説明

表面保護膜作成方法及び表面保護膜作成装置

【課題】本発明は、ハーフトーン型位相シフトマスクの洗浄時の劣化を少なくすることができる表面保護膜作成方法及び表面保護膜作成装置を提供することを目的とする。
【解決手段】本発明は、密閉したチャンバー内に超クリーンな空気又は窒素と酸素を含む混合気体を導入しながら、石英基板上にMoSiO又はMoSiONのモリブデンシリサイド膜とクロム系の遮光膜を塗布したハーフトーン型位相シフトマスクに対し、126nm紫外線から172nm紫外線エキシマ光を照射し、前記モリブデンシリサイド膜の表面に酸化保護膜を形成することで、マスクの洗浄1回あたりの位相差の変動を0.2°以下にすることを特徴とする表面保護膜作成方法の構成とした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マスクへの紫外線照射による表面保護膜作成方法及び表面保護膜作成装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ハーフトーン型位相シフトマスクは、石英基板上にモリブデンシリサイド等のハーフトーン膜とクロム系の遮光膜を塗布し、光透過部、半透光部及び遮光部からなるパターンを形成することで、透過光の位相をずらすことができるマスクである。
【0003】
特許文献1に記載されているように、ガラス基板のエッチング時における遮光膜の断面形状の劣化を抑えるマスクブランク及びハーフトーン型位相シフトマスクの発明も公開されている。
【特許文献1】特開2007−271661号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、マスクのパターン形成後、ペリクル貼付前に最終洗浄を行うが、多量の薬液、例えば、硫酸、過酸化水素水、高濃度オゾン水、アンモニア水、アルコール類、有機系剥離液などを用いるため、モリブデンシリサイドのパターン表面が劣化する。
【0005】
半透光部は光の透過率を変え、光の位相を180°反転させた部分であるが、位相差は±3°以下に制御する必要がある。洗浄の繰り返しによる劣化を考慮すると、例えば10回使用する場合は、洗浄1回あたりの位相差の変動を0.3°以下に抑えなければならない。
【0006】
そこで、本発明は、ハーフトーン型位相シフトマスクの洗浄時の劣化を少なくすることができる表面保護膜作成方法及び表面保護膜作成装置を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、上記の課題を解決するために、密閉したチャンバー内に超クリーンな空気又は窒素と酸素を含む混合気体を導入しながら、石英基板上にMoSiO又はMoSiONのモリブデンシリサイド膜とクロム系の遮光膜を塗布したハーフトーン型位相シフトマスクに対し、126nm紫外線から172nm紫外線エキシマ光を照射し、前記モリブデンシリサイド膜の表面に酸化保護膜を形成することで、マスクの洗浄1回あたりの位相差の変動を0.2°以下にすることを特徴とする表面保護膜作成方法の構成とした。
【発明の効果】
【0008】
本発明は、チャンバー内に超クリーンな空気等を導入した状態で紫外線エキシマ光を照射して、モリブデンシリサイドのパターン表面に酸化保護膜を形成することで、1回の洗浄における位相差の変動が0.2°以下となるので、マスクを洗浄して繰り返し使用することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
本発明は、ハーフトーン型位相シフトマスクの洗浄時の劣化を少なくするという目的を、密閉したチャンバー内に超クリーンな空気又は窒素と酸素を含む混合気体を導入しながら、石英基板上にMoSiO又はMoSiONのモリブデンシリサイド膜とクロム系の遮光膜を塗布したハーフトーン型位相シフトマスクに対し、126nm紫外線から172nm紫外線エキシマ光を照射し、前記モリブデンシリサイド膜の表面に酸化保護膜を形成することで実現した。
【実施例1】
【0010】
以下に、添付図面に基づいて、本発明である表面保護膜作成方法及び表面保護膜作成装置について詳細に説明する。
【0011】
表面保護膜作成方法は、密閉したチャンバー内に超クリーンな空気又は窒素と酸素を含む混合気体を導入しながら、石英基板上にMoSiO又はMoSiONのモリブデンシリサイド膜とクロム系の遮光膜を塗布したハーフトーン型位相シフトマスクに対し、126nm紫外線から172nm紫外線エキシマ光を照射し、前記モリブデンシリサイド膜の表面に酸化保護膜を形成することで、マスクの洗浄1回あたりの位相差の変動を0.2°以下にすることを特徴とする。
【0012】
また、紫外線の照射温度は20℃から400℃とし、紫外線照射に伴い発生する100ppm以上のオゾンガスをオゾンガス減衰フィルタで0ppmにして排出すると共に、排出圧力を利用して超クリーンな空気又は窒素と酸素を含む混合気体を導入することを特徴とする。
【0013】
図1は、本発明である表面保護膜作成装置の概略図である。表面保護膜作成装置1は、チャンバー3、紫外線照射装置4、及び給気部5等からなり、超クリーン空間6内に設置される。
【0014】
チャンバー3は、クリーン度がClass−1の超クリーン密閉空間であり、内部に設けたステージ3a上に処理対象のマスク2を載置する。給気部5から空気5bを供給し、排気部3bからオゾンガス等を排出する。
【0015】
紫外線照射装置4は、紫外線4bをマスク2に対して照射するランプモジュール4aを備えており、カバー4cで覆って内部の冷却した空気が外側に漏れないように密閉したものである。尚、紫外線4bは、波長が126nmの光から172nmのキセノンエキシマ光を使用する。
【0016】
給気部5は、取入口5aから超クリーン空間6内の空気5bを取り込んで、3箇所のノズル5bから空気5bを噴射することにより、チャンバー3内に超クリーンな空気5bを供給する。
【0017】
ノズル5bは、マスク2の周囲三方に設けられ、マスク2の周辺を超クリーンな雰囲気にすることができる。尚、空気5bには、窒素と酸素を含む混合気体(例えば、窒素と酸素の混合比が80:20)も含むものとする。
【0018】
超クリーン空間6は、クリーンルーム等を利用する。4層のフィルタ6bを設けたファンユニット6aを備えており、内部のクリーン度をClass−1の超クリーンな状態に維持することができる。
【0019】
紫外線4bの照射は、マスク2の周囲に超クリーンな空気5bが供給された状態で、温度を20℃から400℃の範囲で制御しながら5〜10分間行い、マスク2の表面に酸化保護膜9aを形成する。
【0020】
マスク2の周囲が窒素だけであると、マスク2の表面に酸化保護膜9aを形成することができないので、酸素も存在している必要がある。尚、酸素が存在していると、紫外線4bの照射により、オゾンガスも発生する。
【0021】
そこで、チャンバー3からオゾンガスを排出するが、その排気圧力を利用して超クリーン空間6の超クリーンな空気5bを導入することも可能である。尚、オゾンガスは、オゾンガス減衰フィルタ6cを介すことにより、100ppm以上あるオゾンガスの濃度を0ppmに減衰させて排出する。
【0022】
図2は、本発明である表面保護膜作成方法により酸化保護膜を形成したマスクの断面図である。
【0023】
マスク2は、パターンをウエハに転写するために使用するハーフトーン型位相シフトマスクであり、石英ガラスの基板7上にモリブデンシリサイド層9でパターンを形成し、その上にクロム層8でパターンを形成したものである。
【0024】
基板7においてモリブデンシリサイド層9及びクロム層8が無い部分は光透過部2aであり、露光時に光が100%通過する。モリブデンシリサイド層9及びクロム層8が有る部分は遮光部2cであり、光が100%遮断される。
【0025】
モリブデンシリサイド層9のみの部分は半透光部2bであり、光の透過率を4〜6%にし、位相を180°反転させることにより、位相の変わっていない光と位相の変わった光との干渉を利用して解像度を向上させたものである。
【0026】
尚、クロム層8は、クロムや酸化クロムなどクロム系の薄膜を塗布し、遮光部2cにする部分が残るように、パターン形成したものである。
【0027】
モリブデンシリサイド層9は、MoSiO(モリブデンシリサイド酸化物)又はMoSiON(モリブデンシリサイド酸化窒化物)などモリブデンシリサイド系の薄膜を塗布し、半透光部2bにする部分が残るように、パターン形成したものである。
【0028】
マスク2は、露光前にオゾン水や薬液等で洗浄されるが、洗浄時にモリブデンシリサイド層9がエッチングされ、位相差が変動する。尚、半透光部2bの位相差は3°以内に抑える必要がある。
【0029】
そこで、モリブデンシリサイド層9の表面をパッシベーションし酸化保護膜9aを形成することで、洗浄時に薬液等でエッチングされにくくなり、位相差の変動も小さく抑えることができ、マスク2を繰り返し使用することが可能となる。
【0030】
図3は、本発明である表面保護膜作成方法を適用した場合と適用しない場合の位相差の変動を示すグラフである。
【0031】
図3の上段は、半導体製造工程における露光時の光源がフッ化クリプトンエキシマ光(波長248nm)であるマスクに対し、MoSiOで半透光部を設けてパターン形成し洗浄する前に172nmの紫外線を照射した場合と照射しない場合について、位相差の変動を比較したものである。
【0032】
紫外線を照射しない場合における洗浄後の位相差の変動は、−0.4°、−0.45°、−0.55°、−0.7°、−1.2°、−1.6°であり、4回目の洗浄までは少しずつ変動の度合いが拡がっていくが、5回目の洗浄で大きく位相差が変動している。
【0033】
紫外線を照射した場合における洗浄後の位相差の変動は、0.2°、0.21°、0.22°、0.21°、0.23°、0.24°であり、6回洗浄してもほとんど位相差の変動はない。
【0034】
図3の下段は、半導体製造工程における露光時の光源がフッ化アルゴンエキシマ光(波長193nm)であるマスクに対し、MoSiONで半透光部を設けてパターン形成し洗浄する前に172nmの紫外線を照射した場合と照射しない場合について、位相差の変動を比較したものである。
【0035】
紫外線を照射しない場合における洗浄後の位相差の変動は、−0.4°、−0.5°、−1°、−1.2°、−1.4°、−1.6°であり、3回目の洗浄で大きく位相差が変動し、その後、変動度合いが拡がっていく。
【0036】
紫外線を照射した場合における洗浄後の位相差の変動は、0.2°、0.23°、0.2°、0.21°、0.23°、0.24°であり、6回洗浄してもほとんど位相差の変動はない。
【0037】
どちらのマスクでも、紫外線を照射して半透光部の表面に酸化保護膜を形成した場合、複数回洗浄しても位相差の変動はほとんど無く、パターン品質が維持されることから、同じマスクを洗浄して繰り返し使用することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】本発明である表面保護膜作成装置の概略図である。
【図2】本発明である表面保護膜作成方法により酸化保護膜を形成したマスクの断面図である。
【図3】本発明である表面保護膜作成方法を適用した場合と適用しない場合の位相差の変動を示すグラフである。
【符号の説明】
【0039】
1 表面保護膜作成装置
2 マスク
2a 光透過部
2b 半透光部
2c 遮光部
3 チャンバー
3a ステージ
3b 排気部
4 紫外線照射装置
4a ランプモジュール
4b 紫外線
4c カバー
5 給気部
5a 取入口
5b ノズル
5c 空気
6 超クリーン空間
6a ファンユニット
6b フィルタ
6c オゾンガス減衰フィルタ
7 基板
8 クロム層
9 モリブデンシリサイド層
9a 酸化保護膜

【特許請求の範囲】
【請求項1】
密閉したチャンバー内に超クリーンな空気又は窒素と酸素を含む混合気体を導入しながら、石英基板上にMoSiO又はMoSiONのモリブデンシリサイド膜とクロム系の遮光膜を塗布したハーフトーン型位相シフトマスクに対し、126nm紫外線から172nm紫外線エキシマ光を照射し、前記モリブデンシリサイド膜の表面に酸化保護膜を形成することで、マスクの洗浄1回あたりの位相差の変動を0.2°以下にすることを特徴とする表面保護膜作成方法。
【請求項2】
紫外線照射に伴い発生する100ppm以上のオゾンガスをオゾンガス減衰フィルタで0ppmにして排出すると共に、排出圧力を利用して超クリーンな空気又は窒素と酸素を含む混合気体を導入することを特徴とする請求項1に記載の表面保護膜作成方法。
【請求項3】
紫外線の照射温度が20℃から400℃であることを特徴とする請求項1又は2に記載の表面保護膜作成方法。
【請求項4】
密閉したチャンバー内に超クリーンな空気又は窒素と酸素を含む混合気体を導入するガスノズルと、前記チャンバー内に載置した石英基板上にMoSiO又はMoSiONのモリブデンシリサイド膜とクロム系の遮光膜を塗布したハーフトーン型位相シフトマスクに対し126nm紫外線から172nm紫外線エキシマ光を照射するランプモジュールとからなり、前記モリブデンシリサイド膜の表面に酸化保護膜を形成することでマスクの洗浄1回あたりの位相差の変動を0.2°以下にすることを特徴とする表面保護膜作成装置。
【請求項5】
4層のフィルターを有するファンユニットにより、チャンバー内を超クリーン空間とすることを特徴とする請求項4に記載の表面保護膜作成装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate