示部と前記第2表示部とは潜像を形成しており、前記表示体の法線方向に対する観察角度又は照明角度を変化させることにより前記潜像が可視化される。
【解決手段】本発明に係る表示体は、一方の主面に、複数の凹部又は凸部が設けられ且つ白色光で照明した際に指向性散乱光を射出するように構成された第1領域を備えたレリーフ層と、前記レリーフ層の何れか一方の主面の少なくとも一部と向き合っているか、又は、前記レリーフ層と面内方向に隣り合った印刷層とを具備している。この表示体は、前記表示体の前面側から白色光で照明した際に前記散乱光に対応した色を表示する第1表示部と、前記表示体の前面側から白色光で照明した際に前記印刷層に起因した色を表示する第2表示部とを備えている。前記第1表示部と前記第2表示部とは潜像を形成しており、前記表示体の法線方向に対する観察角度又は照明角度を変化させることにより前記潜像が可視化される。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、表示体及び表示体付き物品に関する。
【背景技術】
【0002】
キャッシュカード、クレジットカード及びパスポートなどの認証物品並びに商品券及び株券などの有価証券には、偽造が困難であることが望まれる。そのため、従来から、そのような物品には、その偽造を抑止すべく、偽造又は模造が困難であると共に、偽造品や模造品との区別が容易なラベルが貼り付けられている。
【0003】
また、近年では、認証物品及び有価証券以外の物品についても、偽造品の流通が問題視されている。そのため、このような物品に、認証物品及び有価証券に関して上述した偽造防止技術を適用する機会が増えている。
【0004】
特許文献1には、光散乱パターンおよび回折格子パターンから成るディスプレイが記載されている。このディスプレイでは、表面の微細な凹凸により形成される光散乱パターンと回折格子パターンとが画素毎に分割され、双方のパターンが白色に光って見えるようになっている。
【0005】
この表示体は、回折光を利用して画像を表示するため、印刷技術や電子写真技術を利用した偽造等は不可能である。したがって、この表示体を真偽判定用のラベルとして物品に取り付ければ、このラベルが表示する画像を見てその物品が真正品であることを確認することができる。それゆえ、このラベルを取り付けた物品は、このラベルを取り付けていない物品と比較して偽造され難い。
【0006】
しかしながら、このような表示体の偽造防止効果には、更なる改善の余地がある。なお、ここでは、偽造又は模造が困難であること、及び、偽造品又は模造品との区別が容易であることを「偽造防止効果」と呼ぶ。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2007−219551号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は、偽造防止効果が高い表示体及び表示体付き物品を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の第1側面によると、一方の主面に、複数の凹部又は凸部が設けられ且つ白色光で照明した際に指向性散乱光を射出するように構成された第1領域を備えたレリーフ層と、前記レリーフ層の何れか一方の主面の少なくとも一部と向き合っているか、又は、前記レリーフ層と面内方向に隣り合った印刷層とを具備した表示体であって、前記表示体の前面側から白色光で照明した際に前記散乱光に対応した色を表示する第1表示部と、前記表示体の前面側から白色光で照明した際に前記印刷層に起因した色を表示する第2表示部とを備え、前記第1表示部と前記第2表示部とは潜像を形成しており、前記表示体の法線方向に対する観察角度又は照明角度を変化させることにより前記潜像が可視化される表示体が提供される。
【0010】
本発明の第2側面によると、第1側面に係る表示体と、前記表示体を支持した物品とを具備した表示体付き物品が提供される。
【発明の効果】
【0011】
本発明によると、偽造防止効果が高い表示体及び表示体付き物品を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の一態様に係る表示体の一例を示す平面図。
【図2】図1に示す表示体のII−II線に沿った断面図。
【図3】第1領域の構成例を概略的に示す平面図。
【図4】表示体と照明光源と観察者との位置関係を示す概略図。
【図5】図1及び図2に示す表示体を他の照明角度から照明した場合に観察される像の一例を示す平面図。
【図6】図1及び図2に示す表示体を他の観察角度から観察した場合に観察される像の一例を示す斜視図。
【図7】一変形例に係る表示体を概略的に示す断面図。
【図8】他の変形例に係る表示体を概略的に示す断面図。
【図9】他の変形例に係る表示体を概略的に示す断面図。
【図10】他の変形例に係る表示体を概略的に示す断面図。
【図11】表示体付き物品の一例を概略的に示す平面図。
【図12】入射角と相対散乱光強度との関係の一例を示すグラフ。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の態様について、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、同様又は類似した機能を発揮する構成要素には全ての図面を通じて同一の参照符号を付し、重複する説明は省略する。
【0014】
図1は、本発明の一態様に係る表示体の一例を示す平面図である。図2は、図1に示す表示体のII−II線に沿った断面図である。図1及び図2では、表示体100の主面に平行であり且つ互いに直交する方向をX方向及びY方向とし、表示体100の主面に垂直な方向をZ方向としている。
【0015】
図1及び図2に示す表示体100は、基材10と、レリーフ層20と、反射層30と、第1印刷層40Aと、第2印刷層40Bと、保護層50とを含んでいる。図1及び図2には、一例として、印刷層40A及び40Bがレリーフ層20に対して前面側に位置している場合を描いている。
【0016】
図1及び図2に示す表示体100は、第1表示部DP1と第2表示部DP2とを含んでいる。第1表示部DP1は、レリーフ層20のうち後述する第1領域R1に対応した部分と、第2印刷層40Bとを含んでいる。第2表示部DP2は、レリーフ層20のうち後述する第2領域R2に対応した部分と、第1印刷層40Aとを含んでいる。
【0017】
第1表示部DP1は、白色光で照明すると、第1領域R1から射出される指向性散乱光に対応した色を表示する。第2表示部DP2は、白色光で照明すると、第1印刷層40Aに起因した色を表示する。第1表示部DP1と第2表示部DP2とは、後で詳しく説明するように、潜像を形成している。
【0018】
以下、図1及び図2に示す表示体100が含んでいる各構成要素について、その概要を説明する。
基材10としては、例えば、可視光透過性を有する樹脂からなるフィルム又はシートを用いる。この樹脂としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリカーボネート(PC)、及びトリアセチルセルロース(TAC)が挙げられる。また、基材10として、ガラスなどの無機材料を用いてもよい。
【0019】
図1及び図2に示す表示体100では、基材10は、レリーフ層20及び第1印刷層40Aの前面側に位置している。この場合、基材10としては、可視光領域の光に対して透明なものを用いることが好ましい。典型的には、基材10として、無色且つ透明なものを用いる。
【0020】
基材10は、単層構造を有していてもよく、多層構造を有していてもよい。また、この基材10は、反射防止処理、低反射防止処理、ハードコート処理、帯電防止処理及び防汚処理などの処理を施したものであってもよい。基材10は、省略してもよい。
【0021】
レリーフ層20は、基材10の一方の主面の少なくとも一部と向き合っている。レリーフ層20の基材10と反対側の主面は、第1領域R1と第2領域R2とを備えている。領域R1及びR2は、それぞれ、表示部DP1及びDP2を構成している。
【0022】
第1領域R1は、複数の凹部又は凸部を含んでおり、白色光で照明した際に指向性散乱光を射出するように構成されている。即ち、第1領域R1には、白色光で照明した際に指向性散乱光を射出するように構成された複数の凹部又は凸部が設けられている。第1領域R1の構成例については、後で詳しく説明する。
第2領域R2は、平坦面からなる。第2領域R2は、省略してもよい。
【0023】
レリーフ層20の材料としては、例えば、可視光透過性を有する樹脂を使用することができる。特には、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂又は光硬化性樹脂を使用すると、原版を用いた転写により、上記の複数の凹部又は凸部を容易に形成することができる。なお、基材10の材料とレリーフ層20の材料とは、互いに同一であってもよく、互いに異なっていてもよい。
【0024】
反射層30は、レリーフ層20の主面のうち、第1領域R1の少なくとも一部を被覆している。典型的には、反射層30は、レリーフ層20の主面のうち、第1領域R1の全体を被覆している。図1及び図2には、一例として、反射層30が領域R1及びR2の双方を被覆している場合を描いている。
【0025】
反射層30は、レリーフ層20のうち第1領域R1に対応した部分とは、屈折率が異なっている。この反射層30を設けることにより、第1領域R1を含んだ界面における反射率を増大させることができる。それゆえ、これにより、第1領域R1から射出される散乱光の視認性を向上させることができる。また、反射層30を設けることにより、第1領域R1に設けられた複数の凹部又は凸部の損傷を生じ難くすることも可能となる。
【0026】
反射層30の材料としては、例えば、Al及びAgなどの金属材料を用いることができる。或いは、反射層30の材料として、レリーフ層20とは屈折率が異なった誘電体からなる透明材料を用いてもよい。反射層30は、単層構造を有していてもよく、多層構造を有していてもよい。
【0027】
このような反射層30は、例えば、蒸着及びスパッタリングなどの薄膜形成技術により形成することができる。また、反射層30の存在する領域を空間的に分布させることにより、この反射層30の分布を用いて、図柄を表現することもできる。なお、反射層30は、省略してもよい。
【0028】
印刷層40A及び40Bは、基材10とレリーフ層20との間に介在している。印刷層40A及び40Bは、それぞれ、表示部DP2及びDP1を構成している。
【0029】
第1印刷層40Aは、特定の観察条件において、第1表示部DP1と第2表示部DP2とが互いに同一の色を表示するように構成する。例えば、この特定の観察条件として、表示体100を正面から照明し且つ正面から観察する条件を考える。この条件下において、第1表示部DP1が特定の色相、明度及び彩度の色を表示する場合、印刷層40Aとしては、例えば、上記の条件において、第2表示部DP2が、ほぼ同一の色相、明度及び彩度の色を表示するような構成を採用する。
【0030】
第2印刷層40Bとしては、領域R1から射出される散乱光に悪影響を与えない構成を採用する。例えば、印刷層40Bは、無色且つ透明とする。或いは、印刷層40Bは、省略してもよい。
【0031】
印刷層40A及び40Bの各々は、例えば、インキを用いて形成する。このインキとしては、印刷方式に応じて、オフセットインキ、活版インキ及びグラビアインキなどを用いることができる。このようなインキとしては、組成の違いに応じて、例えば、樹脂インキ、油性インキ及び水性インキが挙げられる。また、乾燥方式の違いに応じて、例えば、酸化重合型インキ、浸透乾燥型インキ、蒸発乾燥型インキ及び紫外線硬化型インキが挙げられる。
【0032】
また、このインキとして、照明角度又は観察角度に応じて色が変化する機能性インキを使用してもよい。このような機能性インキとしては、例えば、光学的変化インキ(Optical Variable Ink)、カラーシフトインキ及びパールインキが挙げられる。第1印刷層40Aの材料として機能性インキを採用した場合の付随的な効果については、後で詳しく説明する。
【0033】
或いは、印刷層40A及び40Bの各々は、トナーを用いて形成してもよい。この場合、例えば、帯電性を持ったプラスチック粒子に黒鉛及び顔料等の色粒子を付着させたトナーを準備する。そして、帯電による静電気を利用して、トナーを基材に転写させ、これを加熱し定着させることで印刷層を形成する。
【0034】
保護層50は、反射層30を間に挟んで、レリーフ層20と向き合っている。この保護層50は、第1領域R1に設けられた複数の凹部又は凸部を保護する役割を担っている。保護層50の材料としては、例えば、樹脂を使用する。保護層50は、省略してもよい。或いは、保護層50として、接着層又は粘着層を設けてもよい。
【0035】
次に、第1領域R1の構成例、及び、第1領域R1に起因した光学効果について説明する。
第1領域R1は、上述した通り、白色光で照明した際に指向性散乱光を射出するように構成されている。この第1領域R1が通常の照明条件下において射出する指向性散乱光は、典型的には、白色光である。したがって、第1表示部DP1は、典型的には、明度及び彩度の高い色(例えば白色又は薄灰色)を表示する。
なお、ここで「通常の照明条件」とは、例えば、室内で蛍光灯等の照明下、照明光源からの光が表示体100の前面に略垂直に入射し、観察者が目視によって表示体100を観察する条件、又は、室外で太陽光等の照明下、照明光源からの光が表示体100の前面に略垂直に入射し、観察者が目視によって表示体100を観察する条件を意味している。
【0036】
図3は、第1領域の構成例を概略的に示す平面図である。図3には、第1領域R1の一部を拡大して示している。図3では、複数の凹部又は凸部の各々を、線分として描いている。
【0037】
図3に示す例では、第1領域R1は、各々が直線状であり且つ面内で方向が揃った複数の凹部又は凸部を含んでいる。以下、第1領域R1の主面に平行な方向のうち、第1領域R1が最小の光散乱能を示す方向を「配向方向」と呼び、第1領域R1が最大の光散乱能を示す方向を「光散乱方向」と呼ぶ。図3に示す例では、配向方向はX軸に平行であり、光散乱方向はY軸に平行である。
【0038】
第1領域R1は、光散乱能について、異方性を有している。例えば、第1領域R1を配向方向に垂直な斜め方向から照明して、第1領域R1を正面から観察する条件では、第1領域R1は、その高い光散乱能に起因して、比較的明るく見える。他方、第1領域R1を光散乱方向に垂直な斜め方向から照明して、第1領域R1を正面から観察する条件では、第1領域R1は、その低い光散乱能に起因して、比較的暗く見える。
【0039】
以上から明らかなように、例えば、第1領域R1を斜め方向から照明し且つこれを正面から観察する条件下、第1領域R1をその法線方向を軸として回転させると、その明度が次第に変化する。したがって、表示体100の第1表示部DP1は、その法線方向を軸として観察方向を回転させると、その明度が次第に変化する。即ち、表示体100の観察方向を法線方向を軸として回転させることにより、第1表示部DP1により表示される像を変化させることができる。
【0040】
第1表示部DP1の明度は、第1領域R1に設ける凹部又は凸部の構成により制御することができる。例えば、各凹部又は凸部の幅を大きくすると、配向方向に垂直な方向における光散乱能を低下させることができる。各凹部又は凸部の長さを大きくすると、光散乱方向に垂直な方向における光散乱能を低下させることができる。
【0041】
或いは、隣接する凹部又は凸部間の平均間隔を小さくすると、より多くの入射光を散乱させることができるため、光散乱能の異方性を劣化させることなしに、散乱光の強度を増大させることができる。特に、この平均間隔を10μm以下とすると、視認性に特に優れた像を表示することが可能となる。また、この平均間隔を10μm以下とすると、正反射光成分を減らし、光散乱効果を大きくすることが可能となる。
【0042】
また、複数の凹部又は凸部の配向秩序度を高くすると、第1領域R1の光散乱能の異方性をより高くすることができる。
【0043】
各凹部又は凸部の深さ又は高さは、例えば、100nm乃至400nmの範囲内とする。こうすると、成形プロセスを簡易にすることができ、光散乱効果も大きくすることが可能となる。
【0044】
第1領域R1において、複数の凹部又は凸部の各々は、ある程度規則的に配置されていてもよく、ランダムに配置されていてもよい。例えば、隣接する凹部又は凸部間の間隔をランダムにすると、配向方向に垂直な方向において観察角度を変化させた場合の散乱光の強度分布がなだらかになる。よって、こうすると、観察角度に応じた明度の変化を抑制することが可能となる。
【0045】
第1領域R1中に含まれる複数の凹部又は凸部の各々は、互いに同一の形状を有していてもよく、互いに異なった形状を有していてもよい。前者の場合、第1領域R1の光散乱能の設計が比較的容易である。また、このような第1領域R1は、電子線描画装置やステッパなどの微細加工装置を用いることで、高精度で且つ容易に形成することができる。他方、後者の場合、広い角度範囲に亘ってなだらかな光強度分布を有した散乱光が得られる。したがって、この場合、観察位置による明暗の変化が比較的小さい像を表示することが可能となる。
【0046】
なお、図3には、これら複数の凹部又は凸部の長手方向が互いに平行である場合を描いているが、これらは、互いに交差していてもよい。また、図3には、各凹部又は凸部が直線状である場合を描いているが、これらは、曲線状であってもよい。即ち、各凹部又は凸部は、湾曲した形状を有していてもよい。
【0047】
レリーフ層20の主面には、第1領域R1を2つ以上設けてもよい。この場合、例えば、複数の第1領域R1の間で、光散乱方向を異ならせてもよい。こうすると、特定の方向から観察する場合に、これら領域間に明度の差を生じさせることができる。このような構成を採用する場合には、光散乱方向の角度差を十分に大きくするか又は各々の光散乱能の異方性を十分に高くすることが好ましい。この場合、2つの領域間での光散乱方向の角度差は、例えば、30゜以上とすることが好ましい。
【0048】
次いで、第1表示部DP1と第2表示部DP2との組み合わせに基づいた光学効果について説明する。
上述した通り、表示体100の観察方向を法線方向を軸として回転させることにより、第1表示部DP1の明度を変化させることができる。他方、第2表示部DP2では、典型的には、このような変化を生じない。したがって、上記の観察方向の変化により、例えば、第1表示部DP1と第2表示部DP2とが形成している潜像を可視化することが可能となる。或いは、この観察方向の変化により、第1表示部DP1と第2表示部DP2との組み合わせにより表示される像の視認性を変化させることが可能となる。
【0049】
また、表示体100の法線方向に対する観察角度又は照明角度を変化させた場合にも、第1表示部DP1と第2表示部DP2とでは、互いに異なった変化が生じる。
【0050】
例えば、上述した第1領域R1の設計により、第1表示部DP1には、観察角度又は照明角度の変化に対する明度の変化が、第2表示部DP2と比較してより小さい構成を採用することができる。或いは、第1表示部DP1には、観察角度又は照明角度の変化に対する明度の変化が、第2表示部DP2と比較してより大きい構成を採用することもできる。
【0051】
したがって、表示体100では、上記の観察角度又は照明角度の変化により、例えば、第1表示部DP1と第2表示部DP2とが形成している潜像を可視化することが可能となる。以下、この点について、詳しく説明する。
【0052】
図4は、表示体と照明光源と観察者との位置関係を示す概略図である。図5は、図1及び図2に示す表示体を他の照明角度から照明した場合に観察される像の一例を示す平面図である。図6は、図1及び図2に示す表示体を他の観察角度から観察した場合に観察される像の一例を示す斜視図である。
【0053】
図4に示す例は、表示体100の前面側から、法線方向Nに対してθの入射角で、照明光源LSからの照明光ILを入射させている。そして、この例では、観察者OBは、表示体100を正面から観察している。
【0054】
図4に示す例において、照明光ILは、YZ平面内に位置している。即ち、図4に示す例では、第1表示部DP1から射出される指向性散乱光の強度が最大となる方向と法線方向Nとを含んだ平面内において、入射角θで、照明光ILを入射させている。なお、以下では、照明光ILは、白色光であるとする。
【0055】
まず、上記入射角θが0゜≦θ<20゜を満足している第1条件を考える。この条件では、図1に示すように、表示体100の第1表示部DP1と第2表示部DP2とは、互いに同一の色を表示する。即ち、この条件では、第1表示部DP1と第2表示部DP2とは、互いに識別できない。
【0056】
上記第1条件においては、第1表示部DP1と第2表示部DP2とで、射出する散乱光の強度の差が小さいことが好ましい。特に、上記第1条件においては、以下の関係が成立していることがより好ましい。
【数1】
【0057】
式中、R11は、上記第1条件において第1表示部DP1から射出される散乱光の強度を、同一条件において標準白色板から射出される散乱光の強度によって規格化した値を意味しており;R12は、上記第1条件において第2表示部DP2から射出される散乱光の強度を、同一条件において標準白色板から射出される散乱光の強度によって規格化した値を意味している。
【0058】
この場合、上記第1条件において、第1表示部DP1と第2表示部DP2との識別はより困難である。それゆえ、この場合、上記第1条件において、これら表示部の組み合わせによる像は、より視認され難い。
【0059】
上記の値|R11−R12|は、0.5未満であることがより好ましく、0.1未満であることが更に好ましい。こうすると、上記第1条件において、第1表示部DP1と第2表示部DP2との識別を更に困難とすることができる。
【0060】
また、値R11は、2.5以上であることが好ましく、3.5以上であることがより好ましい。このような構成を採用すると、第1表示部DP1の視認性を更に高くすることができる。
【0061】
次に、上記入射角θが30゜≦θ<70゜を満足している第2条件を考える。この条件では、図5に示すように、表示体100の第1表示部DP1と第2表示部DP2とは、互いに異なった色を表示する。即ち、この条件では、第1表示部DP1と第2表示部DP2とは、互いに識別することができる。
【0062】
上記第2条件においては、第1表示部DP1と第2表示部DP2とで、射出する散乱光の強度の差が大きいことが好ましい。特に、上記第2条件においては、以下の関係が成立していることがより好ましい。
【数2】
【0063】
式中、R21は、上記第2条件において第1表示部DP1から射出される散乱光の強度を、同一条件において標準白色板から射出される散乱光の強度によって規格化した値を意味しており;R22は、上記第2条件において第2表示部DP2から射出される散乱光の強度を、同一条件において標準白色板から射出される散乱光の強度によって規格化した値を意味している。
【0064】
この場合、上記第2条件において、第1表示部DP1と第2表示部DP2との識別はより容易である。それゆえ、この場合、上記第2条件において、これら表示部の組み合わせによる像は、より視認され易い。
【0065】
上記の値|R21−R22|は、0.5以上であることがより好ましく、1.5以上であることが更に好ましい。こうすると、上記第2条件において、第1表示部DP1と第2表示部DP2との識別を更に容易にすることができる。
【0066】
また、値R21は、2.5以上であることが好ましく、3.5以上であることがより好ましい。このような構成を採用すると、第1表示部DP1の視認性を高くすることができる。
【0067】
このように、図1及び図2に示す表示体100では、第1表示部DP1と第2表示部DP2とは、潜像を形成している。そして、この潜像は、表示体100の法線方向に対する照明角度を変化させることにより、可視化することができる。なお、図6に示すように、潜像の可視化は、表示体100の法線方向に対する観察角度を変化させることによっても達成できる。
【0068】
上述した潜像は、例えば、以下のようにして形成する。まず、第1領域R1に、特定の観察条件において特定の色を表示するように、複数の凹部又は凸部を形成する。例えば、特定の観察条件において、第1表示部DP1が特定の明度の白色を表示するようにする。次に、上記特定の観察条件において、第1表示部DP1と同じ色を表示するインキ又はトナーを用いて、第1印刷層40Aを形成する。例えば、上記特定の観察条件において、第2表示部DP2が、上記特定の明度の白色を表示するようにする。こうすると、上記の特定の観察条件において、第1表示部DP1と第2表示部DP2とを、互いから識別不可能とすることができる。
【0069】
上述した通り、第1表示部DP1は、第1領域R1が射出する散乱光に対応した色を表示する。また、第2表示部DP2は、第1印刷層40Aに対応した色を表示する。これら各表示部が表示する色は、表示体100の法線方向Nに対する照明角度又は観察角度に応じて、互いに異なった変化を示す。それゆえ、上記潜像は、表示体100の法線方向Nに対する照明角度又は観察角度を変化させることにより、可視化することができる。
【0070】
以上のような光学効果は、複写機等による複写によっては再現できない。また、第1領域R1の設計及び作製、並びに、それに対応した第1印刷層40Aの材料の選定を、表示体100を偽造しようとする者が自ら行うことは極めて困難である。加えて、上記の光学効果は、特殊な機器を使用することなしに、真偽判定が不慣れな観察者であっても、容易に認識することができる。それゆえ、図1及び図2に示す表示体100は、高い偽造防止効果を有している。
【0071】
次いで、第1印刷層40Aの少なくとも一部が、照明角度又は観察角度に応じて色が変化する機能性インキを用いて形成されている場合の付随的な効果について説明する。
【0072】
このような構成を採用した場合、表示体100は、照明角度又は観察角度に応じて、第1表示部DP1と第2表示部DP2との組み合わせによる像の変化と、機能性インキに基づいた第2表示部DP2の表示色の変化との双方を呈する。よって、この場合、表示体100を傾けて真偽判定を行う行為に不慣れな者であっても、容易に色変化を認識することができ、より確実に真偽判定を行うことができる。また、この場合、表示体100の偽造は、更に困難となる。
【0073】
特に、第1表示部DP1と第2表示部DP2との組み合わせによる潜像が可視化する角度と、機能性インキによって第2表示部DP2の色が変化する角度とを一致させると、双方の変化を、同時に観察させることができる。よって、この場合、更に確実な真偽判定を行うことが可能となる。
【0074】
以下、図1乃至図6を参照しながら説明した表示体100の変形例を説明する。
図7は、一変形例に係る表示体を概略的に示す断面図である。図7に示す表示体100は、印刷層40A及び40Bが、基材10を間に挟んでレリーフ層20と向き合っていることを除いては、図1及び図2に示す表示体と同様の構成を有している。
【0075】
図7に示す構成を採用した場合にも、図1乃至図6を参照しながら説明した光学効果を達成することができる。即ち、このような構成を採用した場合でも、優れた偽造防止効果を達成することができる。
【0076】
図8は、他の変形例に係る表示体を概略的に示す断面図である。図8に示す表示体100は、以下の点を除いては、図1及び図2に示す表示体と同様の構成を有している。
即ち、図8に示す表示体100では、レリーフ層20と第1印刷層40Aとは、面内方向で隣り合っている。また、第1領域R1は、レリーフ層20の一方の主面の全体を占めている。即ち、第2領域R2は、省略されている。加えて、第2印刷層40Bも、省略されている。
【0077】
図8に示す構成を採用した場合にも、図1乃至図6を参照しながら説明した光学効果を達成することができる。即ち、このような構成を採用した場合でも、優れた偽造防止効果を達成することができる。
【0078】
なお、図8では、レリーフ層20と第1印刷層40Aとが面内方向で隣接している場合を描いているが、これら層は、他の層を間に挟んで隣り合っていてもよい。即ち、これら層は、面内方向で隣り合い且つ互いに離間していてもよい。
【0079】
図9は、他の変形例に係る表示体を概略的に示す断面図である。図9に示す表示体100は、以下の点を除いては、図1及び図2に示す表示体と同様の構成を有している。
【0080】
即ち、図9に示す表示体100では、第1印刷層40Aは、レリーフ層20のうち第2領域R2に対応した部分を間に挟んで、基材10と向き合っている。また、反射層30は、レリーフ層20の主面のうち第1領域R1のみを被覆している。更には、第2印刷層40Bは、省略されている。
【0081】
図9に示す構成を採用した場合にも、図1乃至図6を参照しながら説明した光学効果を達成することができる。即ち、このような構成を採用した場合でも、優れた偽造防止効果を達成することができる。
【0082】
図10は、他の変形例に係る表示体を概略的に示す断面図である。図10に示す表示体100は、以下の点を除いては、図1及び図2に示す表示体と同様の構成を有している。
【0083】
即ち、図10に示す表示体100では、第1領域R1は、レリーフ層20の一方の主面の全体を占めている。また、第1印刷層40Aは、この第1領域R1の一部を被覆している。そして、反射層30は、第1領域R1の他の一部を被覆している。表示体100の第2表示部DP2では、レリーフ層20と第1印刷層40Aとは、屈折率が互いに等しい。
【0084】
このような構成を採用した場合、第1領域R1のうち第1印刷層40Aに被覆された部分は、白色光で照明しても、第1領域R1に起因した指向性散乱光を射出することができない。それゆえ、第2表示部DP2は、第1印刷層40Aに対応した色を表示する。
【0085】
したがって、図10に示す構成を採用した場合にも、図1乃至図6を参照しながら説明した光学効果を達成することができる。即ち、このような構成を採用した場合でも、優れた偽造防止効果を達成することができる。
【0086】
また、図10に示す構成を採用した場合、レリーフ層20の一方の主面に、第1領域R1をパターン状に形成する必要がない。それゆえ、このような構成を有した表示体100は、レリーフ層20の作製のための原版を用いることなしに、製造することができる。よって、このような構成は、少数製品を製造する場合に、特に有利である。
【0087】
図1乃至図10を参照しながら説明した表示体100において、第1領域R1は、セル単位で形成されていてもよい。これらセルを画素として配することで、容易に表示画像を規定することができる。その際、第1領域の各々における複数の凹部又は凸部の配置は、ランダムであることが好ましい。こうすると、より高い光散乱効果を実現できる。
【0088】
なお、第1領域R1をセル単位で形成する場合、セルの一辺の大きさを100μm程度とすることは十分に可能である。この場合、通常の観察条件における人間の目の分解能以下の細かさで像を表示することができる。すなわち、十分に高精細な像を表示できる。
【0089】
図1乃至図10を参照しながら説明した表示体100は、粘着ラベル及び転写箔などの一部として使用してもよい。また、表示体100は、印刷物などの表示体付き物品の一部として使用してもよい。
【0090】
図11は、表示体付き物品の一例を概略的に示す平面図である。図11には、表示体付き物品の一例として、印刷物200を描いている。この印刷物200は、磁気カードであって、基材201を含んでいる。基材201は、例えば、プラスチックからなる。
【0091】
基材200上には、印刷層202が形成されている。基材200の印刷層202が形成された面には、上述した表示体100が、例えば粘着層を介して固定されている。表示体100は、例えば、粘着ステッカとして又は転写箔として準備しておき、これを印刷層202に貼りつけることにより、基材200に固定する。
【0092】
この印刷物200は、上述した表示体100を含んでいる。それゆえ、この印刷物200は、偽造防止効果に優れている。この印刷物200は、表示体100に加えて、印刷層202を更に含んでいる。したがって、表示体100の光学効果を印刷層202のそれと比較することにより、表示体100の光学効果を際立たせることができる。
【0093】
図11には、表示体100を含んだ印刷物として磁気カードを例示しているが、表示体100を含んだ印刷物は、これに限られない。例えば、表示体100を含んだ印刷物は、IC(integrated circuit)カード、無線カード及びID(identification)カードなどの他のカードであってもよい。或いは、表示体100を含んだ印刷物は、商品券及び株券などの有価証券であってもよい。或いは、表示体100を含んだ印刷物は、真正品であることが確認されるべき物品に取り付けられるべきタグであってもよい。或いは、表示体100を含んだ印刷物は、真正品であることが確認されるべき物品を収容する包装体又はその一部であってもよい。
【0094】
また、図11に示す印刷物200では、表示体100を基材201に貼り付けているが、表示体100は、他の方法で基材に支持させることができる。例えば、基材として紙を使用した場合、表示体100を紙に漉き込み、表示体100に対応した位置で紙を開口させてもよい。或いは、基材として光透過性の材料を使用する場合、その内部に表示体100を埋め込んでもよく、基材の裏面、即ち表示面とは反対側の面に表示体100を固定してもよい。
【0095】
また、ラベル付き物品は、印刷物でなくてもよい。即ち、印刷層を含んでいない物品に表示体100を支持させてもよい。例えば、表示体100は、美術品などの高級品に支持させてもよい。
表示体100は、偽造防止以外の目的で使用してもよい。例えば、表示体100は、玩具、学習教材、及び装飾品などとしても利用することができる。
【実施例】
【0096】
まず、図8に示す構成を備えた表示体100を製造した。基材10としては、厚さ50μm程度のポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムを用いた。レリーフ層20の材料としては、厚さ3μm程度のUV硬化型樹脂を用いた。第1印刷層40Aの材料としては、厚さ3μm程度の白色インキを用いた。反射層30としては、蒸着法によって作製したアルミ層を用いた。保護層50としては、粘着層を用いた。
【0097】
この表示体100では、第1領域R1には、各々が直線状であり且つ複数の凹部又は凸部が形成されている。凹部又は凸部間の平均間隔は5μm以下であり、各凹部又は凸部の深さ又は高さは最大で200nm程度である。そして、凹部又は凸部は、指向性散乱構造を形成している。
【0098】
次に、この表示体100を、図4に示すように配置した。照明光源LSとしては、白色面光源を用いた。そして、観察者OBの位置に輝度計を配置し、光源入射角θを0°〜70°の間で変化させたときの相対散乱光強度の変化を測定した。その結果を図12に示す。
【0099】
図12は、入射角と相対散乱光強度との関係の一例を示すグラフである。図12に示すように、第1表示部DP1と第2表示部DP2とは、照明角度θが0゜以上20゜未満の範囲では、ほぼ同等の散乱光強度で白色光を散乱することが分かった。また、照明角度θが30゜を越えた辺りから、第1表示部DP1と第2表示部DP2の散乱光強度に差が生じていることが分かった。
【0100】
以上により、表示体100は、法線方向付近から観察すると、第1表示部DP1と第2表示部DP2との双方が白色又は白色に近い薄灰色に知覚されることが分かった。また、この表示体100は、法線方向から傾斜させて観察した際には、第1表示部DP1と第2表示部DP2との散乱光強度の差異に起因して、予め規定した画像を表示できることが分かった。
【符号の説明】
【0101】
10…基材、20…レリーフ層、30…反射層、40A…第1印刷層、40B…第2印刷層、50…保護層、100…表示体、200…印刷物、201…基材、202…印刷層、DP1…第1表示部、DP2…第2表示部、IL…照明光、LS…照明光源、N…法線、OB…観察者、R1…第1領域、R2…第2領域。
【技術分野】
【0001】
本発明は、表示体及び表示体付き物品に関する。
【背景技術】
【0002】
キャッシュカード、クレジットカード及びパスポートなどの認証物品並びに商品券及び株券などの有価証券には、偽造が困難であることが望まれる。そのため、従来から、そのような物品には、その偽造を抑止すべく、偽造又は模造が困難であると共に、偽造品や模造品との区別が容易なラベルが貼り付けられている。
【0003】
また、近年では、認証物品及び有価証券以外の物品についても、偽造品の流通が問題視されている。そのため、このような物品に、認証物品及び有価証券に関して上述した偽造防止技術を適用する機会が増えている。
【0004】
特許文献1には、光散乱パターンおよび回折格子パターンから成るディスプレイが記載されている。このディスプレイでは、表面の微細な凹凸により形成される光散乱パターンと回折格子パターンとが画素毎に分割され、双方のパターンが白色に光って見えるようになっている。
【0005】
この表示体は、回折光を利用して画像を表示するため、印刷技術や電子写真技術を利用した偽造等は不可能である。したがって、この表示体を真偽判定用のラベルとして物品に取り付ければ、このラベルが表示する画像を見てその物品が真正品であることを確認することができる。それゆえ、このラベルを取り付けた物品は、このラベルを取り付けていない物品と比較して偽造され難い。
【0006】
しかしながら、このような表示体の偽造防止効果には、更なる改善の余地がある。なお、ここでは、偽造又は模造が困難であること、及び、偽造品又は模造品との区別が容易であることを「偽造防止効果」と呼ぶ。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2007−219551号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は、偽造防止効果が高い表示体及び表示体付き物品を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の第1側面によると、一方の主面に、複数の凹部又は凸部が設けられ且つ白色光で照明した際に指向性散乱光を射出するように構成された第1領域を備えたレリーフ層と、前記レリーフ層の何れか一方の主面の少なくとも一部と向き合っているか、又は、前記レリーフ層と面内方向に隣り合った印刷層とを具備した表示体であって、前記表示体の前面側から白色光で照明した際に前記散乱光に対応した色を表示する第1表示部と、前記表示体の前面側から白色光で照明した際に前記印刷層に起因した色を表示する第2表示部とを備え、前記第1表示部と前記第2表示部とは潜像を形成しており、前記表示体の法線方向に対する観察角度又は照明角度を変化させることにより前記潜像が可視化される表示体が提供される。
【0010】
本発明の第2側面によると、第1側面に係る表示体と、前記表示体を支持した物品とを具備した表示体付き物品が提供される。
【発明の効果】
【0011】
本発明によると、偽造防止効果が高い表示体及び表示体付き物品を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の一態様に係る表示体の一例を示す平面図。
【図2】図1に示す表示体のII−II線に沿った断面図。
【図3】第1領域の構成例を概略的に示す平面図。
【図4】表示体と照明光源と観察者との位置関係を示す概略図。
【図5】図1及び図2に示す表示体を他の照明角度から照明した場合に観察される像の一例を示す平面図。
【図6】図1及び図2に示す表示体を他の観察角度から観察した場合に観察される像の一例を示す斜視図。
【図7】一変形例に係る表示体を概略的に示す断面図。
【図8】他の変形例に係る表示体を概略的に示す断面図。
【図9】他の変形例に係る表示体を概略的に示す断面図。
【図10】他の変形例に係る表示体を概略的に示す断面図。
【図11】表示体付き物品の一例を概略的に示す平面図。
【図12】入射角と相対散乱光強度との関係の一例を示すグラフ。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の態様について、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、同様又は類似した機能を発揮する構成要素には全ての図面を通じて同一の参照符号を付し、重複する説明は省略する。
【0014】
図1は、本発明の一態様に係る表示体の一例を示す平面図である。図2は、図1に示す表示体のII−II線に沿った断面図である。図1及び図2では、表示体100の主面に平行であり且つ互いに直交する方向をX方向及びY方向とし、表示体100の主面に垂直な方向をZ方向としている。
【0015】
図1及び図2に示す表示体100は、基材10と、レリーフ層20と、反射層30と、第1印刷層40Aと、第2印刷層40Bと、保護層50とを含んでいる。図1及び図2には、一例として、印刷層40A及び40Bがレリーフ層20に対して前面側に位置している場合を描いている。
【0016】
図1及び図2に示す表示体100は、第1表示部DP1と第2表示部DP2とを含んでいる。第1表示部DP1は、レリーフ層20のうち後述する第1領域R1に対応した部分と、第2印刷層40Bとを含んでいる。第2表示部DP2は、レリーフ層20のうち後述する第2領域R2に対応した部分と、第1印刷層40Aとを含んでいる。
【0017】
第1表示部DP1は、白色光で照明すると、第1領域R1から射出される指向性散乱光に対応した色を表示する。第2表示部DP2は、白色光で照明すると、第1印刷層40Aに起因した色を表示する。第1表示部DP1と第2表示部DP2とは、後で詳しく説明するように、潜像を形成している。
【0018】
以下、図1及び図2に示す表示体100が含んでいる各構成要素について、その概要を説明する。
基材10としては、例えば、可視光透過性を有する樹脂からなるフィルム又はシートを用いる。この樹脂としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリカーボネート(PC)、及びトリアセチルセルロース(TAC)が挙げられる。また、基材10として、ガラスなどの無機材料を用いてもよい。
【0019】
図1及び図2に示す表示体100では、基材10は、レリーフ層20及び第1印刷層40Aの前面側に位置している。この場合、基材10としては、可視光領域の光に対して透明なものを用いることが好ましい。典型的には、基材10として、無色且つ透明なものを用いる。
【0020】
基材10は、単層構造を有していてもよく、多層構造を有していてもよい。また、この基材10は、反射防止処理、低反射防止処理、ハードコート処理、帯電防止処理及び防汚処理などの処理を施したものであってもよい。基材10は、省略してもよい。
【0021】
レリーフ層20は、基材10の一方の主面の少なくとも一部と向き合っている。レリーフ層20の基材10と反対側の主面は、第1領域R1と第2領域R2とを備えている。領域R1及びR2は、それぞれ、表示部DP1及びDP2を構成している。
【0022】
第1領域R1は、複数の凹部又は凸部を含んでおり、白色光で照明した際に指向性散乱光を射出するように構成されている。即ち、第1領域R1には、白色光で照明した際に指向性散乱光を射出するように構成された複数の凹部又は凸部が設けられている。第1領域R1の構成例については、後で詳しく説明する。
第2領域R2は、平坦面からなる。第2領域R2は、省略してもよい。
【0023】
レリーフ層20の材料としては、例えば、可視光透過性を有する樹脂を使用することができる。特には、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂又は光硬化性樹脂を使用すると、原版を用いた転写により、上記の複数の凹部又は凸部を容易に形成することができる。なお、基材10の材料とレリーフ層20の材料とは、互いに同一であってもよく、互いに異なっていてもよい。
【0024】
反射層30は、レリーフ層20の主面のうち、第1領域R1の少なくとも一部を被覆している。典型的には、反射層30は、レリーフ層20の主面のうち、第1領域R1の全体を被覆している。図1及び図2には、一例として、反射層30が領域R1及びR2の双方を被覆している場合を描いている。
【0025】
反射層30は、レリーフ層20のうち第1領域R1に対応した部分とは、屈折率が異なっている。この反射層30を設けることにより、第1領域R1を含んだ界面における反射率を増大させることができる。それゆえ、これにより、第1領域R1から射出される散乱光の視認性を向上させることができる。また、反射層30を設けることにより、第1領域R1に設けられた複数の凹部又は凸部の損傷を生じ難くすることも可能となる。
【0026】
反射層30の材料としては、例えば、Al及びAgなどの金属材料を用いることができる。或いは、反射層30の材料として、レリーフ層20とは屈折率が異なった誘電体からなる透明材料を用いてもよい。反射層30は、単層構造を有していてもよく、多層構造を有していてもよい。
【0027】
このような反射層30は、例えば、蒸着及びスパッタリングなどの薄膜形成技術により形成することができる。また、反射層30の存在する領域を空間的に分布させることにより、この反射層30の分布を用いて、図柄を表現することもできる。なお、反射層30は、省略してもよい。
【0028】
印刷層40A及び40Bは、基材10とレリーフ層20との間に介在している。印刷層40A及び40Bは、それぞれ、表示部DP2及びDP1を構成している。
【0029】
第1印刷層40Aは、特定の観察条件において、第1表示部DP1と第2表示部DP2とが互いに同一の色を表示するように構成する。例えば、この特定の観察条件として、表示体100を正面から照明し且つ正面から観察する条件を考える。この条件下において、第1表示部DP1が特定の色相、明度及び彩度の色を表示する場合、印刷層40Aとしては、例えば、上記の条件において、第2表示部DP2が、ほぼ同一の色相、明度及び彩度の色を表示するような構成を採用する。
【0030】
第2印刷層40Bとしては、領域R1から射出される散乱光に悪影響を与えない構成を採用する。例えば、印刷層40Bは、無色且つ透明とする。或いは、印刷層40Bは、省略してもよい。
【0031】
印刷層40A及び40Bの各々は、例えば、インキを用いて形成する。このインキとしては、印刷方式に応じて、オフセットインキ、活版インキ及びグラビアインキなどを用いることができる。このようなインキとしては、組成の違いに応じて、例えば、樹脂インキ、油性インキ及び水性インキが挙げられる。また、乾燥方式の違いに応じて、例えば、酸化重合型インキ、浸透乾燥型インキ、蒸発乾燥型インキ及び紫外線硬化型インキが挙げられる。
【0032】
また、このインキとして、照明角度又は観察角度に応じて色が変化する機能性インキを使用してもよい。このような機能性インキとしては、例えば、光学的変化インキ(Optical Variable Ink)、カラーシフトインキ及びパールインキが挙げられる。第1印刷層40Aの材料として機能性インキを採用した場合の付随的な効果については、後で詳しく説明する。
【0033】
或いは、印刷層40A及び40Bの各々は、トナーを用いて形成してもよい。この場合、例えば、帯電性を持ったプラスチック粒子に黒鉛及び顔料等の色粒子を付着させたトナーを準備する。そして、帯電による静電気を利用して、トナーを基材に転写させ、これを加熱し定着させることで印刷層を形成する。
【0034】
保護層50は、反射層30を間に挟んで、レリーフ層20と向き合っている。この保護層50は、第1領域R1に設けられた複数の凹部又は凸部を保護する役割を担っている。保護層50の材料としては、例えば、樹脂を使用する。保護層50は、省略してもよい。或いは、保護層50として、接着層又は粘着層を設けてもよい。
【0035】
次に、第1領域R1の構成例、及び、第1領域R1に起因した光学効果について説明する。
第1領域R1は、上述した通り、白色光で照明した際に指向性散乱光を射出するように構成されている。この第1領域R1が通常の照明条件下において射出する指向性散乱光は、典型的には、白色光である。したがって、第1表示部DP1は、典型的には、明度及び彩度の高い色(例えば白色又は薄灰色)を表示する。
なお、ここで「通常の照明条件」とは、例えば、室内で蛍光灯等の照明下、照明光源からの光が表示体100の前面に略垂直に入射し、観察者が目視によって表示体100を観察する条件、又は、室外で太陽光等の照明下、照明光源からの光が表示体100の前面に略垂直に入射し、観察者が目視によって表示体100を観察する条件を意味している。
【0036】
図3は、第1領域の構成例を概略的に示す平面図である。図3には、第1領域R1の一部を拡大して示している。図3では、複数の凹部又は凸部の各々を、線分として描いている。
【0037】
図3に示す例では、第1領域R1は、各々が直線状であり且つ面内で方向が揃った複数の凹部又は凸部を含んでいる。以下、第1領域R1の主面に平行な方向のうち、第1領域R1が最小の光散乱能を示す方向を「配向方向」と呼び、第1領域R1が最大の光散乱能を示す方向を「光散乱方向」と呼ぶ。図3に示す例では、配向方向はX軸に平行であり、光散乱方向はY軸に平行である。
【0038】
第1領域R1は、光散乱能について、異方性を有している。例えば、第1領域R1を配向方向に垂直な斜め方向から照明して、第1領域R1を正面から観察する条件では、第1領域R1は、その高い光散乱能に起因して、比較的明るく見える。他方、第1領域R1を光散乱方向に垂直な斜め方向から照明して、第1領域R1を正面から観察する条件では、第1領域R1は、その低い光散乱能に起因して、比較的暗く見える。
【0039】
以上から明らかなように、例えば、第1領域R1を斜め方向から照明し且つこれを正面から観察する条件下、第1領域R1をその法線方向を軸として回転させると、その明度が次第に変化する。したがって、表示体100の第1表示部DP1は、その法線方向を軸として観察方向を回転させると、その明度が次第に変化する。即ち、表示体100の観察方向を法線方向を軸として回転させることにより、第1表示部DP1により表示される像を変化させることができる。
【0040】
第1表示部DP1の明度は、第1領域R1に設ける凹部又は凸部の構成により制御することができる。例えば、各凹部又は凸部の幅を大きくすると、配向方向に垂直な方向における光散乱能を低下させることができる。各凹部又は凸部の長さを大きくすると、光散乱方向に垂直な方向における光散乱能を低下させることができる。
【0041】
或いは、隣接する凹部又は凸部間の平均間隔を小さくすると、より多くの入射光を散乱させることができるため、光散乱能の異方性を劣化させることなしに、散乱光の強度を増大させることができる。特に、この平均間隔を10μm以下とすると、視認性に特に優れた像を表示することが可能となる。また、この平均間隔を10μm以下とすると、正反射光成分を減らし、光散乱効果を大きくすることが可能となる。
【0042】
また、複数の凹部又は凸部の配向秩序度を高くすると、第1領域R1の光散乱能の異方性をより高くすることができる。
【0043】
各凹部又は凸部の深さ又は高さは、例えば、100nm乃至400nmの範囲内とする。こうすると、成形プロセスを簡易にすることができ、光散乱効果も大きくすることが可能となる。
【0044】
第1領域R1において、複数の凹部又は凸部の各々は、ある程度規則的に配置されていてもよく、ランダムに配置されていてもよい。例えば、隣接する凹部又は凸部間の間隔をランダムにすると、配向方向に垂直な方向において観察角度を変化させた場合の散乱光の強度分布がなだらかになる。よって、こうすると、観察角度に応じた明度の変化を抑制することが可能となる。
【0045】
第1領域R1中に含まれる複数の凹部又は凸部の各々は、互いに同一の形状を有していてもよく、互いに異なった形状を有していてもよい。前者の場合、第1領域R1の光散乱能の設計が比較的容易である。また、このような第1領域R1は、電子線描画装置やステッパなどの微細加工装置を用いることで、高精度で且つ容易に形成することができる。他方、後者の場合、広い角度範囲に亘ってなだらかな光強度分布を有した散乱光が得られる。したがって、この場合、観察位置による明暗の変化が比較的小さい像を表示することが可能となる。
【0046】
なお、図3には、これら複数の凹部又は凸部の長手方向が互いに平行である場合を描いているが、これらは、互いに交差していてもよい。また、図3には、各凹部又は凸部が直線状である場合を描いているが、これらは、曲線状であってもよい。即ち、各凹部又は凸部は、湾曲した形状を有していてもよい。
【0047】
レリーフ層20の主面には、第1領域R1を2つ以上設けてもよい。この場合、例えば、複数の第1領域R1の間で、光散乱方向を異ならせてもよい。こうすると、特定の方向から観察する場合に、これら領域間に明度の差を生じさせることができる。このような構成を採用する場合には、光散乱方向の角度差を十分に大きくするか又は各々の光散乱能の異方性を十分に高くすることが好ましい。この場合、2つの領域間での光散乱方向の角度差は、例えば、30゜以上とすることが好ましい。
【0048】
次いで、第1表示部DP1と第2表示部DP2との組み合わせに基づいた光学効果について説明する。
上述した通り、表示体100の観察方向を法線方向を軸として回転させることにより、第1表示部DP1の明度を変化させることができる。他方、第2表示部DP2では、典型的には、このような変化を生じない。したがって、上記の観察方向の変化により、例えば、第1表示部DP1と第2表示部DP2とが形成している潜像を可視化することが可能となる。或いは、この観察方向の変化により、第1表示部DP1と第2表示部DP2との組み合わせにより表示される像の視認性を変化させることが可能となる。
【0049】
また、表示体100の法線方向に対する観察角度又は照明角度を変化させた場合にも、第1表示部DP1と第2表示部DP2とでは、互いに異なった変化が生じる。
【0050】
例えば、上述した第1領域R1の設計により、第1表示部DP1には、観察角度又は照明角度の変化に対する明度の変化が、第2表示部DP2と比較してより小さい構成を採用することができる。或いは、第1表示部DP1には、観察角度又は照明角度の変化に対する明度の変化が、第2表示部DP2と比較してより大きい構成を採用することもできる。
【0051】
したがって、表示体100では、上記の観察角度又は照明角度の変化により、例えば、第1表示部DP1と第2表示部DP2とが形成している潜像を可視化することが可能となる。以下、この点について、詳しく説明する。
【0052】
図4は、表示体と照明光源と観察者との位置関係を示す概略図である。図5は、図1及び図2に示す表示体を他の照明角度から照明した場合に観察される像の一例を示す平面図である。図6は、図1及び図2に示す表示体を他の観察角度から観察した場合に観察される像の一例を示す斜視図である。
【0053】
図4に示す例は、表示体100の前面側から、法線方向Nに対してθの入射角で、照明光源LSからの照明光ILを入射させている。そして、この例では、観察者OBは、表示体100を正面から観察している。
【0054】
図4に示す例において、照明光ILは、YZ平面内に位置している。即ち、図4に示す例では、第1表示部DP1から射出される指向性散乱光の強度が最大となる方向と法線方向Nとを含んだ平面内において、入射角θで、照明光ILを入射させている。なお、以下では、照明光ILは、白色光であるとする。
【0055】
まず、上記入射角θが0゜≦θ<20゜を満足している第1条件を考える。この条件では、図1に示すように、表示体100の第1表示部DP1と第2表示部DP2とは、互いに同一の色を表示する。即ち、この条件では、第1表示部DP1と第2表示部DP2とは、互いに識別できない。
【0056】
上記第1条件においては、第1表示部DP1と第2表示部DP2とで、射出する散乱光の強度の差が小さいことが好ましい。特に、上記第1条件においては、以下の関係が成立していることがより好ましい。
【数1】
【0057】
式中、R11は、上記第1条件において第1表示部DP1から射出される散乱光の強度を、同一条件において標準白色板から射出される散乱光の強度によって規格化した値を意味しており;R12は、上記第1条件において第2表示部DP2から射出される散乱光の強度を、同一条件において標準白色板から射出される散乱光の強度によって規格化した値を意味している。
【0058】
この場合、上記第1条件において、第1表示部DP1と第2表示部DP2との識別はより困難である。それゆえ、この場合、上記第1条件において、これら表示部の組み合わせによる像は、より視認され難い。
【0059】
上記の値|R11−R12|は、0.5未満であることがより好ましく、0.1未満であることが更に好ましい。こうすると、上記第1条件において、第1表示部DP1と第2表示部DP2との識別を更に困難とすることができる。
【0060】
また、値R11は、2.5以上であることが好ましく、3.5以上であることがより好ましい。このような構成を採用すると、第1表示部DP1の視認性を更に高くすることができる。
【0061】
次に、上記入射角θが30゜≦θ<70゜を満足している第2条件を考える。この条件では、図5に示すように、表示体100の第1表示部DP1と第2表示部DP2とは、互いに異なった色を表示する。即ち、この条件では、第1表示部DP1と第2表示部DP2とは、互いに識別することができる。
【0062】
上記第2条件においては、第1表示部DP1と第2表示部DP2とで、射出する散乱光の強度の差が大きいことが好ましい。特に、上記第2条件においては、以下の関係が成立していることがより好ましい。
【数2】
【0063】
式中、R21は、上記第2条件において第1表示部DP1から射出される散乱光の強度を、同一条件において標準白色板から射出される散乱光の強度によって規格化した値を意味しており;R22は、上記第2条件において第2表示部DP2から射出される散乱光の強度を、同一条件において標準白色板から射出される散乱光の強度によって規格化した値を意味している。
【0064】
この場合、上記第2条件において、第1表示部DP1と第2表示部DP2との識別はより容易である。それゆえ、この場合、上記第2条件において、これら表示部の組み合わせによる像は、より視認され易い。
【0065】
上記の値|R21−R22|は、0.5以上であることがより好ましく、1.5以上であることが更に好ましい。こうすると、上記第2条件において、第1表示部DP1と第2表示部DP2との識別を更に容易にすることができる。
【0066】
また、値R21は、2.5以上であることが好ましく、3.5以上であることがより好ましい。このような構成を採用すると、第1表示部DP1の視認性を高くすることができる。
【0067】
このように、図1及び図2に示す表示体100では、第1表示部DP1と第2表示部DP2とは、潜像を形成している。そして、この潜像は、表示体100の法線方向に対する照明角度を変化させることにより、可視化することができる。なお、図6に示すように、潜像の可視化は、表示体100の法線方向に対する観察角度を変化させることによっても達成できる。
【0068】
上述した潜像は、例えば、以下のようにして形成する。まず、第1領域R1に、特定の観察条件において特定の色を表示するように、複数の凹部又は凸部を形成する。例えば、特定の観察条件において、第1表示部DP1が特定の明度の白色を表示するようにする。次に、上記特定の観察条件において、第1表示部DP1と同じ色を表示するインキ又はトナーを用いて、第1印刷層40Aを形成する。例えば、上記特定の観察条件において、第2表示部DP2が、上記特定の明度の白色を表示するようにする。こうすると、上記の特定の観察条件において、第1表示部DP1と第2表示部DP2とを、互いから識別不可能とすることができる。
【0069】
上述した通り、第1表示部DP1は、第1領域R1が射出する散乱光に対応した色を表示する。また、第2表示部DP2は、第1印刷層40Aに対応した色を表示する。これら各表示部が表示する色は、表示体100の法線方向Nに対する照明角度又は観察角度に応じて、互いに異なった変化を示す。それゆえ、上記潜像は、表示体100の法線方向Nに対する照明角度又は観察角度を変化させることにより、可視化することができる。
【0070】
以上のような光学効果は、複写機等による複写によっては再現できない。また、第1領域R1の設計及び作製、並びに、それに対応した第1印刷層40Aの材料の選定を、表示体100を偽造しようとする者が自ら行うことは極めて困難である。加えて、上記の光学効果は、特殊な機器を使用することなしに、真偽判定が不慣れな観察者であっても、容易に認識することができる。それゆえ、図1及び図2に示す表示体100は、高い偽造防止効果を有している。
【0071】
次いで、第1印刷層40Aの少なくとも一部が、照明角度又は観察角度に応じて色が変化する機能性インキを用いて形成されている場合の付随的な効果について説明する。
【0072】
このような構成を採用した場合、表示体100は、照明角度又は観察角度に応じて、第1表示部DP1と第2表示部DP2との組み合わせによる像の変化と、機能性インキに基づいた第2表示部DP2の表示色の変化との双方を呈する。よって、この場合、表示体100を傾けて真偽判定を行う行為に不慣れな者であっても、容易に色変化を認識することができ、より確実に真偽判定を行うことができる。また、この場合、表示体100の偽造は、更に困難となる。
【0073】
特に、第1表示部DP1と第2表示部DP2との組み合わせによる潜像が可視化する角度と、機能性インキによって第2表示部DP2の色が変化する角度とを一致させると、双方の変化を、同時に観察させることができる。よって、この場合、更に確実な真偽判定を行うことが可能となる。
【0074】
以下、図1乃至図6を参照しながら説明した表示体100の変形例を説明する。
図7は、一変形例に係る表示体を概略的に示す断面図である。図7に示す表示体100は、印刷層40A及び40Bが、基材10を間に挟んでレリーフ層20と向き合っていることを除いては、図1及び図2に示す表示体と同様の構成を有している。
【0075】
図7に示す構成を採用した場合にも、図1乃至図6を参照しながら説明した光学効果を達成することができる。即ち、このような構成を採用した場合でも、優れた偽造防止効果を達成することができる。
【0076】
図8は、他の変形例に係る表示体を概略的に示す断面図である。図8に示す表示体100は、以下の点を除いては、図1及び図2に示す表示体と同様の構成を有している。
即ち、図8に示す表示体100では、レリーフ層20と第1印刷層40Aとは、面内方向で隣り合っている。また、第1領域R1は、レリーフ層20の一方の主面の全体を占めている。即ち、第2領域R2は、省略されている。加えて、第2印刷層40Bも、省略されている。
【0077】
図8に示す構成を採用した場合にも、図1乃至図6を参照しながら説明した光学効果を達成することができる。即ち、このような構成を採用した場合でも、優れた偽造防止効果を達成することができる。
【0078】
なお、図8では、レリーフ層20と第1印刷層40Aとが面内方向で隣接している場合を描いているが、これら層は、他の層を間に挟んで隣り合っていてもよい。即ち、これら層は、面内方向で隣り合い且つ互いに離間していてもよい。
【0079】
図9は、他の変形例に係る表示体を概略的に示す断面図である。図9に示す表示体100は、以下の点を除いては、図1及び図2に示す表示体と同様の構成を有している。
【0080】
即ち、図9に示す表示体100では、第1印刷層40Aは、レリーフ層20のうち第2領域R2に対応した部分を間に挟んで、基材10と向き合っている。また、反射層30は、レリーフ層20の主面のうち第1領域R1のみを被覆している。更には、第2印刷層40Bは、省略されている。
【0081】
図9に示す構成を採用した場合にも、図1乃至図6を参照しながら説明した光学効果を達成することができる。即ち、このような構成を採用した場合でも、優れた偽造防止効果を達成することができる。
【0082】
図10は、他の変形例に係る表示体を概略的に示す断面図である。図10に示す表示体100は、以下の点を除いては、図1及び図2に示す表示体と同様の構成を有している。
【0083】
即ち、図10に示す表示体100では、第1領域R1は、レリーフ層20の一方の主面の全体を占めている。また、第1印刷層40Aは、この第1領域R1の一部を被覆している。そして、反射層30は、第1領域R1の他の一部を被覆している。表示体100の第2表示部DP2では、レリーフ層20と第1印刷層40Aとは、屈折率が互いに等しい。
【0084】
このような構成を採用した場合、第1領域R1のうち第1印刷層40Aに被覆された部分は、白色光で照明しても、第1領域R1に起因した指向性散乱光を射出することができない。それゆえ、第2表示部DP2は、第1印刷層40Aに対応した色を表示する。
【0085】
したがって、図10に示す構成を採用した場合にも、図1乃至図6を参照しながら説明した光学効果を達成することができる。即ち、このような構成を採用した場合でも、優れた偽造防止効果を達成することができる。
【0086】
また、図10に示す構成を採用した場合、レリーフ層20の一方の主面に、第1領域R1をパターン状に形成する必要がない。それゆえ、このような構成を有した表示体100は、レリーフ層20の作製のための原版を用いることなしに、製造することができる。よって、このような構成は、少数製品を製造する場合に、特に有利である。
【0087】
図1乃至図10を参照しながら説明した表示体100において、第1領域R1は、セル単位で形成されていてもよい。これらセルを画素として配することで、容易に表示画像を規定することができる。その際、第1領域の各々における複数の凹部又は凸部の配置は、ランダムであることが好ましい。こうすると、より高い光散乱効果を実現できる。
【0088】
なお、第1領域R1をセル単位で形成する場合、セルの一辺の大きさを100μm程度とすることは十分に可能である。この場合、通常の観察条件における人間の目の分解能以下の細かさで像を表示することができる。すなわち、十分に高精細な像を表示できる。
【0089】
図1乃至図10を参照しながら説明した表示体100は、粘着ラベル及び転写箔などの一部として使用してもよい。また、表示体100は、印刷物などの表示体付き物品の一部として使用してもよい。
【0090】
図11は、表示体付き物品の一例を概略的に示す平面図である。図11には、表示体付き物品の一例として、印刷物200を描いている。この印刷物200は、磁気カードであって、基材201を含んでいる。基材201は、例えば、プラスチックからなる。
【0091】
基材200上には、印刷層202が形成されている。基材200の印刷層202が形成された面には、上述した表示体100が、例えば粘着層を介して固定されている。表示体100は、例えば、粘着ステッカとして又は転写箔として準備しておき、これを印刷層202に貼りつけることにより、基材200に固定する。
【0092】
この印刷物200は、上述した表示体100を含んでいる。それゆえ、この印刷物200は、偽造防止効果に優れている。この印刷物200は、表示体100に加えて、印刷層202を更に含んでいる。したがって、表示体100の光学効果を印刷層202のそれと比較することにより、表示体100の光学効果を際立たせることができる。
【0093】
図11には、表示体100を含んだ印刷物として磁気カードを例示しているが、表示体100を含んだ印刷物は、これに限られない。例えば、表示体100を含んだ印刷物は、IC(integrated circuit)カード、無線カード及びID(identification)カードなどの他のカードであってもよい。或いは、表示体100を含んだ印刷物は、商品券及び株券などの有価証券であってもよい。或いは、表示体100を含んだ印刷物は、真正品であることが確認されるべき物品に取り付けられるべきタグであってもよい。或いは、表示体100を含んだ印刷物は、真正品であることが確認されるべき物品を収容する包装体又はその一部であってもよい。
【0094】
また、図11に示す印刷物200では、表示体100を基材201に貼り付けているが、表示体100は、他の方法で基材に支持させることができる。例えば、基材として紙を使用した場合、表示体100を紙に漉き込み、表示体100に対応した位置で紙を開口させてもよい。或いは、基材として光透過性の材料を使用する場合、その内部に表示体100を埋め込んでもよく、基材の裏面、即ち表示面とは反対側の面に表示体100を固定してもよい。
【0095】
また、ラベル付き物品は、印刷物でなくてもよい。即ち、印刷層を含んでいない物品に表示体100を支持させてもよい。例えば、表示体100は、美術品などの高級品に支持させてもよい。
表示体100は、偽造防止以外の目的で使用してもよい。例えば、表示体100は、玩具、学習教材、及び装飾品などとしても利用することができる。
【実施例】
【0096】
まず、図8に示す構成を備えた表示体100を製造した。基材10としては、厚さ50μm程度のポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムを用いた。レリーフ層20の材料としては、厚さ3μm程度のUV硬化型樹脂を用いた。第1印刷層40Aの材料としては、厚さ3μm程度の白色インキを用いた。反射層30としては、蒸着法によって作製したアルミ層を用いた。保護層50としては、粘着層を用いた。
【0097】
この表示体100では、第1領域R1には、各々が直線状であり且つ複数の凹部又は凸部が形成されている。凹部又は凸部間の平均間隔は5μm以下であり、各凹部又は凸部の深さ又は高さは最大で200nm程度である。そして、凹部又は凸部は、指向性散乱構造を形成している。
【0098】
次に、この表示体100を、図4に示すように配置した。照明光源LSとしては、白色面光源を用いた。そして、観察者OBの位置に輝度計を配置し、光源入射角θを0°〜70°の間で変化させたときの相対散乱光強度の変化を測定した。その結果を図12に示す。
【0099】
図12は、入射角と相対散乱光強度との関係の一例を示すグラフである。図12に示すように、第1表示部DP1と第2表示部DP2とは、照明角度θが0゜以上20゜未満の範囲では、ほぼ同等の散乱光強度で白色光を散乱することが分かった。また、照明角度θが30゜を越えた辺りから、第1表示部DP1と第2表示部DP2の散乱光強度に差が生じていることが分かった。
【0100】
以上により、表示体100は、法線方向付近から観察すると、第1表示部DP1と第2表示部DP2との双方が白色又は白色に近い薄灰色に知覚されることが分かった。また、この表示体100は、法線方向から傾斜させて観察した際には、第1表示部DP1と第2表示部DP2との散乱光強度の差異に起因して、予め規定した画像を表示できることが分かった。
【符号の説明】
【0101】
10…基材、20…レリーフ層、30…反射層、40A…第1印刷層、40B…第2印刷層、50…保護層、100…表示体、200…印刷物、201…基材、202…印刷層、DP1…第1表示部、DP2…第2表示部、IL…照明光、LS…照明光源、N…法線、OB…観察者、R1…第1領域、R2…第2領域。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
一方の主面に、複数の凹部又は凸部が設けられ且つ白色光で照明した際に指向性散乱光を射出するように構成された第1領域を備えたレリーフ層と、
前記レリーフ層の何れか一方の主面の少なくとも一部と向き合っているか、又は、前記レリーフ層と面内方向に隣り合った印刷層と
を具備した表示体であって、
前記表示体の前面側から白色光で照明した際に前記散乱光に対応した色を表示する第1表示部と、前記表示体の前面側から白色光で照明した際に前記印刷層に起因した色を表示する第2表示部とを備え、前記第1表示部と前記第2表示部とは潜像を形成しており、前記表示体の法線方向に対する観察角度又は照明角度を変化させることにより前記潜像が可視化される表示体。
【請求項2】
前記第1表示部は、前記第1領域を含み且つ前記印刷層を含んでいないか、又は、前記第1領域及び前記印刷層の双方を含み且つ前記第1領域が前記印刷層に対して前面側に位置している請求項1に記載の表示体。
【請求項3】
前記第2表示部は、前記印刷層を含み且つ前記第1領域を含んでいないか、又は、前記印刷層及び前記第1領域の双方を含み且つ前記印刷層が前記第1領域に対して前面側に位置している請求項1又は2に記載の表示体。
【請求項4】
前記第2表示部は、前記第1領域と、前記第1領域を被覆した前記印刷層とを含み、
前記第2表示部において、前記レリーフ層と前記印刷層とは屈折率が互いに等しい請求項1又は2に記載の表示体。
【請求項5】
前記表示体の前面側から、前記指向性散乱光の強度が最大となる方向と前記表示体の前記法線方向とを含んだ平面内において0゜以上20゜未満の入射角で白色光を照射し且つ前記表示体の正面から観察する第1条件では、前記第1表示部と前記第2表示部とは互いに同一の色を表示し、
前記表示体の前面側から、前記平面内において30゜以上70゜未満の範囲内の入射角で白色光を照射し且つ前記表示体の正面から観察する第2条件では、前記第1表示部と前記第2表示部とは互いに異なった色を表示する請求項1乃至4の何れか1項に記載の表示体。
【請求項6】
前記表示体の前面側から、前記指向性散乱光の強度が最大となる方向と前記表示体の前記法線方向とを含んだ平面内において0゜以上20゜未満の入射角で白色光を照射し且つ前記表示体の正面から観察する第1条件において、以下の関係が成立している請求項1乃至4の何れか1項に記載の表示体。
【数1】
式中、R11は、前記第1条件において前記第1表示部から射出される散乱光の強度を、同一条件において標準白色板から射出される散乱光の強度によって規格化した値を意味しており;R12は、前記第1条件において前記第2表示部から射出される散乱光の強度を、同一条件において標準白色板から射出される散乱光の強度によって規格化した値を意味している。
【請求項7】
前記表示体の前面側から、前記指向性散乱光の強度が最大となる方向と前記表示体の前記法線方向とを含んだ平面内において30゜以上70゜未満の範囲内の入射角で白色光を照射し且つ前記表示体の正面から観察する第2条件において、以下の関係が成立している請求項1乃至6の何れか1項に記載の表示体。
【数2】
式中、R21は、前記第2条件において前記第1表示部から射出される散乱光の強度を、同一条件において標準白色板から射出される散乱光の強度によって規格化した値を意味しており;R22は、前記第2条件において前記第2表示部から射出される散乱光の強度を、同一条件において標準白色板から射出される散乱光の強度によって規格化した値を意味している。
【請求項8】
前記レリーフ層は、前記第1領域と隣り合い且つ平坦面からなる第2領域を更に備え、前記第2表示部は前記第2領域を更に含んでいる請求項1乃至7の何れか1項に記載の表示体。
【請求項9】
前記レリーフ層の前記主面は前記第1領域のみからなり、前記第1表示部は、前記第1領域を含み且つ前記印刷層を含んでおらず、前記第2表示部は、前記第1領域と前記印刷層との双方を含んでおり、前記第2表示部において、前記印刷層と前記レリーフ層とは屈折率が互いに等しい請求項1乃至8の何れか1項に記載の表示体。
【請求項10】
前記第1表示部は前記第1領域を含み、前記第1表示部において、前記第1領域の少なくとも一部は反射層によって被覆されている請求項1乃至9の何れか1項に記載の表示体。
【請求項11】
請求項1乃至10の何れか1項に記載の表示体と、前記表示体を支持した物品とを具備した表示体付き物品。
【請求項1】
一方の主面に、複数の凹部又は凸部が設けられ且つ白色光で照明した際に指向性散乱光を射出するように構成された第1領域を備えたレリーフ層と、
前記レリーフ層の何れか一方の主面の少なくとも一部と向き合っているか、又は、前記レリーフ層と面内方向に隣り合った印刷層と
を具備した表示体であって、
前記表示体の前面側から白色光で照明した際に前記散乱光に対応した色を表示する第1表示部と、前記表示体の前面側から白色光で照明した際に前記印刷層に起因した色を表示する第2表示部とを備え、前記第1表示部と前記第2表示部とは潜像を形成しており、前記表示体の法線方向に対する観察角度又は照明角度を変化させることにより前記潜像が可視化される表示体。
【請求項2】
前記第1表示部は、前記第1領域を含み且つ前記印刷層を含んでいないか、又は、前記第1領域及び前記印刷層の双方を含み且つ前記第1領域が前記印刷層に対して前面側に位置している請求項1に記載の表示体。
【請求項3】
前記第2表示部は、前記印刷層を含み且つ前記第1領域を含んでいないか、又は、前記印刷層及び前記第1領域の双方を含み且つ前記印刷層が前記第1領域に対して前面側に位置している請求項1又は2に記載の表示体。
【請求項4】
前記第2表示部は、前記第1領域と、前記第1領域を被覆した前記印刷層とを含み、
前記第2表示部において、前記レリーフ層と前記印刷層とは屈折率が互いに等しい請求項1又は2に記載の表示体。
【請求項5】
前記表示体の前面側から、前記指向性散乱光の強度が最大となる方向と前記表示体の前記法線方向とを含んだ平面内において0゜以上20゜未満の入射角で白色光を照射し且つ前記表示体の正面から観察する第1条件では、前記第1表示部と前記第2表示部とは互いに同一の色を表示し、
前記表示体の前面側から、前記平面内において30゜以上70゜未満の範囲内の入射角で白色光を照射し且つ前記表示体の正面から観察する第2条件では、前記第1表示部と前記第2表示部とは互いに異なった色を表示する請求項1乃至4の何れか1項に記載の表示体。
【請求項6】
前記表示体の前面側から、前記指向性散乱光の強度が最大となる方向と前記表示体の前記法線方向とを含んだ平面内において0゜以上20゜未満の入射角で白色光を照射し且つ前記表示体の正面から観察する第1条件において、以下の関係が成立している請求項1乃至4の何れか1項に記載の表示体。
【数1】
式中、R11は、前記第1条件において前記第1表示部から射出される散乱光の強度を、同一条件において標準白色板から射出される散乱光の強度によって規格化した値を意味しており;R12は、前記第1条件において前記第2表示部から射出される散乱光の強度を、同一条件において標準白色板から射出される散乱光の強度によって規格化した値を意味している。
【請求項7】
前記表示体の前面側から、前記指向性散乱光の強度が最大となる方向と前記表示体の前記法線方向とを含んだ平面内において30゜以上70゜未満の範囲内の入射角で白色光を照射し且つ前記表示体の正面から観察する第2条件において、以下の関係が成立している請求項1乃至6の何れか1項に記載の表示体。
【数2】
式中、R21は、前記第2条件において前記第1表示部から射出される散乱光の強度を、同一条件において標準白色板から射出される散乱光の強度によって規格化した値を意味しており;R22は、前記第2条件において前記第2表示部から射出される散乱光の強度を、同一条件において標準白色板から射出される散乱光の強度によって規格化した値を意味している。
【請求項8】
前記レリーフ層は、前記第1領域と隣り合い且つ平坦面からなる第2領域を更に備え、前記第2表示部は前記第2領域を更に含んでいる請求項1乃至7の何れか1項に記載の表示体。
【請求項9】
前記レリーフ層の前記主面は前記第1領域のみからなり、前記第1表示部は、前記第1領域を含み且つ前記印刷層を含んでおらず、前記第2表示部は、前記第1領域と前記印刷層との双方を含んでおり、前記第2表示部において、前記印刷層と前記レリーフ層とは屈折率が互いに等しい請求項1乃至8の何れか1項に記載の表示体。
【請求項10】
前記第1表示部は前記第1領域を含み、前記第1表示部において、前記第1領域の少なくとも一部は反射層によって被覆されている請求項1乃至9の何れか1項に記載の表示体。
【請求項11】
請求項1乃至10の何れか1項に記載の表示体と、前記表示体を支持した物品とを具備した表示体付き物品。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2012−103471(P2012−103471A)
【公開日】平成24年5月31日(2012.5.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−251740(P2010−251740)
【出願日】平成22年11月10日(2010.11.10)
【出願人】(000003193)凸版印刷株式会社 (10,630)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年5月31日(2012.5.31)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年11月10日(2010.11.10)
【出願人】(000003193)凸版印刷株式会社 (10,630)
【Fターム(参考)】
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