説明

親子式内視鏡

【課題】一人の術者だけで親内視鏡及び子内視鏡を簡単に操作することが可能な親子式内視鏡を提供する。
【解決手段】子内視鏡60が、子側操作部61と子側挿入部62の間に位置する円筒形状をなす硬質筒状部64を具備し、21親側操作部内における内部管路36の少なくとも一部を、硬質筒状部64を嵌合可能かつ硬質筒状部と同じ断面形状である、硬質材料からなる支持用孔32とした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、親内視鏡の内部管路に子内視鏡の挿入部を挿入して使用する医療用の親子式内視鏡に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1、2は、親内視鏡と、親内視鏡の内部管路に自身の挿入部を挿入して使用可能な子内視鏡と、を具備する親子式内視鏡を開示している。当該親子式内視鏡は、子内視鏡の挿入部を親内視鏡の内部管路に挿入したときに、親内視鏡に対する子内視鏡の相対位置を保持することにより、術者が補助者の助けを必要とすることなく親子式内視鏡を操作することを可能にするための子スコープホルダーを具備している。
【0003】
この子スコープホルダーは、親内視鏡及び子内視鏡とは別部材の略円筒形状部材であり、アルミニウム合金等の硬質材料によって構成したものである。子スコープホルダーの一方の端部は、親内視鏡の操作部に形成した上記内部管路の開口端部に同軸状態で固定可能な固定用端部となっている。一方、子スコープホルダーの他方の端部は、子スコープホルダーに子内視鏡の挿入部を挿入したときに、子内視鏡の操作部の先端部近傍部が嵌合する支持部となっている。
従って、子スコープホルダーの固定用端部を親内視鏡の操作部(内部管路の開口端部)に固定した状態で、子内視鏡の挿入部を子スコープホルダー及び上記内部管路を通して親内視鏡の挿入部の先端側から外部に突出すると、子内視鏡の操作部の先端部近傍部が子スコープホルダーの支持部によって固定状態で支持されるので、一人の術者が補助者の助けを借りずに親内視鏡と子内視鏡を操作可能となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第4040169号公報
【特許文献2】特許第4349670号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記親子式内視鏡は、接続状態における親内視鏡の操作部と子内視鏡の操作部の距離が子スコープホルダー分だけ余計に離れてしまう。そのため、スコープホルダーの全長が長い場合には、一人の術者だけで操作を行うときに両内視鏡の操作性に問題が生じるおそれがある。
また、両内視鏡の操作部間の距離が長いため、子内視鏡操作部の自重による回転トルク(親内視鏡を保持している術者の手を中心とする回転トルク、)が大きくなって親内視鏡の操作部から術者の手に伝わるので、術者の負担が大きかった。
【0006】
本発明は、一人の術者だけで親内視鏡及び子内視鏡を簡単に操作することが可能な親子式内視鏡を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の親子式内視鏡は、親側操作部、該親側操作部から延びる可撓性を有する親側挿入部、及び、該親側操作部と親側挿入部の内部を連続して貫通する内部管路を備える親内視鏡と、子側操作部、及び、可撓性を有する子側挿入部を有し、該子側挿入部を上記内部管路に上記親側操作部側の開口端部から挿入して上記親側挿入部側の開口端部から突出可能な子内視鏡と、を具備する親子式内視鏡において、上記子内視鏡が、上記子側操作部と上記子側挿入部の間に位置する円筒形状をなす硬質筒状部を具備し、上記親側操作部内における上記内部管路の少なくとも一部を、上記硬質筒状部を嵌合可能かつ該硬質筒状部と同じ断面形状である、硬質材料からなる支持用孔としたことを特徴としている。
【0008】
上記親側操作部に、上記支持用孔に挿入した上記硬質筒状部の該親側操作部に対する相対移動を規制する保持手段を設けるのが好ましい。
【0009】
上記支持用孔と上記硬質筒状部の対向面の一方に、一端が上記親側操作部の表面に設けた吸引孔と接続し、かつ、他端が上記親側挿入部内の上記内部管路と接続する吸引用溝を凹設するのが好ましい。
【0010】
上記親側操作部内における上記内部管路の内周面に、上記吸引用溝より上記内部管路の上記親側操作部側の開口端部側に位置し、かつ上記支持用孔に嵌合した上記硬質筒状部の外周面に気密状態で接触するシール部材を設るのが好ましい。
【0011】
上記吸引用溝の総断面積が、上記親側挿入部内の上記内部管路と上記子側挿入部の隙間の断面積よりも大きいのが好ましい。
【発明の効果】
【0012】
本発明では、従来技術の子スコープホルダーの機能を果たす硬質筒状部と支持用孔をそれぞれ子内視鏡と親内視鏡に一体的に設けているので、子内視鏡を親内視鏡に直接接続でき、そのため親内視鏡の操作部と子内視鏡の操作部の距離を短くできる。そのため、一人の術者だけで操作を行う場合であっても操作性は良好である。また、親内視鏡を保持している術者の手を中心にして生じる子内視鏡の自重による回転トルクは大きくならないので、術者の負担が大きくなることはない。
また、硬質筒状部と支持用孔の断面形状は同一の円形形状であるため、接続状態において子内視鏡が支持用孔の軸線に対して傾いたり、がたつくことはない。その一方で、子内視鏡の親内視鏡に対する軸線周りの回転方向位置や軸線方向位置を任意に調整可能である。
【0013】
請求項2のように構成すれば、子内視鏡の親内視鏡に対する軸線周りの回転方向位置や軸線方向位置を、術者にとって好適な任意位置に保持できる。
【0014】
請求項3のように構成すれば、硬質筒状部を支持用孔に嵌合しても、吸引用溝を介して挿入部内の内部管路と吸引孔が連通するので、吸引孔に吸引手段を接続すれば、内部管路の挿入部側の開口端部を利用した吸引が可能になる。
さらに請求項4のようにシール部材を設ければ、吸引手段による吸引を行った場合に、挿入部側の開口端部から内部管路に吸引された体液等が親内視鏡の操作部側の開口端部側に流れるのを防止できる。
【0015】
請求項5のように構成すれば、吸引力が落ちることなく吸引を行うことが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の一実施形態の親内視鏡の側面図である。
【図2】親内視鏡の操作部の底面図である。
【図3】図1のIII-III線に沿う断面図である。
【図4】子内視鏡の側面図である。
【図5】親内視鏡に子内視鏡を接続したときの側面図である。
【図6】図5のVI-VI線に沿う断面図である。
【図7】図5のVII- VII線に沿う断面図である。
【図8】変形例の図7と同様の断面図である。
【図9】変形例の硬質筒状部の吸引用溝の直後における断面図である。
【図10】別の変形例の親内視鏡に子内視鏡を接続したときの側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、図1〜図7を参照しながら本発明の一実施形態を説明する。なお、以下の説明中の前後方向は、親内視鏡20については挿入部22の先端部側を「前方」、操作部21側を「後方」と定義し、子内視鏡60については挿入部62の先端部側を「前方」、操作部61側を「後方」と定義している。
親子式内視鏡10は医療用であり、互いに接続及び分離が可能な親内視鏡20と子内視鏡60を具備している。
親内視鏡20は、硬質樹脂材料によって外装ケースを構成した操作部(親側操作部)21と、操作部21から前方に延びる柔軟な(可撓性を有する)挿入部(親側挿入部)22と、を備えており、挿入部22の先端部近傍部は操作部21に回転可能に設けた湾曲操作レバー24の回転操作に応じて湾曲する湾曲部23となっている。挿入部22の先端面には図示を省略した対物レンズ、照明レンズ、及び、開口部が形成してある。操作部21における湾曲操作レバー24と反対側の面からは可撓性チューブであるライトガイドチューブ26が延びており、このライトガイドチューブ26の内部空間、操作部21の内部空間、及び、挿入部22の内部空間にはライトガイドバンドル27が配設してあり、ライトガイドバンドル27の前端は上記照明レンズの直後に位置している。従って、ライトガイドチューブ26の操作部21と反対側の端部を図示を省略した光源装置に接続すると、該光源装置で発生した光がライトガイドバンドル27を通って上記照明レンズから外部に照射される。また操作部21の後端部には接眼部28が突設してあり、接眼部28の端面には接眼レンズ29(図2参照)が設けてある。操作部21(接眼部28)の内部空間及び挿入部22の内部空間にはイメージガイドバンドル30が配設してあり、イメージガイドバンドル30の前端は上記対物レンズの直後に位置しており、イメージガイドバンドル30の後端は接眼レンズ29の直前に位置している。従って術者は、接眼レンズ29を目で覗くことにより上記対物レンズを透過した観察像を視認できる。
【0018】
図示するように操作部21の内部空間には、ステンレス、アルミニウム、硬質樹脂材料(例えば、ポリカーボネートや変性PPO等)等の硬質材料によって構成した前後両端が開口する直線形状のパイプ材(円筒部材)である支持用筒部材31が固定状態で設けてあり、支持用筒部材31の後端部は操作部21の後端面から後方に突出している。図7等に示すように、支持用筒部材31の内周面は後述する大径部31aを形成した部分を除いて断面円形の支持用孔32となっており、さらに支持用孔32の前端から中間部に渡って(大径部31aの直前まで)支持用筒部材31の長手方向に延びる4本の吸引用溝33が周方向に90°間隔で凹設してある(吸引用溝33の後端位置は図1に図示している)。また図1、図3等に示すように、支持用筒部材31の内周面には各吸引用溝33の直後において各吸引用溝33と連通する、支持用孔32より大径の断面円形部である大径部31aが形成してある。さらに図3に示すように支持用孔32の内周面には大径部31aの直後に位置する環状溝34が凹設してあり、環状溝34にはシリコンゴム等の弾性材料からなるOリング(シール部材)R1が嵌合してある。
さらに操作部21の前端部の内部空間及び挿入部22の内部空間には、その後端が支持用筒部材31の前端に接続すると共にその前端が挿入部22の先端面の上記開口部に接続する可撓性材料からなる吸引管35が配設してある(図1等に示すように吸引管35の後端部はテーパ状に拡径している)。この吸引管35の内部管路と支持用筒部材31の内部管路が内部管路36の構成要素である。
支持用筒部材31の後端部には前方に向かって延びる4本のスリット37が周方向に90°間隔で形成してあり、該後端部はスリット37によって4つの圧接片(保持手段)38に分割されている。各圧接片38の中間部の外周面は後方に向かうにつれて支持用筒部材31の軸線からの径方向距離が徐々に短くなる被押圧テーパ面39となっている。さらに支持用筒部材31の外周面には雄ねじ溝40が形成してある。
支持用筒部材31の外周面には締付リング(保持手段)42が移動可能に被せてある。締付リング42の内周面の長手方向の中間部には雄ねじ溝40と螺合可能な雌ねじ溝43が形成してある。さらに締付リング42の内周面の後端部は、前部に比べて小径で、かつ後方に向かうにつれて支持用筒部材31の軸線からの径方向距離が徐々に短くなる押圧テーパ面44となっている。
【0019】
図3等に示すように、操作部21にはその内部空間が支持用筒部材31の内部空間と(支持用筒部材31に形成した貫通孔を介して)連通するボタン支持用突部25が突設してある。ボタン支持用突部25の内周面には、ボタン支持用突部25の軸線を中心とする円筒面であるシリンダ面25aと、シリンダ面25aの直下に位置するシリンダ面25aより小径の環状座面25bとが形成してあり、ボタン支持用突部25の先端部の外周面には雄ネジ部25cが形成してある。ボタン支持用突部25には、ボタン支持部材46と、ボタン支持部材46と同軸をなしかつ相対スライド可能なスライド部材48とを具備する吸引ボタン49のボタン支持部材46が固定してある。即ち、ボタン支持部材46の内周面に設けた雌ネジ部46aが雄ネジ部25cに螺合している。スライド部材48の下端部には、ボタン支持部材46と同軸をなすピストン51が固定してあり、ボタン支持部材46をボタン支持用突部25に固定すると、ピストン51はシリンダ面25aにスライド自在に嵌合する。
さらに、ピストン51の下端部に形成した環状凹部にはシリコンゴム等の弾性材料からなるOリングR2が嵌合固定してあり、OリングR2は環状座面25bに対して支持用筒部材31側から気密状態での接触及び離間が可能である。そしてスライド部材48の下部に形成したリテーナ50とボタン支持部材46の底部に形成したリテーナ面47との間には圧縮コイルばねS1が縮設してあるため、術者がスライド部材48に対して外力を及ぼさないとき、スライド部材48は圧縮コイルばねS1の付勢力によってOリングR2が環状座面25bに気密状態で圧接する非吸引位置(図1、図3、図5の位置)に位置する。一方、圧縮コイルばねS1の付勢力に抗してスライド部材48を支持用筒部材31側に押し込むと、スライド部材48はOリングR2が環状座面25bから支持用筒部材31側に離間する吸引位置(図示略)に位置する。
また操作部21における湾曲操作レバー24と反対側の面には、両端が開口する筒状部材である吸引ニップル(吸引孔)52が突設してある。吸引ニップル52の基端側端部は操作部21の内部空間において開口しており、吸引ニップル52の先端部は図示を省略した吸引源に接続可能である。さらに、操作部21の内部空間には、吸引ニップル52の基端側端部とボタン支持用突部25の内部空間(シリンダ面25aの内部空間)とを接続する連通チューブ53が設けてあるので、ピストン51のOリングR2が環状座面25bから離間するとき、支持用筒部材31の吸引用溝33と吸引ニップル52は、ボタン支持用突部25の内部空間及び連通チューブ53を介して互いに連通する。
【0020】
続いて子内視鏡60の構成について説明する。なお、子内視鏡60の基本構成は親内視鏡20と類似するため、親内視鏡20と同じ部材には同じ符号を付すに止めて、その詳細な説明は省略する。
子内視鏡60は大きな構成要素として、操作部(子側操作部)61、挿入部(子側挿入部)62、及び、硬質筒状部64を具備している。
硬質筒状部64は、硬質樹脂材料によって外装ケースを構成した操作部61の前端部から前方に延び、かつ前後両端が開口する直線形状の円筒部材であり、全体をSUS、アルミニウム、硬質樹脂材料(例えば、ポリカーボネートや変性PPO等)等の硬質材料によって構成したものである。図示するように硬質筒状部64の前端部は前方に向かうにつれて縮径するテーパ状であり、硬質筒状部64の当該前端部を除く部分は全て支持用筒部材31の支持用孔32と略同一(僅かに小さい)の断面形状である。
挿入部62は挿入部22と同じ材質の可撓性部材であり、その後端部が硬質筒状部64の前端部に同軸状態で固定してある。挿入部62の先端面には照明レンズ、対物レンズ、及び、開口部が形成してある。また操作部61の後端部には端面が開口する筒状の処置具挿入用突部66が突設してあり、処置具挿入用突部66には一端が処置具挿入用突部66の外周部に固定され、かつ他端部に設けた蓋部67を処置具挿入用突部66の端面開口部に着脱(開閉)可能であるシリコンゴム製の開閉キャップ68が設けてある。操作部61、硬質筒状部64、及び挿入部62の内部空間には、その後端が処置具挿入用突部66に接続すると共に前端が挿入部62の先端面の上記開口部に接続する可撓性材料からなる処置具挿通管65が配設してある。
操作部61には接眼部28が突設してあり、さらに操作部61の湾曲操作レバー24と反対側の面にはライトガイドチューブ26と吸引ニップル52が設けてある。ライトガイドチューブ26の内部空間に設けたライトガイドバンドル27の前端は上記照明レンズの直後に位置している。また接眼部28の接眼レンズ29と上記対物レンズは、操作部61(接眼部28)、硬質筒状部64、及び、挿入部62の内部に配設したイメージガイドバンドル30によって光学的に接続している。さらに親内視鏡20と同様に、ボタン支持用突部25の内部空間は操作部61内において処置具挿通管65と(処置具挿通管65に形成した貫通孔を介して)連通すると共に連通チューブ53を介して吸引ニップル52と連通している。さらに子内視鏡60のボタン支持用突部25、ボタン支持部材46及びスライド部材48の内部空間には、親内視鏡20と同一のシリンダ・ピストン機構(図3等に示したシリンダ面25a、環状座面25b、リテーナ面47、吸引ボタン49、ピストン51、OリングR2、圧縮コイルばねS1等からなる機構)が設けてある。
【0021】
続いて親子式内視鏡10の使用要領について説明する。
まずは患者の体外に配置した親内視鏡20及び子内視鏡60のライトガイドチューブ26を光源装置に接続し、かつ、親内視鏡20及び子内視鏡60の吸引ニップル52を吸引源に接続しておき、さらに親内視鏡20の締付リング42の雌ねじ溝43を支持用筒部材31の雄ねじ溝40に対して緩めて押圧テーパ面44を被押圧テーパ面39の後方に位置させておく。次いで子内視鏡60の挿入部62を支持用筒部材31の後端開口から支持用筒部材31の支持用孔32及び吸引管35に挿入し、図5に示すように挿入部62を挿入部22内の吸引管35に挿入すると共に、硬質筒状部64を支持用筒部材31の支持用孔32に嵌合させ、硬質筒状部64の外周面を支持用筒部材31の内周面に設けたOリングR1に気密状態で圧接する。すると、硬質筒状部64の外周面が支持用筒部材31の支持用孔32に面接触するので、操作部61(硬質筒状部64)の操作部21(支持用筒部材31)に対する傾きやがたつきが規制される。その一方で硬質筒状部64と支持用孔32の断面形状が共に円形であるため、操作部61(硬質筒状部64)は操作部21(支持用筒部材31)に対して支持用筒部材31の軸線方向にスライド可能かつ該軸線周りに回転可能である。従って、手で把持した操作部61の操作部21に対するスライド方向位置と回転方向位置を調整し、図5に示すように子内視鏡60の湾曲操作レバー24を親内視鏡20の湾曲操作レバー24と同じ側に位置させ、かつ、挿入部62の先端部を挿入部22の先端面の上記開口部から突出させた後に手で締付リング42を回転させて(雌ねじ溝43を雄ねじ溝40に締め付けて)、締付リング42の押圧テーパ面44を支持用筒部材31の被押圧テーパ面39に圧接させる(図1、5参照)。すると、押圧テーパ面44によって4つの圧接片38がそれぞれ硬質筒状部64側に押圧されるので、4つの圧接片38の内周面が硬質筒状部64の外周面にそれぞれ圧接する。そのため、操作部61の操作部21に対するスライド及び回転が規制されるので、操作部61の操作部21に対するスライド方向位置と回転方向位置が図5の位置に保持される。
【0022】
このようにして親内視鏡20に対する子内視鏡60の接続作業が完了したら、一体化した親内視鏡20と子内視鏡60を患者の口から体腔内に挿入する。この際術者は、子内視鏡60の上記対物レンズを透過した観察像を子内視鏡60の接眼部28(接眼レンズ29)で視認しながら、挿入部62及び挿入部22の体腔内への挿入作業を行う。なお圧接片38が硬質筒状部64に圧接しているので、挿入作業中に術者が子内視鏡60から手を離しても、子内視鏡60が親内視鏡20から脱落することはない。
鉗子等の処置具を利用して患部の処置を行いたい場合は、開閉キャップ68の蓋部67を処置具挿入用突部66の開口端部から取り外し、処置具挿入用突部66の開口端部から処置具挿通管65に処置具を挿入し、該処置具の先端を挿入部62の先端面の上記開口部から前方に突出させて、該処置具によって患部を処置する。なお圧接片38が硬質筒状部64に圧接しているので、術者による当該処置具の操作は、子内視鏡60から手を離した状態で実行可能である。
また、患部やその周辺の体液等を吸引したい場合は、子内視鏡60のスライド部材48を上記吸引位置まで押し込む。すると、上記シリンダ・ピストン機構のOリングR2が環状座面25bから処置具挿通管65側に離れるので、上記吸引源で発生した負圧が吸引ニップル52、ボタン支持用突部25の内部空間、及び、処置具挿通管65を介して挿入部62の先端面の上記開口部に及ぶ。そのため、上記体液等は挿入部62の先端面の開口部から処置具挿通管65、ボタン支持用突部25の内部空間、及び、吸引ニップル52を介して上記吸引源によって吸引される。そして術者が手をスライド部材48から離すと、スライド部材48は圧縮コイルばねS1の付勢力によって上記非吸引位置に復帰し、上記シリンダ・ピストン機構のOリングR2が環状座面25bに再び圧接するので、上記吸引源で発生した負圧はOリングR2より処置具挿通管65側には及ばなくなる。そのため子内視鏡60による体液等の吸引動作は停止する。
【0023】
また、一旦締付リング42の雌ねじ溝43と支持用筒部材31の雄ねじ溝40の螺合を緩めて硬質筒状部64を支持用筒部材31に対して後方にスライドさせることにより(硬質筒状部64と支持用孔32は嵌合したままにする)挿入部62の先端部を挿入部22の内部に収納した後に雌ねじ溝43を雄ねじ溝40に締め付けることにより挿入部62の挿入部22に対するスライド方向位置を固定すれば、親内視鏡20が接続する吸引源によっても上記体液等を吸引できる。
この場合、術者は親内視鏡20の接眼部28(接眼レンズ29)を通して患部の状態を観察しながら親内視鏡20のスライド部材48を上記吸引位置まで押し込む。すると親内視鏡20のシリンダ・ピストン機構のOリングR2が環状座面25bから離れるので、吸引源で発生した負圧が吸引ニップル52、ボタン支持用突部25の内部空間、ボタン支持用突部25の内部空間と連通する支持用筒部材31に形成した4本の吸引用溝33、及び、吸引用溝33の前端部と連通する吸引管35(吸引管35と子内視鏡60の挿入部62との隙間)を介して挿入部22の先端面の上記開口部に及ぶ。そのため、上記体液等は挿入部22の先端面の開口部から吸引管35、吸引用溝33、ボタン支持用突部25の内部空間、及び、吸引ニップル52を介して上記吸引源によって吸引される。さらに支持用筒部材31の環状溝34に設けたOリングR1が硬質筒状部64の外周面に気密状態で圧接しているので、吸引した体液等がOリングR1より後方(締付リング42側)に移動して支持用筒部材31の後端開口から漏れることはない。そして術者が手をスライド部材48から離すと親内視鏡20のスライド部材48は圧縮コイルばねS1の付勢力によって上記非吸引位置に復帰するので、親内視鏡20による体液等の吸引動作は停止する。
【0024】
以上説明したように本実施形態では、従来技術の子スコープホルダーの機能を果たす支持用筒部材31と硬質筒状部64を親内視鏡20と子内視鏡60がそれぞれ一体的に具備しているので、子スコープホルダーを要することなく親内視鏡20と子内視鏡60を直接接続できる。そのため、親内視鏡20の操作部21と子内視鏡60の操作部61の距離(支持用筒部材31及び硬質筒状部64の軸線方向距離)を短くすることが可能なので、一人の術者だけで親子式内視鏡10の操作を行う場合であっても操作性は良好である。また、当該距離が短いため、親内視鏡20を把持している術者の手を中心にして生じる子内視鏡60の自重による回転トルクは大きくならないので、術者の負担が大きくなることはない。
さらに親内視鏡20に子内視鏡60を接続すると親内視鏡20と子内視鏡60の軸線が一致する(図5に示すように直線状態にある挿入部22及び挿入部62の軸線と、支持用筒部材31及び硬質筒状部64の軸線とが互いに一致する)ので、操作部21を当該軸線周りに回転させたときに操作部61が大きく振り回されることがないので、この点においても操作性は良好である。
【0025】
以上、上記実施形態に基づいて本発明を説明したが、本発明は様々な変更を施しながら実施可能である。
例えば、図8に示す変形例のように、支持用筒部材31の支持用孔32に吸引用溝33を形成する代わりに、硬質筒状部64の外周面に吸引用溝33に相当する吸引用溝69(子内視鏡60を親内視鏡20に接続したときに、吸引管35の内部空間とボタン支持用突部25の内部空間を連通する溝)を形成してもよい。この場合は環状溝34にOリングR1を設ける代わりに、図9に示すように硬質筒状部64の外周面に複数(図9では4つ)の凹部64aを形成し、外周面の断面形状が硬質筒状部64の外周面(支持用孔32)と略同径の円形で、かつ、内周面が吸引用溝69に合わせた形状であるシール部材70を硬質筒状部64に被せる。このように構成すれば、吸引した体液等がシール部材70(支持用筒部材31の内周面に気密状態で接触する)より後方(締付リング42側)に移動して支持用筒部材31の後端開口から漏れることはなく、しかも、子内視鏡60をその軸線周りに回転させたときにシール部材70が支持用筒部材31に対して回転可能となる。
また、吸引用溝33と吸引用溝69の本数は4本以外であってもよい。なお、吸引用溝33、69の本数をどのように設定する場合であっても、吸引用溝33、69の総断面積(断面積の合計値)を吸引管35と挿入部62の隙間の断面積よりも大きくするとなお良い。このようにすれば、吸引源を利用して吸引を行う際に吸引力が落ちることはない。
また図10に示す親内視鏡20’のように、操作部(親側操作部)21’に設けた支持用筒部材31の軸線を直線状態にある挿入部22の軸線に対して傾斜させてもよい。
さらに支持用筒部材31及び硬質筒状部64を構成する上記硬質材料は、硬質筒状部64を支持用筒部材31(支持用孔32)に嵌合したときに硬質筒状部64が支持用筒部材31に対して傾いたり、がたつくことを防止し、かつ、硬質筒状部64の支持用筒部材31に対する軸線周りの相対回転及び軸線方向移動を許容するものであればよく、この要件を満たすのであれば上記材質には限定されない。
さらに、親内視鏡20及び子内視鏡60は接眼部28を有するタイプの内視鏡には限定されず、挿入部22、62の先端部または操作部21、61内に撮像素子を有するタイプの内視鏡であってもよい。
また、支持用筒部材31の後端開口部を図示を省略した栓で塞いだ親内視鏡20、20’を患者の体腔内に挿入し、その後に当該栓を支持用筒部材31の後端開口部から取り外して、子内視鏡60の挿入部62を支持用筒部材31の後端開口部から親内視鏡20、20’の内部管路36に挿入してもよい。
【符号の説明】
【0026】
10 親子式内視鏡
20 20’ 親内視鏡
21 21’ 操作部(親側操作部)
22 挿入部(親側挿入部)
23 湾曲部
24 湾曲操作レバー
25 ボタン支持用突部
25a シリンダ面
25b 環状座面
25c 雄ネジ部
26 ライトガイドチューブ
27 ライトガイドバンドル
28 接眼部
29 接眼レンズ
30 イメージガイドバンドル
31 支持用筒部材
31a 大径部
32 支持用孔
33 吸引用溝
34 環状溝
35 吸引管
36 内部管路
37 スリット
38 圧接片(保持手段)
39 被押圧テーパ面
40 雄ねじ溝
42 締付リング(保持手段)
43 雌ねじ溝
44 押圧テーパ面
46 ボタン支持部材
46a 雌ネジ部
47 リテーナ面
48 スライド部材
49 吸引ボタン
50 リテーナ
51 ピストン
52 吸引ニップル(吸引孔)
53 連通チューブ
60 子内視鏡
61 操作部(子側操作部)
62 挿入部(子側挿入部)
64 硬質筒状部
64a 凹部
65 処置具挿通管
66 処置具挿入用突部
67 蓋部
68 開閉キャップ
69 吸引用溝
70 シール部材
R1 R2 Oリング(シール部材)
S1 圧縮コイルばね

【特許請求の範囲】
【請求項1】
親側操作部、該親側操作部から延びる可撓性を有する親側挿入部、及び、該親側操作部と親側挿入部の内部を連続して貫通する内部管路を備える親内視鏡と、
子側操作部、及び、可撓性を有する子側挿入部を有し、該子側挿入部を上記内部管路に上記親側操作部側の開口端部から挿入して上記親側挿入部側の開口端部から突出可能な子内視鏡と、
を具備する親子式内視鏡において、
上記子内視鏡が、上記子側操作部と上記子側挿入部の間に位置する円筒形状をなす硬質筒状部を具備し、
上記親側操作部内における上記内部管路の少なくとも一部を、上記硬質筒状部を嵌合可能かつ該硬質筒状部と同じ断面形状である、硬質材料からなる支持用孔としたことを特徴とする親子式内視鏡。
【請求項2】
請求項1記載の親子式内視鏡において、
上記親側操作部に、上記支持用孔に挿入した上記硬質筒状部の該親側操作部に対する相対移動を規制する保持手段を設けた親子式内視鏡。
【請求項3】
請求項1または2記載の親子式内視鏡において、
上記支持用孔と上記硬質筒状部の対向面の一方に、一端が上記親側操作部の表面に設けた吸引孔と接続し、かつ、他端が上記親側挿入部内の上記内部管路と接続する吸引用溝を凹設した親子式内視鏡。
【請求項4】
請求項3項記載の親子式内視鏡において、
上記親側操作部内における上記内部管路の内周面に、上記吸引用溝より上記内部管路の上記親側操作部側の開口端部側に位置し、かつ上記支持用孔に嵌合した上記硬質筒状部の外周面に気密状態で接触するシール部材を設けた親子式内視鏡。
【請求項5】
請求項3または4項記載の親子式内視鏡において、
上記吸引用溝の総断面積が、上記親側挿入部内の上記内部管路と上記子側挿入部の隙間の断面積よりも大きい親子式内視鏡。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2011−167460(P2011−167460A)
【公開日】平成23年9月1日(2011.9.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−36347(P2010−36347)
【出願日】平成22年2月22日(2010.2.22)
【出願人】(510097747)独立行政法人国立がん研究センター (35)
【出願人】(000113263)HOYA株式会社 (3,820)
【Fターム(参考)】