説明

表示装置

【課題】表示部の照明が消えた状態では表示装置の中のマーク等が見えない意匠性に優れた表示装置を提供する。
【解決手段】筐体100と、筐体100内に保持され表示マークが記録されたホログラム200と、筐体の外からホログラム200の方を見る位置に配置されたスモーク部材130と、ホログラム200に参照光を照射する参照光源300と、を有して表示装置10を構成する。これにより、参照光源300により照明を行わない場合は、スモーク部材130を通して表示マークが筐体100の外部から見えない状態(ブラックアウト状態)とされ、参照光源300により照明を行った場合には、スモーク部材130を通して表示マークが筐体100の外部から見える状態とすることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、表示装置に関し、特に、記号、サイン、絵、図形、その他のマークが照明されたときだけ見える表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、車両の運転席の中央部付近に配置されたセンタークラスタには、例えばカーナビゲーション、オーディオやエアコンディショナ等の各種の車載機器を操作するための操作入力装置が設けられている。この操作入力装置は、各種車載機器に対応したスイッチ操作面を有するタッチスイッチパネルをセンタークラスタの意匠パネルとして備えており、乗員(操作者)がタッチスイッチパネルをタッチ操作することで、各種車載機器の動作設定を行うようになっている。
【0003】
この操作入力装置には、乗員によりタッチ操作された際にタッチスイッチパネルの背面側を照らしてスイッチ操作面の視認性を高める照明装置(バックライト)が設けられている。乗員がタッチスイッチパネルを操作しないと、照明装置が消灯してスイッチ操作面が消えたブラックアウトのままの状態に維持されており、スイッチ操作面を見えにくくすることでセンタークラスタの意匠性を高めている。
【0004】
一方、スイッチ操作面に操作者の手指が近づくと、バックライトが第1のパターンで点灯され、タッチパネル(意匠パネル)の表面に光透過パターンを浮かび上がらせ、その浮かび上がった部分に操作者の手指が接触すると、第2のパターンで点灯され、光透過パターンの輝度、色等を変化させる静電容量式スイッチ表示装置が提案されている(例えば、特許文献1参照。)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2006−128019号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、スイッチ操作面が消えたブラックアウトのままの状態であっても、表示装置の中のマーク等が見えてしまう等の問題があり、表示部の意匠性の点で改良の余地があるとされていた。
【0007】
従って、本発明の目的は、表示部の照明が消えた状態では表示装置の中のマーク等が見えない意匠性に優れた表示装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
[1]本発明は、上記目的を達成するために、筐体と、前記筐体内に保持され、マークが記録されたホログラムと、前記筐体の外から前記ホログラムの方を見る位置に配置されたスモーク部材と、前記ホログラムに参照光を照射する参照光源と、を有することを特徴とする表示装置を提供する。
【0009】
[2]前記ホログラムは、複数のマークが異なる方向からの参照光により記録されたものであることを特徴とする上記[1]に記載の表示装置であってもよい。
【0010】
[3]また、前記ホログラムは、前記参照光源から光学部材を介して参照光を照射されることを特徴とする上記[1]又は[2]に記載の表示装置であってもよい。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、表示部の照明が消えた状態では表示装置の中のマーク等が見えない意匠性に優れた表示装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】図1(a)は、本発明の第1の実施の形態に係る表示装置の構成を示す断面図であり、図1(b)は、表示面側から見た正面図である。
【図2】図2は、本発明の第1の実施の形態に係る表示装置において、ホログラム記録をする場合の光学配置例を示すホログラフィー光学系の配置図である。
【図3】図3(a)は、本発明の第2の実施の形態に係る表示装置の構成を示す断面図であり、図3(b)は、表示面側から見た正面図である。
【図4】図4(a)は、本発明の第3の実施の形態に係る表示装置の構成を示す断面図であり、図4(b)は、表示面側から見た第1のマークが表示された正面図であり、図4(c)は、表示面側から見た第2のマークが表示された正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
(本発明の第1の実施の形態に係る表示装置10の構成)
図1(a)は、本発明の第1の実施の形態に係る表示装置の構成を示す断面図であり、図1(b)は、表示面側から見た正面図である。本発明の第1の実施の形態に係る表示装置10は、筐体100と、筐体100内に保持され表示マークが干渉縞として記録されたホログラム200と、筐体10の外からホログラム200の方を見る位置に配置されたスモーク部材130と、ホログラム200に参照光を照射する参照光源300と、を有して構成されている。この表示装置10は、参照光源300により照明を行わない場合は、スモーク部材130を通して表示マーク50が筐体100の外部から見えない状態(ブラックアウト状態)とされ、参照光源300により照明を行った場合には、スモーク部材130を通して表示マーク50が筐体100の外部から見える状態とされる。
【0014】
筐体100は、ホログラム200を内部に収容する円筒状、箱状等のもので、本実施の形態では、ホログラム200を支持するホログラム枠110、その外部に位置し参照光源300を支持する光源枠120、及び、マーク表示50を見る方向からホログラム200を遮るホログラム200の前面に配置される加飾パネルであるスモーク部材130とから構成されている。
【0015】
ホログラム枠110は、その内部に表示マークが干渉縞として記録されたホログラム200を収容する。ホログラム枠110の外周部には、参照光源300を配置した光源枠120が外嵌されている。また、参照光源300により表示マークが表示される(浮かび上がる)方向には光の透過率が小さく(例えば、10〜50%)設定されて例えば灰色又は黒色に見えるスモーク部材130が設けられている。
【0016】
本実施の形態では、表示マークはホログラム200に干渉縞として形成されているので、参照光源300が消灯しているときは表示マークとして表示されず、スモーク部材130を介して筐体100の内部を見ることができない。これにより、参照光源300が消灯しているときは、表示装置10の表示状態はブラックアウト状態であり、この状態で従来のように中の表示マークがうっすら見えるということはない。
【0017】
ホログラム200は、後述する図2に示すホログラフィー光学系により表示マークが干渉縞としてホログラム記録されたものである。物体照明光源420によりレチクル(reticle)450上の表示マークが物体光L1とされ、それとコヒーレントな参照光L2とにより、ホログラム記録媒体210上に干渉縞として記録されて形成されたものである。
【0018】
参照光源300は、後述するホログラム記録時に使用する物体照明光源420と同じ波長のレーザ光源である。例えば、410nmの青紫色、532nmの緑色、680nmの赤色等の種々の可視光を発するレーザ光源を使用することができる。
【0019】
(ホログラム200の形成方法)
図2は、本発明の第1の実施の形態に係る表示装置において、ホログラム記録をする場合の光学配置例を示すホログラフィー光学系の配置図である。
【0020】
物体照明光源420から出射されたレーザ光は、コリメートレンズ430により平行光とされ、ハーフミラー440を透過してレチクル450に入射される。レチクル450に形成された表示マークは、画像情報としてレーザ光に重畳され、拡散レンズ450とコリメートレンズ410により拡大されたレーザ光とされる。このレーザ光は、物体光L1としてホログラム記録媒体210に投影される。
【0021】
一方、ハーフミラー440で反射されたレーザ光は、反射ミラー470で反射され、投影レンズ480によりホログラム記録媒体210に参照光L2として拡大投影される。
【0022】
上記の物体光L1と参照光L2はコヒーレントであり、位相が一致するように光路長を調整することにより、ホログラム記録媒体210に干渉縞を形成し、ホログラム記録がなされる。
【0023】
干渉縞としてホログラム記録される表示マークは、レチクル450に形成された表示マークである。レチクル450には、参照光源300の照射によりスモーク部材130を通して浮かび上がらせたい記号、サイン、絵、図形等の表示マークが形成されている。この表示マークは、平面状(2D)でも立体状(3D)でもよい。
【0024】
上記のように、図2に示すホログラフィー光学系により、物体照明光源420によりレチクル450上の表示マークが物体光L1とされ、それとコヒーレントな参照光L2により、ホログラム記録媒体210上に干渉縞として記録されて形成される。
【0025】
上記のように記録されたホログラム記録媒体210は、図1に示すように、ホログラム枠110の同じ位置にホログラム200として配置される。尚、他の方式により形成されたもの、例えば、上記の露光による干渉縞を光硬化樹脂に記録し、これにより形成したスタンパで樹脂に転写して形成したホログラムを使用することも可能である。
【0026】
(本発明の第1の実施の形態に係る表示装置10の動作)
図1の構成において、参照光源300が点灯していないときは、ホログラム200が参照光L2により照射されず表示マークは表示されない。この状態は、スモーク部材130を介して筐体100の内部を見ることができず、スモーク部材130が灰色、黒色等のブラックアウト状態であり、筐体100の外部から内部は見えない状態である。
【0027】
参照光源300が点灯されると、ホログラム200が参照光L2により照射されて表示マークが表示される。すなわち、記号、サイン、絵、図形等の表示マーク50が、図1(b)に示すように、スモーク部材130を通して浮かび上がり、3D表示等がなされる。尚、参照光源300は、例えば、操作者のスイッチのオン操作により点灯する場合、また、他の機器の操作、動作等に連動して点灯する場合等が挙げられる。これにより、この表示装置10をスイッチの表示部として使用することにより、新規なスイッチ装置を構成することもできる。
【0028】
(第1の実施の形態の効果)
本発明の第1の実施の形態に係る表示装置10によれば、次のような効果を有する。
(1)本実施の形態に係る表示装置10は、スモーク部材130を通して浮かび上がらせてマーク表示したい記号、サイン、絵、図形等をホログラム200に干渉縞として記録しており、図形等のマークとしては存在しない。従って、参照光源300が点灯していない状態、すなわち、ブラックアウト状態では、外部からスモーク部材130を通して内部を見ても、図形等のマークを見ることはできない。これにより、表示部の照明が消えた状態では表示装置の中のマーク等が見えない意匠性に優れた表示装置を提供することができる。すなわち、優れたブラックアウト状態を有する意匠性に優れた表示装置を実現できる。また、この表示装置を備えた種々の機器等を実現できる。
(2)本実施の形態に係る表示装置10は、図形等のマークが発光する発光表示素子を必要としないので、それらの発光表示素子や配線等のための基板等を必要としない。これにより、コストを要するプリント基板等を削減でき、また、組み立て性も向上するので、コスト低減の効果に優れた表示装置を実現できる。
【0029】
(第2の実施の形態)
図3(a)は、本発明の第2の実施の形態に係る表示装置の構成を示す断面図であり、図3(b)は、表示面側から見た正面図である。第2の実施の形態では、第1の実施の形態の構成に光学ブロック500を加えて、参照光源300からの参照光を光学ブロック500を介してホログラム200へ側方から照射させるエッジリッド型のホログラム構成としている。以下、光学ブロック500を備えたエッジリッドホログラムについて説明し、重複する構成の説明は省略する。
【0030】
光学ブロック500は、光学ガラスで形成された6面体ブロックであり、図3(a)に示すように、面500bにおいてホログラム200と接して貼り合わされている。参照光源300から出射された参照光L2は、入射面500aからブロック内へ入射され、ホログラム200を照射し、一部の参照光は面500cに達する。このホログラム200への参照光L2による照射によって、干渉縞として記録されている図形等のマークが、図3(b)に示すように、スモーク部材130を通して浮かび上がって表示マーク50が表示される。
【0031】
上記した面500cに到達した一部の参照光は、反射して多重反射光となり、ホログラムの記録または再生に悪影響を及ぼす。そこで、面500bで反射して面500cに入射する一部の参照光の面500cへの入射角をブリュースター角に設定することで、上記のような悪影響を抑制することができる。
【0032】
ブリュースター角は、異なる物質の界面においてp偏光の反射率が0となる入射角である。光学ブロック500の屈折率を1.51、空気の屈折率を1とすれは、ブリュースター角は、約57°である。よって、参照光の面500cへの入射角をこのブリュースター角に設定することにより、光学ブロック500内での多重反射を抑制することができる。
【0033】
(第2の実施の形態の効果)
本発明の第2の実施の形態に係る表示装置10によれば、第1の実施の形態の効果に加えて次のような効果を有する。
(1)第2の実施の形態に係る表示装置10は、エッジリッド型のホログラム構成としているので、参照光L2のホログラム200へ入射角が大きい。これにより、奥行き方向(図2のL1方向)のスペースを必要としないので、コンパクトな表示装置10が実現できる。
(2)光学ブロック500を設けることにより、参照光を側方からホログラム200へ照射させることができるので、上記のようにコンパクトな表示装置10が実現できる。
(3)光学ブロック500において、面500bで反射して面500cに入射する一部の参照光の面500cへの入射角をブリュースター角に設定する構成とすることで、光学ブロック500内での多重反射を抑制することができる。これにより、ホログラムの記録または再生において、高品質なホログラムの形成および再生が可能となる。
【0034】
(第3の実施の形態)
図4(a)は、本発明の第3の実施の形態に係る表示装置の構成を示す断面図であり、図4(b)は、表示面側から見た第1のマークが表示された正面図であり、図4(c)は、表示面側から見た第2のマークが表示された正面図である。第3の実施の形態では、第1の実施の形態と異なり、2つの参照光源300A、300Bを設けている。以下、第1の実施の形態と異なる構成について説明し、重複する構成の説明は省略する。
【0035】
図4(a)に示すように、光源枠120には上下2箇所に参照光源300A、300Bが設けられている。また、ホログラム220には、浮かび上がらせてマーク表示したい記号、サイン、絵、図形等の2つの異なるマークがそれぞれ干渉縞としてホログラム記録されている。これは、図2で示したようなホログラフィー光学系で多重露光により多重記録することで可能となる。尚、多重露光では、インコヒーレントなレーザ光により異なるマークが独立に記録されるので、本表示装置10では、それぞれに対応した参照光源300A、300Bが設けられている。
【0036】
参照光源300Aが点灯されると、図4(b)に示すように、ホログラム220が参照光により照射されて表示マーク50が表示される。すなわち、図4(b)に示すような記号、サイン、絵、図形等の表示マーク50が、スモーク部材130を通して浮かび上がり、3D表示等がなされる。
【0037】
一方、参照光源300Bが点灯されると、図4(c)に示すように、ホログラム220が参照光により照射されて表示マーク51が表示される。すなわち、図4(b)に示すマークとは異なる記号、サイン、絵、図形等の表示マーク51が、スモーク部材130を通して浮かび上がり、3D表示等がなされる。
【0038】
上記の2種類のマーク表示は、参照光源300Aと参照光源300Bをインコヒーレントな光とすることにより、明確に異なる図柄としてマーク表示することができる。
【0039】
尚、本実施の形態では、2つの参照光源300A、300Bで2つのマーク表示をする構成を示したが、3以上の複数のマーク表示をする構成とすることも可能である。複数Nのマーク表示を行なう構成では、N個の表示マークが記録されたホログラムを用意して、このホログラムをそれぞれの表示マークに対応したN個の参照光源で照明する。これにより、N個の表示マークを個別に表示することができる。また、N個の表示マークのうちのいくつかを同時に表示することもできる。
【0040】
N個の表示マークは、図2で示したようなホログラフィー光学系で、N個のインコヒーレントなレーザ光で、独立して多重露光される。これらのN個の表示マークを連続的に再生することで、動画表示とすることも可能である。
【0041】
(第3の実施の形態の効果)
本発明の第3の実施の形態に係る表示装置10によれば、第1の実施の形態の効果に加えて次のような効果を有する。
(1)複数の表示マークが記録されたホログラムを使用することにより、異なる表示マークを必要に応じて切り替えて表示する可変表示が可能な表示装置が実現できる。
(2)2以上の複数の表示マークを必要に応じて切り替えて独立に表示したり、同時に表示したりできるので、新たな表示方式が可能となる。
【0042】
以上、本発明のいくつかの実施の形態を説明したが、これらの実施の形態は、一例に過ぎず、特許請求の範囲に係る発明を限定するものではない。例えば、第1〜3の実施の形態において、ホログラム光学系はレンズ、ミラー等で構成するものとして説明したが、光学系の一部に光ファイバー等の光学素子を使用したホログラム光学系として構成することも可能である。これら新規な実施の形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、本発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更等を行うことができる。また、これら実施の形態の中で説明した特徴の組合せの全てが発明の課題を解決するための手段に必須であるとは限らない。さらに、これら実施の形態は、発明の範囲及び要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0043】
10…表示装置
50、51…表示マーク
110…ホログラム枠
120…光源枠
130…スモーク部材
200…ホログラム
210…ホログラム記録媒体
220…ホログラム
300、300A、300B…参照光源
410…コリメートレンズ
420…物体光源
430…コリメートレンズ
440…ハーフミラー
450…レチクル
460…拡散レンズ
470…反射ミラー
480…投影レンズ
500…光学ブロック

【特許請求の範囲】
【請求項1】
筐体と、
前記筐体内に保持され、マークが記録されたホログラムと、
前記筐体の外から前記ホログラムの方を見る位置に配置されたスモーク部材と、
前記ホログラムに参照光を照射する参照光源と、
を有することを特徴とする表示装置。
【請求項2】
前記ホログラムは、複数のマークが異なる方向からの参照光により記録されたものであることを特徴とする請求項1に記載の表示装置。
【請求項3】
前記ホログラムは、前記参照光源から光学部材を介して参照光を照射されることを特徴とする請求項1又は2に記載の表示装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−215770(P2012−215770A)
【公開日】平成24年11月8日(2012.11.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−81867(P2011−81867)
【出願日】平成23年4月1日(2011.4.1)
【出願人】(000003551)株式会社東海理化電機製作所 (3,198)
【Fターム(参考)】