説明

複合フィルム及び該複合フィルムの製造方法

【課題】高強度および高破断伸びを有している複合フィルムを提供すること。
【解決手段】複合フィルムは、ポリカーボネートポリオールとジイソシアネートとを単官能(メタ)アクリル系モノマー中で重付加反応させ、ウレタンポリマーを形成してウレタンポリマー及び単官能(メタ)アクリル系モノマーの混合物を作製し、その後、単官能(メタ)アクリル系モノマーを付加重合して作製される複合フィルムである。ただし、ポリカーボネートポリオールは20℃で液状のポリカーボネートポリオールであり、単官能(メタ)アクリル系モノマーは、得られたウレタンポリマーの溶解度パラメータとの差の絶対値が6.4[(MPa)1/2]以下である溶解度パラメータδ[(MPa)1/2]を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は複合フィルム及びその製造方法に関し、特に、高強度および高破断伸びを有する複合フィルムおよびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
アクリル系ポリマー及びウレタンポリマーからなる複合フィルムは、例えば、特開2003−96140号公報、特開2003−171411号公報、特開2004−10661号公報、特開2004−10662号公報等に開示されており、この複合フィルムは良好な強度および破断伸びを有する。
【0003】
ここでは、ウレタンポリマーの原料として各種ポリオールが使用されており、例えば、ポリエーテル、ポリエステル、ポリカーボネート等のポリオールが使用されている。
【0004】
ところで、ポリカーボネートポリオールとして、1,6−ヘキサンジオールのようなポリカーボネートポリオールを使用することができれば、ポリカーボネート基の有する高い凝集力により、耐熱性、耐候性、耐油性、および、耐薬品性に優れたポリウレタンが得られる。しかしながら、1,6−ヘキサンジオールのポリカーボネートポリオールは結晶性が高く、室温で固体であるため、取り扱いが困難であるという問題があった。また、このような結晶性の高いポリカーボネートポリオールを使用した場合には、アクリル系モノマー中でウレタンポリマーへ転換させた後でも、ポリカーボネートジオール鎖の部分が融点を有することになるので温度50℃以下で結晶が生成する。そのため、アクリル系モノマー中で分離が生じてしまうか、あるいは固化が生じてしまうため、フィルム化が困難であるという問題が生じ易かった。
【0005】
【特許文献1】特開2003−96140号公報
【特許文献2】特開2003−171411号公報
【特許文献3】特開2004−10661号公報
【特許文献4】特開2004−10662号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は上記問題点を解決するためになされたものであり、本発明は、高強度および高破断伸びを有するフィルムと、該フィルムの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の複合フィルムは、ポリカーボネートポリオールとジイソシアネートとを単官能(メタ)アクリル系モノマー中で重付加反応させ、ウレタンポリマーを形成してウレタンポリマー及び単官能(メタ)アクリル系モノマーの混合物を作製し、その後、単官能(メタ)アクリル系モノマーを付加重合して得られる複合フィルムであり、前記ポリカーボネートポリオールは20℃で液状のポリカーボネートポリオールであり、前記単官能(メタ)アクリル系モノマーは、前記ウレタンポリマーの溶解度パラメータとの差の絶対値が6.4[(MPa)1/2]以下である溶解度パラメータδ[(MPa)1/2]を有することを特徴とする。
【0008】
本発明においては、前記ポリカーボネートポリオールが、1,6−ヘキサンジオールを、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオールまたは1,4−シクロヘキサンジメタノールと共重合させて得られるコポリカーボネートジオールであることが好ましい。
【0009】
また、前記単官能(メタ)アクリル系モノマーの溶解度パラメータδ[(MPa)1/2]は、17.7[(MPa)1/2]以上、25.5[(MPa)1/2]以下であることができる。
【0010】
本発明の複合フィルムの製造方法は、ポリカーボネートポリオールとジイソシアネートとを単官能(メタ)アクリル系モノマー中で重付加反応させ、ウレタンポリマーを形成してウレタンポリマー及び単官能(メタ)アクリル系モノマーの混合物を作製する工程と、次いで、前記単官能(メタ)アクリル系モノマーを付加重合してアクリル系ポリマーを形成して複合フィルムを作製する工程とを具備し、前記ポリカーボネートポリオールが20℃で液状のポリカーボネートポリオールであり、前記単官能(メタ)アクリル系モノマーは、該単官能(メタ)アクリル系モノマーの溶解度パラーメータδ[(MPa)1/2]と、前記ウレタンポリマーの溶解度パラメータとの差の絶対値が6.4[(MPa)1/2]以下であることを特徴とする。
【0011】
本発明においては、前記単官能(メタ)アクリル系モノマーの溶解度パラメータδが、17.7[(MPa)1/2]以上、25.5[(MPa)1/2]以下であることができる。
【0012】
また、本発明においては、前記複合フィルムを作製する工程において、前記ウレタンポリマー及び単官能(メタ)アクリル系モノマーの混合物を支持体上に塗布し、光を照射してアクリル系ポリマーを作製することができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、ウレタンポリマーの原料としてポリカーボネートポリオールを用いても、製造過程において取り扱いに困難が生じることがなく、良好な特性を有するフィルムを得ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明について詳細に説明する。
本発明の複合フィルムは、ポリカーボネートポリオールとジイソシアネートとを、単官能(メタ)アクリル系モノマー中で重付加反応させてウレタンポリマーを形成し、ウレタンポリマー及び単官能(メタ)アクリル系モノマーの混合物を作製し、その後、単官能(メタ)アクリル系モノマーを付加重合して得られる。
【0015】
ただし、このポリカーボネートポリオールは20℃で液状のポリカーボネートポリオールであり、また、単官能(メタ)アクリル系モノマーは、ポリカーボネートポリオールおよびジイソシアネートを用いて成るウレタンポリマーの溶解度パラメータとの差の絶対値が6.4[(MPa)1/2]以下である溶解度パラメータδ[(MPa)1/2]を有するものである。
【0016】
このように、特定のポリカーボネートポリオールとジイソシアネートとを用いて、特定の単官能(メタ)アクリル系モノマー中でウレタンポリマーを形成すれば、取り扱い性の問題が生じることなく、フィルム化することができる。すなわち、ウレタンポリマーの原料として優れた特性を実現することができるポリカーボネートポリオールを使用して複合フィルムを形成することができ、単官能(メタ)アクリル系モノマー中で、室温でも分離、固化することがなく、フィルム化することができる。
【0017】
20℃で液状のポリカーボネートポリオールとは、その融点が20℃以下であるものを言い、側鎖を有する、すなわち、分岐構造を有するポリカーボネートポリオールが挙げられ、例えば、2,2−ジアルキル−1,3−プロパンジオール、2,4−ジアルキル−1,5−ペンタンジオール等をジオール成分とするポリカーボネートジオール等が挙げられる。
【0018】
また、他のポリカーボネートポリオールとしては、1,6−ヘキサンジオールのポリカーボネートポリオールの結晶性を低下させたもの等が挙げられ、例えば、1,6−ヘキサンジオールを、側鎖を有さない脂肪族ジオールと共重合させたコポリカーボネートジオールが挙げられる。このようなコポリカーボネートジオールとしては、例えば、1,6−ヘキサンジオールと、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール等の脂肪族ジオールとを共重合させて得られるコポリカーボネートジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール及び1,6−ヘキサンジオールからなる群から選ばれる少なくとも1種のジオールを、1,3−プロパンジオールと共重合させて得られるコポリカーボネートジオール等が挙げられる。
【0019】
本発明においては、このポリカーボネートポリオールとして、1,6−ヘキサンジオールと、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール又は1,4−シクロヘキサンジメタノールとを共重合させて得られるコポリカーボネートジオールを用いることが好ましい。
【0020】
上記コポリカーボネートジオールとして、例えば、旭化成ケミカルズ(株)製の共重合ポリカーボネートジオールである商品名「T5650J」、「T5651」、「T5652」、「T4671」、「T4672」、あるいは、宇部興産(株)製の商品名「UM−CARB90(1/3)」、「UM−CARB90(1/1)」等が商業的に入手可能なものとして挙げられる。
【0021】
本発明においては、上記ポリカーボネートジオールを単独で、あるいは2種類以上を併用することができる。
【0022】
本発明に用いられるジイソシアネートとしては、芳香族、脂肪族、脂環族のジイソシアネートが挙げられる。好ましく使用されるジイソシアネートとしては、例えば、トリレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、水添キシリレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、水添ジフェニルメタンジイソシアネート、1,5−ナフチレンジイソシアネート、1,3−フェニレンジイソシアネート、1,4−フェニレンジイソシアネート、2,2,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、2,4,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、シクロヘキサン−1,4−ジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタン−4,4−ジイソシアネート、1,3−ビス(イソシアネートメチル)シクロヘキサン、メチルシクロヘキサンジイソシアネート、m−テトラメチルキシリレンジイソシアネート等が挙げられる。これらのジイソシアネートは単独で、あるは、2種類以上を併用することができる。
【0023】
本発明において、ウレタンポリマーを形成するためのポリオール成分とジイソシアネート成分の使用量は、NCO/OH(当量比)が1.1以上、2.0以下であることが好ましく、1.12以上、1.60以下であることがさらに好ましく、1.15以上、1.35以下であることが特に好ましい。NCO/OH(当量比)が1.1未満では、ウレタンポリマーの分子量が大きくなりすぎて、ウレタンポリマー−アクリル系モノマー混合物(シロップ)の粘度が大きくなり、後続のシート化工程で作業が困難になることがあり、また、得られる複合フィルムの強度が低下し易い。また、NCO/OH(当量比)が2.0以下であれば、得られる複合フィルムの伸び及び柔軟性を十分に確保することができる。
【0024】
ジオールの水酸基とイソシアネートとの反応には、一般的には触媒が用いられるが、本発明によれば、ジブチルチンジラウレート、オクトエ酸錫のような環境負荷が生じる触媒を用いなくても反応を促進させることができる。
【0025】
本発明において、単官能(メタ)アクリル系モノマーとしては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、クロトン酸等のアクリル酸系モノマー、あるいは、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−プロピル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、sec−ブチル(メタ)アクリレート、t−ブチル(メタ)アクリレート、ペンチル(メタ)アクリレート、イソペンチル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、ヘプチル(メタ)アクリレート、n−オクチル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ノニル(メタ)アクリレート、イソノニル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレート、イソデシル(メタ)アクリレート、ウンデシル(メタ)アクリレート、ドデシル(メタ)アクリレート、トリデシル(メタ)アクリレート、テトラデシル(メタ)アクリレート、ペンタデシル(メタ)アクリレート、ヘキサデシル(メタ)アクリレート、ヘプタデシル(メタ)アクリレート、オクタデシル(メタ)アクリレート、ノナデシル(メタ)アクリレート、エイコシル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、1−アダマンチル(メタ)アクリレート等のアルキル(メタ)アクリレート系モノマーや、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸3−ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸4−ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸6−ヒドロキシヘキシル、(メタ)アクリル酸8−ヒドロキシオクチル、(メタ)アクリル酸10−ヒドロキシデシル、(メタ)アクリル酸12−ヒドロキシラウリル、(4−ヒドロキシメチルシクロヘキシル)−メチルアクリレート等のヒドロキシル基含有モノマー;グリシジル(メタ)アクリレート、メチルグリシジル(メタ)アクリレート等のグリシジル基含有モノマー、アクリロニトリルやメタクリロニトリル等のシアノアクリレート系モノマー;N,N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジエチル(メタ)アクリルアミド、N−イソプロピル(メタ)アクリルアミド、N−ヒドロキシエチル(メタ)アクリルアミド、(メタ)アクリロイルモルホリン、N−ビニル−2−ピペリドン、N−ビニル−3−モルホリノン、N−ビニル−2−カプロラクタム、N−ビニル−2−ピロリドン、N−ビニル−1,3−オキサジン−2−オン、N−ビニル−3,5−モルホリンジオン、N−シクロヘキシルマレイミド、N−フェニルマレイミド、N−アクリロイルピロリジン、t−ブチルアミノエチル(メタ)アクリレート等の含窒素モノマー、もしくは、酢酸ビニル、スチレン等が挙げられる。これらの単官能(メタ)アクリル系モノマーは単独で、あるいは2種類以上を併用することができる。
【0026】
本発明においては、単官能(メタ)アクリル系モノマーとして、フェニルエトキシアクリレート、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、クロトン酸等のアクリル酸系モノマー、あるいは、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−プロピル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、N,N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジエチル(メタ)アクリルアミド、N−イソプロピル(メタ)アクリルアミド、N−ヒドロキシエチル(メタ)アクリルアミド、(メタ)アクリロイルモルホリン、N−ビニル−2−ピペリドン、N−ビニル−3−モルホリノン、N−ビニル−2−カプロラクタム、N−ビニル−2−ピロリドン、N−ビニル−1,3−オキサジン−2−オン、N−ビニル−3,5−モルホリンジオン、N−シクロヘキシルマレイミド、N−フェニルマレイミド、N−アクリロイルピロリジン、t−ブチルアミノエチル(メタ)アクリレート等の含窒素モノマー、を使用することが好ましい。
【0027】
但し、本発明においては、単官能(メタ)アクリル系モノマーの溶解度パラメータと、得られたウレタンポリマーの溶解度パラメータとの差が、絶対値で、6.4[(MPa)1/2]以下であることが必要であり、この条件を満たすように単官能(メタ)アクリル系モノマーは選択される。ここでは、単官能(メタ)アクリル系モノマーの溶解度パラメータは、ウレタンポリマーの形成に寄与する単官能(メタ)アクリル系モノマーの溶解度パラメータであり、例えば、複数の単官能(メタ)アクリル系モノマーが反応に寄与する場合には、これら全部が溶解度パラメータの数値に関与するが、反応後に、すなわち、ウレタンポリマー形成後に添加された後添加の単官能(メタ)アクリル系モノマーは上記溶解度パラメータの数値の算出には加算しない。また、本発明で用いられる単官能(メタ)アクリル系モノマーの溶解度パラメータは17.7[(MPa)1/2]以上、25.5[(MPa)1/2]以下であることが望ましい。この範囲内であればウレタンポリマーとの相溶性を向上させることができる。
【0028】
なお、本発明において「フィルム」という場合には、シートを含み、「シート」という場合には、フィルムを含む概念とする。
本発明において、(メタ)アクリレートや(メタ)アクリル酸のように、「(メタ)アクリル」と表示した場合には、アクリルおよび/またはメタクリルを意味する。また、本発明において同様の表現が使用される場合には、特にことわりがない限り、上記と同様の意味を有するものとする。更にまた、単に「アクリル」と表示した場合でも、特にことわりがなく、一般常識上問題がなければ、メタクリルも含む意味に解するものとする。
【0029】
また、特性を損なわない範囲内で他の多官能モノマーを添加することもできる。多官能モノマーとしては、例えば、1,4−ブタンジオールジアクリレート、1,4−ブタンジオールジメタクリレート、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート、1,9−ノナンジオールジアクリレート、2−n−ブチル−2−エチル−1,3−プロパンジオールジアクリレート、トリプロピレンジオールジアクリレート、テトラエチレンジオールジアクリレート、ネオペンチルジオールジアクリレート、ネオペンチルジオールジメタクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、トリス(2−アクリロイルオキシエチル)イソシアヌレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート等を挙げることができる。これらの中では、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレートが好ましい。
【0030】
多官能モノマーを、単官能(メタ)アクリル系モノマーの合計量が100重量部に対して、1重量部以上、20重量部以下添加することができる。多官能モノマーの含有量が1重量部以上であれば、複合フィルムの凝集力は十分であり、20重量部以下であれば、弾性率が高くなりすぎることがなく、被着体表面の凹凸に追従することができる。
【0031】
本発明において、ウレタンポリマーは架橋構造を含まない。ウレタンポリマーの形成に使用されるジオールは、線状(リニア)のジオールであることが好ましい。但し、ウレタンポリマーに架橋構造を形成させないという条件を満たす限りにおいて、ジオールは側鎖状のジオールまたは分岐構造を含むジオールであっても良い。
【0032】
本発明の複合フィルムは、まず、ウレタンポリマーの溶解度パラメータとの差の絶対値が6.4[(MPa)1/2]以下である単官能(メタ)アクリル系モノマーを含む混合物中で、室温で液状のポリカーボネートポリオールとジイソシアネートとを重付加反応させてウレタンポリマーを形成し、ウレタンポリマー−アクリル系モノマー混合物(シロップ)を作製する。その後、必要に応じて、光重合開始剤、紫外線吸収剤、光安定剤等を添加し、紫外線等を照射して複合フィルムを作製する。
【0033】
上記ポリカーボネートポリオールとジイソシアネートとの反応においては、反応温度および反応時間等は適宜設定することができるが、例えば、内浴温度は、20℃以上、90℃以下であることが好ましく、更に好ましくは40℃以上、80℃以下であり、特に好ましくは50℃以上、75℃以下である。また、反応時間は、1時間以上、48時間以下であることが好ましく、更に好ましくは3時間以上、24時間以下であり、特に好ましくは5時間以上、15時間以下である。
【0034】
ここで使用される光重合開始剤としては、各種の光重合開始剤を使用することができるが、例えば、ケタール系光重合開始剤、α−ヒドロキシケトン系光重合開始剤、α−アミノケトン系光重合開始剤、アシルホスフィンオキサイド系光重合開始剤、ベゾフェノン系光重合開始剤、チオキサントン系光重合開始剤、ベンゾインエーテル系光重合開始剤、アセトフェノン系光重合開始剤、芳香族スルホニルクロリド系光重合開始剤、光活性オキシム系光重合開始剤、ベンゾイン系光重合開始剤、ベンジル系光重合開始剤等を用いることができる。
【0035】
ケタール系光重合開始剤としては、例えば、2,2−ジメトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−オン(商業的に入手可能なものとしては、チバ・スペシャリティ・ケミカルズ社製の「イルガキュア651」等)等が挙げられる。
【0036】
α−ヒドロキシケトン系光重合開始剤としては、例えば、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン(商業的に入手可能なものとしては、チバ・スペシャリティ・ケミカルズ社製の「イルガキュア184」等)、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン(商業的に入手可能なものとしては、チバ・スペシャリティ・ケミカルズ社製の「ダロキュア1173」等)、1−[4−(2−ヒドロキシエトキシ)−フェニル]−2−ヒドロキシ−2−メチル−1−プロパン−1−オン(商業的に入手可能なものとしては、チバ・スペシャリティ・ケミカルズ社製の「イルガキュア2959」等)等が挙げられる。
【0037】
α−アミノケトン系光重合開始剤としては、例えば、2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルフォリノプロパン−1−オン(商業的に入手可能なものとしては、チバ・スペシャリティ・ケミカルズ社製の「イルガキュア907」等)、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−ブタノン−1(商業的に入手可能なものとしては、チバ・スペシャリティ・ケミカルズ社製の「イルガキュア369」等)等が挙げられる。
【0038】
アシルホスフィンオキサイド系光重合開始剤としては、例えば、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド(商業的に入手可能なものとしては、BASF社製の「ルシリンTPO」等)等が挙げられる。
【0039】
ベンゾインエーテル系光重合開始剤としては、例えば、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインプロピルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル、2,2−ジメトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−オン、アニソールメチルエーテル等が挙げられる。
【0040】
アセトフェノン系光重合開始剤としては、例えば、2,2−ジエトキシアセトフェノン、2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、4−フェノキシジクロロアセトフェノン、4−(t−ブチル)ジクロロアセトフェノン等が挙げられる。
【0041】
芳香族スルホニルクロリド系光重合開始剤としては、例えば、2−ナフタレンスルホニルクロライド等が挙げられ、光活性オキシム系光重合開始剤としては、例えば、1−フェニル−1,1−プロパンジオン−2−(o−エトキシカルボニル)−オキシム等が挙げられる。
【0042】
ベンゾイン系光重合開始剤としては、例えば、ベンゾイン等が挙げられ、ベンジル系光重合開始剤としては、例えば、ベンジル等が挙げられる。
【0043】
ベンゾフェノン系光重合開始剤としては、例えば、ベンゾフェノン、ベンゾイル安息香酸、3,3’−ジメチル−4−メトキシベンゾフェノン、ポリビニルベンゾフェノン、α−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン等が挙げられる。
【0044】
チオキサントン系光重合開始剤としては、例えば、チオキサントン、2−クロロチオキサントン、2−メチルチオキサントン、2,4−ジメチルチオキサントン、イソプロピルチオキサントン、2,4−ジイソプロピルチオキサントン、ドデシルチオキサントン等が挙げられる。
【0045】
本発明に用いられる紫外線吸収剤(UVA)としては、例えば、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤として、2−(2−ヒドロキシ−5−tert−ブチルフェニル)−2H−ベンゾトリアゾール(商業的に入手可能なものとしては、チバ・ジャパン社製の「TINUVIN PS」等)、ベンゼンプロパン酸と3−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−5−(1,1−ジメチルエチル)−4−ヒドロキシ(C〜Cの側鎖および直鎖アルキル)とのエステル化合物(商業的に入手可能なものとしては、チバ・ジャパン社製の「TINUVIN 384−2」等)、オクチル−3−[3−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−5−(5−クロロ−2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)フェニル]プロピオネートと2−エチルヘキシル−3−[3−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−5−(5−クロロ−2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)フェニル]プロピオネートとの混合物(商業的に入手可能なものとして、チバ・ジャパン社製の「TINUVIN 109」等)、2−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−4,6−ビス(1−メチル−1−フェニルエチル)フェノール(商業的に入手可能なものとして、チバ・ジャパン社製の「TINUVIN 900」等)、2−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−6−(1−メチル−1−フェニルエチル)−4−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)フェノール(商業的に入手可能なものとして、チバ・ジャパン社製の「TINUVIN 928」等)、メチル−3−(3−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−5−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート/ポリエチレングリコール300の反応生成物(商業的に入手可能なものとして、チバ・ジャパン社製の「TINUVIN 1130」等)、2−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−p−クレゾール(商業的に入手可能なものとして、チバ・ジャパン社製の「TINUVIN P」等)、2−[5−クロロ(2H)−ベンゾトリアゾール−2−イル]−4−メチル−6−(tert−ブチル)フェノール(商業的に入手可能なものとして、チバ・ジャパン社製の「TINUVIN 326」等)、2−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−4,6−ジ−tert−ペンチルフェノール(商業的に入手可能なものとして、チバ・ジャパン社製の「TINUVIN 328」等)、2−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−4−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)フェノール(商業的に入手可能なものとして、チバ・ジャパン社製の「TINUVIN 329」等)、2−2’−メチレンビス[6−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−4−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)フェノール](商業的に入手可能なものとして、チバ・ジャパン社製の「TINUVIN 360」等)、メチル−3−(3−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−5−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネートとポリエチレングリコール300との反応生成物(商業的に入手可能なものとして、チバ・ジャパン社製の「TINUVIN 213」等)、2−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−6−ドデシル−4−メチルフェノール(商業的に入手可能なものとして、チバ・ジャパン社製の「TINUVIN 571」等)、2−[2−ヒドロキシ−3−(3,4,5,6−テトラヒドロフタルイミド−メチル)−5−メチルフェニル]ベンゾトリアゾール(商業的に入手可能なものとして、住友化学社製の「Sumisorb 250」等)、2,2’−メチレンビス[6−(ベンゾトリアゾール−2−イル)−4−tert−オクチルフェノール](商業的に入手可能なものとして、ADEKA製の「ADKSTAB LA31」等)、ヒドロキシフェニルトリアジン(HPT)系及びベンゾトリアゾール(BTZ)系紫外線吸収剤(商業的に入手可能なものとして、チバ・ジャパン社製の「TINUVIN 5236」等)、チバ・ジャパン社製の「TINUVIN 234等が挙げられる。
【0046】
また、商業的に入手可能なヒドロキシフェニルトリアジン系紫外線吸収剤としては、例えば、2−(4,6−ビス(2,4−ジメチルフェニル)−1,3,5−トリアジン−2−イル)−5−ヒドロキシフェニルと[(C10〜C16、主としてC12〜C13のアルキルオキシ)メチル]オキシランとの反応生成物(商業的に入手可能なものとして、チバ・ジャパン社製の「TINUVIN 400」等)、2−(2,4−ジヒドロキシフェニル)−4,6−ビス−(2,4−ジメチルフェニル)−1,3,5−トリアジンと(2−エチルヘキシル)−グリシド酸エステルとの反応生成物(商業的に入手可能なものとして、チバ・ジャパン社製の「TINUVIN 405」等)、2,4−ビス[2−ヒドロキシ−4−ブトキシフェニル]−6−(2,4−ジブトキシフェニル)−1,3,5−トリアジン(商業的に入手可能なものとして、チバ・ジャパン社製の「TINUBIN 460」等)、2−(4,6−ジフェニル−1,3,5−トリアジン−2−イル)−5−[(ヘキシル)オキシ]−フェノール(商業的に入手可能なものとして、チバ・ジャパン社製の「TINUVIN 1577」等)、2−(2−ヒドロキシ−4−[1−オクチルオキシカルボニルエトキシ]フェニル)−4,6−ビス(4−フェニルフェニル)−1,3,5−トリアジン(商業的に入手可能なものとして、チバ・ジャパン社製の「TINUVIN 479」等)等が挙げられる。
【0047】
商業的に入手可能なベンゾフェノン系紫外線吸収剤として、例えば、チバ・ジャパン社製の「CHIMASSORB 81」等が挙げられる。また、ベンゾエート系紫外線吸収剤としては、例えば、2,4−ジ−tert―ブチルフェニル−3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンゾエートとしてチバ・ジャパン社製の「TINUVIN 120」等が挙げられる。
本発明においては、上記紫外線吸収剤を単独で、あるいは、2種類以上を併用して用いることができる。
【0048】
本発明に用いられる光安定剤としては、ヒンダードアミン光安定剤(HALS)であることが好ましい。
【0049】
商業的に入手可能なヒンダードアミン光安定剤としては、例えば、コハク酸ジメチルと4−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチル−1−ピペリジンエタノールとの重合物である光安定剤として、「TINUVIN 622」(チバ・ジャパン社製)、コハク酸ジメチルと4−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチル−1−ピペリジンエタノールとの重合物とN,N’,N’’,N’’’−テトラキス−(4,6−ビス−(ブチル−(N−メチル−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−4−イル)アミノ)−トリアジン−2−イル)−4,7−ジアザデカン−1,10−ジアミンとの1対1の反応生成物である光安定剤として「TINUVIN 119」(チバ・ジャパン社製)、ジブチルアミン・1,3−トリアジン・N,N’−ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル−1,6−ヘキサメチレンジアミンとN−(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)ブチルアミンとの重縮合物である光安定剤として「TINUVIN 2020」(チバ・ジャパン社製)、ポリ[{6−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)アミノ−1,3,5−トリアジン−2,4−ジイル}{2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル}イミノ]ヘキサメチレン{(2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)イミノ})である光安定剤として、「TINUVIN 944」(チバ・ジャパン社製)、ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)セバケートとメチル1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジルセバケートとの混合物である光安定剤として「TINUVIN 765」(チバ・ジャパン社製)、ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)セバケートである光安定剤として「TINUVIN 770」(チバ・ジャパン社製)、デカン二酸ビス(2,2,6,6−テトラメチル−1−(オクチルオキシ)−4−ピペリジニル)エステル(1,1−ジメチルエチルヒドロペルオキシド)とオクタンとの反応生成物である光安定剤として「TINUVIN 123」(チバ・ジャパン社製)、ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)[[3,5−ビス(1,1−ジメチルエチル)−4−ヒドロキシフェニル]メチル]ブチルマロネートである光安定剤として「TINUVIN 144」(チバ・ジャパン社製)、シクロヘキサンと過酸化N−ブチル−2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジンアミン−2,4,6−トリクロロ−1,3,5−トリアジンとの反応生成物と2−アミノエタノールとの反応生成物である光安定剤として「TINUVIN 152」(チバ・ジャパン社製)、ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)セバケートとメチル−1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジルセバケートとの混合物である光安定剤として「TINUVIN 292」(チバ・ジャパン社製)、「TINUVIN 5100」(チバ・ジャパン社製)、高分子量タイプのヒンダードアミン系光安定剤として、「CHIMASSORB 119FL」(チバ・ジャパン社製)、「CHIMASSORB 2020FDL」(チバ・ジャパン社製)、「CHIMASSORB 944FDL」(チバ・ジャパン社製)、「TINUVIN 622LD」(チバ・ジャパン社製)、ブレンドタイプのヒンダードアミン系光安定剤として、「TINUVIN 111FDL」(チバ・ジャパン社製)、「TINUVIN 783FDL」(チバ・ジャパン社製)、「TINUVIN 791FB」(チバ・ジャパン社製)、紫外線吸収剤と光安定剤とのブレンドタイプとして、「TINUVIN 5050」(チバ・ジャパン社製)、「TINUVIN 5060」(チバ・ジャパン社製)、「TINUVIN 5151」(チバ・ジャパン社製)等が挙げられる。
本発明においては、上記ヒンダードアミン光安定剤を単独で、あるいは、2種類以上を併用することができる。
【0050】
複合フィルムには、必要に応じて、通常使用される添加剤、例えば老化防止剤、充填剤、顔料、着色剤、難燃剤、帯電防止剤などを本発明の効果を阻害しない範囲内で添加することができる。これらの添加剤は、その種類に応じて通常の量で用いられる。これらの添加剤は、ジイソシアネートとポリカーボネートポリオールとの重合反応前に、あらかじめ加えておいてもよいし、ウレタンポリマーとアクリル系モノマーとをそれぞれ重合させる前に添加してもよい。
【0051】
本発明においては、塗工の粘度調整のため少量の溶剤を加えてもよい。溶剤としては、通常使用される溶剤の中から適宜選択することができるが、例えば、酢酸エチル、トルエン、クロロホルム、ジメチルホルムアミド等が挙げられる。
【0052】
本発明において複合フィルムは、例えば、ウレタンポリマー−アクリル系モノマー混合物(シロップ)を支持体(必要に応じて剥離処理されている)等の上に塗布し、光重合開始剤の種類等に応じて、α線、β線、γ線、中性子線、電子線等の電離性放射線や紫外線等の放射線、可視光等を照射して硬化させ、その後、支持体等を剥離除去することにより、複合フィルムを形成することができる。あるいは、支持体等を剥離除去せずに、支持体等の上に複合フィルムが積層された形態で得ることもできる。
【0053】
具体的には、ポリカーボネートポリオールを単官能(メタ)アクリル系モノマーに溶解させた後、ジイソシアネート等を添加してポリオールと反応させて粘度調整を行い、これを支持体等に、あるいは、必要に応じて支持体等の剥離処理面に塗工した後、低圧水銀ランプ等を用いて硬化させることにより、複合フィルムを得ることができる。この方法では、単官能(メタ)アクリル系モノマーをウレタン合成中に一度に添加してもよいし、何回かに分割して添加してもよい。また、ジイソシアネートを単官能(メタ)アクリル系モノマーに溶解させた後、ポリオールを反応させてもよい。この方法によれば、分子量が限定されるということはなく、高分子量のポリウレタンを生成することもできるので、最終的に得られるウレタンの分子量を任意の大きさに設計することができる。
【0054】
この際、酸素による重合阻害を避けるために、基板シート等の上に塗布した混合物の上に、剥離処理したシート(セパレータ等)をのせて酸素を遮断してもよいし、不活性ガスを充填した容器内に基材を入れて、酸素濃度を下げてもよい。
【0055】
本発明において、放射線等の種類や照射に使用されるランプの種類等は適宜選択することができ、蛍光ケミカルランプ、ブラックライト、殺菌ランプ等の低圧ランプや、メタルハライドランプ、高圧水銀ランプ等の高圧ランプ等を用いることができる。
【0056】
紫外線などの照射量は、要求されるフィルムの特性に応じて、任意に設定することができる。一般的には、紫外線の照射量は、100〜5,000mJ/cm、好ましくは1,000〜4,000mJ/cm、更に好ましくは2,000〜3,000mJ/cmである。紫外線の照射量が100mJ/cmより少ないと、十分な重合率が得られないことがあり、5,000mJ/cmより多いと、劣化の原因となることがある。
【0057】
また、紫外線等を照射する際の温度については特に限定があるわけではなく任意に設定することができるが、温度が高すぎると重合熱による停止反応が起こり易くなり、特性低下の原因となりやすいので、通常は70℃以下であり、好ましくは50℃以下であり、更に好ましくは30℃以下である。
【0058】
本発明の複合フィルムの厚みは、目的等に応じて、例えば被覆保護する対象物の種類や箇所等に応じて適宜選択することができ、特に限定されないが、50μm以上、1mm以下であることが好ましく、100μm以上、500μm以上であることが更に好ましく、150μm以上、400μm以下であることが特に好ましい。
【0059】
本発明において、この複合フィルム中のアクリル系ポリマーとウレタンポリマーとの重量比率は、アクリル系ポリマー/ウレタンポリマー=1/99〜80/20の範囲内であることが好ましい。アクリル系ポリマーの含有比率が1/99未満では、複合フィルム形成用混合溶液(ウレタンポリマー−アクリル系モノマーのシロップ)の粘度が高くなり、作業性が悪化する場合があり、80/20を超えると、フィルムとしての柔軟性や強度が得られない場合がある。
【0060】
本発明の複合フィルムは、引張試験における破断強度が10MPa以上、100MPa以下であることが好ましく、15MPa以上、80MPa以下であることが更に好ましく、特に、20MPa以上、60MPa以下であることが好ましい。但し、引張試験の条件は、試験片の幅が10mm、長さが130mm、つかみ間隔距離が50mm、引張速度が200mm/minである。複合フィルムの破断強度が10MPa未満では、複合フィルムが柔軟になり易く、一方、破断強度が100MPaを超えると、複合フィルムが剛直になり過ぎる場合があり好ましくない。
【0061】
本発明の複合フィルムは、高強度等を有し、曲面に対する柔軟性に優れている。さらにまた、本発明の複合フィルムは、耐候性にも優れている。したがって、自動車、航空機等の塗装面を保護するための保護用シート等として好適である。
【実施例】
【0062】
以下に実施例を用いて、本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、以下の実施例において、特にことわりがない限り、部は重量部を意味し、%は重量%を意味する。また、以下の実施例において使用された測定方法および評価方法を下記に示す。
【0063】
(測定方法および評価方法)
(1)シロップ状態の評価
ウレタンポリマー−アクリル系モノマー混合物(シロップ)を肉眼で観察し、以下の評価基準に基づいて評価を行った。
評価基準:
A 透明な状態
B 白濁した状態
C ウレタンポリマーとアクリル系モノマーとが分離した状態
【0064】
(2)破断伸度および破断強度
フィルムから幅1cm×長さ13cmの大きさを切り出して試験用サンプルを作製した。試験用サンプルから支持体を除去して引張試験を行った。すなわち、室温(23℃)、相対湿度(50%)の雰囲気下で、引張速度が200mm/min、チャック間距離が50mmで引張試験を行った。得られた応力−歪み曲線から、100%モジュラス、破断伸び(破断伸度)、および、破断強度を求めた。
【0065】
(実施例1)
《複合フィルム用塗布液の作製》
冷却管、温度計、および攪拌装置を備えた反応容器に、単官能(メタ)アクリル系モノマーとして、アクリル酸n−ブチル(BA)を45部、イソボルニルアクリレート(IBXA)を15部、ポリオールとして、数平均分子量2,000の1,6−ヘキサンジオールを1,5−ペンタンジオールと共重合させて得られるコポリカーボネートジオール(PCDL)(旭化成(株)製の商品名柄「T5652」、融点−5℃以下)を35.5部、触媒としてジラウリン酸ジブチルスズを0.008部投入し、攪拌しながら、水添キシリレンジイソシアネート(HXDI)の4.5部を滴下し、65℃で6時間反応させて、ウレタンポリマー−アクリル系モノマー混合物(シロップ)を得た。
【0066】
その後、アクリル酸(AA)を3部、光重合開始剤として2,2−ジメトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−オン(チバ・スペシャリティ・ケミカルズ(株)製の「IRGACURE 651」)を0.18部添加して、複合フィルム用塗布液を得た。
【0067】
なお、後添加のアクリル酸を除外した単官能(メタ)アクリル系モノマーの溶解度パラメータδは、18.01[(MPa)1/2]であり、ウレタンポリマーの溶解度パラメータは24.37[(MPa)1/2]である。したがって、単官能(メタ)アクリル系モノマーとウレタンポリマーとの溶解度パラメータとの差は、絶対値で、6.36[(MPa)1/2]であった。また、ポリイソシアネート成分とポリオール成分の使用量は、当量比で、NCO/OH=1.25であった。
【0068】
《複合フィルムの作製》
作製した複合フィルム用塗布液を、支持体として剥離処理したポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム(厚さ38μm)上に、硬化後の厚みが100μmとなるように塗布した。この上にセパレータとして剥離処理したPETフィルムを重ね、このPETフィルム面に、メタルハライドランプを用いて紫外線(照度290mW/cm、光量4,600mJ/cm)を照射して硬化させて、支持体の上に複合フィルムを形成した。その後、被覆したPETフィルム(セパレータ)を除去し、140℃で3分間乾燥して、未反応の残存アクリル系モノマーを除去して複合フィルム(支持体付)を得た。
【0069】
《測定および評価》
得られたシロップおよび複合フィルムについて、シロップ状態の観察(評価)、破断伸度と破断強度の測定および評価を行った。その結果を表1に示す。
【0070】
(実施例2)
冷却管、温度計、および攪拌装置を備えた反応容器に、単官能(メタ)アクリル系モノマーとして、イソボルニルアクリレート(IBXA)を14.375部、フェニルエトキシアクリレート(PhEA)を43.125部、ポリオールとして、数平均分子量800の1,6−ヘキサンジオールを1,5−ペンタンジオールと共重合させて得られるコポリカーボネートジオール(PCDL)(旭化成(株)製の商品名柄「T5650J」、融点−5℃以下)を32.5部、触媒としてジラウリン酸ジブチルスズを0.0085部投入し、攪拌しながら、キシリレンジイソシアネート(XDI)の10部を滴下し、65℃で6時間反応させて、ウレタンポリマー−アクリル系モノマー混合物(シロップ)を得た。
【0071】
その後、アクリル酸(AA)を2.875部、光重合開始剤として2,2−ジメトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−オン(チバ・スペシャリティ・ケミカルズ(株)製の「IRGACURE 651」)を0.1725部添加して、複合フィルム用塗布液を得た。
【0072】
なお、後添加のアクリル酸を除外した単官能(メタ)アクリル系モノマーの溶解度パラメータδは、20.23[(MPa)1/2]であり、ウレタンポリマーの溶解度パラメータは26.11[(MPa)1/2]である。したがって、単官能(メタ)アクリル系モノマーとウレタンポリマーとの溶解度パラメータとの差は、絶対値で、5.88[(MPa)1/2]であった。また、ポリイソシアネート成分とポリオール成分の使用量は、当量比で、NCO/OH=1.25であった。
【0073】
得られた複合フィルム用塗布液を用いて、実施例1と同様にして、複合フィルムを作製した。得られたシロップおよび複合フィルムについて、実施例1と同様の測定及び評価を行った。その結果を表1に示す。
【0074】
(実施例3)
冷却管、温度計、および攪拌装置を備えた反応容器に、単官能(メタ)アクリル系モノマーとして、アクリル酸(AA)を10部、アクリロリルモルホリン(ACMO)を20部、アクリル酸n−ブチル(BA)を20部、ポリオールとして、数平均分子量800の1,6−ヘキサンジオールを1,5−ペンタンジオールと共重合させて得られるコポリカーボネートジオール(PCDL)(旭化成(株)製の商品名柄「T5650J」、融点−5℃以下)を38部投入し、攪拌しながら、水添キシリレンジイソシアネート(HXDI)の12部を滴下し、65℃で6時間反応させて、ウレタンポリマー−アクリル系モノマー混合物(シロップ)を得た。
【0075】
その後、光重合開始剤としてビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)フェニル−フォスフィンオキシド(チバ・スペシャリティ・ケミカルズ(株)製の「IRGACURE 819」)を0.25部添加して、複合フィルム用塗布液を得た。
【0076】
なお、単官能(メタ)アクリル系モノマーの溶解度パラメータδは、21.10[(MPa)1/2]であり、ウレタンポリマーの溶解度パラメータは24.20[(MPa)1/2]である。したがって、単官能(メタ)アクリル系モノマーとウレタンポリマーとの溶解度パラメータとの差は、絶対値で、3.10[(MPa)1/2]であった。また、ポリイソシアネート成分とポリオール成分の使用量は、当量比で、NCO/OH=1.25であった。
【0077】
得られた複合フィルム用塗布液を用いて、実施例1と同様にして、複合フィルムを作製した。得られたシロップおよび複合フィルムについて、実施例1と同様の測定及び評価を行った。その結果を表1に示す。
【0078】
(実施例4)
冷却管、温度計、および攪拌装置を備えた反応容器に、単官能(メタ)アクリル系モノマーとして、アクリル酸(AA)を12部、アクリル酸n−ブチル(BA)を48部、ポリオールとして、数平均分子量800の1,6−ヘキサンジオールを1,5−ペンタンジオールと共重合させて得られるコポリカーボネートジオール(PCDL)(旭化成(株)製の商品名柄「T5650J」、融点−5℃以下)を30.4部投入し、攪拌しながら、水添キシリレンジイソシアネート(HXDI)の9.6部を滴下し、65℃で6時間反応させて、ウレタンポリマー−アクリル系モノマー混合物(シロップ)を得た。
【0079】
その後、光重合開始剤としてビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)フェニル−フォスフィンオキシド(チバ・スペシャリティ・ケミカルズ(株)製の「IRGACURE 819」)を0.18部添加して、複合フィルム用塗布液を得た。
【0080】
なお、単官能(メタ)アクリル系モノマーの溶解度パラメータδは、19.47[(MPa)1/2]であり、ウレタンポリマーの溶解度パラメータは24.20[(MPa)1/2]である。したがって、アクリル系モノマーとウレタンポリマーとの溶解度パラメータとの差は、絶対値で、4.73[(MPa)1/2]であった。また、ポリイソシアネート成分とポリオール成分の使用量は、当量比で、NCO/OH=1.25であった。
【0081】
得られた複合フィルム用塗布液を用いて、実施例1と同様にして、複合フィルムを作製した。得られたシロップおよび複合フィルムについて、実施例1と同様の測定及び評価を行った。その結果を表1に示す。
【0082】
(比較例1)
冷却管、温度計、および攪拌装置を備えた反応容器に、アクリル系モノマーとして、アクリル酸2−エチルヘキシル(2−EHA)を70部、ポリオールとして、数平均分子量800の1,6−ヘキサンジオールを1,5−ペンタンジオールと共重合させて得られるコポリカーボネートジオール(PCDL)(旭化成(株)製の商品名柄「T5650J」、融点−5℃以下)を25.7部、触媒としてジラウリン酸ジブチルスズの0.007部とを投入し、攪拌しながら、キシリレンジイソシアネート(XDI)の4.3部を滴下し、65℃で6時間反応させて、ウレタンポリマー−アクリル系モノマー混合物(シロップ)を得て、複合フィルム用塗布液を作製した。
【0083】
なお、アクリル系モノマーの溶解度パラメータδは、17.63[(MPa)1/2]であり、ウレタンポリマーの溶解度パラメータは24.13[(MPa)1/2]である。したがって、アクリル系モノマーとウレタンポリマーとの溶解度パラメータとの差は、絶対値で、6.50[(MPa)1/2]であった。また、ポリイソシアネート成分とポリオール成分の使用量は、当量比で、NCO/OH=0.67であった。
【0084】
得られたアクリル系モノマー−ウレタンポリマー混合物(複合フィルム用塗布液)を用いて、実施例1と同様にして、複合フィルムを作製した。得られたシロップおよび複合フィルムについて、実施例1と同様の測定及び評価を行った。その結果を表2に示す。
【0085】
(比較例2)
冷却管、温度計、および攪拌装置を備えた反応容器に、アクリル系モノマーとして、アクリル酸2−エチルヘキシル(2−EHA)を70部、ポリオールとして、数平均分子量1,000のポリ(ヘキサメチレンカーボネート)グリコール(旭化成ケミカルズ(株)製、PHC)(20℃で固体)を26.5部、触媒としてジラウリン酸ジブチルスズを0.007部投入し、攪拌しながら、水添キシリレンジイソシアネート(HXDI)の3.5部を滴下し、65℃で6時間反応させて、ウレタンポリマー−アクリル系モノマー混合物(シロップ)を得て、複合フィルム用塗布液を作製した。
【0086】
なお、アクリル系モノマーの溶解度パラメータδは、17.63[(MPa)1/2]であり、ウレタンポリマーの溶解度パラメータは22.81[(MPa)1/2]である。したがって、アクリル系モノマーとウレタンポリマーとの溶解度パラメータとの差は、絶対値で、5.18[(MPa)1/2]であった。また、ポリイソシアネート成分とポリオール成分の使用量は、当量比で、NCO/OH=0.67であった。
【0087】
得られたアクリル系モノマー−ウレタンポリマーを用いて、実施例1と同様にして、複合フィルムを作製した。得られたシロップおよび複合フィルムについて、実施例1と同様の測定及び評価を行った。その結果を表2に示す。
【0088】
(比較例3)
冷却管、温度計、および攪拌装置を備えた反応容器に、アクリル系モノマーとして、ヒドロキシエチルアクリレート(HEA)を70部、ポリオールとして、数平均分子量1,000のポリ(ヘキサメチレンカーボネート)グリコール(旭化成ケミカルズ(株)製、PHC)(20℃で固体)を26.5部、触媒としてジラウリン酸ジブチルスズを0.007部投入し、攪拌しながら、水添キシリレンジイソシアネート(HXDI)の3.5部を滴下し、65℃で6時間反応させて、ウレタンポリマー−アクリル系モノマー混合物(シロップ)を得て、複合フィルム用塗布液を作製した。
【0089】
なお、アクリル系モノマーの溶解度パラメータδは、25.47[(MPa)1/2]であり、ウレタンポリマーの溶解度パラメータは22.81[(MPa)1/2]である。したがって、アクリル系モノマーとウレタンポリマーとの溶解度パラメータとの差は、絶対値で、2.66[(MPa)1/2]であった。また、ポリイソシアネート成分とポリオール成分の使用量は、当量比で、NCO/OH=0.67であった。
【0090】
得られたアクリル系モノマー−ウレタンポリマー混合物(複合フィルム用塗布液)を用いて、実施例1と同様にして、複合フィルムを作製した。得られたシロップおよび複合フィルムについて、実施例1と同様の測定及び評価を行った。その結果を表2に示す。
【0091】
(比較例4)
冷却管、温度計、および攪拌装置を備えた反応容器に、アクリル系モノマーとして、アクリル酸(AA)を12部、アクリル酸n−ブチル(BA)を48部、ポリオールとして、ポリ(オキシテトラメチレン)グリコール(PTMG)(三菱化学(株)製の「PTMG650」、20℃で固体)を29.2部投入し、攪拌しながら、水添キシリレンジイソシアネート(HXDI)の10.8部を滴下し、65℃で6時間反応させて、ウレタンポリマー−アクリル系モノマー混合物(シロップ)を得26.5部、触媒としてジラウリン酸ジブチルスズを0.007部投入し、攪拌しながら、水添キシリレンジイソシアネート(HXDI)の3.5部を滴下し、65℃で6時間反応させて、ウレタンポリマー−アクリル系モノマー混合物(シロップ)を得て、複合フィルム用塗布液を作製した。
【0092】
なお、アクリル系モノマーの溶解度パラメータδは、19.47[(MPa)1/2]であり、ウレタンポリマーの溶解度パラメータは21.57[(MPa)1/2]である。したがって、アクリル系モノマーとウレタンポリマーとの溶解度パラメータとの差は、絶対値で、2.10[(MPa)1/2]であった。また、ポリイソシアネート成分とポリオール成分の使用量は、当量比で、NCO/OH=1.25であった。
【0093】
得られたアクリル系モノマー−ウレタンポリマー混合物(複合フィルム用塗布液)を用いて、実施例1と同様にして複合フィルムを作製した。得られたシロップおよび複合フィルムについて、実施例1と同様の測定及び評価を行った。その結果を表2に示す。
【0094】
(比較例5)
冷却管、温度計、および攪拌装置を備えた反応容器に、アクリル系モノマーとして、アクリル酸(AA)を12部、アクリル酸n−ブチル(BA)を48部、ポリオールとして、ポリ(エチレンアジペート)グリコール(PEA)(日本ポリウレタン工業(株)製の商品名柄「ニッポラン4002」、20℃で固体)を33.5部投入し、攪拌しながら、水添キシリレンジイソシアネート(HXDI)の6.5部を滴下し、65℃で6時間反応させて、ウレタンポリマー−アクリル系モノマー混合物(シロップ)を得て、複合フィルム用塗布液を作製した。
【0095】
なお、アクリル系モノマーの溶解度パラメータδは、19.47[(MPa)1/2]であり、ウレタンポリマーの溶解度パラメータは19.25[(MPa)1/2]である。したがって、アクリル系モノマーとウレタンポリマーとの溶解度パラメータとの差は、絶対値で、0.22[(MPa)1/2]であった。また、ポリイソシアネート成分とポリオール成分の使用量は、当量比で、NCO/OH=1.25であった。
【0096】
得られたアクリル系モノマー−ウレタンポリマー混合物(複合フィルム用塗布液)を用いて、実施例1と同様にして、複合フィルムを作製した。得られたシロップおよび複合フィルムについて、実施例1と同様の測定及び評価を行った。その結果を表2に示す。
【0097】
【表1】

【0098】
【表2】

【0099】
表1から明らかなように、実施例1〜4のシロップ状態は、評価基準B以上であり、ウレタンポリマーとアクリル系モノマーとが分離していることはなかった。また、破断強度および破断伸度の評価においても優れており、高強度および高破断伸びを有するものであった。
【0100】
一方、溶解度パラメータの差が6.5(MPa)1/2より大きい比較例1は、シロップがアクリル系モノマーとウレタンポリマーが分離した状態であり、フィルムを形成することができなかった。20℃で固体であるPHCを用いた比較例2,3は、シロップがアクリル系モノマーとウレタンポリマーが分離した状態であり、フィルムを形成することができなかった。ポリカーボネートポリオールを使用していない比較例4,5は、破断伸度および破断強度のいずれかが不十分なものであった。
【産業上の利用可能性】
【0101】
本発明の複合フィルムは、高強度および高破断伸びを有するフィルムであり、これらの物性が要求されるフィルムとして好適に使用することができる。また、本発明の複合フィルムは、耐熱性、耐候性、柔軟性等にも優れており、例えば、屋外で長期間使用されても、力学特性が低下することがないので、屋外の天候にさらされる場所でも使用することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリカーボネートポリオールとジイソシアネートとを単官能(メタ)アクリル系モノマー中で重付加反応させ、ウレタンポリマーを形成してウレタンポリマー及び単官能(メタ)アクリル系モノマーの混合物を作製し、その後、単官能(メタ)アクリル系モノマーを付加重合して得られる複合フィルムであり、前記ポリカーボネートポリオールは20℃で液状のポリカーボネートポリオールであり、前記単官能(メタ)アクリル系モノマーは、前記ウレタンポリマーの溶解度パラメータとの差の絶対値が6.4[(MPa)1/2]以下である溶解度パラメータδ[(MPa)1/2]を有することを特徴とする複合フィルム。
【請求項2】
前記ポリカーボネートポリオールが、1,6−ヘキサンジオールを、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオールまたは1,4−シクロヘキサンジメタノールと共重合させて得られるコポリカーボネートジオールであることを特徴とする請求項1に記載の複合フィルム。
【請求項3】
前記単官能(メタ)アクリル系モノマーの溶解度パラメータδ[(MPa)1/2]が、17.7[(MPa)1/2]以上、25.5[(MPa)1/2]以下であることを特徴とする請求項1から2のいずれか1項に記載の複合フィルム。
【請求項4】
ポリカーボネートポリオールとジイソシアネートとを単官能(メタ)アクリル系モノマー中で重付加反応させ、ウレタンポリマーを形成してウレタンポリマー及び単官能(メタ)アクリル系モノマーの混合物を作製する工程と、
次いで、前記単官能(メタ)アクリル系モノマーを付加重合してアクリル系ポリマーを形成して複合フィルムを作製する工程とを具備し、
前記ポリカーボネートポリオールが20℃で液状のポリカーボネートポリオールであり、
前記単官能(メタ)アクリル系モノマーは、該単官能(メタ)アクリル系モノマーの溶解度パラーメータδ[(MPa)1/2]と、前記ウレタンポリマーの溶解度パラメータとの差の絶対値が6.4[(MPa)1/2]以下であることを特徴とする複合フィルムの製造方法。
【請求項5】
前記単官能(メタ)アクリル系モノマーの溶解度パラメータδが、17.7[(MPa)1/2]以上、25.5[(MPa)1/2]以下であることを特徴とする請求項4に記載の複合フィルムの製造方法。
【請求項6】
前記複合フィルムを作製する工程において、前記ウレタンポリマー及び前記単官能(メタ)アクリル系モノマーの混合物を支持体上に塗布し、光を照射してアクリル系ポリマーを作製することを特徴とする請求項4または5のいずれか1項に記載の複合フィルムの製造方法。

【公開番号】特開2010−120986(P2010−120986A)
【公開日】平成22年6月3日(2010.6.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−293301(P2008−293301)
【出願日】平成20年11月17日(2008.11.17)
【出願人】(000003964)日東電工株式会社 (5,557)
【Fターム(参考)】