説明

表示入力装置

【課題】ユーザの指の可動範囲が制約されやすくても操作領域における指の座標位置を表示領域の端部領域まで反映することが容易な表示入力装置を提供することを目的とする。
【解決手段】表示領域122を有する表示パネル120と、表示パネル120の裏面側に配置され操作領域132を有する操作パネル130と、操作領域132における座標位置を表示領域122における座標位置に変換する変換部155を備え、変換部155は、操作領域132に接触させたユーザの指の接触状態に基づいて、操作領域132におけるユーザの指の可動範囲150を設定し、ユーザの指の可動範囲150における操作座標位置と表示領域122の表示座標位置とを対応させて変換する構成である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
ここに開示された技術は、表示領域を有する表示パネルと、表示パネルの裏面側に配置され操作領域を有する操作パネルとを備えた表示入力装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、携帯型のコンピュータや電子手帳等の携帯端末が普及している。このような携帯端末には、ユーザの利便性を考慮した様々な表示入力装置が配置されている。
【0003】
以下、従来の表示入力装置について説明する。
【0004】
従来の表示入力装置は、例えば、表示領域を有する表示パネルと、表示パネルの裏面側に配置され操作領域を有する操作パネルと、操作領域における座標位置を表示領域における座標位置に変換する変換部を備えている。
【0005】
表示パネルの表示領域は、液晶等を用いた表示デバイスで形成されている。操作パネルの操作領域は、静電容量方式等を用いたタッチパッドデバイスで形成されている。このタッチパッドデバイスを用いることによって、ユーザが操作領域に指を接触させると静電容量の変化が検出されて、操作領域におけるユーザの指の座標位置を特定することができる。
【0006】
変換部は、操作領域におけるユーザの指の座標位置を表示領域における座標位置に変換する。この結果、操作パネルの操作領域に接触させたユーザの指の位置が、表示パネルの表示領域に反映される。
【0007】
このような表示入力装置を備えた携帯端末をユーザは片手または両手で保持して使用する。携帯端末を両手で保持する場合、ユーザは、表示パネル側にユーザの親指を配置し、操作パネル側にユーザの人差し指から小指までを配置して、携帯端末を保持する。
【0008】
ユーザが、操作パネル側に配置した人差し指を操作領域に接触させると、操作領域における人差し指の座標位置が特定される。特定された操作領域における人差し指の座標位置は変換部によって表示領域における座標位置に変換される。そして、操作領域における人差し指の座標位置は、ポインタによって表示領域に反映され、ユーザが目視できる状態となる。
【0009】
ユーザは、携帯端末を使用して実行したいアプリケーションソフトウェアを起動させる。このアプリケーションソフトウェアとしては、ゲームや音楽や映像や写真等の各種のコンテンツを起動させるソフトェアが該当する。
【0010】
これらのアプリケーションソフトウェアを起動させたり、起動させたアプリケーションソフトウェアを制御したりするために、ユーザは操作領域に接触させた人差し指を移動させて、表示領域に反映されたポインタをアプリケーションソフトウェアに対する入力ツールとして用いる。
【0011】
このような表示入力装置を用いた携帯端末としては、例えば、特許文献1〜4に開示されたものがある。
【0012】
特許文献1にはデジタルフォトフレームが開示されている。タッチパネルに人差し指を接触させて、人差し指を上下左右に動かしたり、タップさせたりする操作によって、画像のスクロールや回転等を行わせるものである。
【0013】
特許文献2にはポインタが表示される情報処理装置が開示されている。表示画面の裏面側に配置されたタブレットに指やペンを接触させて、ポインタを入力ツールとして用いるものである。
【0014】
特許文献3には携帯端末を保持するユーザの持ち手をセンサによって判断する構成が開示されている。
【0015】
特許文献4には携帯端末を保持するユーザの持ち手をタッチスクリーンに入力された斜線によって判断する構成が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0016】
【特許文献1】特開2010−108071号公報
【特許文献2】特開平11−39093号公報
【特許文献3】特開2009−163278号公報
【特許文献4】特開2002−318640号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
上記従来の携帯端末に配置された表示入力装置は、タッチパネル等の操作領域に接触させた指の座標位置を表示領域に表示されたポインタの座標位置に対応づける。そして、ユーザは、ポインタを入力ツールとして携帯端末のアプリケーションソフトェアを起動させたり制御したりする。ユーザが携帯端末を使用する際は、ユーザは携帯端末を保持しながら指を操作領域で移動させるので、指の可動範囲が制約されやすい。特に、ユーザが携帯端末を片手で保持し、その保持した側の手の指を操作領域で移動させる際は、指の可動範囲が大きく制約される。その結果、携帯端末を一方の手で保持し、他方の手で操作する必要があったり、携帯端末を持つ手の位置を変えながら操作する必要があったりする。
【0018】
このように従来の携帯端末に配置された表示入力装置は、ユーザの指の可動範囲が制約されやすく、操作領域における指の座標位置を表示領域の端部領域まで反映することが難しいという問題を有する。
【0019】
ここに開示された技術は、ユーザの指の可動範囲が制約されやすくても、操作領域における指の座標位置を表示領域の端部領域まで反映することが容易な表示入力装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0020】
上記目的を達成するためにここに開示された技術は、以下の構成を有する。
【0021】
ここに開示された技術における表示入力装置は、表示領域を有する表示パネルと、前記表示パネルの裏面側に配置され操作領域を有する操作パネルと、前記操作領域における座標位置を前記表示領域における座標位置に変換する変換部を備え、前記変換部は、前記操作領域に接触させたユーザの指の接触状態に基づいて、前記操作領域における前記ユーザの指の可動範囲を設定し、前記ユーザの指の可動範囲における操作座標位置と前記表示領域の表示座標位置とを対応させて変換する構成である。
【発明の効果】
【0022】
ここに開示された技術によれば、操作領域に接触させたユーザの指の接触状態に基づいて、操作領域におけるユーザの指の可動範囲を設定し、ユーザの指の可動範囲における操作座標位置と表示領域の表示座標位置とを対応させている。
【0023】
すなわち、ユーザの指の可動範囲が制約されやすくても、ユーザの指の可動範囲における操作座標位置と表示領域の表示座標位置とを対応させているので、操作領域における指の座標位置を表示領域の端部領域まで容易に反映することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】一実施の形態における携帯端末の表示パネル側の斜視図
【図2】同携帯端末の操作パネル側の斜視図
【図3】同携帯端末の構成を示すブロック図
【図4A】同携帯端末をユーザが片手で保持した表示パネル側を示す説明図
【図4B】同携帯端末をユーザが片手で保持した操作パネル側を示す説明図
【図5A】同携帯端末をユーザが両手で保持した表示パネル側を示す説明図
【図5B】同携帯端末をユーザが両手で保持した操作パネル側を示す説明図
【図6A】伸ばした指の可動範囲を示す図4Bの拡大背面図
【図6B】伸ばした指の接触面積を示す図4Bの拡大背面図
【図7A】折り曲げた指の可動範囲を示す図5Bの拡大背面図
【図7B】折り曲げた指の接触面積を示す図5Bの拡大背面図
【図8】伸ばした指の可動範囲を示す同携帯端末の操作パネル側の背面図
【図9】ユーザの指の可動範囲が扇形状とした同携帯端末の操作パネル側の背面図
【図10A】ユーザの指の接触状態を説明する説明図
【図10B】ユーザの指の接触状態を説明する説明図
【図11】同携帯端末の変換部による変換例を説明する説明図
【図12】同携帯端末の変換部による他の変換例を説明する説明図
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、一実施の形態における携帯端末について図面を参照しながら説明する。
【0026】
<1.携帯端末100の概略構成>
本実施の形態における携帯端末の概略構成について説明する。
【0027】
携帯端末は、グラフィカルユーザインターフェース(以下、GUIという)を用いたものである。このGUIは、コンピュータグラフィックスとポインティングデバイスを用いた操作を提供する。
【0028】
図1および図2において、携帯端末100は、筐体110と、この筐体110の正面側に配置された表示パネル120と、この表示パネル120の裏面側に配置された操作パネル130と、表示パネル120の下部に配置された複数の入力ボタン140を備えている。
【0029】
表示パネル120は表示領域122を有し、この表示領域122は液晶等を用いた表示デバイスで形成されている。この表示領域122には、携帯端末100を使用して実行したいアプリケーションソフトウェアがコンピュータグラフィックスとして表示される。このアプリケーションソフトウェアとしては、ゲームや音楽や映像や写真等、携帯端末100で起動される様々なものが該当する。図1では、このアプリケーションソフトウェアに対応したアイコン124が表示領域122に表示されている。このアイコン124を介してアプリケーションソフトウェアを起動させる。
【0030】
図2に示すように、操作パネル130は操作領域132を有し、この操作領域132は静電容量方式等を用いたタッチパッドデバイスで形成されている。このタッチパッドデバイスを用いることによって、ユーザが操作領域132に指を接触させると静電容量の変化が検出されて、操作領域132におけるユーザの指の座標位置を特定することができる。また、操作領域132に接触させたユーザの指の接触状態に基づいて、操作領域132におけるユーザの指の可動範囲150が設定される。図2では、ユーザの指の可動範囲150において、ユーザの指の座標位置の例として、座標Aが表示されている。このタッチパッドデバイスは、ユーザの指の座標位置を特定するためのポインティングデバイスの一つであるが、ユーザの指の座標位置を特定できるものであれば、その他のポインティングデバイスを用いても良い。
【0031】
図3に示すように、携帯端末100は、操作領域132における座標位置を表示領域122における座標位置に変換する変換部155を備えている。この変換部155は、操作領域132に接触させたユーザの指の接触状態に基づいて、操作領域132におけるユーザの指の可動範囲150を設定する。そして、ユーザの指の可動範囲150における操作座標位置と表示領域122の表示座標位置とを対応させて変換するものである。この結果、操作パネル130の操作領域132に接触させたユーザの指の位置が、表示パネル120の表示領域122に反映される。
【0032】
このように、本実施の形態における携帯端末100では、表示パネル120と操作パネル130と変換部155によって表示入力装置160が構成されている。
【0033】
<2.携帯端末100の使用>
ユーザが携帯端末100を使用する状態について説明する。
【0034】
図4A、図4B、図5A、図5Bに示すように、このような表示入力装置160を備えた携帯端末100をユーザは片手または両手で保持して使用する。図4A、図4Bに示すように、ユーザが携帯端末100を片手で保持した場合は、表示パネル120側にユーザの親指と中指と薬指と小指を配置し、操作パネル130側にユーザの人差し指を配置して、携帯端末を保持する。図5A、図5Bに示すように、ユーザが携帯端末100を両手で保持した場合は、表示パネル120側にユーザの親指を配置し、操作パネル130側にユーザの人差し指から小指までを配置して、携帯端末100を保持する。
【0035】
図4B、図5Bに示すように、ユーザが、操作パネル130側に配置した人差し指を操作領域132に接触させると、操作領域132における人差し指の座標位置が特定される。このとき、同時に人差し指の可動範囲150も設定される。操作領域132における人差し指の座標位置は変換部155によって、表示パネル120の表示領域122における座標位置に変換される。そして、操作領域132における人差し指の座標位置は、図4A、図5Aに示すように、ポインタ126によって表示領域122に反映され、ユーザが目視できる状態となる。
【0036】
ユーザは、携帯端末100を使用して実行したいアプリケーションソフトウェアを起動させる。これらのアプリケーションソフトウェアを起動させたり、起動させたアプリケーションソフトウェアを制御したりするために、ユーザは操作領域132に接触させた人差し指を移動させて、表示領域122に反映されたポインタ126をアプリケーションソフトウェアに対する入力ツールとして用いる。ポインタ126をアイコン124に対応させ、表示パネル120の下部に配置された複数の入力ボタン140を用いて、入力を決定すればよい。または、アイコン124上で、操作領域132における人差し指をタップしたり、操作領域132を指で押圧して接触圧を大きくしたりすればよい。入力の決定前後の区別ができる方法であれば、これらの方法以外の他の方法でもよい。
【0037】
<3.携帯端末100を片手で保持したユーザの指の可動範囲150の設定>
操作パネル130の操作領域132におけるユーザの指の可動範囲150について説明する。
【0038】
図4A、図4Bに示すように、携帯端末100を使用する際、ユーザは片手で携帯端末100を保持し、ユーザの人差し指を操作パネル130の操作領域132に接触させる。このとき、携帯端末100を保持した手の人差し指の可動範囲150は制約される。この人差し指の可動範囲150は、人差し指を、折り曲げたり、伸ばしたり、ずらしたりすることが可能なある程度の範囲に制約されてしまう。
【0039】
<3−1.携帯端末100を片手で保持したユーザの指の配置>
ユーザが携帯端末100を保持した際に想定される代表的な指の配置は、図6A、図7Aに示すようなものである。図6A、図7Aでは、人差し指を除いた4本の指で携帯端末100を握り締めるように保持し、人差し指を操作領域132で移動させる。この持ち方は、携帯端末100が縦方向に長い形状をしている場合に多い。指の可動範囲150は、図6Aの斜線で指し示す範囲となる。この可動範囲150を推定して、操作可能エリアとして設定する方法について説明する。
【0040】
<3−2.ユーザの指が伸ばされた状態>
まず、ユーザの指が伸ばされた状態で操作領域132に接触させた場合について説明する。図6Aに示すように、ユーザの指が伸ばされた状態で操作領域132に接触させた場合には、図6Bに示すように、操作領域132に対する指の接触面積は広く、その輪郭線170aは縦方向に長い楕円形に近くなる。接触面積が広いことから指が伸ばされていると判断できる。
【0041】
次に、縦方向における指の可動範囲150を設定する方法について説明する。指が伸ばされていることから、指の可動範囲150は、現在の接触点よりも上方には存在せず、指の可動範囲150として、図6A、図6Bの線分Cを設定することができる。
【0042】
また、指が伸ばされた状態から折り曲げた状態にすると、指の可動範囲150は、折り曲げた指の接触点よりも下方には存在せず、指の可動範囲150として、図6A、図6Bの線分Dを設定することができる。線分Cと線分Dの距離は、携帯端末100の大きさ、重さによって適宜調整する必要があるが、一般的には4cm程度が好適である。
【0043】
次に、横方向における指の可動範囲150を設定する方法について説明する。横方向の可動範囲150は、初期値として所定の距離を設定しておき、ユーザの操作状況から動的に調整する必要がある。これは、ユーザの持ち方によって、指の可動範囲150が大きく変化するためである。初期値は、携帯端末100の大きさや重さによって適宜調整する必要がある。しかし、一般的には、液晶画面の縦横比に合わせるのが好適である。たとえば横:縦=3:4の液晶画面を備えた携帯端末100では、縦横の操作感が一致するように、(縦方向の指の可動範囲150)×3÷4cm程度が好適となる。すなわち、指の可動範囲150は、図6A、図6Bの線分Aと線分Bとの間となる。
【0044】
このようにユーザの指が伸ばされた状態で操作領域132に接触させた場合、線分A〜線分Dに基づいて指の可動範囲150を設定することができる。すなわち、携帯端末100の変換部155が、ユーザの指の接触面積が所定値よりも大きい場合は、ユーザの指が伸ばされた状態で操作領域132に接触したと判断し、伸ばされたユーザの指の先端部の操作座標位置を表示領域122の上辺の表示座標位置に対応させて変換することになる。なお、線分A〜線分Dは指の移動のさせ方や指の位置によって多少のずれ幅を有する。
【0045】
ここで、横方向における指の可動範囲150を動的に調整する方法について説明する。ユーザは表示領域122に表示されたアプリケーションソフトウェアを見ながら操作領域132を操作する。図4Aにおいて、表示領域122の左端にポインタ126を移動させたいのに、ポインタ126が表示領域122の左端に届かない場合には、図4Bや図6A、Bにおいて、ユーザは操作領域132を右側に何度もなぞる操作をすることになる。この場合には、左方向の可動範囲150が狭くなるように再設定する必要がある。同様に、図4Aにおいて、表示領域122の右端にポインタ126を移動させたいのに、ポインタ126が表示領域122の右端に届かない場合には、図4Bや図6A、Bにおいて、ユーザは操作領域132を左側になぞる操作を繰り返すことになる。この場合には、右方向の可動範囲150が狭くなるように再設定する必要がある。
【0046】
すなわち、操作領域132における操作座標位置の単位変位量に対して、表示領域122における表示座標位置の変位量を大きくするように調整すればよい。この結果、操作領域132における指の左右方向の移動に対して、表示領域122におけるポインタ126の移動量が大きくなり、ユーザは操作領域132を何度もなぞる必要がなくなる。
【0047】
これとは反対に、ユーザが操作領域132上の狭い範囲で左右方向に細かく位置を調整する操作を繰り返してポインタ126の座標位置を調整する必要がある場合には、可動範囲150を大きく再設定することにより、ユーザは細かい位置を指示し易くなる。
【0048】
すなわち、操作領域132における操作座標位置の単位変位量に対して、表示領域122における表示座標位置の変位量を小さくするように調整すればよい。この結果、操作領域132における指の左右方向の移動に対して、表示領域122におけるポインタ126の移動量が小さくなり、ユーザは操作領域132上の狭い範囲で細かく位置を調整する必要がなくなる。
【0049】
このようにユーザの操作特徴を基に、左右方向の可動範囲150を調整してユーザの操作感を向上させることができる。
【0050】
<3−3.ユーザの指が折り曲げられた状態>
ユーザの指が折り曲げられた状態で操作領域132に接触させた場合について説明する。図7Aに示すように、ユーザの指が折り曲げられた状態で操作領域132に接触させた場合には、図7Bに示すように、操作領域132に対する指の接触面積は狭く、その輪郭線170aは横方向に長い楕円形に近くなる。接触面積が狭いことから指が折り曲げられていると判断できる。
【0051】
次に、縦方向における指の可動範囲150を設定する方法について説明する。指が折り曲げられていることから、指の可動範囲150は、現在の接触点よりも下方には存在せず、指の可動範囲150として、図7A、図7Bの線分Dを設定することができる。
【0052】
また、指が折り曲げられた状態から伸ばされた状態にすると、指の可動範囲150は、伸ばされた指の接触点よりも上方には存在せず、指の可動範囲150として、図7A、図7Bの線分Cを設定することができる。
【0053】
なお、横方向における指の可動範囲150については、上述した指が伸ばされた状態と同じである。すなわち、指の可動範囲150は、図7A、図7Bの線分Aと線分Bとの間となる。
【0054】
このようにユーザの指が折り曲げられた状態で操作領域132に接触させた場合、縦方向における指の可動範囲150と横方向における指の可動範囲150を設定することができる。すなわち、変換部155が、ユーザの指の接触面積が所定値よりも小さい場合は、ユーザの指が折り曲げられた状態で操作領域132に接触したと判断し、折り曲げられたユーザの指の先端部の操作座標位置を表示領域122の下辺の表示座標位置に対応させて変換することになる。
【0055】
ここで、横方向における指の可動範囲150を動的に調整する方法については、上述した指が伸ばされた状態と同じである。
【0056】
<3−4.指の可動範囲150の再設定>
このように、ユーザの指が伸ばされた状態でもユーザの指が折り曲げられた状態でも、ユーザが操作を続けると、その操作中にユーザの指が伸ばされた状態とユーザの指が折り曲げられた状態の両方のデータを取得できる。この二つの状態のデータを取得できれば、それぞれの状態におけるデータに基づいて、図6A、図6Bおよび図7A、図7Bの線分Cと線分Dを再設定しても良い。
【0057】
<4.携帯端末100を両手で保持したユーザの指の可動範囲150の設定>
操作パネル130の操作領域132におけるユーザの指の可動範囲150について説明する。
【0058】
携帯端末100を使用する際、ユーザは両手で携帯端末100を保持し、ユーザの人差し指を操作パネル130の操作領域132に接触させる。このとき、携帯端末100を保持した手の人差し指の可動範囲150は制約される。この人差し指の可動範囲150は、人差し指を、折り曲げたり、伸ばしたり、ずらしたりすることが可能なある程度の範囲に制約されてしまう。
【0059】
<4−1.携帯端末100を両手で保持したユーザの指の配置>
ユーザが携帯端末100を両手で保持した際に想定されるユーザの指の配置は、図8に示すようなものである。図8では、一方の手の親指と中指で挟み込むように携帯端末100を保持し、人差し指を操作領域132で移動させる。さらに、安定感を増すために、他方の手で端末の反対側を支える。この持ち方は、携帯端末100が横方向に長い形状をしている場合に多い。
【0060】
この保持方法の場合には、人差し指以外に中指と薬指の側面が操作領域132に触れる可能性がある。これらの指が触れてしまうと、操作領域132における操作座標位置が複数発生した状態となる。このような状態であれば、人差し指の操作座標位置を特定することができず、指の可動範囲150を設定することが困難となる。
【0061】
したがって、人差し指の操作座標位置を特定することが必要となる。
【0062】
<4−2.人差し指の操作座標位置の特定>
人差し指の操作座標位置を特定する方法は2つある。
【0063】
一つ目は、操作領域132を移動させる指であるかどうかを基準にして人差し指の操作座標位置を特定する方法である。人差し指以外の指は、操作領域132を移動させない。よって、操作領域132で動かした指の操作座標位置を人差し指の操作座標位置として特定すればよい。
【0064】
二つ目は、携帯端末100を保持する指の配置関係を基準にして人差し指の操作座標位置を特定する方法である。携帯端末100を片手または両手で保持した際、人差し指は他の指より携帯端末100の上端に近い位置に置かれる。よって、操作領域132で検出された操作座標位置の内、最も上端に近いものを人指し指の操作座標位置として特定すればよい。
【0065】
なお、人差し指の操作座標位置の特定にあたっては、この二つの方法のいずれか一方を用いても良いし、二つの方法を組み合わせて用いても良い。
【0066】
<4−3. ユーザの指が伸ばされた状態と折り曲げられた状態>
ユーザの指が伸ばされた状態で操作領域132に接触させた場合およびユーザの指が折り曲げられた状態で操作領域132に接触させた場合において、縦方向における指の可動範囲150と横方向における指の可動範囲150は、上述したように、携帯端末100を片手で保持した場合と同じである。
【0067】
<4−4.指の可動範囲150の再設定>
ユーザの指の可動範囲150の再設定は、上述したように、携帯端末100を両手で保持した場合と同じである。
【0068】
なお、本実施の形態では、縦方向における指の可動範囲150の設定と横方向における指の可動範囲150の設定は、ユーザの指の接触面積が所定値よりも大きい場合と小さい場合に基づいて判断しているが、その他の方法でも良い。例えば、変換部155には、操作領域132に接触させたユーザの指の接触形状に基づいて、ユーザの指が伸ばされた状態で操作領域132に接触したのか、ユーザの指が折り曲げられた状態で操作領域132に接触したのかを判断させる。そして、ユーザの指が伸ばされた状態で操作領域132に接触したと判断した場合は、伸ばされたユーザの指の先端部の操作座標位置を表示領域122の上辺の表示座標位置に対応させて変換させる。また、ユーザの指が折り曲げられた状態で操作領域132に接触したと判断した場合は、折り曲げられたユーザの指の先端部の操作座標位置を表示領域122の下辺の表示座標位置に対応させて変換させる。このような方法でも良い。
【0069】
さらに、ユーザの指の可動範囲150は扇形状の外縁で囲まれた領域としてもよい。この扇形状の外縁で囲まれた領域は、方形状の外縁で囲まれた領域よりも、ユーザの指が可動しやすい形状の外縁で囲まれた領域となる。すなわち、操作領域132における操作座標位置と表示領域122における表示座標位置との対応の精度を向上でき、ユーザの使い勝手を向上できる。例えば、図9に示すような扇形状の外縁で囲まれた扇形領域180であれば良い。この場合、扇形状の外縁で囲まれた扇形領域180と表示領域122とは同じ方形状ではないので、操作領域132の操作座標位置を表示領域122の表示座標位置に対応させて変換する際に、操作座標位置に応じて変換率を変化させる必要がある。
【0070】
<5.操作領域132に接触させたユーザの指の接触状態>
上述したように、ユーザの指の接触面の輪郭線170aと接触面積に基づいて、指の可動範囲150を設定することが可能である。具体的には、操作領域132にユーザの指を接触させると、静電容量の変化が検出される。このとき、指を伸ばした状態と指を折り曲げた状態では、ユーザの指の接触面の輪郭線170aと接触面積が異なるので静電容量も異なる。すなわち、静電容量の違いによって、指を伸ばした状態であるのか指を折り曲げた状態であるのかを区別することができる。
【0071】
しかし、操作領域132に接触させる指の接触圧が大きくなると接触面積は大きくなり、操作領域132に接触させる指の接触圧が小さくなると接触面積が小さくなるので、指の接触圧によって、指の状態を認識する精度が低下する場合がある。
【0072】
<5−1.指の可動範囲の他の方法による検出>
図10A、図10Bは、ユーザの指の接触状態を説明する説明図である。操作領域132を介してユーザの指が透視された状態を示している。
【0073】
操作領域132としてマトリックス方式や画像認識方式等を用いれば、指の位置だけでなく、指の接触面積や接触圧を検出することが可能となる。特に、撮像装置を操作パネル130の内側に配置して、画像認識方式を用いれば、操作領域132に触れていないが近接している物の位置を検出することも可能となる。すなわち、撮像装置を配置しているので、操作領域132におけるユーザの指の接触面の輪郭線170aとユーザの指の輪郭線170bが認識される。図10Aでは、ユーザの指の接触面の輪郭線170aとユーザの指の輪郭線170bとの輪郭差は大きく、図10Bでは、ユーザの指の接触面の輪郭線170aとユーザの指の輪郭線170bとの輪郭差は小さい。
【0074】
この構成によれば、操作領域132に触れていないが近接している物の位置を検出できるので、ユーザの指の接触面の輪郭線170aだけでなく、操作領域132に触れていないユーザの指の輪郭線170bを検出することが可能となる。
【0075】
本実施の形態では、操作領域132における操作座標位置を表示領域122における表示座標位置に変換する変換部155が、操作領域132におけるユーザの指の接触面の輪郭線170aとユーザの指の輪郭線170bに基づいて操作領域132に接触させたユーザの指の接触状態を算出して検出している。
【0076】
そして、接触面積に基づいて、例えば、人差し指の長さを推定して、正確に指の可動範囲150を設定する。具体的には、接触面の面積が小さい場合には、可動範囲150を小さく、接触面の面積が大きい場合には、可動範囲150を大きく設定する。
【0077】
しかし、人差し指の長さは個人により千差万別である。特に子供と大人では大きく違う。接触面積の大きさもまた、個人により千差万別である。強めに指を押し付ける癖があれば接触面積が大きくなりやすく、弱めに指を押し付ける癖があれば接触面積が小さくなりやすい。例えば、同じ長さの人差し指を持つ二人の大人がいた場合でも、必ずしも指の接触面積が同じになるとは限らない。
【0078】
ここで、強めに指を押し付ける癖のある人は、接触面積も大きいが接触面の圧力も大きくなる。一方、弱めに指を押し付ける癖のある人は、接触面積が小さいが、接触面の圧力も小さい。これら2つの関係には相関があるので、接触面積(x)と接触圧(y)のf(x、y)関数として定義すれば、どちらの場合でも同じ人差し指の長さを算出することが可能となる。
【0079】
また、操作領域132におけるユーザの指の接触面の輪郭線170aと、操作領域132に接触していないユーザの指の輪郭線170bとの比率から、圧力と同等の値を算出することにより、関数f(x、y)を用いて、人差し指の長さを算出することも可能である。
【0080】
しかし、上記の関数f(x、y)は多くの人をサンプルとしてデータ化する必要があり、これを設計段階で実施するためには多くの時間と費用を要する。そこで、携帯端末100に備えられることが多い通信部を利用してデータ化を図ってもよい。実際にユーザが利用している状況での測定値を、サーバまたは他の携帯端末100に送信することによって情報を収集し、関数f(x、y)の精度を向上させることが可能である。
【0081】
具体的には、指の可動範囲150、指の接触圧、指の接触面積、接触面の指の輪郭線170a、接触面に接触していない指の輪郭線170bの5つのデータを収集し、その相関関係を算出する。
【0082】
これによって、設計段階で綿密な調査と設計を行って、関数f(x、y)を求めなくても、多数のユーザが本方式の入力装置を使うことにより、接触面に関する情報と、それに対して適切な指の可動範囲の組み合わせが可能となる。
【0083】
<変換部155による変換>
操作領域132における指の可動範囲150は非常に限られている。したがって、操作領域132における指の可動範囲150の操作座標位置と表示領域122における表示座標位置とを対応させる必要がある。このために、変換部155は以下の変換をすればよい。
【0084】
例えば、図11に示すように、ユーザの指の可動範囲150を表示領域122と対応する仮想領域190と所定の比率で対応づける。図11では、可動範囲150が仮想領域190の1/5倍の大きさとして対応づける。かつ、ユーザの指の可動範囲150の操作座標位置を所定比率の逆数倍に拡大する。図11では、可動範囲150の操作座標位置を座標A(x,y)とした場合、この座標A(x,y)を5倍した座標B(5x、5y)として仮想領域190の座標位置に対応づける。この座標B(5x、5y)の座標位置を座標C(5x、5y)の表示座標位置と一対一に対応させて変換する。この結果、操作座標位置が表示座標位置と一対一に対応する。
【0085】
または、例えば、図12に示すように、表示領域122をユーザの指の可動範囲150と対応する仮想領域190と所定の比率で対応づける。図12では、表示領域122が仮想領域190の5倍の大きさとして対応づける。かつ、仮想領域190の座標位置を所定比率の逆数倍に拡大する。図12では、表示領域122の表示座標位置を座標C(5x,5y)とした場合、この座標C(5x,5y)を1/5倍した座標B(x、y)として仮想領域190の座標位置に対応づける。この座標B(x、y)の座標位置を座標A(x、y)の操作座標位置と一対一に対応させて変換する。この結果、操作座標位置が表示座標位置と一対一に対応する。
【0086】
<まとめ>
以上のように本実施の形態によれば、操作領域132に接触させたユーザの指の接触状態に基づいて、操作領域132におけるユーザの指の可動範囲150を設定している。そして、ユーザの指の可動範囲150における操作座標位置と表示領域122の表示座標位置とを対応させている。
【0087】
すなわち、ユーザの指の可動範囲150が制約されやすくても、ユーザの指の可動範囲150における操作座標位置と表示領域122の表示座標位置とを対応させているので、操作領域132における指の座標位置を表示領域122の端部領域まで容易に反映することができる。
【0088】
また、ユーザの指の可動範囲150は扇形状の外縁で囲まれた扇形領域180としている。これは、指が付け根を中心に円弧状に回転しやすいからである。これによって、ユーザの指の可動範囲150の全領域において、円滑に指を動かせるので、操作性を向上できる。
【0089】
また、操作領域132に接触させたユーザの指の接触状態を、操作領域132におけるユーザの指の接触面の輪郭線170aとユーザの指の輪郭線170bに基づいて算出している。これによって、接触圧が異なることに起因する操作精度の低下を抑制できる。
【産業上の利用可能性】
【0090】
ここに開示された技術によれば、操作領域における指の座標位置を表示領域の端部領域まで反映することが容易なので、表示入力装置として有用である。
【符号の説明】
【0091】
100 携帯端末
110 筐体
120 表示パネル
122 表示領域
124 アイコン
126 ポインタ
130 操作パネル
132 操作領域
140 入力ボタン
150 可動範囲
155 変換部
160 表示入力装置
170a 輪郭線
170b 輪郭線
180 扇形領域
190 仮想領域

【特許請求の範囲】
【請求項1】
表示領域を有する表示パネルと、前記表示パネルの裏面側に配置され操作領域を有する操作パネルと、前記操作領域における操作座標位置を前記表示領域における表示座標位置に変換する変換部を備え、
前記変換部は、
前記操作領域に接触させたユーザの指の接触状態に基づいて、前記操作領域における前記ユーザの指の可動範囲を設定し、
前記ユーザの指の可動範囲における操作座標位置と前記表示領域の表示座標位置とを対応させて変換する
表示入力装置。
【請求項2】
前記ユーザの指の可動範囲は扇形状の外縁で囲まれた領域とした
請求項1に記載の表示入力装置。
【請求項3】
前記変換部は、
前記操作領域に接触させた前記ユーザの指の接触面積が所定値よりも大きい場合は、前記ユーザの指が伸ばされた状態で前記操作領域に接触したと判断し、
伸ばされた前記ユーザの指の先端部の操作座標位置を前記表示領域の上辺の表示座標位置に対応させて変換する
請求項1に記載の表示入力装置。
【請求項4】
前記変換部は、
前記操作領域に接触させた前記ユーザの指の接触面積が所定値よりも小さい場合は、前記ユーザの指が折り曲げられた状態で前記操作領域に接触したと判断し、
折り曲げられた前記ユーザの指の先端部の操作座標位置を前記表示領域の下辺の表示座標位置に対応させて変換する
請求項1に記載の表示入力装置。
【請求項5】
前記変換部は、
前記操作領域に接触させた前記ユーザの指の接触形状に基づいて、
前記ユーザの指が伸ばされた状態で前記操作領域に接触したのか、前記ユーザの指が折り曲げられた状態で前記操作領域に接触したのかを判断し、
前記ユーザの指が伸ばされた状態で前記操作領域に接触したと判断した場合は、伸ばされた前記ユーザの指の先端部の操作座標位置を前記表示領域の上辺の表示座標位置に対応させて変換し、
前記ユーザの指が折り曲げられた状態で前記操作領域に接触したと判断した場合は、折り曲げられた前記ユーザの指の先端部の操作座標位置を前記表示領域の下辺の表示座標位置に対応させて変換する
請求項1に記載の表示入力装置。
【請求項6】
前記変換部は、
前記操作領域に接触させた前記ユーザの指の接触状態を、前記操作領域における前記ユーザの指の接触面の輪郭線と前記ユーザの指の輪郭線に基づいて算出する
請求項1に記載の表示入力装置。
【請求項7】
撮像装置を配置し、
前記操作領域における前記ユーザの指の接触面の輪郭線と前記ユーザの指の輪郭線は前記撮像装置で認識する
請求項6に記載の表示入力装置。
【請求項8】
前記変換部は、
前記ユーザの指の可動範囲を前記表示領域と対応する仮想領域と所定比率で対応づけ、かつ、前記ユーザの指の可動範囲の操作座標位置を前記所定比率の逆数倍に拡大して、前記ユーザの指の可動範囲の操作座標位置を前記仮想領域の座標位置に対応づけることによって、前記操作座標位置を前記表示座標位置と一対一に対応させて変換する
請求項1に記載の表示入力装置。
【請求項9】
前記変換部は、
前記表示領域を前記ユーザの指の可動範囲と対応する仮想領域と所定比率で対応づけ、かつ、前記仮想領域の座標位置を前記所定比率の逆数倍に拡大して、前記仮想領域の座標位置を前記表示領域の表示座標位置に対応づけることによって、前記操作座標位置を前記表示座標位置と一対一に対応させて変換する
請求項1に記載の表示入力装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4A】
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【図4B】
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【図5A】
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【図5B】
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【図6A】
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【図6B】
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【図7A】
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【図7B】
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【図8】
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【図9】
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【図10A】
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【図10B】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2013−20333(P2013−20333A)
【公開日】平成25年1月31日(2013.1.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−151567(P2011−151567)
【出願日】平成23年7月8日(2011.7.8)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】