説明

表面欠陥検知方法

【課題】物体の表面欠陥を容易に検知することができる表面欠陥検知方法を提供する。
【解決手段】表面欠陥検知装置1を用いて物体10の表面欠陥を検知する場合、まず、撮像部2により、物体10の表面10aの画像を取得する。続いて、画像解析部3により、当該画像の明度のヒストグラムを生成し、このヒストグラムにおける第1及び第2階調の間の中央値を二値化レベルに設定する。そして、画像解析部3により、設定した二値化レベルで画像11に二値化処理を施す。これにより、表面欠陥を目視でも判別可能な物体10の表面10aの画像が取得されることとなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、表面欠陥検知方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の表面欠陥検知方法としては、例えば特許文献1に記載されているように、物体の表面(被検査面)に光源から光を照射して所定の明暗パターンを形成すると共に、当該表面の画像をCCDカメラで取得し、取得した画像に基づいて表面上に存在する表面欠陥(例えば、凹凸欠陥、塗料ブツ、キズ及び汚れ等)を検出するものが知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平11−63959号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述したような表面欠陥検知方法では、画像処理が複雑であり、また、光源等の設定条件が厳しいものとなる場合がある。さらに、検知対象となる物体の違いによって調整や閾値設定が困難になってしまう問題がある。
【0005】
そこで、本発明は、物体の表面欠陥を容易に検知することができる表面欠陥検知方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を達成するために、本発明に係る表面欠陥検知方法は、物体の表面欠陥を検知するための表面欠陥検知方法であって、物体の表面の画像を取得する画像取得工程と、画像取得工程で取得した画像に二値化処理を施す二値化処理工程と、を備え、二値化処理工程は、画像取得工程で取得した画像についての階調に関する明度分布を取得し、明度分布において、明度が最も高い第1ピーク値のときの第1階調と、明度が第1ピーク値の次に高い第2ピークのときの第2階調と、を導出し、第1及び第2階調の間の値を、二値化処理を行うための閾値となる二値化レベルとして、画像に二値化処理を施すこと、を特徴とする。
【0007】
この本発明の表面欠陥検知方法では、物体の表面の画像を取得し、この画像の明度分布における第1及び第2ピーク値から定まる二値化レベルによって当該画像に二値化処理を施している。これにより、表面欠陥について判別可能な画像を取得することができる。これは、物体表面の欠陥部分の明るさは、正常部分の明るさに対し、そのピーク値の階調が異なるという知見を見出したことによるものである。その結果、本発明によれば、複雑な画像処理や光源等の設定を不要にして、また、検知対象となる物体の違いよる調整や設定を不要にして、表面欠陥を判別可能な画像を取得することができる。すなわち、物体の表面欠陥を容易に検知することが可能となる。
【0008】
また、二値化処理工程では、第1及び第2階調の中央値を二値化レベルとして設定することが好ましい。この場合、二値化処理を施した画像にて欠陥部分と正常部分とがはっきり区別されるよう現れ易く、よって、表面欠陥を一層容易に判別可能な画像を取得することができる。
【0009】
また、上記作用効果が好適に発揮される構成として、具体的には、物体は、可視光に対し透明な透明体である構成が挙げられる。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、物体の表面欠陥を容易に検知することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】一実施形態に係る表面欠陥検知方法を実施する表面欠陥検知装置の構成を示す概略ブロック図である。
【図2】一実施形態に係る表面欠陥検知方法を示すフローチャートである。
【図3】表面欠陥の解析対象画像の一例を示す図である。
【図4】明度のヒストグラムの一例を示す図である。
【図5】中央値を二値化レベルとして二値化処理を施した画像の一例を示す図である。
【図6】(a)は第1階調を二値化レベルとして二値化処理を施した画像の一例を示す図、(b)は第2階調を二値化レベルとして二値化処理を施した画像の一例を示す図である。
【図7】表面欠陥の解析対象画像の他の一例を示す図である。
【図8】明度のヒストグラムの他の一例を示す図である。
【図9】(a)は第1階調を二値化レベルとして二値化処理を施した画像の他の一例を示す図、(b)は中央値を二値化レベルとして二値化処理を施した画像の他の一例を示す図、(c)は第2階調を二値化レベルとして二値化処理を施した画像の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面を参照しながら、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。なお、以下の説明では、同一又は相当要素には同一符号を付し、重複する説明は省略する。
【0013】
図1は、本発明の一実施形態に係る表面欠陥検知方法を実施する表面欠陥検知装置の構成を示す概略ブロック図であり、図2は、本発明の一実施形態に係る表面欠陥検知方法を示すフローチャートである。図1に示すように、本実施形態の表面欠陥検知装置1は、物体10の表面10aにおけるキズや汚れ等の表面欠陥を検知するためのものであり、ここでは、例えば車両(鉄道車両、軌動車、リニアモータカー、自動車等)の窓ガラスや外壁の表面欠陥を検知する。この表面欠陥検知装置1は、撮像部2、画像解析部3、及び表示部4を備えている。
【0014】
撮像部2は、物体10の表面10aの画像を取得するためのものである。撮像部2は、画像解析部3に接続されており、取得した画像を画像解析部3に出力する。撮像部2としては、CCDカメラ、デジタルカメラ及びスキャナ等が用いられている。
【0015】
画像解析部3は、撮像部2で取得した画像に二値化処理を施し、表面欠陥について判別可能な画像を生成・取得するためのものである。画像解析部3は、表示部4に接続されており、二値化処理後の画像を表示部4に出力する。画像解析部3としては、パソコンのECUが利用され、例えばCPU、ROM及びRAM等を含んで構成されている。表示部4は、画像解析部3で二値化処理後の画像を表示させるものである。ここでの表示部4としては、パソコンのディスプレイ(モニタ)が利用されている。
【0016】
次に、図2を参照しつつ、上述した表面欠陥検知装置1によって物体10の表面欠陥を検知する場合について説明する。なお、ここでは、一例として、可視光に対し透明な透明物体(ガラス等)の表明欠陥を検知する場合を例示して説明する。
【0017】
まず、撮像部2により物体10を撮像し、物体10の表面10aを含むデジタル画像(画像データ)である画像を取得する(S1)。続いて、画像解析部3により、取得した画像において表面欠陥の解析対象(検知範囲)画像を選択する(S2)。図3に例示する解析対象画像11(以下、単に「画像11」ともいう)では、全体的に暗くなっており、目視での表面欠陥の判別は困難であることがわかる。なお、図中の解析対象画像11における物体10の表面10aでは、中央を境界にして図示右側半分の領域が、汚れの付着した欠陥部分となっている。
【0018】
続いて、画像解析部3により、解析対象画像11の明度(明るさ)のヒストグラムを導出する(S3)。具体的には、図4に示すように、解析対象画像11についてグレースケール画像を作成して各ピクセルの明度(明るさ)を求め、256階調に関する明度分布をヒストグラム12として求める。このとき、各ピクセルの明度は、例えば「明度=0.299×R成分+0.587×G成分+0.144×B成分」とする式で求められる。ここでのヒストグラム12では、横軸に階調が示されており、当該階調は、0から255までの256階調で表現されている。また、縦軸に明度が示されており、当該明度は、ピクセル(px)で表現されている。
【0019】
続いて、ヒストグラム12において、明度が最も高い第1ピーク値P1のときの第1階調Lと、明度が第1ピーク値P1の次に高い第2ピーク値P2のときの第2階調Hと、を導出する(S4)。続いて、これら第1及び第2階調L,Hの中央値Mを、二値化処理を行うための閾値となる二値化レベルとして設定する(S5)。そして、設定した二値化レベルに基づいて解析対象画像11に二値化処理を施す(S6)。
【0020】
図4に例示するヒストグラム12では、解析対象画像11(図3参照)が比較的暗いため、明度の分布が低階調側に集まる傾向にあるのがわかる。そして、ここでは、階調が15のときに第1ピーク値P1が現れていると共に、階調が19のときに第2ピーク値P2が現れている。よって、ここでの解析対象画像11では、「第1階調L=15」及び「第2階調H=19」であり、「中央値M=17=二値化レベル」と設定される。
【0021】
図5は、中央値を二値化レベルとして二値化処理を施した画像の一例を示す図であり、図6(a)は、第1階調を二値化レベルとして二値化処理を施した画像の一例を示す図であり、図6(b)は、第2階調を二値化レベルとして二値化処理を施した画像の一例を示す図である。なお、これら図中における物体10の表面10aでは、上記図3と同様に、中央を境界にして図示右側半分の領域が、汚れの付着した欠陥部分となっている。
【0022】
図6(a)に示す二値化処理後の画像13’では、正常部分(図中左側半分)の領域にも白画素が現れており、さらには、正常部分と欠陥部分との境界の判別が困難である。図6(b)に示す二値化処理後の画像13”では、欠陥部分にも黒画素が現れており、さらには、正常部分と欠陥部分との境界の判別が困難である。一方、図5に示す二値化処理後の画像13では、正常部分と欠陥部分との境界14が明確に現れており、表面欠陥について目視でも判別可能となっているのがわかる。
【0023】
従って、上記S5,S6において中央値Mを二値化レベルとして解析対象画像11に二値化処理を施すことで、表面欠陥を容易に判別可能な画像13が取得されることとなる。そして最後に、表示部4上に二値化処理後の画像13を表示させ、当該画像13から表面欠陥の検知を目視により実施する(S7)。
【0024】
以上、本実施形態では、物体10の表面10aの画像11を取得し、当該画像11の明度のヒストグラム12における第1及び第2階調L,Mの間の中央値を二値化レベルとし、この二値化レベルによって画像11に二値化処理を施している。これにより、表面欠陥について判別可能な画像13を取得することができる。これは、表面10aの欠陥部分の明るさは、正常部分の明るさに対し、そのピーク値の階調が異なるという知見を見出したことによるものである。
【0025】
その結果、複雑な画像処理を不要にして、また、検知対象となる物体10の違いよる調整や設定を不要にして、表面欠陥を判別可能な画像13を取得することができる。すなわち、本実施形態によれば、物体10の表面欠陥を容易に検知することが可能となる。
【0026】
ここで、ヒストグラム12の上位2つのピーク値、すなわち、第1及び第2ピーク値P1,P2に関し、その一方は表面10aの正常部分が支配的なものであり、その他方は表面10aの欠陥部分が支配的なものであると考えられる。従って、本実施形態のように第1及び第2階調L,Hの中央値Mを二値化レベルとして設定すると、二値化処理後の画像13においては、欠陥部分と正常部分とがちょうど(適度に)分けられてはっきり区別されるよう現れ易く、よって、表面欠陥について一層容易に判別可能な画像を取得することができる。
【0027】
ところで、物体10が透明体の場合、物体10の向こう側が透けて見えたり、物体10表面10aに周囲景観が強く映り込んだり等してしまうおそれがあることから、通常の表面欠陥検知方法では、表面欠陥を検知するのが困難となる場合がある。この点、本実施形態では、画像11の明るさに着目し、表面10aの正常部分及び欠陥部分が支配的な第1及び第2ピーク値P1,P2に基づき二値化処理を行って画像13を取得している。これにより、物体10の透け等の悪影響が画像13には現れ難くなっており、透明体としての物体10の表面欠陥をも好適に検知することができる。
【0028】
なお、本実施形態の物体10は、可視光に対し不透明(不透過)な金属等の不透明体であってもよい。このような不透明体の物体における表面欠陥についても、上記と同様にして検知することができる。
【0029】
すなわち、まず、図7に例示するように、不透明体の物体20における表面20aの画像21を取得する。図7中の画像21の表面20aでは、その左右方向の中央部にキズ等の表面欠陥が存在している(図9において同じ)。
【0030】
続いて、図8に例示するように、画像21の明度のヒストグラム22を導出する。図8中のヒストグラム22では、階調が60のときに第1ピーク値P1が現れていると共に、階調が68のときに第2ピーク値P2が現れている。よって、ここでの画像21では、「第1階調L=60」及び「第2階調H=68」であり、「中央値M=64=二値化レベル」と設定される。
【0031】
続いて、設定した二値化レベルに基づいて画像21に二値化処理を施し、表面欠陥を容易に判別可能な画像23を取得する。図9(a)に示すように、第1階調Lを二値化レベルとした二値化処理後の画像23’では、正常部分にも白画素が多く現れており、正常部分と欠陥部分との判別が困難である。また、図9(c)に示すように、第2階調Hを二値化レベルとした二値化処理後の画像23”では、欠陥部分にも黒画素が現れており、正常部分と欠陥部分との判別が困難である。一方、図9(b)に示すように、中央値Mを二値化レベルとした二値化処理後の画像23では、正常部分と欠陥部分との境界24が目視で判別できるまで明確に現れている。
【0032】
従って、本実施形態の検知対象として、透明体の物体10又は不透明体の物体20の何れにした場合においても、明度のヒストグラム12,22のそれぞれには少なくとも2つのピーク値P1,P2が現れており、よって、表面欠陥を容易に判別することがわかる。
【0033】
ちなみに、本実施形態では、光源等により物体10,20を照らす必要がなく、ひいては、光源等の煩雑な設定も不要である。この点においても、本実施形態では、物体10,20の表面欠陥を容易に検知できるといえる。
【0034】
以上、本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限られるものではなく、各請求項に記載した要旨を変更しない範囲で変形し、又は他のものに適用したものであってもよい。
【0035】
例えば、上記実施形態では、第1及び第2階調L,Hの中央値Mを二値化レベルとして設定したが、これに代えて、第1及び第2ピーク値P1,P2の平均値における明度のときの階調を二値化レベルとして設定してもよい。要は、二値化レベルは、第1及び第2階調L,Hの間の値であればよい。
【0036】
ちなみに、明度のヒストグラム12,22には、2つのピーク値(つまり、第1及び第2ピーク値P1,P2)が現れているが、3つ以上のピーク値が現れる場合、これらのピーク値の上位2つが第1及び第2ピーク値となる。
【符号の説明】
【0037】
10,20…物体、10a,20a…表面、11,21…画像、12,22…ヒストグラム、H…第2階調、L…第1階調、M…中央値、P1…第1ピーク値、P2…第2ピーク値。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
物体の表面欠陥を検知するための表面欠陥検知方法であって、
前記物体の表面の画像を取得する画像取得工程と、
前記画像取得工程で取得した前記画像に二値化処理を施す二値化処理工程と、を備え、
前記二値化処理工程においては、
前記画像取得工程で取得した前記画像についての階調に関する明度分布を取得し、
前記明度分布において、前記明度が最も高い第1ピーク値のときの第1階調と、前記明度が前記第1ピーク値の次に高い第2ピーク値のときの第2階調と、を導出し、
前記第1及び第2階調の間の値を、前記二値化処理を行うための閾値となる二値化レベルとして、前記画像に前記二値化処理を施すこと、を特徴とする表面欠陥検知方法。
【請求項2】
前記二値化処理工程では、前記第1及び第2階調の中央値を二値化レベルとして設定することを特徴とする請求項1記載の表面欠陥検知方法。
【請求項3】
前記物体は、可視光に対し透明な透明体であることを特徴とする請求項1又は2記載の表面欠陥検知方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−122964(P2012−122964A)
【公開日】平成24年6月28日(2012.6.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−276029(P2010−276029)
【出願日】平成22年12月10日(2010.12.10)
【出願人】(000003377)東急車輛製造株式会社 (332)
【Fターム(参考)】