説明

製品包装材の処理方法及び処理装置

【課題】 食品包装資材などの製品包装材から有価物を分離して回収することができる製品包装材の処理方法及び処理装置を提供する。
【解決手段】 無機有価物と有機有価物を成分として含む製品包装材に超臨界状態または亜臨界状態の流体を接触させ、有機有価物成分を分解し、該分解物中から気体状の有機有価物を分離して回収する工程と、分解後の残渣中から無機有価物を分離して回収する工程とを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レトルト食品などの製品包装材に用いられるアルミニウム箔などの無機有価物を含有したラミネートフィルム廃棄物を再資源化処理するための製品包装材の処理方法及び処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
製品包装資材においてアルミ箔を含有したラミネートフィルム(パウチ)は、レトルト食品や洗剤用容器として広く使用されており、特に近年、排出される廃棄物の減容化を目的とした詰め替え用洗剤の普及により、その使用量は拡大している。これに伴いパウチ製造時に発生する切れ端(パウチ屑)など廃棄物の発生量も増大している。例えば図4に示すように、帯状のラミネートフィルム(パウチ)20を所定ピッチ間隔ごとに切断してパウチシート21を作製するが、このときパウチシート21の四隅を切り落とすので多数のパウチ屑22が発生する。これらはセメントメーカーなどにより産業廃棄物として引き取りがなされ、セメント原料として再利用処理がなされている。このような産業廃棄物処理を行う際の処理費用は廃棄物1トン当り2万円程度であると言われており、排出事業者に大きな負担となっている。
【0003】
一方、パウチはアルミニウムと、ポリプロピレン(PP)及びポリアミド(PA)等のプラスチックから構成されており、アルミニウムの含有量は約15質量%である。アルミニウムは、その原料となるボーキサイトが国内では産出されず、資源に乏しい我が国ではリサイクルの望まれる鉱物資源の1つであることから、資源の有効活用の観点からも問題を抱えている。
【0004】
特許文献1は、超臨界流体を利用する技術ではあるが、それが適用される技術分野が本発明の属する技術分野とは異なるものである。
【特許文献1】特開2001−79511号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、上記の課題を解決するためになされたものであり、製品包装資材における無機有価物と含有有機物成分を環境負荷の小さい超臨界流体を用いて分離・回収し、それぞれを有効活用することにより、排出事業者の負担低減、天然資源の保全に寄与する製品包装材の処理方法および処理装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る製品包装資材の処理方法は、無機有価物と有機有価物を成分として含む製品包装材に超臨界状態または亜臨界状態の流体を接触させ、前記有機有価物成分を分解し、該分解物中から気体状の有機有価物を分離して回収する工程(a)と、前記分解後の残渣中から無機有価物を分離して回収する工程(b)と、を具備することを特徴とする。
【0007】
本発明は、液体に近い密度を有し、有機溶媒に近い不揮発性溶解物質に対する溶解度を示すと同時に、気体に近い低粘性、高い溶質拡散性により有機溶媒より優れた物質移動・拡散特性を持つ超臨界流体を用いて、製品包装資材に含まれる無機有価物とポリプロピレン(PP)やポリアミド(PA)などの含有有機物成分を分離し、無機物は金属酸化物として、含有有機物成分は可燃ガスとして、それぞれを有価物として再資源化するものである。
【0008】
上記工程(a)において、超臨界状態または亜臨界状態の流体が、二酸化炭素、メタノール、エタノールおよび水からなる群より選ばれる1つ又は2つ以上であることが望ましい。特に、流体には水が適しており、超臨界水または亜臨界水を用いて製品包装材中の有機有価物成分を加水分解して、有機有価物を効率良く分離回収することができる。分離回収される有機有価物は、メタン、ブタン、エタン、プロパンおよび水素からなる群より選ばれる1つ又は2つ以上の可燃性ガスである。これらの可燃性ガスは、ガス精留塔の搭頂部から単体又は混合物として抜き取られ、回収されるものである。
【0009】
超臨界状態または亜臨界状態の流体として超臨界水または亜臨界水を用い、該超臨界水または亜臨界水を製品包装材と接触させて加水分解することにより有機有価物成分を水に可溶化し、残渣として無機有価物を分離回収することができる。この場合に、加水分解時に、有機有価物成分の炭化を防止することを目的としてヒドラジン(N24)を添加するか、またはデエアレーション処理するかいずれかの一方の処理を施した水を用いることが好ましい。
【0010】
超臨界流体として超臨界水を用いる場合は、分解反応器の内部温度を250〜600℃、好ましくは374〜474℃の範囲とし、内圧を10〜30MPa、好ましくは22.12〜30MPaの範囲とすることが好ましい。圧力条件は適正範囲であっても分解反応器の内部温度が250℃を下回るか、または温度条件は適正範囲であっても分解反応器の内圧が10MPaを下回ると、亜臨界状態にも達することができなくなり、有機有価物の分解反応そのものが成立しなくなるからである。一方、圧力条件は適正範囲であっても分解反応器の内部温度が600℃を超えるか、または温度条件は適正範囲であっても分解反応器の内圧が30MPaを超えると、装置の安全性を確保する必要から装置が大型化し、高コストになって現実的ではなくなるからである。
【0011】
有機有価物成分を分離した後に、温度380〜800℃、圧力10〜30MPaの条件下で、空気、酸素ガス、過酸化水素のうちのいずれかの酸化剤を添加した超臨界水条件下で処理することにより無機有価物を酸化し、無機酸化固形物として資源化可能な形態で回収することができる。圧力条件は適正範囲であっても温度が380℃を下回るか、または温度条件は適正範囲であっても圧力が10MPaを下回ると、無機有価物としてのアルミニウム(Al)の酸化反応が不十分になり、回収効率が低下するからである。一方、圧力条件は適正範囲であっても温度が800℃を超えるか、または温度条件は適正範囲であっても圧力が30MPaを超えると、無機有価物としてのアルミニウム(Al)が蒸散してしまい、回収不能になるからである。
【0012】
超臨界流体として水以外の他の流体を用いる場合は、超臨界または亜臨界の状態とするための適正温度の一例として、二酸化炭素で31.1℃、メタノールで239.43℃、エタノールで243.1℃、を挙げることができる。また、超臨界または亜臨界の状態とするための適正圧力の一例として、二酸化炭素で73atm、メタノールで79.9atm、エタノールで63.1atmを挙げることができる。
【0013】
本発明に係る製品包装資材の処理装置は、超臨界状態または亜臨界状態とされるべき流体を供給する供給源2と、処理対象物としての製品包装材を収容し、前記流体供給源から流体を受け入れて超臨界状態または亜臨界状態とし、前記製品包装材を超臨界状態または亜臨界状態の流体と反応させる分解反応器4と、前記分解反応器に酸化剤を供給する酸化剤供給源8と、前記流体供給源から前記分解反応器へ前記流体を圧送する第1の高圧ポンプP1と、前記酸化剤供給源から前記分解反応器へ前記流体を圧送する第2の高圧ポンプP2と、前記分解反応器の下流側に設けられ、前記分解反応器から送られてくる分解物を気体化するガス化塔5と、前記ガス化塔の下流側に設けられ、前記ガス化塔から送られてくる気液混合物中の有機有価物成分を精留し、資源化可能な形態のガス留分とするガス精留塔7と、前記ガス精留塔と前記ガス化塔との間に設けられた減圧弁V5と、前記分解反応器の下流側に設けられ、前記分解反応器から送られてくる分解物を気液分離する気液分離器10と、前記分解反応器からのラインが前記気液分離器と前記ガス化塔とに分岐する分岐部に設けられた切換弁V4とを具備することを特徴とする。
【0014】
分解反応器は、分解した製品包装材から有機有価物を分離したあとの残渣を酸化剤と反応させるためのバスケットを有するものである。バスケットは、流体供給源に連通する上部開口と、上部開口から導入された流体が通過できるように底部にて開口する多数の孔とを備えていることが好ましい。
【0015】
ガス化塔は、内部に所定の触媒が充填され、分解反応器から送られてくる分解物を触媒と接触させて可燃性ガスに変換するものである。
【0016】
ガス精留塔は、内部に所定のトレイおよびダウンカマーからなる多段の流路を有し、ガス化塔から送られてくる可燃性ガスを精留するものである。
【0017】
気液分離器は、分解反応器内での残留物(残渣)と酸化剤との酸化分解反応の際に、付随的に生成される水(H2O)等の液体とCO2等の気体とを分離するものである。
【0018】
減圧弁は、分解反応器およびガス化塔の内部をそれぞれ大気圧程度まで減圧させ、流体の超臨界状態または亜臨界状態を解消するものである。
【0019】
切換弁は、分解反応器の下流(出口)側において、ガス化塔/ガス精留塔ラインから気液分離器ラインへ切り換えるものである。切換弁の切換タイミングは、分解反応器内への酸化剤の供給開始時か、または酸化剤を供給して残留物(残渣)の酸化分解反応が進行し始めたときである。
【0020】
さらに、流体供給源および酸化剤供給源と分解反応器との間に予熱器を設け、分解反応器に供給する直前に流体および酸化剤をそれぞれ予熱することができる。流体の予熱温度の一例として、水で約374℃、二酸化炭素で約32℃、メタノールで約240℃、エタノールで約244℃とすることができる。
【0021】
さらに、ガス化塔とガス精留塔との間に冷却器を設け、ガス化塔からガス精留塔に供給される気液混合物を冷却することができる。冷却温度は、室温程度まで温度降下させることが好ましいが、400〜500℃に温度上昇したガス化塔等を短時間で急速に冷却すると装置の寿命が著しく短くなること、および装置がスケールアップしたときには急速冷却すること自体が技術的に難しいので、50℃以上100℃以下を冷却の目安とする。
【0022】
本明細書中において「超臨界流体」とは、物質の状態図で温度、圧力、エントロピー線図の臨界点を超え、気体、液体、固体の三態のいずれでもない状態にあるものをいうものと定義する。流体がH2Oである場合の超臨界点は、374℃/22.12MPa(技法堂出版「水熱科学ハンドブック」、あるいは岩波書店「理化学辞典第5版」)である。
【0023】
また、本明細書中において「亜臨界状態の流体」又は「亜臨界流体」とは、超臨界状態を超えてはいないが、それに近い高温高圧状態であって、気体、液体、固体の三態から超臨界状態までの過渡的な遷移状態にある流体のことをいうものと定義する。流体がH2Oである場合に、水の飽和蒸気圧下では水のイオン積は330℃近辺に最大値を示し、この温度領域で水としての化学作用が極大を示すことが知られている。このように超臨界点以下の温度であっても超臨界水に近い状態に保たれたものを亜臨界状態の水または亜臨界水という。
【0024】
超臨界流体として超臨界水を用いて、有機有価物成分としてのポリエチレン(融点114〜130℃)を加水分解するときの一連の反応式(1)〜(4)を次に示す。
【0025】
(CH2=CH2)+H2O(超臨界水)→CH4+CO+H2 …(1)
(CH2=CH(CH3))+H2O(超臨界水)→2CH4+CO+H2 …(2)
CO+3H2→CH4+H2O …(3)
(CH2=CH2)+(CH2=CH(CH3))+H2O→CH4+CO+H2 …(4)
製品包装材を超臨界水と接触させると、ポリエチレンが超臨界水へ可溶化し、可燃ガスと残渣とに分離される。次いで、酸化剤を導入して残渣中の無機有価物(アルミニウム)を酸化させ、金属酸化物を得る。得られた金属酸化物は純度99%以上の高純度アルミナであり、リサイクル資源として極めて価値の高いものとなる。
【発明の効果】
【0026】
本発明によれば、製品包装資材を超臨界流体場にさらすことにより、有機有価物成分が流体へ可溶化し、無機有価物である金属酸化物と、可燃ガスに分離され、それぞれ有価物として再資源化されることにより、製品包装資材廃棄物排出事業者の廃棄物処理に要する経費負担を軽減するとともに、天然資源の有効活用が可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
以下、本発明を実施するための最良の実施の形態について添付の図面を参照して説明する。
先ず図1を参照して製品包装材としてのパウチ屑を処理するための処理装置について説明する。処理装置1は、流体供給源としての給水タンク2、予熱器3、分解反応器としての加水分解/金属酸化物合成槽4、ガス化塔5、冷却器6、ガス精留塔7、酸化剤供給源としての酸化剤充填タンク8、冷却器9および気液分離器10などを備えたセミバッチシステムとして構築されている。図1には説明の便宜上から分解反応器4を1つのみ示したが、実際には3つの分解反応器4を並べて全体として連続的な処理としている。例えば、第1の分解反応器4が昇温・昇圧しているときに、同時に第2の分解反応器4は脱圧・冷却され、第3の分解反応器4は分解・ガス化工程に入っており(ターム1)、第1の分解反応器4が分解・ガス化工程に入っているときに、同時に第2の分解反応器4は昇温・昇圧され、第3の分解反応器4は脱圧・冷却工程に入っており(ターム2)、第1の分解反応器4が脱圧・冷却しているときに、同時に第2の分解反応器4は分解・ガス化し、第3の分解反応器4は昇温・昇圧している(ターム3)。このように3つの分解反応器4を並べて処理サイクルを少しずつシフトさせて並行処理することにより全体として連続的な処理としている。なお、本発明のセミバッチ方式の処理装置1は、各所に種々の温度計、圧力計、流量センサ、監視TVモニタを備えており、これらの検出や監視情報に基づいて図示しないコントローラによって制御されるようになっている。
【0028】
給水タンク2から予熱器3までの間にラインL1が設けられ、予熱器3から分解反応器4までの間にラインL3が設けられている。上流側のラインL1には上流側から順に開閉弁V1、第1の高圧ポンプP1、逆流防止弁V2が取り付けられている。下流側のラインL3には逆流防止弁V3が取り付けられている。これらのラインL1,L3を通って給水タンク2から予熱器3を経由して分解反応器4内のバスケット42に高温高圧の水が供給されるようになっている。第1の高圧ポンプP1は、最大30MPaの圧力で水を圧送することができる能力を備えたダイヤフラム式ポンプを用いることができる。予熱器3は、分解反応器4に供給する直前に流体および酸化剤をそれぞれ予熱するものである。予熱器3は、誘導加熱方式であり、最高温度600℃まで水を加熱することができる能力を備えている。
【0029】
酸化剤充填タンク8からのラインL2が給水ラインL1の適所に合流している。酸化剤供給ラインL2には上流側から順に開閉弁V6、第2の高圧ポンプP3、逆流防止弁V7が取り付けられている。この酸化剤供給ラインL2を通って酸化剤としての酸素ガスが分解反応器4内に導入されるようになっている。なお、酸化剤として過酸化水素を酸素ガスに添加したものを用いるようにすると、アルミニウムの酸化反応が促進されてより短時間の処理が実現されるようになるので好ましい。第2の高圧ポンプP3は、ダイヤフラム式ポンプまたはコンプレッサーを用いることができ、最高圧力200kg/cm2の圧力で酸素ガスを圧送することができる能力を備えている。なお、酸化剤供給ラインL2と給水ラインL1との合流点には安全弁SVおよび切換弁(図示せず)が設けられている。
【0030】
分解反応器4は、内部に製品包装材を保持するためのバスケット42を備え、外周を水冷ジャケット44で取り囲まれている。バスケット42などを含む内部構造の詳細は後述する。水冷ジャケット44は図示しない循環流路を介して冷却水供給源および熱交換器と連通している。分解反応器4の蓋を貫通して流体/酸化剤供給ラインL3、安全弁ラインL4および排出ラインL5がそれぞれ内部に連通している。
【0031】
排出ラインL5は切換弁V4を介してガス化塔5に連通している。ガス化塔5は、内部に所定の触媒が充填され、分解反応器4から送られてくる分解物を触媒と接触させてメタンやエチレン等の可燃性ガスに変換するものである。ガス化塔5の塔頂部はラインL7を介してガス精留塔7に連通している。搭頂ラインL7には上流側から順に減圧弁V5および冷却器6が取り付けられている。減圧弁V5は、分解反応器4およびガス化塔5の内部をそれぞれ大気圧程度まで減圧させ、これらの内部に存在する流体の超臨界状態または亜臨界状態を解消するものであり、図示しないコントローラによって動作が制御されるようになっている。冷却器6は、ガス化塔5から送られてくる高温ガス(300〜500℃)を100℃以下(好ましくは50℃程度)に冷却するものである。
【0032】
ラインL7はガス精留塔7のほぼ中央に連通し、内部で精留された軽質分が塔頂部へ上昇し、重質分が塔底部へ下降するようになっている。ガス精留塔7は、内部に所定のトレイおよびダウンカマーからなる多段の流路および充填物を有し、ガス化塔5から送られてくるメタン等の可燃性ガスを精留して純度を向上させるものである。ガス精留塔7の搭頂部からはガス留分回収ラインL8が延び出し、塔底部からは処理水回収ラインL9が延び出し、それぞれ所定の回収/再利用システム(図示せず)に連通している。
【0033】
切換弁V4は、分解反応器4の下流(出口)側において、ガス化塔/ガス精留塔ラインL7から気液分離ラインL10へ切り換えるものである。切換弁V4の動作は図示しないコントローラによって制御されるようになっている。切換弁V4の切換タイミングは、分解反応器4内への酸化剤の供給開始時か、または酸化剤を供給して残留物(残渣)の酸化分解反応が進行し始めたときである。
【0034】
気液分離ラインL10には圧力制御弁V8および冷却器9が取り付けられている。冷却器9は、気液分離器10から送られてくる気液混合物(300〜500℃)を100℃以下(好ましくは50℃程度)に冷却するものである。
【0035】
気液分離器ラインL10は気液分離器10のほぼ中央に連通している。気液分離器10は、分解反応器4内での残留物(残渣)と酸化剤との酸化分解反応の際に、付随的に生成される水(H2O)等の液体とCO2等の気体とを分離するものである。気液分離器10の搭頂部からはCO2ガス回収ラインL11が延び出し、塔底部からは処理水回収ラインL12が延び出し、それぞれ所定の回収/再利用システム(図示せず)に連通している。
【0036】
次に、図2と図3を参照して分解反応器4について詳しく説明する。
【0037】
分解反応器4は、図2に示すように、処理対象となるパウチ屑22を保持するための円筒又は角筒形状のハステロイ合金製のバスケット42を備えている。バスケット42は内筒(ライナー)46のなかに納められ、内筒(ライナー)46はヒータ45によって周囲を取り囲まれ、さらにヒータ45は絶縁体(図示せず)を介して水冷ジャケット44によって周囲を取り囲まれている。バスケット42の上部には供給ラインL3および安全弁ラインL4が連通し、内筒46の上部には排出ラインL5が連通している。
【0038】
図3に示すように、バスケット42の内筒46は、本体46aと上部46bとをボルト46cとナット46dで締め付けて一体に組立てられている。パウチ屑22をバスケット42内に装入するときや無機有価物のアルミナをバスケット42から取り出すときは、ボルト46cとナット46dを緩めて上部46bを本体46aから取り外す。なお、ラインL3〜L5の配管の一部は耐熱性フレキシブルチューブでできている。
【0039】
バスケット42の上部フランジ42aには突起環42dが形成され、この突起環42dが内筒上部46bの凹所に嵌まり込むようになっている。また、上部フランジ42aが内筒上部46bと当接する面には環状溝が形成され、シール材としてOリング43が環状溝内に設けられている。
【0040】
バスケット42は、上部開口から導入された流体(水)が通り抜けられるように底部42bにて開口する多数の孔42cを備えている。流体(水)は、例えば300℃に予熱された状態でラインL3を通ってバスケット42内に導入され、さらに昇温・昇圧されて超臨界状態または亜臨界状態とされ、バスケット42内のパウチ屑22の隙間を下降し、底部の孔42cを通ってバスケット42から出て行き、さらにバスケット42の外周に沿った流路47を通って上昇し、排出ラインL5を通って分解反応器4から出て行くようになっている。
【0041】
次に、本発明の処理装置を用いてパウチ屑を分解/酸化処理して有機及び無機の有価物をそれぞれ回収する場合について説明する。
【0042】
超臨界流体となるべき流体に水を用いて、加水分解によりプラスチック成分を可溶化し、さらに酸化剤によりアルミニウムを酸化させることにより、プラスチックにより生成されるメタン、エタン、プロパン等の可燃性ガスとアルミナをそれぞれ回収する。処理に用いられる流体(水)は、給水タンク2から第1の高圧ポンプp1によって予熱器3へ送られ所定の温度、圧力に調整される。処理されるパウチ屑22は加水分解/金属酸化物合成槽4に充填され、ヒータや蒸気等により所定温度に加熱される。予熱器3により加熱、加圧された流体は、加水分解槽4に送られ、槽内にて超臨界状態あるいは亜臨界状態の流体(水)とパウチ屑22とが接触する。パウチ屑22に含まれるプラスチック成分は超臨界あるいは亜臨界状態の流体(水)の作用により加水分解され、流体(水)に可溶化し、ガス化装置5へ送られる。ここで可燃ガスとなり、ガス精留塔7にて精製され、可燃ガスとして回収される。なお、過剰な流体は処理水として系外へ排出される。
【0043】
所定時間の加水分解によりプラスチック成分を分離回収した後、ガス化塔5への流通を遮断し、アルミナ合成に必要な温度、圧力となるように予熱器3にて流体(水)を加熱、加圧、同時にアルミナ合成槽4も加熱する。所定条件に到達後、第1の高圧ポンプP1により合成槽4に超臨界流体(水)を送り込む。同時に酸化剤充填タンク8から第2の高圧ポンプP3により適量の酸素ガスを送り込む。合成槽4内では酸素共存下で超臨界流体(水)とパウチ屑22が接触し、アルミニウムの酸化反応が起こり、アルミナが生成される。酸化反応により生成されるガスは残存プラスチックの燃焼によるCO2であり、生成ガスは気液分離器7により流体(水)とCO2に分離され系外へ排出される。
【0044】
化1にパウチ屑に含まれるプラスチック成分の構造と融点を示す。パウチ屑に含まれるプラスチック類において融点はPETが最も高く、加水分解に要する温度はこの温度が基準となる。よって、最低250℃以上の亜臨界水から超臨界水までの範囲での処理が適当と言える。一般にセメント原料として処理する場合、その温度は1500℃程度と高温であり、それより遙かに低い温度での処理が可能となる。
【化1】

【0045】
また、本発明に係る処理方法は閉鎖系での処理であり、プラスチック成分燃焼時に発生するダイオキシン類など環境負荷の高い有害物質の排出が無く、環境への負荷が小さい処理方法である。
【0046】
得られる可燃ガスは、発電などの燃料として利用が可能であり、また、アルミナは耐火物原料などとして広く活用される材料であり、資源を有効に活用できるとともに、廃棄物処理に要していた処理費用を低減することが可能であるという効果を得られる。
【0047】
本発明によれば、食品包装資材などの製品包装材から有機有価物および無機有価物を分離してそれぞれ回収することができる。
【0048】
本発明は、表1に示すように種々の技術分野に利用することが可能である。超臨界流体は、水のみに限られることなく、メタノールアルカリ溶液など他の流体を用いることができる。超臨界条件は、分解対象物と使用流体とに応じてその温度および圧力が表1に示すように種々変わる。
【0049】
表2に、超臨界水中で種々の高分子を分解する場合を列挙した。例えば分解対象物がセルロースである場合は、エーテル結合が分解されてグルコースとオリゴ糖が生成される。このように様々の高分子を超臨界水中で分解することにより種々の有用物質を生成することができる。
【表1】

【0050】
【表2】

【図面の簡単な説明】
【0051】
【図1】本発明の実施形態に係る製品包装材の処理装置の概要を示す全体構成ブロック図。
【図2】反応器の概要を示す内部透視断面図。
【図3】反応器の詳細を示す内部透視断面図。
【図4】製品包装材の角部の切り落しにより発生するパウチ屑を説明するための平面図。
【符号の説明】
【0052】
1…処理装置、2…流体供給源(給水タンク)、3…予熱器、
4…分解反応器(加水分解/金属酸化物合成槽)、
42…バスケット、42a…フランジ、42b…底部、42c…孔、42d…突起環、
43…シール材(Oリング)、44…水冷ジャケット、
45…ヒータ、46…内筒(ライナー)、46a…内筒本体、46b…内筒上部、
46c…ボルト、46d…ナット、47…流路、
5…ガス化塔、6…冷却器、7…ガス精留塔、
8…酸化剤充填タンク(酸化剤供給源)、9…冷却器、10…気液分離器、
22…製品包装材(パウチ屑)、
L1〜L12…ライン、
P1,P3…高圧ポンプ、
V1,V6…開閉弁、
V2,V3,V7…逆流停止弁、
V4…切換弁、
V5…減圧弁、
V8…圧力調整弁、
SV…安全弁、
PG…圧力計。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
無機有価物と有機有価物を成分として含む製品包装材に超臨界状態または亜臨界状態の流体を接触させ、前記有機有価物成分を分解し、該分解物中から有機有価物を分離して回収する工程と、
前記分解後の残渣中から無機有価物を分離して回収する工程と、
を具備することを特徴とする製品包装材の処理方法。
【請求項2】
超臨界状態または亜臨界状態の流体が、二酸化炭素、メタノール、エタノールおよび水からなる群より選ばれる1つ又は2つ以上であることを特徴とする請求項1記載の方法。
【請求項3】
分離回収される前記有機有価物は、メタン、ブタン、エタン、プロパンおよび水素からなる群より選ばれる1つ又は2つ以上の可燃性ガスであることを特徴とする請求項1記載の方法。
【請求項4】
超臨界状態または亜臨界状態の流体として超臨界水または亜臨界水を用い、該超臨界水または亜臨界水を製品包装材と接触させて加水分解することにより前記有機有価物成分を水に可溶化し、残渣として無機有価物を分離回収することを特徴とする請求項1記載の方法。
【請求項5】
加水分解時に、前記有機有価物成分の炭化を防止することを目的としてヒドラジン添加するか、またはデエアレーション処理するかいずれかの一方の処理を施した水を用いることを特徴とする請求項4記載の方法。
【請求項6】
前記有機有価物成分を分離した後に、温度380〜800℃、圧力10〜30MPaの条件下で、空気、酸素ガス、過酸化水素のうちのいずれかの酸化剤を添加した超臨界水条件下で処理することにより無機有価物を酸化し、無機酸化固形物として資源化可能な形態で回収することを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項記載の方法。
【請求項7】
超臨界状態または亜臨界状態とされるべき流体を供給する供給源と、
処理対象物としての製品包装材を収容し、前記流体供給源から流体を受け入れて超臨界状態または亜臨界状態とし、前記製品包装材を超臨界状態または亜臨界状態の流体と反応させる分解反応器と、
前記分解反応器に酸化剤を供給する酸化剤供給源と、
前記流体供給源から前記分解反応器へ前記流体を圧送する第1の高圧ポンプと、
前記酸化剤供給源から前記分解反応器へ前記流体を圧送する第2の高圧ポンプと、
前記分解反応器の下流側に設けられ、前記分解反応器から送られてくる分解物を気体化するガス化塔と、
前記ガス化塔の下流側に設けられ、前記ガス化塔から送られてくる気液混合物中の有機有価物成分を精留し、資源化可能な形態のガス留分とするガス精留塔と、
前記ガス精留塔と前記ガス化塔との間に設けられた減圧弁と、
前記分解反応器の下流側に設けられ、前記分解反応器から送られてくる分解物を気液分離する気液分離器と、
前記分解反応器からのラインが前記気液分離器と前記ガス化塔とに分岐する分岐部に設けられた切換弁と、
を具備することを特徴とする製品包装材の処理装置。
【請求項8】
前記分解反応器は、分解した製品包装材から有機有価物を分離したあとの残渣を酸化剤と反応させるためのバスケットを有することを特徴とする請求項7記載の装置。
【請求項9】
さらに、前記流体供給源および前記酸化剤供給源と前記分解反応器との間に設けられ、流体および酸化剤をそれぞれ予熱する予熱器を有することを特徴とする請求項7又は8のいずれか1項記載の装置。
【請求項10】
さらに、前記ガス化塔と前記ガス精留塔との間に設けられ、前記ガス化塔から前記ガス精留塔へ供給される気液混合物を冷却する冷却器を有することを特徴とする請求項7乃至9のいずれか1項記載の装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2006−231249(P2006−231249A)
【公開日】平成18年9月7日(2006.9.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−51835(P2005−51835)
【出願日】平成17年2月25日(2005.2.25)
【出願人】(598052713)長崎菱電テクニカ株式会社 (13)
【出願人】(000003768)東洋製罐株式会社 (1,150)
【出願人】(501137636)東芝三菱電機産業システム株式会社 (904)
【Fターム(参考)】