説明

襖の高さ及び歪み等調整法及びその構造

【課題】家屋の老朽化などによって生じる建物の歪みや、各家屋の規格差を、調整容易で、安価な構成によって、利用し易いものとした。
【解決手段】縦襖ブチ2の上方寄りで上下二つに切離し、上方の襖面を中空として下方襖面に冠着し、上縦襖ブチと下縦襖ブチを覆った摺動カバー7に設けた面状ファスナー9で上縦襖ブチ2を所望点で着脱自在とし、上方襖面の襖紙下端部内側に水平状に設けた粘着テープ12で下襖面を固定させることによって水平状の襖の高さを調整する第一手段と、敷居接触方向襖ブチの下部両端に設けた、ネジで上下する高さ調整鋲で建付けの歪みを調整する第二手段、及び、縦襖ブチ2に延長する部分襖部材によって、幅を調整する第三手段よりなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
既製品や、襖紙の張替え作業中の仮襖として、設置場所の多様な規格への対応や、建付けの歪みに対して、簡単に調整できるようにしたものである。襖が痛んだとき、手軽に交換できることや、建具の張替えや修繕の時に見苦しさを解消する仮襖とすることも有効である。
【背景技術】
【0002】
従来の先行技術としては、記載の通り文献1から文献4の先願があり、文献番号に従ってその構成について記載する。
「文献1」
襖 本体1に上下の横框及び左右の縦框を設け、上下横框の一方又は双方に調整 桟を配置した襖 において、前記調整桟が配置される襖コーナー部に高さ調整ブロックを設け、この調整ブロックは、縦框に挿入される縦突出部及び調整桟に挿入される第1横突出部を有するブロック本体と、このブロック本体に回転可能に装着され且つ回転操作部を有するねじ軸と、このねじ軸に螺合する雌ねじ部を有し且つその先端が横框に挿入される第2横突出部を備えた構成である。
「文献2」
襖紙を両面に張り付けた襖骨組の周りに取り付けて襖 骨組を保持するための上縁下縁、堅縁で構成する樹脂製の襖縁と、表面積が略上縁面と等しい樹脂製の薄板を上縁面に接着して、その接着枚数により所望の高さに襖高さを調整し、襖が鴨居の溝にスムースに接するように建てつけ調整する高さ調整用板を備えている。
「文献3」
芯材が、方形に形成された木製の枠内に複数の縦組子及び横組子格子状に組み込んだ中骨を配設してなり、その表裏面に下張りとしてチップボール紙を貼着してなる機械により大量生産可能な和襖 芯であり、縁材が押出成形された押し出し材の所定表面に相等の模様層を固着してなる大量生産可能なアルミニウム製の縁材であり、該縁材が芯材から嵌脱自在に形成されていると共に、縁材は上下の横桟及び左右の竪桟から形成され、左右の竪桟の高さ 調整 が可能とされている。
「文献4」
本件は、本出願人の特許である。本出願は、上方よりで二分割した襖を、縦ブチに取り付けた面状ファスナーと、上部襖の縦フチ内向側に設けた湾曲した板バネでもって、所望の高さを維持する構造である。
【0003】
【特許文献1】特開平10-238226
【特許文献2】特開平9−78948
【特許文献3】特開2002−115464
【特許文献4】特許第2890246号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記特許文献1は、襖紙面の伸縮部がなく、桟のみの調整範囲は微調整の域を超えず、日本建築の多様性に対応できるものではない。
文献2および3は、歪みの調整は容易であるが、建物の種類による、襖の高さの差異は大きく、下駄を履かせた状態でのみでは対応が困難であり、仮にこの方法で無理に調整した場合は、かなり美観的に損なわれる欠点が存在する。
特許文献4は、本出願人の先願であるが、上下で二分割した襖を必要に応じて高さを設置場所に適した状態に使用者が調整できるものであるが、縦ブチにのみ固定手段が設けられているため、振動や、長い間の使用によって、時に下がってくることがあることや、さらに、前記先行技術全てが縦、横及び歪みの三機能を持つ複合的な調整に対応できるものではないという課題が存在する。
本出願人は、該三機能を提供することができ、安定した機能の持続と、調整作業の簡便化を目的として発明した。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、襖の縦ブチの長さを調整し固定する手段に加え、襖面を横切る粘着テープによって分割された上襖面全体を無理なく支えるようにした高さ調整手段と、敷居に接する下端襖ブチにネジ式の高さ調整鋲を螺着し、左右個々の高さの微調整製を自在として、建付けの歪みに適合させる手段を講じたものである。さらに幅の調整を必要とするときには、縦ブチに延長する幅調整用延長襖部材を嵌めることができる。
【0006】
その構造は、襖本体1の縦襖ブチ2を上方から、10から20センチで切離す。上下の襖面が重なり部を上下に伸縮調整可能範囲として、上方襖ブチ3の表裏には上下方向に伸縮分の長さで、下方襖面に冠着できる襖面の厚さ分の間隙を設けた平板4を張設して中空状の襖面を形成し、上下ともに襖面に襖紙8を貼る。上方襖面の襖紙は、平板4より下方へおよそ1センチ長丈とする。平板より長丈部分襖紙10内面に水平に線状の粘着テープ11を貼設する。襖の歪み調整は、下方敷居接触部襖ブチ19の左右双方下端部分内部にネジでもって上下する高さ調整鋲13を螺着し、ネジをまわしながら、左右の縦ブチの高さを調整する。
さらに、幅を調整する手段として、縦襖ブチ14に、前記上下二分割状襖の一部を側部に延長し、上下、水平方向に伸縮する幅調整用延長襖部材15を冠着し、所望点で固定する粘着テープ16、17を前記幅調製用延長部材の内面に設けることによって、全体の大きさを調整する構造を加えることができる。
前記襖全体の縦襖ブチの外側を断面コの字で上下動分の長さを持つ摺動カバー7、20で覆い、上縦襖ブチ3、18と摺動カバー7、20には雌雄の面状ファスナー9、10を設け高さの固定を補強する。
【0007】
使用方法は、襖の設置箇所の幅、歪み、高さの順に調整しつつ固定するものである。予め縦襖ブチ2の上方寄りで上下二つに切離した上方の襖面を中空として下方襖面に被せるように差し通し、片方の縦襖ブチ14の片方に幅調整用延長部材15を添える。
先ず、幅決めをする。前記幅調整用延長部材15を設置家屋に適合した幅に調整したところで部材下部のみ襖本体の下部と内面に設けた粘着テープ21で動かないようにする。
次に、襖本体の敷居接触部襖ブチ19に設けた高さ調整鋲13を回しながら建付けの歪みを調整する。
最後に縦襖ブチ3、5を上下微調整して高さを決め、このとき、幅調整用延長部材の縦襖ブチ6、18も連動させる。
この状態で、幅、歪み、高さが決まったところで、上縦襖ブチ3、18と下縦襖ブチ5、6を外側から覆った摺動カバー7、20に設けた面上ファスナー9、10の雄面を上縦襖ブチ3、18の雌面の所望点で貼り付ける
上方襖面の襖紙下端部は、幅調整用延長部材及び襖本体ともに、上襖面の平板よりおよそ1センチ長く突出させ、その襖紙内側に水平状に設けた粘着テープ12の剥離紙を剥がしながら下襖面に貼り付け線状に固定させることによって襖の高さを安定して固定させることができる。
【発明の効果】
【0008】
既製品の襖は、高さ調整できるものは大変高価で、気軽に建具を交換することができない。また、建物の老朽化で、建付けに歪みが生じた場合、襖が滑りにくくなったり、隙間ができたりすることは珍しいことではないが、手間が面倒なこともありなかなか交換することができない。
しかし、本発明の襖を使用すれば、ネジ調整と、テープ貼りという工程ですぐに作業が完了し、その上、構造が簡単で、安価であるから、購入しやすく、襖の張替えなどの時に業者が使用する仮襖にすることも有効である。また、現場での調整が出来るのでレンタル商品としての市場も有する。
特に、本発明のポイントは、幅と高さを決めてからの固定方法に、粘着テープを採用したことである。これは、安価で確実な強度と美観上も優れた仕上がりを提供する最良の方法であり、作業が、誰でもでき、短時間に完了できる特徴がある。そして、このテープ使用にあたり、襖紙の内側がやや薄く設けて粘着テープを取り付けることによって、つなぎ目が目立つことなくさらに仕上がりが向上する。
従来にはない、高さ、幅、歪みの全てを調整できることから、建物の規格や、歪みがあっても各家の状況に適合でき、既製品として多様な品揃えの必要も無く、単価を安く抑えることができる。また、この襖設置後模様替えなどで襖紙を変えたい場合には、表面から簡単に前面貼り付けができるため、部屋の移動や、引越しなどでも便利であるなど、市場性のある発明である。
以上のような効果のある襖である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
実施例を図面に従って説明する。襖本体1の縦襖ブチ2を上方から、10から20センチで切離す。上下の襖面の重なり部が上下に伸縮調整可能範囲となる。上方襖ブチ3の表裏には上下方向に伸縮分の長さで、下方襖面に冠着できる襖面の厚さ分の間隙を設けた平板4を張設して中空状の襖面を形成する。この平板は、強度があり、厚みが少ないものが良く、例としてトタンは、安価で、強度もあり適している。上下の襖面に襖紙8を貼り、襖紙8は、平板より下方へおよそ1センチ長丈とする。これは、襖のつなぎ目が下方の襖面との境を美しく仕上げるためである。上方襖面の、平板より長丈部分襖紙11内面に水平に線状の剥離可能な粘着テープと、上下の襖面を固定する粘着テープ12を貼設する。なお、剥離可能な粘着テープを下に貼っておくことにより、襖紙の接着面の厚みを薄く剥ぎ取ることができ、テープの厚みが表面に響くことなく美的に好ましい状態とすることができる。最初から表面に響かないように加工した場合は必要としない。襖面を上下繋ぐ粘着テープ12は、片側から剥離紙を少しずつ抜き取りながら襖紙を押さえ下方の襖面に接着固定する。
一方、襖の歪みは、下方敷居接触部襖ブチ19の左右双方下端内部にネジでもって上下する高さ整鋲13を螺着し、ネジを回しながら、縦ブチの傾きを建物の歪みに沿って微調整する。
建築仕様による襖のサイズの種類は4種類あり、本間を最大として団地サイズが最小からなる主に4サイズの品揃えを必要とするが、各サイズ内では約2寸(約6センチメートル)の誤差は本発明で対応が可能である。
幅を調整するための幅調整用延長襖部材15は、前記襖本体と同様上下で二分割され、水平状に移動して幅を調整した後、高さを調整し、いずれも内部に設けた粘着テープ16、17の裏紙を引き抜き固定する。
襖全体の縦襖ブチの外側には上下に切断した縦襖ブチの下方縦襖ブチ5、6の外側を断面コの字で上下動分の長さを持つ摺動カバー7、20で覆い、上方縦ブチと摺動カバーには雌雄の面状ファスナー9、10を設け、高さ固定の補強とする。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明組み立て構造図
【符号の説明】
【0011】
1 襖本体
2 縦襖ブチ
3 上方縦襖ブチ
4 平板
5 下方縦襖ブチ
6 下方縦襖ブチ
7 摺動カバー
8 襖紙
9 面状ファスナー
10 面状ファスナー
11 長丈部分襖紙
12 粘着テープ
13 高さ調整鋲
14 縦襖ブチ
15 幅調整用延長襖部材
16 粘着テープ
17 粘着テープ
18 上方縦襖ブチ
19 下方敷居接触部襖ブチ
20 摺動カバー
21 粘着テープ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
縦襖ブチの上方寄りで上下二つに切離し、上下の襖面に重なり部を設け、上下に伸縮調整可能として、上方の襖面を中空とし、下方襖面に冠着するようになし、上縦襖ブチと下縦襖ブチを覆った摺動カバーに設けた面状ファスナーで上縦襖ブチを所望点で着脱自在とし、上方襖面の襖紙下端部内側に水平状に設けた粘着テープで下襖面を固定させることによって水平状の所望の襖の位置を保持する第一手段と、敷居接触方向襖ブチの下部両端に設けた、ネジで上下する高さ調整鋲で建付けの歪みを調整する第二手段よりなることを特徴とする襖の高さ及び歪み等調整法。
【請求項2】
縦襖ブチの上方寄りで上下二つに切離し、上下の襖面に重なり部を設け、上下に伸縮調整可能として、上方の襖面を中空とし、下方襖面に冠着するようになし、上方襖面の襖紙下端部内側に水平状に設けた粘着テープで下襖面を固定させることによって水平状の所望の襖の位置を保持する第一手段と、敷居接触方向襖ブチの下部両端に設けた、ネジで上下する高さ調整鋲で建付けの歪みを調整する第二手段と、縦襖ブチの一方向に、上下及び水平方向に伸縮する幅調整用延長襖部材を前期襖に冠着してなる第三手段を有し、上縦襖ブチと下縦襖ブチを覆った摺動カバーに設けた面状ファスナーで上縦襖ブチを所望点で着脱自在として、襖の高さ、歪み、幅を調整することを特徴とする襖の高さ及び歪み等調整法。
【請求項3】
襖本体1の縦襖ブチ2を上方から、10から20センチで切離し、上下の襖面が重なり部を上下に伸縮調整可能範囲として、上方縦襖ブチ3の表裏には上下方向に伸縮分の長さで、下方襖面に冠着できる襖面の厚さ分の間隙を設けた平板4を張設して中空状の襖面を形成し、上下襖面に襖紙8を貼り、上方襖面の襖紙は、平板4より下方へおよそ1センチ長丈とし、平板より長丈に設けた襖紙内面に水平に線状の粘着テープ12を貼設した高さ調整の構造と、下方敷居接触部襖ブチ19の左右双方下端部分内部にネジでもって上下する高さ調整鋲13を螺着してなる襖の歪み調整用構造と、襖の、一方向の縦襖ブチ14に、前記上下二分割状襖の一部を側部に延長し、上下及び水平方向に伸縮する幅調整用延長襖部材15を冠着し高さ、及び幅の所望点で固定する粘着テープ16、17を前記幅調製用延長部材の内面に設けて幅調整用構造よりなり、上下に切断した縦襖ブチの下方縦襖ブチ5、6の外側を断面コの字で上下動分の長さを持つ摺動カバー7、20で覆い、上縦襖ブチ3、18と摺動カバー7、20には雌雄の面状ファスナー9、10を設けて襖全体の縦襖ブチを固定してなることを特徴とすることを特徴とする高さ及び歪み等調整襖の構造。

【図1】
image rotate


【公開番号】特開2006−22636(P2006−22636A)
【公開日】平成18年1月26日(2006.1.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−367569(P2004−367569)
【出願日】平成16年12月20日(2004.12.20)
【出願人】(391043435)
【Fターム(参考)】