説明

表面粗さデータ解析システム

【課題】 従来の表面粗さ測定装置では、評価すべき表面粗さに関する規格に適合するかを解析することができるが、その表面粗さに関する規格以外の他の表面粗さに関する規格に適合するかを評価しようとすると、その表面粗さに関する規格に適合するかの評価試験を最初から行う必要があった。
【解決手段】 表面粗さ測定データ紙に印刷された触針の変化量のグラフを読み取る読取手段と、読取手段により読み取られた触針の変化量のグラフを測定データとして記憶する第1記憶手段と、第1記憶手段に記憶された測定データを所定の数値データに変換する数値データ変換手段と、数値データ変換手段により変換された数値データから表面粗さの解析データを算出する算出手段と、算出手段により算出された解析データを記憶する第2記憶手段と、該第2記憶手段に記憶されている解析データを出力する出力手段とを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ギヤ(被測定物)などの表面粗さの解析データを出力する表面粗さデータ解析システムに関する。具体的には、被測定物の表面形状に従って変位する触針の変位量をグラフ化して印刷された表面粗さ測定データ紙を用いて、被測定物の表面粗さの解析データを出力する表面粗さデータ解析システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、図7に示すような表面粗さ測定装置100を用いて被測定物(ワーク)の表面粗さを測定し、その測定データに基づいて表面粗さを評価していた。
【0003】
すなわち、この表面粗さ測定装置100は、ベース101に立設されたコラム102に送り装置103が設けられ、送り装置103には、触針105と、触針105のZ方向(鉛直方向)の変位を検出する検出器104とが、X方向(水平方向)移動自在に設けられている。
【0004】
また、送り装置103には、検出器104のX方向の移動量を検出するスケールが内蔵され、これによって、ワークの測定位置(読取位置)に触針105を当接した状態で検出器104をX方向に移動させると、触針105のZ方向の変位が検出器104で検出され、検出器104のX方向の移動量が送り装置103のスケールで検出されて、ワークの測定データが得られるものであった。
【0005】
そして、表面粗さ測定装置100により測定された測定結果から表面粗さの評価が行われていた。
【0006】
表面粗さの評価を行った後は、表面粗さの測量データと評価すべき表面粗さに関する規格に適合しているかの解析結果(解析データ)がプリンタ(図示略)から出力される。
【特許文献1】特開平10−132554号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、従来の表面粗さ測定装置では、評価すべき表面粗さに関する規格に適合するかを解析することができるが、その表面粗さに関する規格以外の他の表面粗さに関する規格に適合するかを評価しようとすると、その表面粗さに関する規格に適合するかの評価試験を最初から行う必要があった。また、その評価試験を行うためには、その表面粗さに関する規格専用の表面粗さ測定装置が必要であった。すなわち、表面粗さ測定装置には、評価可能な表面粗さに関する規格があらかじめ定められており、その規格以外の表面粗さに関する規格についての評価試験を行おうとすると、その表面粗さに関する規格専用の表面粗さ測定装置が必要であった。
【0008】
さらに、表面粗さ測定装置は非常に高価な装置であることから、表面粗さに関する規格が変更されるごとに表面粗さ測定装置を購入することが事実上困難であり、実際、その表面粗さ測定装置を所有するところに行って評価試験を行っていた。
【0009】
本発明は、あるワークについて過去に行った表面粗さに関する規格と異なった表面粗さに関する規格に適合するかの評価を行う場合に、その規格に適合するかの評価を簡単な方法により行うことができる表面粗さデータ解析システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は上記課題を解決するために、被測定物の表面形状に従って変位する触針の変位量をグラフ化して印刷された表面粗さ測定データ紙を用いて、被測定物の表面粗さの解析データを出力する表面粗さデータ解析システムにおいて、表面粗さ測定データ紙に印刷された触針の変化量のグラフを読み取る読取手段と、読取手段により読み取られた触針の変化量のグラフを測定データとして記憶する第1記憶手段と、第1記憶手段に記憶された測定データを所定の数値データに変換する数値データ変換手段と、数値データ変換手段により変換された数値データから表面粗さの解析データを算出する算出手段と、算出手段により算出された解析データを記憶する第2記憶手段と、第2記憶手段に記憶されている解析データを出力する出力手段と、を有する。
【0011】
さらに、読取手段は、イメージスキャナ、またはCCDカメラである。
【0012】
また、第1記憶手段は、読取手段により読み取られた触針の変化量のグラフを記憶するコンピュータ読取可能な記録媒体である。
【0013】
さらに、第1記憶手段と第2記憶手段とを同一の記憶手段により構成する。
【発明の効果】
【0014】
本発明に係る表面粗さデータ解析システムによれば、表面粗さ測定データ紙に印刷された触針の変化量のグラフを読み取る読取手段と、読取手段により読み取られた触針の変化量のグラフを測定データとして記憶する第1記憶手段と、第1記憶手段に記憶された測定データを所定の数値データに変換する数値データ変換手段と、数値データ変換手段により変換された数値データから表面粗さの解析データを算出する算出手段と、算出手段により算出された解析データを記憶する第2記憶手段と、第2記憶手段に記憶されている解析データを出力する出力手段と、を有するので、過去に行った評価試験と異なる表面粗さに関する規格の評価試験を行う場合でも、新たにその表面粗さに関する規格に適合するかの評価試験を行う必要がなく、過去に行われた評価試験の結果出力された表面粗さ測定データ紙を用いることにより、その表面粗さに関する規格に適合するかを判断することができる。
【0015】
これにより、表面粗さの評価を行う際の費用的および時間的負担を軽減することができる。
【0016】
さらに、読取手段として、イメージスキャナ、またはCCDカメラを用いているので、特別な装置を必要とせず、簡単に表面粗さ測定データ紙に印刷された触針の変化量のグラフを読み取ることができる。
【0017】
また、第1の記憶手段として、読取手段により読み取られた触針の変化量のグラフをコンピュータ読取可能な記録媒体に記憶するので、表面粗さ測定データ紙の測定値データを読み取る場所と異なる場所で、その測定値データを数値データに変換し、表面粗さの解析データを算出することができ、作業効率を高めることができる。
【0018】
また、第1の記憶手段と第2の記憶手段とを同一の記憶手段により構成することにより、表面粗さデータ解析システムの構成の簡素化を図ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
本発明の一実施形態を図面を参照にしながら説明する。
【0020】
まず最初に、図1を用いてギヤ等の被測定物(以下「ワーク」という)の表面粗さの測定方法について説明する。図1は、本発明の一実施形態における表面粗さ測定装置の斜視図である。
【0021】
図1に示すように、表面粗さ測定装置1は、測定器2と、マイコン本体3と、キーボード4と、マウス5と、ディプレイ6と、プリンタ7とから構成されている。
【0022】
測定器2は、ワークの表面粗さを測定するものである。ワークの表面粗さは、ワークを測定台8の上に載置し、ピックアップ9により測定される。このピックアップ9は、後述する駆動部10のホルダに支持されている。
【0023】
駆動部10は、測定台8に立設されたコラム14に取り付けられており、CPU(図示略)からの指示に従ってモータ(図示略)が駆動されることにより、駆動部10全体がコラム14に沿って上下方向(Z方向)に駆動され、また、ホルダ11が左右方向(X方向)に移動される。
【0024】
ピックアップ9には、その先端に触針12が設けられており、その触針12をワークに沿ってX方向に移動させることにより、その触針12がZ方向に変位する。そして、その触針12の変位量を求めることにより、ワークの表面粗さを測定することができる。
【0025】
具体的には、その触針12の変位量が駆動部10に内臓されている差動トランスにより電圧に変換され、この電圧値がA/D変換器によってA/D変換される。そのA/D変換された触針12の変位量はマイコン本体3のCPUに出力され、マイコン本体3に備えられている記憶装置(図示略)に記憶される。そして、記憶装置に記憶されたワークの表面粗さを示す測定データから表面粗さ曲線(触針の変位量をグラフ化した曲線)などの測量データを求めることができる。
【0026】
そして、この表面粗さ曲線などの測量データを使用して、そのワークが評価すべき表面粗さの規格に適合しているかの解析が行われる。
【0027】
表面粗さの評価試験後には、表面粗さ曲線などの測量データと解析結果(解析データ)などがプリンタ7から出力される。
【0028】
図2は、プリンタから出力された表面粗さ曲線を示す図である。
【0029】
この表面粗さ曲線は、ワークの表面形状に従って変位する触針の変位量をグラフ化したものであり、後述する表面粗さ測定データ紙に印刷されている。
【0030】
図2に示す表面粗さ曲線は、横軸がワークの読取位置を示し、縦軸が触針12の変位量を示している。
【0031】
読取位置0は、触針12の変位量の読取開始位置である。この読取位置が0の位置からスタートし、凹部があれば、触針12の変位量がマイナス方向(紙面下方向)にふれることとなり、逆に、凸部があれば、触針12の変位量がプラス方向(紙面上方向)にふれることとなる。
【0032】
なお、図2では、触針12の変位量のマイナス方向の最大値を、触針12の変位量(0.0μm)としている。
【0033】
次に、本発明の表面粗さデータ解析システムの構成について説明する。
【0034】
図3は、本発明の一実施形態における表面粗さデータ解析システムの構成図である。
【0035】
図3に示す表面粗さ測定データ紙15には、ワークの表面形状に従って変位する触針の変位量をグラフ化した表面粗さ曲線が印刷されている。
【0036】
イメージスキャナ160は、スキャン動作によって表面粗さ測定データ紙に印刷された表面粗さ曲線などを電気的イメージ(画像)に変換する装置であり、これにより、表面粗さ測定データ紙15に印刷された表面粗さ曲線を読み取ることができる。
【0037】
このイメージスキャナ160で読み取られた表面粗さ曲線に関するデータ(表面粗さ曲線などのデータ)は、イメージスキャナ160と有線により結ばれているパソコン165のマイクロコンピュータ172に送信される。
【0038】
マイクロコンピュータ172は、プログラムに従って制御動作を行うCPU174と、プログラム等を記憶するROM173と、ワークメモリとして使用されるRAM171と、I/Oポート175とを有している。
【0039】
イメージスキャナ160から送信された表面粗さ曲線に関するデータ(以下「表面粗さ曲線データ」という)は、パソコン165に備えられたRAM171に記憶される。
【0040】
なお、本実施形態では、イメージスキャナ160とマイクロコンピュータ172を備えるパソコン165とを有線により結ばれているとしたが、無線によりイメージスキャナ160からマイクロコンピュ−タ172に表面粗さ曲線データを送信してもよい。
【0041】
プリンタ176は、後述する物理量Rkなどの表面粗さの解析データなどを出力するものである。
【0042】
次に、本発明の表面粗さデータ解析システムの処理フローについて、図4および図5を用いて説明する。
【0043】
図4は、本発明の一実施形態における表面粗さデータ解析システムよるデータ処理のフローチャートを示す図である。図5(a)は、図2に示す表面粗さ曲線を、ワークの読取位置0.1(ステップ)ごとに読み取った触針の変位量を示す触針の変位量表を示す図である。図5(b)は、図5(a)の触針の変位量の最大値、最小値、および平均値を示す図である。
【0044】
図4に示すフローチャートは、過去に行った表面粗さの評価試験の結果、図1に示すプリンタ7から出力された表面粗さ測定データ紙15(表面粗さ曲線などが印刷された用紙)を用いて、過去に行った表面粗さに関する規格と異なる規格の表面粗さに関する規格に適合するかを評価するときの処理フローを説明するものである。
【0045】
作業者は、過去に行った表面粗さの評価試験と異なる規格の表面粗さに関する規格の評価試験を行う際に、新たに表面粗さ測定装置1を用いて表面粗さの評価試験を行うのでなく、過去に行った評価試験の結果出力された表面粗さ測定データ紙15を用いて、過去に行った表面粗さの評価試験と異なる規格の表面粗さに関する規格に適合するかの評価を行う。
【0046】
なお、本実施形態では、過去に行った表面粗さに関する規格と異なる表面粗さに関する規格に適合しているかの評価として、後述する物理量Rkを求めて、表面粗さに関する規格に適合しているかの評価を行うものであるが、これに限らず、表面粗さ測定データ紙15が出力された際に行われた表面粗さに関する規格と異なる表面粗さに関する規格に適合するかの評価であればその表面粗さに関する規格の種類は問わない。
【0047】
まず、S1において、作業者は、読取手段であるイメージスキャナ160により、この表面粗さ測定データ紙に印刷されている表面粗さ曲線(グラフ)などが読み取られる。
【0048】
この表面粗さ曲線などを読み取るのは、過去に行った表面粗さの評価試験の結果求められた表面粗さ曲線などを用いて、その表面粗さの評価試験が行われたワークについて過去に行った規格と異なった表面粗さに関する規格に適合するかの評価を行うためである。
【0049】
このイメージスキャナ160で読み取られた表面粗さ曲線データなどは、有線または無線によりパソコン165に送信される。
【0050】
S2において、イメージスキャナ160から送信された表面粗さ曲線データは、パソコン165に備えられた第1記憶手段であるRAM171に記憶される。
【0051】
次に、S3において、後述するように、数値データ変換手段の機能を有するCPU174により、第1記憶手段に記憶された表面粗さ曲線データが所定の数値データに変換される。
【0052】
具体的には、以下に示す方法により、第1記憶手段に記憶された表面粗さデータが所定の数値データに変換される。
【0053】
まず、第1記憶手段に記憶されている表面粗さ曲線データ、すなわち図2に示す表面粗さ測定データ紙に印刷されている表面粗さ曲線(グラフ)を用いて、一定間隔ごとのワークの読取位置(横軸)についての触針の変位量(縦軸)を求める。
【0054】
この求められた一定間隔ごとのワークの読取位置(横軸)についての触針の変位量を図5(a)に示す。図5(a)は、図2に示す表面粗さ曲線を、ワークの読取位置0.1(ステップ)ごと読み取った触針の変位量を示している。
【0055】
次に、S4において、算出手段の機能を有するCPU174により、数値データ変換手段により変換された数値データから表面粗さの解析データが算出される。
【0056】
この表面粗さの解析データは、ワークの表面粗さが評価すべき表面粗さの規格に適合するか判断するための数値データである。作業者は、この解析データを用いて、表面粗さに関する規格に適合しているかを判断する。
【0057】
次に、算出手段により算出される表面粗さの解析データの算出方法について説明する。
【0058】
まず最初に、図5(a)に示す触針の変位量表の触針の変位量の値の最大値を求める。この触針の変位量の最大値を図5(b)に示す。そして、図5(a)に示す触針の変位量表の各読取位置について、その読取位置の触針の変位量と触針の変位量の最大値(21.1μm)との変位差(触針の変位量の最大値−触針の変位量)を求める(図5参照)。この変位差(最大変位量差)を図5(a)に示す。
【0059】
次に、それぞれ最大変位量差に基づいて、その最大変位量差の最大値に対する最大変位量差の割合((最大変位量差/最大変位量差の最大値)×100(%))を求める。
【0060】
そして、それぞれ求められた最大変位量差の最大値に対する最大変位量差の割合(以下「最大変位量差割合」という)について、所定の最大変位量差割合(たとえば、5%)ごとにそれぞれ区分して、それぞれの区分に属する最大変位量差割合の個数(区分別個数)を集計する。
【0061】
そして、その集計された区分別個数の最大値を求め、その区分別個数の最大値に対する各区分別個数の割合((区分別個数/区分別個数の最大値)×100)を求める(区分別個数割合)。
【0062】
上記で求められた各区分された最大変位量差割合ごとの区分別個数割合をグラフ化すれば図6に示す負荷曲線が得られる。図6は、物理量Rkを得るための説明図である。
【0063】
なお、図6に示す負荷曲線は、各区分された最大変位量差割合ごとの区分別個数割合をグラフ化した後、フィルタ処理をしている。
【0064】
次に、この負荷曲線を用いて物理量Rkを求める。
【0065】
この物理量Rkは、表面粗さに関する規格に適合するかの評価を行う際の指標となるもので、作業者は、この物理量Rkをもとに表面粗さに関する基準に適合しているかを判断する。この場合の物理量Rkは、
物理量Rk = 最大変位量差の最大値×負荷率−補正傾き
の式により求めることができる。
【0066】
まず、物理量Rkを求めるために負荷率を求める。この負荷率は、表面粗さの粗さ度合いを示すものであり、負荷率が小さいほうが、全体的に表面粗さの度合いが小さくなる。
【0067】
負荷率は、後述する等価曲線から求めることができる。まず最初に、その等価直線の求め方について説明する。この等価曲線は、負荷曲線について40%長等価直線を引くことにより求めることができる。図6にその等価直線を示す。図6では、最大変位量差割合が0%〜40%までの40%長等価直線を引くことにより等価直線を求めている。
【0068】
そして、この等価直線の最大変位量差割合0%での値と100%での値の差を求めることにより、負荷率を求めることができる。すなわち、負荷率は、等価曲線について、最大変位差割合0%の値−最大変位差割合100%の値、を算出することにより求めることができる。本実施形態では、負荷率は8%と求められる(図6参照)。
【0069】
次に、傾き補正を求める。この傾き補正は、ワークの勾配に関する触針12の変位量を削除するためのものである。すなわち、ワークに勾配があれば、そのワークの勾配の分だけ触針12が変化することから、触針12の変位量は、表面粗さに関する変位量にワークの勾配に関する変位量を加えたものとなり、実際の表面粗さについての触針12の変位量を正確に求めることができなくなる。
【0070】
このことから、このワークの勾配に関する触針12の変位量を、実施の触針12の変位量から差し引くことにより、表面粗さに関する触針12の変位量を正確に求めることができる。傾き補正は、次のように求めることができる。
【0071】
すなわち、傾き補正を求めるためには、まず、図2に示す表面粗さ曲線を、位相補償フィルタでフィルタ処理を行い、そのフィルタ処理後の曲線を平均線Aとして平均線Aを算出する。次に、その算出された平均線Aの下の部分を除去した表面粗さ曲線を求め、その求められた表面粗さ曲線を表面粗さ曲線Bとする。そして、その求められた表面粗さ曲線Bを位相補償フィルタでフィルタ処理を行い、そのフィルタ処理後の曲線を平均線Cして平均線Cを求める。最後に、表面粗さ曲線から平均線Cを差し引いて上面平準化粗さ曲線Dを算出する。この算出された上面平準化粗さ曲線Dを用いて、表面粗さの評価範囲の最初の値(本実施形態では0.0(ステップ)の値)と最後の値(本実施形態では95.1(ステップ)の値)の上面平準化粗さ曲線の差(20.4(0.0(ステップ)のとき)−20.1(95.1(ステップ)のとき))を算出することにより、傾き補正(0.3)を求めることができる(図省略)。
【0072】
そして、最大変位量差の最大値は、図5(b)に示すように21.1(μm)であることから、物理量Rkは、21.1×0.08−0.03(最大変位量差の最大値×負荷率−補正傾き)の式により、物理量Rk=1.39と求めることができる。
【0073】
この物理量Rkがワークの表面粗さの解析データであり、作業者は、この物理量Rkをもとに、表面粗さに関する評価を行う。すなわち、物理量Rkが表面粗さの基準である所定値以下であれば、そのワークについての表面粗さ試験が合格ということになる。
【0074】
次に、S5において、上述した算出手段により求められえた解析データである物理量Rkをパソコン165に備えられた第2記憶手段の機能をも有するRAM171に記憶する。
【0075】
なお、本実施形態では、第1記憶手段と第2記憶手段をともにRAM171として説明したが、これに限らず、第2記憶手段を第1記憶手段であるRAM171が設けられているパソコン165内において第1記憶手段と別個に設けてもよい。
【0076】
次に、S6において、RAM171に記憶された物理量Rkと 表面粗さ曲線などの測量データが出力手段であるプリンタ176から出力される。
【0077】
これにより、過去に行った表面粗さの評価試験の結果出力された表面粗さ測定データ紙を所持している場合には、過去に行った表面粗さの評価試験とは異なる表面粗さに関する規格の評価試験を行うときでも、新たにその表面粗さに関する規格に沿った評価試験を行う必要がなく、過去に行った評価試験の結果出力された表面粗さ測定データ紙15を用いて、その表面粗さに関する規格の評価を行うことができる。
【0078】
これにより、表面粗さの評価に要する費用的また時間的負担などが軽減できるとともに、過去に行った表面粗さ測定データ紙があれば、場所を選ばずその表面粗さに関する規格の評価を行うことができるので、作業効率もよくなる。
【0079】
以下、本発明の変形例について説明する。
【0080】
(1)本実施形態では、第1記憶手段と第2記憶手段をともにRAM171として説明したが、これに限らず第2記憶手段を第1記憶手段であるRAM171が設けられているパソコン165と別個のパソコン(図示略)内に設けるようにしてもよい。
【0081】
この場合、数値データ変換手段による数値データの変換、算出手段による解析データの算出も、第1の記憶手段に測量データを記憶したパソコンと異なるパソコンにより行われる。
【0082】
(2)本実施形態では、読取手段として、イメージスキャナ160を用いて表面粗さ測定データ紙15に印刷された表面粗さ曲線を読み取るようにしたが、これに限らず、CCDカメラにより、表面粗さ測定データ紙15に印刷された表面粗さ曲線を読み取るようにしてもよい。
【0083】
この場合、CCDカメラで読み取られた表面粗さ曲線に関するデータ(表面粗さ曲線などのデータ)は、CCDカメラと有線又は無線により結ばれているパソコン165のマイクロコンピュータ172に送信される。その後、イメージスキャナ160で読み取られた表面粗さ曲線に関するデータと同様の処理が行われる。
【0084】
(3)本実施形態では、第1記憶手段として、パソコン165に備えられたマイクロコンピュータ172のRAM171を用いて説明したが、これに限らず、イメージスキャナ160またはCCDカメラからパソコン165に送信された表面粗さ曲線データを記憶するコンピュータ読取可能な記録媒体を第1記憶手段としてもよい。
【0085】
このように、表面粗さ曲線データを記憶するコンピュータ読取可能な記録媒体を用いることにより、作業者は、場所を選ばず表面粗さの解析データを得ることができる。すなわち、作業者は、その記録媒体を使用して、他のパソコンにより、数値データ変換手段による数値データの変換、算出手段による解析データの算出などを行うことができ、表面粗さの評価についての作業効率が向上する。
【0086】
なお、このコンピュータ読取可能な記録媒体として、具体的には、パソコン165のCDROM読出実体に挿入可能なCDROM、パソコン165のDVD読出実体に挿入可能なデジタルビデオディスク(DVD)、またはパソコン165のフロッピー(登録商標)ディスク読取装置に挿入可能なフロッピー(登録商標)ディスクなどが用いられる。
【0087】
(4)本実施形態では、解析データとして、物理量Rkを用いたが、これに限らず、表面粗さに関する規格に適合するかの解析を行った結果のデータであれば、物理量Rkに限定されるものではない。
【0088】
(5)本実施形態では、被測定物の表面形状に従って変位する触針の変位量をグラフ化して印刷された表面粗さ測定データ紙を用いて、被測定物の表面粗さの解析データを出力するものであったが、これに限らず、被測定物の表面形状に従って変位する触針の変位量をグラフ化した表面粗さ測定データが掲載された出版物を用いて、その出版物に掲載された表面粗さ測定データから、被測定物の表面粗さの解析データを出力してもよい。
【0089】
この場合、読取手段により、出版物に掲載された触針の変化量のグラフを読み取ることとなり、その他は本実施形態と同様である。
【0090】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなく特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【図面の簡単な説明】
【0091】
【図1】本発明の一実施形態における表面粗さ測定装置の斜視図である。
【図2】プリンタから出力された表面粗さ曲線を示す図である。
【図3】本発明の一実施形態における表面粗さデータ解析システムの構成図である。
【図4】本発明の一実施形態における表面粗さデータ解析システムよるデータ処理のフローチャートを示す図である。
【図5】(a)は、図2に示す表面粗さ曲線を、ワークの読取位置0.1(ステップ)ごと読み取った触針の変位量を示す触針の変位量表を示す図である。(b)は、触針の変位量の最大値、最小値、および平均値を示す図である。
【図6】物理量Rkを得るための説明図である。
【図7】従来の表面粗さ測定装置の側面図である。
【符号の説明】
【0092】
1 表面粗さ測定装置、2 測定器、3 マイコン本体、4 キーボード、6 ディプレイ、7 プリンタ、12 触針、15 表面粗さ測定データ紙、160 イメージスキャナ、165 パソコン、171 RAM、172 マイクロコンピュータ、174 CPU、176 プリンタ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被測定物の表面形状に従って変位する触針の変位量をグラフ化して印刷された表面粗さ測定データ紙を用いて、被測定物の表面粗さの解析データを出力する表面粗さデータ解析システムにおいて、
表面粗さ測定データ紙に印刷された触針の変化量のグラフを読み取る読取手段と、
該読取手段により読み取られた触針の変化量のグラフを測定データとして記憶する第1記憶手段と、
該第1記憶手段に記憶された測定データを所定の数値データに変換する数値データ変換手段と、
該数値データ変換手段により変換された数値データから表面粗さの解析データを算出する算出手段と、
前記算出手段により算出された解析データを記憶する第2記憶手段と、
該第2記憶手段に記憶されている解析データを出力する出力手段と、を有することを特徴とする表面粗さデータ解析システム。
【請求項2】
前記読取手段は、イメージスキャナ、またはCCDカメラであることを特徴とする請求項1記載の表面粗さデータ解析システム。
【請求項3】
前記第1記憶手段は、前記読取手段により読み取られた触針の変化量のグラフを記憶するコンピュータ読取可能な記録媒体であることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の表面粗さデータ解析システム。
【請求項4】
前記第1記憶手段と前記第2記憶手段とを同一の記憶手段により構成することを特徴とする請求項1〜請求項3のいずれかに記載の表面粗さデータ解析システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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