説明

被取付物を取付用レールに取り付けるための取付金具

【課題】被取付物を取付金具に取り付けた状態で取付用レールに取り付けることができる取付金具を提供する。
【解決手段】互いに対向して設けられた両側壁部23の縁部に、取付用レールの両側鍔部に係合する爪部21を形成した内側枠体20と、この内側枠体の外側に重ねて組み付けられ、取付用レールに対して所定位置に案内する案内溝を両側壁部32の縁部に形成した外側枠体30とで構成され、外側枠体の内壁面に、内側枠体20の長手方向の一端を係止する係止部34を設け、外側枠体30の係止部34に内側枠体20の一端を係止させた状態で、締結具4で前記内側枠体20と外側枠体30を締め付けて、前記一端を支点として前記内側枠体20の他端部を前記外側枠体30側に引き寄せ、前記内側枠体20の爪部21と前記外側枠体30の案内溝の底辺とによって前記取付用レール1の両側鍔部1aを挟持した取付金具。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、モータ制御装置等の電気機器をDINレール等の取付用レールに取り付けるための取付金具に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、FA機器、生産設備などに電力を供給し制御するための多数の電気機器を金属筐体内に取り付けた制御盤の内部では、いわゆるDINレールと言われる取付用レールを用いて電気機器を取り付ける場合が多い。DINレールは、ドイツの工業規格で寸法が定められているレールで、世界的な規格となっているものである。
【0003】
従来、この種の取付用レールに電気機器を取り付ける場合、係合爪を形成した取付金具をレールに組付け、取付金具に装着したネジをレールに押し当てて取付金具をレールに取り付けた先行技術(特許文献1)が知られている。
また、係合爪を形成した取付金具をレールに組付け、取付金具に装着した2本のネジをレールの鍔部にそれぞれ押し当てて係合爪とネジの間でレールの鍔部を挟持してレールに取り付けた先行技術(特許文献2)が知られている。
さらに、係合爪を形成した本体金具をレールに組付け、この本体金具の外側に案内溝を形成した固定金具を組み付け、本体金具と固定金具を1本のネジで締め付けることにより、本体金具の係合爪と、固定金具の案内溝との間でレールを挟持して取付金具を固定する先行技術(特許文献3)が知られている。
【特許文献1】実公昭55−46983号公報
【特許文献2】実開平1−79278号公報
【特許文献3】特開2003−65306号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1の場合、締付用のネジをレールに押し当てて取付金具を固定しているため、まず取付金具を単体でレールに取り付け、その後に被取付物を取付金具に取り付けなければならない。これは、先に被取付物を取付金具に取り付けてしまうと、被取付物が取付金具のねじ体を覆ってしまい、レールに取り付けることができなくなってしまうためである。このように、取付金具を単体でレールに取り付けた後に、該取付金具に被取付物を取り付けるのは作業性が悪いという問題がある。
また、特許文献2の場合、2本のネジがレール両端の鍔部上に位置する構造だと次のような問題がある。
すなわち、2本のネジを均等の締め付けトルクで締付しなければならないことや、被取付物が取付金具に比して大きい場合は、2つの取付金具で挟み込むように固定しなければならず、その場合は4本のネジを均等の締め付けトルクで締付しなければならないという問題がある。
さらに、特許文献3の場合、電気機器を取り付けるためのナットを本体金具と固定金具の間に別途組み付けなければならず、部品点数の増大を来たすことになる。この場合も本体金具と固定金具を止めるネジは、電気機器で覆われる位置に設けられているため、取付金具を単体でレールに取り付けた後に電気機器を取付金具に取り付けなければならなかった。
【0005】
本発明は、上記課題を解決し、被取付物を取付金具に取り付けた状態で取付用レールに取り付けることができるとともに、1つの締結具で簡単に着脱可能である被取付物を取付用レールに取り付けるための取付金具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上記課題を解決するため、取付用レールに対して交叉する方向に配置され、かつ、互いに対向して設けられた両側壁部の縁部に、前記取付用レールの両側鍔部に係合する爪部を形成した内側枠体と、この内側枠体の外側に重ねて組み付けられ、前記取付用レールに対して所定位置に案内する案内溝を両側壁部の縁部に形成した外側枠体とで構成され、前記内側枠体と外側枠体を締結具を介して締結することによって、前記外側枠体に取り付けられた被取付物を前記取付用レールに取り付ける取付金具において、前記外側枠体の内壁面に、前記内側枠体の長手方向の一端を係止する係止部を設け、かつ、内側枠体の長手方向の他端部を固定する締結具を装着し、前記外側枠体の係止部に前記内側枠体の一端を係止させた状態で、前記締結具で前記内側枠体と外側枠体を締め付けて、前記一端を支点として前記内側枠体の他端部を前記外側枠体側に引き寄せ、前記内側枠体の爪部と前記外側枠体の案内溝の底辺とによって前記取付用レールの両側鍔部を挟持したことにある。
また、本発明は、前記係止部は、前記外側枠体の壁面の一部を切り起こすことで成形したことにある。
さらに、本発明は、前記係止部は、前記内側枠体に向けて鋭角の斜面をなすように一定角度で延出させて形成したことにある。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、次のような効果を奏することができる。
請求項1によれば、被取付物を金具に取り付けた状態で取付用レールに取り付けることができるとともに、1つの締結具で簡単に着脱可能である。また、1つの締結具での取付であっても、充分な締付力を得ることができる。すなわち、取付用レールの両側の鍔部を同じ力で締付けることができるので、外れる虞がない。
請求項2の発明によれば、取付金具の係止部の作製が容易である。
請求項3の発明によれば、取付用レールの両側の鍔部を、均等の締め付け力で固定することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下、図示の実施の形態を図面を参照しながら、詳細に説明する。
図1は取付用レールに取り付けた状態の取付金具を示す斜視図、図2は図1の分解斜視図である。図3(a)(b)(c)は、取付用レールに取り付ける手順を示す側面図である。
【0009】
図1ないし図3において、1はDINレール等の取付用レールであり、この取付用レール1に取付金具2を介して電気機器等の被取付物3が組み付けられる。
【0010】
取付金具2は、略水平方向に配設された帯状の取付用レール1に対して略直角に交叉する方向に配置され、該取付用レール1の幅方向の両側に設けられた鍔部1aに組み付けられている。前記取付金具2は、前記取付用レール1の両側鍔部1aに係合する一対の爪部21を有する内側枠体20と、この内側枠体20の外側に重ねて組み付けられ、前記取付用レール1に対して設定位置に組み付けられる案内溝31を有する外側枠体30とで構成されている。
【0011】
前記内側枠体20は、長手方向の寸法L1が、前記取付用レール1の幅寸法Loよりも長い寸法L1>Loを有する長尺の壁部22の左右両側に、互いに対向する側壁部23を有し、これら両側壁部23の縁部23aに、一定長さの係合溝24が形成され、この係合溝24の上下両端部に互いに対向するようにして凹部24aおよび前記爪部21が形成されている。この係合溝24の下側凹部24aには、爪部21との間に開口部24bに向けて一定角度で徐々に広がる方向のテーパ部24cが形成されている。この内側枠体20の壁部22には、係合溝24の下側凹部24aよりも下方側に少なくともネジ頭部が入る大きさの複数の孔25が長手方向に形成されており、これら孔25より下方側にはネジ孔26が形成されている。
【0012】
前記外側枠体30は、長手方向の寸法L2が、内側枠体20の長手方向の寸法L1よりも長い寸法L2>L1を有する長尺の壁部31の左右両側に、互いに対向する側壁部32を有し、これら側壁部32の縁部32aに、前記係合溝24に対応する位置に案内溝33が形成されている。この案内溝33は開口側が幅広の斜面に形成された略台形状の切欠き部で構成されている。前記案内溝33よりも上方の壁部31の内面側には、前記内側枠体20の一端20aを係止する係止部34が設けられている。この係止部34は壁部31の一部をコ字形に切り起こして形成したもので、前記内側枠体20の一端20aを係止するように下方側に向けて鋭角の斜面になるように一定角度で延出している。この係止部34の上方側の壁部31には、電気機器を取り付けるための複数の取付孔(ネジ孔)35が前記孔25に対応する位置に形成されている。また、案内溝33よりも下方側の壁部31には、同じく電気機器を取り付けるための複数の取付孔(ネジ孔)36が形成されている。これら取付孔(ネジ孔)36よりも、下部側の壁部31端面には前記ネジ孔26に対応するネジ孔37が形成されている。これらネジ孔26およびネジ孔37には、締結具としてのネジ4が螺着されて互いに締結されている。
【0013】
次に、上記取付金具2の取り付け手順を説明する。
まず、電気機器等の被取付物3に取付金具2を組付ける。これは図1に示すように、取付孔(ネジ孔)35、36にネジ5を通して被取付物3を固定する(図3(c)参照)。
【0014】
次に、内側枠体20の一端を係止部34に係合させて外側枠体30に仮止めして組付ける。そして、ネジ4を緩めた状態で取付用レール1の両側鍔部1aに一対の爪部21を介して内側枠体20を引っ掛けて取付用レール1に取付金具2を組付ける(図3(b)参照)。この状態で、ネジ4を締め付けると、前記内側枠体20の一端20aを支点として前記内側枠体20の他端部20bが前記外側枠体30側に引き寄せられていく。このとき、前記内側枠体20の爪部21と前記外側枠体30の案内溝33の底辺33aとによって前記取付用レール1の下側鍔部1aは、下側凹部24aのテーパ部24cによって、上方に押し上げる力が作用するので、内側枠体20は下方向にさがりながら外側枠体30側に引き寄せられることになる。このとき、外側枠体30は、案内溝33の底辺33aの両側の斜面33bによって取付用レール1の幅方向中心位置と案内溝33の長手方向中心位置が一致するように移動しながら位置決めされる。そして、内側枠体20の一対の爪部21と前記外側枠体30の案内溝33の底辺33aとによって前記取付用レール1の両側鍔部1aが挟持されて、取付金具2が固定される(図3(a)参照)。
【0015】
上記実施の形態によれば、1本のネジ4によって、内側枠体20と外側枠体30を締結するので、取付金具2は、内側枠体20の両側の側壁23に設けられた一対の爪部21と、外側枠体30の両側の側壁部32に設けられた案内溝33の底辺33aとによって均等に締め付けて固定することができる。前記取付金具2は、ネジ4を締め付けると、前記内側枠体20の一端20aを支点として前記内側枠体20の他端部20bが前記外側枠体30側に引き寄せられていくので、取付用レール1の下側鍔部1aに接触する。
このとき、内側枠体20は、下側凹部24aのテーパ部24cが取付用レール1の下側鍔部1aに対して下方に下がりながら移動し、上部側の爪部21が取付用レール1の上部側鍔部1aに係合して引き付けられる。こうして、取付金具2は両側の側壁部23に設けられた一対の爪部21と、外側枠体30の両側の側壁部32に設けられた案内溝33の底辺33aとによって均等の力で取付用レール1に組み付けられる。また、予め、電気機器等の被取付物3を取付金具2に組付けることができるので、取付用レール1に対する組付け作業を容易に行なうことができる。特に、取付用レール1が壁面に取り付けられていて、取付用レール1側からのネジ止めが不可能な場合には、予め、電気機器等の被取付物3を取付金具2に組付ける必要があるので、本発明の取付金具2は有効である。
【0016】
なお、本発明は、上記実施の形態のみに限定されるものではなく、例えば、図4に示すような回路基板6を取り付けた支持体7を取付用レール1に組み付ける場合には、支持体7を予めネジ8によって取付金具2に組み付けておき、この取付金具2を取付用レール1に組付けることで支持体7を組付けることができる。被取付物3が筐体の場合は、外側枠体30の内面側からネジ止めして被取付物3を組付けることもできる。など、その他、本発明の要旨を変更しない範囲内で適宜、変更して実施し得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の実施の形態による被取付物を取付用レールに取り付けるための取付金具を示す斜視図である。
【図2】図2の分解斜視図である。
【図3】本発明の実施の形態による被取付物を取付用レールに取り付けるための取付金具の組付け手順を示し、(a)は取付用レールに取付金具を組み付けた状態を示す概念断面図、(b)は取付用レールに組付ける過程を示す概念断面図、(c)は取付用レールに取り付ける前の取付金具を示す概念断面図である。
【図4】基板に取り付けられた被取付物を取付用レールに取り付けるための取付金具を示す斜視図である。
【符号の説明】
【0018】
1 取付用レール
2 取付金具
3 被取付物(電気機器)
4,5 ネジ
20 内側枠体
21 爪部
22 壁部
23 側壁部
24 係合溝
24a 凹部
24c テーパ部
25 孔
26 ネジ孔
30 外側枠体
31 壁部
32 側壁部
33 案内溝
34 係止部
35,36 取付孔(ネジ孔)
37 ネジ孔

【特許請求の範囲】
【請求項1】
取付用レールに対して交叉する方向に配置され、かつ、互いに対向して設けられた両側壁部の縁部に、前記取付用レールの両側鍔部に係合する爪部を形成した内側枠体と、この内側枠体の外側に重ねて組み付けられ、前記取付用レールに対して所定位置に案内する案内溝を両側壁部の縁部に形成した外側枠体とで構成され、前記内側枠体と外側枠体を締結具を介して締結することによって、前記外側枠体に取り付けられた被取付物を前記取付用レールに取り付ける取付金具において、前記外側枠体の内壁面に、前記内側枠体の長手方向の一端を係止する係止部を設け、かつ、内側枠体の長手方向の他端部を固定する締結具を装着し、前記外側枠体の係止部に前記内側枠体の一端を係止させた状態で、前記締結具で前記内側枠体と外側枠体を締め付けて、前記一端を支点として前記内側枠体の他端部を前記外側枠体側に引き寄せ、前記内側枠体の爪部と前記外側枠体の案内溝の底辺とによって前記取付用レールの両側鍔部を挟持したことを特徴とする被取付物を取付用レールに取り付けるための取付金具。
【請求項2】
前記係止部は、前記外側枠体の壁面の一部を切り起こすことで成形したことを特徴とする請求項1に記載の被取付物を取付用レールに取り付けるための取付金具。
【請求項3】
前記係止部は、前記内側枠体に向けて鋭角の斜面をなすように一定角度で延出させて形成したことを特徴とする請求項2に記載の被取付物を取付用レールに取り付けるための取付金具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2009−281423(P2009−281423A)
【公開日】平成21年12月3日(2009.12.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−131681(P2008−131681)
【出願日】平成20年5月20日(2008.5.20)
【出願人】(000103792)オリエンタルモーター株式会社 (150)
【Fターム(参考)】