被加熱体
【課題】電磁誘導加熱を行う際に過加熱を確実に防止することができ、しかも過加熱を防止する温度を正確に設定することのできる被加熱体を提供する。
【解決手段】被加熱部材11におけるバイメタル部材12の取付位置が前記所定温度よりも高い温度になっていない状態では、被加熱部材11の通電経路に沿って電磁誘導による電流が流れ、電磁誘導加熱装置20によって被加熱部材11が有効に加熱され、被加熱部材11におけるバイメタル部材12の取付位置が前記所定温度よりも高い温度になると、バイメタル部材の変形によって被加熱部材11の分断部分11aが電気的に遮断され、電磁誘導加熱装置20によって被加熱部材11が有効に加熱されなくなるので、被加熱体11の過加熱を確実に防止することができる。
【解決手段】被加熱部材11におけるバイメタル部材12の取付位置が前記所定温度よりも高い温度になっていない状態では、被加熱部材11の通電経路に沿って電磁誘導による電流が流れ、電磁誘導加熱装置20によって被加熱部材11が有効に加熱され、被加熱部材11におけるバイメタル部材12の取付位置が前記所定温度よりも高い温度になると、バイメタル部材の変形によって被加熱部材11の分断部分11aが電気的に遮断され、電磁誘導加熱装置20によって被加熱部材11が有効に加熱されなくなるので、被加熱体11の過加熱を確実に防止することができる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電磁誘導によって加熱可能な被加熱体に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の被加熱体としては、底面部に整磁合金から成る被加熱部材を備えた容器が知られている(例えば、特許文献1参照。)。
【0003】
また、電磁誘導によって加熱可能な被加熱体を加熱する加熱装置としては、高周波磁界を発生させるためのコイルと、コイルに高周波交流を流すための電源装置と、被加熱体の温度を検出するセンサとを備え、センサの検出結果に基づき電源装置を制御し、被加熱体の温度を調整するようにしたものが知られている(例えば、特許文献2参照。)。
【特許文献1】特開2004−016741号公報
【特許文献2】実開2004−022251号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、前記被加熱体では、被加熱部材が整磁合金から成るので、被加熱部材が整磁合金のキュリー点である所定温度よりも高い温度に加熱されることがなく、被加熱部材の過加熱を防止することができる。
【0005】
しかしながら、整磁合金のキュリー点は例えば合金中のニッケルの含有率によって定まる温度であり、キュリー点の温度調整を数十度単位ですることが難しいので、被加熱部材の過加熱を防止する前記所定温度を正確に設定することができないという問題点があった。
【0006】
また、整磁合金は安価ではないことから、整磁合金を用いる分だけ製造コストが高くつくという問題点があった。
【0007】
一方、前記加熱装置では、被加熱体の温度を接触式のセンサまたは非接触式のセンサによって検出し、被加熱体の過加熱を防止することが可能であるが、被加熱体が外部に露出していない場合は、被加熱体の温度を正確に検出することができず、被加熱体の過加熱を確実に防止することができないという問題点があった。
【0008】
本発明は前記問題点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、電磁誘導加熱を行う際に過加熱を確実に防止することができ、しかも過加熱を防止する温度を正確に設定することのできる被加熱体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は前記目的を達成するために、電磁誘導加熱装置によって加熱可能な被加熱体において、電磁誘導によって加熱可能な材料から成るとともに、1つの通電経路を有する環状に形成され、通電経路の少なくとも一部が分断されている被加熱部材と、被加熱部材の通電経路の分断されている分断部分を電気的に接続するとともに、被加熱部材の所定位置が所定温度よりも高い温度になると前記接続を遮断する遮断機構とを備えている。
【0010】
これにより、被加熱部材は電磁誘導によって加熱可能な材料から成り、少なくとも1つの通電経路を有する環状に形成されるとともに、通電経路の少なくとも一部が分断され、また、遮断機構は被加熱部材の前記分断部分を電気的に接続するととともに、被加熱部材の所定位置が所定温度よりも高い温度になると前記接続を遮断することから、被加熱部材の所定位置が所定温度よりも高い温度になっていない状態では、遮断機構は被加熱部材の分断部分を電気的に接続しており、電磁誘導加熱装置によって被加熱部材の近傍に高周波磁界を発生させると、被加熱部材の通電経路に沿って電流が流れ、その電流によって被加熱部材が有効に加熱される。一方、被加熱部材の所定位置が所定温度よりも高い温度になると、遮断機構が被加熱部材の分断部分を電気的に遮断し、電磁誘導加熱装置によって被加熱部材の近傍に高周波磁界を発生させても、被加熱部材の通電経路に沿って電流が流れることがなく、被加熱部材が有効に加熱されない。ここで、少なくとも1つの通電経路を有する環状に形成された被加熱部材の近傍に高周波磁界を発生させると、被加熱部材中の微小領域にそれぞれ電流が流れるとともに、被加熱部材の通電経路に沿って電流が流れるが、被加熱部材の通電経路に沿って流れる電流による発熱は被加熱部材中の微小領域に流れる電流による発熱に比べて大きく、微小領域に流れる電流のみでは被加熱部材を有効に加熱することができない。また、被加熱部材の分断部分を電気的に遮断することにより、被加熱部材の過加熱が防止されることから、被加熱部材の過加熱を防止する温度の調整が容易である。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、被加熱部材の所定位置が所定温度よりも高い温度になっていない状態では、電磁誘導加熱装置によって被加熱部材が有効に加熱され、被加熱部材の所定位置が所定温度よりも高い温度になると、遮断機構が被加熱部材の分断部分を電気的に遮断し、電磁誘導加熱装置によって被加熱部材が有効に加熱されなくなるので、電磁誘導加熱を行う際に過加熱を確実に防止することができる。また、被加熱部材の分断部分を電気的に遮断することにより、被加熱部材の過加熱を防止する温度を容易に調整することができるので、過加熱を防止する温度を正確に設定することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
図1乃至図4は本発明の第1実施形態を示すもので、図1は被加熱体及び電磁誘導加熱装置の側面断面図、図2は被加熱部材の平面図、図3は被加熱体及び電磁誘導加熱装置の概略図、図4は被加熱部材の動作説明図である。
【0013】
この被加熱体10は、電磁誘導によって加熱可能な金属材料から成る被加熱部材11と、被加熱部材11に取付けられたバイメタル部材12と、被加熱部材11及びバイメタル部材12を覆うように設けられた断熱材層13と、断熱材層13を覆うように設けられたカバー部材14とを有する。この被加熱体10は例えば冬期に屋外で使用されるクッションである。また、電磁誘導によって加熱可能な金属材料としては強磁性を有するステンレスや鉄等が代表的であるが、近年では電磁誘導加熱装置の性能向上により、強磁性を有さないアルミニウム等も電磁誘導によって加熱可能な金属材料に含まれるようになってきている。
【0014】
被加熱部材11は円環状に形成され、周方向の一部が分断されている。即ち、被加熱部材11は1つの通電経路を有する円環状に形成され、通電経路の一部が分断されている。
【0015】
バイメタル部材12は2つの金属板を貼合わせて成る周知の構造を有し、長方形の板状に形成されている。また、バイメタル部材12に用いる金属材料は電磁誘導によって加熱され難いものが好ましい。バイメタル部材12の長さ方向の一端はボルト等の固定部材12aによって分断されている被加熱部材11の周方向の一端に固定され、バイメタル部材12の長さ方向の他端は常温の状態で被加熱部材11の周方向の他端に接触している。
【0016】
断熱材層13はグラスウール等の周知の断熱材から成る。
【0017】
カバー部材14は例えばポリエステルやナイロンから成る周知の布材によって形成されている。
【0018】
以上のように構成された被加熱体10は例えば電磁誘導加熱装置20によって加熱される。電磁誘導加熱装置20は、周方向に複数回に亘って巻回された高周波コイル21と、高周波コイル21の上方に配置されて被加熱体10を載置可能なトッププレート22とを有し、この構成は電磁誘導加熱装置としては周知である。
【0019】
被加熱体10を加熱する場合は、被加熱体10をトッププレート22上に載置し、高周波コイル21に図示しない電源装置によって高周波電流を流す。これにより、高周波コイル21によって被加熱部材11の近傍に高周波磁界Gが発生し、被加熱部材11中の微小領域にそれぞれ電磁誘導による電流が流れるとともに、被加熱部材11の通電経路に沿って電磁誘導による電流が流れる。ここで、被加熱部材11の通電経路に沿って流れる電流による発熱は微小領域にそれぞれ流れる電流による発熱に比べて大きい。これは、出願人が経験により得たものである。
【0020】
高周波コイル21によって被加熱部材11の近傍に高周波磁界Gが発生している状態で、被加熱部材11においてバイメタル部材12が取付けられている取付位置の温度が所定温度(例えば100℃)よりも高い温度になると、バイメタル部材12の長さ方向の他端側が被加熱部材11から離れる方向に変形し、バイメタル部材12の長さ方向の他端側と被加熱部材11との接触が解除される。バイメタル部材12は、被加熱部材11の前記取付位置の温度が前記所定温度よりも高い温度になると、被加熱部材11との接触が解除されるように設定されている。これにより、被加熱部材11において周方向に分断されている分断部分11aがバイメタル部材12によって電気的に遮断され、被加熱部材11の通電経路に沿って電流が流れなくなる。これにより、被加熱部材11の微小領域のみに電流が流れることになり、被加熱部材11が有効に加熱されなくなる。
【0021】
このように、本実施形態によれば、被加熱部材11におけるバイメタル部材12の取付位置が前記所定温度よりも高い温度になっていない状態では、電磁誘導加熱装置20によって被加熱部材11が有効に加熱され、被加熱部材11におけるバイメタル部材12の取付位置が前記所定温度よりも高い温度になると、バイメタル部材の変形によって被加熱部材11の分断部分11aが電気的に遮断され、電磁誘導加熱装置20によって被加熱部材11が有効に加熱されなくなるので、被加熱体11の過加熱を確実に防止することができる。
【0022】
また、被加熱部材11の分断部分11aを電気的に遮断することにより、被加熱部材11の過加熱が防止されることから、被加熱部材11の過加熱を防止する温度の調整が容易である。
【0023】
また、被加熱部材11におけるバイメタル部材12の取付位置が前記所定温度よりも高い温度になると、バイメタル部材12が変形して被加熱部材11の分断部分11aが電気的に遮断されるので、複雑な機構を用いることなく簡単に前記遮断を行うことができる。さらに、バイメタル部材12の長さ方向の他端側は温度の低下とともに再び被加熱部材11と接触するので、被加熱部材11におけるバイメタル部材12の取付位置の温度が前記所定温度以下になると、被加熱部材11は電磁誘導加熱装置20によって有効に加熱される状態になる。
【0024】
尚、本実施形態では、被加熱体10に円環状に形成された被加熱部材11を設けたものを示したが、被加熱部材11の代わりに図5に示すような環状に形成された被加熱部材30を設けることも可能である。また、図6に示すように、線材を複数回に亘って巻回して被加熱部材40を形成し、被加熱部材11の代わりに被加熱部材40を設けることも可能である。即ち、被加熱部材30,40は1つの通電経路を有するとともに環状に形成され、通電経路の一部が分断されている。
【0025】
また、本実施形態では、被加熱部材11の周方向の一部に分断部分11aを設け、その分断部分11aをバイメタル部材12によって電気的に接続するようにしたものを示した。これに対し、被加熱部材11の周方向の複数個所に分断部分11aを設け、各分断部分11aをそれぞれバイメタル部材12によって電気的に接続することも可能である。
【0026】
尚、本実施形態では、被加熱部材11の分断部分11aをバイメタル部材12によって電気的に接続するようにしたものを示した。これに対し、バイメタル部材12の代わりに形状記憶合金部材を設けることも可能である。この場合、形状記憶合金部材は周知の形状記憶合金から形成され、長方形の板状に形成されている。また、形状記憶合金部材の長さ方向の一端は被加熱部材11の周方向の一端に固定され、形状記憶合金部材の長さ方向の他端は常温の状態で被加熱部材11の周方向の他端に接触している。また、形状記憶合金部材は、被加熱部材11の前記取付位置の温度が所定温度(例えば100℃)よりも高い温度になると、変形によって被加熱部材11の周方向の他端との接触が解除されるように設定されている。このため、バイメタル部材12を設ける場合と同様の作用効果を達成することが可能である。
【0027】
図7乃至図11は本発明の第2実施形態を示すもので、図7は被加熱体及び電磁誘導加熱装置の側面断面図、図8は被加熱体の概略図、図9は被加熱部材のブロック図、図10は制御装置の動作を示すフローチャート、図11は第1温度センサの検出温度を示すグラフである。
【0028】
この被加熱体50は、電磁誘導によって加熱可能な金属材料から成るとともに、1つの通電経路を有する円環状に形成され、通電経路の一部が分断されている被加熱部材51と、被加熱部材51を覆うように設けられた断熱材層52と、被加熱部材51の通電経路において分断されている分断部分51aを電気的に接続及び遮断自在なスイッチ53と、電磁誘導によって所定の電圧を発生可能な電圧発生器54と、電圧発生器54によって発生した電圧を用いて駆動され、被加熱部材51の温度を検出する第1温度センサ55と、電圧発生器54によって発生した電圧を用いて駆動される制御装置56と、被加熱部材51、断熱材層52、スイッチ53、電圧発生器54、第1温度センサ55及び制御装置56を覆うように設けられたカバー部材57と、カバー部材57から検出部が露出するように設けられた第2温度センサ58と、カバー部材57から表示部が露出するように設けられた表示器59とを有する。この被加熱体50は例えば冬期に屋外で使用されるクッションである。電磁誘導によって加熱可能な金属材料は第1実施形態と同様である。また、断熱材層52及びカバー部材57は第1実施形態の断熱材層13及びカバー部材14と同等である。
【0029】
スイッチ53は、分断されている被加熱部材51の周方向の一端及び他端に接触可能な導電性部材53aを有し、導電性部材53aは被加熱部材51の分断部分51aを電気的に接続可能である。また、スイッチ53は、導電性部材53aと被加熱部材51との接触または非接触により、被加熱部材51の分断部分51aを電気的に接続または遮断するようになっている。
【0030】
電圧発生器54は、高周波磁界中に配置されると交流の電流が流れるコイル54aを有し、内部に設けられた図示しない整流回路及び平滑回路によって前記交流の電流が整流及び平滑化されるようになっている。前記整流回路は周知のダイオードブリッジ等を用いて構成され、前記平滑回路は周知のレギュレータ等を用いて構成されている。即ち、コイル54aが高周波磁界中に配置されると、電圧発生器54は所定の直流電圧を発生するようになっている。また、電圧発生器54内にコイル54aと共振回路を構成するコンデンサを設けることにより、効率良く高電圧を発生させることが可能となる。
【0031】
第1温度センサ55は赤外線温度センサ等の非接触式温度センサから成り、被加熱部材51の外周面の所定位置の温度を検出するようになっている。尚、第1温度センサ55を熱電対等を用いた接触式温度センサから構成することも可能である。
【0032】
制御装置56は周知のマイクロコンピュータから成り、電圧発生器54に接続線56aを介して接続されている。即ち、制御装置56は電圧発生器54によって発生した直流電圧を用いて駆動されるようになっている。また、制御装置56は接続線56bを介してスイッチ53に接続され、接続線56a,56bを介してスイッチ53に直流電圧が供給されるようになっている。また、接続線56bを介してスイッチ53が制御装置56によって制御されるようになっている。一方、制御装置56は接続線56cを介して第1温度センサ55に接続され、接続線56a,56cを介して第1温度センサ55に直流電圧が供給されるようになっている。また、接続線56cを介して第1温度センサ55の検出結果が制御装置56に送信されるようになっている。
【0033】
第2温度センサ58は熱電対等を用いた周知の構成を有し、カバー部材57から露出している検出部によって外気温を検出するようになっている。第2温度センサ58は接続線56dを介して制御装置56に接続され、接続線56a,56dを介して第2温度センサ58に直流電圧が供給されるようになっている。また、接続線56dを介して第2温度センサ58の検出結果が制御装置56に送信されるようになっている。
【0034】
表示器59は周知の発光ダイオードから成る。表示器59は接続線56eを介して制御装置56に接続され、接続線56a,56eを介して表示器59に直流電圧が供給されるようになっている。また、接続線56eを介して表示器59が制御装置56によって制御されるようになっている。
【0035】
以上のように構成された被加熱体50は例えば第1実施形態で示した電磁誘導加熱装置20によって加熱される。
【0036】
被加熱体50を加熱する場合は、被加熱体50をトッププレート22上に載置し、高周波コイル21に図示しない電源装置によって高周波電流を流す。これにより、高周波コイル21によって被加熱部材51の近傍に高周波磁界が発生し、被加熱部材51中の微小領域にそれぞれ電磁誘導による電流が流れるとともに、被加熱部材51の通電経路に沿って電磁誘導による電流が流れる。また、電圧発生器54のコイル54aも高周波磁界中に配置され、電圧発生器54のコイル54aに電磁誘導により交流の電流が流れ、電圧発生器54よって所定の直流電圧が発生する。
【0037】
ここで、制御装置56は、第1温度センサ55の検出結果が所定温度(例えば100℃)以下である場合は、スイッチ53によって被加熱部材51の分断部分51aを電気的に接続し、第1温度センサ55の検出結果が所定温度よりも高い温度になると、スイッチ53によって被加熱部材51の分断部分51aを電気的に遮断するようになっている。この時の制御装置56の動作について図10に示すフローチャートを参照しながら説明する。
【0038】
先ず、スイッチ53によって被加熱部材51の分断部分51aが電気的に接続されている時に(S1)、第1温度センサ55の検出温度が所定温度よりも高い温度になると(S2)、スイッチ53によって被加熱部材51の分断部分51aを電気的に遮断するとともに(S3)、表示器59に所定の表示を行わせる(S4)。即ち、被加熱部材51の分断部分51aを電気的に遮断することにより、被加熱部材51の通電経路に沿って電流が流れなくなる。このため、被加熱部材51の微小領域のみに電流が流れることになり、被加熱部材51が有効に加熱されなくなる。一方、スイッチ53によって被加熱部材51の分断部分51aが電気的に接続されていない時に(S1)、第1温度センサ55の検出温度が所定温度以下になると(S5)、スイッチ53によって被加熱部材51の分断部分51aを電気的に接続する(S6)。即ち、被加熱部材51の通電経路に沿って電流が流れることになり、被加熱部材51が再び有効に加熱されるようになる。この時の第1温度センサ55の検出結果は図11のようになる。尚、図11では、75秒の時点で加熱装置20による加熱を停止している。
【0039】
このように、本実施形態によれば、被加熱部材51における第1温度センサ55によって温度検出される所定位置が前記所定温度よりも高い温度になっていない状態では、電磁誘導加熱装置20によって被加熱部材51が有効に加熱され、被加熱部材51における前記所定位置が前記所定温度よりも高い温度になると、スイッチ53によって被加熱部材51の分断部分51aが電気的に遮断され、電磁誘導加熱装置20によって被加熱部材51が有効に加熱されなくなるので、被加熱部材51の過加熱を確実に防止することができる。
【0040】
また、被加熱部材51の分断部分51aを電気的に遮断することにより、被加熱部材51の過加熱が防止されることから、被加熱部材51の過加熱を防止する温度の調整が容易である。
【0041】
また、電磁誘導によって所定の電圧を発生可能な電圧発生器54と、被加熱部材51の所定位置の温度を検出する第1温度センサ55と、電圧発生器54によって発生した電圧を用いて駆動され、被加熱部材51の分断部分51aを電気的に接続及び遮断自在なスイッチ53と、電圧発生器54によって発生した電圧を用いて駆動され、第1温度センサ55によって被加熱部材51の所定位置が所定温度よりも高い温度になったことが検出されると、被加熱部材51の分断部分51aが電気的に遮断されるようにスイッチ53を制御する制御装置56とを有する。このため、被加熱部材51の過加熱を防止する温度の調整を正確に行うことができる。また、スイッチ53及び制御装置56は電圧発生器54によって発生した電圧を用いて駆動されるので、スイッチ53及び制御装置56を駆動するっために別途電源を用いる必要がなく、例えばバッテリーの交換や電源コードの抜き差し作業が不要となり、被加熱体50の取扱いを容易にする上で極めて有利である。さらに、本実施形態では、第1温度センサ55及び表示器59も電圧発生器54によって発生した電圧を用いて駆動されるので、被加熱体50の取扱いを容易にする上でより有利である。
【0042】
また、被加熱体50の温度が所定温度よりも高い温度になると、表示器59に所定の表示を行わせるようにしたことから、被加熱体50の温度が所定温度よりも高いことを確実に認識することができる。
【0043】
尚、第2実施形態の図10では、第1温度センサ55の検出温度が所定温度(100℃)以下になると(S5)、スイッチ53によって被加熱部材51の分断部分51aを電気的に接続するようにした(S6)。これに対し、第1温度センサ55の検出温度が所定温度(100℃)よりも低い他の所定温度(例えば90℃)以下になった時に、スイッチ53によって被加熱部材51の分断部分51aを電気的に接続することも可能である。この時の第1温度センサ55の検出結果は図12のようになる。
【0044】
また、第2実施形態では、第1温度センサ55及び表示器59が電圧発生器54によって発生した電圧を用いて駆動されるものを示したが、第1温度センサ55及び表示器59の消費電力が小さい場合には、第1温度センサ55及び表示器59を内蔵バッテリーによって駆動することも可能である。
【0045】
尚、第2実施形態では、第1温度センサ55の検出温度が所定温度よりも高い温度になると、スイッチ53によって被加熱部材51の分断部分51aが電気的に遮断されるものを示した。これに対し、第1温度センサ55の検出温度と第2温度センサ58の検出温度の差が所定温度(例えば80℃)よりも高い温度差になった場合に、スイッチ53によって被加熱部材51の分断部分51aを電気的に遮断することも可能である。この場合の制御装置56の動作について図13に示すフローチャートを参照しながら説明する。
【0046】
先ず、スイッチ53によって被加熱部材51の分断部分51aが電気的に接続されているときに(S11)、第1温度センサ55の検出温度と第2温度センサ58の検出温度の差が所定の温度差よりも大きくなると(S12)、スイッチ53によって被加熱部材51の分断部分51aを電気的に遮断するとともに(S13)、表示器59に所定の表示を行わせる(S14)。一方、スイッチ53によって被加熱部材51の分断部分51aが電気的に接続されていない時に(S11)、第1温度センサ55の検出温度と第2温度センサ59の検出温度の差が所定の温度差以下になると(S5)、スイッチ53によって被加熱部材51の分断部分51aを電気的に接続する(S16)。この時の第1温度センサ55の検出結果は図14のようになる。尚、図14では、75秒の時点で加熱装置20による加熱を停止している。
【0047】
この場合でも、図10のように制御装置56が動作する場合と同様に、被加熱部材51の過加熱を確実に防止することができ、被加熱部材51の過加熱を防止する温度の調整が容易である。
【0048】
尚、第2実施形態では、被加熱体50に円環状に形成された被加熱部材51を設けたものを示した。これに対し、被加熱部材51の代わりに図5または図6にした被加熱部材30,40を設けることも可能である。
【0049】
尚、第1及び第2実施形態では、被加熱体10,50が冬期に屋外で使用されるクッションであるものを示した。これに対し、被加熱体10,50が被加熱部材11,51を有する保温器具、防寒着、保温用容器、加熱用容器等である場合でも、前述と同様の構成を設けることが可能であり、前述と同様の作用効果を達成することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0050】
【図1】本発明の第1実施形態を示す被加熱体及び電磁誘導加熱装置の側面断面図
【図2】被加熱部材の平面図
【図3】被加熱体及び電磁誘導加熱装置の概略図
【図4】被加熱部材の動作説明図
【図5】第1実施形態の第1変形例を示す被加熱部材の平面図
【図6】第1実施形態の第2変形例を示す被加熱部材の平面図
【図7】本発明の第2実施形態を示す被加熱体及び電磁誘導加熱装置の側面断面図
【図8】被加熱体の概略図
【図9】被加熱部材のブロック図
【図10】制御装置の動作を示すフローチャート
【図11】第1温度センサの検出温度を示すグラフ
【図12】第1温度センサの検出温度を示すグラフ
【図13】第2実施形態の変形例における制御装置の動作を示すフローチャート
【図14】第1温度センサ及び第2温度センサの検出温度を示すグラフ
【符号の説明】
【0051】
10…被加熱体、11…被加熱部材、11a…分断部分、12…バイメタル部材、12a…固定部材、13…断熱材層、14…カバー部材、20…電磁誘導加熱装置、21…高周波コイル、22…トッププレート、30…被加熱部材、40…被加熱部材、50…被加熱体、51…被加熱部材、51a…分断部分、52…断熱材層、53…スイッチ、53a…導電性部材、54…電圧発生器、54a…コイル、55…第1温度センサ、56…制御装置、57…カバー部材、58…第2温度センサ、59…表示器、G…高周波磁界。
【技術分野】
【0001】
本発明は、電磁誘導によって加熱可能な被加熱体に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の被加熱体としては、底面部に整磁合金から成る被加熱部材を備えた容器が知られている(例えば、特許文献1参照。)。
【0003】
また、電磁誘導によって加熱可能な被加熱体を加熱する加熱装置としては、高周波磁界を発生させるためのコイルと、コイルに高周波交流を流すための電源装置と、被加熱体の温度を検出するセンサとを備え、センサの検出結果に基づき電源装置を制御し、被加熱体の温度を調整するようにしたものが知られている(例えば、特許文献2参照。)。
【特許文献1】特開2004−016741号公報
【特許文献2】実開2004−022251号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、前記被加熱体では、被加熱部材が整磁合金から成るので、被加熱部材が整磁合金のキュリー点である所定温度よりも高い温度に加熱されることがなく、被加熱部材の過加熱を防止することができる。
【0005】
しかしながら、整磁合金のキュリー点は例えば合金中のニッケルの含有率によって定まる温度であり、キュリー点の温度調整を数十度単位ですることが難しいので、被加熱部材の過加熱を防止する前記所定温度を正確に設定することができないという問題点があった。
【0006】
また、整磁合金は安価ではないことから、整磁合金を用いる分だけ製造コストが高くつくという問題点があった。
【0007】
一方、前記加熱装置では、被加熱体の温度を接触式のセンサまたは非接触式のセンサによって検出し、被加熱体の過加熱を防止することが可能であるが、被加熱体が外部に露出していない場合は、被加熱体の温度を正確に検出することができず、被加熱体の過加熱を確実に防止することができないという問題点があった。
【0008】
本発明は前記問題点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、電磁誘導加熱を行う際に過加熱を確実に防止することができ、しかも過加熱を防止する温度を正確に設定することのできる被加熱体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は前記目的を達成するために、電磁誘導加熱装置によって加熱可能な被加熱体において、電磁誘導によって加熱可能な材料から成るとともに、1つの通電経路を有する環状に形成され、通電経路の少なくとも一部が分断されている被加熱部材と、被加熱部材の通電経路の分断されている分断部分を電気的に接続するとともに、被加熱部材の所定位置が所定温度よりも高い温度になると前記接続を遮断する遮断機構とを備えている。
【0010】
これにより、被加熱部材は電磁誘導によって加熱可能な材料から成り、少なくとも1つの通電経路を有する環状に形成されるとともに、通電経路の少なくとも一部が分断され、また、遮断機構は被加熱部材の前記分断部分を電気的に接続するととともに、被加熱部材の所定位置が所定温度よりも高い温度になると前記接続を遮断することから、被加熱部材の所定位置が所定温度よりも高い温度になっていない状態では、遮断機構は被加熱部材の分断部分を電気的に接続しており、電磁誘導加熱装置によって被加熱部材の近傍に高周波磁界を発生させると、被加熱部材の通電経路に沿って電流が流れ、その電流によって被加熱部材が有効に加熱される。一方、被加熱部材の所定位置が所定温度よりも高い温度になると、遮断機構が被加熱部材の分断部分を電気的に遮断し、電磁誘導加熱装置によって被加熱部材の近傍に高周波磁界を発生させても、被加熱部材の通電経路に沿って電流が流れることがなく、被加熱部材が有効に加熱されない。ここで、少なくとも1つの通電経路を有する環状に形成された被加熱部材の近傍に高周波磁界を発生させると、被加熱部材中の微小領域にそれぞれ電流が流れるとともに、被加熱部材の通電経路に沿って電流が流れるが、被加熱部材の通電経路に沿って流れる電流による発熱は被加熱部材中の微小領域に流れる電流による発熱に比べて大きく、微小領域に流れる電流のみでは被加熱部材を有効に加熱することができない。また、被加熱部材の分断部分を電気的に遮断することにより、被加熱部材の過加熱が防止されることから、被加熱部材の過加熱を防止する温度の調整が容易である。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、被加熱部材の所定位置が所定温度よりも高い温度になっていない状態では、電磁誘導加熱装置によって被加熱部材が有効に加熱され、被加熱部材の所定位置が所定温度よりも高い温度になると、遮断機構が被加熱部材の分断部分を電気的に遮断し、電磁誘導加熱装置によって被加熱部材が有効に加熱されなくなるので、電磁誘導加熱を行う際に過加熱を確実に防止することができる。また、被加熱部材の分断部分を電気的に遮断することにより、被加熱部材の過加熱を防止する温度を容易に調整することができるので、過加熱を防止する温度を正確に設定することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
図1乃至図4は本発明の第1実施形態を示すもので、図1は被加熱体及び電磁誘導加熱装置の側面断面図、図2は被加熱部材の平面図、図3は被加熱体及び電磁誘導加熱装置の概略図、図4は被加熱部材の動作説明図である。
【0013】
この被加熱体10は、電磁誘導によって加熱可能な金属材料から成る被加熱部材11と、被加熱部材11に取付けられたバイメタル部材12と、被加熱部材11及びバイメタル部材12を覆うように設けられた断熱材層13と、断熱材層13を覆うように設けられたカバー部材14とを有する。この被加熱体10は例えば冬期に屋外で使用されるクッションである。また、電磁誘導によって加熱可能な金属材料としては強磁性を有するステンレスや鉄等が代表的であるが、近年では電磁誘導加熱装置の性能向上により、強磁性を有さないアルミニウム等も電磁誘導によって加熱可能な金属材料に含まれるようになってきている。
【0014】
被加熱部材11は円環状に形成され、周方向の一部が分断されている。即ち、被加熱部材11は1つの通電経路を有する円環状に形成され、通電経路の一部が分断されている。
【0015】
バイメタル部材12は2つの金属板を貼合わせて成る周知の構造を有し、長方形の板状に形成されている。また、バイメタル部材12に用いる金属材料は電磁誘導によって加熱され難いものが好ましい。バイメタル部材12の長さ方向の一端はボルト等の固定部材12aによって分断されている被加熱部材11の周方向の一端に固定され、バイメタル部材12の長さ方向の他端は常温の状態で被加熱部材11の周方向の他端に接触している。
【0016】
断熱材層13はグラスウール等の周知の断熱材から成る。
【0017】
カバー部材14は例えばポリエステルやナイロンから成る周知の布材によって形成されている。
【0018】
以上のように構成された被加熱体10は例えば電磁誘導加熱装置20によって加熱される。電磁誘導加熱装置20は、周方向に複数回に亘って巻回された高周波コイル21と、高周波コイル21の上方に配置されて被加熱体10を載置可能なトッププレート22とを有し、この構成は電磁誘導加熱装置としては周知である。
【0019】
被加熱体10を加熱する場合は、被加熱体10をトッププレート22上に載置し、高周波コイル21に図示しない電源装置によって高周波電流を流す。これにより、高周波コイル21によって被加熱部材11の近傍に高周波磁界Gが発生し、被加熱部材11中の微小領域にそれぞれ電磁誘導による電流が流れるとともに、被加熱部材11の通電経路に沿って電磁誘導による電流が流れる。ここで、被加熱部材11の通電経路に沿って流れる電流による発熱は微小領域にそれぞれ流れる電流による発熱に比べて大きい。これは、出願人が経験により得たものである。
【0020】
高周波コイル21によって被加熱部材11の近傍に高周波磁界Gが発生している状態で、被加熱部材11においてバイメタル部材12が取付けられている取付位置の温度が所定温度(例えば100℃)よりも高い温度になると、バイメタル部材12の長さ方向の他端側が被加熱部材11から離れる方向に変形し、バイメタル部材12の長さ方向の他端側と被加熱部材11との接触が解除される。バイメタル部材12は、被加熱部材11の前記取付位置の温度が前記所定温度よりも高い温度になると、被加熱部材11との接触が解除されるように設定されている。これにより、被加熱部材11において周方向に分断されている分断部分11aがバイメタル部材12によって電気的に遮断され、被加熱部材11の通電経路に沿って電流が流れなくなる。これにより、被加熱部材11の微小領域のみに電流が流れることになり、被加熱部材11が有効に加熱されなくなる。
【0021】
このように、本実施形態によれば、被加熱部材11におけるバイメタル部材12の取付位置が前記所定温度よりも高い温度になっていない状態では、電磁誘導加熱装置20によって被加熱部材11が有効に加熱され、被加熱部材11におけるバイメタル部材12の取付位置が前記所定温度よりも高い温度になると、バイメタル部材の変形によって被加熱部材11の分断部分11aが電気的に遮断され、電磁誘導加熱装置20によって被加熱部材11が有効に加熱されなくなるので、被加熱体11の過加熱を確実に防止することができる。
【0022】
また、被加熱部材11の分断部分11aを電気的に遮断することにより、被加熱部材11の過加熱が防止されることから、被加熱部材11の過加熱を防止する温度の調整が容易である。
【0023】
また、被加熱部材11におけるバイメタル部材12の取付位置が前記所定温度よりも高い温度になると、バイメタル部材12が変形して被加熱部材11の分断部分11aが電気的に遮断されるので、複雑な機構を用いることなく簡単に前記遮断を行うことができる。さらに、バイメタル部材12の長さ方向の他端側は温度の低下とともに再び被加熱部材11と接触するので、被加熱部材11におけるバイメタル部材12の取付位置の温度が前記所定温度以下になると、被加熱部材11は電磁誘導加熱装置20によって有効に加熱される状態になる。
【0024】
尚、本実施形態では、被加熱体10に円環状に形成された被加熱部材11を設けたものを示したが、被加熱部材11の代わりに図5に示すような環状に形成された被加熱部材30を設けることも可能である。また、図6に示すように、線材を複数回に亘って巻回して被加熱部材40を形成し、被加熱部材11の代わりに被加熱部材40を設けることも可能である。即ち、被加熱部材30,40は1つの通電経路を有するとともに環状に形成され、通電経路の一部が分断されている。
【0025】
また、本実施形態では、被加熱部材11の周方向の一部に分断部分11aを設け、その分断部分11aをバイメタル部材12によって電気的に接続するようにしたものを示した。これに対し、被加熱部材11の周方向の複数個所に分断部分11aを設け、各分断部分11aをそれぞれバイメタル部材12によって電気的に接続することも可能である。
【0026】
尚、本実施形態では、被加熱部材11の分断部分11aをバイメタル部材12によって電気的に接続するようにしたものを示した。これに対し、バイメタル部材12の代わりに形状記憶合金部材を設けることも可能である。この場合、形状記憶合金部材は周知の形状記憶合金から形成され、長方形の板状に形成されている。また、形状記憶合金部材の長さ方向の一端は被加熱部材11の周方向の一端に固定され、形状記憶合金部材の長さ方向の他端は常温の状態で被加熱部材11の周方向の他端に接触している。また、形状記憶合金部材は、被加熱部材11の前記取付位置の温度が所定温度(例えば100℃)よりも高い温度になると、変形によって被加熱部材11の周方向の他端との接触が解除されるように設定されている。このため、バイメタル部材12を設ける場合と同様の作用効果を達成することが可能である。
【0027】
図7乃至図11は本発明の第2実施形態を示すもので、図7は被加熱体及び電磁誘導加熱装置の側面断面図、図8は被加熱体の概略図、図9は被加熱部材のブロック図、図10は制御装置の動作を示すフローチャート、図11は第1温度センサの検出温度を示すグラフである。
【0028】
この被加熱体50は、電磁誘導によって加熱可能な金属材料から成るとともに、1つの通電経路を有する円環状に形成され、通電経路の一部が分断されている被加熱部材51と、被加熱部材51を覆うように設けられた断熱材層52と、被加熱部材51の通電経路において分断されている分断部分51aを電気的に接続及び遮断自在なスイッチ53と、電磁誘導によって所定の電圧を発生可能な電圧発生器54と、電圧発生器54によって発生した電圧を用いて駆動され、被加熱部材51の温度を検出する第1温度センサ55と、電圧発生器54によって発生した電圧を用いて駆動される制御装置56と、被加熱部材51、断熱材層52、スイッチ53、電圧発生器54、第1温度センサ55及び制御装置56を覆うように設けられたカバー部材57と、カバー部材57から検出部が露出するように設けられた第2温度センサ58と、カバー部材57から表示部が露出するように設けられた表示器59とを有する。この被加熱体50は例えば冬期に屋外で使用されるクッションである。電磁誘導によって加熱可能な金属材料は第1実施形態と同様である。また、断熱材層52及びカバー部材57は第1実施形態の断熱材層13及びカバー部材14と同等である。
【0029】
スイッチ53は、分断されている被加熱部材51の周方向の一端及び他端に接触可能な導電性部材53aを有し、導電性部材53aは被加熱部材51の分断部分51aを電気的に接続可能である。また、スイッチ53は、導電性部材53aと被加熱部材51との接触または非接触により、被加熱部材51の分断部分51aを電気的に接続または遮断するようになっている。
【0030】
電圧発生器54は、高周波磁界中に配置されると交流の電流が流れるコイル54aを有し、内部に設けられた図示しない整流回路及び平滑回路によって前記交流の電流が整流及び平滑化されるようになっている。前記整流回路は周知のダイオードブリッジ等を用いて構成され、前記平滑回路は周知のレギュレータ等を用いて構成されている。即ち、コイル54aが高周波磁界中に配置されると、電圧発生器54は所定の直流電圧を発生するようになっている。また、電圧発生器54内にコイル54aと共振回路を構成するコンデンサを設けることにより、効率良く高電圧を発生させることが可能となる。
【0031】
第1温度センサ55は赤外線温度センサ等の非接触式温度センサから成り、被加熱部材51の外周面の所定位置の温度を検出するようになっている。尚、第1温度センサ55を熱電対等を用いた接触式温度センサから構成することも可能である。
【0032】
制御装置56は周知のマイクロコンピュータから成り、電圧発生器54に接続線56aを介して接続されている。即ち、制御装置56は電圧発生器54によって発生した直流電圧を用いて駆動されるようになっている。また、制御装置56は接続線56bを介してスイッチ53に接続され、接続線56a,56bを介してスイッチ53に直流電圧が供給されるようになっている。また、接続線56bを介してスイッチ53が制御装置56によって制御されるようになっている。一方、制御装置56は接続線56cを介して第1温度センサ55に接続され、接続線56a,56cを介して第1温度センサ55に直流電圧が供給されるようになっている。また、接続線56cを介して第1温度センサ55の検出結果が制御装置56に送信されるようになっている。
【0033】
第2温度センサ58は熱電対等を用いた周知の構成を有し、カバー部材57から露出している検出部によって外気温を検出するようになっている。第2温度センサ58は接続線56dを介して制御装置56に接続され、接続線56a,56dを介して第2温度センサ58に直流電圧が供給されるようになっている。また、接続線56dを介して第2温度センサ58の検出結果が制御装置56に送信されるようになっている。
【0034】
表示器59は周知の発光ダイオードから成る。表示器59は接続線56eを介して制御装置56に接続され、接続線56a,56eを介して表示器59に直流電圧が供給されるようになっている。また、接続線56eを介して表示器59が制御装置56によって制御されるようになっている。
【0035】
以上のように構成された被加熱体50は例えば第1実施形態で示した電磁誘導加熱装置20によって加熱される。
【0036】
被加熱体50を加熱する場合は、被加熱体50をトッププレート22上に載置し、高周波コイル21に図示しない電源装置によって高周波電流を流す。これにより、高周波コイル21によって被加熱部材51の近傍に高周波磁界が発生し、被加熱部材51中の微小領域にそれぞれ電磁誘導による電流が流れるとともに、被加熱部材51の通電経路に沿って電磁誘導による電流が流れる。また、電圧発生器54のコイル54aも高周波磁界中に配置され、電圧発生器54のコイル54aに電磁誘導により交流の電流が流れ、電圧発生器54よって所定の直流電圧が発生する。
【0037】
ここで、制御装置56は、第1温度センサ55の検出結果が所定温度(例えば100℃)以下である場合は、スイッチ53によって被加熱部材51の分断部分51aを電気的に接続し、第1温度センサ55の検出結果が所定温度よりも高い温度になると、スイッチ53によって被加熱部材51の分断部分51aを電気的に遮断するようになっている。この時の制御装置56の動作について図10に示すフローチャートを参照しながら説明する。
【0038】
先ず、スイッチ53によって被加熱部材51の分断部分51aが電気的に接続されている時に(S1)、第1温度センサ55の検出温度が所定温度よりも高い温度になると(S2)、スイッチ53によって被加熱部材51の分断部分51aを電気的に遮断するとともに(S3)、表示器59に所定の表示を行わせる(S4)。即ち、被加熱部材51の分断部分51aを電気的に遮断することにより、被加熱部材51の通電経路に沿って電流が流れなくなる。このため、被加熱部材51の微小領域のみに電流が流れることになり、被加熱部材51が有効に加熱されなくなる。一方、スイッチ53によって被加熱部材51の分断部分51aが電気的に接続されていない時に(S1)、第1温度センサ55の検出温度が所定温度以下になると(S5)、スイッチ53によって被加熱部材51の分断部分51aを電気的に接続する(S6)。即ち、被加熱部材51の通電経路に沿って電流が流れることになり、被加熱部材51が再び有効に加熱されるようになる。この時の第1温度センサ55の検出結果は図11のようになる。尚、図11では、75秒の時点で加熱装置20による加熱を停止している。
【0039】
このように、本実施形態によれば、被加熱部材51における第1温度センサ55によって温度検出される所定位置が前記所定温度よりも高い温度になっていない状態では、電磁誘導加熱装置20によって被加熱部材51が有効に加熱され、被加熱部材51における前記所定位置が前記所定温度よりも高い温度になると、スイッチ53によって被加熱部材51の分断部分51aが電気的に遮断され、電磁誘導加熱装置20によって被加熱部材51が有効に加熱されなくなるので、被加熱部材51の過加熱を確実に防止することができる。
【0040】
また、被加熱部材51の分断部分51aを電気的に遮断することにより、被加熱部材51の過加熱が防止されることから、被加熱部材51の過加熱を防止する温度の調整が容易である。
【0041】
また、電磁誘導によって所定の電圧を発生可能な電圧発生器54と、被加熱部材51の所定位置の温度を検出する第1温度センサ55と、電圧発生器54によって発生した電圧を用いて駆動され、被加熱部材51の分断部分51aを電気的に接続及び遮断自在なスイッチ53と、電圧発生器54によって発生した電圧を用いて駆動され、第1温度センサ55によって被加熱部材51の所定位置が所定温度よりも高い温度になったことが検出されると、被加熱部材51の分断部分51aが電気的に遮断されるようにスイッチ53を制御する制御装置56とを有する。このため、被加熱部材51の過加熱を防止する温度の調整を正確に行うことができる。また、スイッチ53及び制御装置56は電圧発生器54によって発生した電圧を用いて駆動されるので、スイッチ53及び制御装置56を駆動するっために別途電源を用いる必要がなく、例えばバッテリーの交換や電源コードの抜き差し作業が不要となり、被加熱体50の取扱いを容易にする上で極めて有利である。さらに、本実施形態では、第1温度センサ55及び表示器59も電圧発生器54によって発生した電圧を用いて駆動されるので、被加熱体50の取扱いを容易にする上でより有利である。
【0042】
また、被加熱体50の温度が所定温度よりも高い温度になると、表示器59に所定の表示を行わせるようにしたことから、被加熱体50の温度が所定温度よりも高いことを確実に認識することができる。
【0043】
尚、第2実施形態の図10では、第1温度センサ55の検出温度が所定温度(100℃)以下になると(S5)、スイッチ53によって被加熱部材51の分断部分51aを電気的に接続するようにした(S6)。これに対し、第1温度センサ55の検出温度が所定温度(100℃)よりも低い他の所定温度(例えば90℃)以下になった時に、スイッチ53によって被加熱部材51の分断部分51aを電気的に接続することも可能である。この時の第1温度センサ55の検出結果は図12のようになる。
【0044】
また、第2実施形態では、第1温度センサ55及び表示器59が電圧発生器54によって発生した電圧を用いて駆動されるものを示したが、第1温度センサ55及び表示器59の消費電力が小さい場合には、第1温度センサ55及び表示器59を内蔵バッテリーによって駆動することも可能である。
【0045】
尚、第2実施形態では、第1温度センサ55の検出温度が所定温度よりも高い温度になると、スイッチ53によって被加熱部材51の分断部分51aが電気的に遮断されるものを示した。これに対し、第1温度センサ55の検出温度と第2温度センサ58の検出温度の差が所定温度(例えば80℃)よりも高い温度差になった場合に、スイッチ53によって被加熱部材51の分断部分51aを電気的に遮断することも可能である。この場合の制御装置56の動作について図13に示すフローチャートを参照しながら説明する。
【0046】
先ず、スイッチ53によって被加熱部材51の分断部分51aが電気的に接続されているときに(S11)、第1温度センサ55の検出温度と第2温度センサ58の検出温度の差が所定の温度差よりも大きくなると(S12)、スイッチ53によって被加熱部材51の分断部分51aを電気的に遮断するとともに(S13)、表示器59に所定の表示を行わせる(S14)。一方、スイッチ53によって被加熱部材51の分断部分51aが電気的に接続されていない時に(S11)、第1温度センサ55の検出温度と第2温度センサ59の検出温度の差が所定の温度差以下になると(S5)、スイッチ53によって被加熱部材51の分断部分51aを電気的に接続する(S16)。この時の第1温度センサ55の検出結果は図14のようになる。尚、図14では、75秒の時点で加熱装置20による加熱を停止している。
【0047】
この場合でも、図10のように制御装置56が動作する場合と同様に、被加熱部材51の過加熱を確実に防止することができ、被加熱部材51の過加熱を防止する温度の調整が容易である。
【0048】
尚、第2実施形態では、被加熱体50に円環状に形成された被加熱部材51を設けたものを示した。これに対し、被加熱部材51の代わりに図5または図6にした被加熱部材30,40を設けることも可能である。
【0049】
尚、第1及び第2実施形態では、被加熱体10,50が冬期に屋外で使用されるクッションであるものを示した。これに対し、被加熱体10,50が被加熱部材11,51を有する保温器具、防寒着、保温用容器、加熱用容器等である場合でも、前述と同様の構成を設けることが可能であり、前述と同様の作用効果を達成することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0050】
【図1】本発明の第1実施形態を示す被加熱体及び電磁誘導加熱装置の側面断面図
【図2】被加熱部材の平面図
【図3】被加熱体及び電磁誘導加熱装置の概略図
【図4】被加熱部材の動作説明図
【図5】第1実施形態の第1変形例を示す被加熱部材の平面図
【図6】第1実施形態の第2変形例を示す被加熱部材の平面図
【図7】本発明の第2実施形態を示す被加熱体及び電磁誘導加熱装置の側面断面図
【図8】被加熱体の概略図
【図9】被加熱部材のブロック図
【図10】制御装置の動作を示すフローチャート
【図11】第1温度センサの検出温度を示すグラフ
【図12】第1温度センサの検出温度を示すグラフ
【図13】第2実施形態の変形例における制御装置の動作を示すフローチャート
【図14】第1温度センサ及び第2温度センサの検出温度を示すグラフ
【符号の説明】
【0051】
10…被加熱体、11…被加熱部材、11a…分断部分、12…バイメタル部材、12a…固定部材、13…断熱材層、14…カバー部材、20…電磁誘導加熱装置、21…高周波コイル、22…トッププレート、30…被加熱部材、40…被加熱部材、50…被加熱体、51…被加熱部材、51a…分断部分、52…断熱材層、53…スイッチ、53a…導電性部材、54…電圧発生器、54a…コイル、55…第1温度センサ、56…制御装置、57…カバー部材、58…第2温度センサ、59…表示器、G…高周波磁界。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電磁誘導加熱装置によって加熱可能な被加熱体において、
電磁誘導によって加熱可能な材料から成るとともに、1つの通電経路を有する環状に形成され、通電経路の少なくとも一部が分断されている被加熱部材と、
被加熱部材の通電経路の分断されている分断部分を電気的に接続するとともに、被加熱部材の所定位置が所定温度よりも高い温度になると前記接続を遮断する遮断機構とを備えた
ことを特徴とする被加熱体。
【請求項2】
前記遮断機構を、被加熱部材の前記所定位置が前記所定温度よりも高い温度になると、変形によって前記接続を遮断するバイメタル部材または形状記憶合金部材から構成した
ことを特徴とする請求項1記載の被加熱体。
【請求項3】
前記遮断機構に、電磁誘導によって所定の電圧を発生可能な電圧発生手段と、被加熱部材の前記所定位置の温度を検出する温度センサと、電圧発生手段によって発生した電圧を用いて駆動され、被加熱部材の前記分断部分を電気的に接続及び遮断自在なスイッチと、電圧発生手段によって発生した電圧を用いて駆動され、温度センサによって被加熱部材の前記所定位置が前記所定温度よりも高い温度になったことが検出されると、被加熱部材の前記分断部分が電気的に遮断されるようにスイッチを制御する制御手段とを設けた
ことを特徴とする請求項1記載の被加熱体。
【請求項4】
前記遮断機構に、電磁誘導によって所定の電圧を発生可能な電圧発生手段と、被加熱部材の前記所定位置の温度を検出する第1温度センサと、外気温を検出する第2温度センサと、電圧発生手段によって発生した電圧を用いて駆動され、被加熱部材の前記分断部分を電気的に接続及び遮断自在なスイッチと、電圧発生手段によって発生した電圧を用いて駆動され、第1温度センサの検出温度と第2温度センサの検出温度との差が所定の温度差よりも大きくなると、被加熱部材の前記分断部分が電気的に遮断されるようにスイッチを制御する制御手段とを設けた
ことを特徴とする請求項1記載の被加熱体。
【請求項1】
電磁誘導加熱装置によって加熱可能な被加熱体において、
電磁誘導によって加熱可能な材料から成るとともに、1つの通電経路を有する環状に形成され、通電経路の少なくとも一部が分断されている被加熱部材と、
被加熱部材の通電経路の分断されている分断部分を電気的に接続するとともに、被加熱部材の所定位置が所定温度よりも高い温度になると前記接続を遮断する遮断機構とを備えた
ことを特徴とする被加熱体。
【請求項2】
前記遮断機構を、被加熱部材の前記所定位置が前記所定温度よりも高い温度になると、変形によって前記接続を遮断するバイメタル部材または形状記憶合金部材から構成した
ことを特徴とする請求項1記載の被加熱体。
【請求項3】
前記遮断機構に、電磁誘導によって所定の電圧を発生可能な電圧発生手段と、被加熱部材の前記所定位置の温度を検出する温度センサと、電圧発生手段によって発生した電圧を用いて駆動され、被加熱部材の前記分断部分を電気的に接続及び遮断自在なスイッチと、電圧発生手段によって発生した電圧を用いて駆動され、温度センサによって被加熱部材の前記所定位置が前記所定温度よりも高い温度になったことが検出されると、被加熱部材の前記分断部分が電気的に遮断されるようにスイッチを制御する制御手段とを設けた
ことを特徴とする請求項1記載の被加熱体。
【請求項4】
前記遮断機構に、電磁誘導によって所定の電圧を発生可能な電圧発生手段と、被加熱部材の前記所定位置の温度を検出する第1温度センサと、外気温を検出する第2温度センサと、電圧発生手段によって発生した電圧を用いて駆動され、被加熱部材の前記分断部分を電気的に接続及び遮断自在なスイッチと、電圧発生手段によって発生した電圧を用いて駆動され、第1温度センサの検出温度と第2温度センサの検出温度との差が所定の温度差よりも大きくなると、被加熱部材の前記分断部分が電気的に遮断されるようにスイッチを制御する制御手段とを設けた
ことを特徴とする請求項1記載の被加熱体。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【公開番号】特開2009−99500(P2009−99500A)
【公開日】平成21年5月7日(2009.5.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−272504(P2007−272504)
【出願日】平成19年10月19日(2007.10.19)
【出願人】(505278931)株式会社まるや (10)
【出願人】(300054631)有限会社エフ・テイ・イノベーション (14)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年5月7日(2009.5.7)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年10月19日(2007.10.19)
【出願人】(505278931)株式会社まるや (10)
【出願人】(300054631)有限会社エフ・テイ・イノベーション (14)
【Fターム(参考)】
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